(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の太陽電池モジュールの製造方法の好適な態様について説明する。
本発明の太陽電池モジュールの製造方法には、太陽電池セルストリングスを封止するためにシリコーンゲルシートを用いる。
【0014】
ここで、シリコーンゲルシートを得る場合は、基材にシリコーンゲル組成物を塗工し、これを硬化してシリコーンゲル層を形成し、必要によりシリコーンゲル層上に保護シートを剥離可能に被覆するものである。なお、基材としては、シリコーンゲル層(シリコーンゲルシート)と剥離可能なものを用いることが好ましく、上記基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、紙、布等のフレキシブルな薄肉シート状の材料が用いられ、通常はロール状に巻き付けられたものを用いる。この基材上に、下記シリコーンゲル材料(組成物)をコーティング装置により連続的に塗布する。なお、コーティング装置としては、コンマコーター、リバースコーター、バーコーター、ダイコーター等公知の装置が用いられる。コーティング装置により基材上にシリコーンゲル材料を塗布した後、100〜300℃で5分程度加熱して硬化させることにより、シリコーンゲルシートが形成される。加熱温度の範囲としては、好ましくは120〜200℃である。このように形成されたシリコーンゲルシートのシリコーンゲル側の表面に保護シートを貼り合わせることにより、シリコーンゲルシートが保護されて、その取り扱いが容易になる。保護シートの材料としては、基材の材料と同様、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、紙、布等のフレキシブルな薄肉シート状の材料が用いられる。
【0015】
シリコーンゲルシートの厚みは実用上200〜1,000μmの範囲で調整することが好ましく、より好ましくは300〜800μmの範囲である。膜厚が200μmより薄いと、低モジュラス・低硬度といったシリコーンゲル硬化物の特徴を発揮できなくなり、半導体基板からなる太陽電池素子をパネルの間に挟み込んで製造する工程において太陽電池素子にクラックが入ったり、特に温度昇降が発生する屋外環境下においては、太陽電池素子表面の配線接続部との線膨張係数及びモジュラスの違いを吸収できなくなり、太陽電池素子の脆化を招く可能性がある。一方、膜厚が1,000μmより厚いと、硬化するための時間を要し、またシリコーンゲルの使用量も増えるためにコスト高になる可能性がある。
【0016】
更に、シリコーンゲルの硬化後の針入度は、JIS K2220で規定される1/4コーンによる針入度で30〜200であることが好ましく、より好ましくは40〜150の範囲である。針入度が30より小さいと、低モジュラス・低硬度といったシリコーンゲル硬化物の特徴を発揮できなくなり、半導体基板からなる太陽電池素子をパネルの間に挟み込んで製造する工程において太陽電池素子にクラックが入ったり、特に温度昇降が発生する屋外環境下においては、太陽電池素子表面の配線接続部との線膨張係数及びモジュラスの違いを吸収できなくなり、太陽電池素子の脆化を招く可能性がある。一方、針入度が200を超えると、シリコーンゲル硬化物としての形態を保持できなくなり、流動してしまう。
【0017】
次に、シリコーンゲル組成物について説明する。シリコーンゲル組成物はその架橋方法が湿気硬化型、UV硬化型、有機過酸化物硬化型、白金系触媒を用いる付加硬化型のいずれであってもよいが、シリコーンゲルとしては、副生成物がなく、変色の少ない付加硬化型シリコーンゲル組成物の硬化物からなることが好ましい。即ち、用いるシリコーンゲル組成物は、
(A)下記平均組成式(1):
R
aR
1bSiO
(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rは独立にアルケニル基であり、R
1は独立に脂肪族不飽和結合を含まない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは0.0001〜0.2の正数であり、bは1.7〜2.2の正数であり、但しa+bは1.9〜2.4である。)
で表される、一分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも1個有するオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び
(C)白金系触媒
を含有する。
【0018】
(A)成分は、シリコーンゲル組成物の主剤(ベースポリマー)である。該(A)成分は、上記平均組成式(1)で表される、一分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基(本明細書中において「ケイ素原子結合アルケニル基」という)を少なくとも1個、好ましくは2個以上有するオルガノポリシロキサンである。
【0019】
上記式(1)中、Rは独立に、通常炭素原子数2〜6、好ましくは2〜4、より好ましくは2〜3のアルケニル基である。その具体例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基等が挙げられ、好ましくはビニル基である。R
