特許第5867999号(P5867999)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5867999-開閉可能な収納空間用の芳香剤組成物 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5867999
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】開閉可能な収納空間用の芳香剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20160210BHJP
   A61L 9/04 20060101ALI20160210BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20160210BHJP
【FI】
   A61L9/01 V
   A61L9/04
   A61Q13/00 102
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2010-500789(P2010-500789)
(86)(22)【出願日】2009年2月27日
(86)【国際出願番号】JP2009053768
(87)【国際公開番号】WO2009107814
(87)【国際公開日】20090903
【審査請求日】2011年12月20日
【審判番号】不服2014-18589(P2014-18589/J1)
【審判請求日】2014年9月17日
(31)【優先権主張番号】特願2008-46939(P2008-46939)
(32)【優先日】2008年2月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西 由美子
【合議体】
【審判長】 河原 英雄
【審判官】 大橋 賢一
【審判官】 後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−276381(JP,A)
【文献】 特開2000−355696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00-9/22
A61Q 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
香料、及び常圧で沸点が70〜220℃のパラフィン系炭化水素を溶媒として15〜90重量%含有することを特徴とする、引き出し、下駄箱及び衣装ケースから選ばれる0.5〜150Lの開閉可能な、液状の収納空間用芳香剤組成物であって、
前記香料が、d-リモネン、カリオフィレン、エチルブチレート、スチラリルアセテート及びo-t-ブチルシクロへキシルアセテートよりなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記パラフィン系炭化水素が炭素数4〜17の軽質流動イソパラフィンである、
収納空間用芳香剤組成物
【請求項2】
前記パラフィン系炭化水素の配合割合が25〜65重量%である、請求項1に記載の芳香剤組成物。
【請求項3】
前記パラフィン系炭化水素が、20℃での蒸気圧が0.06〜4kPaである、請求項1に記載の芳香剤組成物。
【請求項4】
前記パラフィン系炭化水素が、常圧で沸点が179〜188℃、20℃での蒸気圧が0.1kPaのイソパラフィン系炭化水素である、請求項1に記載の芳香剤組成物。
【請求項5】
前記香料の配合割合が10〜85重量%である、請求項1に記載の芳香剤組成物。
【請求項6】
前記香料が、常圧での沸点が50〜360℃である、請求項1に記載の芳香剤組成物。
【請求項7】
前記香料の配合割合が35〜75重量%であり、前記パラフィン系炭化水素の配合割合が25〜65重量%である、請求項1に記載の芳香剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉可能な収納空間用の芳香剤組成物、及びその製造方法に関する。より詳細には、開閉可能な収納空間に設置され、収納空間内で一定の強度で均質な香気を保持できる芳香剤組成物、及びその製造方法に関する。また、本発明は、開閉可能な収納空間において一定の強度で均質な香気を揮散させる香気の揮散方法に関する。更に、本発明は、開閉可能な収納空間における香気の揮散性を一定の強度で均質になるように調整する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
収納空間や室内空間の臭気による不快感をなくし、快適な空間を生み出すために、芳香剤が広く使用されている。
【0003】
一般に、室内空間は、芳香剤に含まれる香料の揮散速度に対して空間容積が大きいため、室内空間で使用される芳香剤は、香料の揮散性を向上させて、持続的に香料を揮散させることが求められる。
【0004】
一方、引き出しや下駄箱等の収納空間は、芳香剤に含まれる香料の揮散速度に対して空間容積が小さいことに加え、収納物の出し入れの際にのみ開閉され、通常は閉鎖された環境である点で、室内空間とは異なっている。そのため、収納空間において、香料の揮散性を向上させて持続的に香料を揮散させ続けると、収納空間内での香料の揮散量が増大し、収納空間を空ける時に嗅知される香気が強くなり過ぎることがある。また、収納空間で使用される芳香剤は、収納空間内の収納物に対する付香の目的でも使用されることから、収納空間内の香料の揮散量が増大は、収納物に対して過度の付香をもたらし、適度な付香ができなくなる。更に、閉鎖された収納空間内での香料の揮散性の向上は、収納空間の閉鎖期間の長短による香気の強さの不均一性を招き、更には芳香剤の使用期間の短縮をも招くことになる。そのため、開閉可能な収納空間で使用される芳香剤は、室内空間で使用される芳香剤のように香料の揮散性及び揮散持続性を揮散させることよりも、収納空間内で香気を一定の強さ且つ均質に保持できることが強く求められる。
