特許第5864413号(P5864413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5864413モノヒドロキシポリアルキレンオキシドの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5864413
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】モノヒドロキシポリアルキレンオキシドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/28 20060101AFI20160204BHJP
【FI】
   C08G65/28
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-515474(P2012-515474)
(86)(22)【出願日】2010年6月16日
(65)【公表番号】特表2012-530171(P2012-530171A)
(43)【公表日】2012年11月29日
(86)【国際出願番号】EP2010058461
(87)【国際公開番号】WO2010146082
(87)【国際公開日】20101223
【審査請求日】2013年6月13日
(31)【優先権主張番号】09163083.0
(32)【優先日】2009年6月18日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マークス クルンペ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ツィップリース
【審査官】 大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−069975(JP,A)
【文献】 特表2008−514763(JP,A)
【文献】 特表2008−523178(JP,A)
【文献】 特開平08−109254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00 − 67/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
[式中、R1は、脂肪族又は芳香族の基(ブチル基を除く)を意味する、
2は、水素又は脂肪族又は芳香族の基を意味する、
kは、1〜15の整数を意味する]
の化合物又は化合物の混合物を開始剤として少なくとも1のアルキレンオキシドと、少なくとも1の塩基性触媒の存在下で反応させることを含み、
その際、水及び/又はアルコール中の又は少なくとも10質量%の水及び/又はアルコールを含有する溶媒混合物中の溶液として使用される前記触媒と、前記開始剤とを最初に反応器に装入し、
前記触媒と前記開始剤から形成される混合物を蒸留することで、水含有量を1000ppm未満に少なくし、かつ、少なくとも0.1質量%の前記開始剤を留去し、
その後に、アルキレンオキシドを前記反応器中に装入する、
最大10000ppmのジオールを含有するモノヒドロキシポリアルキレンオキシド(MPAO)の製造方法(水素化ホウ素ナトリウムの存在下での方法を除く)
【請求項2】
触媒としてアルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属メチラートを使用する請求項1記載の方法。
【請求項3】
開始剤として一般式I
【化2】
[式中、R1は、C1〜C13−アルキル基(ブチル基を除く)を意味する、
2は、水素又はC1〜C4−アルキル基を意味する、及び
kは、1〜5の整数を意味する]の化合物又は化合物の混合物を使用する請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
開始剤がジエチレングリコールモノメチルエーテルである請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
アルキレンオキシドとしてエチレンオキシドを使用する請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
MPAOが6000ppm未満のジオールを含有する請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
MPAOが5〜200個のアルキレンオキシド単位を含有する請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
