【文献】
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1978) vol.75, no.6, p.2741-2745
【文献】
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1979) vol.76, no.11, p.5596-5600
【文献】
Nucleic Acids Res. (1994) vol.22, no.23, p.4953-4957
【文献】
Appl. Microbiol. Biotechnol. (2012) vol.94, no.4, p.1051-1059
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ペリプラズムにタンパク質を分泌させるシグナルペプチドが、配列番号7から9のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチドである、請求項1に記載のベクター。
ヒト由来タンパク質をコードするポリヌクレオチドを挿入した請求項1または2に記載のベクターを用いて宿主を形質転換して得られる、ヒト由来タンパク質を発現可能な形質転換体。
【実施例】
【0040】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、参考例は本発明を構成するものではない。
【0041】
実施例1
配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むヒトFc結合性タンパク質発現ベクター、および前記ベクターにより得られる形質転換体を以下の方法で作製した。
(1)ペリプラズムにタンパク質を分泌させるためのシグナルペプチドとして、MalEシグナルペプチド(配列番号8)を選択し、下記に示す二段階PCRにより、前記シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドを作製した。
(1−1)一段階目のPCRを、表1の反応液組成のもと、98℃で10秒間の第一ステップ、55℃で5秒間の第二ステップ、72℃で1分間の第三ステップを1サイクルとした反応を5サイクル行なった後、4℃に冷却することで行なった。なお、オリゴヌクレオチドは、配列番号10(5’−TATACATATGAAAATAAAAACAGGTGCACGCATCC−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、配列番号11(5’−GCATTAACGACGATGATGTTTTCCGCCTCGGCTCTCGCC−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、配列番号12(5’−ATCGTCGTTAATGCGGATAATGCGAGGATGCGTGCACCTG−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、および配列番号13(5’−TTGTCCCATGGCTTCTTCGATTTTGGCGAGAGCCG−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いた。
【0042】
【表1】
【0043】
(1−2)二段階目のPCRを、表2の反応液組成のもと、98℃で10秒間の第一ステップ、55℃で5秒間の第二ステップ、72℃で1分間の第三ステップを1サイクルとした反応を30サイクル行なった後、4℃に冷却することで行なった。なお、鋳型としては一段階目のPCR産物を用い、PCRプライマーとしては配列番号10に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号13に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いた。
【0044】
【表2】
【0045】
(2)二段階PCRにより作製した、MalEシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドを、制限酵素NdeIとNcoIで消化後、あらかじめ制限酵素NdeIとNcoIで消化したpET−26b(+)プラスミドベクター(Novagen社)にライゲーションし、これを用いて塩化カルシウム法により大腸菌BL21(DE3)株(Novagen社)を形質転換した。
(3)得られた形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを添加したLB培地で培養後、菌体からプラスミドを抽出し、このプラスミドをプラスミドベクターpETMalEとした。プラスミドベクターpETMalEの概要とその作製工程を
図1に示す。
(4)鋳型としてプラスミドベクターpETMalE(
図1)を、PCRプライマーとして配列番号14(5’−AGTAGTAGGTTGAGGCCGTTGAG−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号15(5’−TTTTCATATGTATTATGTATATCTCCTTCTTAAA−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いて、表2の反応組成のもと、98℃で10秒間の第一ステップ、55℃で5秒間の第二ステップ、72℃で1分間の第三ステップを1サイクルとした反応を30サイクル行なった後、4℃に冷却することでPCRを行なった。
(5)(4)のPCR産物を制限酵素SphIとNdeIで消化後、あらかじめ制限酵素SphIとNdeIで消化したpETMalEにライゲーションし、これを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。
(6)(5)の形質転換体を培養後、プラスミドを抽出し、このプラスミドをプラスミドベクターpETMalE−p7とした。プラスミドベクターpETMalE−p7には、配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、MalEシグナルペプチド(配列番号8)をコードするオリゴヌクレオチドと、を含んでいる。プラスミドベクターpETMalE−p7の概要とその作製工程を
図1に示す。また、プラスミドベクターpETMalE−p7(
図1)のうち、制限酵素BglII認識サイトからBpu1102I認識サイトまでのポリヌクレオチドの塩基配列を配列番号16に示す。なお、配列番号16に記載の塩基配列のうち、88番目から115番目までのヌクレオチドが配列番号4に相当し、116番目から193番目までのヌクレオチドがMalEシグナルペプチド(配列番号8)をコードするオリゴヌクレオチドに相当する。
(7)下記の方法により組換えプラスミドベクターpETMalEFcR−p7およびその形質転換体を作製した。
(7−1)特開2008−245580号公報(特許文献4)に開示の方法に従い、コドンを大腸菌型に変換したヒトFcγRIをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドベクターpECFcRを作製した。
(7−2)鋳型としてプラスミドベクターpECFcRを、PCRプライマーとして配列番号17(5’−TCAGCCATGGGACAAGTAGATACCACCAAAGCTGTGATTA−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと配列番号18(5’−CCAAGCTTAATGATGATGATGATGATGGACCGGGGTCGGCAGTTGAAGACCCAG−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いて、表2の反応液組成のもと、98℃で10秒間の第一ステップ、55℃で5秒間の第二ステップ、72℃で1分間の第三ステップを1サイクルとした反応を30サイクル行なった後、4℃に冷却することでPCRを行ない、C末端側にポリヒスチジンタグを付加した、ヒトFcγRIの細胞外領域(配列番号76に記載のアミノ酸配列のうち、16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域)を含むポリペプチドをコードする塩基配列を含む、ポリヌクレオチドを作製した。
(7−3)(7−2)で得られたポリヌクレオチドを制限酵素NcoIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化したプラスミドベクターpETMalE−p7(
図1)にライゲーションすることで、プラスミドベクターpETMalEFcR−p7を作製した。プラスミドベクターpETMalEFcR−p7の概要とその作製工程を
図2に示す。
(8)プラスミドベクターpETMalEFcR−p7(
図2)を用いて大腸菌BL21(DE3)株を塩化カルシウム法により形質転換し、pETMalEFcR−p7の形質転換体を作製した。
【0046】
プラスミドベクターpETMalEFcR−p7により発現される組換えタンパク質は、ヒトFcγRIの細胞外領域からなる抗体結合性タンパク質であり、以降、本明細書では当該タンパク質をrhFcγRIと略記する。プラスミドベクターpETMalEFcR−p7(
図2)には、5’末端側から、配列番号4に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド、MalEシグナルペプチド(配列番号8)をコードするオリゴヌクレオチド、rhFcγRIをコードするポリヌクレオチド、ポリヒスチジンタグをコードするオリゴヌクレオチドの順に配置されている。プラスミドベクターpETMalEFcR−p7(
