(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記窒化ホウ素粉末に前記疎水性球状シリカ微粒子(1)を該窒化ホウ素粉末の0.01〜5.0質量%で添加し、混合することにより、該窒化ホウ素粉末表面に該疎水性球状シリカ微粒子(1)を付着させたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の粉末の製造方法。
前記窒化ホウ素粉末の平均粒径が5〜500μmであり、かつ前記窒化ホウ素粉末は平均粒径が少なくとも10μmの六方晶系窒化ホウ素小板を10〜95質量%含むものである請求項1〜3のいずれか1項記載の粉末の製造方法。
前記窒化ホウ素粉末が、平均厚さが10〜50μm、平均アスペクト比が50〜300の六方晶系窒化ホウ素小板を10〜95質量%含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の粉末の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、窒化ホウ素粉末に良好な流動性・高充填性等を付与した窒化ホウ素粉末、及び該粉末を含む、樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち本発明は、以下の通りである。
【0010】
<1> 窒化ホウ素粉末の表面に、該窒化ホウ素粉末の質量の少なくとも0.01質量%の量のシリカ微粒子が付着した粉末であって、
該シリカ微粒子が、
(A1)4官能性シラン化合物、その部分加水分解縮合生成物またはこれらの混合物を、加水分解および縮合することによって実質的にSiO
2単位からなる親水性球状シリカ微粒子を得る工程と、
(A2)該親水性球状シリカ微粒子の表面に、R
1SiO
3/2単位(式中、R
1は置換または非置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である)を導入する工程と、
(A3) R
23SiO
1/2単位(式中、各R
2は同一または異なり、置換または非置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である)を導入する工程
とを含む方法により製造され、
粒子径が0.005〜1.00μmの範囲で、粒度分布D90/D10の値が3以下であり、かつ平均円形度が0.8〜1である疎水性球状シリカ微粒子(1)であることを特徴とする粉末。
【0011】
<2> 前記疎水性球状シリカ微粒子(1)が、
(A1)一般式(I):
Si(OR
3)
4 (I)
(式中、各R
3は同一または異種の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基である)で示される4官能性シラン化合物、その部分加水分解生成物またはこれらの混合物を、塩基性物質の存在下、親水性有機溶媒と水の混合液中で加水分解及び縮合することによって実質的にSiO
2単位からなる親水性球状シリカ微粒子の混合溶媒分散液を得、
(A2)得られた該親水性球状シリカ微粒子の混合溶媒分散液に、一般式(II):
R
1Si(OR
4)
3 (II)
(式中、R
1は置換または非置換の炭素原子数1〜20の一価炭化水素基、各R
4は同一または異種の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基である)で示される3官能性シラン化合物、その部分加水分解生成物、またはこれらの混合物を添加して該親水性球状シリカ微粒子の表面を処理することにより、該親水性球状シリカ微粒子の表面にR
1SiO
3/2単位(R
1は前記の通りである)を導入して第一の疎水性球状シリカ微粒子の混合溶媒分散液を得、
(A3)得られた該第一の疎水性球状シリカ微粒子の混合溶媒分散液に、一般式(III):
R
23SiNHSiR
23 (III)
(式中、各R
2は同一または異種の置換または非置換の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基である)
で示されるシラザン化合物、一般式(IV):
R
23SiX (IV)
(式中、R
2は一般式(III)で定義した通りであり、XはOH基または加水分解性基である)で示される1官能性シラン化合物、またはこれらの混合物を添加して、前記第一の疎水性球状シリカ微粒子の表面をこれにより処理して、該第一の疎水性球状シリカ微粒子の表面にR
23SiO
1/2単位(R
2は一般式(III)で定義した通りである)を導入することにより第二の疎水性シリカ微粒子として得られる疎水性球状シリカ微粒子である、<1>記載の粉末。
【0012】
<3> 前記窒化ホウ素粉末に前記疎水性球状シリカ微粒子(1)を該窒化ホウ素粉末の0.01〜5.0質量%で添加し、混合することにより、該窒化ホウ素粉末表面に該疎水性球状シリカ微粒子(1)を付着させたことを特徴とする、<1>又は<2>に記載の粉末。
【0013】
<4> 前記窒化ホウ素粉末の平均粒径が5〜500μmであり、かつ前記窒化ホウ素粉末は平均粒径が少なくとも10μmの六方晶系窒化ホウ素小板を10〜95質量%含むものである<1>〜<3>のいずれか1項記載の粉末。
【0014】
<5> 前記窒化ホウ素粉末が、平均厚さが10〜50μm、平均アスペクト比が50〜300の六方晶系窒化ホウ素小板を10〜95質量%含むことを特徴とする、<1>〜<4>のいずれか1項記載の粉末。
【0015】
<6> <1>〜<5>のいずれか1項に記載の粉末と樹脂とを含むことを特徴とする樹脂組成物。
<7> <1>〜<5>のいずれか1項に記載の粉末と、溶融可能なポリマーから選択される少なくとも1種のマトリクスポリマーとを含むことを特徴とする樹脂組成物。
<8> 前記マトリクスポリマーが、ポリエステル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーンポリマー及びアクリル樹脂から選択される一種又は二種以上である、<7>に記載の樹脂組成物。
