(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のポリイミド前駆体は、上記したように、式(1)で表される重合単位を有するポリイミド前駆体であり、かつ下記(i)〜(iii)のいずれかを満たすことを特徴とするポリイミド前駆体である。
式(1)において、R
1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。アルキル基の具体的例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、又はt−ブチル基が挙げられる。一般に、ポリアミック酸エステルは、メチル基、エチル基、プロピル基と炭素数が増えるに従ってイミド化が進行する温度が高くなる。したがって、熱によるイミド化のしやすさの観点から、メチル基、又はエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0023】
式(1)において、R
2及びR
3は水素原子又は1価の有機基である。R
2又はR
3が1価の有機基である場合は、この部分のイミド化が起こらないため、この比率を制御することで、ポリイミド前駆体をイミド化する際の最大イミド化率を制御することができる。液晶配向膜として利用する場合は、ポリイミドのイミド化率が低すぎると液晶の配向性が低下するため、ポリイミド前駆体全体に対して、R
2及びR
3が水素原子である比率は50%以上とすることが好ましく、75%以上とすることが特に好ましい。R
2又はR
3の1価の有機基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビシクロヘキシル基等のビシクロアルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、1または2または3−ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、キシリル基、トリル基、ビフェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルシクロヘキシル基等のアラルキル基、及び式(2)で表される基を挙げることができる。単に最大イミド化率の制御のみを目的とするのであれば、液晶配向性への悪影響が小さいメチル基、エチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0024】
前記式(2)で表される基は、t−ブチルエステル構造を有していることを特徴としている。このt−ブチルエステルは150℃以上で加熱することで、カルボキシル基へと変化する。従って、本発明のポリイミド前駆体又はポリイミドを含有する塗布液は、製膜時などの加熱工程を150℃以上とすることでカルボキシル基が生成し、このカルボキシル基の作用により、形成された塗膜の体積抵抗率が低下する。この塗膜が液晶配向膜用途である場合は、体積抵抗率が低下した効果によって、液晶表示素子の残像特性が向上する。
【0025】
上記式(1)中のR
1が水素原子であるだけでもカルボキシル基を含有するポリイミド前駆体となるが、このカルボキシル基は、ポリイミド前駆体からポリイミドに変化させたときに消費されてイミド基を構成する部分構造に変化するため、体積抵抗率の低下には寄与できない。また、R
1がt−ブチル基の場合には、この部分もt−ブチルエステル構造となるので加熱工程においてカルボキシル基が生成するが、このカルボキシル基も上記と同様にポリイミドに変化させる工程で消費されてしまう。これらに対して、前述した(i)〜(iii)のいずれかの条件で式(2)の基を有している場合は、ポリイミドに変化させた後でも式(2)の構造から生成するカルボキシル基を残存させることができるという特徴がある。ただし、式(2)に明示されているt−ブトキシカルボニル基とポリイミド前駆体の主鎖に存在するアミド基との相対位置によっては、5員環、または6員環の安定なイミド環を形成し、生成したカルボキシル基が消費される可能性が生じる。この可能性をなくすため、上記アミド基とt−ブトキシカルボニル基との相対位置は、アミド基の窒素原子とt−ブトキシ基に隣接するカルボニル基の炭素原子の間を辿っていった際に、その経路上に存在する原子の数が2個以下であるか、若しくは5個以上であるか、又はその経路上にtrans構造の二重結合を一つ以上含むか、若しくは三重結合を一つ以上含むことが好ましい。
【0026】
また、ポリイミド前駆体を溶液状態でイミド化させる場合には、塩基性化合物や酸無水物などのイミド化試薬が使用されることが多いが、ポリイミド前駆体中のカルボキシル基は、これらのイミド化試薬と反応するため、カルボキシル基を残存させたままポリイミドを合成することは難しい。このようなイミド化反応工程に対しても、式(2)のt−ブチルエステル構造はイミド化試薬とは反応せず、その後に加熱工程を経ることでカルボキシル基を持つポリイミドを得ることができる。
【0027】
さらには、ポリイミドを含有する塗布液に、添加剤として脂肪族ジアミンやジエポキシ化合物などカルボキシル基と反応する可能性のある二官能性化合物を使用する場合、ポリイミド構造にカルボキシル基が存在すると塗布液のゲル化やポリマーの析出がおこり、塗布液を長期間安定に保存することが困難となる可能性があるが、式(2)の構造のようにt−ブチルエステル構造であれば、このような問題が起こらないという利点がある。
式(2)において、Aは単結合又は2価の有機基であるが、ジアミンの反応性低下を抑制するため、また、前述したアミド基との反応によるカルボキシル基の消費の可能性を低くするため、下記式(6)で表される2価の有機基であることが好ましい。
【0028】
【化10】
(式(6)中、B
1およびB
2はそれぞれ独立して単結合、または2価の連結基である。ただし、B
1およびB
2の少なくともどちらか一方は2価の連結基である。R
8およびR
9はそれぞれ独立して単結合または炭素数1〜20の2価の炭化水素である。ただし、B
1、B
2、R
8、R
9の中で、式(2)に明示されているt−ブトキシカルボニル基が結合する原子は炭素原子である。)
上記B
1およびB
2の具体的な例を以下に示すが、これに限定されない。液晶配向膜の機械特性が向上するため、B
1およびB
2の少なくともどちらか一方がB-9であると好ましい。
【0030】
上記B-5〜B-8、B-10、B-11において、R
10およびR
11は水素原子または炭素数1〜20の1価炭化水素である。ここで、1価の炭化水素は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビシクロヘキシル基等のビシクロアルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、1または2または3−ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、キシリル基、トリル基、ビフェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルシクロヘキシル基等のアラルキル基などが挙げられる。
【0031】
なお、これらの1価炭化水素基の水素原子の一部または全部は、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、アミノ基、リン酸エステル基、エステル基、カルボキシル基、リン酸基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、オルガノオキシ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、オルガノアミノ基、カルバミン酸エステル基、アシル基、アルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基などで置換されていてもよい。また、これらは環状構造であってもよい。
【0032】
R
10およびR
11が芳香環や脂環構造などの嵩高い構造であると液晶配向性を低下させたり、ポリマーの溶解性を低下させたりする可能性があるため、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、または水素原子が好ましく、水素原子がより好ましい。また、液晶配向膜の機械特性を向上させるためには、カルバミン酸t−ブチルエステル基であることが好ましい。
【0033】
式(6)中、R
8およびR
9が炭素数1〜20の2価の炭化水素である場合、その具体的な例を以下に挙げるが、これに限定されない。メチレン基、1,1−エチレン基、1,2−エチレン基、1,1−プロピレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、2,3−ブチレン基、1,6−へキシレン基、1,8−オクチレン基、1,10−デシレン基等のアルキレン基;1,2−シクロプロピレン基、1,2−シクロブチレン基、1,3−シクロブチレン基、1,2−シクロペンチレン基、1,1−シクロへキシレン基、1,2−シクロへキシレン基、1,4−シクロへキシレン基等のシクロアルキレン基;1,1−エテニレン基、1,2−エテニレン基、1,2−エテニレンメチレン基、1−メチル−1,2−エテニレン基、1,2−エテニレン−1,1−エチレン基、1,2−エテニレン−1,2−エチレン基、1,2−エテニレン−1,2−プロピレン基、1,2−エテニレン−1,3−プロピレン基、1,2−エテニレン−1,4−ブチレン基、1,2−エテニレン−1,2−ブチレン基、1,2−エテニレン−1,2−ヘプチレン基、1,2−エテニレン−1,2−デシレン基等のアルケニレン基;エチニレン基、エチニレンメチレン基、エチニレン−1,1−エチレン基、エチニレン−1,2−エチレン基、エチニレン−1,2−プロピレン基、エチニレン−1,3−プロピレン基、エチニレン−1,4−ブチレン基、エチニレン−1,2−ブチレン基、エチニレン−1,2−ヘプチレン基、エチニレン−1,2−デシレン基等のアルキニレン基;1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,2−ナフチレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,3−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、3−フェニル−1,2−フェニレン基、2,2’−ジフェニレン基、2,2’−ジナフト−1,1’−イル基等のアリーレン基;1,2−フェニレンメチレン基、1,3−フェニレンメチレン基、1,4−フェニレンメチレン基、1,2−フェニレン−1,1−エチレン基、1,2−フェニレン−1,2−エチレン基、1,2−フェニレン−1,2−プロピレン基、1,2−フェニレン−1,3−プロピレン基、1,2−フェニレン−1,4−ブチレン基、1,2−フェニレン−1,2−ブチレン基、1,2−フェニレン−1,2−ヘキシレン基、メチレン−1,2−フェニレンメチレン基、メチレン−1,3−フェニレンメチレン基、メチレン−1,4−フェニレンメチレン基等のアリーレン基とアルキレン基からなる二官能炭化水素基があげられる。
【0034】
なお、上記2価炭化水素基の水素原子の一部または全部は、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、リン酸エステル基、エステル基、カルボキシル基、リン酸基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、オルガノオキシ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、オルガノアミノ基、カルバミン酸エステル基、アシル基、アルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基などで置換されていてもよい。また、これらは環状構造であってもよい。また、液晶配向膜の機械特性を向上させるためには、カルバミン酸t−ブチルエステル基であることが好ましい。
R
8およびR
9は、炭素数が少ないと、液晶配向性が良くなるため、炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数1〜5のアルケニレン基、又は炭素数1〜5のアルキニレン基が好ましい。また、R
10およびR
11の両方、またはどちらか一方が単結合であることが好ましい。
以下に、式(2)で表される構造の好ましい具体的を挙げるが、本発明はこれに限定されない。
【0039】
上記式(7)〜(24)において、nの値は、前述した主鎖中のアミド基と式(2)の構造から生成するカルボキシル基との反応の可能性をなくすため、主鎖中のアミド基の窒素原子とt−ブトキシ基に隣接するカルボニル基の炭素原子の間を辿っていった際に、その経路上に存在する原子の数が2個以下になるか、若しくは5個以上になるように、母体の構造を考慮して選択することが好ましい。また、炭素数が少ないと液晶配向性が良くなるため、nは0〜10が好ましく、0〜5がより好ましい。
【0040】
本発明のポリイミド前駆体に含有される重合単位において、式(2)の基が存在する位置は、式(1)のX、Y、R
2、R
