【実施例】
【0051】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。
【0052】
[実施例・比較例]
本発明に係るフリーズドライ醤油の原材料として、濃口醤油と醤油諸味を用いた。さらに、本発明に係るフリーズドライ醤油の原材料である賦形剤として市販の馬鈴薯澱粉を用いた。なお、濃口醤油及び醤油諸味は、何れもキッコーマン株式会社製である。以下、全ての実施例、比較例では、これらの濃口醤油、醤油諸味、馬鈴薯澱粉を用いた。
【0053】
容器に、濃口醤油、醤油諸味及び馬鈴薯澱粉を入れ、混和して混合物を製造した。各原材料の割合は表1の通りである。なお、醤油諸味や濃口醤油が「0」である場合は、醤油諸味又は濃口醤油を用いていないことを表している。
【0054】
【表1】
【0055】
系列1に係る各実施例・比較例は、澱粉を用いずに、醤油諸味と濃口醤油の配合量を変えたものである。系列2に係る各実施例・比較例は、澱粉を10g用い、醤油諸味と濃口醤油の配合量を変えたものである。系列3に係る各実施例・比較例は、澱粉を20g用い、醤油諸味と濃口醤油の配合量を変えたものである。系列4に係る各実施例・比較例は、醤油諸味と濃口醤油の配合量を一定にし、澱粉の配合量を変えたものである。系列5に係る各実施例は、醤油諸味、濃口醤油、澱粉の配合量を変えたものである。
【0056】
[試験例1]
表1に示した配合の混合物を凍結乾燥させた。具体的には共和真空技術株式会社製RLE−103を用いて、混合物を、マイナス40℃、0.1Torrに減圧した雰囲気下で24時間放置することで水分を昇華させ、凍結乾燥したフリーズドライ醤油を製造した。
【0057】
各実施例・比較例に係るフリーズドライ醤油に含まれる食物繊維及び塩分の含有量を計算した。この結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
表2に示す各項目である「総固形分量」、「食物繊維」、「塩分」は、それぞれ各実施例・比較例に係るフリーズドライ醤油の固形分の重量、食物繊維の重量、塩分の重量を表している。「総固形分量」は、フリーズドライに使用する醤油諸味、濃口醤油、澱粉の固形分量を合算して算出した。各原料の固形分は水分を蒸発乾固させて測定した。「食物繊維」、「塩分」は、各原料の栄養成分分析の結果を元に算出した。「FD醤油中の食物繊維」は、フリーズドライ醤油に含まれる食物繊維の含有量[質量%]、すなわち、総固形分量に対する食物繊維の割合である。同様に、表2の項目である「FD醤油中の塩分」は、フリーズドライ醤油に含まれる塩分の含有量[質量%]、すなわち、総固形分量に対する塩分の割合である。
【0060】
各実施例・比較例に係るフリーズドライ醤油について、性状、食感、味の評価を行った。この結果を表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
表3に示すように、系列1については、実施例1−1が、フリーズドライ醤油としての構造を保ち、味としても良好なものであった。比較例1−1については、フリーズドライ醤油としての構造は保たれるものの、醤油の味からは離れたものであった。比較例1−2〜1−4については、ふわふわとし、ベタベタとした食感であり良好なものではなかった。
【0063】
系列2については、実施例2−2〜2−5の何れについても、サクサクとした食感を有し、醤油本来の風味のあるフリーズドライ醤油が得られた。実施例2−1については、粉っぽく、諸味の味がするものの、サクサクとしたフリーズドライ醤油であった。比較例2−1については、フリーズドライ醤油としての構造は保たれるものの、醤油の味からは離れたものであった。比較例2−2についても、食感がもろく、しょっぱいフリーズドライ醤油であった。
【0064】
系列3については、何れの比較例3−1〜3−6も、もろい食感であり、醤油の風味が弱いものであった。
【0065】
系列4については、何れの実施例4−1〜4−5も、サクッとした食感を有し、醤油の風味が感じられるものであった。比較例4−1については、醤油の風味が弱いものであった。
【0066】
系列5については、何れの実施例5−1〜5−4も、サクッとした食感を有し、醤油の風味が感じられるものであった。