【0005】
今日、様々なタイプの芳香剤が開発され商品化されているが、閉鎖された収納空間内で香気を均質且つ一定の強さで保持でき、収納空間の開閉を行っても、収納空間内に均質且つ一定の強さの香気を満たすことができる芳香剤については、未だ開発されていないのが現状である。
【特許文献1】特開2003-102822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、閉鎖された収納空間内で香気を均質且つ一定の強さで保持でき、収納空間の開閉を行っても、収納空間内に均質且つ一定の強さの香気を満たすことができる、開閉可能な収納空間用の芳香剤組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、開閉可能な収納空間において、一定の強度で均質な香気を揮散させる香気の揮散方法を提供することを目的とする。更に、本発明は、開閉可能な収納空間における香気の揮散性を一定の強度で均質になるように調整する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、常圧で沸点が70〜220℃のパラフィン系炭化水素を芳香剤組成物の溶媒として15〜90重量%の配合割合で使用することによって、閉鎖された収納空間内で香気を均質且つ一定の強さで保持することができ、更に、収納空間を開閉しても、収納空間内に均質且つ一定の強さの香気を満たすことが可能になることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、上記知見に基づいて、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 香料、及び常圧で沸点が70〜220℃のパラフィン系炭化水素を15〜90重量%含有することを特徴とする、開閉可能な収納空間用の芳香剤組成物。
項2. 前記パラフィン系炭化水素の配合割合が25〜65重量%である、項1に記載の芳香剤組成物。
項3. 前記パラフィン系炭化水素が、20℃での蒸気圧が0.03〜4kPaである、項1に記載の芳香剤組成物。
項4. 前記パラフィン系炭化水素が、イソパラフィン系炭化水素である、項1に記載の芳香剤組成物。
項5. 前記パラフィン系炭化水素が、炭素数4〜17の質流動イソパラフィンである、項1に記載の芳香剤組成物。
項6. 前記香料の配合割合が10〜85重量%である、項1に記載の芳香剤組成物。
項7. 前記香料が、常圧での沸点が50〜360℃である、項1に記載の芳香剤組成物。
項8. 前記香料が、d-リモネン、カリオフィレン、エチルブチレート、スチラリルアセテート、及びo-t-ブチルシクロへキシルアセテートよりなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の芳香剤組成物。
項9. 前記香料の配合割合が35〜75重量%であり、前記パラフィン系炭化水素の配合割合が25〜65重量%である、項1に記載の芳香剤組成物。
項10. 液状である、項1に記載の芳香剤組成物。
項11. 引き出し、又は下駄箱に設置して使用される、項1に記載の芳香剤組成物。
項12. 衣類の収納空間に設置して使用される、項1に記載の芳香剤組成物。
項13. 常圧で沸点が70〜220℃のパラフィン系炭化水素の配合割合が15〜90重量%となるように、香料及び該パラフィン系炭化水素を混合することを特徴とする、開閉可能な収納空間用の芳香剤組成物の製造方法。
項14. 香料、及び常圧で沸点が70〜220℃のパラフィン系炭化水素を15〜90重量%含有する芳香剤組成物を、開閉可能な収納空間に揮散させることを特徴とする、開閉可能な収納空間における香気の揮散方法。
項15. 常圧で沸点が70〜220℃のパラフィン系炭化水素の配合割合が15〜90重量%となるように、香料及び該パラフィン系炭化水素を混合することを特徴とする、開閉可能な収納空間における香気の揮散性の調整方法。
項16. 香料、及び常圧で沸点が70〜220℃のパラフィン系炭化水素を15〜90重量%含有する組成物の、開閉可能な収納空間用の芳香剤組成物の製造のための使用。
項17. 開閉可能な収納空間における香料の揮散性を調整するための、芳香剤組成物の総量当たり15〜90重量%の常圧で沸点が70〜220℃のパラフィン系炭化水素の使用。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、含有される香料に対して、開閉可能な収納空間で求められる揮散特性を備えさせることができる。即ち、本発明の芳香剤組成物は、閉鎖された収納空間内で香気を均質且つ一定の強さで保持することができ、更には収納空間の開閉を繰り返しても収納空間内に均質且つ一定の強さの香気を満たすことが可能である。而して、本発明の芳香剤組成物は、引き出しや下駄箱等の収納空間内に設置されることにより、これらの収納空間に所望の香気を満たし、更には内部の収納物に対して所望の付香を施すこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
I.芳香剤組成物
本発明の芳香剤組成物は、開閉可能な収納空間で使用されるものであって、香料、及び常圧で沸点が70〜220℃のパラフィン系炭化水素を15〜90重量%含有することを特徴とするものである。以下、本発明の芳香剤組成物の具体的実施形態について詳述する。
【0011】