3のいずれの場所であっても構わない。このうち、式(1)のYの構造に式(2)で表される基を有している形態、及び式(1)のR
2、R
3、又はその両方が式(2)で表される基である形態は、ポリイミド前駆体の原料となるモノマーを合成する時の簡便性、およびこのモノマーの取り扱いやすさの観点から好ましい。
【0041】
また、式(1)のR
2又はR
3が式(2)で表される基である場合は、式(2)が結合しているアミド基の部分のイミド化が起こらないため、この比率を制御することで、ポリイミド前駆体をイミド化する際の最大イミド化率を制御することができる。逆に、ポリイミド前駆体のイミド化を阻害したくない場合は、式(1)のR
2及びR
3は水素原子とし、式(1)のX、Y、又はその両方に式(2)で表される基を有している形態とすればよい。ポリイミドを液晶配向膜として利用する場合は、ポリイミドのイミド化率が低すぎると液晶の配向性が低下するため、ポリイミド前駆体全体に対して、R
2及びR
3が水素原子である比率は50%以上とすることが好ましく、75%以上とすることが特に好ましい。
【0042】
本発明のポリイミド前駆体は、式(1)で表され、かつX、Y、R
2、R
3のいずれの場所にも式(2)の基が存在していない重合単位を含んでいても構わない。この場合、ポリイミドの体積抵抗率を低下させるという目的において、X、Y、R
2、R
3のいずれかの場所に存在している式(2)の含有率は、式(1)で表される重合単位を基準として0.05以上であることが好ましく、0.10以上であることが特に好ましい。
上記の定義では、例えばポリイミド前駆体に含まれる式(1)で表される重合単位が、「式(1)のX及びYにはそれぞれ式(2)の基を1個ずつ有し、且つR
2及びR
3が式(2)の基である重合単位」のみである場合、このポリイミド前駆体における式(2)の含有率は4.00となる。
【0043】
前記式(1)において、Xは4価の有機基であり、特に限定されるものではない。ポリイミド前駆体中、Xの構造は2種類以上が混在していてもよい。Xの具体例を示すならば、式(2)の基を有さない構造としては以下に示すX-1〜X-46の構造が挙げられる。また、式(2)の基を有する構造としては、X−1〜X−46の構造において任意の水素原子の1つ以上を式(2)の基で置き換えたものが挙げられる。なお、モノマーの入手性の理由から、Xに含まれる式(2)の基は4個以下であることが好ましい。
【0048】
前記式(1)において、Yは2価の有機基であり、特に限定されるものではない。ポリイミド前駆体中、Yの構造は2種類以上が混在していてもよい。Yの構造の具体例を示すならば、式(2)の基を有さない構造としては以下に示すY-1〜Y-97の構造が挙げられる。また、式(2)の基を有する構造としては、Y-1〜Y-97の構造において任意の水素原子の1つ以上を式(2)の基で置き換えたものが挙げられる。なお、モノマーの入手性の理由から、Yに含まれる式(2)の基は4個以下であることが好ましい。
【0061】
ポリイミドの体積抵抗率を低下させるという効果に対して、式(1)におけるYの基本骨格は特に限定されないが、液晶配向膜に高い液晶配向性を付与するならば、YにおいてN−R
2又はN−R
3と結合している部分の構造が芳香族環であることが好ましく、この芳香族環としてはベンゼン環がより好ましい。特に好ましいYの構造は下記式(3)で表される構造である。
【0063】
式(3)中、R
4は単結合または炭素数1〜20の2価の有機基であり、より好ましくは単結合である。R
5は式(2)で表される構造であり、aは0〜4の整数である。
以下に好ましいYの具体例を示すが、これに限定されるものではない。なお、下記の構造中、R
5は式(2)で表される構造であり、cは0〜4の整数であり、d及びeは0〜2の整数である。
【0066】
本発明のポリイミド前駆体は、下記式(42)〜(44)で表されるテトラカルボン酸誘導体のいずれかと、式(45)で表されるジアミン化合物との反応によって得ることができる。
【0067】
【化35】
(式中、R
1〜R
3、X、Yは、式(1)のそれと同じである。)
【0068】
例えば、式(1)におけるXが式(2)で表される基を有する構造単位を得るためには、上記式(42)〜(44)のいずれかにおけるXが、式(2)で表される基を有する構造のXであるテトラカルボン酸誘導体を使用すればよい。
また、式(1)のYに式(2)で表される基を有する構造単位を得るためには、上記(45)におけるYが、式(2)で表される基を有する構造のYであるジアミン化合物を使用すればよい。
同様に、式(1)のR
2又はR
3或はその両方が式(2)で表される基である構造単位を得るためには、上記(45)におけるR
2又はR
3或はその両方が式(2)で表される基であるジアミン化合物を使用すればよい。
式(42)〜(44)で表されるテトラカルボン酸誘導体におけるX及びR
1、式(45)で表されるジアミン化合物におけるY及びR
2〜R
3は、得ようとする式(1)の構造に対応するそれぞれと同一の構造とすればよい。よって、これらの具体例及び好ましい例は、式(1)の説明で例示した構造をそのまま挙げることができる。
【0069】
[ポリイミド前駆体の合成1(ポリアミック酸の合成)]
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物から合成することができる。
【0071】
具体的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを有機溶媒存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜12時間反応させることによって合成することができる。
上記の反応に用いる溶媒は、モノマーおよびポリマーの溶解性からN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、又はγ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。合成時の濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
上記のようにして得られたポリアミック酸は、反応溶液をよく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させて回収することができる。また、析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥することで精製されたポリアミック酸の粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0072】
[ポリイミド前駆体の合成2(ポリアミック酸エステルの合成)]
ポリアミック酸エステルは、以下に示す(A)〜(C)の方法で合成することができる。
(A)ポリアミック酸からポリアミック酸エステルを合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンから得られるポリアミック酸をエステル化することによって合成することができる。
【0074】
具体的には、ポリアミック酸とエステル化剤を有機溶剤の存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜4時間反応させることによって合成することができる。
エステル化剤としては、精製によって容易に除去できるものが好ましく、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジプロピルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジネオペンチルブチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジ−t−ブチルアセタール、1−メチル−3−p−トリルトリアゼン、1−エチル−3−p−トリルトリアゼン、1−プロピル−3−p−トリルトリアゼンなどが挙げられる。エステル化剤の添加量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して、2〜6モル当量が好ましい。
【0075】
上記の反応に用いる溶媒は、ポリマーの溶解性からN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、又はγ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。合成時の濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
(B)テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンからポリアミック酸エステルを合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンから合成することができる。
【0077】
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとを塩基と有機溶剤の存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜4時間反応させることによって合成することができる。
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミン、又は4−ジメチルアミノピリジンが使用できるが、反応が穏和に進行するためにピリジンが好ましい。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドに対して、2〜4倍モルであることが好ましい。
【0078】
上記の反応に用いる溶媒は、モノマーおよびポリマーの溶解性からN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。合成時の濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。また、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドの加水分解を防ぐため、ポリアミック酸エステルの合成に用いる溶媒はできるだけ脱水されていることが良く、窒素雰囲気中で、外気の混入を防ぐのが好ましい。
(C)テトラカルボン酸ジエステルとジアミンからポリアミック酸を合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを縮合剤により縮合することにより合成することができる。
【0080】
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを縮合剤、塩基、有機溶剤の存在下で0℃〜150℃、好ましくは0℃〜100℃において、30分〜24時間、好ましくは3〜15時間反応させることによって合成することができる。
【0081】
前記縮合剤には、トリフェニルホスファイト、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−カルボニルジイミダゾール、ジメトキシ−1,3,5−トリアジニルメチルモルホリニウム、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボラート、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、(2,3−ジヒドロ−2−チオキソ−3−ベンゾオキサゾリル)ホスホン酸ジフェニルなどが使用できる。縮合剤の添加量は、テトラカルボン酸ジエステルに対して2〜3倍モルであることが好ましい。
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミンなどの3級アミンが使用できる。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、ジアミン成分に対して2〜4倍モルであることが好ましい。
【0082】
また、上記反応において、ルイス酸を添加剤として加えることで反応が効率的に進行する。ルイス酸としては、塩化リチウム、臭化リチウムなどのハロゲン化リチウムが好ましい。ルイス酸の添加量はジアミン成分に対して0〜1.0倍モルであることが好ましい。
上記3つのポリアミック酸エステルの合成方法の中でも、高分子量のポリアミック酸エステルが得られるため、(A)又は(B)の合成法が特に好ましい。
【0083】
以上のようにして得られるポリアミック酸エステルの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して精製されたポリアミック酸エステルの粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0084】
[分子量]
ポリイミド前駆体の分子量は、ワニスの粘度や、ポリイミド膜の物理的な強度に影響を与える。ワニスの良好な塗布作業性や塗膜の良好な均一性を得るという観点からは重量平均分子量で500,000以下が好ましく、十分な強度のポリイミド膜を得るという観点からは2,000以上が好ましい。重量平均分子量は、より好ましくは5,000〜300,000であり、さらに好ましくは、10,000〜100,000である。ポリイミド前駆体の分子量は、前記重合反応に用いるジアミン成分とテトラカルボン酸誘導体の比率を調整することで制御できる。ジアミン成分:テトラカルボン酸誘導体の比率としては、モル比で1:0.7〜1.2を例示することができる。このモル比が1:1に近いほど得られるポリイミド前駆体の分子量は大きくなる。