反応器が開始剤及び触媒の添加の際に更に最大反応器容量の2質量%までのMPAOを含有し、前記MPAOが請求項1から7のいずれか1項に記載の方法により製造したものである請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記開始剤が請求項1から8のいずれか1項記載の方法により製造したものである請求項1から8のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的にジオール不含であるモノヒドロキシポリアルキレンオキシド(MPAO)の製造方法に関する。
【0002】
さらに、少なくとも2つの極大を有する、多峰性モル質量分布を有するモノヒドロキシポリアルキレンオキシドの混合物であって、2つの極大の平均モル質量の相違は混合物中の最高の割合を有する成分のモル質量の80〜125%であり、かつ、個々の極大に帰属するべき成分の含有量はそのつど、次に高いモル質量を有する極大に帰属するべき成分の30〜1000倍である、混合物が請求される。
【0003】
好ましい実施形態は、下位請求項及び発明の詳細な説明から取り出すことができる。
【0004】
高分子量モノヒドロキシポリアルキレンオキシドは、特に大量で、鉱物性建材のための分散剤及び流動改善剤の製造において使用される。この種のポリエーテルは通常は、その製造後に、オレフィン性不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸又はメタクリル酸とエステル化される。このエステルは更なる工程において多数の可能性のあるモノマーと所望の流動改善剤へと共重合される。これは例えばEP 1 507 815及びEP 884 290に記載されている。
【0005】
モノヒドロキシポリアルキレンオキシドは一般に、アルキレンオキシドの開環重合により開始剤としてのモノアルコール及び塩基性触媒を用いて製造される。一般に、この場合に、2つの遊離OH基を有する副生成物(以下ジオールと呼ぶ)が顕著な割合で、アルキレンオキシド及び反応混合物中に存在する水又は既に反応混合物中に存在するジオールから形成される。この水は様々な経路で反応混合物中に導入され得る。そして、使用される出発材料はしばしば既に少量の水を含有する。例えば固体の金属水酸化物が触媒として使用される場合には、水がこの触媒と存在するアルコール性ヒドロキシル基との反応の際に形成される。水についての過小評価すべきでない供給源は、さらに、反応容器の清浄化からの残留物である。
【0006】
EP 965605は、反応器の清浄化を記載する。ここでは、反応器は水ですすがれ、引き続き窒素を吹き付けられ、そして引き続き真空中で更なる乾燥のために加熱される。第2の工程において、水の除去のためにこの反応器を新たにメタノール及びアセトニトリルで洗浄し、窒素を吹付け、そして真空中で高温で乾燥させる。そうして初めて反応器は、触媒としての固体のナトリウムメチラートの使用下で実施するエトキシル化のための準備が整う。
【0007】
US 2006/0074200は、ジエチレングリコールジメチルエーテル中のカリウムヒドリドの使用下の開始剤アルコールのエトキシル化を記載し、その際、この反応よりもジエチレングリコールジメチルエーテルを用いた反応器の清浄化が先行する。
【0008】
DE 10 2004 059489は、固体の塩基性触媒の使用下の開始剤アルコールのアルコキシル化を記載し、その際、反応に装入される成分はアルコキシル化前に80〜90℃で真空中で脱水される。
【0009】
本発明の課題は、実質的にジオール不含である高純度モノヒドロキシポリアルキレンオキシドを製造するのに適している簡易な方法を提供することであった。本方法を、使用される触媒の水含有量にかかわらず機能させることが試みられた。加えて、本方法は用いられる装置の高い利用度(Ausnutzung)で効率的に実施されることが望ましい。
【0010】
この課題は、少なくとも1のモノアルコールを開始剤として少なくとも1のアルキレンオキシドと少なくとも1の塩基性触媒の存在下で反応させることを含み、その際、前記触媒を水又はアルコール中の又は水及び/又はアルコールを含有する溶媒混合物中の溶液として使用する、冒頭部で挙げたMPAOの製造方法により解決された。
【0011】