<9> <6>、<7>又は<8>記載の樹脂組成物を成形した熱伝導性シート。
【発明の効果】
【0016】
本発明により得られる窒化ホウ素組成物は、良好な流動性、高い充填特性、及び安定性を備えるため、それを用いたポリマー組成物は、従来にない高度な熱伝導性や電気絶縁性を有することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
<窒化ホウ素(BN)粉末成分>
出発材料として、非コーティング(即ち、未処理の)窒化ホウ素粉末成分は、当技術分野で公知のプロセスにより作られた結晶性又は部分結晶性窒化ホウ素粒子を含む。これらには、米国特許第6,652,822号公報に開示されているようなプラズマガスを用いるプロセスで生成されたミクロンサイズの範囲の球状窒化ホウ素粒子、米国公開特許2001−0021740公報に開示されているような結合剤により互いに結合されて、その後スプレー乾燥された不規則な非球状窒化ホウ素粒子で形成された球状窒化ホウ素凝集塊を含む六方晶系窒化ホウ素(hBN)粉末、米国特許第5,898,009号公報及び米国特許第6,048,511号公報に開示されているような加圧成形により生成された窒化ホウ素粉末、米国公開特許2005−0041373公報に開示されているような窒化ホウ素凝集粉末、米国公開特許2004−0208812A1公報に開示されているような高拡散係数の窒化ホウ素粉末、及び米国特許第6,951,583号公報に開示されているような高度デラミネート窒化ホウ素粉末が含まれる。
【0019】
<窒化ホウ素粉末>
本発明における窒化ホウ素粉末は、平均粒径が少なくとも10μmの六方晶系窒化ホウ素小板を含み、その平均粒径は5〜500μmが好ましい。更に好ましくは、該窒化ホウ素粉末は、平均粒径が少なくとも10μmの六方晶系窒化ホウ素小板を含み、その平均粒径は10〜100μmである。六方晶系窒化ホウ素小板の含有量は、窒化ホウ素粉末全体の10〜95重量%であることが好ましく、特に10〜80重量%、更に30〜80重量%であることが好ましい。更に窒化ホウ素粉末は、平均粒径が10μmを超える六方晶系窒化ホウ素小板の不規則な形状の凝集塊を含んでもよい。
【0020】
また窒化ホウ素粉末は、厚さが50μm以下、特に10〜50μmの小板の形態が好ましく、更にその平均アスペクト比が10〜300の六方晶系窒化ホウ素小板の形態がより好ましい。
【0021】
<疎水性球状シリカ微粒子>
上記窒化ホウ素粉末に混合する疎水性球状シリカ微粒子の特徴について、詳細に説明する。
本発明で使用される疎水性球状シリカ微粒子は、
(A1)4官能性シラン化合物、その部分加水分解縮合生成物またはそれらの組み合わせを加水分解および縮合することによって実質的にSiO
2単位からなる親水性球状シリカ微粒子を得る工程と、
(A2)該親水性球状シリカ微粒子の表面に、R
1SiO
3/2単位(式中、R
1は置換または非置換の炭素原子数1〜20の1価炭化水素基である)を導入する工程と、
(A3)R
23SiO
1/2単位(式中、各R
2は同一または異なり、置換または非置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である)を導入する工程
とを含む方法により製造され、
粒子径が0.005〜1.0μmの範囲で、粒度分布D90/D10の値が3以下であり、かつ平均円形度が0.8〜1である疎水性球状シリカ微粒子(1)である。
【0022】
上記疎水性球状シリカ微粒子は粒子径が0.005〜1.00μmであり、好ましくは0.01〜0.30μm、特に好ましくは0.03〜0.20μmである。この粒子径が0.005μmよりも小さいと、窒化ホウ素粒子の凝集が激しく、該窒化ホウ素粒子をうまく取り出せない場合がある。また1.00μmよりも大きいと、窒化ホウ素粒子に良好な流動性や充填性を付与できない場合があり、好ましくない。
【0023】
上記疎水性球状シリカ微粒子の粒度分布の指標であるD90/D10の値は、3以下である。ここで、D10及びD90はそれぞれ、粒子径の分布を測定することによって得られる値である。粉体の粒子径の分布を測定した場合に、小さい側から累積10%となる粒子径をD10、小さい側から累積90%となる粒子径をD90という。このD90/D10が3以下であることから、本発明における窒化ホウ素の粒度分布はシャープであることを特徴とする。このように粒度分布がシャープな粒子であると、窒化ホウ素の流動性を制御することが容易になる点で好ましい。上記D90/D10は、2.9以下であることがより好ましい。
なお、本発明において、微粒子の粒度分布は、動的光散乱法/レーザードップラー法ナノトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製、商品名:UPA-EX150)により測定し、その体積基準メジアン径を粒子径とした。なお、メジアン径とは粒度分布を累積分布として表した時の累積50%に相当する粒子径である。
【0024】
また上記疎水性球状シリカ微粒子の平均円形度は0.8〜1が好ましく、0.92〜1がより好ましい。ここで「球状」とは、真球だけでなく、若干歪んだ球も含む。このような「球状」の形状とは、粒子を二次元に投影した時の円形度で評価し、円形度が0.8〜1の範囲にあるものを云う。ここで円形度とは、(粒子面積と等しい円の周囲長)/(粒子周囲長)である。この円形度は電子顕微鏡等で得られる粒子像を画像解析することにより測定することができる。
【0025】
上記において、親水性球状シリカ微粒子が「実質的にSiO
2単位からなる」とは、該微粒子は基本的にはSiO
