特許第5864175号(P5864175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5864175
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】液体容器への液体充填方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/06 20060101AFI20160204BHJP
   B65B 3/14 20060101ALI20160204BHJP
   B65B 3/16 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
   B65D77/06 F
   B65B3/14
   B65B3/16
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-200184(P2011-200184)
(22)【出願日】2011年9月14日
(65)【公開番号】特開2013-60220(P2013-60220A)
(43)【公開日】2013年4月4日
【審査請求日】2014年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】竹堤 俊紀
【審査官】 種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−235197(JP,A)
【文献】 特公昭38−015842(JP,B1)
【文献】 特開平07−227922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/06
B65B 3/14
B65B 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が中空の外装容器と該外装容器の内側に収容された包装袋とを備え、前記外装容器内に前記包装袋を装着した状態で、前記包装袋内にあらかじめ気体を導入した後に液体を充填する液体容器への液体充填方法であって、
前記包装袋は袋部と注出入口とを備え、
前記外装容器は、前記注出入口が係合可能な開口部を上方に備え、
前記包装袋の袋部は、前記収容前の初期状態において幅Wmm、高さHmmの略平面形状であり、少なくとも2枚以上のフィルムの外周辺の一部又は全部にヒートシール部を形成して袋体とすると共に、前記袋部の上辺の略中央部において前記ヒートシール部のシール面間に前記注出入口が接合されており、
前記幅Wと平行な線であり、前記高さHの下方からの距離Hの位置を基線Wとし、H<Hとなる前記高さHの下方からの距離Hの位置を基線Wとし、
前記初期状態から、前記基線Wで上辺側に折り返した後に再度基線Wで下方に折り返した状態とし、前記基線W及び基線Wで折り返し状態から更に、前記袋部を、前記上辺と略垂直な複数の線に沿って複数回蛇腹折りした状態で、前記袋部を前記開口部を介して前記外装容器の内側へ装着し、その後に前記気体を導入する液体容器への液体充填方法。
【請求項2】
前記距離H及びHが、1.8H<H<2.2Hを満足する請求項1に記載の液体容器への液体充填方法。
【請求項3】
前記袋部を前記外装容器の内側へ装着した状態で、前記外装容器の底面に前記袋部が当接している請求項1又は2に記載の液体容器への液体充填方法。
【請求項4】
前記液体がレジスト液である請求項1からいずれか記載の液体容器への液体充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体容器への液体充填方法に関し、更に詳しくは、注出入口の付いた包装袋が外装容器の内部に収容して使用される液体容器に、例えばレジスト液などを充填する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業薬品分野、医薬品や化粧品原料分野などで、保管や輸送にアルミニウム、スチール、ステンレス、段ボールなどで作られた外装容器の内部に液体を収容する注出入口の付いた包装袋を収容した二重の液体容器が使用されている。
【0003】
このような容器は、使用済みの包装袋を外装容器から取り出し、新たな包装袋を外装容器内にセットするだけで再使用することができる。このため、例えば、包装袋を使用せずに直にスチールなどの外装容器に液体を充填する場合に比べて、洗浄する手間などが省けるなどの利点があり、工業薬品、食品、医薬品や化粧品原料の容器として広く使用されている。
【0004】
包装袋は、通常フィルム状の薄いフレキシブル素材である軟包装材料で構成される。ここで、包装袋は、そのフレキシブル性のために、外装容器の内部で折れ曲がったり、重なり合うフィル同士が密着したりするため充填率が低下し、充填したい内容物を所定量充填できない場合がある。
【0005】
特許文献1には、外装容器内に包装袋を装着した状態で、包装袋内にあらかじめ気体を導入することなくレジスト液を充填する液体容器へのレジスト液充填方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−235198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