塩基性触媒として原則的に全ての塩基が適する。適した触媒には特に、4.5未満、好ましくは1.74以下のpKB値を有するものが属する。このpKB値は、塩基解離定数の負の10の対数である。これは当業者に知られている方法により決定される。特に当業者に慣用の定義によれば、強塩基又は超強塩基が好ましく、これは水溶液中で実質的に完全に解離して存在する(例えば、Matthias Otto, Analytische Chemie, Wiley Verlag, 第3版、2006, 51頁〜参照)。適した塩基は、有機又は無機の化合物であってよい。
【0012】
適した無機塩基は、例えば無機酸の金属塩又は金属酸化物又は金属水酸化物である。好ましい一実施態様において金属水酸化物が使用される。好ましくはさらに無機酸とアルカリ金属又はアルカリ土類金属との塩である。特に好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物である。特にとりわけ好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化カルシウムである。とりわけ好ましくは水酸化カリウムである。
【0013】
適した有機塩基は、イオン性又は非イオン性であることができるか、又は部分的にイオン性の特性を有してよい。一実施態様において、適した塩基は金属成分なしの有機化合物である。他の一実施態様において、金属有機化合物が使用される。好ましい一実施態様において触媒は金属アルコラートである。好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコラート、特に好ましくはナトリウム又はカリウムのアルコラートである。さらに、脂肪族又は脂環式アルコールのアルコラートが好ましい。芳香族アルコラートの使用が可能であるが、本発明ではあまり好ましくない。特に好ましくは直鎖状又は分枝鎖状のアルカノール、特にC1〜C15のアルカノールのアルコラートである。特にとりわけ好ましくはメタノラート及びエタノラートである。とりわけ好ましくはナトリウムメタノラート及びカリウムメタノラートである。同様に、様々な触媒の混合物を使用することもできる。
【0014】
前記触媒は本発明により水又はアルコール中で、又は水及び/又は少なくとも1のアルコールを含有する溶媒混合物中で、溶解して使用される。この場合に水及びアルコールの割合は広い限度で変動可能である。好ましくは溶媒混合物についての水及び/又はアルコールの割合は、少なくとも10%、特に好ましくは少なくとも50%、特にとりわけ好ましくは80%である。とりわけ好ましくは、溶媒は触媒のために少なくとも80%が水又はアルコールからなる。好ましいアルコールは、直鎖状又は分枝鎖状のアルカノール、特に好ましくは1〜5個の炭素原子を有するものである。塩基がアルコラートである場合には、溶媒として適切に好ましくはこの相応するアルコールが使用される。本発明の方法の特に好ましい実施態様は、水酸化ナトリム又は水酸化カリウムの水中の溶液又はナトリウムメタノラート又はカリウムメタノラートのメタノール中の溶液を使用する。
【0015】
これによって、前記触媒は固形物質としてでなく、溶液として使用され、極めて容易に添加され、かつ計量供給されることができる。誤った計量供給及び他の成分との混合の際の不均質性の危険性は、固形物質に対して最小限にされる。加えて、触媒溶液は固体触媒と比較して作業衛生学的に懸念がなく、というのも、触媒溶液は粉塵形成せず、凝結、コンパクト化等を生じることなく貯蔵されるからである。
【0016】
本発明の方法は、塩基濃度のための広い範囲で実施できる。好ましくは、塩基の含有量1〜80質量%、好ましくは5〜70質量%、特に好ましくは10〜60質量%、とりわけ30〜50質量%を有する溶液である。
【0017】
本発明の方法においては、開始剤は、アルキレンオキシドとの反応を開始させる機能を有する。開始剤として原則的には、開環下でエポキシド基と反応できる全ての物質が考慮できる。開始剤に関して使用されるモル量は、本発明の方法においては一般に、アルキレンオキシドのモル量に対して少ない。
【0018】
本発明により開始剤として、実質的にジオール不含のモノアルコールが使用される。開始剤中のジオールの割合は、例えば10000ppm未満であることができ、しかし通常4000ppm未満である。
【0019】