1は独立に脂肪族不飽和結合を含まない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、その炭素原子数は、通常1〜10、好ましくは1〜6である。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部を、塩素、臭素、フッ素等のハロゲン原子で置換したクロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられる。中でも合成が容易であることから、メチル基、フェニル基又は3,3,3−トリフルオロプロピル基が好ましい。
【0020】
また、aは0.0001〜0.2の正数であることが必要であり、好ましくは0.0005〜0.1の正数である。bは1.7〜2.2の正数であることが必要であり、好ましくは1.9〜2.02の正数である。但しa+bは1.9〜2.4の範囲を満たすことが必要であり、好ましくは1.95〜2.05の範囲である。
【0021】
本成分は、一分子中にケイ素原子結合アルケニル基を少なくとも1個有することが必要であり、好ましくは2〜50個、より好ましくは2〜10個有する。このケイ素原子結合アルケニル基の条件を満たすように前記a及びbの値を選択すればよい。
【0022】
本成分のオルガノポリシロキサンの分子構造は特に限定されず、直鎖状であっても、例えば、RSiO
3/2単位(Rは前記と同様)、R
1SiO
3/2単位(R
1は前記と同様)、SiO
2単位等を含む分岐状であってもよいが、下記一般式(1a):
【化1】
(式中、R
2は独立に脂肪族不飽和結合を含まない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R
3は独立に脂肪族不飽和結合を含まない非置換又は置換の1価炭化水素基又はアルケニル基であり、但し少なくとも1個のR
3はアルケニル基である。分子鎖両末端のR
3のいずれかがアルケニル基である場合には、kは40〜1,200の整数であり、mは0〜50の整数であり、nは0〜50の整数であり、分子鎖両末端のR
3のいずれもがアルケニル基でない場合には、kは40〜1,200の整数であり、mは1〜50、特に2〜50の整数であり、nは0〜50の整数であり、但しm+nは1以上、好ましくは2以上である。)
で表されるオルガノポリシロキサン、即ち主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0023】
上記式(1a)中、R
2で表されるアルケニル基以外の脂肪族不飽和結合を含まない非置換又は置換の1価炭化水素基は、通常炭素原子数1〜10、好ましくは1〜6のものである。その具体例としては、R
1で例示したものが挙げられる。中でも合成が容易であることから、メチル基、フェニル基又は3,3,3−トリフルオロプロピル基が好ましい。
【0024】
また、R
3で表される脂肪族不飽和結合を含まない非置換又は置換の1価炭化水素基は、通常炭素原子数1〜10、好ましくは1〜6のものである。その具体例としては、R
1で例示したものが挙げられる。中でも合成が容易であることから、メチル基、フェニル基又は3,3,3−トリフルオロプロピル基が好ましい。R
3で表されるアルケニル基は、通常炭素原子数2〜6、好ましくは2〜4、より好ましくは2〜3のものである。その具体例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基等が挙げられ、好ましくはビニル基である。
【0025】
上記式(1a)中、分子鎖両末端のR
3のいずれかがアルケニル基である場合には、kは100〜1,000の整数であり、mは0〜40の整数であり、nは0であることが好ましく、分子鎖両末端のR
3のいずれもアルケニル基でない場合には、kは100〜1,000の整数であり、mは2〜40の整数であり、nは0であることが好ましい。
【0026】
上記式(1a)で表されるオルガノポリシロキサンとしては、例えば、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ビニルメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ビニルメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ビニルメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、末端トリメチルシロキシ基・ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体等が挙げられる。
【0027】
本成分のオルガノポリシロキサンの粘度は、特に限定されないが、組成物の取り扱い作業性、得られる硬化物の強度及び流動性が良好となる点から、回転粘度計による25℃の粘度が50〜100,000mPa・sであることが好ましく、1,000〜50,000mPa・sであることがより好ましい。
【0028】
次に、(B)成分は、上記(A)成分と反応し、架橋剤として作用するものである。該(B)成分は、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基(ヒドロシリル基)を意味し、本明細書中において「ケイ素原子結合水素原子」という)を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンが一分子中に有するケイ素原子結合水素原子は、好ましくは2〜30個、より好ましくは2〜10個、特に好ましくは2〜5個である。
