特許第5864540号(P5864540)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5864540中空円筒形担体と該担体の外側表面に施与された触媒活性酸化物材料とから成るシェル触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5864540
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】中空円筒形担体と該担体の外側表面に施与された触媒活性酸化物材料とから成るシェル触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/88 20060101AFI20160204BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20160204BHJP
   C07C 57/055 20060101ALI20160204BHJP
   C07C 51/235 20060101ALI20160204BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20160204BHJP
【FI】
   B01J23/88 Z
   B01J35/02 C
   C07C57/055 A
   C07C51/235
   !C07B61/00 300
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-506618(P2013-506618)
(86)(22)【出願日】2011年4月26日
(65)【公表番号】特表2013-529128(P2013-529128A)
(43)【公表日】2013年7月18日
(86)【国際出願番号】EP2011056528
(87)【国際公開番号】WO2011134932
(87)【国際公開日】20111103
【審査請求日】2014年4月23日
(31)【優先権主張番号】61/328,670
(32)【優先日】2010年4月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/353,230
(32)【優先日】2010年6月10日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】102010023312.9
(32)【優先日】2010年6月10日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102010028328.2
(32)【優先日】2010年4月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ カルポフ
(72)【発明者】
【氏名】カタリーナ ホアストマン
(72)【発明者】
【氏名】コーネリア カタリーナ ドープナー
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ マハト
(72)【発明者】
【氏名】フランク ロソヴスキ
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ヨアヒム ミュラー−エンゲル
【審査官】 阪野 誠司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−535511(JP,A)
【文献】 特開平08−299797(JP,A)
【文献】 特開平03−218334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 23/00− 38/74
C07C 51/235
C07C 57/055
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2〜10mmの長さ、4〜10mmの外径及び1〜4mmの壁厚の中空円筒形担体並びに該担体の外側表面に施与された一般式I
Mo122〜40.2〜3Cu0.8〜1.510〜420〜40n (I)
[式中、可変部は、次の意味を有する:
1=アルカリ金属及びアルカリ土類金属の1種以上の元素;
2=Si、Al、Ti及びZrの群からの1種以上の元素;及び
n=酸素元素の化学量論係数であって、該化学量論係数は、Iにおける酸素とは異なる元素の化学量論係数並びにそれらの電荷数によって定められる]の触媒活性酸化物材料のシェルから成る、アクロレインの気相接触酸化によりアクリル酸を製造するためのシェル触媒。
【請求項2】
前記一般式Iにおける元素Wの化学量論係数が0.5〜2であることを特徴とする、請求項1記載のシェル触媒。
【請求項3】
前記一般式Iにおける元素Wの化学量論係数が0.75〜1.5であることを特徴とする、請求項1記載のシェル触媒。
【請求項4】
前記一般式Iにおける元素Vの化学量論係数が2.5〜3.5であることを特徴とする、請求項1記載のシェル触媒。
【請求項5】
前記一般式Iにおける元素Cuの化学量論係数が1.0〜1.5であることを特徴とする、請求項1記載のシェル触媒。
【請求項6】
前記中空円筒形担体が、3〜6mmの長さ、4〜8mmの外径及び1〜2mmの壁厚を有することを特徴とする、請求項1記載のシェル触媒。
【請求項7】
前記中空円筒形担体に施与された触媒活性酸化物材料のシェルの厚さが、10〜1000μm、又は10〜500μm、又は100〜500μm又は200〜300μmであることを特徴とする、請求項1記載のシェル触媒。
【請求項8】