好ましくはこの開始剤中のジオールの割合は1000ppm未満である。好ましくは開始剤は、1又は複数のアルキレンオキシドから構築されているモノエーテル又はオリゴエーテルである。このためには一般に、開始剤との反応のためにもMPAOの製造に好ましい同一のアルキレンオキシドが好ましい。しかし、反応において開始剤が、これと反応する同一のアルキレンオキシドから構築されていることは重要でない。好ましくは、開始剤は1〜15個の同じか又は異なるアルキレンオキシド単位を含有する。特に好ましくは、開始剤は1〜5個のアルキレンオキシド単位、特にとりわけ好ましくは2〜3個のアルキレンオキシド単位を含有する。
【0020】
適した開始剤は自体公知であるか又は当業者に自体公知である方法により製造できる。開始剤の合成のためには少なくとも1のアルキレンオキシドが少なくとも1のモノアルコールと反応させられ、前記モノアルコールは好ましくは脂肪族、脂環式又は芳香族のモノアルコールであることができる。好ましくは1〜12個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルカノール、特に好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール又はブタノールである。とりわけ好ましくはメタノールである。本発明の方法には同様に、様々な開始剤の混合物を使用することができる。
【0021】
特別な一実施態様において、開始剤は同様に本発明の方法により製造されている。
【0022】
好ましい一実施態様において、開始剤として一般式(I)
【化1】
[式中、R1は脂肪族又は芳香族の基を意味する、
2は、水素又は脂肪族又は芳香族の基を意味する、
kは、1〜15の整数を意味する]
の化合物又は化合物の混合物が使用される。
【0023】
好ましくはkは1〜5の整数、特に好ましくは1〜3の整数である。
【0024】
1は好ましくは脂肪族の基、特に好ましくはR1は1〜13個の原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基、とりわけ好ましくはR1はメチル、エチル、プロピル、ブチル又はドデシルであり、とりわけ好ましくはR1はメチルである。
【0025】
2は好ましくは水素又はアルキル基である。特に好ましくはR2はH、−CH3又は−CH2CH3である。
【0026】
本発明により開始剤又は開始剤混合物はアルキレンオキシドと反応させられる。
【0027】
MPAOの製造に適したアルキレンオキシドは、標準条件下で又は反応条件下で液状又は気状であってよい。これは鎖末端で又は鎖の中間でエポキシド基を含有できる。好ましくは鎖末端のエポキシド基を有するアルキレンオキシドである。
【0028】
適したアルキレンオキシドは非置換であるか、1回又は2回置換されていることができる。好ましくはこれは非置換であるか又は1回置換されている。置換したアルキレンオキシドは1又は複数の脂肪族、脂環式、芳香族脂肪族(araliphatisch)又は芳香族の基を有することができる。好ましくは適したアルキレンオキシドは直鎖状又は分枝鎖状のアルキル鎖で置換されている。好ましい一実施態様において、このアルキル鎖は1〜10個の炭素原子、例えば1〜5個の炭素原子を有する。
【0029】
特に好ましいアルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、n−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1,2−エポキシペンタン、デセンオキシド及びスチレンオキシドから選択されている。
【0030】
アルキレンオキシドは単独で又は様々なアルキレンオキシドの混合物として使用できる。適したアルキレンオキシドは実質的に水不含である。好ましくはアルキレンオキシドは300ppm未満、特に好ましくは50ppm未満の水含有量を有する。
【0031】
開始剤及び触媒の添加は同時に又は相次いで行うことができる。この添加の順番は本発明により一般に本質的でない。
【0032】
この蒸留工程は好ましくはアルキレンオキシドの添加前に行われる。好ましくは80〜145℃、特に好ましくは120〜135℃の温度で蒸留される。通常は蒸留真空10〜500mbar、好ましくは60〜200mbar、特に好ましくは150〜170mbarが適用される。本発明の好ましい一実施態様において、この蒸留工程は、開始剤及び触媒が同時の排気の際に蒸留真空下に加熱されるように実施される。この蒸留温度に達すると、この混合物は所定の期間にわたり蒸留条件に付される。この期間は短くてよく、例えば1時間を下回る。この期間の長さは例えば装置の周辺条件及び使用される使用物質に適合される。これは相応して当業者により適合されることができる。蒸留のためには、相を異なる圧力及び温度で順次経過させることが有用であり得る。この蒸留温度及び圧力は期間にわたり一定に維持されることができるが、しかし、圧力及び/又は温度を持続的に高めるか又は低めるランプ(Ramp)としても実施できる。