【0029】
本成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン中に含有されるケイ素原子結合水素原子は、分子鎖末端及び分子鎖途中のいずれに位置していてもよく、この両方に位置するものであってもよい。また、その分子構造は特に限定されず、直鎖状、環状、分岐状及び三次元網状構造(樹脂状)のいずれであってもよい。
【0030】
本成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン一分子中のケイ素原子の数(即ち、重合度)は、通常20〜1,000個であるが、組成物の取り扱い作業性及び得られる硬化物の特性(低弾性率、低応力)が良好となる点から、好ましくは40〜1,000個、より好ましくは40〜400個、更に好ましくは60〜300個、特に好ましくは100〜300個、最も好ましくは160〜300個である。
【0031】
また、粘度は、回転粘度計による25℃の粘度が通常10〜100,000mPa・s、好ましくは200〜50,000mPa・s、より好ましくは500〜25,000mPa・sであって、室温(25℃)で液状のものが好適に使用される。
【0032】
本成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均組成式(2):
R
4cH
dSiO
(4-c-d)/2 (2)
(式中、R
4は独立に脂肪族不飽和結合を含まない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、cは0.7〜2.2の正数であり、dは0.001〜0.5の正数であり、但しc+dは0.8〜2.5である。)
で表されるものが好適に用いられる。
【0033】
上記式(2)中、R
4は独立に脂肪族不飽和結合を含まない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、その炭素原子数は、通常1〜10、好ましくは1〜6である。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、へキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部を、塩素、臭素、フッ素等のハロゲン原子で置換した3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられる。中でも好ましくはアルキル基、アリール基、3,3,3−トリフルオロプロピル基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基である。
【0034】
また、cは1.0〜2.1の正数であることが好ましく、dは0.001〜0.1の正数であることが好ましく、0.005〜0.1の正数であることがより好ましく、0.005〜0.05の正数であることが更に好ましく、0.005〜0.03の正数であることが特に好ましく、また、c+dは1.0〜2.5の範囲を満たすことが好ましく、1.5〜2.2の範囲を満たすことが特に好ましい。
【0035】
上記式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位と(CH
3)
3SiO
1/2単位とSiO
4/2単位とからなる共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位とからなる共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位と(C
6H
5)
3SiO
1/2単位とSiO
4/2単位とからなる共重合体等が挙げられる。
【0036】
本成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、少なくとも1質量部、好ましくは少なくとも3質量部である。上限を考慮した場合には、好ましくは15〜500質量部であり、より好ましくは20〜500質量部であり、更に好ましくは30〜200質量部である。本成分の配合量は、前記条件を満たすと同時に、(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個あたり本成分中のケイ素原子結合水素原子が、0.3〜2.5個となる量であることが必要であり、好ましくは0.5〜2個、より好ましくは0.6〜1.5個となる量である。この配合量が1質量部より少ない場合には、得られる硬化物はオイルブリードが発生しやすいものとなる。ケイ素原子結合水素原子が0.3個より少ない場合には、架橋密度が低くなりすぎ、得られる組成物が硬化しなかったり、硬化しても硬化物の耐熱性が低下することがあり、2.5個より多い場合には、脱水素反応による発泡の問題が生じたり、得られる硬化物の耐熱性が低下したり、オイルブリードが発生することがある。
【0037】
更に、(C)成分については、前記(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基と前記(B)成分中のケイ素原子結合水素原子との付加反応を促進させるための触媒として使用されるものである。該(C)成分は白金系触媒(白金又は白金系化合物)であり、公知のものを使用することができる。その具体例としては、白金ブラック、塩化白金酸、塩化白金酸等のアルコール変性物;塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン又はアセチレンアルコール類等との錯体等が例示される。