液体の一例であるレジスト液を包装袋内に充填する場合、上記特許文献1のように包装袋内にあらかじめ気体を導入することなくレジスト液を充填すること以外に、あらかじめ気体を導入した後にレジスト液を充填することが通常行われている。気体封入には2つの意味があり、1つはレジスト液の品質保持のために窒素などの不活性ガスや酸素を導入する意図であり、もう1つはあらかじめ気体を封入することで包装体を膨らまして充填量を確保する意図である。
【0008】
なかでも、後者の充填量確保は、包装袋のフレキシブル性のために困難な解決課題となっており、たとえ気体を導入したとしても、外装容器の内部で折れ曲がったり、両面のフィルム同士が密着したりするため、安定的に所定量充填できないケースが頻発するという問題があった。
【0009】
本発明は、気体封入工程を経て液体容器に液体を充填する際に、所定量の内容物を確実に包装袋に充填できる液体容器への充填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意検討した結果、包装袋の袋部下端に特定の折り返し部を形成しておき、その状態で外装容器内に装着し、その後、気体の封入を行なうことで、安定的に所定量充填できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、内部が中空の外装容器と該外装容器の内側に収容された包装袋とを備え、前記外装容器内に前記包装袋を装着した状態で、前記包装袋内にあらかじめ気体を導入した後に液体を充填する液体容器への液体充填方法であって、
前記包装袋は袋部と注出入口とを備え、
前記外装容器は、前記注出入口が係合可能な開口部を上方に備え、
前記包装袋の袋部は、前記収容前の初期状態において幅Wmm、高さHmmの略平面形状であり、少なくとも2枚以上のフィルムの外周辺の一部又は全部にヒートシール部を形成して袋体とすると共に、前記袋部の上辺の略中央部において前記ヒートシール部のシール面間に前記注出入口が接合されており、
前記幅Wと平行な線であり、前記高さHの下方からの距離Hの位置を基線Wとし、H<Hとなる前記高さHの下方からの距離Hの位置を基線Wとし、
前記初期状態から、前記基線Wで上辺側に折り返した後に再度基線Wで下方に折り返した状態で、前記袋部を前記開口部を介して前記外装容器の内側へ装着し、その後に前記気体を導入する液体容器への液体充填方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、気体封入工程を経て液体容器にレジスト液などの液体を充填する際に、所定量の液体を確実に包装袋に充填できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】包装袋が折り曲げられる前の状態(初期状態)を示す平面図である。
図2】包装袋の下端を折り返した状態を示す斜視図である。
図3図2の側面図である。
図4図2から更に蛇腹折りを行った状態を示す平面図である。
図5図4の斜視図と、それを畳んだ状態を示す斜視図である。
図6図5の包装袋の外装容器への挿入前の状態を示す斜視図である。
図7図5の包装袋の外装容器への挿入中の状態を示す斜視図である。
図8図5の包装袋の外装容器への挿入後の状態を示す斜視図である。
図9】外装容器内における包装袋の装着状態の一例を示す断面模式図である。
図10】外装容器内における包装袋の装着状態の他の例を示す断面模式図である。
図11】包装袋内への気体封入初期の状態を示す断面模式図である。
図12】包装袋内への液体封入後の状態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<全体構成>
以下、本発明の一例である実施形態について図面を参照しながら説明する。図9に示すように、液体容器1は、略円筒形状で内部が中空の外装容器20に、内容物を注出入する注出入口11が設けられた包装袋10が収容されたものである。外装容器20は、その上方に開口部24を有し、上方には開口部側の面としての天板23が形成され、天板23によって開口部24を除いて閉じられている。包装袋10は、外装容器20に設けられた開口部24から挿入され、包装袋10の注出入口11を開口部24に嵌合して、外装容器20に装着される。包装袋10は、本発明における液体の一例であるレジスト液を注出入可能に開口する注出入口11と、流動性の内容物を収容する袋部12とを有している。袋部12の周縁が接合されており、上辺15の中央部付近では注出入口11を介して接合一体化されている。外装容器20の開口部24には、例えば、継手ブラケットを介して包装袋10の内部に通じる液出しチューブが装着可能であり、ここからレジスト液の注出入が可能である。輸送時には、開口部24は蓋50により密閉可能となる(図12参照)。包装袋10は着脱が可能であり、本発明に係る液体容器1は、外装容器20が繰り返し使用される複式格納型の容器となっている。
【0015】
<外装容器>