【0085】
[ポリイミドの合成]
本発明のポリイミドは、前記ポリイミド前駆体をイミド化することにより合成することができる。ポリイミド前駆体からポリイミドを合成する方法として簡便なものは、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物との反応で得られた前記ポリアミック酸の溶液に触媒を添加する化学的イミド化であり、比較的低温でイミド化反応が進行し、イミド化の過程で重合体の分子量低下が起こりにくいので好ましい。
化学的イミド化は、イミド化させたい重合体を、有機溶媒中において塩基性触媒と酸無水物の存在下で攪拌することにより行うことができる。有機溶媒としては前述した重合反応時に用いる溶媒を使用することができる。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができる。中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。また、酸無水物としては無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等を挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。
【0086】
イミド化反応を行うときの温度は−20〜200℃、好ましくは0〜180℃であり、反応時間は1〜100時間で行うことができる。塩基性触媒の量はアミック酸基の0.5〜30モル倍、好ましくは2〜20モル倍であり、酸無水物の量はアミック酸基の1〜50モル倍、好ましくは3〜30モル倍である。得られる重合体のイミド化率は、触媒量、温度、反応時間を調節することで制御することができる。イミド化反応後の溶液には、添加した触媒等が残存しているので、以下に述べる手段により、得られたイミド化重合体を回収し、有機溶媒で再溶解して、本発明の液晶配向剤とすることが好ましい。
【0087】
上記の方法で得られるポリイミドの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥することで、精製されたポリイミドの粉末を得ることができる。貧溶媒は、ポリマーを析出させるものであれば特に限定されないが、メタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン等が挙げられる。
【0088】
[液晶配向剤]
本発明の液晶配向剤は、上記のようにして得られたポリイミド前駆体又はポリイミドの少なくとも一方を含有する塗布液であり、液晶配向膜を形成するのに用いられる。
本発明の液晶配向剤は、2種類以上のポリイミド前駆体や2種類以上のポリイミドを含有していてもよく、ポリイミド前駆体とポリイミドの両方を含有していてもよい。更には、本発明のポリイミド前駆体又は本発明のポリイミド以外のポリマー成分を含有してもよい。
【0089】
本発明の液晶配向剤の最も単純な構成例としては、上記のポリイミド前駆体又はポリイミドから選ばれるポリマー成分と、これを溶解させるための有機溶媒を含有する組成物が挙げられる。この組成物は、ポリイミド前駆体又はポリイミドを合成した際の反応溶液そのものであってもよく、この反応溶液を後述する溶媒で希釈したものであっても構わない。また、ポリイミド前駆体又はポリイミドを粉末として回収した場合は、これを有機溶媒に溶解させて、ポリマー溶液としたものであっても構わない。
【0090】
ポリイミド前駆体及び/又はポリイミドの有機溶媒中における濃度(含有量)は10〜30質量%が好ましく、10〜15質量%が特に好ましい。また、これらを溶解させる際に加熱してもよい。加熱温度は、20℃〜150℃が好ましく、20℃〜80℃が特に好ましい。
ポリイミド前駆体またはポリイミドを溶解させるための有機溶媒としては、ポリマー成分が均一に溶解するものであれは特に限定されない。その具体例を挙げるならば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。また、単独ではポリマー成分を均一に溶解できない溶媒であっても、重合体が析出しない範囲であれば、上記の有機溶媒に混合してもよい。
【0091】
本発明の液晶配向剤の溶媒成分は、ポリマー成分を溶解させるための有機溶媒の他に、液晶配向剤を基板へ塗布する際の塗膜均一性を向上させるための溶媒を含有してもよい。このような溶媒は、一般的に上記の有機溶媒よりも低表面張力の溶媒が用いられる。その具体例を挙げるならば、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル等が挙げられる。これらの溶媒は2種類上を併用してもよい。
【0092】
本発明の液晶配向剤のポリマー濃度は、形成させようとするポリイミド膜の厚みの設定によって適宜変更することができるが、均一で欠陥のない塗膜を形成させるという観点からは1質量%以上であることが好ましく、溶液の保存安定性の観点からは10質量%以下とすることが好ましい。
その他、本発明の液晶配向剤はシランカップリング剤や架橋剤などの各種添加剤を含有してもよい。
シランカップリング剤は、液晶配向剤が塗布される基板と、そこに形成される液晶配向膜との密着性を向上させる目的で添加される。以下にシランカップリング剤の具体例を挙げるが、本発明の液晶配向剤に使用可能なシランカップリング剤はこれに限定されるものではない。
【0093】
3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシランなどのアミン系シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシランなどのビニル系シランカップリング剤;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ系シランカップリング剤;3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリル系シランカップリング剤;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリル系シランカップリング剤;3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのウレイド系シランカップリング剤;ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系シランカップリング剤;3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシランなどのメルカプト系シランカップリング剤;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート系シランカップリング剤;トリエトキシシリルブチルアルデヒドなどのアルデヒド系シランカップリング剤;トリエトキシシリルプロピルメチルカルバメート、(3−トリエトキシシリルプロピル)−t−ブチルカルバメートなどのカルバメート系シランカップリング剤。
【0094】
シランカップリング剤の添加量は、未反応のものが液晶配向性に悪影響を及ぼさず、かつ密着性の効果が現れるという観点から、ポリマー成分に対して0.01〜5.0質量%が好ましく、0.1〜1.0質量%がより好ましい。シランカップリング剤を添加する場合は、ポリマーの析出を防ぐため、前記した塗膜均一性を向上させるための溶媒を加える前に添加するのが好ましい。
【0095】
[液晶配向膜]
本発明の液晶配向膜は、上記のようにして得られた液晶配向剤を基板に塗布し、乾燥、焼成して得られた塗膜であり、必要に応じてこの塗膜面にラビング又は光配向等の処理をする。
本発明の液晶配向剤を塗布する基板としては透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、窒化珪素基板、アクリル基板やポリカーボネート基板等のプラスチック基板等を用いることができ、液晶駆動のためのITO電極等が形成された基板を用いることがプロセスの簡素化の観点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では片側の基板のみにならばシリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極はアルミ等の光を反射する材料も使用できる。本発明の液晶配向剤の塗布方法としては、スピンコート法、印刷法、インクジェット法などが挙げられる。本発明の液晶配向剤を塗布した後の乾燥、焼成工程は、任意の温度と時間を選択することができる。通常は、含有される有機溶媒を十分に除去するために50℃〜120℃で1分〜10分乾燥させ、その後150℃〜300℃で5分〜120分焼成される。焼成後の塗膜の厚みは、特に限定されないが、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、5〜300nm、好ましくは10〜200nmである。
【0096】
ラビング処理は既存のラビング装置を利用して行うことができる。この際のラビング布の材質としては、コットン、ナイロン、レーヨンなどが挙げられる。ラビング処理の条件としては一般に、回転速度300〜2000rpm、送り速度5〜100mm/s、押し込み量0.1〜1.0mmという条件が用いられる。その後、純水やアルコールなどを用いて超音波洗浄によりラビングにより生じた残渣が除去される。
光配向処理法の具体例としては、前記塗膜表面に、一定方向に偏光した放射線を照射し、場合によってはさらに150〜250℃の温度で加熱処理を行い、液晶配向能を付与する方法が挙げられる。放射線としては、100nm〜800nmの波長を有する紫外線および可視光線を用いることができる。このうち、100nm〜400nmの波長を有する紫外線が好ましく、200nm〜400nmの波長を有するものが特に好ましい。また、液晶配向性を改善するために、塗膜基板を50〜250℃で加熱しつつ、放射線を照射してもよい。前記放射線の照射量は、1〜10,000mJ/cm
2の範囲にあることが好ましく、100〜5,000mJ/cm
2の範囲にあることが特に好ましい。
【0097】
[液晶表示素子]
本発明の液晶表示素子は、上記した手法により本発明の液晶配向剤から液晶配向膜付き基板を得た後、公知の方法で液晶セルを作成し、液晶表示素子としたものである。
液晶セルの製造方法は特に限定されないが、一例を挙げるならば、液晶配向膜が形成された1対の基板を液晶配向膜面を内側にして、好ましくは1〜30μm、より好ましくは2〜10μmのスペーサーを挟んで設置した後、周囲をシール剤で固定し、液晶を注入して封止する方法が一般的である。液晶封入の方法については特に制限されず、作製した液晶セル内を減圧にした後液晶を注入する真空法、液晶を滴下した後、封止を行う滴下法などが例示できる。
【0098】
[体積抵抗率の測定]
本発明の液晶配向膜の体積抵抗率の測定方法は特に限定されないが、一例として以下の方法が挙げられる。
上記の液晶配向剤をITO透明電極付きガラス基板にスピンコート法により塗布する。塗布した後の乾燥、焼成工程は、任意の温度と時間を選択することができるが、一般的な配向膜形成工程と同様に、50℃〜120℃で1分〜10分乾燥させ、その後150℃〜300℃で5分〜120分焼成することが好ましい。焼成後の塗膜の厚みは、特に限定されないが、微粒子によるピンホールが発生せず、工程上作製が容易で、かつ実際の液晶配向膜の物性を反映させるという観点から、50nm〜2000nmが好ましく、より好ましくは100〜1000nmである。その後、塗膜表面に電極を形成する。電極は、塗膜を傷つけることなく簡便に蒸着することができるアルミ電極が好ましい。電極面積は、塗膜中のピンホールを含みにくく、かつ測定時に大きな印加電圧を必要としないという観点から、0.001cm
2〜0.05cm
2が好ましい。作製した素子に一定電圧を印加し、測定される電流値から体積抵抗率が算出できる。印加電圧は電流値の測定が容易で、かつショートしにくいという観点から1V〜20Vが好ましい。
【0099】
[残像特性の評価]
本発明の液晶表示素子の残像特性の評価法は特に限定されないが、一例として以下に述べるような液晶セルに直流電圧を印加した後の残留電圧を測定する誘電吸収法が挙げられる。
上記の液晶配向剤をITO透明電極付きガラス基板にスピンコート法により塗布する。塗布した後の乾燥、焼成工程は、任意の温度と時間を選択することができるが、一般的な配向膜形成工程と同様に、50℃〜120℃で1分〜10分乾燥させ、その後150℃〜300℃で5分〜120分焼成することが好ましい。焼成後の塗膜の厚みは、特に限定されないが、一般的な配向膜形成工程と同様に、5〜300nm、好ましくは10〜200nmである。この塗膜面にラビングによる配向処理を施して液晶配向膜付き基板とする。この液晶配向膜付き基板を2枚用意し、一方の液晶配向膜上に4μm〜6μmのスペーサーを散布した後、その上からシール剤を印刷し、もう一方の基板を液晶配向膜が向き合いラビング方向が直行するように張り合わせた後、シール剤を硬化させて空セルを作製する。この空セルに減圧注入法によって、液晶を注入し、注入口を封止して、ツイストネマティック液晶セルを得る。
