特許第5867727号(P5867727)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5867727
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】希土類元素の分離方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 59/00 20060101AFI20160210BHJP
   C22B 3/26 20060101ALI20160210BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20160210BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20160210BHJP
   B01D 11/04 20060101ALI20160210BHJP
   C22B 7/00 20060101ALN20160210BHJP
【FI】
   C22B59/00
   C22B3/26
   C22B3/44
   C22B23/00 102
   B01D11/04 B
   !C22B7/00 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-274265(P2012-274265)
(22)【出願日】2012年12月17日
(65)【公開番号】特開2014-118598(P2014-118598A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2014年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】前場 和也
(72)【発明者】
【氏名】川上 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】石田 人士
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−034300(JP,A)
【文献】 特開昭59−110740(JP,A)
【文献】 特開昭63−105938(JP,A)
【文献】 特開平07−034151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 3/26
C22B 3/44
C22B 7/00
C22B 23/00
C22B 59/00
B01D 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類元素のY、Ce、Laと、少なくともニッケルを含有する溶液、又は少なくともコバルトを含有する溶液、或いは少なくともニッケル及びコバルトを含有する溶液のいずれかの溶液から、溶媒抽出により、前記希土類元素を分離する希土類元素の分離方法において、
前記溶液に、アルカリ金属硫酸塩の添加による硫酸複塩生成反応を生じさせて、前記溶液中の希土類元素の濃度を50〜250mg/Lの範囲まで低減した希土類元素のY、Ce、Laと、少なくともニッケルを含有する溶液、又は少なくともコバルトを含有する溶液、或いは少なくともニッケル及びコバルトを含有する溶液のいずれかの溶液を形成する硫酸複塩化工程と、
前記溶液のpHを、1.5〜2.0の範囲に維持しながら、前記溶液とリン酸系抽出剤のD2EHPA(ジ‐2‐エチルヘキシルリン酸)を混合し、前記溶液に含まれた希土類元素のY、Ce、Laを前記リン酸系抽出剤に抽出して形成した希土類元素のY、Ce、Laを含む抽出有機と抽残液に分離する抽出工程と、
次に、前記抽出工程で分離した希土類元素のY、Ce、Laを含む抽出有機と硫酸溶液とを混合して、前記抽出有機に含まれる希土類元素のY、Ce、Laを前記硫酸溶液に抽出して形成する希土類元素のY、Ce、Laを含む硫酸溶液の逆抽出液と逆抽出後有機を得る逆抽出工程、
を有することを特徴とする希土類元素の分離方法。
【請求項2】
前記逆抽出工程において、前記抽出有機に含有される20%以上、100%未満の希土類元素が、前記逆抽出液に分配されるように、2mol/L以上、4mol/L以下の濃度範囲で前記硫酸溶液中の硫酸濃度を調整することを特徴とする請求項1に記載の希土類元素の分離方法。
【請求項3】
前記抽出工程における前記抽出剤(有機相:O)と溶液(水相:A)を混合する際の容量比(O/A)が1以下、
前記逆抽出工程における、抽出有機と逆抽出始液との混合溶液の液温が、40℃以上、60℃以下であり、
前記抽出工程と前記逆抽出工程が、各工程において1段のミキサセトラで行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の希土類元素の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類元素を、ニッケルを含有する溶液から除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