固定触媒床を用いたアクロレインの気相接触酸化によるアクリル酸の製造法において、前記固定触媒床が請求項1からまでのいずれか1項記載のシェル触媒を包含することを特徴とする方法。
【請求項9】
アクロレインによる前記固定触媒床の負荷が50〜350Nl/l・h、又は135〜250Nl/l・hであることを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項10】
アクロレインからアクリル酸への不均一系触媒による気相部分酸化用の触媒としての、請求項1からまでのいずれか1項記載のシェル触媒の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明の対象は、2〜10mmの長さ、4〜10mmの外径及び1〜4mmの壁厚の中空円筒形担体並びに該担体の外側表面に施与された一般式I
Mo122〜40〜3Cu0.8〜1.510〜420〜40n (I)
[式中、可変部は、次の意味を有する:
1=アルカリ金属及びアルカリ土類金属の1種以上の元素;
2=Si、Al、Ti及びZrの群からの1種以上の元素;及び
n=酸素元素の化学量論係数であって、該化学量論係数は、Iにおける酸素とは異なる元素の化学量論係数並びにそれらの電荷数によって定められる]の触媒活性酸化物材料のシェルから成るシェル触媒(Schalenkatalysator)である。
【0002】
リング状担体並びに該担体の外側表面に施与された、少なくともMo、V及びCu元素を含む触媒活性酸化物材料のシェルからなるリング状シェル触媒が公知である(例えばEP−A714700、DE−A19927624及びDE−A10360057を参照されたい)。それらは、アクロレインからアクリル酸への不均一系触媒による気相部分酸化用の触媒として主に用いられる。その際に特徴的なのは、これらのリング状シェル触媒の全ての例示的な実施形態において、触媒活性酸化物材料中に含まれたCuのモル量(mCu)と触媒活性酸化物材料中に含まれたVのモル量(mV)から、R=mCu/mVとして表されたモル比Rが、少なくとも0.8であることである。
【0003】
しかしながら、係るリング状シェル触媒をアクロレインからアクリル酸への不均一系触媒による気相部分酸化用の触媒として用いた場合の欠点は、該触媒が、アクリル酸形成の選択率(SAS)に関してのみならず、その活性に関しても完全には満足することができるものではない点である。
【0004】
それゆえ本発明の課題は、リング状担体並びに該担体の外側表面に施与された、少なくともMo、V及びCu元素を含む触媒活性酸化物材料のシェルからの改善されたリング状シェル触媒を提供することであって、該シェル触媒は、殊にアクロレインからアクリル酸への不均一系触媒による気相部分酸化用の触媒として用いた場合に改善された選択率及びより高い活性を有する。
【0005】
それに従って、2〜10mmの長さ、4〜10mmの外径及び1〜4mmの壁厚の中空円筒形(リング状)の担体並びに該担体の外側表面に施与された一般式I
Mo122〜40〜3Cu0.8〜1.510〜420〜40n (I)
[式中、可変部は、次の意味を有する:
1=アルカリ金属及びアルカリ土類金属の1種以上の元素;
2=Si、Al、Ti及びZrの群からの1種以上の元素;及び
n=酸素元素の化学量論係数であって、該化学量論係数は、Iにおける酸素とは異なる元素の化学量論係数並びにそれらの電荷数によって定められる]の触媒活性酸化物のシェル触媒から成るリング状シェル触媒が提供される。
【0006】
本発明に従って好ましくは、一般式IにおけるW元素の化学量論係数は、0.2〜3、好ましくは0.5〜2、特に有利には0.75〜1.5である。
【0007】
V元素の一般式Iにおける化学量論係数は、本発明に従って、好ましくは2.5〜3.5である。
【0008】
Cu元素の一般式Iにおける化学量論係数は、本発明に従って、有利には1.0〜1.5である。
【0009】
1及びX2元素は、必ずしも一般式Iの触媒活性酸化物材料の構成成分である必要はない。
【0010】
2元素は、一般式Iの触媒活性酸化物材料内で希釈剤と同じように作用する。一般式Iの触媒活性酸化物中に該元素を組み込むことによって、その体積比活性を所望の水準に調整することができる。本発明に従って使用される一般式Iの触媒活性酸化物材料におけるX2の化学量論係数は、頻繁に0〜15である。特に有利には、本発明に従って用いられる一般式Iの触媒活性酸化物材料はX2元素を含まない。この内容は、触媒活性に適度の影響を及ぼすX1元素にも当てはめられる。それゆえ、本発明に従って使用される一般式Iの触媒活性酸化物材料におけるX1の化学量論係数は、0〜2、又は0〜1、又は0〜0.2であってよい。
【0011】
本発明に従って有利なシェル触媒は、3〜6mmの長さ、4〜8mmの外径及び1〜2mmの壁厚の中空円筒形担体並びに該担体の外側表面に施与された一般式Iの触媒活性酸化物のシェルから成る。極めて有利なのは、リング状(中空円筒形)の担体が7mm×3mm×4mm(外径×長さ×内径)の幾何学的形状を有する本発明に従ったシェル触媒である。
【0012】
本発明によるシェル触媒において中空円筒形担体に施与された触媒活性酸化物材料のシェルの厚さは、適用上、適切には一般に10〜1000μmである。有利には、本発明に従ったシェル触媒のこのシェル厚は、10〜500μm、特に有利には100〜500μm、極めて有利には200〜300μmである。
【0013】
好ましくは、シェルの厚さは、単独シェル触媒について見て可能な限り均一である。本発明に従ったシェル触媒の比較的大量の製造バッチが製造される場合、シェル触媒は、複数の個々のシェル触媒リング体について見ても同様に可能な限り均一である。
