特許第5866838号(P5866838)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5866838
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】コネクタ嵌合構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/639 20060101AFI20160210BHJP
   H01R 13/64 20060101ALI20160210BHJP
【FI】
   H01R13/639 Z
   H01R13/64
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-156341(P2011-156341)
(22)【出願日】2011年7月15日
(65)【公開番号】特開2013-25875(P2013-25875A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100099597
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 賢二
(74)【代理人】
【識別番号】100119208
【弁理士】
【氏名又は名称】岩永 勇二
(74)【代理人】
【識別番号】100124235
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100124246
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 和光
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】前上 一
【審査官】 石川 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−182513(JP,A)
【文献】 実開昭59−164176(JP,U)
【文献】 特開2004−327347(JP,A)
【文献】 実開平05−090844(JP,U)
【文献】 特開2011−086461(JP,A)
【文献】 実開昭59−128183(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/639
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄側接続端子が雄ハウジング内に配置された雄コネクタと、雌側接続端子が雌ハウジング内に配置された雌コネクタと、前記雄ハウジングと前記雌ハウジングとが離間する方向への移動を規制する規制部材とを備え、前記雄ハウジングと前記雌ハウジングとの嵌合により前記雄側接続端子と前記雌側接続端子とが接続されるコネクタ嵌合構造であって、
前記雄ハウジングは、前記雄側接続端子を収容する本体部の外面に、前記雌ハウジングとの嵌合方向に対して交差する方向に延びる凹部を有し、
前記規制部材は、前記凹部に挿入されて固定される軸部と、前記軸部の一端に形成された頭部とを有し、
前記雄ハウジングが前記雌ハウジングに収容されているものの、前記雄ハウジングと前記雌ハウジングとが嵌合されていない状態では、前記凹部の少なくとも一部が前記雌ハウジングに遮蔽されており、
前記雌ハウジングには、前記雌ハウジングが前記雄ハウジングと嵌合されたときのみ、前記凹部全体を前記雌ハウジングに遮蔽されない状態とし、前記嵌合方向と交差する方向に前記凹部と連通して前記規制部材の前記軸部を挿通させると共に前記頭部を収容することが可能となる貫通孔が形成されている、
コネクタ嵌合構造。
【請求項2】
前記凹部は、前記雄ハウジングと前記雌ハウジングとの嵌合方向に交差する方向に延びるねじ孔であり、
前記規制部材の前記軸部には、前記ねじ孔に螺合するねじ山が形成されている、
請求項1に記載のコネクタ嵌合構造。
【請求項3】
前記規制部材は、当該規制部材を回動させるための工具が係合する係合部の形状が、プラスドライバ、マイナスドライバ、又は六角レンチによる回動を阻止し得る形状である、
請求項1又は2に記載のコネクタ嵌合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄コネクタと雌コネクタとのコネクタ嵌合構造に関し、特にボルト締め式のコネクタ嵌合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雄コネクタ側の雄側ハウジングと雌コネクタの雌側ハウジングとをボルトの締め付けによって嵌合させるボルト締め式のコネクタ嵌合構造が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のボルト締め式のコネクタ嵌合構造は、雌側ハウジングに回転可能に支持されたボルトを、雄側ハウジングに設けられたナット部に螺合することで、雄コネクタと雌コネクタとを嵌合させるように構成されている。このボルトの中心軸及びナット部の延伸方向は、雄コネクタと雌コネクタとの嵌合方向に平行である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−86461号公報