このツイストネマティック液晶セルに、任意の温度下で10Vの直流電圧を30分間印加し、1秒間短絡させた後の液晶セル内に発生している電位の時間変化を測定する。
【0100】
[特定ジアミン]
本発明のポリイミド前駆体を合成するにあたり、ポリイミド前駆体の原料となるモノマーを合成する時の簡便性、およびこのモノマーの取り扱いやすさの観点からは、前記式(45)におけるYが式(2)で表される基を有するジアミン化合物を使用するか、前記式(45)におけるR
2、R
3、又はその両方に式(2)で表される基が結合しているジアミン化合物を使用することが好ましい。このようなジアミン化合物の中でも、液晶配向膜としたときに液晶配向性が高く、機械特性が強く、体積抵抗率が低く、残留DC特性に優れた液晶表示素子を得ることができる等の理由から、下記式(4)又は式(5)で表されるジアミン化合物が好ましい。
【0101】
【化40】
(式中、R
6は前記式(2)で表される構造である。bは1又は2である。)
【0102】
【化41】
(式中、R
7は前記式(2)で表される構造である。)
下記式(A)〜(D)のジアミン化合物は、上記式(4)又は式(5)で表されるジアミンの中でも、比較的容易に合成できるため、特に好ましい化合物である。
【0104】
[特定ジアミン]
上記式(A)〜(D)のジアミン化合物は以下のようにして合成することができる。
特定ジアミン化合物(A)
式(A)のジアミン化合物は、例えば、下記式(A1)のプロパルギルアミン、式(A2)のブロモ酢酸t-ブチル、式(A3)の二炭酸ジt-ブチル、および式(A4)の2−ヨード−4−ニトロアニリンを主原料として、以下に示す4ステップの経路で合成できる。
【0108】
式(A1)のプロパルギルアミンを有機溶剤に溶解させ、塩基を添加する。ここで、用いる有機溶剤は、一般的に求核置換反応によく用いられる極性溶媒が好ましく、具体的な例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノールなどが挙げられるが、これに限定されない。また、塩基には水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水素化ナトリウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンなどが例として挙げられるが、これに限定されない。続いてこの溶液を、−40℃〜70℃、好ましくは、−20℃〜20℃にした後、反応溶液を撹拌しながら、式(A2)のブロモ酢酸t-ブチルを、プロパルギルアミンに対して0.1〜1.0倍モル量、収率を向上させるためには、0.5〜0.8倍モル量添加するのが好ましい。添加する際は、反応溶液と同じ溶媒で希釈し、滴下して加えるのが好ましい。その後、反応温度を−20℃〜20℃にしたまま、1時間〜48時間、好ましくは、2時間〜24時間撹拌する。反応終了後、反応混合物中の固形物をろ別し、有機溶剤と水による抽出操作を行う。抽出操作に使用する有機溶剤としては、低沸点で水とよく分離し、有機物を溶解しやすいものであれば特に限定されないが、酢酸エチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、などが例として挙げられる。分離した有機層を純水または飽和食塩水で洗浄し、乾燥剤で乾燥させる。乾燥剤としては、硫酸ナトリウム、又は硫酸マグネシウムが好ましい。その後、乾燥剤をろ別し、ろ液の溶媒を留去すると、上記式(A5)の化合物が得られる。これを精製することなく、次の反応に用いることができるが、種々の方法で精製してもよい。精製方法としては、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、蒸留などが挙げられる。
【0111】
前記化合物(A5)を有機溶剤に溶解させ、式(A3)の二炭酸ジt−ブチルを加え、反応温度−10℃〜40℃、好ましくは、0℃〜20℃で、1時間〜48時間、好ましくは、2時間〜24時間撹拌する。反応に使用する有機溶剤としては、化合物(A5)が溶解し、かつ、二炭酸ジt−ブチルと反応しないものであれば、その種類を選ばないが、ジクロロメタン、又はテトラヒドロフランがより好ましい。また、反応をより効率的に進行させるために、トリエチルアミン、ピリジンなどの有機塩基を添加してもよい。添加量は、化合物(A5)に対して、1〜2倍モル量が好ましい。反応終了後、有機溶剤、純水または飽和食塩水により、抽出操作を行い、得られた有機層に乾燥剤を添加し、乾燥させる。抽出に使用する有機溶剤としては、水と混合しないものであれば、その種類を選ばないが、ジクロロメタンが好ましい。また、反応溶液に、水または飽和食塩水を添加し不純物を抽出してもよい。乾燥剤としては、硫酸ナトリウム、又は硫酸マグネシウムが好ましい。乾燥剤を除去し、ろ液から溶媒を留去すると、上記式(A6)の化合物を得ることができる。得られた化合物は、精製することなく、次の反応に用いることができるが、種々の方法で精製するのが好ましい。精製方法としては、シリカゲルカラムクロマトグラフィーが挙げられる。
【0114】
前記式(A4)のヨウ化アリール、パラジウム触媒、銅触媒、塩基を加え、有機溶剤に溶解させる。パラジウム触媒としては、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド、または、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムが好ましく、添加量は、ヨウ化アリールに対して、0.05モル%〜10モル%、好ましくは、0.1モル%〜5.0モル%がより好ましい。銅触媒としては、ヨウ化銅が好ましく、その添加量は、ヨウ化アリールに対して、0.05モル%〜10モル%、好ましくは、0.1モル%〜5.0モル%がより好ましい。塩基としては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンが好ましく、その添加量は、ヨウ化アリールに対して、1倍モル量〜10倍モル量が好ましく、5倍モル量〜8倍モル量がより好ましい。反応に使用する有機溶剤としては、ヨウ化アリールを溶解し、かつ、後に加える種々の試薬と反応しないものであれば、その種類を選ばないが、N,N−ジメチルホルムアミドが好ましい。
上記反応溶液を0℃〜40℃、好ましくは、0℃〜30℃で、5分〜30分撹拌した後、前記化合物(A6)を加え、1時間〜48時間、好ましくは2時間〜24時間撹拌すると上記式(A7)の化合物が得られる。式(A6)の添加量は、ヨウ化アリールに対して、1.0倍モル量〜2.0倍モル量が好ましく、1.0倍モル量〜1.5倍モル量がより好ましい。
【0115】
反応終了後、反応溶液に有機溶媒、および、酸性水溶液を加え、抽出操作を行う。抽出に用いる有機溶剤としては、化合物(A7)を溶解し、かつ水と混合しないものであれば、その種類は限定されないが、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、又は1,2−ジクロロエタンが好ましい。酸性水溶液としては、塩化アンモニウム、塩酸、酢酸、又はギ酸の水溶液が好ましい。酸性度が高すぎると化合物の分解が起こるため、塩化アンモニウム水溶液がより好ましい。酸性水溶液の濃度は、0.5〜2.0モル/Lが好ましく、1.0〜1.5モル/Lがより好ましい。抽出後の有機層を酸性水溶液で、数回洗浄した後、純水または飽和食塩水で洗浄し、乾燥剤で乾燥する。乾燥剤としては、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウムが好ましい。乾燥剤をろ別し、溶媒を留去すると、化合物(A7)の粗生成物を得ることができる。これは、精製することなく、次の反応に用いることができるが、種々の方法で精製するのが好ましい。精製方法としては、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶、有機溶剤での洗浄などが挙げられるが、操作の簡便さ、精製効率の高さから再結晶がより好ましい。再結晶に用いる有機溶剤は、化合物(A7)を再結晶できる有機溶剤であれば、その種類を選ばず、2種類以上の混合溶剤で再結晶を行っても良い。
【0118】
前記化合物(A7)のニトロ基およびエチニレン基を還元することで、上記式(A)で表される本発明のジアミン化合物を得ることができる。以下に還元方法の一例を示す。
化合物(A7)を有機溶剤に溶解させた後、反応容器内を窒素で置換し、触媒を加え、反応容器内を水素で置換する。ここで、使用する有機溶剤は、反応をより効率的に進めるために、メタノール、エタノール、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、又は1,4−ジオキサンが好ましく、メタノール、又はエタノールがより好ましい。触媒としては、パラジウムカーボン、プラチナカーボン、酸化白金などが挙げられるが、反応効率が良いため、パラジウムカーボンがより好ましい。反応混合物を0℃〜100℃、好ましくは、10℃〜60℃で、12時間〜72時間、好ましくは、24時間〜60時間撹拌する。反応終了後、触媒を除去し、有機溶剤を留去することで、ジアミン(A)の粗生成物を得ることができる。得られたジアミン化合物は、ポリイミド前駆体を得るための重合反応が速やかに進行し、高分子量のポリマーが得られるように、種々の方法で精製するのが好ましい。精製方法としては、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、活性炭処理が挙げられるが、生成物が分解する可能性が低い活性炭処理が好ましい。
【0119】
特定ジアミン化合物(B)
式(B)のジアミン化合物は、例えば、下記式(B1)のN−(ジフェニルメチレン)グリシンt−ブチルエステル、式(B2)の臭化プロパルギル、および前記式(A3)の二炭酸ジt−ブチル、および式(A4)の2−ヨード−4−ニトロアニリンを主原料として、以下に示す5ステップの経路で合成できる。
【0120】
【化48】
第1ステップ:化合物(B3)の合成
【0122】
上記式(B1)のN−(ジフェニルメチレン)グリシンt−ブチルを有機溶剤に溶解させ、塩基を添加する。ここで、用いる有機溶剤は、(B1)を溶解することができれば、その種類は限定されないが、具体的な例としては、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トルエン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられ、2種類以上混合しても良い。また、塩基には水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水素化ナトリウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンなどが例として挙げられ、また、これらの水溶液と相関移動触媒を組み合わせても良い。相関移動触媒は例えば、臭化テトラブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムなどが挙げられる。続いてこの溶液を、0℃〜70℃、好ましくは、10℃〜40℃で撹拌しながら、式(B2)の臭化プロパルギルを加え、1時間〜48時間、好ましくは、4時間〜24時間撹拌すると上記式(B3)の化合物が得られる。反応終了後、反応混合物中の固形物をろ別し、有機溶剤と水による抽出操作を行う。抽出に使用する有機溶剤としては、低沸点で水とよく分離し、化合物(B3)を溶解しやすいものであれば特に限定されないが、酢酸エチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテルなどが例として挙げられる。分離した有機層を純水または飽和食塩水で洗浄し、乾燥剤で乾燥させる。乾燥剤としては、硫酸ナトリウム、又は硫酸マグネシウムが好ましい。その後、乾燥剤を除去し、溶媒を留去すると、化合物(B3)の粗生成物が得られる。これを精製することなく、次の反応に用いることができるが、種々の方法で精製してもよい。精製方法としては、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどが挙げられる。
【0125】