【0014】
本発明によるシェル触媒のリング状担体は、好ましくは化学的に不活性な材料から成る。そのことによって、該担体は、本発明に従ったシェル触媒によって触媒される気相反応の進行に本質的に干渉しない。該担体用の係る不活性材料として、本発明に従って、殊に酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、ケイ酸塩、例えば粘土、カオリン、ステアタイト、軽石、ケイ酸アルミニウム及びケイ酸マグネシウム、炭化ケイ素、二酸化ジルコン及び二酸化トリウムが考慮に入れられる(本発明に従って特に有利なのは、CeramTec社のC 220型のステアタイトのリング状担体である)。ここで、前述の材料は、有孔性又は無孔性であってよい。有利なのは、明らかに表面粗さが形成された担体である(例えばグリット層(Splittauflage)を有する中空円筒体)。
【0015】
本発明に従ったシェル触媒の製造は、種々の方法で行うことができる。
【0016】
例えば、まず一般式Iの触媒活性酸化物材料自体を製造することが可能である。通常、係る製造は、触媒活性酸化物材料の元素成分の適した供給源から、可能な限り均質な、好ましくは微細な、その化学量論比に相当する組成の乾燥混合物(前駆体材料)を作製し、かつ該材料を350〜600℃の温度でか焼(熱処理)することによって行われる。か焼は、不活性ガス下、酸化雰囲気、例えば空気(又は不活性ガスと酸素とからの他の混合物)下でも、並びに還元性雰囲気(例えば不活性ガスと還元性ガス、例えばH2、NH3、CO、メタン及び/若しくはアクロレインとからの混合物、又はここに挙げた還元性作用を示すガスそれ自体)下でも実施されることができる。結果生じる触媒活性は、か焼雰囲気の酸素含有率に応じて、一般に最も有効なものを示す。好ましくは、か焼雰囲気の酸素含有率は、0.5〜10体積%、特に有利には1〜5体積%である。前述の境界値を上回る値及び下回る値は、結果生じる触媒活性を通常低下させる。か焼継続時間は、数分〜数時間であってよく、かつ普通は、か焼温度の高さとともに短くなる。本発明に従って良く適したか焼法を、例えばWO95/11081が記載している。
【0017】
一般式Iの触媒活性酸化物材料の元素成分の供給源として、すでに酸化物である化合物及び/又は少なくとも酸素の存在下で加熱することによって酸化物に変換可能な化合物が考慮に入れられる。出発化合物(供給源)の完全混合は、乾式又は湿式で行ってよい。これが乾式で行われる場合、出発化合物は、適切には微細な粉末として用いられ、かつ混合及び場合により圧縮後に、か焼に供される。好ましくは、完全混合は湿式で行われる。通常、その際、出発化合物が水溶液及び/又は水性懸濁液の形で互いに混合される。特に均質な乾燥混合物が、もっぱら溶解した形で存在する元素成分の供給源から開始される場合に、上記混合法において得られる。
【0018】
溶媒として、有利には水が用いられる。引き続き、得られた液状(例えば水性)の材料が乾燥させられ、その際、乾燥プロセスは、好ましくは液状(例えば水性)の混合物を100〜150℃の出口温度で噴霧乾燥することによって行われる。乾燥ガス流は、適用上、適切には空気又は分子窒素である。
【0019】
か焼後に得られた触媒活性酸化物材料は、引き続き、例えば粉砕することによって微細な粉末に変えられ、該粉末は、次いで液状バインダーを用いて担体の外側表面に施与されることができる。担体の表面に施与される触媒活性酸化物材料の細度は、その際、自明のことながら所望のシェル厚さに合わせられる。
【0020】
例えば、担体は、液状バインダーで、例えば噴霧することによって制御して湿らされ、かつ、そのようにして湿らされた担体に、微細な触媒活性酸化物材料が振りかけられる(例えばEP−A714700を参照されたい)。引き続き、付着液体が、活性酸化物材料でコーティングされた湿らされた担体から少なくとも部分的に除去される(例えば高温ガスを導入することによって;WO2006/094766を参照されたい)。しかし、EP−A714700の中で先行技術として認められた他の全ての方法も本発明によるシェル触媒の製造のために適用することができる。液状バインダーとして、例えば水及び水溶液が考慮に入れられる。
【0021】
原則的に、しかし、本発明によるシェル触媒の製造のために、担体の表面にまず微細な前駆体材料を施与し、そして一般式Iの触媒活性酸化物材料を得るための該前駆体材料のか焼を、あとになって初めて、すなわち、すでに担体の表面上に存在する状態で実施するように行ってもよい。
【0022】
本発明に従って有利には、本発明による触媒は、EP−A714700に記載され、また例示的に挙げられた製造法に則って作製される。水75質量%とグリセリン25質量%からの水溶液が、有利なバインダーである。触媒活性酸化物材料の前駆体材料の熱処理の方法は、本発明に従って、好ましくは、DE−A10360057に記載され、また例示的に挙げられた処理法に則って実施する。その際、DE−A10360057におけるものと同じ元素成分の供給源が用いられるが、しかしながら、本発明に従った化学量論組成に相当する量比にある。本発明に従って有利な、一般式Iの触媒活性酸化物材料を中空円筒形担体の表面に施与する方法は、DE−A10360057の実施例1及び2に同様に記載されている。
【0023】
