特許第5864580号(P5864580)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5864580
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】フリーズドライ醤油及び醤油含有調味料
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/50 20160101AFI20160204BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20160204BHJP
【FI】
   A23L1/238 111
   A23L1/238 E
   A23L1/22 D
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-527918(P2013-527918)
(86)(22)【出願日】2012年5月24日
(86)【国際出願番号】JP2012063362
(87)【国際公開番号】WO2013021708
(87)【国際公開日】20130214
【審査請求日】2013年12月4日
(31)【優先権主張番号】特願2011-172339(P2011-172339)
(32)【優先日】2011年8月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004477
【氏名又は名称】キッコーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】水谷 朋子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 美恵子
【審査官】 白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭43−028946(JP,B1)
【文献】 特開昭53−127898(JP,A)
【文献】 特開2000−157201(JP,A)
【文献】 特開平11−032718(JP,A)
【文献】 特開2007−252242(JP,A)
【文献】 キッコーマンから、野菜やごはんに、のせて・かけて・あえて!フリーズドライしょうゆを使った新形状しょうゆ「サクサク食べる香ばし醤油 オイルベース」新発売!,kikkoman ニュースリリース,2011年 7月12日,[online],[平成24年 6月19日検索],URL,http://www.kikkoman.co.jp/corporate/news/11035.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/238
A23L 1/22−1/237
A23L 1/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CA/MEDLINE/BIOSIS(STN)
PubMed
CiNii
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
醤油諸味と、醤油と、賦形剤とを含むフリーズドライ醤油であって、
塩分の含有量は、32質量%以上44質量%以下であり、
食物繊維の含有量は、1質量%以上4.4質量%以下である
ことを特徴とするフリーズドライ醤油。
【請求項2】
請求項1に記載するフリーズドライ醤油と食用油とを含むことを特徴とする醤油含有調味料。
【請求項3】
請求項2に記載する醤油含有調味料において、
前記フリーズドライ醤油の含有量は、1.1質量%以上30質量%未満であり、
水分の含有量は、3質量%以下である
ことを特徴とする醤油含有調味料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリーズドライ醤油及び醤油含有調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
醤油に賦形剤を混合し、噴霧乾燥又は凍結乾燥して粉末化した粉末醤油や、醤油諸味に必要に応じて賦形剤を混合し、噴霧乾燥又は凍結乾燥して粉末化した粉末醤油諸味が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