2単位から構成されているが該単位のみから構成されている訳ではなく、少なくとも表面に通常知られているようにシラノール基を多数個有することを意味する。また、場合によっては、原料である4官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合生成物に由来する加水分解性基(ヒドロカルビルオキシ基)が一部シラノール基に転化されずに若干量そのまま微粒子表面や内部に残存していてもよいことを意味する。
【0026】
以上のように、本発明においては、テトラアルコキシシランの加水分解によって得られる小粒径ゾルゲル法シリカをシリカ原体(疎水化処理前のシリカ)として、これに特定の表面処理を行なうことにより、粉体として得たときに疎水化処理後の粒子径がシリカ原体の一次粒子径を維持しており、凝集しておらず、小粒径であり、窒化ホウ素粉末に良好な流動性を付与できる疎水性シリカ微粒子が得られる。
【0027】
小粒径のシリカ原体として、アルコキシ基の炭素原子数が小さいテトラアルコキシシランを用いること、溶媒として炭素原子数の小さいアルコールを用いること、加水分解温度を高めること、テトラアルコキシシランの加水分解時の濃度を低くすること、加水分解触媒の濃度を低くすることなど、反応条件を変更することにより、任意の粒径のシリカ原体を得ることができる。
【0028】
この小粒径のシリカ原体に、前述の通り、そして更に詳しく以下に述べるように、特定の表面処理を行なうことにより、所望の疎水性シリカ微粒子が得られる。
【0029】
次に、上記疎水性球状シリカ微粒子の製造方法の一つについて、以下に詳細に説明する。
【0030】
<疎水性球状シリカ微粒子(1)の製造方法>
本発明の疎水性球状シリカ微粒子は、
工程(A1):親水性球状シリカ微粒子の合成工程、
工程(A2):3官能性シラン化合物による表面処理工程、
工程(A3):1官能性シラン化合物による表面処理工程
によって得られる。以下、各工程を順次説明する。
【0031】
・工程(A1):親水性球状シリカ微粒子の合成工程
一般式(I):
Si(OR
3)
4 (I)
(式中、各R
3は同一または異種の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基である)で示される4官能性シラン化合物、その部分加水分解生成物、またはこれらの混合物を、塩基性物質を含む親水性有機溶媒と水の混合液中で加水分解及び縮合することによって、親水性球状シリカ微粒子の混合溶媒分散液を得られる。
【0032】
上記一般式(I)中、R
3は、炭素原子数1〜6の一価炭化水素基であるが、好ましくは炭素原子数1〜4、特に好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。R
3で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のようなアルキル基;フェニル基のようなアリール基が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基、特に好ましくはメチル基又はエチル基が挙げられる。
【0033】
上記一般式(I)で示される4官能性シラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;及びテトラフェノキシシランが挙げられ、好ましくは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン及びテトラブトキシシラン、特に好ましくは、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランが挙げられる。また、一般式(I)で示される4官能性シラン化合物の部分加水分解縮合生成物としては、例えば、メチルシリケート、エチルシリケート等のアルキルシリケートが挙げられる。
【0034】
前記親水性有機溶媒としては、一般式(I)で示される4官能性シラン化合物と、この部分加水分解縮合生成物と、水とを溶解するものであれば特に制限されず、例えば、アルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸セロソルブ等のセロソルブ類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられ、好ましくは、アルコール類、セロソルブ類であり、特に好ましくはアルコール類が挙げられる。該アルコール類としては、一般式(V):
R
5OH (V)
[式中、R
5は炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である]で示されるアルコールが挙げられる。
【0035】
上記一般式(V)中、R
5は、好ましくは炭素原子数1〜4、特に好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。R
5で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基及びイソプロピル基、より好ましくはメチル基及びエチル基が挙げられる。一般式(V)で示されるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられ、好ましくはメタノール、エタノールが挙げられる。アルコールの炭素原子数が増えると、生成する球状シリカ微粒子の粒子径が大きくなる。従って、目的とする小粒径のシリカ微粒子を得るためには、メタノールが好ましい。
【0036】
また、上記塩基性物質としてはアンモニア、ジメチルアミン、ジエチルアミン等、好ましくは、アンモニア、ジエチルアミン、特に好ましくはアンモニアが挙げられる。これらの塩基性物質は、所要量を水に溶解した後、得られた水溶液(塩基性)を前記親水性有機溶媒と混合すればよい。
該塩基性物質の使用量は、一般式(I)で示される4官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合生成物のヒドロカルビルオキシ基の合計1モルに対して0.01〜2モルであることが好ましく、0.02〜0.5モルであることがより好ましく、0.04〜0.12モルであることが特に好ましい。このとき、塩基性物質の量が少ないほど所望の小粒径シリカ微粒子となる。