外装容器20は、図8図9に示すように、底面21と、側壁22と、中央が隆起した天板23とで構成され、天板23の略中央部分に開口部24が形成されたスチール製容器が好ましく用いられる。後述する包装袋10の注出入口11の開口側にフランジ部112が形成され、一方、開口部24の内壁には図示しない段差が設けられており、このフランジ部112が段差に係止することにより、注出入口11が開口部24に支持されている。包装袋10を外装容器20に収納し、包装袋10に接合された注出入口11を外装容器20の開口部24で支持した後に、包装袋10は好ましくはレジスト液などの内容物の注出入を行なうことができる。
【0016】
開口部24の外周面には雄ねじ24a(図8参照)が形成されており、蓋50により密封可能となり、輸送に供することができる。なお、側壁22の天板23より上方位置に一対のハンド部25(図8参照)を設けることにより運搬を容易にしてもよい。外装容器20としては、例えば、金属製、合成樹脂製、段ボールなどの紙製の剛性容器が例示されるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0017】
外装容器20の大きさはレジスト液の充填容量に応じて適宜設定可能であり特に限定されないが、一例を挙げれば、容量18Lから200L程度までの外装容器の場合で、開口部24から底面21までの高さが300mmから1000mmまでの範囲を適宜選定できる。また、外装容器20の形状も略円柱形状には限定されない。
【0018】
<包装袋>
図1は、包装袋10が折り曲げられる前の状態(初期状態)の平面図である。包装袋10の袋部12は、上辺15及び下辺17(この方向を幅方向という)及び両側辺16(この方向を高さ方向という)で構成される矩形形状である。第一の面13又は第二の面14は、それぞれ2枚のフィルム121a/121bとで構成され、周縁は計4枚をヒートシールして形成されている。フィルム121は、最外層が耐熱層である外側フィルム121aとヒートシール性の内側フィルム121bとを有する二枚重ねの二重フィルムである。包装袋10は、内側フィルム121b同士が対向するようにして四辺をヒートシールしてヒートシール部122を形成した袋部12と、この袋部12の上辺15側に設けられるヒートシール部122の前記内側フィルム121b間にあらかじめ熱融着され、射出成形された注出入口11とを備えている。
【0019】
図2を併せて参照すると、注出入口11は、注出口取付部11aと、該注出口取付部11aの一方に連接する注出口係合部11bとからなり、注出口取付部11aは断面形状が凸レンズ状で中央部に貫通穴を有する柱体である。この注出口取付部11aが内側フィルム121b間に熱融着されている。注出入口11は上辺15の略中央部に配置されており、その結果、注出入口11から上辺15に沿って両側に延びるヒートシール部122がリブの役目をなし、袋部12の上辺15付近の形状を維持する。筒状の注出口係合部11bの開口部には、外装容器20の開口部24と係合するためのフランジ部112が形成されている。
【0020】
フィルム121は接合可能であればよく層構成や枚数は特に限定されない。袋部12の上辺15以外の辺は必ずしもヒートシールには限定されず、接着剤接合や折り返しによって辺が形成されていてもよい。注出入口11も同様に特に限定されず、接着剤接合によって袋部12と接合されていてもよい。
【0021】
袋部12の初期状態の形状は略矩形形状(略長方形)には限定されず、角部などの一部にラウンド部が形成されていてもよく、全体にラウンド部が形成されていてもよい。また、袋部12の大きさはレジスト液の充填容量に応じて適宜設定可能であり特に限定されないが、一例を挙げれば、容量18Lの場合に、幅方向の長さである上辺15と下辺17が330から430mmであり、高さ方向の長さである側辺16が670から770mmである。また、容量40Lの場合に上辺15と下辺17が520から620mmであり、側辺16が880から1080mmである。また、容量200Lの場合に上辺15と下辺17が940から1040mmであり、側辺16が1270から1370mmである。
【0022】
<折り返し部の形成>
次に、袋部12の折り返し部の形成につき、図1から図5を用いて説明する。図1に示すように、包装袋10の袋部12は、前記収容前の初期状態において幅Wmm、高さHmmの略平面形状であり、少なくとも2枚以上のフィルムの外周辺の一部又は全部にヒートシール部を形成して袋体とすると共に、袋部12の上辺15の略中央部において前記ヒートシール部のシール面間に注出入口11が接合されている。
【0023】
ここで、基線Wと基線Wは、本発明における折り返し部を形成するための上辺15と平行な仮想線である。基線Wは袋部12の下辺17からの距離Hであり、基線Wは袋部12の下辺17からの距離Hであり、H<Hの関係がある。この初期状態から、まず、基線Wで上辺15側に袋部12を上方に山折りで折り返した後、再度基線Wで袋部12を下方に谷折りで折り返した状態の斜視図が図2であり、その側面図が図3である。
【0024】
この結果、基線Wと基線Wと両側辺16とで形成される第1折り返し部60と、基線Wと下辺17と両側辺16とで形成される第2折り返し部70とが形成される。なお、本発明における上方とは側辺16に沿って上辺15側に向う方向を意味し、下方とは側辺16に沿って下辺17側に向う方向を意味する。