全体として、本発明によるシェル触媒の製造は、極めて有利には、DE−A10360057の実施例1及び2に記載されているように行われる。元素成分Cuの供給源として、本発明による触媒の製造のために、殊に硫酸銅(II)五水和物、硝酸銅(II)水和物(Cu含有率=26.1質量%)及び酢酸銅(II)一水和物が考慮に入れられ、それらの中で酢酸銅(II)一水和物が有利である。メタバナジン酸アンモニウムは、有利なバナジウム源であり、かつパラタングステン酸アンモニウム七水和物は、有利なタングステン源である。Mo源として、適用上、適切にはヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物が使用される。その他の点では、酸化物以外の元素成分の供給源として、極めて一般的に、なかでもハロゲン化物、硝酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、炭酸塩及び水酸化物が考慮に入れられる。
【0024】
本発明によるシェル触媒(殊にこの明細書中で例示的に製造された全てのシェル触媒)は、殊にアクロレインからアクリル酸への不均一系触媒による気相部分酸化用の触媒として適しており、かつ、その際、アクリル酸形成の改善された選択率SASによって及び高められた活性によって殊に際立っている。
【0025】
この背景から、本発明によるシェル触媒は、なかでも、触媒装入物への高いアクロレイン負荷(例えば≧135Nl/l・h〜350Nl/l・hまで若しくは250Nl/l・hまで)にて実施されるアクロレインからアクリル酸への部分酸化の場合に特に良く適している。しかし、自明のように、該触媒は、≧50Nl/l・hの相応するアクロレイン負荷量でも用いられることができる。
【0026】
ここで、負荷という用語は、DE−A19927624で定義されているように用いられる。
【0027】
好ましくは、アクロレインからアクリル酸への部分酸化はまた、本発明によるシェル触媒を使用しながら、触媒装入物のアクロレイン負荷を高めることにより、DE−A19927624に若しくはDE−A10360057に記載されているように実施される。その際、本発明に従って好ましくは、触媒装入物は、固定触媒床の体積比活性が反応ガス混合物の流れ方向に向かって増大する(好ましくは、不活性希釈成形体を有する本発明によるシェル触媒の希釈度を減少させることによって)ように形作られている。
【0028】
アクロレインからアクリル酸への不均一系触媒による気相部分酸化を実施するための反応器として、適用上、適切には管形反応器が用いられ、その反応管には固定触媒床が充填されている(DE−A19927624を参照されたい)。本発明によるシェル触媒を管形反応器の管内に導入する場合、目的に合わせて、DE−A102007028333の教示並びにWO2006/094766の教示に従う。
【0029】
アクリル酸形成の選択率(SAS(モル%))は、本明細書中では、
と解される(固定触媒床への反応ガス混合物の一回の通過をそのつど基準とした変換値)。
【0030】
他の点では変わらない反応条件下で、より低い温度で同じ変換率をもたらす活性材料(触媒)は高い活性を有する。
【0031】
アクロレインの変換率UA(モル%)は、相応して:
として定義されている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】材料温度の測定プロファイル(縦軸として℃)を、か焼時間(横軸として時間(h))との関係において示す図
図2】粉砕された触媒活性酸化物材料粉末の粒子の粒径分布を示す図
【0033】
実施例及び比較例
A)シェル触媒の製造
比較例1A
触媒活性酸化物材料Mo1231.2Cu2.4nを有するリング状シェル触媒V1A
【0034】
硫酸銅(II)五水和物(Cu含有率=25.6質量%)259gを、1時間以内に70℃で、水2000gに溶かして溶液Iを得た。
【0035】
水7000gに、15分以内に95℃で、順々にパラタングステン酸アンモニウム七水和物135g(W含有率=71質量%)、メタバナジン酸アンモニウム153g(V含有率=43.5質量%)及びヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物920g(Mo含有率=54.5質量%)を溶かして溶液IIを得た。引き続き、この溶液IIを、3分以内に98℃に加熱した。その後、70℃の温度の溶液Iを、98℃の温度の溶液IIに、5分以内で徐々に撹拌導入した。その際に生じる水性懸濁液は95℃の温度を有しており、そしてこの温度で5分さらに撹拌した。引き続き該懸濁液を、330℃の入口温度及び106℃の出口温度にて空気流中で2時間以内に噴霧乾燥した(NIRO社の噴霧塔、噴霧ヘッドNo.F0 A1)。噴霧乾燥の間、そのつどまだ噴霧されていない懸濁液分を95℃に保ちながら撹拌し続けた。25℃に冷却された結果生じる噴霧粉末900gを、50質量%の酢酸水溶液180g及びさらに加えて水170g(どちらも25℃の温度を有する)と、ZS1−80型のWerner & Pfleiderer社の混練機を用いて練った(混練時間:約2時間;混練温度30〜35℃)。
【0036】
引き続き、混練物を2cmの層厚で、空気循環式乾燥庫内で16時間にわたり110℃の温度にて乾燥させた。
【0037】
乾燥庫から取り出した前駆体材料700gを、回転管炉内で不連続的にか焼した。回転炉は、162cmの長さの炉と、この炉を通過する長さ209cmの回転管とから成っていた。回転管の内径は12.5cmであった。回転管の上方及び下方の23.5cmは炉から突き出ていた。か焼(冷却を含む)全体にわたって、回転管に、空気と分子窒素の混合物から成り、かつ、その分子酸素の含有率が1.9体積%である240Nl/h(Nlは、25℃及び1barを基準とする)のガス流を通した。ガス流は、25℃の温度で回転管に供給した。回転管自体はステンレス鋼製であり、かつ水平面に対する回転管の傾斜角は1.7°であった。回転管は1回転/分で回転させた。保持グリッドは、か焼物を回転管の全長の4分の1の長さで真ん中に保持していた。