本発明の芳香剤組成物に含まれる香料としては、天然香料、天然香料から分離された単品香料、合成された単品香料、及びこれらの調合香料のいずれであってもよく、従来公知の香料を使用することができる。具体的には、単品香料として、d-リモネン、カリオフィレン、α-ピネン、β-ピネン、ミルセン、ターピノレン、オシメン、γ-ターピネン、α-フェランドレン、p−サイメン、β-カリオフィレン、β-ファルネセン、1,3,5−ウンデカトリエン、ジフェニルメタン等の炭化水素系香料;シス-3-ヘキセノール、リナロール、ゲラニオール、フェニルエチルアルコール、トランス-2-ヘキセノール、シス-3-ヘキセノール、3-オクタノール、1-オクテン-3-オール、2、6-ジメチル-2-ヘプタノール、9-デセノール、4-メチル-3-デセン-5-オール、10-ウンデセノール、トランス-2-シス-6-ノナジエタノール、リナロール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、ロジノール、ミルセノール、ラバンジュロール、テオラヒドロゲラニオール、テトラヒドロリナロール、ヒドロキシシトロネロール、ジヒドロミルセノール、アロオキシメノール、ターピネオール、α-ターピネオール、ターピネン-4-オール、l-メントール、ボルネオール、イソプレゴール、ノポール、ファルネソール、ネロリドール、セドロール、パチュリアルコール、ベチベロール、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-メタノール、4-イソプロピルシクロヘキサノール、4-イソプロピルシクロヘキサンメタノール、1-(4-イソプロピルシクロヘキシル)-エタノール、2,2-ジメチル-3-(3-メチルフェニル)-プロパノール、p−t-ブチルシクロヘキサノール、o-t-ブチルシクロヘキサノール、アンブリノール、1-(2-t-ブチルシクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール、ペンタメチルシクロヘキシルプロパノール、1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)-3-ヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フェノキシエチルアルコール、スチラリルアルコール、アニスアルコール、シンナミックアルコール、フェニルプロピルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、ジメチルフェニルエチルカルビノール、フェニルエチルメチルエチルカルビノール、3-メチル-5-フェニルペンタノール、チモール、カルバクロール、オルシノールモノメチルエーテル、オイゲノール、イソオイゲノール、プロペニルグアエトール、サンタロール、イソボルニルシクロヘキサノール、サンダロア、バグダノール、サンダルマイソルコア、ブラマノール、エバノール、ポリサントール、3,7-ジメチル-7-メトキシオクタン-2-オール等のアルコール系香料;ジフェニルオキシド、p-クレジルエチルエーテル、dl-ローズオキシド、(ネロールオキサイド、ミロキサイド、1,8-シネオール、ローズオキサイド、リメトール、メントフラン、リナロールオキサイド、ブチルジメチルジヒドロキシピラン、アセトキシアミルテトラヒドロピラン、セドリルメチルエーテル、メトキシシクロドデカン、1-メチル-1-メトキシシクロドデカン、エトキシメチルシクロドデシルエーテル、トリクロデセニルメチルエーテル、ルボフィックス、セドロキサイド、アンブロキサン、グリサルバ、ボワジリス、アニソール、ジメチルハイドロキノン、パラクレジルメチルエーテル、アセトアニソール、アネトール、ジヒドロアネトール、エストラゴール、ジフェニルオキサイド、メチルオイゲノール、フェニルエチルイソアミルエーテル、β-ナフチルメチルエーテル、β-ナフチルイソブチルエーテル)等のエーテル系香料;ヘキサナール、シトラール、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、デシルアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、ドデシルアルデヒド、トリデシルアルデヒド、トリメチルヘキシルアルデヒド、メチルオクチルアセチルアルデヒド、メチルノニルアセトアルデヒド、トランス-2-ヘキセナール、シス-4-ヘプテナール、2,6-ノナジエナール、シス-4-デセナール、トランス-4-デセナール、ウンデシレンアルデヒド、トランス-2-ドデセナール、トリメチルウンデセナール、2,6,10-トリメチル-5,9-ウンデカジエナール、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、ペリラルデヒド、メトキシジヒドロシトロネラール、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、2,4-ジメチル-3-氏クロヘキセニルカルボキシアルデヒド、イソシクロシトラール、センテナール、マイラックアルデヒド、リラール、ベルンアルデヒド、デュピカール、マセアール、ボロナール、セトナール、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、シンナミックアルデヒド、α-アミルシンナミックアルデヒド、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヒドロトロピックアルデヒド、アニスアルデヒド、p-メチルフェニルアセトアルデヒド、クミンアルデヒド、シクラメンアルデヒド、3-(p-t-ブチルフェニル)-プロピルアルデヒド、p-エチル-2,2-ジメチルヒドロシンナムアルデヒド、2-メチル-3-(p-メトキシフェニル)-プロピルアルデヒド、p-t-ブチル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド、サリチルアルデヒド、ヘリオトロピン、ヘリオナール、バニリン、エチルバニリン、メチルバニリン等のアルデヒド系香料;オクチルアルデヒドグリコールアセタール、アセトアルデヒドエチルシス-3-ヘキセニルアセタール、シトラールジメチルアセタール、シトラールジエチルアセタール、アセトアルデヒドエチルリナリルアセタール、アセトアルデヒドエチルリナリルアセタール、ヒドロキシシトロネラールジメチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、ヒドラトロピックアルデヒドジメチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドヒドグリセリルアセタール、アセトアルデヒドエチルフェニルアセタール、アセトアルデヒドフェニルエチルプロピルアセタール、フェニルプロピルアルデヒドプロピレングリコールアセタール、4,4,6-トリメチル-2-ベンジル-1,3-ジオキサン、2,4,6-トリメチル-2-フェニル-1,3-ジオキサン、2-ブチル-4,4,6-トリメチル-1,3-ジオキサン、テトラヒドロインデノ-m-ジオキシン、ジメチルテトラヒドロインデノ-m-ジオキシン、カラナール等のアセタール系香料;エチルブチレート、スチラリルアセテート、o-t-ブチルシクロへキシルアセテート、蟻酸エチル、蟻酸シス-3-ヘキセニル、蟻酸リナリル、蟻酸シトロネリル、蟻酸ゲラニル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、シクロペンチリデン酢酸メチル、酢酸ヘキシル、酢酸シス-3-ヘキセニル、酢酸トランス-3-ヘキセニル、酢酸イソノニル、酢酸シトロネリル、酢酸ラバンジュリル、酢酸ゲラニル、酢酸リナリル、酢酸ミルセニル、酢酸ターピニル、酢酸メンチル、酢酸メンタニル、酢酸ノピル、酢酸n-ボルニル、酢酸イソボルニル、酢酸p-t-ブチルシクロヘキシル、酢酸o-t-ブチルシクロヘキシル、酢酸トリシクロデセニル、酢酸 2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-メタニル、酢酸ベンジル、酢酸フェニルエチル、酢酸スチラリル、酢酸シンナミル、酢酸アニシル、酢酸パラクレジル、酢酸ヘリオトロピル、アセチルオイゲノール、アセチルイソオイゲノール、酢酸グアイル、酢酸セドリル、酢酸ベチベリル、酢酸デカヒドロβナフチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸シロネリル、プロピオン酸シロネリル、プロピオン酸ゲラニル、プロピオン酸リナリル、プロピオン酸ターピニル、プロピオン酸ベンジル、プロピオン酸シンアミル、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、プロピオン酸トリシクロデセニル、酪酸エチル、2-メチル酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソアミル、酪酸ヘキシル、酪酸リナリル、酪酸ゲラニル、酪酸シトロネリル、酪酸ベンジル、イソ酪酸シス-3-ヘキセニル、イソ酪酸シトロネリル、イソ酪酸ゲラニル、イソ酪酸リナリル、イソ酪酸ベンジル、イソ酪酸フェニルエチル、イソ酪酸フェノキシエチル、イソ酪酸トリシクロデセニル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、イソ吉草酸シトロネリル、イソ吉草酸ゲラニル、イソ吉草酸シンアミル、イソ吉草酸ベンジル、イソ吉草酸フェニルエチル、カプロン酸エチル、カプロン酸アリル、エナント酸エチル、エナント酸アリル、カプリン酸エチル、チグリン酸シトロネリル、オクチンカルンボン酸メチル、2-ペンチロキシグリコール酸アリル、シス-3-ヘキセニルメチルカーボネート、ケト酸エチル、ピルビン酸イソアミル、アセト酸エチル、レブリン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸イソブチル、安息香酸イソアミル、安息香酸ゲラニル、安息香酸リナリル、安息香酸ベンジル、安息香酸フェニルエチル、安息香酸フェニルエチル、ジヒドロキシメチル安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、フェニル酢酸メチル、フェニル酢酸エチル、フェニル酢酸イソブチル、フェニル酢酸イソアミル、フェニル酢酸ゲラニル、フェニル酢酸ベンジル、フェニル酢酸フェニルエチル、フェニル酢酸p-クレジル、桂皮酸メチル、桂皮酸エチル、桂皮酸ベンジル、桂皮酸シンアミル、桂皮酸フェニルエチル、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、サリチル酸イソブチル、サリチル酸イソアミル、サリチル酸ヘキシル、サリチル酸シス-3-ヘキセニル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸フェニルエチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、アンスラニル酸メチル、アンスラニル酸エチル、メチルアンスラニル酸メチル、ジャスモン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、メチルフェミルグリシド酸エチル、フェニルグリシド酸エチル、グリコメル、フラクトン、フレイストン、フルテート、ジベスコン、エチル2-メチル-6-ペンチル-4-オキサ-2-シクロヘキセンカーボネート等のエステル系香料;2-オクタノン、δ-ダマスコン、アセトイン、ジアセチル、ミチルアミルケトン、エチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトン、メチルヘプテノン、コアボン、カンファー、カルボン、メントン、d-プレゴン、ピペリトン、フェンチョン、ゲラニルアセトン、セドリルメチルケトン、ヌートカトン、イオノン、α-イオノン、β-イオノン、メチルイオノン、α-n-メチルイオノン、β-n-メチルイオノン、α-イソイオノン、β-イソイオノン、アリルイオノン、イロン、α-イロン、β-イロン、γ-イロン、ダマスコン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