前記化合物(B3)を有機溶剤に溶解させ、クエン酸の水溶液を加え、反応温度0℃〜100℃、好ましくは、10℃〜40℃で、1時間〜12時間、好ましくは、1時間〜6時間撹拌することで上記式(B4)の化合物が得られる。反応に使用する有機溶剤としては、(B3)が溶解すれば、その種類を選ばないが、テトラヒドロフランが好ましい。反応終了後、有機溶剤を加え、酸性水溶液により化合物(B4)を水層に抽出し、その後、水層に塩基を加え、塩基性にした後、有機溶剤により抽出する。有機溶剤には、(B4)を溶解し、水と分離するものであれば、種類は限定されないが、酢酸エチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテルなどが挙げられる。酸性水溶液は、化合物(B4)を溶解し、かつ、(B4)を分解しないものであれば、種類は限定されないが、塩酸水溶液が好ましい。塩基は、化合物(B4)を酸性水溶液から分離させ、かつ、(B4)を分解しないものであれば、種類は限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムなどが例として挙げられる。抽出後の有機層は、純水または飽和食塩水で洗浄し、得られた有機層に乾燥剤を添加し、乾燥させる。乾燥剤としては、硫酸ナトリウム、または硫酸マグネシウムが好ましい。乾燥剤をろ別し、ろ液から溶媒を留去すると、化合物(B4)を得ることができる。得られた化合物は、精製することなく、次の反応に用いることができるが、種々の方法で精製するのが好ましい。精製方法としては、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、蒸留などが挙げられる。
【0128】
前記化合物(B4)を有機溶剤に溶解させ、式(A3)の二炭酸ジt−ブチルを加え、反応温度−10℃〜40℃、好ましくは、0℃〜30℃で、1時間〜48時間、好ましくは、2時間〜24時間撹拌する。反応に使用する有機溶剤としては、式(B4)の化合物が溶解し、かつ、二炭酸ジt−ブチルと反応しないものであれば、その種類を選ばないが、ジクロロメタン、テトラヒドロフランがより好ましい。また、反応をより効率的に進行させるために、トリエチルアミン、ピリジンなどの有機塩基を添加してもよい。添加量は、化合物(B4)に対して、1〜2倍モル量が好ましい。反応終了後、有機溶剤、純水または飽和食塩水を加え、抽出操作を行い、得られた有機層に乾燥剤を添加し、乾燥させる。抽出に使用する有機溶剤としては、(B4)を溶解し、水と混合しないものであれば、その種類を選ばないが、ジクロロメタンが好ましい。また、反応溶液に、水または飽和食塩水を添加し不純物を抽出してもよい。乾燥剤としては、硫酸ナトリウム、または硫酸マグネシウムが好ましい。乾燥剤をろ別し、ろ液から溶媒を留去すると、上記式(B5)の化合物を得ることができる。得られた化合物は、精製することなく、次の反応に用いることができるが、種々の方法で精製するのが好ましい。精製方法としては、シリカゲルカラムクロマトグラフィーが挙げられる。
【0131】
前述した化合物(A7)の合成法に従い、前記化合物(B5)と化合物(A4)とを反応させることで上記式(B6)の化合物を得ることができる。
【0134】
前述したジアミン(A)の合成法に従い、前記化合物(B6)のニトロ基およびエチニレン基を還元することで、上記式(B)で表される本発明のジアミン化合物の粗生成物を得ることができる。得られたジアミン化合物は、ポリイミド前駆体を得るための重合反応が速やかに進行し、高分子量のポリマーが得られるように、種々の方法で精製するのが好ましい。精製方法としては、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、活性炭処理が挙げられるが、生成物が分解する可能性が低い活性炭処理が好ましい。
【0135】
特定ジアミン化合物(C)
式(C)のジアミン化合物は、例えば、下記式(C1)の2−アミノ−4−ニトロアニリン、および式(C2)のアミノ酸誘導体を主原料として、以下に示す2ステップの経路で合成できる。
【0139】
上記式(C3)の化合物は、前記式(C1)の2−アミノ−4−ニトロアニリンの2位のアミノ基と、式(C2)のアミノ酸誘導体のカルボキシル基との縮合反応により合成することができる。
2−アミノ−4−ニトロアニリンの1位のアミノ基は、4位に存在するニトロ基の影響で求核性が低下する。そのため、2位のアミノ基とアミノ酸誘導体のカルボキシル基が優先的に反応するため、化合物(C3)を合成することができる。アミノ酸誘導体を過剰に添加すると、4位のアミノ基とアミド結合を形成するため、アミノ酸誘導体の添加量は、2−アミノ−4−ニトロアニリンに対して、0.9〜1.2倍モル量であることが好ましい。
上記アミノ基とカルボキシル基の縮合反応は公知の方法で行うことができるが、混合酸無水物を用いる方法、縮合剤を用いる方法が好ましい。
混合酸無水物を用いる方法は、例えば、カルボン酸を有機溶媒中で、塩基の存在下、酸ハライド、またはクロロギ酸エステルと、−70℃〜40℃、好ましくは、−50℃〜5℃で反応させ、得られた混合酸無水物を有機溶媒中で、アミン化合物と−70℃〜40℃、好ましくは、−50℃〜5℃で反応させることにより行なわれる。
【0140】
反応に使用する有機溶剤としては、(C2)を溶解し、かつ、反応に使用する各試薬と反応しないものであれば、その種類は限定されないが、脱水されたクロロホルム、ジクロロメタン、又はテトラヒドロフランが好ましく、アミノ酸誘導体に対する溶解性からテトラヒドロフランがより好ましい。
反応に使用する塩基としては、3級アミンが好ましく、ピリジン、トリエチルアミン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン、又はN−メチルモルホルリンがより好ましい。塩基の添加量は、多すぎると除去が難しいため、(C1)に対して2〜4倍モル量であることが好ましい。
前記酸ハライドおよびクロロギ酸エステルとしては、ピバロイルクロライド、トシルクロライド、メシルクロライド、クロロギ酸エチル、又はクロロギ酸イソブチルが好ましい。酸ハライドおよびクロロギ酸エステルの添加量は、(C1)に対して1.1〜2.0倍モル量であることが好ましい。
【0141】
縮合剤を用いる方法は、(C1)と(C2)とを縮合剤、塩基、有機溶剤の存在下で0℃〜150℃、好ましくは0℃〜100℃において、30分〜24時間、好ましくは3〜15時間反応させることで行う。
前記縮合剤には、トリフェニルホスファイト、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−カルボニルジイミダゾール、ジメトキシ−1,3,5−トリアジニルメチルモルホリニウム、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボラート、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、(2,3−ジヒドロ−2−チオキソ−3−ベンゾオキサゾリル)ホスホン酸ジフェニルなどが使用できる。縮合剤の添加量は、(C2)に対して2〜3倍モル量であることが好ましい。
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミンなどの3級アミンが使用できる。塩基の添加量は、多すぎると除去が難しく、少なすぎると反応効率が低下するため、(C1)に対して2〜4倍モル量であることが好ましい。
【0142】
また、上記縮合剤を用いる方法において、ルイス酸を添加剤として加えることで反応が効率的に進行する。ルイス酸としては、塩化リチウム、臭化リチウムなどのハロゲン化リチウムが好ましい。ルイス酸の添加量は(C1)に対して0.1〜1.0倍モル量であることが好ましい。
上記2種類の方法で、得られた反応溶液は、析出物を除去した後、酸性または塩基性水溶液と有機溶剤を加えて、酸ハライド、クロロギ酸エステル、縮合剤、塩基、およびこれらの化合物に由来する共生成物を抽出によって除くことが好ましい。酸性水溶液としては、塩酸、酢酸、ギ酸、又は塩化アンモニウムの水溶液が好ましい。塩基水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、又は炭酸カリウムの水溶液が好ましい。抽出に使用する有機溶剤は、反応溶液に加えても、内容物の析出が起こらず、水と混合しないものであれば、その種類を選ばないが、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、又は1,2−ジクロロエタンがより好ましい。
【0143】
得られた有機層を前記酸性水溶液または前記塩基性水溶液で、数回洗浄した後、乾燥剤で乾燥する。乾燥剤としては、硫酸ナトリウム、又は硫酸マグネシウムが好ましい。乾燥剤をろ別し、溶媒を留去すると、化合物(C3)を得ることができる。得られた(C3)は、精製することなく、次の反応に用いることができるが、種々の方法で精製するのが好ましい。精製方法としては、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶、有機溶剤での洗浄などが挙げられるが、操作の簡便さ、精製効率の高さから再結晶がより好ましい。再結晶に用いる有機溶剤は、(C3)を再結晶できる有機溶剤であれば、その種類を選ばず、2種類以上の混合溶剤で再結晶を行っても良い。
【0146】
前述したジアミン(A)の合成法に従い、前記化合物(C3)のニトロ基を還元することで、上記式(C)で表される本発明のジアミン化合物の粗生成物を得ることができる。得られたジアミン化合物は、ポリイミド前駆体を得るための重合反応が速やかに進行し、高分子量のポリマーが得られるように、種々の方法で精製するのが好ましい。精製方法としては、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶、有機溶剤での洗浄などが挙げられるが、操作の簡便さ、精製効率の高さから再結晶がより好ましい。
【0147】
特定ジアミン化合物(D)
式(D)のジアミン化合物は、例えば、前記式(A2)のブロモ酢酸t−ブチルと下記式(D1)のp−フェニレンジアミンを主原料として、以下に示す方法で合成できる。
【0150】
上記式(D1)のp-フェニレンジアミンを有機溶剤に溶解させ、塩基を添加する。ここで、用いる有機溶剤は、一般的に求核置換反応に良く用いられる極性溶媒が好ましく、具体的な例としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、テトラヒドロフラン、などが挙げられるが、これに限定されない。また、塩基には水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水素化ナトリウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンなどが例として挙げられるが、これに限定されない。続いてこの溶液を、−40℃〜40℃、好ましくは、−30℃〜30℃にした後、反応溶液を撹拌しながら、ブロモ酢酸t−ブチルを、p−フェニレンジアミンに対して1.0〜3.0倍モル量、好ましくは1.5〜2.5倍モル量添加する。添加する際は、反応溶液と同じ溶媒で希釈し、滴下して加えるのが好ましい。その後、反応溶液を−30℃〜30℃にしたまま、1時間〜48時間、好ましくは、2時間〜24時間撹拌することで、ジアミン(D)を得ることができる。反応終了後、反応混合物中の固形物をろ別した後、ろ液を水に注ぐことでジアミン(D)の粗生成物を析出させることができる。得られたジアミン化合物は、ポリイミド前駆体を得るための重合反応が速やかに進行し、高分子量のポリマーが得られるように、種々の方法で精製するのが好ましい。精製方法としては、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶、有機溶剤での洗浄などが挙げられるが、操作の簡便さ、精製効率の高さから再結晶がより好ましい。
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0151】
以下に本実施例で行った、
1H NMR、分子量の各測定方法を示す。
[
1H NMR]
装置:フーリエ変換型超伝導核磁気共鳴装置(FT−NMR)INOVA−400(Varian社製)400MHz
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d
6)
標準物質:テトラメチルシラン(TMS)
積算回数:8
【0152】
[分子量]
ポリマーの分子量はGPC(常温ゲル浸透クロマトグラフィー)装置によって測定し、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド換算値として数平均分子量(以下、Mnとも言う。)と重量平均分子量(以下、Mwとも言う。)を算出した。
GPC装置:昭和電工社製(GPC−101)
カラム:昭和電工社製(KD803、KD805の直列)
カラム温度:50℃
溶離液:N,N−ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・H
2O)が30mmol/L、リン酸・無水結晶(o−リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフランが10mL/L)
流速:1.0mL/分
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(重量平均分子量(Mw) 約900,000、150,000、100,000、30,000)、及び、ポリマーラボラトリー社製 ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp) 約12,000、4,000、1,000)。測定は、ピークが重なるのを避けるため、900,000、100,000、12,000、1,000の4種類を混合したサンプル、および150,000、30,000、4,000の3種類を混合したサンプルの2サンプルを別々に測定。