凍結乾燥により粉末醤油を製造する場合、塩分濃度が高く、また醤油成分が吸湿しやすいため、凍結乾燥させることが難しい。そのため、賦形剤の量を増やしたり、加水量を増やしたりすることで、加工適性を向上させている。しかし、賦形剤の量が多いと醤油の風味が薄まり、風味が損なわれてしまう。また、醤油に水分を添加し、濃度を下げることで凍結乾燥させることも可能ではあるが、ベタついて好ましくない食感となり、さらに、凍結乾燥させるために要する時間が増大してしまい、生産性が著しく悪くなる。
【0004】
一方、醤油諸味を凍結乾燥させて粉末醤油諸味とすることは可能であるが、甘味や旨味が強く、本来の醤油から離れた風味となってしまう。
【0005】
また、上述したような粉末醤油と粉末諸味醤油とを単純に混ぜ合わせた調味料は、粉末醤油のベタついた食感に、醤油本来の風味から離れた粉末醤油諸味の風味が加わったものとなり、醤油の本来の香ばしさや風味を有するフリーズドライ醤油とはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−157201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、醤油の風味が向上したフリーズドライ醤油を提供することを目的とする。さらに、本発明は、フリーズドライ醤油の風味や食感を活かした新規な醤油含有調味料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、醤油諸味と、醤油と、賦形剤とを含むフリーズドライ醤油であって、塩分の含有量は、32質量%以上44質量%以下であり、食物繊維の含有量は、1質量%以上4.4質量%以下であることを特徴とするフリーズドライ醤油にある。
【0009】
かかる第1の態様では、賦形作用を有する醤油諸味を用いることで、賦形剤の添加量を減らしても、固形状のフリーズドライ醤油を確実に得ることができる。また、賦形剤の添加量を低減できるので、賦形剤を多量に使用することによる風味の低下を抑えることができる。さらに、醤油諸味自体の旨味や風味が加わるので、賦形剤のみを使用する場合よりも醤油本来の風味や香ばしさが向上したフリーズドライ醤油を得ることができる。このような配合とすることで、醤油諸味の甘味や旨味が強すぎず、醤油の苦みを抑え、醤油本来の旨味や香ばしさが引き立ったフリーズドライ醤油を得ることができる。
【0012】
本発明の第2の態様は、第の態様に記載するフリーズドライ醤油と食用油とを含むことを特徴とする醤油含有調味料にある。
【0013】
かかる第の態様では、フリーズドライ醤油がもつサクサクとした食感と、醤油の香ばしさとを有し、様々な料理にかけたり、そのまま食べることもでき、フリーズドライ醤油の食感や旨さを楽しむことができる醤油含有調味料が提供される。
本発明の第3の態様は、第2に記載する醤油含有調味料において、前記フリーズドライ醤油の含有量は、1.1質量%以上30質量%未満であり、水分の含有量は、3質量%以下であることを特徴とする醤油含有調味料にある。
かかる第3の態様では、ダマやペースト状にならず、十分にサクサクとした食感を有する醤油含有調味料を得られる
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、醤油の風味が向上したフリーズドライ醤油が提供される。さらに、本発明によれば、フリーズドライ醤油の風味や食感を活かした新規な醤油含有調味料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】各実施例・比較例に係るフリーズドライ醤油の食物繊維及び塩分の含有量と、食感・味の評価とをプロットしたグラフである。
図2】縦軸を全体に対する水分、横軸を全体に対するフリーズドライ醤油として各醤油含有調味料をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〈実施形態1〉
本発明に係るフリーズドライ醤油は、醤油諸味と、醤油と、賦形剤とを含む混合物を凍結乾燥させたものである。本発明に係るフリーズドライ醤油は、様々な料理に醤油の風味や香ばしさを与えることができるものである。