【特許文献2】特開2011−113944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このボルト締め式のコネクタ嵌合構造では、雄コネクタと雌コネクタとの嵌合が不完全な状態でも、すなわちボルトの締め付けが不完全であっても、コネクタの外観から直ちにそのことを認識することができない。従って、嵌合が適切になされているか否かを確認するためには、ボルトをドライバ等により回転させて、ボルトのゆるみがないかを調べる等の必要があった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、即ちボルト締め式のコネクタ嵌合構造ならではの課題を解決するものであり、その目的とするところは、雄ハウジングと雌ハウジングとが不完全な嵌合状態で固定されることを抑制すると共に、嵌合が適切になされているか否かを外観から判断することが可能なコネクタ嵌合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、雄側接続端子が雄ハウジング内に配置された雄コネクタと、雌側接続端子が雌ハウジング内に配置された雌コネクタと、前記雄ハウジングと前記雌ハウジングとが離間する方向への移動を規制する規制部材とを備え、前記雄ハウジングと前記雌ハウジングとの嵌合により前記雄側接続端子と前記雌側接続端子とが接続されるコネクタ嵌合構造であって、前記雄ハウジングは、前記雄側接続端子を収容する本体部の外面に、前記雌ハウジングとの嵌合方向に対して交差する方向に延びる凹部を有し、前記規制部材は、前記凹部に挿入されて固定される軸部と、前記軸部の一端に形成された頭部とを有し、前記雄ハウジングが前記雌ハウジングに収容されているものの、前記雄ハウジングと前記雌ハウジングとが嵌合されていない状態では、前記凹部の少なくとも一部が前記雌ハウジングに遮蔽されており、前記雌ハウジングには、前記雌ハウジングが前記雄ハウジングと嵌合されたときのみ、前記凹部全体を前記雌ハウジングに遮蔽されない状態とし、前記嵌合方向と交差する方向に前記凹部と連通して前記規制部材の前記軸部を挿通させると共に前記頭部を収容することが可能となる貫通孔が形成されている、コネクタ嵌合構造を提供する。
【0008】
また、前記凹部は、前記雄ハウジングと前記雌ハウジングとの嵌合方向に交差する方向に延びるねじ孔であり、前記規制部材の前記軸部には、前記ねじ孔に螺合するねじ山が形成されているとよい。
【0009】
また、前記規制部材は、当該規制部材を回動させるための工具が係合する係合部の形状が、プラスドライバ、マイナスドライバ、又は六角レンチによる回動を阻止し得る形状であるとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るコネクタ嵌合構造によれば、雄ハウジングと雌ハウジングとが不完全な嵌合状態で固定されることを抑制すると共に、嵌合が適切になされているか否かを外観から判断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係るコネクタ装置の構成例を抜け止め部材としてのボルトと共に示し、(a)は嵌合前の状態を、(b)は嵌合後の状態を示す斜視図である。
図2】雄コネクタの構成例を示し、(a)は上面部、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は(b)のA−A線断面図である。
図3】ナット部材の構成例を示す斜視図である。
図4】雌コネクタの構成例を示し、(a)は上面部、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は(b)のB−B線断面図である。
図5】ボルトの構成例を示す斜視図である。
図6】雄コネクタと雌コネクタとを嵌合した状態のコネクタ装置の嵌合構造を示し、(a)は上面図、(b)は(a)のC−C線断面図、(c)は(b)の部分拡大図である。
図7】雄ハウジングと雌ハウジングとの嵌合及び抜け止め作業の手順を示し、(a)は嵌合前の状態を、(b)は嵌合途中の状態を、(c)は嵌合が完了した状態を、(d)はボルトがナット部材に固定された状態を、それぞれ示す説明図である。
図8】(a)は実施の形態に係るボルトの係合部の形状を示す平面図、(b)〜(f)は係合部の形状の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態]
本発明の本実施の形態、及びその変形例について、図1図8を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係るコネクタ装置の構成例を規制部材としてのボルトと共に示し、(a)は嵌合前の状態を、(b)は嵌合後の状態を示す斜視図である。
【0014】
このコネクタ装置1は、例えば車両の駆動源としての電気モータとインバータとの間の電気配線を中継し、電気モータにトルクを発生させるための電流を供給するために用いられる。
【0015】
このコネクタ装置1は、雄コネクタ2と、雌コネクタ3とを備えている。雄コネクタ2は、雄ハウジング20と、雄ハウジング20内に配置された雄側接続端子21a,21b(後述)とを有している。雌コネクタ3は、雌ハウジング30と、雌ハウジング30内に配置された雌側接続端子31a,31b(後述)とを有している。雄ハウジング20及び雌ハウジング30は、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の絶縁性の樹脂からなる。
【0016】
雄ハウジング20は、その外面の一部が雌ハウジング30に収容されて、雌ハウジング30と嵌合する。また、雄ハウジング20と雌ハウジング30とは、規制部材としてのボルト4によって抜け止めされる。ボルト4、及びボルト4を用いた抜け止め機構の構成の詳細については後述する。
【0017】
(雄コネクタ2の構成)
図2は、雄コネクタ2の構成例を示し、(a)は上面部、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は(b)のA−A線断面図である。
【0018】
雄ハウジング20は、雄側接続端子21a,21b、及び雄側接続端子21a,21bにそれぞれ接続された電線22a,22bの一端部を収容する本体部20aと、本体部20aの外面に配置されたナット部材23と、本体部20aと一体に形成され、ナット部材23を保持する保持部20bとを有している。また、雄側接続端子21a,21bは、先端部が平板状に形成されている。
【0019】
本体部20aの一端は閉塞部材20aによって閉塞されている。閉塞部材20aは、電線22a,22bを挿通させる2つの挿通孔が形成され、電線22a,22bを保持している。閉塞部材20aの内側には、電線22a,22bと本体部20aとの間を封止するシール部材24が配置されている。
【0020】
保持部20bは、本体部20aの外面に立設して互いに対向し、雄ハウジング20と雌ハウジング30との嵌合方向(図1(a)に示す矢印D,D方向。以下、単に「嵌合方向」という。)に平行に延びる一対の側壁20b,20bと、一対の側壁20b,20bのそれぞれの一端を連結する橋架部20bと、一対の側壁20b,20bのそれぞれの他端を連結する橋架部20bとからなる。
【0021】
図3は、ナット部材23の構成例を示す斜視図である。ナット部材23は、嵌合方向が長手方向となるように形成された直方体状である。ナット部材23の上面23a(保持部20bに保持されたときに、雄ハウジング20の本体部20aの外面に対向する下面23bの反対側の面)には、嵌合方向に交差する方向に突出した突起23aが形成されている。このナット部材23は、例えばアルミニウムや鉄系の金属材料からなる。
【0022】
また、ナット部材23には、上面23aから下面23b側に向かって延びる凹部としてのねじ孔23cが形成されている。ねじ孔23cの内面には雌ねじが形成されている。本実施の形態では、ねじ孔23cが、上面23aから下面23bまで貫通し、嵌合方向に直交して交差する方向に延びるように形成されている。
【0023】
また、ナット部材23の長手方向の一端には、段部23dが形成されている。ナット部材23は、段部23dよりも下面23b側の部分の長手方向の長さが、段部23dよりも上面23a側の部分の長手方向の長さに比較して長く形成されている。段部23dにおける段差面23dは、上面23a及び下面23bに平行に形成されている。
【0024】
図2(e)に示すように、ナット部材23が保持部20bに保持されると、段差面23dが橋架部20bに対向し、上面23aが橋架部20bに対向する。橋架部20bは、段部23dに当接してナット部材23の長手方向一側(雌ハウジング30に対向する側)への移動を規制している。また、上面23aに形成された突起23aが橋架部20bに係止され、この係止によってナット部材23の長手方向他側(電線22a,22b側)への移動が規制されている。
【0025】