【0025】
第1折り返し部60と第2折り返し部70のそれぞれの大きさを決定するのは基線Wと基線Wの折り位置を決定する距離Hと距離Hである。この実施形態においては、2H=Hの関係になっており、この場合に第1折り返し部60と第2折り返し部70の折り返し幅が等しくなり、図3に示すように、側面から見ていわゆる「Z折形状」をなす。本発明においては、距離H及びHが、1.8H<H<2.2Hを満足することが好ましく、より好ましくは2H=Hである。なお、具体的な折り返し幅は、袋部の形状や容量、外装容器の形状や容量、などに応じて適宜設定されるが、後述するように、袋部12を外装容器20の内側へ装着した状態で、外装容器20の底面21に、折り返した袋部12の下端が当接していることが好ましい。
【0026】
このような折り返し部を、袋部12の下端側に形成することで、袋部12内に気体を導入した際、本来平面状の袋部12内における特に上辺15側に気体が入りやすくなり、結果、袋部12内の上方空間がうまく膨らみ、充填空間を有効に確保できるようになる。この点については後述の気体封入工程において説明する。
【0027】
<蛇腹折り>
図4及び図5に示すように、包装袋10に第1折り返し部60と第2折り返し部70が形成された図2、3の状態から更に、包装袋10を、側辺16と平行でかつ所定の間隔Wn(Wn=W/nを意味し、nは蛇腹折部の数を示し、n−1が蛇腹折線の数を示す)で形成される複数(n−1本)の蛇腹折線16a、16b、16c、16d・・・に沿って山折りと谷折りを交互に行なった状態である。これにより、袋部12が更にコンパクトに折り畳まれ、結果として包装袋10は幅Wnの短冊状に折り畳まれる(図5(b))。この幅Wnは外装容器の開口部24の口径に近く、好ましくは口径の60%以上300%以下である。これにより、開口部24への挿入をスムースに行なうことができる。また、この蛇腹折線は上記の第1折り返し部60と第2折り返し部70と直交するように形成されていることから、第1折り返し部60と第2折り返し部70が、外装容器20内に挿入された際に復元して元に戻ってしまうことも防止している。
【0028】
<包装袋の挿入方法>
図6から図8は、包装袋10を外装容器20内に収容する過程を説明する斜視図である。本発明の液体容器1は、図6に示すように、外装容器20の開口部24から外装容器20の内部に挿入する。具体的には、図5に示すような蛇腹折りに畳んだ状態で挿入する。すなわち、幅Wnのまま、第1折り返し部60及び第2折り返し部70を有する袋部12の下方側から、外装容器20の開口部24を介して挿入する(図7参照)。この際、包装体10のフランジ部112が、開口部24の内側面に形成された段差(図示せず)の上周端に当接することにより、包装袋10が外装容器20内で支持される。この状態で、気体を封入可能である(図8参照)。
【0029】
図9は、袋部12の挿入を完了した状態で、気体封入前における外装容器20内の断面模式図である。袋部12を外装容器20の内側へ装着した状態で、外装容器20の底面21の側壁22寄りに袋部12の下端が当接しており、かつ、袋部12は容器内深さ方向の略中央部にて屈曲している。図10は他の例であり、この場合、外装容器20の底面21の中央付近で袋部12の下端が当接している点が異なっている。
【0030】
設計上は、外装容器の空間を有効に利用する観点から、袋部12の体積が外装容器の内空体積に近くなるように袋部の幅Wと高さHが設計される。より具体的には、袋部12の幅W×2は、外装容器20の円筒部分の水平断面における内壁円周径Pに近くなるように通常設計され、袋部12の高さH×2は、外装容器20の垂直断面における内壁円周径Pに近くなるように通常設計される。一方、袋部12は初期状態では平面形状である。このため、初期状態で平面の袋部12の高さHは、外装容器20内の高さPに比べてかなり長くなっている。この結果、折り返し部が無い場合には(下記実施例における比較例がこれに相当)、外装容器20内で袋部12が大きく折れ曲がってしまい、折り返し部の下端がうまく底面に当接せずに、場合によっては外装容器の内壁側まで回り込んでしまう。この場合、こうなるとたとえ空気を入れてもうまく膨らむことができずに充填量が低下することになる。本発明らは種々の試行錯誤の結果、図9図10のように、外装容器の底面に袋部12の下端が当接している状態が最も充填量が高いことを見出したものである。
【0031】
<レジスト液の注入工程>
次に、上記の液体容器1にレジスト液90を充填する工程を説明する。好ましくは上記のような挿入方法で包装袋10を外装容器20内に装着し、この状態で、所定の方法で、事前に例えば窒素や空気などの気体封入を行なう。
【0032】
例えば、図9に示す状態から気体封入を開始する。上記のように、外装容器20の底面21の側壁22寄りに袋部12の下端が当接しており、袋部12の下方は、折り返しの存在によって気体封入による膨らみに抵抗する。このため、気体封入の初期においては、図11に示すように袋部12の上方、すなわち上辺15側に気体が主に流れ込み、まず袋部12の上方から膨らむことになる。通常、袋部12の上辺15側は、袋部の形状やシール辺の存在によって気体によって膨らみ難くなっており、そのために充填量が低下し易いが、本発明のように袋部12の下方に折り返し部を形成し、これを好ましくは外装容器の底面に当接させることで、封入気体を積極的に上方へ誘導し、上方における充填空間を確保する点に本発明の特徴がある。