図2)のうち、制限酵素BglII認識サイトからHindIII認識サイトまでの塩基配列を、配列番号19に示す。なお、配列番号19に記載の塩基配列のうち、88番目から115番目までのヌクレオチドが配列番号4に相当し、116番目から193番目までのヌクレオチドがMalEシグナルペプチド(配列番号8)をコードするオリゴヌクレオチドに相当し、215番目から1036番目までのヌクレオチドがrhFcγRI(配列番号76に記載のアミノ酸配列のうち、16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域)をコードするオリゴヌクレオチドに相当し、1037番目から1054番目のヌクレオチドがポリヒスチジンタグをコードするオリゴヌクレオチドに相当する。
【0047】
実施例2
配列番号1に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むヒトFc結合性タンパク質発現ベクター、および前記ベクターにより得られる形質転換体を以下の方法で作製した。
(1)鋳型として実施例1で作製したプラスミドベクターpETMalE−p7(
図1)を、PCRプライマーとして配列番号14に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号21(5’−ATTTTCATATGTATATCTCGTTCTTAAA−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いて、表2の反応液組成のもと、98℃で10秒間の第一ステップ、55℃で5秒間の第二ステップ、72℃で1分間の第三ステップを1サイクルとした反応を30サイクル行なった後、4℃に冷却することでPCRを行なった。
(2)PCR産物を制限酵素SphIとNdeIで消化後、あらかじめ制限酵素SphIとNdeIで消化した組換えプラスミドベクターpETMalEFcR−p7(
図2)にライゲーションすることで、プラスミドベクターpETMalEFcR−rbsを作製した。プラスミドベクターpETMalEFcR−rbsは、プラスミドベクターpETMalEFcR−p7(
図2)に含まれる配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの部分を、配列番号1に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドに置換した構造である。
(3)プラスミドベクターpETMalEFcR−rbsを用いて、塩化カルシウム法により大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、pETMalEFcR−rbsの形質転換体を作製した。
【0048】
実施例3
配列番号2に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むヒトFc結合性タンパク質発現ベクター、および前記ベクターにより得られる形質転換体を以下の方法で作製した。
(1)PCRプライマーとして、配列番号14に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号22(5’−ATATACATATGTCTCCTTCTTAAAGTT−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いたほかは、実施例2と同様の方法により、プラスミドベクターpETMalEFcR−m4を作製した。プラスミドベクターpETMalEFcR−m4は、プラスミドベクターpETMalEFcR−p7(
図2)に含まれる配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの部分を、配列番号2に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドに置換した構造である。
(2)プラスミドベクターpETMalEFcR−m4を用いて、塩化カルシウム法により大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、pETMalEFcR−m4形質転換体を作製した。
【0049】
実施例4
配列番号3に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むヒトFc結合性タンパク質発現ベクター、および前記ベクターにより得られる形質転換体を以下の方法で作製した。(1)PCRプライマーとして、配列番号14に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号23(5’−TTTTACATATGTATTTATATCTCCTTCTTAA−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いたほかは、実施例2と同様の方法により、プラスミドベクターpETMalEFcR−p4を作製した。プラスミドベクターpETMalEFcR−p4は、プラスミドベクターpETMalEFcR−p7(
図2)に含まれる配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの部分を、配列番号3に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドに置換した構造である。
(2)プラスミドベクターpETMalEFcR−p4を用いて、塩化カルシウム法により大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、pETMalEFcR−p4形質転換体を作製した。
【0050】
実施例5
配列番号5に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むヒトFc結合性タンパク質発現ベクター、および前記ベクターにより得られる形質転換体を以下の方法で作製した。(1)PCRプライマーとして、配列番号14に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号24(5’−TTTTCATATGTATTATTATGTATATCTCCTTCTTA−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いたほかは、実施例2と同様の方法により、プラスミドベクターpETMalEFcR−p10を作製した。プラスミドベクターpETMalEFcR−p10は、プラスミドベクターpETMalEFcR−p7(
図2)に含まれる配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの部分を、配列番号5に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドに置換した構造である。
(2)プラスミドベクターpETMalEFcR−p10を用いて、大腸菌BL21(DE3)株を塩化カルシウム法により形質転換し、pETMalEFcR−p10形質転換体を作製した。
【0051】
実施例6
配列番号6に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むヒトFc結合性タンパク質発現ベクター、および前記ベクターにより得られる形質転換体を以下の方法で作製した。
(1)PCRプライマーとして、配列番号14に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号25(5’−TTTTCATATGTATTATGTATATCTCGTTCTTAAA−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いたほかは、実施例2と同様の方法により、プラスミドベクターpETMalEFcR−rbsp7を作製した。プラスミドベクターpETMalEFcR−rbsp7は、プラスミドベクターpETMalEFcR−p7(
図2)に含まれる配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの部分を、配列番号6に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドに置換した構造である。
(2)プラスミドベクターpETMalEFcR−rbsp7を用いて、塩化カルシウム法により大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、pETMalEFcR−rbsp7の形質転換体を作製した。
【0052】
実施例7
実施例1から実施例6で作製した各形質転換体を用いて、rhFcγRIを発現させ、その量を評価した。
(1)実施例1で作製したpETMalEFcR−p7形質転換体、実施例2で作製したpETMalEFcR−rbs形質転換体、実施例3で作製したpETMalEFcR−m4形質転換体、実施例4で作製したpETMalEFcR−p4形質転換体、実施例5で作製したpETMalEFcR−p10形質転換体、および実施例6で作製したpETMalEFcR−rbsp7形質転換体、それぞれに対して、下記の方法により各形質転換体の培養および発現の誘導を行なった。
(1−1)各形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地に接種し、37℃で一晩振とう培養し、前培養液とした。
(1−2)新たに50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地に、前培養液を接種し37℃で振とう培養した。
(1−3)培養液の濁度(OD
600)の値が約0.5になったところで、培養温度を20℃にして30分培養後、IPTGを終濃度0.01mMとなるように培養液に添加することで発現の誘導を行ない、引き続き20℃で22時間振とう培養した。
(1−4)培養後、遠心操作により得られた各形質転換体の菌体から、BugBuster protein extraction Kit(Novagen社製)を用いて可溶性タンパク質抽出液を調製した。
(2)可溶性タンパク質抽出液中のrhFcγRIのタンパク質量を下記に示すELISA(Enzyme−Linked Immunosorbent Assay)法により評価した。