、δ-ダマスコン、ダマセノン、ダイナスコン、α-ダイナスコン、β-ダイナスコン、マルトール、エチルマルトール、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフランノン、シュガーラクトン、p-t-ブチルシクロヘキサノン、アミルシクロペンタノン、ヘプチルシクロペンタノン、ジヒドロジャスモン、シスージャスモン、フロレックス、プリカトン、4-シクロヘキシル-4-メチル-2-ペンタノン、p-メンテン-6-イルプロパノン、2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン、エトキシビニルテトラシクロヘキサノン、ジヒドロペンタメチルインダノン、イソ・イー・スーパー、トリモフィックス、アセトフェノン、p−メチルアセトフェノン、ベンジルアセトン、カローン、ラズベリーケトン、アニシルアセトン、4-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-2-ブタノン、メチルナフチルケトン、4-フェニル-4-メチル-2-ペンタノン、ベンゾフェノン等のケトン系香料;ゲラニル酸、シトロネリル酸、安息香酸、フェニル酢酸、フェニルプロピオン酸、桂皮酸、2-メチル-2-ペンテノ酸等のカルボン酸系香料;γ-オクタラクトン、γーノナラクトン、γ-デカラクトン、γ-ウンデカラクトン、δ-デカラクトン、クマリン、ジヒドロクマリン、ジャスモラクトン、
ジャスミンラクトン等のラクトン系香料;ムスコン、シベトン、シクロペンタデカノン、シクロヘキサデセノン、シクロペンタデカノリド、12-ケトシクロペンタデカノリド、シクロヘキサデカノリド、シクロヘキサデセノリド、12-オキサ-16-ヘキサデカノリド、11-ヘキサ-16-ヘキサデカノリド、10-オキサ-16-ヘキサデカノリド、エチレンブラシレート、エチレンドデカンジオエート、ムスクケトン、ムスクキシロール、ムスクアンブレット、ムスクチベテン、ムスクモスケン、6-アセチルヘキサメチルインダン、4-アセチルジメチル-t-ブチルインダン、5-アセチルテトラメチルイソプロプルインダン、6−アセチルヘキサテトラリン、ヘキサメチルヘキサヒドロシクロペンタンベンゾピラン等のムスク系香料;アセチルピロール、インドール、スカトール、インドレン、2-アセチルピリジン、マリティマ、6-メチルキノリン、6-イソプロピルキノリン、イソブチルキノリン、2-アセチルピラジン、2,3-ジメチルピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン、2-セカンダリーブチル-3-メトキシピラジン、トリメチルピラジン、5-メチル-3-ヘプタンオキシム等の窒素含有香料;ゲラニルニトリル、シトロネリルニトリル、5-フェニル-2,6-ノナジエンニトリル、シナモンニトリル、クミンニトリル、ドデカンニトリル、トリデセン-2-ニトリルと等のニトリル系香料;ジメチルスルフィド、2-メチル-4-プロピル-1,3-オキサチアン、イソオシアン酸アリル、p-メンタン-8-チオール-3-オン、p-メンテン-8-チオール、p-メンチルチオプロピオン酸メチル等の硫黄含有香料等が例示される。また、天然香料としては、チュベローズ油、ムスクチンキ、カストリウムチンキ、シベットチンキ、アンバーグリスチンキ、ペパーミント油、ペリラ油、プチグレン油、パイン油、ローズ油、ローズマリー油、しょう脳油、芳油、クラリーセージ油、サンダルウッド油、スペアミント油、スパイクラベンダー油、スターアニス油、ラバンジン油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ライム油、ネロリ油、オークモス油、オコチア油、パチュリ油、タイム油、トンカ豆チンキ、テレピン油、ワニラ豆チンキ、バジル油、ナツメグ油、シトロネラ油、クローブ油、ボアドローズ油、カナンガ油、カルダモン油、カシア油、シダーウッド油、オレンジ油、マンダリン油、タンジェリン油、アニス油、ベイ油、コリアンダー油、エレミ油、ユーカリ油、フェンネル油、ガルバナム油、ゼラニウム油、ヒバ油、桧油、ジャスミン油、ベチバー油、ベルガモット油、イランイラン油、グレープフルーツ油、ゆず油等が例示される。
【0012】
本発明の芳香剤組成物において、これらの香料は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて調香して使用することもできる。
【0013】
これらの香料の中でも、好ましくは常圧での沸点が50〜360℃、好ましくは70〜340℃、更に好ましくは90〜310℃のものが例示される。なお、調合香料の場合には、ここでいう沸点は、調合香料自体の沸点を指し、必ずしも調合香料中の各単品香料が上記沸点範囲を充足していることを必要とするものではない。これらの香料を使用することによって、閉鎖された収納空間内に放たれる香気を均質且つ一定の強さにするという本発明の効果を一層顕著に奏させることが可能になる。
【0014】
本発明において、香料として、好ましくは、d-リモネン、カリオフィレン、エチルブチレート、スチラリルアセテート、及びo-t-ブチルシクロへキシルアセテートが例示される。これらの香料によれば、本発明の芳香剤組成物において、収納空間で求められる揮散特性を一層有効に備えさせることが可能になる。
【0015】
本発明の芳香剤組成物中の香料の配合割合については、使用する香料の種類、期待される芳香効果等に応じて異なるため、一律に規定することはできないが、一例として、該芳香剤組成物の総重量に対して香料が総量で10〜85重量%、好ましくは25〜75重量%、更に好ましくは35〜75重量%となる割合を挙げることができる。
【0016】