ナット部材23は、段部23dが雄ハウジング20の本体部20aと橋架部20bとの間を通過するように一対の側壁20b,20bの間に挿入され、突起23aが橋架部20bに係止されることで保持部20bに保持される。
【0026】
(雌コネクタ3の構成)
図4は、雌コネクタ3の構成例を示し、(a)は上面部、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は(b)のB−B線断面図である。
【0027】
雌ハウジング30は、雌側接続端子31a,31b、及び雌側接続端子31a,31bにそれぞれ接続された電線32a,32bの一端部を収容する本体部30aと、雄ハウジング20の一部を収容するカバー部30bとを有している。なお、カバー部30bが雄ハウジング20の全体を収容するようにしてもよい。雌側接続端子31a,31bは、雄側接続端子21a,21bと接触する先端部が、雄側接続端子21a,21bを収容する筒状に形成されている。
【0028】
本体部30aの一端は閉塞部材30aによって閉塞されている。閉塞部材30aは、電線32a,32bを挿通させる2つの挿通孔が形成され、電線32a,32bを保持している。閉塞部材30aの内側には、電線32a,32bと本体部30aとの間を封止するシール部材33が配置されている。
【0029】
カバー部30bには、雌ハウジング30が雄ハウジング20と嵌合されたときにナット部材23のねじ孔23cに連通する貫通孔30cが形成されている。より具体的には、貫通孔30cは、雌ハウジング30と雄ハウジング20との嵌合が完了したときに、ねじ孔23cと中心軸を一致させて連通する位置に形成されている。ここで、ここで、嵌合が完了した状態とは、雄ハウジング20と雌ハウジング30とが嵌合方向に互いに突き当たるまで相対移動した状態をいう。
【0030】
また、貫通孔30cは、ねじ孔23cの内径(谷の径)よりも大きな内径を有する丸孔に形成されている。つまり、雄ハウジング20と雌ハウジング30との嵌合が完了した状態で、カバー部30bの外部からねじ孔23cの全体を臨むことが可能である。
【0031】
(ボルト4の構成)
図5は、ボルト4の構成例を示す斜視図である。
【0032】
ボルト4は、ねじ孔23cに挿入されてナット部材23に固定される軸部としてのねじ部41と、ねじ部41の一端に形成された頭部42とを有している。頭部42には、ボルト4を回動させるための工具が係合する係合部43が形成されている。頭部42は、ねじ部41の外径よりも大径の円柱状に形成されている。ボルト4は、例えばアルミニウムや鉄系の金属材料からなる。なお、頭部42の外径は、ねじ部41の外径と同等、又はねじ部41の外径よりも小さくともよい。
【0033】
ねじ部41の外周面には、ねじ孔23cのねじピッチ及び内径に対応する螺旋状のねじ山41aが形成されている。本実施の形態では、ねじ部41の中心軸C方向の長さがねじ孔23cの深さと同等に形成されているが、ねじ部41の長さは、ねじ孔23cの深さより短くてもよい。
【0034】
頭部42の一端面42a(ねじ部41とは反対側の端面)には、汎用工具による回動を阻止し得る形状の係合部43が形成されている。ここで、汎用工具とは、例えばプラスドライバ(十字ねじ回し:JISB4633参照)、マイナスドライバ(すりわり付きねじ用ねじ回し:JISB4609参照)、又は六角レンチ(六角棒スパナ:JISB4648参照)等、工具先端部を被回動部材に形成された穴に差し込んで使用する工具、あるいはプライヤ等の対象物を挟持可能な工具であって、容易に入手可能なものをいう。
【0035】
本実施の形態では、係合部43が、ボルト4の中心軸Cに直交する断面における内面が四角形状で、中心軸C方向に所定の深さを有する角穴に形成されている。このボルト4は、係合部43の形状に対応した四角柱状の先端部を有する専用工具によって回動させることが可能である。
【0036】
(雄コネクタ2と雌コネクタ3との嵌合構造)
図6は、雄コネクタ2と雌コネクタ3とを嵌合した状態のコネクタ装置1の嵌合構造を示し、(a)は上面図、(b)は(a)のC−C線断面図、(c)は(b)のD部の部分拡大図である。
【0037】
雄側接続端子21aと雌側接続端子31a、及び雄側接続端子21bと雌側接続端子31bは、雄ハウジング20と雌ハウジング30との嵌合により、それぞれ電気的に接続される。
【0038】
雄コネクタ2と雌コネクタ3とが嵌合された状態において、雌ハウジング30のカバー部30bは、ナット部材23の突起23aよりも段部23d側の部分を収容している。このカバー部30bに収容される部分には、ねじ孔23cが含まれる。
【0039】
ボルト4は、ねじ部41がナット部材23のねじ孔23cに螺合してナット部材23に固定されている。ねじ部41は、カバー部30bの外面から雄ハウジング20と雌ハウジング30との嵌合方向に交差する方向(本実施の形態においては、嵌合方向に直交する方向)に貫通孔30cを介してねじ孔23cに挿入され、工具による回動によってねじ孔23cに螺合している。