【0038】
か焼の枠内で、前駆体材料をまず、1時間と15分以内に25℃からほぼ直線的に300±2℃の材料温度に加熱し、次いで45分以内にほぼ直線的に350±2℃の材料温度に加熱し、引き続き30分以内にほぼ直線的に362±2℃の材料温度に加熱した。続く2時間と35分のあいだずっと、この材料温度を保った。次いで、前駆体材料を25分以内にまず、ほぼ直線的に395±2℃の温度に加熱し、それに続けてさらに10分以内に、ほぼ直線的に400±2℃の材料温度に加熱し、この温度でさらに1時間と45分のあいだずっと保ち、次いで炉を停止することによって、並びに約13時間にわたって回転管の回転を保ちながら44±2℃に冷却し、そして、この温度で該回転管から取り出した。図1は、材料温度の測定プロファイル(縦軸として℃)を、か焼時間(横軸として時間(h))との関係において示している。
【0039】
回転炉から取り出した触媒活性材料を、引き続きRetsch社の粉砕機ZM 200中で微細な粉末へと粉砕し、該粉末粒子の50%はメッシュ幅1〜10μmの篩を通過し、そして最長寸法が50μmを上回る粒子の数の割合は1%未満であった。
【0040】
この明細書の比較例及び実施例にとっての好都合な前述の粉砕された触媒活性酸化物材料粉末の粒子の粒径分布を、この出願の図2は示す(横軸は対数プロットにおいて(対数目盛りにおいて)粒径(粒子寸法)をμmで示し、かつ縦軸はそのつど関連した粒子の累積率を体積%で示す(分布曲線上の1個の点の縦軸値は、横軸上のこの点に割り当てられた粒子寸法又はより小さい粒子寸法を有する粒子から成る全粒子体積のX%を示す;すなわち、全粒子体積の(100−X)%は、より大きい粒子寸法(より大きい粒径)を有する粒子から成る。ここでベースとなる測定法は、レーザー回折法である。その際、そのつどの微細な粉末は、分散溝により乾式分散器Sympatec RO−DOS(Sympatec GmbH,System−Partikel−Technik,Am Pulverhaus 1,D−38678 Clausthal−Zellerfeld)に通し、そこで圧縮空気により乾燥分散させ、かつ自由噴流において測定セル内に吹き込む。このセル内で、それからISO 13320に従ってレーザー回折分光計Malvern Matersizer S(Malvern Instruments,Worcestershire WR14 1AT,United Kingdom)を用いて、体積基準の粒径分布を測定する(オブスキュレーション値3〜7%)。測定中の乾燥粉末の分散の強度が、プロペラントガスとして用いられた圧縮空気の用いられた分散圧力(図2:四角形=1.2bar;×印=2.0bar;三角形=3.5bar;それぞれ絶対圧力として)を決定する。
【0041】
粉砕された触媒活性酸化物材料で、EP−B714700のS1に記載されているように、リング状担体(外径7mm、長さ3mm、内径4mm、45μmの表面粗さRz(グリット層)を有するCeramTec社のステアタイトC 200)をコーティングした。担体材料の体積を基準とした担体の全細孔体積は≦1体積%であった。バインダーは、水75質量%とグリセリン25質量%とからなる水溶液であった。コーティングは、担体で満たされていた回転式コーティングドラム(内径=25.5cm;36rpm)内で行った。約60mLの液状バインダーを、ノズル(ノズル径=1mm)を介して60分以内に担体上に噴霧した(正確なバインダー量は、そのつど、癒合物(Zwillingen)が形成せず、しかし、すべての粉末量が担体の表面上で、粉末凝集が起こらずに取り込まれるように量定した)。同時に、同じ時間で、粉砕された触媒活性酸化物材料粉末205gを連続的に計量供給した。コーティングの間に、供給された粉末を完全に担体の表面上に取り込んだ。微細な酸化物活性材料の凝集は観察されなかった。
【0042】
引き続き、コーティングされたリングを、空気循環式乾燥庫内で300℃の温度で2時間保持した(除湿した)。
空気循環式乾燥庫から取り出したシェル触媒は、その全質量を基準として、約20質量%の酸化物活性材料割合を有していた。活性材料のシェル厚さは150〜250μmであった。
【0043】
比較例V2A
触媒活性酸化物材料Mo1231.2Cu2.4nを有するリング状シェル触媒V2Aの製造をV1Aと同じように行ったが、しかしながら、硫酸銅(II)五水和物259gの代わりに、硝酸銅(II)水和物255g(Cu含有率=26.1質量%)をCu源として使用した。
【0044】
比較例V3A
触媒活性酸化物材料Mo1231.2Cu2.4nを有するリング状シェル触媒V3Aの製造をV1Aと同じように行ったが、しかながら、硫酸銅(II)五水和物259gの代わりに、酢酸銅(II)一水和物210g(Cu含有率=31.7質量%)をCu源として使用した。
【0045】
実施例1A
触媒活性酸化物材料Mo1231.2Cu1.2nを有するリング状シェル触媒A1Aの製造をV1Aと同じように行ったが、しかながら、硫酸銅(II)五水和物134.0g、パラタングステン酸アンモニウム七水和物139.7g、メタバナジン酸アンモニウム158g及びヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物950gを用いた。
【0046】
実施例2A