【0038】
本成分の配合量は有効量でよく、所望の硬化速度により適宜増減することができるが、通常、(A)成分及び(B)成分の合計量に対して、白金原子の質量で、通常0.1〜1,000ppm、好ましくは1〜300ppmの範囲である。この配合量が多すぎると得られる硬化物の耐熱性が低下する場合がある。
【0039】
シリコーンゲル組成物は、上記(A)〜(C)成分(任意成分が配合される場合には、任意成分も含む)を常法に準じて混合することにより調製することができる。その際に、混合される成分を必要に応じて2パート又はそれ以上のパートに分割して混合してもよく、例えば、(A)成分の一部及び(C)成分からなるパートと、(A)成分の残部及び(B)成分からなるパートとに分割して混合することも可能である。
【0040】
上記シリコーンゲル組成物を硬化してシリコーンゲルを得る場合、その硬化条件は、常法により80〜150℃で5〜30分間であることが好ましい。
【0041】
次に、得られたシリコーンゲルシートを用いた太陽電池モジュール製造工程について説明する。
まず、シリコーンゲルシートに保護フィルムが貼着している場合、この保護フィルムを剥離した後、太陽光入射面となる透明受光面パネルの一面(太陽電池モジュールを作製した場合の内面)にシリコーンゲルシートを貼り付ける。その際、後の工程でブチルゴムを配置するスペースとして5〜20mmのスペースを額縁状に残しておく。同様にして、受光面と反対側の非受光面パネル又はバックシートに貼着するシリコーンゲルシートを、保護フィルムを剥離した後、該パネル又はバックシートの一面(内面)に貼り付ける。その際も後の工程でブチルゴムを配置するスペースとして5〜20mmのスペースを額縁状に残しておく(
図1参照)。
なお、
図1において、1は透明受光面パネル、2は非受光面パネル又はバックシートであり、3はシリコーンゲルシート、4は基材である。
【0042】
次に、受光面側及びその反対側のパネル又はバックシートに貼り付けたシリコーンゲルシートの基材を剥離した後(
図2)、受光面側パネルに貼り付けたシリコーンゲル上に太陽電池セルストリングスを配置し、同時に、受光面パネル外周部に沿って幅5〜20mmの額縁状にブチルゴムを配置する(
図3)。なお、図中、5は太陽電池セルストリングス、6はブチルゴムを示す。
この場合、上記とは逆に、最初に受光面と反対側の非受光面パネル又はバックシートのシリコーンゲルシート上に太陽電池セルストリングスを配置し、同時に、受光面と反対側の非受光面パネル又はバックシート外周部に幅5〜20mmの額縁状にブチルゴムを配置してもよい。なお、太陽電池セルにおいては、単結晶シリコン及び/又は多結晶シリコンを用いて太陽電池セルとするもので、太陽電池セルストリングスは太陽電池セルをタブ線で接続したものである。
【0043】
ここで、上記受光面パネルにおいては、透明性、耐候性、耐衝撃性をはじめとして屋外使用において長期の信頼性能を有する部材が必要であり、例えば白板強化ガラス、アクリル樹脂、フッ素樹脂又はポリカーボネート樹脂等があるが、一般的には厚さ3〜5mm程度の白板強化ガラスが広く用いられている。
【0044】
また、ここで用いるブチルゴムは、ホットメルトアプリケーターにより予めテープ状あるいは紐状に加工したものであり、通常市販されているタイプでもよいが、次の工程で真空ラミネートする際に100〜150℃の温度をかけるため、その温度領域で形状を保つことができるホットメルトタイプのブチルゴムが好ましく、例えば横浜ゴム製M−155Pが用いられる。
【0045】
次に、太陽電池セルストリングス及びブチルゴムが配置された受光面パネルの上に、シリコーンゲルシートが貼り付けられた受光面と反対側の非受光面パネル又はバックシートを配置して、真空ラミネーターにて減圧真空下、受光面側のシリコーンゲルシート面と、受光面と反対側のシリコーンゲルシート面の間の空気を除去した後、100〜150℃に加温して1〜5分間大気圧で押圧し、額縁状に配置したブチルゴムを圧着することにより、太陽電池モジュールを製造する(
図4)。この際には、予め受光面側又は受光面と反対側のシリコーンゲルシート表面に、プラズマ照射処理あるいはエキシマ光照射処理を行い、シリコーンゲル表面を活性化した上で真空下加温して押圧してもよい。
【0046】
ここで、受光面と反対側の非受光面パネルにおいては、太陽電池セルストリングスの温度を効率よく放熱することが求められ、材料としてガラス材、合成樹脂材、金属材又はそれらの複合部材が挙げられる。ガラス材の例としては、青板ガラス、白板ガラス又は強化ガラス等が挙げられ、合成樹脂材としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂又はエポキシ樹脂等が挙げられる。また、金属材としては、銅、アルミニウム又は鉄等が挙げられ、複合材としては、シリカをはじめ、酸化チタン、アルミナ、窒化アルミニウムなど高い熱伝導性を有する材料を担持した合成樹脂等が挙げられる。
【0047】
なお、太陽光入射の反対側の非受光面パネルにおいては、太陽光を入射させるパネルと共に透明性を有する部材を用いることにより、太陽光の直達光及び散乱光の一部を太陽光入射の反対面側に透過させることができ、例えば草原などに設置した場合、太陽電池モジュールの入射面と反対側の、つまり本来日陰となってしまう部分にも太陽光の一部が照射されることにより植物の生育を促し、家畜の放牧等にも利用できる。