【0037】
上記加水分解及び縮合で使用される水の量は、一般式(I)で示される4官能性シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合生成物のヒドロカルビルオキシ基の合計1モルに対して0.5〜5モルであることが好ましく、0.6〜2モルであることがより好ましく、0.7〜1モルであることが特に好ましい。水に対する上記親水性有機溶媒の比率(親水性有機溶媒:水)は、質量比で0.5〜10であることが好ましく、3〜9であることがより好ましく、5〜8であることが特に好ましい。親水性有機溶媒の量が多いほど所望の小粒径のシリカ微粒子が得られる。
【0038】
一般式(I)で示される4官能性シラン化合物等の加水分解および縮合は、周知の方法、即ち、塩基性物質を含む親水性有機溶媒と水との混合物中に、一般式(I)で示される4官能性シラン化合物等を添加することにより行われる。
【0039】
この工程(A1)で得られる親水性球状シリカ微粒子の混合溶媒分散液中のシリカ微粒子の濃度は一般に、3〜15質量%であり、好ましくは5〜10質量%である。
【0040】
・工程(A2):3官能性シラン化合物による表面処理工程
工程(A1)において得られた親水性球状シリカ微粒子の混合溶媒分散液に、一般式(II):
R
1Si(OR
4)
3 (II)
(式中、R
1は置換または非置換の炭素原子数1〜20の一価炭化水素基、各R
4は同一または異種の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基である)で示される3官能性シラン化合物、またはその部分加水分解生成物、またはこれらの混合物を添加して、該親水性球状シリカ微粒子の表面をこれにより処理することにより、前記親水性球状シリカ微粒子の表面にR
1SiO
3/2単位(R
1は前記の通り)を導入して、第一の疎水性球状シリカ微粒子の混合溶媒分散液を得る。
【0041】
本工程(A2)は、次の工程である濃縮工程(A3)においてシリカ微粒子の凝集を抑制するために不可欠である。凝集を抑制できないと、得られるシリカ系粉体の個々の粒子は一次粒子径を維持できないため、流動性付与能が悪くなる。
【0042】
上記一般式(II)中、R
1は、好ましくは炭素原子数1〜3、特に好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。R
1で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基、特に好ましくは、メチル基又はエチル基が挙げられる。また、これらの1価炭化水素基の水素原子の一部または全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、好ましくはフッ素原子で置換されていてもよい。
【0043】
上記一般式(II)中、R
4は、好ましくは炭素原子数1〜3、特に好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。R
4で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、好ましくは、メチル基、エチル基又はプロピル基、特に好ましくは、メチル基又はエチル基が挙げられる。
【0044】
一般式(II)で示される3官能性シラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等の非置換若しくはハロゲン置換のトリアルコキシシラン等、好ましくは、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン及びエチルトリエトキシシラン、より好ましくは、メチルトリメトキシシラン及びメチルトリエトキシシラン、または、これらの部分加水分解縮合生成物が挙げられる。
【0045】
一般式(II)で示される3官能性シラン化合物の添加量は、使用された親水性球状シリカ微粒子のSi原子1モル当り0.001〜1モル、好ましくは0.01〜0.1モル、特に好ましくは0.01〜0.05モルである。添加量が0.01モルより少ないと、得られる疎水性球状シリカ微粒子の分散性が悪くなるため、窒化ホウ素への流動性化付与効果が現れず、1モルより多いとシリカ微粒子の凝集が生じ得る。
【0046】
この工程(A2)で得られる第一の疎水性球状シリカ微粒子の混合溶媒分散液中の該シリカ微粒子の濃度は通常3質量%以上15質量%未満、好ましくは5〜10質量%である。かかる濃度が低すぎると生産性が低下してしまうという不都合があり、高すぎるとシリカ微粒子の凝集が生じてしまうという不都合がある。
【0047】
・濃縮工程
このようにして得られた第一の疎水性球状シリカ微粒子の混合溶媒分散液から前記親水性有機溶媒と水の一部を除去し、濃縮することにより、第一の疎水性球状シリカ微粒子の混合溶媒濃縮分散液を得る。この際、疎水性有機溶媒をあらかじめ(濃縮工程前)、或いは濃縮工程中に加えてもよい。この際、使用する疎水性溶媒としては、炭化水素系又はケトン系溶媒が好ましい。具体的には該溶媒として、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、メチルイソブチルケトンが好ましい。前記親水性有機溶媒と水の一部を除去する方法としては、例えば留去、減圧留去などが挙げられる。得られる濃縮分散液はシリカ微粒子濃度が15〜40質量%であることが好ましく、20〜35質量%であることがより好ましく、25〜30質量%であることが特に好ましい。15質量%より少ないと後工程の表面処理が円滑に進まないことがあり、40質量%より大きいとシリカ微粒子の凝集が生じてしまうことがある。