触媒活性酸化物材料Mo1231.2Cu1.2nを有するリング状シェル触媒A2Aの製造をV2Aと同じように行ったが、しかながら、硝酸銅(II)三水和物127.3gをCu源として用いた。
【0047】
実施例3A
触媒活性酸化物材料Mo1231.2Cu1.2nを有するリング状シェル触媒A3Aの製造をV3Aと同じように行ったが、しかながら、酢酸銅(II)一水和物104.8gをCu源として用いた。
【0048】
B)アクロレインからアクリル酸への不均一系触媒による気相部分酸化用の触媒としてのシェル触媒V1A〜A3Aの試験
反応管(V2A鋼;外径30mm;壁厚2mm;内径26mm;長さ440cm;反応管断面の真ん中に位置決めされ、かつ反応管に沿って導かれた熱電対を収容するための熱管(外径4mm))を下から上に向かってそのつど以下のように装填した:
セクション1:長さ25cm
固定触媒床を収容するためのV2A鋼製の触媒担持体;
セクション2:長さ55cm
4〜5mmの直径を有するステアタイトボール(CeramTec社のステアタイトC220)からの予備層;
セクション3:長さ100cm
7mm×3mm×4mm(外径×長さ×内径;CeramTec社のステアタイトC220)の形状のステアタイトリング30質量%とそのつどのシェル触媒70質量%とから成る均質な混合物からの固定触媒床層
セクション4:長さ200cm
セクション3でそのつど用いられたシェル触媒からもっぱら成る触媒床層;
セクション5:60cmの空の管。
【0049】
前で述べたそのつどの装填した反応管によって、下から上に向かって反応管を流れるように反応ガス混合物を通し、該混合物は以下の含有率を有していた:
アクロレイン 4.6体積%、
プロペン 0.1体積%、
アクリル酸 0.2体積%、
2 5.4体積%、
CO及びCO2 1.6体積%、
2 81.9体積%及び
2O 6.2体積%。
【0050】
反応ガス混合物の供給温度(反応管内への入口)は210℃であり、かつアクロレインによる固定触媒床の負荷(DE−A19927624で定義される通り)は85Nl/l・hであった。
【0051】
反応管の調温は、該管の長さにわたって(セクション1における管の最後の20cm及びセクション5における空の管の60cmを除く)そのつど、ポンプ循環されずに、分子窒素を用いて気泡ポンプの原理に従って全体的にバブリングされ、かつ外側から電気的に加熱された、そのつど必要とされる塩浴温度TB(℃)を時間及び管の長さにわたって常に有する塩浴によって行った(硝酸カリウム53質量%、硝酸ナトリウム40質量%及び硝酸ナトリウム7質量%、融解塩220kg)。該塩浴中に25℃の温度で下からバブリング導入した窒素流は300Nl/hであった(バブリングは、塩浴の断面にわたって均一に分布した6つのノズルを介してノズル1個当たり50Nl/hで行った)。塩浴温度TB(℃)は、いずれの場合も、固定触媒床を反応ガス混合物が1回通過することを基準として約99.5モル%のアクロレイン変換率が生じるように調整した。反応管に沿って、付加的な加熱の結果として塩浴温度が変化することはなかった(反応管から塩浴に伝わる熱より多量の熱が塩浴から放出された)。
【0052】
以下の表1は、そのつど用いたシェル触媒に応じて100時間の運転時間後にもたらされる結果を示す:
【表1】
【0053】
表1に示された結果は、使用したCu源とは無関係に、化学量論組成Mo1231.2Cu2.4nと比較した触媒活性酸化物材料の化学量論組成Mo1231.2Cu1.2nが、際立って高いアクリル酸形成の選択率をもたらすことを示す。
【0054】
そのうえまた、表1における結果は、酢酸銅(II)一水和物がCu源として用いられる場合に最良のSAS値が得られることを示す。
【0055】
その他の点では、本発明によるシェル触媒は、比較的高められた活性を示す。
【0056】
C)シェル触媒の製造
比較例1B
【0057】
触媒活性酸化物材料Mo1231.2Cu0.6nを有するリング状シェル触媒V1B
酢酸銅(II)一水和物23.9g(Cu含有率=31.7質量%)を、水1600g中で25℃にて撹拌しながら溶解して溶液Iを得た。
【0058】
90℃の温度の水3780gに、5分以内にヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物420g(Mo含有率=54.5質量%)を溶解した。引き続き、90℃を保持しながらメタバナジン酸アンモニウム69.1g(V含有率=43.5質量%)を添加し、そして結果生じる溶液を90℃でさらに30分間撹拌し続けた。その後、パラタングステン酸アンモニウム七水和物61.8g(W含有率=71質量%)を添加し、そして結果生じる溶液IIを90℃で40分間さらに撹拌した。引き続き、この溶液IIを10分以内に80℃に冷却した。
【0059】
25℃の温度の溶液Iを、5分以内に80℃の温度の溶液IIに撹拌導入した。結果生じる混合物は75℃の温度を有していた。次いで、温度25℃の25質量%のNH3水溶液765gを、15分以内に75℃の温度の該混合物に添加した。ここで生じる水溶液は79℃の温度を有しており、そして該水溶液を2分以内に80℃に加熱し、かつ、この温度で10分間さらに撹拌した。この溶液を、引き続き350℃の入口温度及び120℃の出口温度で2時間以内に空気流中で噴霧乾燥した(NIRO社の噴霧塔、噴霧ヘッドNo.F0 A1)。噴霧乾燥中、そのつどまだ噴霧されていない懸濁液分を80℃に保ちながら撹拌し続けた。
【0060】
25℃に冷却された結果生じる噴霧粉末900gを、いずれも25℃の温度を有する50質量%の酢酸水溶液180g及び付加的な水90gと、ZS1−80型のWerner & Pfleiderer社の混練機を用いて練った(混練時間:約2時間;混練温度30〜35℃)。