(2−1)96穴マイクロプレートのウェルに、抗体であるガンマグロブリン(化学及血清療法研究所製)を濃度1μg/wellで固定し(4℃、18時間)、StartingBlock Blocking Buffers(PIERCE社製)によりブロッキングした。
(2−2)ブロッキング後、(1−4)で調製した可溶性タンパク質抽出液を段階希釈し、ELISA反応に供した(30℃、2時間)。
(2−3)続いて0.2%(w/v)のTween 20と150mMのNaClを含むTris−HCl緩衝液(pH8.0)で洗浄後、Horseradish Peroxidase 抗His−Tag抗体試薬(BETHYL社製)を添加し、30℃で2時間反応した。
(2−4)反応後、(2−3)で使用した緩衝液で洗浄を行ない、TMB Peroxidase Substrate(KPL社製)を添加し、450nmの吸光度を測定した。
(2−5)既知濃度のrhFcγRI市販品(Recombinant Human FcγRI/CD64;R&D systems社製)を基準とし、測定吸光度から可溶性タンパク質抽出液中のrhFcγRIのタンパク質濃度を算出することで、培養液あたりのrhFcγRIの発現量を算出した。
【0053】
n=4で測定を行なった結果、各形質転換体による培養液あたりのrhFcγRIの発現量は、多い順に、pETMalEFcR−p10形質転換体(実施例5/配列番号5:823±158μg/L)、pETMalEFcR−rbsp7形質転換体(実施例6/配列番号6:700±89μg/L)、pETMalEFcR−rbs形質転換体(実施例2/配列番号1:539±50μg/L)、pETMalEFcR−m4形質転換体(実施例3/配列番号2:490±65μg/L)、pETMalEFcR−p7形質転換体(実施例1/配列番号4:466±23μg/L)、pETMalEFcR−p4形質転換体(実施例4/配列番号3:410±84μg/L)、であった。実施例1から実施例6で作製した形質転換体のうち、実施例5で作製したpETMalEFcR−p10形質転換体が、特に効率よくrhFcγRIを発現できることがわかる。
【0054】
比較例1
実施例1で作製したプラスミドベクターpETMalEFcR−p7に含まれる配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの部分を、配列番号26に記載の塩基配列からなるプラスミドベクターpET−26b(+)由来の既存のオリゴヌクレオチド(5’−CTTTAAGAAGGAGATATACAT−3’)に置換した構造である、プラスミドベクターpETMalEFcR、および前記ベクターにより得られる形質転換体を、下記の方法により作製した。
(1)実施例1で作製した組換えプラスミドベクターpETMalEFcR−p7(
図2)を制限酵素NdeIとHindIIIで消化することで、配列番号20に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド断片を作製した。なお、配列番号20に記載のアミノ酸配列のうち、1番目のメチオニンから26番目までのアラニンまでがMalEシグナルペプチド(配列番号8)に相当し、34番目のグルタミンから307番目のバリンまでがrhFcγRI(配列番号76に記載のアミノ酸配列のうち、16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域)に相当し、308番目から313番目のヒスチジンがポリヒスチジンタグに相当する。
(2)(1)で作製した断片を、あらかじめ制限酵素NdeIとHindIIIで消化したpET−26b(+)プラスミドベクターにライゲーションすることで、プラスミドベクターpETMalEFcRを作製した。
(3)プラスミドベクターpETMalEFcRを用いて、塩化カルシウム法により大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、pETMalEFcR形質転換体を作製した。
(4)pETMalEFcR形質転換体を用いて、実施例7と同様の方法で、rhFcγRIの発現および発現量の評価を行なった。
【0055】
n=4で測定を行なった結果、pETMalEFcR形質転換体による培養液あたりのrhFcγRI発現量は293±10μg/Lであり、前記発現量は、実施例1から実施例6で作製した、本発明のベクターを用いて得られた形質転換体によるrhFcγRIの発現量に比べて少なかった。すなわち、rhFcγRIを発現可能な形質転換体において、配列番号1から6のいずれかに記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むプラスミドベクターで形質転換して得られた形質転換体(実施例1から実施例6で作製した形質転換体)は、配列番号1から6に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含まないプラスミドベクター(pETMalEFcR)で形質転換して得られた形質転換体(本比較例で作製した形質転換体)と比較し、より高効率にrhFcγRIを発現させることができることがわかる。
【0056】
実施例8
配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むヒトFc結合性タンパク質発現ベクター、および前記ベクターにより得られる形質転換体を以下の方法で作製した。
(1)ペリプラズムにタンパク質を分泌させるシグナルペプチドとして、PelBシグナルペプチド(配列番号7)を選択し、下記に示す二段階PCRにより、前記シグナルペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを作製した。
(1−1)一段階目のPCRを、表1の反応液組成のもと、98℃で10秒間の第一ステップ、55℃で5秒間の第二ステップ、72℃で1分間の第三ステップを1サイクルとした反応を5サイクル行なった後、4℃に冷却することで行なった。なお、オリゴヌクレオチドとして、配列番号27(5’−TATACATATGAAATACCTATTGCCTACGGCAGCCGCT−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、配列番号28(5’−ATTGTTATTACTCGCTGCCCAACCAGCGATGGCC−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、配列番号29(5’−GCAGCGAGTAATAACAATCCAGCGGCTGCCGTAGGCA−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、および配列番号30(5’−TTTGGTGGTATCTACTTGGGCCATCGCTGGT−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いた。
(1−2)二段階目のPCRを、表2の反応液組成のもと、98℃で10秒間の第一ステップ、55℃で5秒間の第二ステップ、72℃で1分間の第三ステップを1サイクルとした反応を30サイクル行なった後、4℃に冷却することで行ない、PelBシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドを作製した。なお、鋳型としては一段階目のPCR産物を用い、PCRプライマーとしては配列番号27に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号30に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いた。
(2)鋳型として実施例1で作製したプラスミドベクターpECFcR(
図2)を、PCRプライマーとして配列番号31(5’−CAAGTAGATACCACCAAAGCTGTGATTACGCTGCAACCACCGT−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号18に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用い、表2の反応液組成のもと、98℃で10秒間の第一ステップ、55℃で5秒間の第二ステップ、72℃で1分間の第三ステップを1サイクルとした反応を30サイクル行なった後、4℃に冷却するPCRを行なうことで、C末端側にポリヒスチジンタグを付加したrhFcγRIをコードするポリヌクレオチドを作製した。
(3)(2)で作製したC末端側にポリヒスチジンタグを付加したrhFcγRIをコードするポリヌクレオチドと、(1)で作製したPelBシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドとを下記に示す二段階PCRで連結した。
(3−1)一段階目のPCRを、前記二つのポリヌクレオチドを用いて、表3の反応液組成のもと、98℃で10秒間の第一ステップ、55℃で5秒間の第二ステップ、72℃で1分間の第三ステップを1サイクルとした反応を5サイクル行なった後、4℃に冷却することで行なった。
【0057】
【表3】
【0058】
(3−2)二段階目のPCRを、鋳型として一段階目のPCR産物を、PCRプライマーとして配列番号27に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号18に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いて、表2の反応液組成のもと、98℃で10秒間の第一ステップ、55℃で5秒間の第二ステップ、72℃で1分間の第三ステップを1サイクルとした反応を30サイクル行なった後、4℃に冷却することで行なった。