【0048】
また、バックシートを用いる場合には、具体的にはETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)フィルム、PVF(ポリフッ化ビニル)フィルム等のフッ素樹脂フィルム、またアルミ箔やPETをPVFのシートで挟み込んだりした積層シートなどを用いることができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。実施例中、「部」は「質量部」を表し、「%」は「質量%」を表し、「Vi」は「ビニル基」を表す。また、粘度は回転粘度計による25℃での値である。
【0050】
[
参考例1]
粘度が10,000mPa・sの両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン100部、下記式(3):
【化2】
で表される粘度が10,000mPa・sの両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体63部((A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個あたりの(B)成分中のケイ素原子結合水素原子の個数(以下、H/Viという)は1.05であった)、及び白金原子として1%含有する塩化白金酸ビニルシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン溶液0.05部を均一に混合した後、得られた組成物をオーブンにより150℃で30分間加熱して針入度75の硬化物を得た。なお、針入度については、JIS K2220で規定される1/4コーンによる針入度であり、(株)離合社製、自動針入度試験器、RPM−101を用いて測定した。
【0051】
次に、上記材料を用いてシリコーンゲルシートを作製した。コンマコーターに上記材料を投入して、基材である厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)に塗布し、全体の厚さが250μmになるように調整した。更に塗布されたフィルムは、150℃のオーブンで30分間硬化させた。このシリコーンゲルシートのシリコーンゲル側には保護フィルムを貼り合せてシリコーンゲルシートのロールを得た。
【0052】
このシリコーンゲルシートのロールより320mm×340mmの大きさでシートを2枚切り出した。まず、2枚ともシリコーンゲルシートの保護フィルムを剥離した後、340mm×360mm、3.2mm厚の白板強化ガラスに外周10mm幅のスペースを残して貼り付けた。貼り付け後、それぞれのシリコーンゲルシート表面のPET基材を剥離した後、表面に172nmのエキシマ光を照射した。次いで受光面側のシリコーンゲルシート表面に単結晶の太陽電池セルストリングスを配置し、更に上記外周10mm幅スペース部分に額縁状に直径6mmの紐状のブチルゴムを配置した。これを真空ラミネーターに設置して、その上に上記受光面と反対側のシリコーンゲルシートを貼った白板強化ガラスを被せて、真空下120℃、5分間大気圧で押圧して太陽電池セルストリングスを封止して太陽電池モジュールAを製造した。
【0053】
(太陽電池素子のクラック評価)
太陽電池モジュールAの素子のクラックの評価を行った。評価は常法により目視又はEL(エレクトロ・ルミネッセンス)発光法で行った。
【0054】
(過酷劣化試験評価)
太陽電池モジュールAのPCT(プレッシャー・クッカー・テスト)による過酷劣化試験を行った。条件は温度125℃、湿度95%、2.1気圧で100時間行い、試験後、EL発光法によるクラック評価、目視によるタブ線の腐食の有無の評価、目視によるモジュール内の水分の侵入の有無の評価を行った。
【0055】
[実施例
1]
参考例1で得られた均一な混合液をコンマコーターに投入して、基材である厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)に塗布し、全体の厚さが550μmになるように調整した。次いで
参考例1と同様にして太陽電池モジュールBを製造し、太陽電池素子のクラック評価及び過酷劣化試験を行った。
【0056】
[実施例
2]
参考例1で得られた均一な混合液をコンマコーターに投入して、基材である厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)に塗布し、全体の厚さが850μmになるように調整した。次いで
参考例1と同様にして太陽電池モジュールCを製造し、太陽電池素子のクラック評価及び過酷劣化試験を行った。
【0057】
[
参考例2]
粘度が12,000mPa・sの両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン100部、下記式(4):
【化3】
で表される粘度が2,000mPa・sの両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体25部(H/Viは1.3であった)、及び白金原子として1%含有する塩化白金酸ビニルシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン溶液0.05部を均一に混合した後、得られた組成物をオーブンにより150℃で30分間加熱して針入度40の硬化物を得た。