本発明の芳香剤組成物は、前述する香料に加えて、常圧での沸点が70〜220℃のパラフィン系炭化水素を含有する。パラフィン系炭化水素として、好ましくは常圧での沸点が100〜210℃、好ましくは160〜210℃のものである。このようなパラフィン系炭化水素を溶媒として後述する配合割合で使用することによって、含有される香料に対して、収納空間内で求められる揮散特性を一層有効に備えさせることができる。
【0017】
本発明の芳香剤組成物に配合されるパラフィン系炭化水素は、沸点が上記範囲を充足する事に加えて、更に20℃での蒸気圧が0.03〜2.5kPa、好ましくは0.04〜1kPa、更に好ましくは0.06〜0.7kPaを満たしていることが望ましい。このような蒸気圧を満たすパラフィン系炭化水素によれば、閉鎖された収納空間内に放たれる香気を均質且つ一定の強さにするという本発明の効果を一層顕著に奏させることが可能になる。
【0018】
本発明の芳香剤組成物に配合されるパラフィン系炭化水素は、沸点が上記範囲を満たす限り、特に制限されず、イソパラフィン系炭化水素であってよく、またノルマルパラフィン系炭化水素であってもよいが、好ましくはイソパラフィン系炭化水素である。
【0019】
沸点が上記範囲にあるイソパラフィン系炭化水素としては、具体的には、炭素数4〜17、好ましくは炭素数8〜17、更に好ましくは炭素数8〜15の質流動イソパラフィンが例示される。
【0020】
また、沸点が上記範囲にあるノルマルパラフィン系炭化水素としては、具体的には、炭素数7〜14、好ましくは炭素数8〜13、更に好ましくは炭素数10〜12の質流動ノルマルパラフィンが例示される。
【0021】
本発明の芳香剤組成物において、沸点が上記範囲にあるパラフィン系炭化水素は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0022】
本発明の芳香剤組成物において、沸点が上記範囲にあるパラフィン系炭化水素の配合割合は15〜90重量%であればよく、このような配合割合を充足させることによって、含有される香料に対して、収納空間内で求められる揮散特性を備えさせることが可能になる。本発明の芳香剤組成物において、沸点が上記範囲にあるパラフィン系炭化水素の配合割合として、好ましくは25〜75重量%、更に好ましくは25〜65重量%が挙げられる。
【0023】
本発明の芳香剤組成物は、上記香料及びパラフィン系炭化水素に加えて、本発明の効果を妨げないことを限度として、他の成分を配合しても良い。本発明の芳香剤組成物に配合可能な他成分としては、例えば、界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤、溶剤、消臭剤、除菌剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、殺虫成分、防虫成分、忌避成分等の成分が挙げられる。
【0024】
本発明の芳香剤組成物に配合可能な界面活性剤としては、具体的には、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル、アルキルアルカノールアミド、アルキルポリグルコシド、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等の非イオン性界面活性剤;アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩、N-アシルアミノ酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸、リン酸エステル等のアニオン性界面活性剤;アルキルアンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;アルキルアミドベタイン、アルキルジメチルアミンオキシド等の両性界面活性剤等が挙げられる。
【0025】
本発明の芳香剤組成物に配合可能な防腐剤としては、具体的には、ソルビン酸、p-オキシ安息香酸メチル、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2n-オクチル-イソチアゾリン-3-オン等が挙げられる。
【0026】
本発明の芳香剤組成物に配合可能な酸化防止剤としては、具体的には、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸塩、イソフラボン、α-トコフェロール等が挙げられる。
【0027】
本発明の芳香剤組成物に配合可能な溶剤としては、具体的には、水、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
【0028】
本発明の芳香剤組成物に配合可能な消臭剤としては、具体的には、ジクロロイソシアヌル酸塩;イネ、松、ヒノキ、笹、柿、茶等の植物の抽出物;脱塩型ベタイン化合物;変性有機酸化合物;アルカノールアミン;安定化二酸化塩素;アルデヒド化合物;グリコールエーテル化合物;フィトンチッド系香料;低級脂肪族アルデヒド系香料等が挙げられる。
【0029】
本発明の芳香剤組成物に配合可能な除菌剤としては、具体的には、イソプロピルメチルフェノール、パラオキシ安息香酸エステル、P C M X 、I P B C 、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、二酸化塩素、ジクロロイソシアヌル酸塩、テルペン炭化水素類香料、テルペンアルコール類香料、フェノール類香料、芳香族アルコール類香料、アルデビド類香料等が挙げられる。
【0030】
本発明の芳香剤組成物に配合可能な紫外線吸収剤としては、具体的には、ベンゾトリアゾール系(2−(3,5−di−tert−pentyl−2−hydroxyphenyl)−2H−benzotriazole)、ベンゾフェノン系(2,2 4,4 tetrahydroxybenzophenone)等が挙げられる。
【0031】