この二段階PCRにより、PelBシグナルペプチド、rhFcγRIおよびポリヒスチジンタグからなる一連のポリペプチド(配列番号33)をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド(配列番号32)を作製した。なお、配列番号33に記載のアミノ酸配列のうち、1番目のメチオニンから22番目までのアラニンまでがPelBシグナルペプチド(配列番号7)に相当し、23番目のグルタミンから296番目のバリンまでがrhFcγRI(配列番号76に記載のアミノ酸配列のうち、16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域)に相当し、297番目から302番目までのヒスチジンがポリヒスチジンタグに相当する。
(4)(3)で作製した配列番号32に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドを制限酵素NdeIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NdeIとHindIIIで消化した実施例1で作製したプラスミドベクターpETMalE−p7(
図2)にライゲーションすることで、プラスミドベクターpETPelBFcR−p7を作製した。プラスミドベクターpETPelBFcR−p7には、5’末端側から、配列番号4に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド、PelBシグナルペプチド(配列番号7)をコードするオリゴヌクレオチド、rhFcγRIをコードするポリヌクレオチド、ポリヒスチジンタグをコードするオリゴヌクレオチドの順に配置されている。
(5)プラスミドベクターpETPelBFcR−p7を用いて、塩化カルシウム法により大腸菌BL21(DE3)株を形質転換することで、pETPelBFcR−p7形質転換体を作製した。
【0059】
pETPelBFcR−p7形質転換体を用いて、実施例7と同様の方法により活性型rhFcγRIを発現させ、その発現量を評価した。n=3で測定を行なった結果、pETPelBFcR−p7形質転換体による培養液あたりの活性型rhFcγRIの発現量は292±36μg/Lであった。
【0060】
比較例2
実施例8で作製したプラスミドベクターpETPelBFcR−p7に含まれる配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの部分を、配列番号26に記載の塩基配列からなるプラスミドベクターpET−26b(+)由来の既存のオリゴヌクレオチド(5’−CTTTAAGAAGGAGATATACAT−3’)に置換した構造である、プラスミドベクターpETPelBFcR、および前記ベクターにより得られる形質転換体を、下記の方法により作製した。
(1)実施例8で作製した、配列番号32に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドを制限酵素NdeIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NdeIとHindIIIで消化したpET−26b(+)プラスミドベクターにライゲーションすることで、プラスミドベクターpETPelBFcRを作製した。
(2)プラスミドベクターpETPelBFcRを用いて、塩化カルシウム法により大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、pETPelBFcR形質転換体を作製した。
このpETPelBFcRの形質転換体を用いて、実施例7と同様の方法によりrhFcγRIを発現させ、その発現量を評価した。n=3で測定を行なった結果、pETPelBFcR形質転換体による培養液あたりのrhFcγRIの発現量は48±3μg/Lであり、前記発現量は、実施例8で作製した、本発明のベクターを用いて得られた形質転換体によるrhFcγRIの発現量に比べて少なかった。すなわち、rhFcγRIを発現可能な形質転換体において、配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むプラスミドベクター(pETPelBFcR−p7)で形質転換して得られた形質転換体(実施例8で作製した形質転換体)は、配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含まないプラスミドベクター(pETPelBFcR)で形質転換して得られた形質転換体(本比較例で作製した形質転換体)と比較し、より高効率にrhFcγRIを発現させることができることがわかる。
【0061】
実施例9
配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むヒトFc結合性タンパク質発現ベクター、および前記ベクターにより得られる形質転換体を以下の方法で作製した。
(1)ペリプラズムにタンパク質を分泌させるシグナルペプチドとして、TorTシグナルペプチド(配列番号9)を選択し、以下に示す二段階PCRにより、TorTシグナルペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを作製した。
(1−1)一段階目のPCRを、表1の反応液組成のもと、98℃で10秒間の第一ステップ、55℃で5秒間の第二ステップ、72℃で1分間の第三ステップを1サイクルとした反応を5サイクル行なった後、4℃に冷却することで行なった。なお、オリゴヌクレオチドとして、配列番号34(5’−TATACATATGCGCGTACTGCTATTTTTAC−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、配列番号35(5’−TTCTTTCCCTTTTCATGTTGCCGGCATTTTCG−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、配列番号36(5’−TGAAAAGGGAAAGAAGTAAAAATAGCAGTACG−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、および配列番号37(5’−TTTGGTGGTATCTACTTGCGAAAATGCCGGCAACA−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いた。
(1−2)二段階目のPCRを、表2の反応液組成のもと、98℃で10秒間の第一ステップ、55℃で5秒間の第二ステップ、72℃で1分間の第三ステップを1サイクルとした反応を30サイクル行なった後、4℃に冷却することで行ない、TorTシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドを作製した。なお、鋳型としては一段階目のPCR産物を用い、PCRプライマーとしては配列番号34に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号37に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドを用いた。
(2)TorTシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドと、実施例8で作製したC末端にポリヒスチジンタグを付加したrhFcγRIをコードするポリヌクレオチドを下記に示す二段階PCRで連結した。
(3−1)一段階目のPCRを、前記二つのポリヌクレオチドを用いて、表3の反応液組成のもと、98℃で10秒間の第一ステップ、55℃で5秒間の第二ステップ、72℃で1分間の第三ステップを1サイクルとした反応を5サイクル行なった後、4℃に冷却することで行なった。
(3−2)二段階目のPCRを、鋳型として一段階目のPCR産物を、PCRプライマーとして配列番号34に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号18に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いて、表2の反応液組成のもと、98℃で10秒間の第一ステップ、55℃で5秒間の第二ステップ、72℃で1分間の第三ステップを1サイクルとした反応を30サイクル行なった後、4℃に冷却することで行なった。
この二段階PCRにより、TorTシグナルペプチド、rhFcγRIおよびHisタグペプチドからなる一連のポリペプチド(配列番号39)をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド(配列番号38)を作製した。なお、配列番号39に記載のアミノ酸配列のうち、1番目のメチオニンから18番目までのセリンまでがTorTシグナルペプチド(配列番号9)に相当し、19番目のグルタミンから292番目のバリンまでがrhFcγRI(配列番号76に記載のアミノ酸配列のうち、16番目のグルタミンから289番目のバリンまでの領域)に相当し、293番目から298番目までのヒスチジンがポリヒスチジンタグに相当する。
(4)(3)で作製した配列番号38に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドを制限酵素NdeIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NdeIとHindIIIで消化した実施例1で作製したプラスミドベクターpETMalE−p7(
図2)にライゲーションすることで、プラスミドベクターpETTorTFcR−p7を作製した。プラスミドベクターpETTorTFcR−p7には、5’末端側から、配列番号4に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド、TorTシグナルペプチド(配列番号9)をコードするオリゴヌクレオチド、rhFcγRIをコードするポリヌクレオチド、Hisタグペプチドをコードするオリゴヌクレオチドの順に配置されている。
(5)組換えプラスミドベクターpETTorTFcR−p7を用いて、塩化カルシウム法により大腸菌BL21(DE3)を形質転換し、pETTorTFcR−p7形質転換体を作製した。