【0017】
本発明の原材料である醤油は、特に限定されないが、例えば、その用途に応じ、濃口醤油、淡口醤油、白醤油、溜醤油、再仕込醤油、又はそれらの減塩タイプ、うす塩タイプなどを用いることができる。
【0018】
本発明に係る原材料である醤油諸味は、醤油醸造の際に製造される諸味であり、醤油の原料に由来する小麦の外皮(ふすま成分)や大豆の外皮などが含まれている。醤油諸味は特に限定はされないが、前記した液状の醤油用の各種諸味を用いることができる。
【0019】
本発明の原材料である賦形剤は、特に限定されないが、例えば、各種澱粉、デキストリン、ゼラチン、アラビアガムなどを用いることができる。
【0020】
本発明に係るフリーズドライ醤油は、上述した各原材料を所定量ずつ混合して混合物とし、該混合物を凍結乾燥させたものである。ここで、醤油諸味の不溶成分は、賦形剤と同様に賦形作用を有する。すなわち、混合物を凍結乾燥させる際には、賦形剤及び醤油諸味の不溶成分の賦形作用により、全体として固形状が保たれたフリーズドライ醤油が得られる。
【0021】
本発明に係るフリーズドライ醤油は、醤油を凍結乾燥させるために、賦形剤のみならず醤油諸味が添加されている。このような賦形作用を有する醤油諸味を用いることで、賦形剤の添加量を減らしても、固形状のフリーズドライ醤油を確実に得ることができる。また、賦形剤の添加量を低減できるので、賦形剤を多量に使用することによる風味の低下を抑えることができる。さらに、醤油諸味自体の旨味や風味が加わるので、賦形剤のみを使用する場合よりも醤油本来の風味や香ばしさが向上したフリーズドライ醤油を得ることができる。
【0022】
ここで、本発明に係るフリーズドライ醤油に含まれる塩分の含有量は、32質量%以上44質量%以下であり、本発明に係るフリーズドライ醤油に含まれる食物繊維の含有量は1質量%以上4.4質量%以下であることが好ましい。ここでいう食物繊維は、醤油諸味由来のものをいう。
【0023】
フリーズドライ醤油に、上述した量の塩分及び食物繊維が含まれることで、サクサクとした食感を有し、醤油本来の旨味や香ばしさが引き立ったフリーズドライ醤油を得ることができる。
【0024】
なお、フリーズドライ醤油に含まれる塩分の含有量が32質量%未満であると、醤油本来の旨味や香ばしさが弱くなる虞がある。塩分の含有量が44質量%を超えると、サクサクとした食感が得られず、また、フリーズドライ醤油を加工し難くなる虞がある。さらに、フリーズドライ醤油に含まれる食物繊維が1質量%未満(ゼロ、すなわち醤油諸味を未使用の場合を含む)の場合、フリーズドライ醤油の味が単調となり、味の深みが欠けたものとなる虞がある。
【0025】
また、醤油及び醤油諸味の含有量は、特に限定されない。例えば、醤油及び醤油諸味の合計質量のうち、醤油を5質量%以上80質量%以下、醤油諸味を20質量%以上95質量%以下とすることが好ましい。このような含有量とすることで、サクサクとした食感を有し、醤油本来の旨味や香ばしさが引き立ったフリーズドライ醤油を得ることができる。
【0026】
さらに、醤油及び醤油諸味の合計質量に対する賦形剤の含有量は、特に限定されないが、外割で10質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。これにより、固形状に保たれたフリーズドライ醤油をより確実に得ることができる。
【0027】
凍結乾燥は、いわゆるフリーズドライ製法であり、常法に準ずる。例えば、マイナス40℃程度で混合物を急速に凍結し、さらに減圧して真空状態で水分を昇華させて乾燥させることでフリーズドライ醤油となる。フリーズドライ製法を用いることで、混合物に含まれる醤油の旨味成分等を損なわずに乾燥したフリーズドライ醤油を得ることができる。ちなみに、スプレードライ法などにより加熱して水分を蒸発させる場合、醤油の風味が加熱により損なわれてしまう。
【0028】