本発明の芳香剤組成物に配合可能なpH調整剤としては、具体的には、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;クエン酸三ナトリウム、クエン酸カリウム等のクエン酸のアルカリ金属塩;エチレンジアミン四酢酸、水酸化ナトリウム、塩基性アミノ酸(アルギニン)、炭酸カルシウムなどのカルシウム塩等が挙げられる。
【0032】
本発明の芳香剤組成物に配合可能な殺虫成分としては、具体的には、ヒノキチオール、ヒバ油、アリルイソチオシアネート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エタノール、プロパノール、1.8―シネオール等が挙げられる。
【0033】
本発明の芳香剤組成物に配合可能な防虫成分としては、具体的には、ピレスロイド系化合物、ナフタレン系化合物、パラジクロロベンゼン系化合物、樟脳等が挙げられる。
【0034】
本発明の芳香剤組成物に配合可能な忌避成分としては、具体的には、N,N−ジエチル−m−トルアミド、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、p−メンタン−3,8−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジ−n−プロピルイソシンコメロネート、p−ジクロロベンゼン、ジ−n−ブチルサクシネート、カラン−3,4−ジオール、1−メチルプロピル−2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペリジンカルボキシレート、イソチオシアン酸アリル等が挙げられる。さらに、テルペン炭化水素類香料、テルペンアルコール類香料、フェノール類香料、芳香族アルコール類香料、アルデビド類香料、ケトン類香料、カラシ、ワサビ等の植物抽出物や木酢液等が挙げられる。
【0035】
本発明の芳香剤組成物の形状については、特に制限されず、液状であってもよく、またゲル状であってもよい。好ましくは液状である。
【0036】
本発明の芳香剤組成物は、上記香料と上記パラフィン系炭化水素、及び必要に応じて、他の配合成分を、所定量混合することにより調製される。
【0037】
本発明の芳香剤組成物は、開閉可能な収納空間に設置される芳香剤として使用される。本発明において、開閉可能な収納空間とは、開閉されることによって、収納物の取り出し又は収納ができる収納空間であり、具体的には、引き出し、下駄箱、衣装ケース、小物入れ、戸棚等が例示される。上記収納空間の中でも、下駄箱及び引き出し、特に引き出しは、本発明の芳香剤組成物が対象とする収納空間として好ましい。本発明の芳香剤組成物が使用される収納空間としては、その容積については、特に制限されるものでないが、通常0.5〜150 L、好ましくは1〜100 L、更に好ましくは10〜80 Lが挙げられる。本発明の芳香剤組成物は、このような容積の収納空間に対して香気を均質且つ一定の強さで保持させる効果を一層有効に発揮させ得る。
【0038】
また、本発明の芳香剤組成物は、収納空間内の収納物に対して香気を付与することができるので、衣類の収納空間に設置することによって、収納されている衣類に対して、快適な香気を付香することができる。このような本発明の効果に鑑みれば、本発明の芳香剤組成物が使用される収納空間の好適な一例として、衣類の収納空間が例示される。
【0039】
本発明の芳香剤組成物は、外部に香料が揮散可能な容器に収納して使用される。このような容器の構造については、使用する芳香剤組成物の形状に応じて適宜設定される。例えば、本発明の芳香剤組成物が液状である場合、(i)容器に収納された芳香剤組成物を吸上げて外部に揮散させるための吸上揮散部材を備えている容器、並びに(ii)液状の芳香剤組成物を漏出させないが、揮散した芳香剤組成物は通過させる公知の透過性フィルムを用いて開口部が封止されている容器が例示される。特に、後者の容器は、収納空間の開閉時に衝撃を受けても、液体が容器外に漏出することがないので、本発明の芳香剤組成物の収納に好適である。更に、本発明の芳香剤組成物が液状である場合には、紙、パルプ、合成繊維、合成樹脂、セルロース等の天然系樹脂等の基材に含浸させた状態で容器に収容されていてもよく、このような状態で容器に収容されることによって、収納空間の開閉時に液漏れを防止することが可能になる。
【0040】
II.開閉可能な収納空間における香気の揮散方法
前述するように、上記芳香剤組成物は、開閉可能な収納空間において、香気を均質且つ一定の強さで揮散させることができる。従って、本発明は、更に、香料、及び常圧で沸点が70〜220℃のパラフィン系炭化水素を15〜90重量%含有する芳香剤組成物を、開閉可能な収納空間に揮散させることを特徴とする、開閉可能な収納空間における香気の揮散方法を提供する。
【0041】
本揮散方法において、芳香剤組成物の組成、開閉可能な収納空間、芳香剤組成物の使用方法等については、前述する「I.芳香剤組成物」の欄に記載の通りである。
【0042】
III.開閉可能な収納空間における香気の揮散性の調整方法
また、前述するように、香料に、常圧で沸点が70〜220℃のパラフィン系炭化水素を15〜90重量%となるように混合することによって、閉鎖された収納空間内で均質且つ一定の強さで香気を揮散できるように、香気の揮散性を調整することができる。そこで、更に、本発明は、常圧で沸点が70〜220℃のパラフィン系炭化水素の配合割合が15〜90重量%となるように、香料及び該パラフィン系炭化水素を混合することを特徴とする、開閉可能な収納空間における香気の揮散性の調整方法を提供する。
【0043】
本調整方法において、使用される香料の種類、使用されるパラフィン系炭化水素の種類、これらの配合割合等については、前述する「I.芳香剤組成物」の欄に記載の通りである。
【実施例】
【0044】
以下、実施例等を挙げて、本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