【0048】
濃縮工程は、次の工程(A3)において表面処理剤として使用される一般式(III)で表されるシラザン化合物および一般式(IV)で表される一官能性シラン化合物がアルコールや水と反応して表面処理が不十分となり、その後に乾燥を行った時に凝集を生じ、得られるシリカ粉体は一次粒子径を維持できず、流動性付与能が悪くなる、といった不具合を抑制するという意義もある。
【0049】
・工程(A3):1官能性シラン化合物による表面処理工程
工程(A2)で得られた第一の疎水性球状シリカ微粒子の混合溶媒分散液に、一般式(III):
R
23SiNHSiR
23 (III)
(式中、各R
2は同一または異種の置換または非置換の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基である)
で示されるシラザン化合物、又は一般式(IV):
R
23SiX (IV)
(式中、R
2は一般式(III)で定義した通りであり、XはOH基または加水分解性基である)で示される1官能性シラン化合物またはこれらの混合物を添加し、これにより前記第一の疎水性球状シリカ微粒子の表面を処理し、該微粒子の表面にR
23SiO
1/2単位(但し、R
2は一般式(III)で定義の通り)を導入することにより、第二の疎水性球状シリカ微粒子を得る。この工程の処理により、第一の疎水性球状シリカ微粒子の表面に残存するシラノール基をトリオルガノシリル化する形でR
23SiO
1/2単位が該表面に導入される。
【0050】
上記一般式(III)および(IV)中、R
2は、好ましくは炭素原子数1〜4、特に好ましくは1〜2の1価炭化水素基である。R
2で表される1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基、好ましくは、メチル基、エチル基又はプロピル基、特に好ましくは、メチル基又はエチル基が挙げられる。また、これらの1価炭化水素基の水素原子の一部または全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、好ましくは、フッ素原子、で置換されていてもよい。
【0051】
Xで表される加水分解性基としては、例えば、塩素原子、アルコキシ基、アミノ基、アシルオキシ基が挙げられ、好ましくはアルコキシ基又はアミノ基、特に好ましくはアルコキシ基が挙げられる。
【0052】
一般式(III)で示されるシラザン化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン等、好ましくはヘキサメチルジシラザンが挙げられる。一般式(IV)で示される1官能性シラン化合物としては、例えば、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール等のモノシラノール化合物;トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン等のモノクロロシラン;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン;トリメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジエチルアミン等のモノアミノシラン;トリメチルアセトキシシラン等のモノアシルオキシシランが挙げられ、好ましくは、トリメチルシラノール、トリメチルメトキシシラン又はトリメチルシリルジエチルアミン、特に好ましくは、トリメチルシラノール又はトリメチルメトキシシランが挙げられる。
【0053】
前記シラザン化合物又は/及び官能性シラン化合物の使用量は、使用した親水性球状シリカ微粒子のSi原子1モルに対して0.1〜0.5モル、好ましくは0.2〜0.4モル、特に好ましくは0.25〜0.35モルである。使用量が0.1モルより少ないと、得られる疎水性シリカ微粒子の分散性が悪くなるため、窒化ホウ素粒子への流動性付与効果が現れない。使用量が0.5モルより多いと、経済的に不利である。
【0054】
上記疎水性球状シリカ微粒子は、常圧乾燥、減圧乾燥等の常法によって粉体として得られる。
【0055】
<窒化ホウ素組成物>
本発明の窒化ホウ素粉末は、前記原料窒化ホウ素粉末に前記疎水性球状シリカ微粒子を添加し、該窒化ホウ素粉末の表面上に物理吸着させて付着させてなるものである。該窒化ホウ素粉体への該疎水性球状シリカ微粒子の添加量は、該原料窒化ホウ素粉体の0.01〜5.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜4.0質量%、特に0.5〜3.0質量%である。この添加量が0.01質量%より少ないと、窒化ホウ素粉体の流動性が変化しない場合があり、好ましくない。またこの添加量が5.0質量%を超えると、コスト的に好ましくない場合がある。本発明の窒化ホウ素粉末は、通常前記窒化ホウ素粉末と前記疎水性球状シリカ微粒子とから成る粉末であるが、任意に着色剤、カップリング剤のような添加剤を含んでもよい。
【0056】
窒化ホウ素粉体に前記の疎水性シリカ微粒子を付着させるには、公知の混合方法によれば良く、ヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、リボンブレンダー、らいかい機、ニーダーミキサー、バタフライミキサー、あるいは通常のプロペラ攪拌子による混合機を用いて、各成分の所定量を均一に混合すればよい。そうすれば簡単に疎水性シリカ微粒子を窒化ホウ素粉末表面に付着させることができる。
【0057】
<窒化ホウ素粉末を用いた樹脂組成物>
本発明の窒化ホウ素粉末と組合せられる樹脂としては、ポリマーマトリックス、低分子量流体、が挙げられ、ポリマーマトリックスとしては、ポリエステル、溶融加工可能ポリマー、クレゾールノボラック樹脂のようなフェノール樹脂、シリコーンポリマー(例えば、シリコーンゴム)、アクリル樹脂、ワックス、熱可塑性ポリマー、エポキシ樹脂、又はこれらの混合物のようなポリマーマトリクス構成要素を選ぶことができる。ポリマー組成物の総質量の10〜90質量%、好ましくは30〜90質量%、特に50〜90質量%の窒化ホウ素組成物を添加すると、樹脂の熱伝導性、電気絶縁性等を向上させることが可能となる。