【0153】
<イミド化率の測定>
ポリイミド粉末20mgを重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d
6、0.05%TMS(テトラメチルシラン)混合品)1gに溶解し、
1H NMRを測定した。イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に由来するピークを基準とし、9.5−10.0ppm付近に現れるアミド酸のNH基に由来するピークの積算値を用い、以下の式によって求めた。
イミド化率(%)=(1−α・x/y)×100
上記式において、xはアミド酸のNH基に由来するピークの積算値、yは基準とするピークの積算値、αはポリアミド酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミド酸のNH基に由来するピークの積算値に対する基準とするピークの積算値の割合である。
【0154】
<体積抵抗率の測定>
素子の作製:液晶配向材をITO電極付きガラス基板にスピンコートし、80℃のホットプレート上で5分間乾燥させた後、230℃の熱風循環式オーブンで60分焼成を行い、膜厚200nmの液晶配向膜を作製した。試料によっては、この液晶配向膜付き基板に254nmの偏光を1J/cm
2照射した。このように作製した液晶配向膜付き基板に、アルミニウム電極を直径1mm、厚さ100nmになるように蒸着によって形成し、体積抵抗率測定用素子を作製した。
体積抵抗率の測定:エレクトロメーター(ケースレー社製、型番617)に接続したシールドケース内で上記素子のITO電極とアルミニウム電極間に10Vの電圧を120秒間印加し、110秒後から120秒後に流れた電流の平均値から体積抵抗率を算出した。
以下において、化合物の略称をもちいることがある。
CBDE−Cl: ジメチル−1,3−ビス(クロロカルボニル)シクロブタン−2,4−カルボキシレート
1,3-DMCBDE-Cl: ジメチル 1,3−ビス(クロロカルボニル)−1,3−ジメチルシクロブタン−2,4−カルボキシレート
TDA: 3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物
pPDA:p−フェニレンジアミン
TBDA: 1−t−ブトキシカルボニル−3,5−ジアミノベンゼン
EtDA: 1−エトキシカルボニル−3,5−ジアミノベンゼン
【0155】
<実施例1>ジアミン化合物(A)の合成
【0156】
【化59】
【0157】
以下に示す4ステップの経路でジアミン化合物(A)を合成した。
第1ステップ:化合物(A5)の合成
500 mL のナスフラスコにプロパルギルアミン (8.81 g, 160 mmol) 、N,N-ジメチルホルムアミド (112 mL) 、炭酸カリウム (18.5 g, 134 mmol) の順に入れ、0 ℃ にし、ブロモ酢酸t-ブチル (21.9 g, 112 mmol) をN,N-ジメチルホルムアミド (80 mL) に溶かした溶液を約1時間で、撹拌しながら滴下した。滴下終了後、反応溶液を室温にし、20時間撹拌した。その後、固形物をろ過により除去し、ろ液に酢酸エチルを 1 L 加え、300 mL の水で 4 回、300 mL の飽和食塩水で 1 回洗浄した。その後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。最後に、残留した油状物を 0.6 Torr, 70 ℃で減圧蒸留することにより、無色液体のN-プロパルギルアミノ酢酸t-ブチル(化合物(A5))を得た。収量は 12.0 g、収率は63% であった。
【0158】
第2ステップ:化合物(A6)の合成
1 L のナスフラスコに上記N-プロパルギルアミノ酢酸t-ブチル (12.0 g, 70.9 mmol)、ジクロロメタン (600 mL) を入れて溶液とし、攪拌氷冷しながら、二炭酸ジt-ブチル (15.5 g, 70.9 mmol) をジクロロメタン (100 mL) に溶かした溶液を1時間で滴下した。滴下終了後、反応溶液を室温にし、20時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を300 mL の飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、溶媒を減圧留去することで、薄黄色液体のN-プロパルギル-N-t-ブトキシカルボニルアミノ酢酸t-ブチル(化合物(A6))を得た。収量は 18.0 g、収率は 94% であった。
【0159】
第3ステップ:化合物(A7)の合成
300 mL の四つ口フラスコに2-ヨード-4-ニトロアニリン (22.5 g, 85.4 mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド (1.20 g, 1.71 mmol)、ヨウ化銅 (0.651 g, 3.42 mmol)を入れ、窒素置換した後、ジエチルアミン (43.7 g, 598 mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド (128 mL) を加え、氷冷攪拌しながら、前記N-プロパルギルアミノ-N-t-ブトキシカルボニル酢酸t-ブチル (27.6 g, 102 mmol) を加え、室温で20時間攪拌した。反応終了後、1 L の酢酸エチルを加え、1 mol/L の塩化アンモニウム水溶液 150 mL で3回、150 mL の飽和食塩水で1回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、溶媒を減圧留去することで析出した固体を200 mL の酢酸エチルに溶かし、1 L のヘキサンを加えることで再結晶を行った。この固体をろ取し、減圧乾燥することで、黄色固体の2-{3-(N-t-ブトキシカルボニル-N-t-ブトキシカルボニルメチルアミノ)-1-プロピニル)}-4-ニトロアニリン(化合物(A7))を得た。収量は23.0 g, 収率は66%であった。
【0160】
第4ステップ:化合物(A7)の還元
500 mL の四つ口フラスコに前記2-{3-(N-t-ブトキシカルボニル-N-t-ブトキシカルボニルメチルアミノ)-1-プロピニル)}-4-ニトロアニリン (22.0 g, 54.2 mmol)、および、エタノール (200 g) を加え、系内を窒素で置換した後、パラジウム炭素 (2.20 g) を加え、系内を水素で置換し、50 ℃で48時間攪拌した。反応終了後、セライトろ過によりパラジウム炭素を除き、ろ液に活性炭を加え、50 ℃で30 分攪拌した。その後、活性炭をろ過し、有機溶媒を減圧留去し、残留した油状物を減圧乾燥することで、ジアミン化合物(A)を得た。収量は19.8 g、収率は 96% であった。
ジアミン化合物(A)は
1H NMRにより確認した。
1H NMR (DMSO-d
6): δ 6.54-6.42 (m, 3H, Ar), 3.49, 3.47 (each s, 2H, NCH
2CO
2t-Bu), 3.38-3.30 (m, 2H, CH
2CH
2N), 2.51-2.44 (m, 2H, ArCH
2), 1.84-1.76 (m, 2H, CH
2CH
2CH
2), 1.48-1.44 (m, 18H, NCO
2t-Bu and CH
2CO
2t-Bu).
【0161】
<実施例2>ジアミン化合物(B)の合成
【0162】
【化60】
【0163】
以下に示す5ステップの経路でジアミン化合物(B)を合成した。
第1ステップ:化合物(B3)の合成
2 L のナスフラスコに(N-ジフェニルメチン)グリシンt-ブチル (23.6 g, 80.0 mmol)、ジクロロメタン (267 mL)、トルエン (533 mL)、臭化テトラブチルアンモニウム (1.56 g, 4.0 mmol)、臭化プロパルギル (11.4 g, 96.0 mmol)、50%水酸化カリウム水溶液 (157 g) の順にを入れ、室温で20時間撹拌した。その後、有機層を分離し、水層を200 mL の酢酸エチルで2回抽出し、これらを有機層と合わせ、300 mL の飽和食塩水で 1 回洗浄した。その後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去し、残留した油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで生成することにより、無色液体の (N-ジフェニルメチン)プロパルギルグリシンt-ブチル(化合物(B3))を得た。収量は 26.7 g、収率は99% であった。
【0164】
第2ステップ:化合物(B4)の合成
500 mL のナスフラスコに前記(N-ジフェニルメチン)プロパルギルグリシンt-ブチル (26.7 g, 80.0 mmol), テトラヒドロフラン (320 mL)、15%質量クエン酸水溶液 (152 g)を入れ、室温で2時間攪拌した。反応終了後、1 mol/L の塩酸を90 mL 加え、水層を分離し、160 mL の酢酸エチルで3回洗浄した後、炭酸カリウムをpHが8になるまで加えた。その後、この水層を160 mL の酢酸エチルで3回抽出し、有機層を合わせて硫酸マグネシウムで乾燥した。最後に、溶媒を減圧留去し、残留した油状物を減圧乾燥することで、黄色液体のプロパルギルグリシンt-ブチル(化合物(B4))を得た。収量は 8.51 g、収率は63%であった。
【0165】
第3ステップ:化合物(B5)の合成
1 L のナスフラスコに前記プロパルギルグリシンt-ブチル (6.43 g, 38.0 mmol)、ジクロロメタン (127 mL)、トリエチルアミン (4.23 g, 41.2 mmol)、二炭酸ジt-ブチル (9.12 g, 41.2 mmol) の順に加え、室温で20時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を100 mL の飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、溶媒を減圧留去することで、オレンジ色液体のN-t-ブトキシカルボニルプロパルギルグリシンt-ブチル(化合物(B5))を得た。収量は 9.69 g、収率は 95% であった。
【0166】
第4ステップ:化合物(B6)の合成
200 mL の四つ口フラスコに2-ヨード-4-ニトロアニリン (8.72 g, 33.0 mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド (0.463 g, 0.660 mmol)、ヨウ化銅 (0.251 g, 1.32 mmol)を入れ、窒素置換した後、ジエチルアミン (16.9 g, 231 mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド (50 mL) を加え、氷冷攪拌しながら、前記N-t-ブトキシカルプロパルギルグリシンt-ブチル (9.69 g, 36.0 mmol) をN,N-ジメチルホルムアミド (16 mL)に溶かして加え、室温で16時間攪拌した。反応終了後、500 mL の酢酸エチルを加え、1 mol/L の塩化アンモニウム水溶液 100 mL で3回、100 mL の飽和食塩水で1回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、溶媒を減圧留去し残留した油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、黄色固体の2-{4-(N-t-ブトキシカルボニルアミノ)-4-(t-ブトキシカルボニル)-1-ブチニル)}-4-ニトロアニリン(化合物(B6))を得た。収量は5.54 g, 収率は41%であった。
【0167】
第5ステップ:化合物(B6)の還元
500 mL の四つ口フラスコに前記2-{4-(N-t-ブトキシカルボニルアミノ)-4-(t-ブトキシカルボニル)-1-ブチニル)}-4-ニトロアニリン (5.54 g, 13.7 mmol)、および、エタノール (49.9 g) を加え、系内を窒素で置換した後、パラジウム炭素 (0.540 g) を加え、系内を水素で置換し、50 ℃で48時間攪拌した。反応終了後、セライトろ過によりパラジウム炭素を除き、ろ液に活性炭を加え、50 ℃で30 分攪拌した。その後、活性炭をろ過し、有機溶媒を減圧留去し、生成した油性物を減圧乾燥することで、ジアミン化合物(B)を得た。収量は3.90 g、収率は 85% であった。
ジアミン化合物(B)の構造は
1H NMRにより確認した。
1H NMR (DMSO-d
6): δ 7.15 (d, J = 7.6 Hz, 1H, Ar), 6.37 (d, J = 8.0 Hz, 1H, Ar), 6.24-6.20 (dd, J = 8.0, 7.6 Hz, 1H, Ar),4.09 (br s, 4H, NH
2), 3.79 (m, 1H, NCH), 2.27 (m, 2H, ArCH
2), 1.72-145 (m, 4H, -CH
2CH
2-), 1.38 (s, 18H, t-Bu).