【0040】
図6(c)に示すように、貫通孔30cの内径はボルト4の頭部42の外径よりも僅かに大きく形成され、ボルト4の頭部42は、そのねじ部41側の一部が貫通孔30cに収容されている。この状態で、頭部42の外周面42bは、貫通孔30cの内面30cと対向している。
【0041】
ボルト4がナット部材23に固定された状態で雄コネクタ2と雌コネクタ3とを反嵌合方向(図1(a)に示す矢印D,D方向)に相対移動させる外力が作用すると、頭部42の外周面42bと貫通孔30cの内面30cとが当接し、雄ハウジング20と雌ハウジング30との反嵌合方向への相対移動を規制する。これにより、雄ハウジング20と雌ハウジング30が離間する方向への移動が規制され、雄ハウジング20と雌ハウジング30との抜け止めがなされる。
【0042】
このように、貫通孔30cは、雌ハウジング30が雄ハウジング20と嵌合されたとき、ナット部材23のねじ孔23cと連通してボルト4の軸部41を挿通させると共に、その内面30cを頭部42の外周面42bに対向させて、頭部42を収容することが可能となる。
【0043】
(雄ハウジング20と雌ハウジング30の嵌合及び抜け止め作業手順)
次に、雄ハウジング20(雄コネクタ2)と雌ハウジング30(雌コネクタ3)との嵌合及び抜け止め作業手順の一例を図7を参照して説明する。
【0044】
図7は、雄ハウジング20と雌ハウジング30との嵌合及び抜け止め作業の手順を示し、(a)は嵌合前の状態を、(b)は嵌合途中の状態を、(c)は嵌合が完了した状態を、(d)はボルト4がナット部材23に固定された状態を、それぞれ示す。図7(b)〜(d)では、雌ハウジング30のカバー部30bに覆われた部分のナット部材23及び保持部20bの輪郭を破線で示している。
【0045】
まず、図7(a)に示すように、保持部20bにナット部材23が予め保持された雄ハウジング20を、雌ハウジング30のカバー部30bの開口側に向き合わせる。
【0046】
次に、図7(b)に示すように、カバー部30bの内側に雄ハウジング20の一端を挿入する。この嵌合未完了状態では、ナット部材23のねじ孔23cの少なくとも一部がカバー部30bにより遮蔽されている。
【0047】
次に、図7(c)に示すように、雄ハウジング20と雌ハウジング30との嵌合が完了すると、貫通孔30cの中心部にねじ孔23cが配置され、貫通孔30cとねじ孔23cとが連通する。つまり、貫通孔30cの中心軸とねじ孔23cの中心軸とがほぼ一致し、雌ハウジング30の外方から貫通孔30cを介してねじ孔23cの全体を臨むことができる状態となる。
【0048】
次に、図7(d)に示すように、雄ハウジング20と雌ハウジング30との嵌合完了状態で、工具によってボルト4を回動させ、ねじ部41をねじ孔23cに螺合させる。これにより、ボルト4の頭部42の一部が貫通孔30cに収容され、雄ハウジング20と雌ハウジング30とが抜け止めされる。
【0049】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような作用及び効果が得られる。
【0050】
(1)雌ハウジング30は、雄ハウジング20との嵌合途中の状態では、ねじ孔23cの一部をカバー部30bによって遮蔽するので、この状態でボルト4がナット部材23に固定されることを防止することができる。また、貫通孔30c及びねじ孔23cの中心がずれている場合には、ボルト4を固定しようとした作業者が貫通孔30cとねじ孔23cとのずれを容易に認識できるので、雄ハウジング20と雌ハウジング30との嵌合を完了させてからボルト4を固定する等の措置をとることができる。このように、雄ハウジング20と雌ハウジング30との嵌合が不十分な状態で、雄ハウジング20及び雌ハウジング30がボルト4によって固定されることを防ぐことが可能となる。
【0051】
(2)ボルト4は、雄ハウジング20と雌ハウジング30との嵌合が適切になされていなければ、軸部41をナット部材23に固定し、かつ頭部42を貫通孔30cに収容させることができない。従って、ボルト4の頭部42が雌ハウジング30の貫通孔30cに収容されて固定されていれば、雄ハウジング20と雌ハウジング30との嵌合がなされていると判断することができる。つまり、雄ハウジング20と雌ハウジング30とが十分に嵌合されているか否かをコネクタ装置1の外観から判断することができる。即ち、本実施の形態において、ボルト4は、雄ハウジング20と雌ハウジング30とが離間する方向への移動を規制する抜け止め機能を有する上に更に、嵌合が完全であるか否かをコネクタ装置1の外観から判断可能とする識別機能を有する。