(6)pETTorTFcR−p7形質転換体を用いて、実施例7と同様の方法によりrhFcγRIを発現させ、その発現量を評価した。n=3で測定を行なった結果、pETTorTFcR−p7の形質転換体による培養液あたりのrhFcγRIの発現量は320±61μg/Lであった。
【0062】
比較例3
実施例9で作製したプラスミドベクターpETTorTFcR−p7に含まれる配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの部分を、配列番号26に記載の塩基配列からなるプラスミドベクターpET−26b(+)由来の既存のオリゴヌクレオチド(5’−CTTTAAGAAGGAGATATACAT−3’)に置換した構造である、プラスミドベクターpETTorTFcR、および前記ベクターにより得られる形質転換体を、下記の方法により作製した。
(6)実施例9で作製した配列番号38に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドを、制限酵素NdeIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NdeIとHindIIIで消化したpET−26b(+)プラスミドベクターにライゲーションすることで、プラスミドベクターpETTorTFcRを作製した。
(7)プラスミドベクターpETTorTFcRを用いて、大腸菌BL21(DE3)を形質転換し、pETTorTFcR形質転換体を作製した。
pETTorTFcR形質転換体を用いて、実施例7と同様の方法によりrhFcγRIを発現させ、その発現量を評価した。n=3で測定を行なった結果、pETTorTFcR形質転換体による培養液あたりの活性型rhFcγRIの発現量は13±1μg/Lであった。前記発現量は、実施例9で作製した、本発明のベクターを用いて得られた形質転換体によるrhFcγRIの発現量に比べて少なかった。すなわち、rhFcγRIを発現可能な形質転換体において、配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むプラスミドベクター(pETTorTFcR−p7)で形質転換して得られた形質転換体(実施例9で作製した形質転換体)は、配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含まないプラスミドベクター(pETTorTFcR)で形質転換して得られた形質転換体(本比較例で作製した形質転換体)と比較し、より高効率にrhFcγRIを発現させることができることがわかる。
【0063】
参考例
本例は、単に、配列番号1から6に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの、大腸菌を宿主としたときの翻訳効率の高さを評価したものであり、本発明を構成するものではない。
【0064】
配列番号1から6および26に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをヒト由来タンパク質以外タンパク質をコードするポリヌクレオチドの5’末端側に隣接させることによる、前記ポリヌクレオチドの発現の翻訳効率への影響を評価した。本例ではポリヌクレオチドとして、緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein、GFP)遺伝子を用いた。GFPは大腸菌宿主の細胞質内で活性型として良好に発現することが知られている。
(1)DNAworks法(Nucleic Acids Res.,30,e43,2002:非特許文献2)により大腸菌型コドンからなるGFPをコードするポリヌクレオチド(GFP遺伝子)を設計した。
(2)(1)で設計したGFP遺伝子を作製するために、配列番号40から73に記載の配列からなる、合計34種類のオリゴヌクレオチドを合成した。
(3)(2)で合成したオリゴヌクレオチドから、下記に示す二段階PCRにより、GFP遺伝子を含むポリヌクレオチドを作製した。
(3−1)一段階目のPCRを、表4の反応液組成のもと、94℃で5分間の熱処理、引き続き94℃で30秒間の第一ステップ、65℃で30秒間の第二ステップ、72℃で1分間の第三ステップを1サイクルとした反応を25サイクル行ない、72℃で7分間保持後、4℃に冷却することで行なった。なお、表4に記載のDNAミックスは、配列番号40から73に記載の配列からなる各合成オリゴヌクレオチド(計34種類)の溶液(濃度:50pmol/μL)をそれぞれ一定量採取し、混合した溶液を指す。
【0065】
【表4】
【0066】
(3−2)第二段階目のPCRを、表5の反応液組成のもと、94℃で5分間の熱処理、引き続き94℃で30秒間の第一ステップ、60℃で30秒間の第二ステップ、72℃で1分間の第三ステップを1サイクルとした反応を25サイクル行ない、72℃で7分間保持後、4℃に冷却することで行なった。なお、鋳型としては一段階目のPCR反応液を用い、PCRプライマーとしては配列番号40(5’−GCTCATATGAGCAAGGGCGAAGAGCTGTTCACCGGCG−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号73(5’−GAAAAGCTTTTCCAGACCCGCCTTATACAGTTCATCCATGCC−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いた。この二段階PCRにより、GFP遺伝子を含むポリヌクレオチドを作製した。
【0067】
【表5】
【0068】
(4)配列番号1から6および26に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドのうちのいずれかと、GFP遺伝子とを含むプラスミドベクター、および前記ベクターによる形質転換体の作製を以下の方法により行なった。
(4−1)(3)で作製したGFP遺伝子を含むポリヌクレオチドを、制限酵素NdeIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NdeIとHindIIIで消化した実施例1で作製したプラスミドベクターpETMalEFcR−p7(
図2)にライゲーションすることで、プラスミドベクターpETGFP−p7を作製した。プラスミドベクターpETGFP−p7の概要とその作製工程を
図3に示す。
(4−2)組換えプラスミドベクターpETGFP−p7を用いて、大腸菌BL21(DE3)を形質転換し、pETGFP−p7形質転換体を作製した。プラスミドベクターpETGFP−p7(
図3)には、C末端側にポリヒスチジンタグが付加されたGFP遺伝子(配列番号75)が含まれ、配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの3’末端に前記GFP遺伝子が連続するよう配置した。プラスミドベクターpETGFP−p7中の、制限酵素BglII認識サイトからBpu1102I認識サイトまでの塩基配列を配列番号74に示す。配列番号74に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドには、C末端側にHisタグペプチドが付加されたGFP遺伝子(配列番号75)と、その5’末端側に配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、が含まれている。
(4−3)前述したGFP遺伝子を含むポリヌクレオチド(配列番号74)を制限酵素NdeIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NdeIとHindIIIで消化した実施例2で作製したプラスミドベクターpETMalEFcR−rbsにライゲーションすることで、プラスミドベクターpETGFP−rbsを作製した。プラスミドベクターpETGFP−rbsは、pETGFP−p7に含まれる配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの部分を、配列番号1に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドに置換した構造である。その後、プラスミドベクターpETGFP−rbsを用いて、大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、pETGFP−rbs形質転換体を作製した。
(4−4)前述したGFP遺伝子を含むポリヌクレオチド(配列番号74)を制限酵素NdeIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NdeIとHindIIIで消化した実施例3で作製したプラスミドベクターpETMalEFcR−m4にライゲーションすることで、プラスミドベクターpETGFP−m4を作製した。プラスミドベクターpETGFP−m4は、pETGFP−p7に含まれる配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの部分を、配列番号2に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドに置換した構造である。その後、プラスミドベクターpETGFP−m4を用いて、大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、pETGFP−m4形質転換体を作製した。
(4−5)前述したGFP遺伝子を含むポリヌクレオチド(配列番号74)を制限酵素NdeIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NdeIとHindIIIで消化した実施例4で作製したプラスミドベクターpETMalEFcR−p4にライゲーションすることで、プラスミドベクターpETGFP−p4を作製した。プラスミドベクターpETGFP−p4は、pETGFP−p7に含まれる配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの部分を、配列番号3に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドに置換した構造である。その後、プラスミドベクターpETGFP−p4を用いて、大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、pETGFP−p4形質転換体を作製した。