【0168】
<実施例3>ジアミン化合物(C)の合成
以下に示す2ステップの経路でジアミン化合物(C)を合成した。
【0169】
【化61】
【0170】
第1ステップ:化合物(C3)の合成
窒素置換した500 mL の四つ口フラスコにアミノ酸誘導体(5.00 g, 17.3 mmol)を入れ、THF(テトラヒドロフラン) (150 mL) に溶解させた。そこへ、NMM(N-メチルモルホルリン)(3.55 g, 35.1 mmol)を加え、-45℃に冷却した。この溶液に、クロロギ酸イソブチル(2.97 g, 21.8 mmol)を加え、−45℃にて10分間撹拌した。10分後、2-アミノ-4-ニトロアニリン ( 2.59 g, 16.9 mmol) をTHF (100mL) に溶かした溶液を滴下した。滴下終了後、−45℃にて1時間攪拌し、その後、20℃で18時間撹拌した。反応終了後、析出した固体をろ別し、得られたろ液を減圧濃縮した。残渣を 500ml の酢酸エチル、および、500mLのTHFに溶解させ、200 mLのリン酸二水素カリウム水溶液 (1 mol/L) で2回、200mL の飽和食塩水で1回、200 mL の飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、最後に200 mL の飽和食塩水で1回洗浄した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去し、残留した薄黄色固体を酢酸エチルで洗浄することにより、2−(3−t−ブトキシカルボニル−2−t−ブトキシカルボニルアミノプロピオニルアミノ)−4−ニトロアニリン(化合物(C3))を得た。収量は4.88 g、収率は68.0%であった。
【0171】
第2ステップ:化合物(C3)の還元
300 mL のナスフラスコに、化合物(C3)(4.85 g, 11.4 mmol) を入れ、エタノール (150 mL) を加え、系内を窒素置換した後、パラジウム炭素 (0.49 g) を加え、系内を水素で置換し、20 ℃で48 時間撹拌した。反応終了後、セライトろ過により析出物を除き、溶媒を減圧留去することで得られた油状残渣をトルエンで再結晶することにより薄紫色固体のジアミン化合物(C)を得た。収量は3.03 g、収率は67%であった。
ジアミン化合物(C)の構造は
1H NMRにより確認した。
1H NMR (DMSO-d
6): δ 8.99 (s, 1H, NHCO
2t-Bu), 7.20 (d, J = 8.0 Hz, 1H, ArNH), 6.59 (d, J = 2.8 Hz, Ar), 6.49 (d, J = 8.0 Hz, 2H, Ar), 6.24 (dd, J = 8.0, 2.8 Hz, 1H, Ar), 4.23 (dd, J = 8.8, 4.7 Hz, 1H, CH), 4.35, 4.00 (each s, 4H, NH
2), 2.72 (dd, J = 16.0, 4.7 Hz, 1H, CH
2), 2.49 (dd, J = 16.0, 8.8 Hz, 1H, CH
2), 1.40 (s, 18H, t-Bu).
【0172】
<実施例4>ジアミン化合物(D)の合成
【0173】
【化62】
【0174】
500 mL ナスフラスコにp-フェニレンジアミン (16.2 g, 150 mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド (200 mL)、炭酸カリウム (49.8 g, 360 mmol)を入れ、−20 ℃に冷却し、ブロモ酢酸t-ブチル (58.5 g, 300 mmol) をN,N-ジメチルホルムアミド (100 mL)に溶かした溶液を3時間で滴下した。その後、室温で20時間攪拌した。この反応混合物中の固体をろ過によって除いた後、ろ液を6 L の水に注ぎ、析出したジアミン化合物(D)の粗生成物を回収した。得られた粗生成物を 100 mL の DMFに溶解させ、再度 2 L の水に注いで固体を析出させた。この固体をメタノールで洗浄し、減圧乾燥することで薄桃色固体のジアミン化合物(D)を得た。収量は 25.1 g、収率は 50% であった。
ジアミン化合物(D)の構造は
1H NMRにより確認した。
1H NMR (DMSO-d
6): δ 6.39 (s, 4H, Ar), 5.09 (t, J = 6.6 Hz, 2H, NH), 3.64 (d, J = 6.6 Hz, 4H, CH
2), 1.39 (s, 18H, t-Bu).
【0175】
<実施例5>ポリイミド前駆体の合成
300mL四つ口フラスコに、p−フェニレンジアミン(0.700 g, 6.47 mmol)、ジアミン化合物(D)(0.191 g, 0.719 mmol)を入れ、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)(44.6 mL)、ピリジン(1.39 mL, 17.3 mmol)を加えて溶解させた。この溶液を水冷撹拌しながらCBDE−Cl(ジメチル−1,3−ビス(クロロカルボニル)シクロブタン−2,4−カルボキシレート)(2.14 g, 7.19 mmol)を添加し、更に固形分濃度が5質量%になるようにNMPを加え、水冷しながら4時間撹拌した。この溶液を250 g の水に注いで、ポリマーを析出させ、吸引ろ過によりポリマーをろ取し、再度水250 gで洗浄した後、メタノール(63 g ×3回)で洗浄し、40℃で減圧乾燥することで、ポリアミック酸エステル粉末[A]を得た。また、このポリアミック酸エステルの分子量はMn=12,652、Mw=27,434であった。
【0176】
<実施例6>ポリイミド前駆体の合成
50mL四つ口フラスコに、ジアミン化合物(A)(0.530g、1.40mmol)、p−フェニレンジアミン(0.604g、5.59mmol)を入れ、NMP(9.8mL)、γ−BL(γ−ブチロラクトン)(13.1mL)、ピリジン(1.31mL、16.3mmol)を加えて溶解させた。この溶液を水冷撹拌しながら、CBDE−Cl(2.01g、6.77mmol)を添加し、更に固形分濃度が8質量%になるようにNMPを加え、水冷しながら4時間撹拌した。この溶液を5質量%になるようにNMP:γ−BLが重量比1:1の混合溶媒を加え、265gの水に注いで、ポリマーを析出させ、吸引ろ過によりポリマーをろ取し、再度水265gで洗浄した後、エタノール(265g×1回、66g×3回)で洗浄し、40℃で3時間、60℃で5時間減圧乾燥することで、ポリアミック酸エステル粉末[B]を得た。また、ポリアミック酸エステルの分子量はMn=25,934、Mw=78,562であった。
【0177】
<比較例1>ポリイミド前駆体の合成
50mL二口フラスコに、p−フェニレンジアミン(0.700g、6.47mmol)を入れ、NMP(21.7mL)、ピリジン(1.56mL、19.4mmol)を加えて溶解させた。この溶液を水冷撹拌しながらCBDE−Cl(1.92g、6.47mmol)を添加し、さらに固形分濃度が8質量%になるようにNMPを加え、水冷しながら1時間撹拌した。この溶液を5質量%になるようにNMP加えた後、215gの水に注いで、ポリマーを析出させ、吸引ろ過によりポリマーをろ取し、再度水215gで洗浄した後、メタノール(54g×3回)で洗浄し、40℃で減圧乾燥することで、ポリアミック酸エステル粉末[C]を得た。また、ポリアミック酸エステルの分子量はMn=24,559、Mw=73,634であった。
【0178】
<実施例7>ポリイミド前駆体の合成
3L三口フラスコに、ジアミン化合物(A)(43.6g、115mmol)、p−フェニレンジアミン(44.0g、407mmol)を入れ、NMP(820mL)、γ−BL(623mL)、ピリジン(93.4mL)を加えて溶解させた。この溶液を水冷撹拌しながら、1,3-DMCBDE-Cl(ジメチル 1,3−ビス(クロロカルボニル)−1,3−ジメチルシクロブタン−2,4−カルボキシレート)(158g、486mmol)を添加し、更に固形分が10質量%になるようにNMPを加え、水冷しながら4時間撹拌した。この溶液を5質量%になるようにNMP:γ−BLが重量比1:1の混合溶媒を加え、2.10kgの水に注いで、ポリマーを析出させ、吸引ろ過によりポリマーをろ取し、再度水2.10kgで洗浄した後、エタノール(2.10kg×1回、525g×3回)で洗浄し、40℃で3時間、60℃で5時間減圧乾燥することで、ポリアミック酸エステル粉末[D]を得た。また、ポリアミック酸エステルの分子量はMn=13,350、Mw=28,323であった。
【0179】
<実施例8>ポリイミド前駆体の合成
500mL三口フラスコに、ジアミン化合物(A)(3.35g、8.82mmol)、p−フェニレンジアミン(0.953g、8.81mmol)を入れ、NMP(156mL)、ピリジン(3.40mL)を加えて溶解させた。この溶液を水冷撹拌しながら、1,3-DMCBDE-Cl(5.73g、17.6mmol)を添加し、更に固形分が5質量%になるようにNMPを加え、水冷しながら4時間撹拌した。この溶液を875gの水に注いで、ポリマーを析出させ、吸引ろ過によりポリマーをろ取し、再度水875gで洗浄した後、エタノール(875g×1回、219g×3回)で洗浄し、40℃で3時間、60℃で5時間減圧乾燥することで、ポリアミック酸エステル粉末[E]を得た。また、ポリアミック酸エステルの分子量はMn=30,549、Mw=57,127であった。
【0180】
<実施例9>ポリイミド前駆体の合成
50mL三口フラスコに、ジアミン化合物(B)(1.14g、3.00mmol)、p−フェニレンジアミン(0.235g、3.00mmol)を入れ、NMP(6.8mL)、ピリジン(1.2mL)を加えて溶解させた。この溶液を水冷撹拌しながら、1,3-DMCBDE-Cl(1.95g、6.01mmol)を添加し、更に固形分が10質量%になるようにNMPを加え、水冷しながら4時間撹拌した。この溶液を298gの水に注いで、ポリマーを析出させ、吸引ろ過によりポリマーをろ取し、再度水298gで洗浄した後、エタノール(298g×1回、75g×3回)で洗浄し、40℃で3時間、60℃で5時間減圧乾燥することで、ポリアミック酸エステル粉末[F]を得た。また、ポリアミック酸エステルの分子量はMn=26,518、Mw=47,398であった。