【0061】
引き続き、混練物を約2cmの層厚で、空気循環式乾燥庫内で16時間にわたり110℃の温度にて乾燥した。
【0062】
乾燥庫から取り出した前駆体材料700gを、回転管炉内でか焼した。回転炉は、162cmの長さの炉と、この炉を通過する長さ209cmの回転管とから成っていた。回転管の内径は12.5cmであった。回転管の上方及び下方の23.5cmは炉から突き出ていた。か焼(冷却を含む)全体にわたって、回転管に、空気と分子窒素の混合物から成り、かつ、その分子酸素の含有率が2.2体積%である240Nl/h(Nlは、25℃及び1barを基準とする)のガス流を通した。ガス流は、25℃の温度で回転管に供給した。回転管自体はステンレス鋼製であり、かつ水平面に対する回転管の傾斜角は1.7°であった。回転管は1回転/分で回転させた。保持グリッドは、か焼物を回転管の全長の4分の1の長さで真ん中に保持していた。
【0063】
か焼の枠内で、前駆体材料をまず、1時間と15分以内に25℃からほぼ直線的に300±2℃の材料温度に加熱し、次いで45分以内にほぼ直線的に350±2℃の材料温度に加熱し、引き続き30分以内にほぼ直線的に362±2℃の材料温度に加熱した。続く2時間と35分のあいだずっと、この材料温度を保った。次いで、前駆体材料を25分以内にまず、ほぼ直線的に395±2℃の温度に加熱し、それに続けてさらに10分以内に、ほぼ直線的に400±2℃の材料温度に加熱し、この温度でさらに1時間と45分のあいだずっと保ち、次いで炉を停止することによって、並びに約13時間にわたって回転管の回転を保ちながら44±2℃に冷却し、そして、この温度で該回転管から取り出した。図1は、材料温度の測定プロファイルを、か焼時間との関係において示している。
【0064】
回転炉から取り出した触媒活性酸化物材料を、引き続きRetsch社の粉砕機ZM 200中で微細な粉末へと粉砕し、該粉末粒子の50%はメッシュ幅1〜10μmの篩を通過し、そして最長寸法が50μmを上回る粒子の数の割合は1%未満であった。
【0065】
粉砕された触媒活性酸化物材料で、EP−B714700のS1に記載されているように、リング状担体(外径7mm、長さ3mm、内径4mm、45μmの表面粗さRz(グリット層)を有するCeramTec社のステアタイトC 200)をコーティングした。担体材料の体積を基準とした担体の全細孔体積は≦1体積%であった。バインダーは、水75質量%とグリセリン25質量%とからなる水溶液であった。コーティングは、担体で満たされていた回転式コーティングドラム(36rpm)内で行った。約90mLの液状バインダーを、ノズル(ノズル径=1mm)を介して60分以内に担体上に噴霧した(正確なバインダー量は、そのつど、癒合物が形成せず、しかし、すべての粉末量が担体の表面上で、粉末凝集が起こらずに取り込まれるように量定した)。同時に、同じ間隔で、粉砕された触媒活性酸化物材料粉末205gを振動シュートを介してアトマイザーノズルの噴霧コーンの外側で連続的に計量供給した。コーティングの間に、供給された粉末を完全に担体の表面上に取り込んだ。微細な酸化物活性材料の凝集は観察されなかった。
【0066】
引き続き、コーティングされたリングを、空気循環式乾燥庫内で300℃の温度で2時間保持した(除湿した)。
空気循環式乾燥庫から取り出したシェル触媒は、その全質量を基準として、約20質量%の酸化物活性材料割合を有していた。活性材料のシェル厚さは150〜250μmであった。
【0067】
比較例2B
触媒活性酸化物材料Mo1231.2Cu1.8nを有するリング状シェル触媒V2Bの製造をV1Bと同じように行ったが、しかしながら、酢酸銅(II)一水和物23.9g(Cu含有率=31.7質量%)の代わりに71.8gを使用した。
【0068】
比較例3B
触媒活性酸化物材料Mo1231.2Cu2.4nを有するリング状シェル触媒V3Bの製造をV1Bと同じように行ったが、しかながら、酢酸銅(II)一水和物23.9g(Cu含有率=31.7質量%)の代わりに96.6gを使用した。
【0069】
実施例1B
触媒活性酸化物材料Mo1231.2Cu1.2nを有するリング状シェル触媒A1Bの製造をV1Bと同じように行ったが、しかながら、酢酸銅(II)一水和物23.9g(Cu含有率=31.7質量%)の代わりに酢酸銅(II)一水和物47.8gを用いた。
【0070】
D)アクロレインからアクリル酸への不均一系触媒による気相部分酸化用の触媒としてのシェル触媒V1B〜V3B並びにA1Bの試験
反応管(V2A鋼;外径30mm;壁厚2mm;内径26mm;長さ464cm)を上から下に向かってそのつど以下のように装填した:
セクション1:長さ80cm
空の管;
セクション2:長さ60cm
7mm×3mm×4mm(外径×長さ×内径;CeramTec社のステアタイトC 220)の形状のステアタイトリングからの予備層;
セクション3:長さ100cm
7mm×3mm×4mm(外径×長さ×内径;CeramTec社のステアタイトC 220)の形状のステアタイトリング20質量%とそのつどのシェル触媒80質量%とから成る均質な混合物からの固定触媒床層
セクション4:長さ200cm
セクション3でそのつども用いられたシェル触媒からもっぱら成る触媒床材料;
セクション5:長さ10cm
セクション2におけるのと同じステアタイトリングからの下流層
セクション6:長さ14cm
固定触媒床を収容するためのV2A鋼からの触媒担持体。
【0071】