希土類元素は、電子配置が通常の元素とは異なるために物理的に特異な性質を有し、水素吸蔵合金、二次電池原料、光学ガラス、強力な希土類磁石、蛍光体、研磨材などの材料として利用されている。特に、近年では、希土類元素−ニッケル系合金が高い水素吸蔵能力を有すことから、ニッケル水素電池の負極材の原料としても多量に使用されるようになってきており、希土類の重要度は以前にも増して高くなってきている。
【0003】
しかしながら、ニッケル水素電池には寿命があり、また希土類元素の原料は、ほぼ全量輸入に頼っているため、高価である希土類元素を低コストで効率的な回収方法の確立が望まれていた。
この希土類元素の回収方法としては、一般的に、希土類を含有したスクラップを鉱酸等の酸に溶かした水溶液から回収する湿式法が知られており、含有される希土類元素が複数存在し相互に分離する必要がない場合には、安価に回収できる沈澱法が工業的に利用しやすいとされてきた。この沈澱法には、希土類硫酸塩とアルカリ硫酸塩とで硫酸複塩沈澱を生成し回収する比較的安価な硫酸複塩沈澱法がある。
【0004】
この硫酸複塩沈澱法では、重希土類元素が溶液中に残留してしまう場合があるが、その際には、希土類硫酸複塩の沈澱を種晶として添加することで効率的に除去できることが知られている。
しかしながら、種晶を用いた方法でも、50〜250mg/Lほどの希土類元素、特に溶解度の高い重希土類元素であるイットリウムが微量残留することがある。
したがってイットリウムが残留した液を用いて高純度のニッケル及びコバルトのメタルあるいは化合物を製品化しようとすると、イットリウムが不純物としてニッケルやコバルトのメタルにまで混入し、そのような品位のメタルを用いた製品では、その製品スペックを逸脱し、不良となってしまうことがあった。
そのため、硫酸複塩化を行なわず、溶媒抽出法を用いて分離する方法も検討されてきた。
【0005】
例えば特許文献1には、希土類金属を効率良く分離、精製するために、溶媒抽出を用いた分離方法が示されている。
この方法は、具体的には酸性リン酸エステルを抽出剤として含有する抽出溶媒を、希土類金属を含有する水溶液に液−液接触させ、かつ水溶液のpHを適切に調整することにより、目的とする1または数種類の希土類金属を他の希土類金属から分離する希土類金属の抽出する方法、及び希土類金属を含有する水溶液に一般式1の酸性リン酸エステルを抽出剤として含有する抽出溶媒を液−液接触させ、かつ水溶液のpHを適切に調整することにより、目的とする1または数種類の希土類金属を他の希土類金属から分離し、その希土類金属を含有する抽出溶媒を抽出時よりも低いpHの水溶液と接触させることにより、所望の希土類金属を逆抽出する希土類金属の分離、精製方法である。
【0006】
しかし、例えば濃厚な金属イオンを含有する溶液に適用した場合、必ずしも良好な分離が得られるとは限らず、2次電池や電気製品など希土類を含有する製品のスクラップから希土類を回収する場合などは、希土類以外の金属イオンの影響を排除して分離するための検討が必要だった。
【0007】
希土類元素以外の高濃度の金属イオンを含有する溶液から希土類元素を効率よく分離する方法として、例えば特許文献2には、使用済みニッケル水素電池を解体して得た正極活物質及び負極活物質から、ニッケル、コバルト、希土類元素及びその他の共存する金属元素を分離し、特に、含有量の多いニッケルと希土類元素を電池用材料として再使用できる形態で回収することができる処理方法が示されている。
【0008】
この方法は、具体的には、
(1)正極活物質及び負極活物質を洗浄処理に付す洗浄工程、
(2)洗浄工程で得た洗浄後残渣と、(3)の浸出工程で得た浸出液を混合して還元処理に付す還元工程、
(3)還元工程で得た還元残渣を浸出処理に付す浸出工程、
(4)還元工程で得た還元液を希土類元素複塩化処理に付す希土類回収工程、
(5)希土類回収工程で得た濾液を酸化中和処理に付す酸化中和工程、及び
(6)酸化中和工程で得た酸化中和後液を溶媒抽出処理に付す溶媒抽出工程、
の各工程を含むものである。
【0009】
これらの溶媒抽出を用いた方法では、ミキサセトラを複数台設置し、抽出及び逆抽出の条件を調整することにより不純物と目的とするニッケルとを完全に分離することができる。しかし多段のミキサセトラを用いると、それだけ設備コストが増加し、運転の手間がかかるなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−34151号公報
【特許文献2】特開2010−174366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、これらの状況に鑑み、ニッケルを含有する溶液中に微量存在する希土類元素の除去について、設備投資を抑えて運転方法を簡略化し、効率的に極低濃度まで除去する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上述した目的を達成するために鋭意検討した結果、希土類元素が微量溶解した液に対し、溶媒抽出処理を行うことで、大規模な設備を必要とせずに、希土類元素を極低濃度まで除去する方法を見出した。