【0033】
開始剤及び触媒溶液から構成される混合物中に存在する水量のみが留去されるのでなく、装入された開始剤の一部も留去されることが好ましくあることができる。可能性としては、開始剤は、この反応の経過及び例えばこの生成物の色数に不利に影響を及ぼす同定されていない成分を、装入された混合物から除去するための共留剤として機能する。
【0034】
好ましい一実施態様において、この蒸留は、装入された開始剤アルコールの0.1〜30質量%の量が留去されるように実施される。好ましくは0.1〜25質量%、特に好ましくは1〜20質量%が留去される。例えば一実施態様において、5〜15質量%の開始剤アルコールが、他方では10〜20質量%が留去される。蒸留終了後に、開始剤/触媒混合物は実質的に水不含である。典型的には次いでこれは1000ppm未満の水を含有する。幾つかの場合には蒸留後になおより多量の、例えば5000ppmまでの水が含有されている。しかし、好ましくは蒸留は、この混合物中に500ppm未満又は200ppm未満の水が含有されているように実施される。
【0035】
好ましい一実施態様において、この留去された開始剤は回収され、再度使用されることができる。
【0036】
アルキレンオキシドの添加は好ましくは蒸留の終了後に行われる。このアルキレンオキシドは、装入した開始剤と反応する。使用されるアルキレンオキシドが標準条件下で気状である場合には、この添加は適切には高められた圧力下で行われる。好ましくはアルキレンオキシドの添加は長期間にわたり、例えば数時間にわたり分けて行われる。この添加はこの場合に中断し、引き続き再度開始することができる。様々なアルキレンオキシドが使用される場合には、これは混合物として添加されるか又は相次いで添加されることができる。アルキレンオキシドの全量を添加した後に、この反応混合物は更に、可能な限り完全なアルキレンオキシドの反応を保証するために、恒圧まで反応温度で撹拌されることができる。遊離アルキレンオキシドの残量は、真空の適用によりこの反応混合物から除去されることができる。
【0037】
反応終了後に、この反応混合物は通常は少なくとも1の酸で中和される。任意に、更に安定剤又は更なる添加剤が添加されることができる。酸及び更なる添加剤はこの反応の終了直後に又は後の時間点で添加されることができる。これは、この反応も実施された同じ容器の中で行われるか、又は別の箇所で行われることができる。この添加は例えば他の撹拌槽中で実施されるか、又は連続的に導管中で実施されることができる。好ましくはまず中和され、続く工程で更に添加される(additivieren)。
【0038】
MPAOの中和に適した酸は、原則的に全ての有機又は無機の酸である。適した酸は通常は、この製造したアルコールよりも高い酸度を有する。好ましくはこの酸のpKaは、中和により産生したアルコールに対して少なくとも2の差を有する。好ましい無機酸は、例えば塩酸及びリン酸である。好ましくは更に有機酸である。特にとりわけ好ましくは酢酸、イソノナン酸、乳酸又はパラトルエンスルホン酸である。異なる酸の混合物も使用できる。
【0039】
安定剤として例えば当業者に知られている光保護安定剤及び酸化安定剤を使用できる。とりわけこのフェノール類及び立体障害アミン(HALS)である。好ましくは例えば2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、パラ−メトキシフェノール、ヒドロキノン及び立体障害フェノール類であり、これは例えば商品名Irgastab商標Pur、Irganox商標又はTinuvin商標で販売されている。場合によって、安定剤はなお第二級安定剤、例えばホスフィット又はホスホニットを含有できる。
【0040】
本発明の一実施態様において、前述の方法工程には、この反応器の清浄化工程が前接続できる。これは例えば水蒸気で又は液状の水で実施されることができる。好ましい一実施態様において、本発明の方法は、この反応器が、先行する製造部分の反応混合物の排出後に清浄化に付されることなく実施される。本発明の方法が製造部分(Produktionspartie)の間に清浄化工程なしに実施されることができることによって、この反応器の利用可能な容量(Kapacitaet)は顕著に増加する。さらに、すすぎのための溶媒(これは加えてしばしば水不含に使用される)の節約によって、コストが節約され、かつ、このプロセスの廃棄物バランスは改善される。