【0067】
図1に、各実施例・比較例に係るフリーズドライ醤油の食物繊維及び塩分の含有量と、食感・味の評価とをプロットしたグラフを示す。
【0068】
同図に示すように、フリーズドライ醤油に含まれる塩分の含有量が32質量%以上44質量%以下であり、食物繊維の含有量が1質量%以上4.4質量%以下であるならば(表3の実施例1−1、実施例2−1〜2−5、実施例4−1〜4−5、実施例5−1〜5−4)、何れも、フリーズドライ醤油としての構造を保ち、かつ醤油本来の風味を有するフリーズドライ醤油を得ることができる。
【0069】
[試験例2]
以下、本発明に係るフリーズドライ醤油を用いた醤油含有調味料について具体的に説明する。
【0070】
本発明の原材料である食用油として菜種サラダ油(ボーソー油脂株式会社製。以下、全ての実施例、比較例で用いられる食用油は同社製である)を用いた。
【0071】
フリーズドライ醤油の原料として、濃口醤油、醤油諸味(何れもキッコーマン食品株式会社製。以下、全ての実施例、比較例で用いられる醤油、醤油諸味は同社製である。)、賦形剤として市販の澱粉を用いた。醤油諸味は50質量%、濃口醤油は50質量%とした。澱粉は醤油諸味及び醤油に対して外割で10質量%とした。これらの原材料を混和したものを、マイナス40℃、0.1Torr減圧下で凍結乾燥させることによりフリーズドライ醤油を製造した。
【0072】
このように製造したフリーズドライ醤油を、所定の大きさの粒径に粉砕した。そして、目開きがそれぞれ1mm、1.8mm、3.36mm、5mm、7mm、10mmである網状の篩にフリーズドライ醤油を載せて振動させ、各篩を通過したもの、又は通過せずに篩の上に残ったものに分級した。1mm目開きの篩を通過したフリーズドライ醤油を「1mmパス」、1mm目開きの篩を通過せずに篩上に残ったフリーズドライ醤油を「1mmオン」のように表記する。その他の目開きについても同様とする。
【0073】
各篩をオン又はパスするかによって、フリーズドライ醤油を粒径ごとに分級した。例えば、1mmオンであり、かつ1.8mmパスのように分級した。この場合、フリーズドライ醤油は、1mm以上1.8mm以下の粒径である。以後、このように粒径で分級されたフリーズドライ醤油を「1mmオン〜1.8mmパス」のように表記する。このように分級した各フリーズドライ醤油を食用油に混ぜて醤油含有調味料を製造した。本試験例では、水分は添加していない。なお、フリーズドライ醤油自体に含まれる水分は僅かであるのでその水分の影響は無視できる。
【0074】
表4に、フリーズドライ醤油(表中では「FD醤油」と略記した。)と食用油との配合比率を例示する。
【0075】
【表4】
【0076】
表4は、各粒径のフリーズドライ醤油を食用油に混ぜて製造した醤油含有調味料の性状や食感を表している。「○」は、食用油に添加されたフリーズドライ醤油が油脂中に分散できるだけの流動性を持っており、サクサクとした食感が維持されていることを表す。
【0077】
「7mmオン〜10mmパス」、「5mmオン〜7mmパス」、「3.36mmオン〜5mmパス」、「1.8mmオン〜3.36mmパス」、「1mmオン〜1.8mmパス」の各フリーズドライ醤油を、5質量%から25質量%用いた醤油含有調味料では、何れも「○」、すなわち、フリーズドライ醤油が油脂中に分散できるだけの流動性を持っており、サクサクとした食感を持っていた。
【0078】
また、何れの粒径であっても、フリーズドライ醤油を、30質量%以上用いた醤油含有調味料(表中の「A」)は、フリーズドライ醤油中に油脂が染み込み、分散できるだけの流動性が得られなかった。
【0079】
醤油含有調味料に含まれるフリーズドライ醤油の含量が30質量%以上であると、流動性がなくなることから、フリーズドライ醤油の含量は30質量%未満であればよいことが分かる。下限としては、少なくとも1.1質量%以上のフリーズドライ醤油が含まれていればよい。フリーズドライ醤油の含量が増えるほど、流動性がなくなる傾向からすれば、1.1質量%のフリーズドライ醤油でも分散できるだけの流動性を持つことは明白である。少なくとも、表1に示した実施例より、5質量%以上25質量%以下のフリーズドライ醤油を用いることで、油脂に分散できる流動性を持ち、サクサクとした食感が得られることが分かった。