【0013】
すなわち本発明の第1の発明は、希土類元素のY、Ce、Laと、少なくともニッケルを含有する溶液、少なくともコバルトを含有する溶液、或いは少なくともニッケル及びコバルトを含有する溶液のいずれかの溶液から、溶媒抽出により、溶液中の希土類元素を分離する希土類元素の分離方法において、その溶液に、アルカリ金属硫酸塩の添加による硫酸複塩生成反応を生じさせて、前記溶液中の希土類元素の濃度を50〜250mg/Lの範囲まで低減した希土類元素のY、Ce、Laと、少なくともニッケルを含有する溶液、又は少なくともコバルトを含有する溶液、或いは少なくともニッケル及びコバルトを含有する溶液のいずれかの溶液を形成する硫酸複塩化工程と、その溶液のpHを、1.5〜2.0の範囲に維持しながらリン酸系抽出剤のD2EHPA(ジ‐2‐エチルヘキシルリン酸)と混合し、その溶液に含まれた希土類元素のY、Ce、Laを、リン酸系抽出剤に抽出して形成した希土類元素のY、Ce、Laを含む抽出有機と抽残液に分離する抽出工程と、次に、先の抽出工程で分離した希土類元素のY、Ce、Laを含む抽出有機と硫酸溶液とを混合して、その抽出有機に含まれる希土類元素のY、Ce、Laを、その硫酸溶液に抽出して形成する希土類元素のY、Ce、Laを含む硫酸溶液の逆抽出液と逆抽出後有機を得る逆抽出工程を有することを特徴とする希土類元素の分離方法である。
【0014】
本発明の第の発明は、第1の発明における逆抽出工程において、抽出有機に含有される20%以上、100%未満の希土類元素が、逆抽出液に分配されるように、2mol/L以上、4mol/L以下の濃度範囲で加える硫酸溶液中の硫酸濃度を調整することを特徴とする希土類元素の分離方法である。
【0015】
本発明の第の発明は、第1及び第2の発明における、抽出工程の抽出剤(有機相:O)と溶液(水相:A)を混合する際の容量比(O/A)が1以下、逆抽出工程における抽出有機と逆抽出始液との混合溶液の液温が、40℃以上、60℃以下であり、抽出工程と逆抽出工程が、各工程において1段のミキサセトラで行われることを特徴とする希土類元素の分離方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の希土類元素の分離方法によれば、大規模な設備を必要とせずに、シンプルでかつ安価に、極低濃度まで希土類元素を除去することを可能とし、工業上顕著な効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。
本実施の形態に関わる希土類元素の分離方法は、先ず、希土類元素と少なくともニッケル又はコバルト、或いはその両者を含有する溶液に、アルカリ金属硫酸塩を添加することによる硫酸複塩生成反応を生じさせて、難溶性の硫酸複塩沈澱物を形成する。さらに、種晶の添加効果も利用して液中の希土類元素の濃度を50〜250mg/L程度の範囲まで低減する硫酸複塩化工程を実施する。
ここで、希土類元素と共存する成分としてはニッケルやコバルトなどがある。
なお、この硫酸複塩化工程を実施せずに次工程の溶媒抽出工程を行うことも可能であるが、硫酸複塩化をせずに溶媒抽出をする場合、除去しなければならない希土類元素負荷が著しく上昇することとなり、それに伴い大規模な設備が要求され、大型投資が必要となるため、対費用効果の面から、抽出工程の前に硫酸複塩化工程を実施して、溶液の希土類元素の濃度を50〜250mg/Lの範囲に低減しておくことが望ましい。
【0018】
次に、この希土類元素濃度を50〜250mg/Lまで低減した液に対し、有機抽出剤としてリン酸系抽出剤を用い、かつ抽出ミキサセトラ1段と、逆抽出ミキサセトラ1段の設備を用いて溶媒抽出処理を行なうことで、液に残留するイットリウム等の希土類元素を5mg/L以下の極低濃度まで除去するものである。
【0019】
ところで、ニッケル及びコバルトを有機溶媒へ、ロスすることなしに、希土類元素を選択的に除去するのに使用するリン酸系抽出剤としては、D2EHPA(ジ−2−エチルヘキシルリン酸)が望ましい。なお、このD2EHPAを用いた場合、粘性を考慮すると、例えばテクリーンN20(商品名:JX日鉱日石エネルギー株式会社製)等の希釈剤を使用して20容量%程度に希釈することが好ましい。
【0020】
このD2EHPAを用いて、希土類元素であるイットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ランタン(La)を、ほぼ100%抽出するには、溶媒抽出に供給される溶液のpHの値を1.5以上に維持しながら溶媒抽出をする必要がある。
しかし、pHが2を超える溶液では、ニッケルやコバルトも抽出し始めてロスとなり好ましくない。このことから、双方の条件を満たすpH1.5〜2.0の範囲に調製した後、溶媒抽出処理を行うことが望ましい。
【0021】