(4−6)前述したGFP遺伝子を含むポリヌクレオチド(配列番号74)を制限酵素NdeIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NdeIとHindIIIで消化した実施例5で作製したプラスミドベクターpETMalEFcR−p10にライゲーションすることで、プラスミドベクターpETGFP−p10を作製した。プラスミドベクターpETGFP−p10は、pETGFP−p7に含まれる配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの部分を、配列番号5に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドに置換した構造である。その後、プラスミドベクターpETGFP−p10を用いて、大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、pETGFP−p10形質転換体を作製した。
(4−7)前述したGFP遺伝子を含むポリヌクレオチド(配列番号74)を制限酵素NdeIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NdeIとHindIIIで消化した実施例6で作製したプラスミドベクターpETMalEFcR−rbsp7にライゲーションすることで、プラスミドベクターpETGFP−rbsp7を作製した。プラスミドベクターpETGFP−rbsp7は、pETGFP−p7に含まれる配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの部分を、配列番号6に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドに置換した構造である。その後、プラスミドベクターpETGFP−rbsp7を用いて、大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、pETGFP−rbsp7形質転換体を作製した。
(4−8)前述したGFP遺伝子を含むポリヌクレオチド(配列番号74)を制限酵素NdeIとHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NdeIとHindIIIで消化した比較例1で作製したプラスミドベクターpETMalEFcRにライゲーションすることで、プラスミドベクターpETGFPを作製した。プラスミドベクターpETGFPは、pETGFP−p7に含まれる配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの部分を、配列番号26に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドに置換した構造である。その後、プラスミドベクターpETGFPを用いて、大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、pETGFP形質転換体を作製した。
(5)配列番号1から6および26に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドが、3’末端に隣接するGFP遺伝子の発現の翻訳効率に与える影響を評価した。
図4には該翻訳効率の評価方法の概略図を示す。GFP発現量が翻訳効率を反映するように、転写効率はpETシステム(Novagen社製)を利用し、培養液へのIPTGの添加量により制御した。発現されるGFPのタンパク量と蛍光強度には相関があることから(Scholz,O.ら,Eur.J.Biochem.,267,1565−1570,2000、非特許文献3)、GFPの蛍光強度によりGFPの発現量(翻訳効率)を評価した。
(5−1)作製したpETGFP形質転換体、pETGFP−rbs形質転換体、pETGFP−m4形質転換体、pETGFP−p4形質転換体、pETGFP−p7形質転換体、pETGFP−p10形質転換体、およびpETGFP−rbsp7形質転換体を50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地に接種し、37℃で一晩振とう培養することで前培養液を得た。
(5−2)96穴ディープウェルプレートの各ウェルに、50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地800μLを入れ、各形質転換体の前培養液を20μL接種した。これをBioshaker M・BR−022UP(TAITEC社製)を用いて、37℃で1.5時間、1000rpmで振とう培養した。
(5−3)培養開始から1.5時間後に温度を20℃に変えて、1000rpmで30分間振とう培養後、IPTGを添加して発現の誘導を行なった。IPTGの添加は、培養液の終濃度で0.01mM、0.05mMまたは0.1mMとなるように、IPTG濃縮液(50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地に溶解)を各80μLずつ添加することで行なった。
(5−4)IPTG添加後、20℃、1000rpmでさらに22時間、振とう培養した。なお、ブランク試験として、IPTG濃縮液の代わりに50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地80μLを添加して、20℃、1000rpmでさらに22時間、振とう培養する試験を行なっている。
(5−5)誘導開始から22時間後に各条件の培養液を採取し、0.85%のNaCl溶液で3倍希釈後、96穴プレートに1ウェルあたり100μL入れ、蛍光マイクロプレートリーダー(InfiniteM200,TECAN社製)を用いて、培養液の濁度(OD
600)と培養液のGFP蛍光強度(励起波長:488nm、蛍光波長:530nm)をn=3で測定した。
【0069】
誘導開始から22時間後の培養液濁度あたりのGFP蛍光強度を
図5に示す。
図5に示すように、終濃度0.01mM、0.05mM、0.1mM、いずれのIPTG濃度で誘導させても、pETGFP形質転換体が培養液濁度あたりのGFP蛍光強度が強く、続いてpETGFP−p4形質転換体、pETGFP−m4形質転換体、pETGFP−p7形質転換体、pETGFP−p10形質転換体、pETGFP−rbs形質転換体、pETGFP−rbsp7形質転換体の順に、培養液濁度あたりのGFP蛍光強度が強い傾向が認められた。
【0070】
図5の結果から、pET−26b(+)プラスミドベクター由来の既存の塩基配列(配列番号26)のポリヌクレオチドが、その3’末端に隣接するGFP遺伝子の発現の翻訳効率を高く制御する一方、配列番号1から6に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは、配列番号26に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドに比べ、いずれもGFP遺伝子の発現の翻訳効率が低いことがわかる。なお翻訳効率の高さは、高い順に、配列番号3、配列番号2、配列番号4、配列番号1、配列番号5、配列番号6であった。
【0071】
実施例10
配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むヒトエリスロポエチン結合性タンパク質発現ベクター、および前記ベクターにより得られる形質転換体を以下の方法で作製した。
(1)C末端側にポリヒスチジンタグを付加したヒトエリスロポエチン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドの合成を以下に示す二段階PCRによって行なった。
(1−1)一段階目のPCRを、鋳型としてEPOR cDNA(Human)(OriGene Technologies社製、カタログ番号:SC125440)を、PCRプライマーとして配列番号78(5’−CAGGATCCCCCGGGAGAGCTCCGCCGCCTAACCTC−3’)に記載の制限酵素SacI認識配列を配した塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号79(5’−TTATCTAGATTAATGATGATGATGATGATGGTCCAGGTCGCTAGG−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いて、表2の反応組成のもと、98℃で10秒間の第一ステップ、55℃で5秒間の第二ステップ、72℃で44秒間の第三ステップを1サイクルとした反応を30サイクル行なった。このPCR産物をEPOR1とした。
(1−2)二段階目のPCRを、鋳型としてEPOR1を、PCRプライマーとして配列番号78に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号80(5’−TTATCTAGACCTAGGTTAATGATGATGATGATGATG−3’)に記載の制限酵素XbaI認識配列を含む塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いて、表2の反応組成のもと、98℃で10秒間の第一ステップ、55℃で5秒間の第二ステップ、72℃で44秒間の第三ステップを1サイクルとした反応を30サイクル行なった。このPCR産物をEPOR2とした。
(2)EPOR2を、制限酵素SacIとXbaIで消化後、制限酵素SacIとXbaIで消化したプラスミドベクターpUC19(GenBank No.L09137)にライゲーションし、それを用いて大腸菌JM109株を形質転換した。