本発明に係るフリーズドライ醤油は、賦形剤や醤油諸味の不溶成分(食物繊維など)に醤油及び醤油諸味に含まれる旨味成分等が付着した固形状の調味料となる。このフリーズドライ醤油に含まれる水分は、5質量%以下であり、サクサクとした食感を有する。このようなフリーズドライ醤油は、醤油本来の旨味や香ばしさを有し、長期保存や持ち運びに便利なように加工された調味料となり、そのまま食したり、様々な料理の調味料として用いることができる。また、フリーズドライ醤油は、使用目的に応じて所定の大きさの粒径に粉砕して粒状としてもよい。
【0029】
なお、本発明に係るフリーズドライ醤油は、醤油諸味、醤油及び賦形剤の他に、必要に応じて、砂糖、食塩、酢、味噌、グルタミン酸ソーダやイノシン酸ソーダ等の調味料を混合した混合物を凍結乾燥させたものであっても良い。これにより、フリーズドライ醤油の用途に応じた風味を有するフリーズドライ醤油を得ることができる。
【0030】
以下、本発明に係るフリーズドライ醤油の製造方法について説明する。
【0031】
本発明のフリーズドライ醤油は、醤油諸味、醤油、賦形剤を混合して混合物とし、該混合物を凍結乾燥させることで製造される。
【0032】
例えば、醤油諸味、醤油及び賦形剤を容器に入れ、均一に混和する。必要に応じて、上述した調味料を添加して、混和してもよい。もちろん、このような混和手順に限定されない。例えば、各原材料を容器に入れ、その都度混和してもよい。他に、全ての原材料を容器に入れ、まとめて混和してもよい。
【0033】
このようにして製造した混合物を必要に応じて加熱を加えた後、凍結乾燥させる。凍結乾燥に用いる機材や製造条件に限定はない。混合物の水分が例えば5質量%以下程度になるまで凍結乾燥させることで本発明に係るフリーズドライ醤油が製造される。その後は、必要に応じて、所定の大きさに粉砕したり、他の調味料や食品の原材料として用いることができる。
【0034】
このようなフリーズドライ醤油の製造方法によれば、サクサクとした食感を有し、醤油本来の旨味や香ばしさが引き立ったフリーズドライ醤油を製造することができる。
【0035】
なお、本発明に係るフリーズドライ醤油の混合物を凍結乾燥する際には、水分を添加してもよい。水分を添加することで混合物の塩分濃度が低下し、混合物の凍結を促進することができる。添加する水分量は、特に限定されないが、混合物に対して10質量%以上200質量%以下とすることが好ましい。このような量の水分を混合物に含ませることで、凍結乾燥処理の全体に掛かる時間をそれほど増大させることなく、混合物の凍結を行うことができる。
【0036】
〈実施形態2〉
実施形態1に係るフリーズドライ醤油を用いた醤油含有調味料について説明する。本発明に係る醤油含有調味料は、食用油に、本発明に係るフリーズドライ醤油を添加し、さらに必要に応じて種々の具材や調味料を添加したものである。本発明に係る醤油含有調味料は、フリーズドライ醤油がもつサクサクとした食感と、醤油の香ばしさとを有し、様々な料理にかけたり、そのまま食べることもでき、フリーズドライ醤油の食感や旨さを楽しむことができるものである。
【0037】
醤油含有調味料に含まれるフリーズドライ醤油自体の食感を楽しむ観点からは、フリーズドライ醤油の粒径は、例えば1mm以上10mm以下であることが好ましい。このような粒径とすることで、より一層、サクサクとした食感のフリーズドライ醤油とすることができる。なお、フリーズドライ醤油の粒径が10mmより大きいと、粒が大きすぎて食感がよくない虞があり、また、1mm未満であると、ざらざらとした食感となる虞がある。
【0038】
また、本発明の醤油含有調味料に含まれるフリーズドライ醤油は、1.1質量%以上30質量%未満であり、好ましくは5質量%以上25質量%以下とすることが好ましい。醤油含有調味料に対して1.1質量%以上30質量%未満であれば、食用油にフリーズドライ醤油を混和してもフリーズドライ醤油のサクサクとした食感を維持することができる。また、醤油含有調味料に対して5質量%以上25質量%以下であれば、食用油にフリーズドライ醤油を混和してもフリーズドライ醤油のサクサクとした食感をより確実に維持することができる。なお、フリーズドライ醤油が醤油含有調味料に対して30質量%以上であると、流動性が悪くフリーズドライ醤油がペースト状となる虞がある。
【0039】