【0080】
また、粒径が「1mmパス」であり5質量%以上25質量%以下であるフリーズドライ醤油(表中の「B」)は、細かすぎてザラザラとした食感となり、粒径が「10mmオン」であり5質量%以上25質量%以下であるフリーズドライ醤油(表中の「C」)は、粒が大きすぎて好ましい食感ではなかった。このことから、フリーズドライ醤油の粒径は、「1mmオン」以上「10mmパス」以下であること、すなわち、1mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0081】
[試験例3]
試験例2で用いた「3.36mmオン〜5mmパス」のフリーズドライ醤油と、食用油と、水分とを混和して醤油含有調味料を製造した。配合比率は表5の通りである。
【0082】
【表5】
【0083】
横軸の「1、5、10、20、30」は、醤油含有調味料に含まれる「3.36mmオン〜5mmパス」のフリーズドライ醤油の質量%を表しており、各セルに記載の数値は、醤油含有調味料に含まれる水分の質量%を表している。例えば、第1系列のうち、フリーズドライ醤油を1質量%用いた醤油含有調味料は、水分が0.50364質量%含まれる。これは、食用油98.5質量%、フリーズドライ醤油1質量%、水0.5質量%を配合したものである。フリーズドライ醤油に含まれる水分が、0.364質量%であったので、1質量%に含まれる水分は、0.00364質量%となる。これに別途水分を0.5質量%加えたので、醤油含有調味料中の水分は、0.50364質量%となる。
【0084】
フリーズドライ醤油自体には、0.364質量%の水分が含まれていた。表5中の水分が0.00364質量%である醤油含有調味料(第9系列)は、食用油99質量%とフリーズドライ醤油1質量%を添加して製造したものである。第9系列は、全て、食用油とフリーズドライ醤油を混合したものであり、水分は添加していない。フリーズドライ醤油の添加量によって、醤油含有調味料中の水分は異なるが、第9系列のいずれも、ザクザクと、固めの食感を有していた。
【0085】
表5に示した各醤油含有調味料を、縦軸に全体に対する水分、横軸に全体に対するフリーズドライ醤油としてプロットしたグラフを
図2に示す。
【0086】
同図に示すように、フリーズドライ醤油を5〜20質量%用いた場合、水分を3質量%以下(少なくとも2.1質量%以下)とした醤油含有調味料(図中の矩形の線の範囲内)は、食用油に添加されたフリーズドライ醤油がダマやペースト状にならず、また、フリーズドライ醤油が若干溶融し、比較的軽いサクサクとした食感を有したものとなった。
【0087】
なお、フリーズドライ醤油を5〜20質量%用いた場合、水分を3質量%より多くした醤油含有調味料は、フリーズドライ醤油がダマやペースト状になり、食感が良いものではなかった。また、フリーズドライ醤油を30質量%以上用いた場合、水分量を調節しても、フリーズドライ醤油に油脂が浸透した状態となり、流動性がないものとなった。
【0088】
一方、フリーズドライ醤油を1質量%(1.1質量%未満)用いた場合、水分を3質量%以下としても、フリーズドライ醤油の量が少ないので十分な食感を得られず、好ましい醤油含有調味料を得られなかった。
【0089】
しかし、換言すれば、フリーズドライ醤油の量が十分であれば、すなわち、フリーズドライ醤油が1.1質量%以上であれば十分な食感を得られると考えられる。
【0090】
また、水分が3質量%以下であれば、フリーズドライ醤油が5質量%のときダマやペースト状にならないのであるから、これよりも少ない1.1質量%のフリーズドライ醤油で、かつ水分が3質量%以下である醤油含有調味料は、ダマやペースト状にならないと解される。
【0091】
これらのことから、フリーズドライ醤油が1.1質量%以上30質量%未満であれば、水分を3質量%以下とすることで、ダマやペースト状にならず、十分にサクサクとした食感を有する醤油含有調味料を得られると解される。
【0092】
以上に説明したように、フリーズドライ醤油を1.1質量%以上30質量%未満用いる場合、水分を3質量%以下とすることで、フリーズドライ醤油が若干溶融してやや粘りが生じ、サクッとした食感を有しつつ、やや質量感が増した食感を有する醤油含有調味料を得ることができる。