(3)得られた形質転換体を培養後、定法に従って、C末端側にポリヒスチジンタグを付加したヒトエリスロポエチン結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドベクターpUC−EPORを調製した。プラスミドベクターpUC−EPORの概要とその作製工程を
図6に示す。
(4)鋳型としてプラスミドベクターpUC−EPOR(
図6)を、PCRプライマーとして配列番号81(5’−CGGTCATGAAAGCTCCGCCGCCTAACCTTCCGGAC−3’)に記載の制限酵素BspHI認識配列を含む塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号82(5’−GAGCGGATAACAATTTCACACAGG−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いて、表2の反応組成に従い、98℃で10秒間の第一ステップ、55℃で5秒間の第二ステップ、72℃で44秒間の第三ステップを1サイクルとした反応を30サイクル行なった後、4℃に冷却することでPCRを行なった。このPCR産物をEPOR3とした。
(5)EPOR3を、制限酵素BspHI(消化後に制限酵素NcoI消化断片と結合可能な突出末端を形成)とHindIIIで消化後、あらかじめ制限酵素NcoIとHindIIIで消化した実施例1に記載のプラスミドベクターpETMalE−p7(
図1)にライゲーションし、それを用いて大腸菌JM109株を形質転換した。
(6)得られた形質転換体を培養後、定法に従いプラスミドベクターpETMalE−p7−Eを調製した。プラスミドベクターpETMalE−p7−Eの概要とその作製工程を
図7に示した。
(7)鋳型としてプラスミドベクターpUC−EPOR(
図6)を、PCRプライマーとして配列番号83(5’−TCCGCTAGCGCTCTCGCCGCTCCGCCGCCTAACCT−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号82に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いて、表2の反応組成に従い、98℃で10秒間の第一ステップ、55℃で5秒間の第二ステップ、72℃で44秒間の第三ステップを1サイクルとした反応を30サイクル行なった。このPCR産物をEPOR4とした。
(8)鋳型として実施例1に記載のプラスミドベクターpETMalE−p7(
図1)を、PCRプライマーとして配列番号84(5’−CCCTCTAGAAATAATTTTGTTTAAC−3’)に記載の制限酵素XbaI認識配列を含む塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号85(5’−GGCGAGAGCGCTAGCGGAAAACATCATC−3’)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いて、表2の反応組成に従い、98℃で10秒間の第一ステップ、55℃で5秒間の第二ステップ、72℃で44秒間の第三ステップを1サイクルとした反応を30サイクル行なった。このPCR産物をPCRMalEとした。
(9)PCRを用いて、PCRMalEとEPOR4の連結を行なった。鋳型としてEPOR4およびPCRMalEの混合液を、PCRプライマーとして配列番号84に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドおよび配列番号82に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いて、表2の反応組成に従い、98℃で10秒間の第一ステップ、55℃で5秒間の第二ステップ、72℃で44秒間の第三ステップを1サイクルとした反応を30サイクル行なった。このPCR産物をPCRMalE−EPORとした。
(10)PCRMalE−EPORを制限酵素XbaIで消化後、制限酵素XbaIで消化しアルカリホスファターゼで脱リン酸化処理したプラスミドベクターpETMalE−p7−E(
図7)にライゲーションし、配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むヒトエリスロポエチン結合性タンパク質発現ベクターであるプラスミドベクターpETMalE−p7−EPORを作製した。
(11)プラスミドベクターpETMalE−p7−EPORを用いて、大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、pETMalE−p7−EPOR形質転換体を作製した。プラスミドベクターpETMalE−p7−EPORの概要とその作製工程を
図8に示す。
【0072】
プラスミドベクターpETMalE−p7−EPOR(
図8)には、5’末端側から、配列番号4に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド、MalEシグナルペプチド(配列番号8)をコードするオリゴヌクレオチド、ヒトエリスロポエチン結合性タンパク質(配列番号77)をコードするポリヌクレオチド、ポリヒスチジンタグをコードするオリゴヌクレオチドの順に配置されている。プラスミドベクターpETMalE−p7−EPOR(
図8)のうち、制限酵素BglII認識サイトからHindIII認識サイトまでの塩基配列を、配列番号86に示す。なお、配列番号86に記載の塩基配列のうち、88番目から115番目までのヌクレオチドが配列番号4に相当し、116番目から193番目までのヌクレオチドがMalEシグナルペプチド(配列番号8)をコードするオリゴヌクレオチドに相当し、194番目から868番目までのヌクレオチドがヒトエリスロポエチン結合性タンパク質(配列番号77)をコードするオリゴヌクレオチドに相当し、869番目から886番目のヌクレオチドがポリヒスチジンタグをコードするオリゴヌクレオチドに相当する。配列番号87には配列番号86に記載の塩基配列のうち、116番目から886番目までのヌクレオチドからの翻訳により得られるポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
【0073】
実施例11
配列番号1に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むヒトエリスロポエチン結合性タンパク質発現ベクター、および前記ベクターにより得られる形質転換体を以下の方法で作製した。
(1)実施例10で作製したpETMalE−p7−EPOR(
図8)を制限酵素NdeIとHindIIIで消化後、ヒトエリスロポエチン結合性タンパク質(配列番号77)をコードするオリゴヌクレオチドを含むポリヌクレオチド断片を、あらかじめ制限酵素NdeIとHindIIIで消化した、実施例2で作製したプラスミドベクターpETMalEFcR−rbsにライゲーションし、プラスミドベクターpETMalE−rbs−EPORを作製した。プラスミドベクターpETMalE−rbs−EPORは、プラスミドベクターpETMalE−p7−EPOR(
図8)に含まれる配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの部分を、配列番号1に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドに置換した構造である。
(2)プラスミドベクターpETMalE−rbs−EPORを用いて、大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、pETMalE−rbs−EPOR形質転換体を作製した。
【0074】
実施例12
配列番号2に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むヒトエリスロポエチン結合性タンパク質発現ベクター、および前記ベクターにより得られる形質転換体を以下の方法で作製した。
(1)実施例10で作製したpETMalE−p7−EPOR(
図8)を制限酵素NdeIとHindIIIで消化後、ヒトエリスロポエチン結合性タンパク質(配列番号77)をコードするオリゴヌクレオチドを含むポリヌクレオチド断片を、あらかじめ制限酵素NdeIとHindIIIで消化した、実施例3で作製したプラスミドベクターpETMalEFcR−m4にライゲーションし、プラスミドベクターpETMalE−m4−EPORを作製した。プラスミドベクターpETMalE−m4−EPORは、プラスミドベクターpETMalE−p7−EPOR(
図8)に含まれる配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの部分を、配列番号2に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドに置換した構造である。
(2)プラスミドベクターpETMalE−m4−EPORを用いて、大腸菌BL21(DE3)を形質転換し、pETMalE−m4−EPOR形質転換体を作製した。
【0075】
実施例13
配列番号3に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むヒトエリスロポエチン結合性タンパク質発現ベクター、および前記ベクターにより得られる形質転換体を以下の方法で作製した。
(1)実施例10で作製したpETMalE−p7−EPOR(
図8)を制限酵素NdeIとHindIIIで消化後、ヒトエリスロポエチン結合性タンパク質(配列番号77)をコードするオリゴヌクレオチドを含むポリヌクレオチド断片を、あらかじめ制限酵素NdeIとHindIIIで消化した、実施例4で作製したプラスミドベクターpETMalEFcR−p4にライゲーションし、プラスミドベクターpETMalE−p4−EPORを作製した。プラスミドベクターpETMalE−p4−EPORは、プラスミドベクターpETMalE−p7−EPOR(