【0181】
<実施例10>ポリイミド前駆体の合成
300mL三口フラスコに、ジアミン化合物(C)(0.502g、1.27mmol)、p−フェニレンジアミン(0.550g、5.09mmol)を入れ、NMP(47.4mL)、ピリジン(1.23mL)を加えて溶解させた。この溶液を水冷撹拌しながら、1,3-DMCBDE-Cl(2.07g、6.36mmol)を添加し、更に固形分が5質量%になるようにNMPを加え、水冷しながら4時間撹拌した。この溶液を266gの水に注いで、ポリマーを析出させ、吸引ろ過によりポリマーをろ取し、再度水266gで洗浄した後、エタノール(266g×1回、66g×3回)で洗浄し、40℃で3時間、60℃で5時間減圧乾燥することで、ポリアミック酸エステル粉末[G]を得た。また、ポリアミック酸エステルの分子量はMn=48,729、Mw=94,484であった。
【0182】
<実施例11>ポリイミド前駆体の合成
50mL三口フラスコに、ジアミン化合物(D)(0.277g、0.822mmol)、p−フェニレンジアミン(0.800g、7.40mmol)を入れ、NMP(56.8mL)、ピリジン(1.59mL)を加えて溶解させた。この溶液を水冷撹拌しながら、1,3-DMCBDE-Cl(2.67g、8.22mmol)を添加し、更に固形分が5質量%になるようにNMPを加え、水冷しながら4時間撹拌した。この溶液を315gの水に注いで、ポリマーを析出させ、吸引ろ過によりポリマーをろ取し、再度水315gで洗浄した後、メタノール(79g×5回)で洗浄し、40℃で5時間減圧乾燥することで、ポリアミック酸エステル粉末[H]を得た。また、ポリアミック酸エステルの分子量はMn=12,994、Mw=23,104であった。
【0183】
<比較例2>ポリイミド前駆体の合成
1L三口フラスコに、p−フェニレンジアミン(6.99g、64.6mmol)を入れ、NMP(386mL)、ピリジン(11.9mL)を加えて溶解させた。この溶液を水冷撹拌しながら、1,3-DMCBDE-Cl(20.0g、61.4mmol)を添加し、更に固形分が5質量%になるようにNMPを加え、水冷しながら4時間撹拌した。この溶液を2.24kgの水に注いで、ポリマーを析出させ、吸引ろ過によりポリマーをろ取し、再度水2.24kgで洗浄した後、エタノール(2.24kg×1回、562g×3回)で洗浄し、40℃で3時間、60℃で5時間減圧乾燥することで、ポリアミック酸エステル粉末[I]を得た。また、ポリアミック酸エステルの分子量はMn=16,813、Mw=38,585であった。
【0184】
<実施例12>ポリイミド前駆体の合成
50mL四つ口フラスコに、TBDA(1−t−ブトキシカルボニル−3,5−ジアミノベンゼン、1.46g、7.01mmol)を入れ、NMP(14.3g)を加えて溶解させた。この溶液にTDA(3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物)(2.10g、6.99mmol)を添加し、40℃のオイルバスで90時間撹拌することで、ポリアミック酸溶液[J]を得た。また、ポリアミック酸の分子量はMn=11,074、Mw=26,449であった。
【0185】
<実施例13>ポリイミドの合成
50mL三角フラスコに、実施例4のポリアミック酸溶液(4.96g)に固形分濃度6質量%になるようにNMPを加え、無水酢酸(2.39g)、ピリジン(1.11g)を加え、室温で30分間撹拌した後、40℃で3時間撹拌した。この溶液を81.9gのメタノールに注いで、ポリマーを析出させ、吸引ろ過によりポリマーをろ取し、再度メタノール(23.4g×2回)で洗浄し、100℃で減圧乾燥することで、ポリイミド粉末[K]を得た。また、ポリイミドの分子量はMn=10,317、Mw=23,312であった。また、1H NMRから算出したイミド化率は89%であった。
【0186】
<比較例3>ポリイミド前駆体の合成
50mL四つ口フラスコに、EtDA(1−エトキシカルボニル−3,5−ジアミノベンゼン、2.69g、14.9mmol)を入れ、NMP(28.7g)を加えて溶解させた。この溶液にTDA(4.45g、14.8mmol)を添加し、40℃のオイルバスで27時間撹拌することで、ポリアミック酸溶液[L]を得た。また、ポリアミック酸の分子量はMn=7,611、Mw=14,341であった。
【0187】
<比較例4>ポリイミドの合成
50mL三角フラスコに、比較例5のポリアミック酸溶液(10.0g)に固形分濃度6質量%になるようにNMPを加え、無水酢酸(4.70g)、ピリジン(2.18g)を加え、室温で30分間撹拌した後、40℃で3時間撹拌した。この溶液を153gのメタノールに注いで、ポリマーを析出させ、吸引ろ過によりポリマーをろ取し、再度メタノール(43.7g×2回)で洗浄し、100℃で減圧乾燥することで、ポリイミド粉末[M]を得た。また、ポリイミドの分子量はMn=7,748、Mw=14,307であった。また、1H NMRから算出したイミド化率は94%であった。
【0188】
<実施例14>ポリイミド前駆体ワニスの調製
0.204gのポリアミック酸エステル粉末[B]をNMP(3.95g)に溶解し、この溶液にBS(ブチルセロソルブ)(1.0g)を加え、4質量%のポリアミック酸エステルワニス[B-1]を調製した。
<比較例5>ポリイミド前駆体ワニスの調製
0.199gのポリアミック酸エステル粉末[C]をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)(1.81g)に溶解し、この溶液にNMP(2.00g)、BS(ブチルセロソルブ)(1.01g)を加え、4質量%のポリアミック酸エステルワニス[C-1]を調製した。
【0189】
<実施例15>ポリイミド前駆体ワニスの調製
0.602gのポリアミック酸エステル粉末[D]をγ−BL(5.41g)に溶解し、この溶液にγ−BL(2.00g)、BS(1.99g)を加え、6質量%のポリアミック酸エステルワニス[D-1]を調製した。
<実施例16>ポリイミド前駆体ワニスの調製
0.302gのポリアミック酸エステル粉末[E]をγ−BL(2.72g)に溶解し、この溶液にγ−BL(1.00g)、BS(1.00g)を加え、6質量%のポリアミック酸エステルワニス[E-1]を調製した。
<実施例17>ポリイミド前駆体ワニスの調製
0.301gのポリアミック酸エステル粉末[F]をγ−BL(2.70g)に溶解し、この溶液にγ−BL(1.00g)、BS(1.00g)を加え、6質量%のポリアミック酸エステルワニス[F-1]を調製した。
【0190】
<実施例18>ポリイミド前駆体ワニスの調製
0.308gのポリアミック酸エステル粉末[G]をγ−BL(2.73g)に溶解し、この溶液にγ−BL(1.00g)、BS(1.00g)を加え、6質量%のポリアミック酸エステルワニス[G-1]を調製した。
<実施例19>ポリイミド前駆体ワニスの調製
0.603gのポリアミック酸エステル粉末[H]をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)(5.42g)に溶解し、この溶液にNMP(1.99g)、BS(2.07g)を加え、6質量%のポリアミック酸エステルワニス[H-1]を調製した。
<比較例6>ポリイミド前駆体ワニスの調製
0.631gのポリアミック酸エステル粉末[I]をDMF(5.67g)に溶解し、この溶液にγ−BL(2.13g)、BS(2.10g)を加え、6質量%のポリアミック酸エステルワニス[I-1]を調製した。
【0191】
<実施例20>ポリイミド前駆体ワニスの調製
1.82gのポリアミック酸溶液[J]に、NMP(2.18g)に溶解し、この溶液にNMP(1.99g)、BS(1.00g)を加え、8質量%のポリアミック酸ワニス[J-1]を調製した。
<実施例21>ポリイミドワニスの調製
0.601gのポリイミド粉末[K]をγ−BL(5.40g)に溶解し、この溶液にγ−BL(2.01g)、BS(2.03g)を加え、6質量%のポリイミドワニス[K-1]を調製した。
<比較例7>ポリイミド前駆体ワニスの調製
1.82gのポリアミック酸溶液[L]に、NMP(2.18g)に溶解し、この溶液にNMP(1.99g)、BS(1.00g)を加え、8質量%のポリアミック酸ワニス[L-1]を調製した。
<比較例8>ポリイミドワニスの調製
0.601gのポリイミド粉末[M]をγ−BL(5.40g)に溶解し、この溶液にγ−BL(2.01g)、BS(2.03g)を加え、6質量%のポリイミドワニス[M-1]を調製した。
【0192】
<実施例23〜31、比較例9〜13>体積抵抗率の測定
上記で調製したワニスを用いて体積抵抗率を測定した。ワニス[B-1]と[C-1]については254nmの偏光紫外光を照射後についても測定した。結果を表1に示す。
<実施例32>
実施例14で得られた液晶配向剤(B−1)を1.0μmのフィルターで濾過した後、透明電極付きガラス基板上にスピンコートし、温度80℃のホットプレート上で5分間の乾燥、温度230℃で20分間の焼成を経て膜厚100nmのポリイミド膜を得た。この塗膜面に偏光板を介して254nmの紫外線を1.0J/cm
2照射し、液晶配向膜付き基板を得た。このような液晶配向膜付き基板を2枚用意し、一方の基板の液晶配向膜面に6μmのスペーサーを散布した後、2枚の基板の配向方向が平行から85度捩れるように組み合わせ、液晶注入口を残して周囲をシールし、セルギャップが6μmの空セルを作製した。この空セルに液晶(MLC−2003、メルク株式会社製)を常温で真空注入し、注入口を封止してツイストネマチック液晶セルとした。この液晶セルの配向状態を偏光顕微鏡にて観察したところ、欠陥のない均一な配向をしていることが確認された。
【0193】
【表1】
表1中でカッコ内の数字は、2種のジアミンのモル%を意味する。