【0058】
次に、コンマコーターに上記材料を投入して、基材である厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)に塗布し、全体の厚さが250μmになるように調整した。次に切り出したシリコーンゲルシート2枚のうち1枚を保護フィルムを剥離した後、バックシートとして340mm×360mm、25μm厚のETFEフィルムに外周10mm幅のスペースを残して貼り付けた他は
参考例1と同様にして太陽電池モジュールDを製造し、太陽電池素子のクラック評価及び過酷劣化試験を行った。
【0059】
[実施例
3]
参考例2で得られた均一な混合液をコンマコーターに投入して、基材である厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)に塗布し、全体の厚さが550μmになるように調整した。次いで
参考例2と同様にして太陽電池モジュールEを製造し、太陽電池素子のクラック評価及び過酷劣化試験を行った。
【0060】
[実施例
4]
参考例2で得られた均一な混合液をコンマコーターに投入して、基材である厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)に塗布し、全体の厚さが850μmになるように調整した。次いで
参考例2と同様にして太陽電池モジュールFを製造し、太陽電池素子のクラック評価及び過酷劣化試験を行った。
【0061】
[
参考例3]
下記式(5):
【化4】
で表される粘度が10,000mPa・sの両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体100部に対して、下記式(6):
【化5】
で表される粘度が6,000mPa・sの両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン40部(H/Viは0.95であった)、及び白金原子として1%含有する塩化白金酸ビニルシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン溶液0.05部を均一に混合した後、得られた組成物をオーブンにより150℃で30分間加熱して針入度120の硬化物を得た。
【0062】
次に、コンマコーターに上記材料を投入して、基材である厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)に塗布し、全体の厚さが250μmになるように調整した。次に
参考例1と同様にして太陽電池モジュールGを製造し、太陽電池素子のクラック評価及び過酷劣化試験を行った。
【0063】
[実施例
5]
参考例3で得られた均一な混合液をコンマコーターに投入して、基材である厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)に塗布し、全体の厚さが550μmになるように調整した。次いで
参考例3と同様にして太陽電池モジュールHを製造し、太陽電池素子のクラック評価及び過酷劣化試験を行った。
【0064】
[実施例
6]
参考例3で得られた均一な混合液をコンマコーターに投入して、基材である厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)に塗布し、全体の厚さが850μmになるように調整した。次いで
参考例3と同様にして太陽電池モジュールIを製造し、太陽電池素子のクラック評価及び過酷劣化試験を行った。
【0065】
[実施例
7]
シリコーンゲルシート2枚のうち1枚を
参考例1で得られた均一な混合液を用いて実施例
1と同様にコンマコーターで基材に塗布して全体の厚さが550μmになるように調整し、これを受光面側とし、もう1枚を
参考例2で得られた均一な混合液を用いて実施例
3と同様に全体の厚さが550μmになるように調整し、これを受光面と反対側のパネルとした他は
参考例1と同様にして太陽電池モジュールJを製造し、太陽電池素子のクラック評価及び過酷劣化試験を行った。
【0066】
[比較例1]
参考例2で得られた均一な混合液をコンマコーターに投入して、基材である厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)に塗布し、全体の厚さが550μmになるように調整した。このシリコーンゲルシートのロールより340mm×360mmの大きさでシートを2枚切り出した。次いで額縁状にブチルゴムを配置しない他は
参考例2と同様にして太陽電池モジュールKを製造し、太陽電池素子のクラック評価及び過酷劣化試験を行った。
【0067】
[比較例2]
厚さ500μmのEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体;酢酸ビニル含有率28%)の透明フィルム2枚を用いて、従来法に基づき2枚の340mm×360mmの白板強化ガラス基板の間に単結晶シリコン太陽電池素子を、真空ラミネーターを用いて減圧真空下、120℃に加温して、30分間で溶融圧着することにより封止し、太陽電池モジュールLを製造し、太陽電池素子のクラック評価及び過酷劣化試験を行った。
【0068】
各条件を表にまとめると同時に、クラック評価及び過酷劣化試験の結果を記す。
以上の結果を表1に示す。
【0069】
【表1】