【0033】
その後、気体封入を続けることで、袋部12の全体が均一に膨らむ(図12参照)。このように、本発明においては、上記折り返し部の存在により、袋部12の膨らみが袋部の上方から始まり、その後下方が膨らむ。こうすることで、従来うまく膨らまなかった袋部の上方における充填空間を有効に確保でき、それにより、全体として安定かつ高い充填量が得られる。
【0034】
その後に、所定の方法、例えば図示しない継手などを介してレジスト液90を注出入口11から導入することで、図12に示すように安定かつ高い充填量の液体容器1が得られる。なお、必要に応じて、充填後のヘッドスペースに窒素などの気体封入工程を行なってもよい。これにより、更に袋部12が広がり、外装容器20の内壁と密着することで形状が安定し、包装袋10の輸送振動などによる破損を防止することができる。なお、レジスト液90は本発明において充填される液体の一例であり、特にレジスト液に限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
次に、本発明について、以下に実施例を挙げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
下記する実施例、比較例に用いる包装袋の構成としては、外側フィルム121aとして、ON(二軸延伸ポリアミド)フィルム25μm/ウレタン系接着剤3μm/LLDPEフィルム40μmからなる2層積層体を用い、内側フィルムとして、LLDPE層25μm/接着層10μm/ナイロン層15μm/接着層10μm/LLDPE層20μmからなる5層共押出しフィルムを用いた。尚、外層フィルムのLLDPEフィルムとしては、メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(DNPテクノフィルム社製の「SR−UEN」)を用いた。また、内層フィルムのLLDPE層としては、メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(宇部興産株式会社製のUBEスーパーポリエチレン「ユメリット」)を用いた。袋部12の幅W500mmm、高さH610mmとした。
【0037】
[実施例1]
図1に示すように、上記のフィルムを用いた袋部12の第一の面13と、第一の面13と略同一の形状の第二の面14との間に、上辺15の略中央部に注出入口11(高密度ポリエチレン)を挟んで上辺15は幅25mmでヒートシールにより接合し、他の辺は幅6mmでヒートシールにより接合して四方シール袋を得た。
【0038】
図1における距離H=60mm、距離H=120mmの基線Wと基線Wの折り位置で、図2、3に示すように第1折り返し部60(折り返し幅60mm)及び第2折り返し部70(折り返し幅60mm)を形成して袋部12の高さを490mmとし、その後に図4、5に示すように幅W=71mmで6回の蛇腹折線で連続して山谷交互に折り返して7枚重ねとして幅71mmの短冊状に折り畳んだ後、折り返し部の下端側から、外装容器20の開口部24内に挿入した。なお、外装容器20として、内部直径が300mm、内部深さが350mm、開口部直径50mmの略円筒形状の容器を用いた。
【0039】
[試験例1]
実施例1の包装袋に、9psiの圧力を50秒の条件で窒素充填を行なった。その後、許容充填量(純水を容器口部の高さまで(溢れる寸前)充填し、その時の充填量を重量計で測定)を測定した。その結果、繰り返し6回の許容充填量は平均20.13kg、標準偏差0.12であった。
【0040】
[実施例2]
図1における距離H=110mm、距離H=220mmとし、第1折り返し部60(折り返し幅110mm)及び第2折り返し部70(折り返し幅110mm)を形成して袋部12の高さを390mmとした以外は、実施例1と同様に折り返して外装容器に挿入した。
【0041】
[試験例2]
実施例1と同様の条件で許容充填量を測定した結果、繰り返し6回の許容充填量は平均19.92kg、標準偏差0.21であり、やや充填量が落ち、充填ばらつきもやや大きかった。
【0042】
[比較例1]
第1折り返し部及び第2折り返し部を形成せずに、蛇腹折りのみ行った以外は、実施例1と同様に折り返して外装容器に挿入した。
【0043】
[試験例3]
実施例1と同様の条件で許容充填量を測定した結果、繰り返し6回の許容充填量は19.72kg、標準偏差0.25であり、充填量も低く、特に充填ばらつきが非常に大きかった。
【符号の説明】
【0044】
1 液体容器
10 包装袋
11 注出入口
12 袋部
13 第一の面
14 第二の面
15 上辺
16 側辺
16a、16b、16c、16d、16e、16f 蛇腹折線
17 下辺
20 外装容器
24 開口部
60 第1折り返し部
70 第2折り返し部
H 高さ
W 幅
、W 基線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12