本発明で用いられる食用油は、常温下で液状であり食用可能な油脂である。食用油としては、例えば、米油、綿実油、トウモロコシ胚芽油、サフラワー油、ひまわり油、ごま油、落花生油、大豆油、菜種油などの植物油脂やこれらの植物油脂のサラダ油を用いることができる。また、香辛料や香味野菜に含まれる香味成分や色素類などを植物油脂に移行させた香味油を用いることもできる。また、これらの食用油のうちいずれか一種のみを選択し、又は、これらのうちの二種以上を混合したものを用いることもできる。
【0040】
さらに、本発明の醤油含有調味料は、水分を含んでいてもよい。具体的には、醤油含有調味料に含まれる水分は、3質量%以下とすることが好ましい。ここでいう水分は、醤油含有調味料全体に含まれる水分量をいう。フリーズドライ醤油に水分が含まれる場合は、当該水分を含む。すなわち、フリーズドライ醤油に含まれる水分と、別途添加する水分とを合計した水分が、醤油含有調味料の全体に対して3質量%以下とする。
【0041】
水分を添加しない醤油含有調味料は、フリーズドライ醤油はザクッとした比較的重い食感を有するものとなる。
【0042】
一方、醤油含有調味料に水分を添加すると、フリーズドライ醤油が水分を吸収して若干溶解したようになる。このように水分を添加することでフリーズドライ醤油の性状を変化させ、食感を変化させることができる。
【0043】
具体的には、0.1質量%以上3質量%以下の水分を添加した醤油含有調味料は、フリーズドライ醤油が若干軟らかくなり、かつ、サクッとした比較的軽い食感を有するものとなる。また、3質量%より多くの水分を添加した醤油含有調味料は、固体状醤油が結着してペースト状やダマになり、サクサクとした食感が損なわれる虞がある。
【0044】
また、醤油含有調味料における水分は、水をそのまま添加しても良いが、液状の醤油を添加することにより、水分を上述した所定量となるようにしてもよい。この場合、醤油に含まれる水分が上述した作用効果を奏し、さらに、醤油の風味が増した醤油含有調味料が提供される。
【0045】
本発明の醤油含有調味料は、種々の具材や調味料を添加したものであってもよい。具材としては、ごま、フライドガーリック、フライドオニオン、植物性大豆たんぱく質など食感のあるものや、しょうがなどの薬味、オニオン、トマトなどを乾燥させた乾燥野菜が挙げられる。また、調味料は、砂糖、食塩、酢、味噌、粉末しょうゆ、魚醤、たんぱく加水分解物、酵母エキス、魚介エキスなどの天然調味料、グルタミン酸ソーダやイノシン酸ソーダ等の化学調味料、チキンやビーフ、ポーク等の固形ブイヨン等、胡椒や唐辛子、ベイリーフ、カレー粉等の香辛料等が挙げられる。
【0046】
なお、このような具材や調味料を添加する場合は、これらの具材や調味料に含まれる水分と、別途添加する水分とを合計した水分が醤油含有調味料の全体に対して3質量%以下となるようにする。
【0047】
上述した食用油、フリーズドライ醤油、さらに必要に応じて水分や具材、調味料を混和することで、本発明に係る醤油含有調味料となる。醤油含有調味料は、容器内で静置された状態では、フリーズドライ醤油や具材が沈殿した状態となる。このような醤油含有調味料は、攪拌して食用油、フリーズドライ醤油等を混和させ、適量すくってそのまま食することができ、また、ご飯や様々な料理に掛けて食することができる。
【0048】
本発明の醤油含有調味料は、食用油に、フリーズドライ醤油を混和させることで製造される。
【0049】
例えば、食用油及びフリーズドライ醤油を容器に入れ、フリーズドライ醤油の粒が破壊されない程度に混ぜ、食用油をフリーズドライ醤油等に馴染ませる。また、必要に応じて、上述した量の水分や具材、調味料を添加して、混和させる。もちろん、混和の方法は、このような順序に限定されない。食用油、フリーズドライ醤油等、水分、具材、調味料を任意の順序で容器に入れ、その都度、混和させてもよい。また、全ての原材料をまとめて混和させてもよい。
【0050】
このような醤油含有調味料の製造方法によれば、フリーズドライ醤油が食用油中でペースト状とならず、フリーズドライ醤油がもつサクサクとした食感が維持された新規な醤油含有調味料を製造することができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。
【0052】
[実施例・比較例]