【0058】
また上記ポリマーマトリックスはエラストマーを含んでも良い。このようなエラストマーには、限定ではないが、1,3ブタジエン、スチレン、イソプレン、イソブチレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、アクリロニトリル、エチレン、及びプロピレンのホモポリマー又はコポリマーが含まれる。更にはスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム及びその誘導体、例えば塩素化ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、油展誘導体;共役ジエンのポリマー及びコポリマー、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン及び同様のもの、及びこのような共役ジエンとコポリマー化が可能なエチレン基含有モノマーと共役ジエンとのコポリマー、例えばスチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、アクリロニトリル、2−ビニル−ピリジン、5−メチル2−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、アルキル置換アクリレート、ビニルケトン、メチルイソプロペニルケトン、メチルビニルエーテル、αメチレンカルボン酸及びそのエステル及びアミド、例えば、アクリル酸及びジアルキルアクリル酸アミド;エチレン及び他の高αオレフィンのコポリマー、例えばプロピレン、ブテン−1及びペンテン−1;1,3-ブタジエン、スチレン、イソプレン、イソブチレン、2,3−ジメチル−1,3ブタジエン、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン及び同様のものから製造されるポリマー(例えば、ホモポリマー、コポリマー、及びターポリマー)、加硫組成物(VR)、熱可塑性加硫物(TPV)、熱可塑性エラストマー(TAE)及び熱可塑性ポリオレフィン(TPO)なども含まれる。また、これらの何れかのブレンド物を用いることもできる。該エラストマーを含むポリマー組成物は、例えば、硫黄、硫黄供与体、活性剤、促進剤、過酸化物、及びエラストマーを加硫化するのに用いられる他の1つ又はそれ以上の硬化剤を含むことができる。
【0059】
タイヤ用途では、本発明の窒化ホウ素粉末を添加したポリマー組成物は、任意選択的ではあるが、トレッド化合物、アンダートレッド化合物、側壁化合物、ワイヤスキム化合物、内側ライナー化合物のような化合物;及びビーズ、アペックス、車両のタイヤ、産業ゴム製品、密封物、タイミングベルト、送電ベルト装置、及び他のゴム物品の構成要素に用いられるあらゆる化合物の1種又はそれ以上のカップリング剤を含むことができる。
【0060】
前記熱可塑性ポリマーとしては、液晶ポリマー:ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル;ポリアミド;ポリフタルアミド;ポリイミド;ポリフェニレンスルフィド;ポリカーボネート;ポリエーテルエーテルケトン;ポリアリールエーテルケトン;ポリアリーレンスルフィド;ポリフェニレンオキシド;及びその混合物の少なくとも1つが含まれる。
【0061】
本発明の窒化ホウ素粉末を添加した樹脂組成物は、ミル、バンバリーミキサー、ブラベンダー(Brabender)、一軸又は二軸スクリュー押出機、連続ミキサー、混練機等を用いて、溶融混合における技術分野で公知の方法により調製することができる。
【0062】
本発明の窒化ホウ素粉末を充填した樹脂組成物は、非処理の窒化ホウ素が充填された同種の樹脂組成物と比較して、ポリマーマトリックスの粘性を殆ど増大させない状態で窒化ホウ素の充填濃度を上昇させることができ、これによって、該、ポリマーマトリックスの熱伝導性を向上させて粘性を低下させるか、又は、単に充填ポリマー組成物の粘性を低下させて加工性を向上させることができる。
【0063】
本発明の窒化ホウ素粉末を用いた樹脂組成物は、マイクロプロセッサパッケージ、自動車部品及び構成要素、タイヤ、軸受ハウジングで用いられる物品、シート、フィルム、部品などの用途;マイクロプロセッサ及び集積回路チップ、プラスチックボールグリッドアレイパッケージ、クワッドフラットパック、及び他の一般的な表面実装集積回路パッケージ等のためのヒートシンクのような熱交換器用途、詳細には純アルミナ(約25W/mK)に近い高い熱伝導性が必要な用途、に用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0064】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、下記の実施例は、本発明を何ら制限するものではない。
【0065】
実施例で使用する窒化ホウ素粉末として、燐片状の六方晶構造の窒化ホウ素粉末であるUHP−2(昭和電工製、平均粒子径11.8μm)を使用した。これは、平均厚さが0.6μm、平均アスペクト比が50の六方晶系窒化ホウ素小板を90質量%含むものである。
【0066】
[疎水性球状シリカ微粒子の合成]
<合成例1>
・工程(A1):親水性球状シリカ微粒子の合成工程
攪拌機と、滴下ロートと、温度計とを備えた3リットルのガラス製反応器にメタノール989.5gと、水135.5gと、28%アンモニア水66.5gとを入れて混合した。この溶液を35℃となるように調整し、攪拌しながらテトラメトキシシラン436.5g(2.87モル)を6時間かけて滴下した。この滴下が終了した後も、さらに0.5時間攪拌を継続して加水分解を行うことにより、親水性球状シリカ微粒子の懸濁液を得た。