【0041】
反応容器の清浄化が実施されない場合には、成分の添加前に反応器中にはこの先行する製造バッチから反応器容量の2質量%までのMPAOがなお存在する。このようにして得られる生成物の特性はジオール含有量、平均モル質量、色数及び粘度及びレオロジー特性に関して、製造前にこの反応器を清浄化し、かつ、比較可能な平均モル質量を有する生成物の特性と比較可能である。この傑出した点を有する本方法は、モル質量300〜20000g/mol、特に好ましくは500〜10000g/mol、特にとりわけ好ましくは750〜8000g/mol、とりわけ好ましくは1000〜5000g/molを有するポリマーのために好ましい。
【0042】
相応して、少なくとも2つの極大を有する、多峰性(oligomodal)のモル質量分布を示す、MPAOの混合物が見出された。本発明のMPAO混合物は、他のポリマー成分の割合に比較して顕著により高い割合の主生成物を含有する。次に高い及び次に低い極大に対するこのモル質量の差は通常は、混合物中の最も高い割合を有する成分のモル質量の80%〜125%、好ましくは90%〜115%である。この個々の極大に帰属するべき成分の含有量は、そのつど、次に高いモル質量を有する極大に帰属するべき成分の30〜1000倍、好ましくは50〜500倍、特に好ましくは75〜200倍である。
【0043】
本発明のMPAO混合物は、レオロジー特性及びジオール含有量に関して、同じ平均分子量を有する、一峰性のモル質量分布を有するMPAO混合物と比較可能な特性を有するが、本発明の混合物は顕著により高い分子量を有するポリマーの割合を有する。このために、これは幾つかの付加的な利点を有する。そして、この正確なポリマー分布は極めて特徴的である。本発明のMPAO混合物は、プラント特異的なフィンガープリントを示す。これによって、個々の製造バッチを後から個々の製造者ひいては個々の製造プラントにさえ、場合によっては個々の製造キャンペーン(Produktionskampagne)にさえ帰属させることができることにより、この生成物の品質制御は容易になる。
【0044】
本発明の方法により製造したモノヒドロキシポリアルキレンオキシドMPAOは、実質的にジオール不含である。好ましくはこのMPAOは、最大10000ppm、特に好ましくは最大6000ppm、特にとりわけ好ましくは最大4000ppm、とりわけ好ましくは3000ppmのジオールの含有量を有する。これは、アルキレンオキシドから構築されているか、又は、様々なアルキレンオキシドのコポリマーであることができる。コポリマーは、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーであることができる。
【0045】
好ましくは本発明のMPAOは、5〜400個のアルキレンオキシド単位、特に好ましくは10〜200個、特にとりわけ好ましくは15〜100個、とりわけ好ましくは20〜50個のアルキレンオキシド単位を含有する。このポリマーのOH価は、DIN 53240により測定され、かつ、当業者が平均モル質量に変換できる。エチレンオキシドのみから構築されているMPAOは、例えば、平均モル質量300〜20000g/mol、好ましくは500〜10000g/mol、特に好ましくは750〜8000g/mol、とりわけ好ましくは1000〜5000g/molを有する。
【0046】
このMPAOのモル質量は、本発明の方法により極めて容易に制御され、再現される。本発明の方法を複数回続けて実施する場合には、このOH価は少ない変動幅だけを示す。エチレンオキシドのみをアルキレンオキシドとして含有する生成物については、このOH価は例えば最大2.0mg/KOH 100g、好ましくは1.0mg/KOH 100g、特に好ましくは0.7mg/KOH 100g、特に好ましくは0.5mg/KOH 100gだけ変動する。
【0047】
このMPAOのジオール含有量は、最大2500ppmの標準偏差でだけ分散する。
【0048】
本発明の方法によるポリマーは、鉱物性建材のための、乳化剤、分散剤及び流動改善剤における適用のための更なる反応のために適している。鉱物性建材とは、本質的な成分として鉱物性結合剤、例えば石灰、石膏及び/又は特別なセメント並びに骨材として使用される砂、砂利(Kiese)、破砕された岩石又は他の充填剤、例えば天然繊維又は合成繊維を含有する特別な調製物を理解すべきである。