本発明に係るフリーズドライ醤油の原材料として、濃口醤油と醤油諸味を用いた。さらに、本発明に係るフリーズドライ醤油の原材料である賦形剤として市販の馬鈴薯澱粉を用いた。なお、濃口醤油及び醤油諸味は、何れもキッコーマン株式会社製である。以下、全ての実施例、比較例では、これらの濃口醤油、醤油諸味、馬鈴薯澱粉を用いた。
【0053】
容器に、濃口醤油、醤油諸味及び馬鈴薯澱粉を入れ、混和して混合物を製造した。各原材料の割合は表1の通りである。なお、醤油諸味や濃口醤油が「0」である場合は、醤油諸味又は濃口醤油を用いていないことを表している。
【0054】
【表1】
【0055】
系列1に係る各実施例・比較例は、澱粉を用いずに、醤油諸味と濃口醤油の配合量を変えたものである。系列2に係る各実施例・比較例は、澱粉を10g用い、醤油諸味と濃口醤油の配合量を変えたものである。系列3に係る各実施例・比較例は、澱粉を20g用い、醤油諸味と濃口醤油の配合量を変えたものである。系列4に係る各実施例・比較例は、醤油諸味と濃口醤油の配合量を一定にし、澱粉の配合量を変えたものである。系列5に係る各実施例は、醤油諸味、濃口醤油、澱粉の配合量を変えたものである。
【0056】
[試験例1]
表1に示した配合の混合物を凍結乾燥させた。具体的には共和真空技術株式会社製RLE−103を用いて、混合物を、マイナス40℃、0.1Torrに減圧した雰囲気下で24時間放置することで水分を昇華させ、凍結乾燥したフリーズドライ醤油を製造した。
【0057】
各実施例・比較例に係るフリーズドライ醤油に含まれる食物繊維及び塩分の含有量を計算した。この結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
表2に示す各項目である「総固形分量」、「食物繊維」、「塩分」は、それぞれ各実施例・比較例に係るフリーズドライ醤油の固形分の重量、食物繊維の重量、塩分の重量を表している。「総固形分量」は、フリーズドライに使用する醤油諸味、濃口醤油、澱粉の固形分量を合算して算出した。各原料の固形分は水分を蒸発乾固させて測定した。「食物繊維」、「塩分」は、各原料の栄養成分分析の結果を元に算出した。「FD醤油中の食物繊維」は、フリーズドライ醤油に含まれる食物繊維の含有量[質量%]、すなわち、総固形分量に対する食物繊維の割合である。同様に、表2の項目である「FD醤油中の塩分」は、フリーズドライ醤油に含まれる塩分の含有量[質量%]、すなわち、総固形分量に対する塩分の割合である。
【0060】
各実施例・比較例に係るフリーズドライ醤油について、性状、食感、味の評価を行った。この結果を表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
表3に示すように、系列1については、実施例1−1が、フリーズドライ醤油としての構造を保ち、味としても良好なものであった。比較例1−1については、フリーズドライ醤油としての構造は保たれるものの、醤油の味からは離れたものであった。比較例1−2〜1−4については、ふわふわとし、ベタベタとした食感であり良好なものではなかった。
【0063】
系列2については、実施例2−2〜2−5の何れについても、サクサクとした食感を有し、醤油本来の風味のあるフリーズドライ醤油が得られた。実施例2−1については、粉っぽく、諸味の味がするものの、サクサクとしたフリーズドライ醤油であった。比較例2−1については、フリーズドライ醤油としての構造は保たれるものの、醤油の味からは離れたものであった。比較例2−2についても、食感がもろく、しょっぱいフリーズドライ醤油であった。
【0064】
系列3については、何れの比較例3−1〜3−6も、もろい食感であり、醤油の風味が弱いものであった。
【0065】
系列4については、何れの実施例4−1〜4−5も、サクッとした食感を有し、醤油の風味が感じられるものであった。比較例4−1については、醤油の風味が弱いものであった。
【0066】
系列5については、何れの実施例5−1〜5−4も、サクッとした食感を有し、醤油の風味が感じられるものであった。
【0067】
図1に、各実施例・比較例に係るフリーズドライ醤油の食物繊維及び塩分の含有量と、食感・味の評価とをプロットしたグラフを示す。