試験例1 引き出し内での香料の揮散特性の検討
表1に示す組成の芳香剤組成物を調製し、引き出し内での香料の揮散特性を検討した。
【0046】
【表1】
【0047】
具体的には、表1に示す組成の芳香剤組成物20gを、40ml容の容器(開口部の面積:約1cm)に入れた。次に、容器内の芳香剤組成物を吸い上げるための吸上部と、容器外に配置され吸い上げた芳香剤組成物を容器外に揮散させるための揮散部とを有する吸上揮散部材を、芳香剤組成物が入れられた容器に差し込んだ。なお、吸上揮散部材としてパルプ及びレーヨン材から構成されているものを使用した。斯くして調製した、芳香剤組成物が揮散可能になった容器を、引き出し(木製、50×40×8.5cm)に設置して、引き出しを完全に閉めて、引き出し内で芳香剤組成物の揮散を開始させた。芳香剤組成物の揮散開始20分後、開始4日後、及び開始7日後に、引き出しを開いて、6名のパネラーにより嗅知される香気を以下の基準に従って判定した。なお、試験中、芳香剤組成物の揮散開始20分後、開始4日後、及び開始7日後以外は、引き出しを閉めた状態を維持し、引き出しの開閉は行わなかった。
<評価基準>
1点:香気が弱く嗅知される
2点:香気がやや弱く嗅知される
3点:香気がちょうど良く嗅知される
4点:香気がやや強く嗅知される
5点:香気が強く嗅知される
【0048】
更に、揮散開始時、開始4日後、及び開始7日後に、容器内に残っている芳香剤組成物中の香料の濃度をガスクロマトグラフィーを用いて測定した。
【0049】
嗅知される香気について評価した結果を表2に、また芳香剤組成物中の香料の濃度を測定した結果を図1に示す。なお、図1には、芳香剤組成物に関する香料の濃度の測定結果の代表例として、実施例1、3及び4の芳香剤組成物に関する結果を示す。この結果から、実施例1−5の芳香剤組成物は、揮散開始時から開始7日目に亘って、嗅知される香気が均質に維持されていることが確認された。また、芳香剤組成物中の香料の濃度の測定結果からも、香料濃度がほぼ一定であり、引き出しの開閉を繰り返しても、引き出し内に均質で一定の強さの香気を満たすことが可能であることが明らかとなった。
【0050】
【表2】
【0051】
参考試験例1 室内空間での香料の揮散特性の検討
表1に示す組成の芳香剤組成物を上記試験例1と同様に、容器に入れて揮散可能な状態にして、これを室内に静置し、芳香剤組成物の揮散を開始させた。芳香剤組成物の揮散開始前、開始4日後、及び開始7日後に、芳香剤組成物が入った容器をそのまま、庫内を22℃、無風無臭に近い状態に保ったステンレス製庫(容積:1000L)の中に移動させ、20分間静置した後に、上記試験例1と同様の方法で嗅知される香気を判定した。更に、揮散開始前、開始4日後、及び開始7日後に、芳香剤組成物中の香料の濃度を、上記試験例1と同様の方法で測定した。
【0052】
嗅知される香気について評価した結果を表3に、また芳香剤組成物中の香料の濃度を測定した結果を図2に示す。なお、表3には、嗅知される香気の判定結果の代表例として、実施例1及び3の芳香剤組成物に関する結果を示す。実施例2、4及び5について、嗅知される香気の判定結果は省略するが、実施例1及び3と同様の傾向が認められた。また、図2には、芳香剤組成物に関する香料の濃度の測定結果の代表例として、実施例1、3及び4の芳香剤組成物に関する結果を示す。実施例2及び5について、芳香剤組成物に関する香料の濃度の測定結果は省略するが、実施例1、3及び4と同様の傾向が認められた。
【0053】
これらの結果から、実施例1−5の芳香剤組成物は、室内空間に設置されると、嗅知される香気が経時的に不均一になり、香料と溶媒の濃度も経時的に変動する傾向があることが分かった。
【0054】
【表3】
【0055】
以上の結果から、実施例1−5の芳香剤組成物は、通常の室内空間での使用に比し、引き出し等の閉鎖収納空間での使用に適していることが明らかとなった。
【0056】
参考試験例2 他の溶媒を使用した場合の香料の揮散特性の検討
常圧で沸点が70〜220℃のパラフィン系炭化水素以外の溶媒、或いは10重量%の沸点が179〜188℃のパラフィン系炭化水素を使用して芳香剤組成物を調製し、引き出し内での香料の揮散特性を検討した。具体的には、表4に示す組成の芳香剤組成物を調製し、これを上記試験例1と同様の方法で、引き出しに設置して揮散を開始させた。芳香剤組成物の揮散開始20分後、開始4日後、及び開始7日後に、引き出しを開き、上記試験例1と同様の方法で、嗅知される香気を判定した。
【0057】
【表4】
【0058】
この結果、揮散開始20分後と開始7日後では、嗅知される香気の強さに明らかな変動が認められ、嗅知される香気が経時的に不均一になることが確認された。
【0059】
以上の結果から、常圧で沸点が70〜220℃のパラフィン系炭化水素を15〜90重量%、特に20〜70重量%の濃度として、香料(10〜85重量%、特に30〜80重量%)と混合することによって、引き出し等の収納空間で香気を均質且つ一定の強さで保持させることが可能になるが、他の溶媒を使用した場合では、引き出し等の収納空間において、香気を経時的に均一に保つことができず、良好な香気に満ちた快適な空間の創出ができないことが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1図1には、実施例1、3及び4の芳香剤組成物を引き出し内で揮散させた後に、香料の濃度を測定した結果を示す。図1中、上段の図には実施例1の芳香剤組成物の結果、中段の図には実施例3の芳香剤組成物の結果、及び下段の図には実施例4の芳香剤組成物の結果を示す。
図2図2には、実施例1、3及び4の芳香剤組成物を室内空間で揮散させた後に、香料の濃度を測定した結果を示す。図2中、上段の図には実施例1の芳香剤組成物の結果、中段の図には実施例3の芳香剤組成物の結果、及び下段の図には実施例4の芳香剤組成物の結果を示す。
図1
図2