また、抽出工程のミキサセトラにおける抽出剤と溶液、すなわち有機相(O)と水相(A)、を混合する際の容量比(O/A)は1以下が好ましく、逆抽出における硫酸使用量を考慮すると、0.2程度が特に好ましい。
【0022】
逆抽出工程で、逆抽出始液として供給する硫酸溶液は、抽出有機に含有される20%以上、100%未満の希土類元素を逆抽出液に分配するような硫酸濃度に調製されている。
その硫酸濃度の範囲は、硫酸濃度が低すぎるとイットリウムの逆抽出性が低下し、残留量が多く好ましくない。一方、濃度が高すぎると、抽出剤の劣化を促進し溶媒が白濁化するなどの問題が顕著になるため、抽出有機に含まれる希土類元素を20%以上、100%未満、逆抽出液に分配するには、2〜4mol/L程度の濃度が適しており、3mol/Lが最も好ましい。
【0023】
また、逆抽出工程におけるミキサセトラ内での抽出有機と逆抽出始液(硫酸溶液)との混合溶液の液温としては、反応性を考慮すると40℃以上など高い方が良いが、あまり高温になると有機溶媒の揮発や蒸発による液バランスの変化も無視できなくなるので、60℃以下の範囲で逆抽出することが好ましい。
【0024】
本発明の、抽出工程および逆抽出工程にミキサセトラを各1段用い、上記抽出条件及び逆抽出条件に従って、希土類元素を含有する溶液を処理することにより、希土類元素の中でも最も多量に残留しやすく、したがって分離程度の指標として利用でき得る、重希土類元素のイットリウムであっても、5mg/L以下の極低濃度まで低減でき、ニッケルやコバルトの製品への影響を回避できる。
また、本発明の方法は抽出工程と逆抽出工程がそれぞれ1段で目的を達するので、設備投資のコストを抑えることも可能である。
【実施例】
【0025】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0026】
硫酸複塩処理後の希土類元素が微量溶存した元液として、イットリウム、セリウム、ランタン、ニッケル、コバルトの硫酸化物に硫酸溶液を添加し、pHを1.8に調整して希土類元素溶解液とした表1に示す組成の液を用いた。
【0027】
溶媒抽出試験には、ミキサ部の内容積が200ml、セトラ部の内容積が800mlの大きさのFRP製のミキサセトラを2個用意し、高低差をつけて抽出器から逆抽出器へ有機が自然に流れるようにセットした。
逆抽出器出口の有機は、ビーカーで受け、再度、抽出機へポンプで繰り返す構造とした。抽出器、逆抽出器に供給する各水相についてはワンパスとし、各々排出口で回収した。
【0028】
抽出条件としては、上記の希土類元素溶解液を70.4ml/minの流量でミキサセトラに給液した。繰り返す抽出剤は、溶解液の20Vol%の量に相当する。
なお、ミキサセトラ内部でセトラ部からミキサ部へ有機溶媒を再循環したので、ミキサ部でのO/Aは1となる。pHは1.8に維持した。
【0029】
逆抽出条件としては、40℃に加温した3mol/L濃度の硫酸溶液を流量15.1ml/minで供給した。
水相及び有機相の濃度はほぼ一定で安定して推移した。
【0030】
抽出後の希土類元素溶解液の分析値を表2に示す。
分析元素としては元液の濃度が、特に高いイットリウム及びニッケルついて分析した。
イットリウムは5mg/L以下まで低減出来ており、元液に含まれた量の99%以上を分離した。また、ニッケルは、液濃度の低下は見られず、ロスはほぼ0%だった。
【0031】
逆抽出後の有機溶媒中のイットリウム濃度の入口及び出口濃度を表3に示す。
硫酸で逆抽出することにより抽出量の約30%のイットリウムが除去されており、処理を継続しても、イットリウムが系内に蓄積することなく、希土類元素溶解液から抽出剤に抽出された希土類が逆抽出に加えた硫酸によって効率よく逆抽出されていることが確認された。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
続いて、希土類を極低濃度まで低減した液に対して、水硫化ナトリウムを硫化剤として添加してニッケル、コバルトを硫化物として回収した。
回収した澱物中の希土類元素の分析結果を表4に示す。
【0036】
(比較例1)
実施例1で使用した、希土類元素溶解液に対して、直接、水硫化ナトリウムを硫化剤として添加し、ニッケル、コバルトを硫化物として回収した。回収した澱物中の希土類元素の分析結果を表4に併せて示す。
【0037】
【表4】
【0038】
表4に示すように、溶媒抽出処理を別途行なった硫化澱物の方(実施例1)が、直接硫化して回収した澱物(比較例1)に比べて、希土類元素の品位が著しく低減されていることがわかる。
【0039】
以上より明らかなように、本発明の溶媒抽出を用いた分離方法を利用することにより、微量残留する希土類元素を、シンプルかつ安価に除去することが可能となる。
さらに、この液を用いて製品製造の元原料となる硫化澱物を製造することにより、著しく低濃度の希土類含有量の製品を製造できることが示され、高純度のニッケル、コバルトのメタル及び化合物を製造する分野において利用できる。