【0068】
同図に示すように、フリーズドライ醤油に含まれる塩分の含有量が32質量%以上44質量%以下であり、食物繊維の含有量が1質量%以上4.4質量%以下であるならば(表3の実施例1−1、実施例2−1〜2−5、実施例4−1〜4−5、実施例5−1〜5−4)、何れも、フリーズドライ醤油としての構造を保ち、かつ醤油本来の風味を有するフリーズドライ醤油を得ることができる。
【0069】
[試験例2]
以下、本発明に係るフリーズドライ醤油を用いた醤油含有調味料について具体的に説明する。
【0070】
本発明の原材料である食用油として菜種サラダ油(ボーソー油脂株式会社製。以下、全ての実施例、比較例で用いられる食用油は同社製である)を用いた。
【0071】
フリーズドライ醤油の原料として、濃口醤油、醤油諸味(何れもキッコーマン食品株式会社製。以下、全ての実施例、比較例で用いられる醤油、醤油諸味は同社製である。)、賦形剤として市販の澱粉を用いた。醤油諸味は50質量%、濃口醤油は50質量%とした。澱粉は醤油諸味及び醤油に対して外割で10質量%とした。これらの原材料を混和したものを、マイナス40℃、0.1Torr減圧下で凍結乾燥させることによりフリーズドライ醤油を製造した。
【0072】
このように製造したフリーズドライ醤油を、所定の大きさの粒径に粉砕した。そして、目開きがそれぞれ1mm、1.8mm、3.36mm、5mm、7mm、10mmである網状の篩にフリーズドライ醤油を載せて振動させ、各篩を通過したもの、又は通過せずに篩の上に残ったものに分級した。1mm目開きの篩を通過したフリーズドライ醤油を「1mmパス」、1mm目開きの篩を通過せずに篩上に残ったフリーズドライ醤油を「1mmオン」のように表記する。その他の目開きについても同様とする。
【0073】
各篩をオン又はパスするかによって、フリーズドライ醤油を粒径ごとに分級した。例えば、1mmオンであり、かつ1.8mmパスのように分級した。この場合、フリーズドライ醤油は、1mm以上1.8mm以下の粒径である。以後、このように粒径で分級されたフリーズドライ醤油を「1mmオン〜1.8mmパス」のように表記する。このように分級した各フリーズドライ醤油を食用油に混ぜて醤油含有調味料を製造した。本試験例では、水分は添加していない。なお、フリーズドライ醤油自体に含まれる水分は僅かであるのでその水分の影響は無視できる。
【0074】
表4に、フリーズドライ醤油(表中では「FD醤油」と略記した。)と食用油との配合比率を例示する。
【0075】
【表4】
【0076】
表4は、各粒径のフリーズドライ醤油を食用油に混ぜて製造した醤油含有調味料の性状や食感を表している。「○」は、食用油に添加されたフリーズドライ醤油が油脂中に分散できるだけの流動性を持っており、サクサクとした食感が維持されていることを表す。
【0077】
「7mmオン〜10mmパス」、「5mmオン〜7mmパス」、「3.36mmオン〜5mmパス」、「1.8mmオン〜3.36mmパス」、「1mmオン〜1.8mmパス」の各フリーズドライ醤油を、5質量%から25質量%用いた醤油含有調味料では、何れも「○」、すなわち、フリーズドライ醤油が油脂中に分散できるだけの流動性を持っており、サクサクとした食感を持っていた。
【0078】
また、何れの粒径であっても、フリーズドライ醤油を、30質量%以上用いた醤油含有調味料(表中の「A」)は、フリーズドライ醤油中に油脂が染み込み、分散できるだけの流動性が得られなかった。
【0079】
醤油含有調味料に含まれるフリーズドライ醤油の含量が30質量%以上であると、流動性がなくなることから、フリーズドライ醤油の含量は30質量%未満であればよいことが分かる。下限としては、少なくとも1.1質量%以上のフリーズドライ醤油が含まれていればよい。フリーズドライ醤油の含量が増えるほど、流動性がなくなる傾向からすれば、1.1質量%のフリーズドライ醤油でも分散できるだけの流動性を持つことは明白である。少なくとも、表1に示した実施例より、5質量%以上25質量%以下のフリーズドライ醤油を用いることで、油脂に分散できる流動性を持ち、サクサクとした食感が得られることが分かった。
【0080】