【0049】
実施例
以下の実施例は、本発明を限定することなく本発明の特性を説明する。
【0050】
別のことが記載されていない限りは、「部」、パーセント又はppmとはこの刊行物において、質量割合が理解される。
【0051】
ジオール含有量の測定は、HPLCにより液体クロマトグラフィーにより行った。このために、この生成物の遊離OH基を、過剰量のフェニルイソシアナートと反応させて誘導体化した。次にこのクロマトグラフィーによる分離を、タイプVarian(登録商標) 9012のHPLCポンプを用いて、タイプIntersil ODS-3のシリカゲルカラム(5μm 150*4mm)に対して行った。この検出を、タイプVarian(登録商標) 9050のUV検出器を用いて行った。
【0052】
このOH価を、DIN 53240に応じてこのOH基と酢酸無水物とのエステル化及び消費されていない酢酸の逆滴定によって測定した。このモル質量をこのようにして測定したOH価から算出した。
【0053】
平均モル質量1990g/molを有するポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPAO1)の製造
撹拌反応器中にジエチレングリコールモノメチルエーテル1744kg及び45%水酸化カリウム水溶液55.3kgを装入した。この混合物を30分間真空(90mbar)中で125℃まで加熱し、引き続き真空を窒素で破った。引き続き150℃の温度及び最大5.2barの圧力で、エチレンオキシド24137kgを計量供給して装入した。計量供給終了後に、この反応器内容物を酢酸27.1kgの添加により中和し、この反応器を空にした。
【0054】
平均モル質量2900g/molを有するポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPAO2)の製造
反応器中にジエチレングリコールモノメチルエーテル1211kgを45質量%の苛性カリ溶液50.1kgと並行して装入した。この混合物を30分間真空(90mbar)中で125℃まで加熱し、引き続き真空を窒素で破った。引き続き150℃の温度及び最大5.6barの圧力で、エチレンオキシド24669kgを計量供給して装入した。計量供給終了後に、この反応器内容物を酢酸26.5kgの添加により中和し、この反応器を空にした。空にする間に、この反応器の底部流出部の後ろで2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール2.2kgを生成物流中に計量供給した。
【0055】
平均モル質量4700g/molを有するポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPAO3)の製造
反応器中にジエチレングリコールモノメチルエーテル796kgを45質量%の苛性カリ溶液36.5kgと並行して装入した。この混合物を30分間真空(90mbar)中で125℃まで加熱し、引き続き真空を窒素で破った。引き続き150℃の温度及び最大5.1barの圧力で、エチレンオキシド25698kgを計量供給して装入した。計量供給終了後に、この反応器内容物を酢酸27.1kgの添加により中和し、この反応器を空にした。
【0056】
実施例1
上記したポリエチレングリコールモノメチルエーテルMPAO1〜3を、第1表に挙げる順序で同じ反応器中で実施した。この反応器は個々の実験の間に清浄化されなかった。第1表に挙げる分析値が達成された:
第1表:
【表1】
【0057】
実施例2
上記したポリエチレングリコールモノメチルエーテルMPAO1〜3を、第2表に挙げる順序で同じ反応器中で実施した。この反応器は個々の実験の間に清浄化されなかった。第2表に挙げる分析値が達成された:
第2表:
【表2】
【0058】
実施例3
MPAO2を5回同じ反応器中で製造した。この反応器は個々の実験の間に清浄化されなかった。第3表に挙げる分析値が達成された:
第3表:
【表3】
【0059】
実施例4
MPAO1〜3をランダムな順番で全部で136回同じ反応器中で製造し、その際、MPAO部分(MPAO-Partie)の連続(Abfolge)を全体として94回の水及び/又は水蒸気での清浄化によって、そして、ランダムな順番で中断し、この結果、1の部分と8の部分の間にMPAOが続けて中断なしに製造された。この場合に以下の平均分析値及び変動幅が達成された:
第4表:
【表4】