【0067】
・工程(A2):3官能性シラン化合物による表面処理工程
上で得られた懸濁液に室温でメチルトリメトキシシラン4.4g(0.03モル)を0.5時間かけて滴下し、滴下後も12時間攪拌を継続し、シリカ微粒子表面を疎水化処理することにより、疎水性球状シリカ微粒子の分散液を得た。
【0068】
次いで、ガラス製反応器にエステルアダプターと冷却管とを取り付け、前工程で得られた分散液を60〜70℃に加熱してメタノールと水の混合物1021gを留去し、疎水性球状シリカ微粒子の混合溶媒濃縮分散液を得た。このとき、濃縮分散液中の疎水性球状シリカ微粒子の含有量は28質量%であった。
【0069】
・工程(A3):1官能性シラン化合物による表面処理工程
前工程で得られた濃縮分散液に、室温において、ヘキサメチルジシラザン138.4g(0.86モル)を添加した後、この分散液を50〜60℃に加熱し、9時間反応させることにより、該分散液中のシリカ微粒子をトリメチルシリル化した。次いで、この分散液中の溶媒を130℃、減圧下(6650Pa)で留去することにより、疎水性球状シリカ微粒子(1)186gを得た。
【0070】
工程(A1)で得られた親水性球状シリカ微粒子について、下記の測定方法1に従って測定を行った。また、上記の工程(A1)〜
(A3)の各段階を経て得られた疎水性球状シリカ微粒子について、下記の測定方法2〜3に従って測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0071】
[測定方法1〜3]
1.工程(A1)で得られた親水性球状シリカ微粒子の粒子径測定
メタノールにシリカ微粒子懸濁液を、シリカ微粒子が0.5質量%となるように添加し、10分間超音波にかけることにより、該微粒子を分散させた。このように処理した微粒子の粒度分布を、動的光散乱法/レーザードップラー法ナノトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製、商品名:UPA-EX150)により測定し、その体積基準メジアン径を粒子径とした。なお、メジアン径とは粒度分布を累積分布として表した時の累積50%に相当する粒子径である。
【0072】
2.工程(A3)において得られた疎水性球状シリカ微粒子の粒子径測定及び粒度分布D90/D10の測定
メタノールにシリカ微粒子を、0.5質量%となるように添加し、10分間超音波にかけることにより、該微粒子を分散させた。このように処理した微粒子の粒度分布を、動的光散乱法/レーザードップラー法ナノトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製、商品名:UPA-EX150)により測定し、その体積基準メジアン径を粒子径とした。粒度分布D90/D10の測定は、上記粒子径測定した際の分布において小さい側から累積が10%となる粒子径をD10、小さい側から累積が90%となる粒子径をD90とし測定された値からD90/D10を計算した。
【0073】
3.疎水性球状シリカ微粒子の形状測定
電子顕微鏡(日立製作所製、商品名:S-4700型、倍率:10万倍)によって観察を行い、形状を確認した。「球状」とは、真球だけでなく、若干歪んだ球も含む。なおこのような粒子の形状は、粒子を二次元に投影した時の円形度で評価し、円形度が0.8〜1の範囲にあるものとする。ここで円形度とは、(粒子面積と等しい円の周囲長)/(粒子周囲長)である。
【0074】
<合成例2>
合成例1において、工程(A1)でメタノール、水、及び28%アンモニア水の量を、メタノール1045.7g、水112.6g、28%アンモニア水33.2gに変えたこと以外は同様にして、疎水性球状シリカ微粒子(2)188gを得た。この疎水性球状シリカ微粒子を用いて合成例1における測定と同様に測定した。この結果を表1に示す。
【0075】
<合成例3>
・工程(A1):
撹拌機、滴下ロート及び温度計を備えた3リットルのガラス製反応器に、メタノール623.7g、水41.4g、28%アンモニア水49.8gを添加して混合した。この溶液を35℃に調整し、撹拌しながら該溶液にテトラメトキシシラン1163.7gおよび5.4%アンモニア水418.1gを同時に添加開始し、前者は6時間、そして後者は4時間かけて滴下した。テトラメトキシシラン滴下後も0.5時間撹拌を続けて加水分解を行い、シリカ微粒子の懸濁液を得た。
【0076】
・工程(A2):
こうして得られた懸濁液に室温でメチルトリメトキシシラン11.6g(テトラメトキシシランに対してモル比で0.01相当量)を0.5時間かけて滴下し、滴下後も12時間撹拌して、シリカ微粒子表面の処理を行った。
【0077】
該ガラス製反応器にエステルアダプターと冷却管を取り付け、上記の表面処理を施したシリカ微粒子を含む分散液にメチルイソブチルケトン1440gを添加した後、80〜110℃に加熱して、メタノール水を7時間かけて留去した。
【0078】
・工程(A3):
こうして得られた分散液に、室温でヘキサメチルジシラザン357.6gを添加し、120℃に加熱し、3時間反応させて、シリカ微粒子をトリメチルシリル化した。その後溶媒を減圧下で留去して球状疎水性シリカ微粒子(3)472gを得た。
【0079】
こうして得られたシリカ微粒子(3)について、合成例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
【0080】
<合成例4>
シリカ微粒子の合成の際に、テトラメトキシシランの加水分解温度を35℃の代りに20℃とした以外は、合成例3と同様にして各工程を行ったところ、疎水性球状シリカ微粒子(4)469gを得た。この疎水性球状シリカ微粒子(4)を用いて合成例1と同様の測定を行った。この結果を表1に示す。
【0081】
<比較合成例1>