また、粒径が「1mmパス」であり5質量%以上25質量%以下であるフリーズドライ醤油(表中の「B」)は、細かすぎてザラザラとした食感となり、粒径が「10mmオン」であり5質量%以上25質量%以下であるフリーズドライ醤油(表中の「C」)は、粒が大きすぎて好ましい食感ではなかった。このことから、フリーズドライ醤油の粒径は、「1mmオン」以上「10mmパス」以下であること、すなわち、1mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0081】
[試験例3]
試験例2で用いた「3.36mmオン〜5mmパス」のフリーズドライ醤油と、食用油と、水分とを混和して醤油含有調味料を製造した。配合比率は表5の通りである。
【0082】
【表5】
【0083】
横軸の「1、5、10、20、30」は、醤油含有調味料に含まれる「3.36mmオン〜5mmパス」のフリーズドライ醤油の質量%を表しており、各セルに記載の数値は、醤油含有調味料に含まれる水分の質量%を表している。例えば、第1系列のうち、フリーズドライ醤油を1質量%用いた醤油含有調味料は、水分が0.50364質量%含まれる。これは、食用油98.5質量%、フリーズドライ醤油1質量%、水0.5質量%を配合したものである。フリーズドライ醤油に含まれる水分が、0.364質量%であったので、1質量%に含まれる水分は、0.00364質量%となる。これに別途水分を0.5質量%加えたので、醤油含有調味料中の水分は、0.50364質量%となる。
【0084】
フリーズドライ醤油自体には、0.364質量%の水分が含まれていた。表5中の水分が0.00364質量%である醤油含有調味料(第9系列)は、食用油99質量%とフリーズドライ醤油1質量%を添加して製造したものである。第9系列は、全て、食用油とフリーズドライ醤油を混合したものであり、水分は添加していない。フリーズドライ醤油の添加量によって、醤油含有調味料中の水分は異なるが、第9系列のいずれも、ザクザクと、固めの食感を有していた。
【0085】
表5に示した各醤油含有調味料を、縦軸に全体に対する水分、横軸に全体に対するフリーズドライ醤油としてプロットしたグラフを図2に示す。
【0086】
同図に示すように、フリーズドライ醤油を5〜20質量%用いた場合、水分を3質量%以下(少なくとも2.1質量%以下)とした醤油含有調味料(図中の矩形の線の範囲内)は、食用油に添加されたフリーズドライ醤油がダマやペースト状にならず、また、フリーズドライ醤油が若干溶融し、比較的軽いサクサクとした食感を有したものとなった。
【0087】
なお、フリーズドライ醤油を5〜20質量%用いた場合、水分を3質量%より多くした醤油含有調味料は、フリーズドライ醤油がダマやペースト状になり、食感が良いものではなかった。また、フリーズドライ醤油を30質量%以上用いた場合、水分量を調節しても、フリーズドライ醤油に油脂が浸透した状態となり、流動性がないものとなった。
【0088】
一方、フリーズドライ醤油を1質量%(1.1質量%未満)用いた場合、水分を3質量%以下としても、フリーズドライ醤油の量が少ないので十分な食感を得られず、好ましい醤油含有調味料を得られなかった。
【0089】
しかし、換言すれば、フリーズドライ醤油の量が十分であれば、すなわち、フリーズドライ醤油が1.1質量%以上であれば十分な食感を得られると考えられる。
【0090】
また、水分が3質量%以下であれば、フリーズドライ醤油が5質量%のときダマやペースト状にならないのであるから、これよりも少ない1.1質量%のフリーズドライ醤油で、かつ水分が3質量%以下である醤油含有調味料は、ダマやペースト状にならないと解される。
【0091】
これらのことから、フリーズドライ醤油が1.1質量%以上30質量%未満であれば、水分を3質量%以下とすることで、ダマやペースト状にならず、十分にサクサクとした食感を有する醤油含有調味料を得られると解される。
【0092】
以上に説明したように、フリーズドライ醤油を1.1質量%以上30質量%未満用いる場合、水分を3質量%以下とすることで、フリーズドライ醤油が若干溶融してやや粘りが生じ、サクッとした食感を有しつつ、やや質量感が増した食感を有する醤油含有調味料を得ることができる。
図1
図2