図8)に含まれる配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの部分を、配列番号3に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドに置換した構造である。
(2)プラスミドベクターpETMalE−p4−EPORを用いて、大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、pETMalE−p4−EPOR形質転換体を作製した。
【0076】
実施例14
配列番号5に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むヒトエリスロポエチン結合性タンパク質発現ベクター、および前記ベクターにより得られる形質転換体を以下の方法で作製した。
(1)実施例10で作製したpETMalE−p7−EPORを制限酵素NdeIとHindIIIで消化後、ヒトエリスロポエチン結合性タンパク質(配列番号77)をコードするオリゴヌクレオチドを含むポリヌクレオチド断片を、あらかじめ制限酵素NdeIとHindIIIで消化した、実施例5で作製したプラスミドベクターpETMalEFcR−p10にライゲーションし、プラスミドベクターpETMalE−p10−EPORを作製した。プラスミドベクターpETMalE−p10−EPORは、プラスミドベクターpETMalE−p7−EPOR(
図8)に含まれる配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの部分を、配列番号5に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドに置換した構造である。
(2)プラスミドベクターpETMalE−p10−EPORを用いて、大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、pETMalE−p10−EPOR形質転換体を作製した。
【0077】
実施例15
配列番号6に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むヒトエリスロポエチン結合性タンパク質発現ベクター、および前記ベクターにより得られる形質転換体を以下の方法で作製した。
(1)実施例10で作製したpETMalE−p7−EPOR(
図8)を制限酵素NdeIとHindIIIで消化後、ヒトエリスロポエチン結合性タンパク質(配列番号77)をコードするオリゴヌクレオチドを含むポリヌクレオチド断片を、あらかじめ制限酵素NdeIとHindIIIで消化した、実施例6で作製したプラスミドベクターpETMalEFcR−rbsp7にライゲーションし、プラスミドベクターpETMalE−rbsp7−EPORを作製した。プラスミドベクターpETMalE−rbsp7−EPORは、プラスミドベクターpETMalE−p7−EPORに含まれる配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの部分を、配列番号6に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドに置換した構造である。
(2)プラスミドベクターpETMalE−rbsp7−EPORを用いて、大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、pETMalE−rbsp7−EPOR形質転換体を作製した。
【0078】
比較例4
配列番号26に記載の塩基配列からなるプラスミドベクターpET−26b(+)由来の既存のオリゴヌクレオチド(5’−CTTTAAGAAGGAGATATACAT−3’)を含むヒトエリスロポエチン結合性タンパク質発現ベクター、および前記ベクターにより得られる形質転換体を以下の方法で作製した。
(1)実施例10で作製したプラスミドベクターpETMalE−p7−EPOR(
図8)を制限酵素NdeIとHindIIIで消化後、ヒトエリスロポエチン結合性タンパク質(配列番号77)をコードするオリゴヌクレオチドを含むポリヌクレオチド断片を、あらかじめ制限酵素NdeIとHindIIIで消化したpET−26b(+)プラスミドベクターにライゲーションし、プラスミドベクターpETMalE−EPORを作製した。プラスミドベクターpETMalE−EPORは、プラスミドベクターpETMalE−p7−EPOR(
図8)に含まれる配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの部分を、配列番号26に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドに置換した構造である。
(2)プラスミドベクターpETMalE−EPORを用いて、大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、pETMalE−EPOR形質転換体を作製した。
【0079】
実施例16
実施例10から15および比較例4で作製した各形質転換体を用いて、ヒトエリスロポエチン結合性タンパク質を発現させ、その量を評価した。
(1)実施例10で作製したpETMalE−p7−EPOR形質転換体、実施例11で作製したpETMalE−rbs−EPOR形質転換体、実施例12で作製したpETMalE−m4−EPOR形質転換体、実施例13で作製したpETMalE−p4−EPOR形質転換体、実施例14で作製したpETMalE−p10−EPOR形質転換体、実施例15で作製したpETMalE−rbsp7−EPOR形質転換体、および比較例4で作製したpETMalE−EPOR形質転換体を、それぞれ50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地に接種し、37℃で一晩振とう培養し、前培養液とした。
(2)新たに50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地に、(1)の培養液をそれぞれ接種し37℃で振とう培養した。
(3)培養液の濁度(OD
600)の値が約0.5になったところで培養温度を37℃から20℃に変更し、さらに30分培養後、IPTGを終濃度0.01mMとなるように培養液に添加することでヒトエリスロポエチン結合性タンパク質の発現誘導を行ない、引き続き20℃で22時間振とう培養した。
(4)培養液を遠心操作することで得られた、各形質転換体の菌体から、BugBuster protein extraction Kit(Novagen社製)を用いて可溶性タンパク質抽出画分を調製した。
(5)可溶性タンパク質抽出画分中のヒトエリスロポエチン結合性タンパク質のタンパク質量を下記に示すELISA法により測定した。
(5−1)96穴マイクロプレートのウェルに、50mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)を用いて希釈した抗エリスロポエチン受容体抗体(Monoclonal Anti−human Epo R Antibody)(R&D Systems社製、カタログ番号MAB3071)を濃度0.1μg/wellで固定し(4℃、18時間)、0.5%(w/v)のウシ血清アルブミン(BSA)を含むTBS緩衝液(20mMのTris−HCl、137mMのNaCl、2.68mMのKCl、pH7.5)によりブロッキングした。
(5−2)ブロッキング後、(4)で調製した可溶性タンパク質抽出画分を0.5%BSAを含むTBS緩衝液で段階希釈し、ELISA反応に供した(30℃、2時間)。
(5−3)0.2%(w/v)のTween 20と150mMのNaClを含むTris−HCl緩衝液(pH7.5)で洗浄後、Horseradish Peroxidase 抗His−Tag抗体試薬(BETHYL社製)を添加し、30℃で2時間反応させた。
(5−4)反応後、(5−3)で使用した緩衝液で洗浄を行ない、TMB Peroxidase Substrate(KPL社製)を添加し、450nmの吸光度を測定した。
(5−5)既知濃度のヒトエリスロポエチン結合性タンパク質(Recombinant Human EPO Receptor/EPOR)(Sino Biological社製、カタログ番号10707−H08H)を基準とし、測定吸光度から可溶性タンパク質抽出画分中のヒトエリスロポエチン結合性タンパク質のタンパク質濃度を算出することで、培養液あたりのヒトエリスロポエチン結合性タンパク質の発現量を算出した。
【0080】
各形質転換体による培養液あたりのヒトエリスロポエチン結合性タンパク質の発現量は、pETMalE−p10−EPOR形質転換体(実施例14/配列番号5:2.07±0.33mg/L)、pETMalE−p7−EPOR形質転換体(実施例10/配列番号4:1.22±0.09mg/L)、pETMalE−p4−EPOR形質転換体(実施例13/配列番号3:0.97±0.01mg/L)、pETMalE−rbsp7−EPOR形質転換体(実施例15/配列番号6:0.89±0.15mg/L)、pETMalE−rbs−EPOR形質転換体(実施例11/配列番号1:0.65±0.11mg/L)、pETMalE−m4−EPOR形質転換体(実施例12/配列番号2:0.32±0.01mg/L)、pETMalE−EPOR形質転換体(比較例4/配列番号26:0.17±0.01mg/L)であった。この結果から、プラスミドベクターpET−26b(+)由来の配列番号26に記載の塩基配列からなる既存のオリゴヌクレオチドを含むヒトエリスロポエチン結合性タンパク質発現ベクターを用いるより、本発明の配列番号1から6のいずれかに記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含むヒトエリスロポエチン結合性タンパク質発現ベクターを用いる方が、ヒトエリスロポエチン結合性タンパク質を大量に調製できることが判明した。なお、実施例10から実施例15で作製した形質転換体のうち、実施例14で作製したpETMalE−p10−EPOR形質転換体が、特に効率よくヒトエリスロポエチン結合性タンパク質を発現できることがわかる。