【0052】
(3)ボルト4がナット部材23に固定されている状態では、雄コネクタ2と雌コネクタ3とを分離することができないので、雄コネクタ2と雌コネクタ3との不用意な抜脱を防止することができる。
【0053】
(4)ボルト4のねじ部41は、ねじ孔23cに形成された雌ねじに螺合して固定されるので、雄コネクタ2と雌コネクタ3とを分離する際には、ボルト4を締め付け時とは逆方向に回動させることで、ボルト4を取り外すことができる。
【0054】
(5)ボルト4の係合部43は、汎用工具による回動を阻止し得る形状であるので、コネクタ装置1の分離作業を行うことが予定されていない使用者(例えば、コネクタ装置1が搭載された車両の使用者)によって分離作業が行われることを回避し得、感電事故や短絡事故等の発生を未然に防ぎ得る。
【0055】
(6)ボルト4は、金属製のナット部材23に固定されるので、例えば雄ハウジング20の樹脂材料に雌ねじを形成し、この雌ねじにボルト4のねじ部41を螺合させる場合に比較して、雄ハウジング20の耐久性を高めることができる。
【0056】
(7)ボルト4は、ねじ部41に連続して形成された頭部42の一部が貫通孔30cに収容され、頭部42の外周面42bと貫通孔30cの内面30cとの干渉によって雄ハウジング20と雌ハウジング30との抜け止めを行うので、例えばねじ部41と頭部42との間に円柱状の軸部が介在し、この軸部を貫通孔30cの内面30cに当接させて抜け止めを行う場合に比較して、ボルト4の突出量を抑制することが可能となり、コネクタ装置1の小型化に寄与することができる。
【0057】
[実施の形態の変形例]
上記実施の形態では、ボルト4の係合部43を断面四角形状の角穴に形成した場合について説明したが、これに限らず、上記の汎用工具による回動を阻止し得る形状であればよい。
【0058】
図8は、係合部43の形状の変形例を示す図であり、(a)は比較のために上記実施の形態に係るボルト4の係合部43の形状を示す平面図、(b)〜(f)は係合部の形状の変形例を示す平面図である。
【0059】
図8(a)に示すように、上記実施の形態に係るボルト4の頭部42の一端面42aには、四角形状の角穴からなる係合部43が形成されている。
【0060】
図8(b)は、第1の変形例に係るボルト4Aを示す。このボルト4Aは、頭部42の一端面42aに垂直な方向からの平面視において、係合部43Aが三角形状の穴に形成されている。
【0061】
図8(c)は、第2の変形例に係るボルト4Bを示す。このボルト4Bは、頭部42の一端面42aに垂直な方向からの平面視において、係合部43Bが五角形状の穴に形成されている。
【0062】
図8(d)は、第3の変形例に係るボルト4Cを示す。このボルト4Cは、頭部42の一端面42aに垂直な方向からの平面視において、係合部43Cが6つの頂点を有する星形状の穴に形成されている。
【0063】
図8(e)は、第4の変形例に係るボルト4Dを示す。このボルト4Dは、頭部42の一端面42aに垂直な方向からの平面視において、係合部43Dが8つの頂点を有する星形状の穴に形成されている。
【0064】
図8(f)は、第5の変形例に係るボルト4Eを示す。このボルト4Eは、頭部42の一端面42aに垂直な方向からの平面視において、係合部43Eが頭部42の外周部に形成された複数(3つ)の切欠き部からなる。
【0065】
これらのボルト4A〜4Eは、係合部43A〜43Eの形状に対応した専用工具によって回動させることが可能である。
【0066】
また、上記実施の形態においては、凹部としてナット部材23のねじ孔23cを適用したが、これに限定されず、雄ハウジング20に直接凹部(ねじ孔)を形成してもよい。このようにすることで、部品点数の削減が可能となる。
【0067】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0068】
1…コネクタ装置、2…雄コネクタ、3…雌コネクタ、4,4A〜4E…ボルト(規制部材)、20…雄ハウジング、20a…本体部、20a…閉塞部材、20b…保持部、20b,20b …側壁、20b,20b…橋架部、21a,21b…雄側接続端子、22a,22b…電線、23…ナット部材、23a…上面、23a…突起、23b…下面、23c…ねじ孔(凹部)、23d…段部、23d…段差面、24…シール部材、30…雌ハウジング、30a…本体部、30a…閉塞部材、30b…カバー部、30c…貫通孔、30c…内面、31a,31b…雌側接続端子、32a,32b…電線、33…シール部材、41…ねじ部(軸部)、41a…ねじ山、42…頭部、42a…一端面、42b…外周面、43,43A〜43E…係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8