前で述べたそのつどの装填した反応管によって、上から下に向かって反応管を流れるように反応ガス混合物を通し、該混合物は以下の含有率を有していた:
アクロレイン 4.25体積%、
プロペン 0.3体積%、
プロパン 0.2体積%、
アクリル酸 0.3体積%、
2 5.15体積%、
CO及びCO2 0.5体積%、
2O 7体積%及び
2 82.3体積%。
【0072】
反応ガス混合物の供給温度(反応管内への入口)は210℃であり、かつアクロレインによる固定触媒床の負荷(DE−A19927624で定義される通り)は80Nl/l・hであった。
【0073】
反応管の周りを、その長さにわたって(セクション1における空の管の最後の10cm及びセクション6における管の最後の3cmを除く)そのつど、撹拌され、かつ外側から電気的に加熱された塩浴(硝酸カリウム53質量%、硝酸ナトリウム40質量%及び硝酸ナトリウム7質量%、融解塩50kg)で洗った(管内の流速は3m/sであった)。塩浴温度TB(℃)(該温度で塩浴を供給した)は、いずれの場合も、固定触媒床を反応ガス混合物が1回通過することを基準として約99.3モル%のアクロレイン変換率が生じるように調整した。反応管に沿って、付加的な加熱の結果として塩浴温度が変化することはなかった(反応管から塩浴に放出される熱より多量の熱が塩浴から発せられた)。
【0074】
以下の表2は、用いられたシェル触媒に応じて100時間の運転時間後にもたらされる結果を示す:
【表2】
【0075】
表2に示された結果は、化学量論組成Mo1231.2Cu1.2nが最も高い活性を有することを示していた。同時に、この化学量論組成は、得られた目標生成物の選択率に関して最高値にある。
【0076】
E)シェル触媒の製造
比較例1C
触媒活性酸化物材料Mo1231.2Cu2.4nを有するリング状シェル触媒V1Cの製造を、比較例3Bと同じように行った。しかしながら、か焼全体にわたって回転管を通過したガス流は、分子酸素を2.2体積%ではなく2.6体積%含有するという点で異なっていた。
【0077】
実施例1C
触媒活性酸化物材料Mo1231.2Cu1.2nを有するリング状シェル触媒A1Cの製造を、実施例1Bと同じように行った。しかしながら、か焼全体にわたって回転管を通過したガス流は、分子酸素を2.2体積%ではなく2.6体積%含有するという点で異なっていた。
【0078】
F)アクロレインからアクリル酸への不均一系触媒による気相部分酸化用の触媒としてのシェル触媒V1C〜A1Cの試験
試験は、B)と同じように行った。しかしながら、下から反応管を流れる反応ガス混合物の含有率は以下の通りであった:
アクロレイン 4.6体積%、
プロペン 0.1体積%、
アクリル酸 0.3体積%、
2 5.6体積%、
CO及びCO2 1.3体積%、
2 82.1体積%及び
2O 6.0体積%。
【0079】
アクロレインによる固定触媒床の負荷(DE−A19927624で定義される通り)は84Nl/l・hであった。
【0080】
以下の表3は、そのつど用いたシェル触媒に応じて100時間の運転時間後にもたらされる結果を示す:
【表3】
【0081】
顕著にも、シェル触媒A1Cを使用した場合の熱管内で、反応ガス混合物の流れ方向における該熱管に沿って、熱電対を用いて測定された温度は、2つの温度極大を示す。第一の温度極大は287℃であり、かつ装填セクション3において"反応管下端から150cm"の位置にある。第二の温度極大は291℃であり、かつ装填セクション4において"反応管下端から210cm"の位置にある。
【0082】
それとは異なり、シェル触媒V1Cを使用した場合の熱管内で、流れ方向における該熱管に沿って、熱電対を用いて測定された温度も、同様に2つの温度極大を示す。しかしながら、第一の温度極大は、(流れ方向に向かって)この場合290℃であり、かつ第二の温度極大は、287℃である(温度極大の位置は、シェル触媒A1Cを用いた場合と同じ箇所にある)。シェル触媒A1Cの使用に際して、この場合、反応ガス混合物の流れ方向における第二の温度極大がより高い温度を有するにも関わらず、より高い目標生成物の選択率が生じることは驚くべきことである。
【0083】
シェル触媒A1Cの場合に、他は同じ運転条件下で、
アクロレイン 5体積%、
プロペン 0.1体積%、
アクリル酸 0.4体積%、
2 5.5体積%、
CO及びCO2 1.4体積%、
2 80.9体積%及び
2O 6.7体積%
の反応ガス混合物組成にて、アクロレインによる固定触媒床の負荷を104Nl/l・hに高めた場合、100時間の運転時間後に以下の結果が得られた:
【表4】
【0084】
この場合も、熱管内で"反応管下端から150cm"及び"反応管下端から210cm"の位置にて温度極大が存在する。その時、流れ方向における第一の温度極大は302℃であり、かつ、その時、流れ方向における第二の温度極大は294℃である。
【0085】
これらの結果は、化学量論組成Mo1231.2Cu1.2nが、比較的高められたアクロレイン負荷の場合ですら、比較的アクロレイン負荷が少ない化学量論組成Mo1231.2Cu2.4nの時より一層高いアクリル酸形成の選択率を保証することを示している。
【0086】
2010年4月28日に提出されたUS仮特許出願番号61/328,670及び2010年6月10日に提出されたUS仮特許出願番号61/353,230が、文献参照によって本出願に組み込まれる。
【0087】
上記の教示に鑑みて、本発明の多数の変更及び逸脱が可能である。それゆえ、本発明は、付随した特許請求の範囲の枠内で、当該明細書に具体的に記載されたものとは異なって実施されることができるものと見なすことができる。
図1
図2