攪拌機と温度計とを備えた0.3リットルのガラス製反応器に爆燃法シリカ(商品名:SOC1、アドマテクス社製)100gを仕込み、純水1gを攪拌下で添加し、密閉後、さらに60℃で10時間攪拌した。次いで、室温まで冷却した後、ヘキサメチルジシラザン2gを攪拌下で添加し、密閉後、さらに24時間攪拌した。120℃に昇温し、窒素ガスを通気しながら残存原料および生成したアンモニアを除去し、疎水性球状シリカ微粒子(5)100gを得た。
【0082】
得られたシリカ微粒子(5)について、合成例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
【0083】
<比較合成例2>
攪拌機と温度計とを備えた0.3リットルのガラス製反応器に爆燃法シリカ(商品名:SOC1、アドマテクス社製)100gを仕込み、純水1gを攪拌下で添加し、密閉後、さらに60℃で10時間攪拌した。次いで、室温まで冷却した後、メチルトリメトキシシラン1gを攪拌下で添加し、密閉後、さらに24時間攪拌した。次にヘキサメチルジシラザン2gを攪拌下で添加し、密閉後、さらに24時間攪拌した。120℃に昇温し、窒素ガスを通気しながら残存原料および生成したアンモニアを除去し、疎水性球状シリカ微粒子(6)101gを得た。得られたシリカ微粒子(6)について、合成例1と同様の測定を行った。結果を表1に示す。
【0084】
<実施例1〜5、比較例1〜5>
上記の各疎水性球状シリカ微粒子(1)〜(6)を、表2に示す量で前記窒化ホウ素粉末に添加し、サンプルミルにより3分撹拌混合を行った。得られた粉体状の窒化ホウ素粉末について、粉体流動性の指標である基本流動性エネルギーの測定を行った。結果を表2に示す。なお、測定の詳細は以下の通りである。
また、実施例2、4の、球状疎水性シリカ微粒子を窒化ホウ素粉末表面に付着させた窒化ホウ素組成物の電子顕微鏡写真
を夫々図1、2に、及び比較例5の、球状疎水性シリカ微粒子を窒化ホウ素粉末に添加しない未処理の窒化ホウ素の電子顕微鏡写真を図
3に示す。
【0085】
流動性は、粉体流動性分析装置FT−4(シスメックス(株)製)を用いて測定した。この装置の測定原理を説明する。垂直に置かれた筒状容器に粉体を充填し、該粉体中を垂直な軸棒の先端に設けられた二枚の回転翼(ブレード)を回転させながら一定の距離(高さH1からH2まで)下降させる。このときに粉体から受ける力をトルク成分と荷重成分とに分けて測定することにより、該ブレードがH1からH2まで下降するのに伴うそれぞれの仕事量(エネルギー)を求め、次いで両者のトータルエネルギー量を求める。こうして測定されたトータルエネルギー量が小さいほど粉体の流動性が良好であることを意味するので、粉体流動性の指標として使用する。この装置にて、窒化ホウ素粉末の安定性試験も行なった。
【0086】
・・条件:
容器:容積160ml(内径50mm、長さ79mm)のガラス製円筒型容器を使用した。
【0087】
ブレード:円筒型容器内の中央に鉛直に装入されるステンレス製の軸棒の先端に、水平に対向する形で二枚取り付けられている。ブレードは、直径48mmのものを使用する。H1からH2までの長さは69mmである。
【0088】
・・流動性試験:上記のようにして、測定容器に充填した粉体を静置した状態から流動させた場合の粉体流動特性をみる。ブレード先端の回転速度を100mm/secとし、トータルエネルギー量を7回連続して測定する。7回目のトータルエネルギー量(最も安定した状態であるので基本流動性エネルギーと称される)を表2に示す。トータルエネルギー量が小さいほど流動性が高い。
・・安定性試験:流動性試験に続いて、ブレードの回転速度を100mm/sec→70mm/sec→40mm/sec→10mm/secと変えた時のトータルエネルギー量を測定する。その時のFRI変動指数(Flow Rate Index)が1に近いほど、流動速度について安定していると言える。ここで、FRI変動指数=(10mm/sのデータ)/(100mm/sのデータ)。
【0089】
【表1】
<注>
1)工程(A1)で得られた分散液の親水性球状シリカ微粒子の粒子径
2)最終的に得られた疎水性シリカ微粒子の粒子径
【0090】
【表2】
【0091】
<実施例6>
<熱伝導性シートの作製>
実施例4の窒化ホウ素粉末100g、エポキシ樹脂(東都化成社製、商品名「YSLV−80XY」)11.3g、クレゾールノボラック樹脂(東都化成社製、商品名「YDCN−701」)11.3g、及び硬化促進剤(三フッ化ホウ素モノエチルアミン)0.26gを小型粉砕機に投入し、これらを混合して、粉末状の樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物を、金型を用いてプレス成形(180℃×10分間)によりシート化して、熱伝導性シート(厚み0.2mm)を作製した。
【0092】
(評価)
上記熱伝導性シートについて、熱伝導率ならびに絶縁破壊電圧の測定を実施した。なお、熱伝導率は、アイフェイズ社製、商品名「ai−phase mobile」により熱拡散率を求め、さらに、示差走査熱量計(DSC)を用いた測定により熱伝導性シートの単位体積あたりの熱容量を測定し、先の熱拡散率に乗じることにより算出した。
また、絶縁破壊電圧は、常温の絶縁油(JIS C 2320に規定された1種2号絶縁油)中で1kV/minの昇圧速度で測定した。さらに、上記熱伝導性シートの脆さを指触にて判定し、取り扱いが良好で成形時における支障が生じないと見られるものを「○」、やや脆い感じがあるものの実用上問題ない普通レベルと感じられるものを「△」、もろく、成形時に慎重な取り扱いを要するものを「×」として判定した。その結果を表3に示す。
【0093】
<比較例6>
上記実施例6の窒化ホウ素粉末100gを、100gの未処理の窒化ホウ素粉末UHP−2に変えた以外は実施例6と同様にしてシートを作製し、同様に評価を行った。その結果を表3に示す。
【0094】
【表3】