(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被加工物を保持するチャックテーブルと、支持部に保持されかつ該チャックテーブルに保持された該被加工物を加工するための加工手段と、該加工手段および該チャックテーブルを制御する制御手段とを備える加工装置であって、
該チャックテーブルは、該被加工物を保持する保持部と、該保持部の外側に設置されたチャックテーブルを識別するための識別マークとを備え、
該加工装置は、さらに、該識別マークを検出しかつ前記支持部に取り付けられた検出手段と、チャックテーブルの識別マークと該チャックテーブルが保持することができる被加工物との対応関係に関する情報を該被加工物ごとに記録する記録手段と、警告を発生する警告手段とを備え、
該制御手段は、加工動作開始前に該検出手段により検出された該チャックテーブルの該識別マークと加工動作を開始しようとする該被加工物とが該対応関係を具備するか否かを判断し、該対応関係を具備しない場合には該警告手段に警告を発生させることを特徴とする加工装置。
該被加工物は、デバイスが複数形成されるデバイス部と、該デバイス部の外周にリング状に形成される補強部とを有し、該補強部が該デバイス部に対して該デバイスが形成された側と反対側に突出して形成され、該補強部により形成される円形凹部の内径が異なる複数のウエーハであり、
該チャックテーブルは、該円形凹部に挿入され、該被加工物を吸引することで保持する吸着部を有し、
該吸着部の外径は、該円形凹部の内径に対応して設定されていることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0011】
図1は、実施形態に係る加工装置の構成例を示す図である。
図2は、被加工物およびチャックテーブルを示す図である。
図3は、対応関係情報を示す図である。なお、
図2における被加工物は、軸方向における断面を示している。
【0012】
本実施形態に係る加工装置は、複数種類の各被加工物をそれぞれ保持することができる複数のチャックテーブルから加工対象となる被加工物に応じたチャックテーブルを取り付けることで、複数種類の被加工物を加工することができるものである。また、加工装置は、切削ブレードを有する加工手段により被加工物を分割予定ラインに沿って切削し後述する複数のデバイスをそれぞれ小片化するための分割加工、あるいは被加工物をリング状に切削し、後述する補強部を切除するリング加工などにより加工するものである。
図1に示すように、加工装置1は、被加工物Wを加工するものであり、チャックテーブル10と、加工手段20と、検出手段30と、制御手段100と、記録手段110と、警告手段120とを含んで構成されている。なお、本実施形態に係る加工装置1は、さらにX軸移動手段40と、Y軸移動手段50と、Z軸移動手段60と、カセットエレベータ70、仮置き手段80と、洗浄・乾燥手段90とを含んで構成されている。
【0013】
被加工物Wは、加工装置1により加工される加工対象である。被加工物Wは、シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とするウエーハである。また、被加工物Wは、
図2に示すように、デバイスw1が複数形成されるデバイス部w2と、デバイス部w2の外周にリング状に形成される補強部w3とを有する。補強部w3は、デバイス部w2に対してデバイスw1が形成されているデバイス側と反対側に突出して形成されている。つまり、本実施形態に係る加工装置1が加工する被加工物Wは、補強部w3によりデバイス側と反対側に円形凹部w4が形成されているウエーハである。また、加工装置1は、上記円形凹部w4の内径dが異なる複数のウエーハを被加工物Wとするものである。例えば、加工装置1が被加工物Wとして3種類の被加工物WA〜WCを加工対象とする場合は、被加工物WAの上記内径がd1であり、被加工物WBの内径がd2であり、被加工物WCの内径がd3であり、d1〜d3はそれぞれ異なり、d1>d2>d3の関係を有する値とする。なお、被加工物W(以下、被加工物Wには、3種類の被加工物WA〜WCが含まれるものとする)は、デバイス側と反対側の面がダイシングテープTに貼着され、被加工物Wに貼着されたダイシングテープTがフレームFに貼着されることで、フレームFに固定される。
【0014】
チャックテーブル10は、被加工物Wを保持するものである。チャックテーブル10は、
図1に示すように、保持部11と、支持部12と、識別マーク13とを有する。
【0015】
保持部11は、本実施形態では、被加工物Wの円形凹部w4に挿入され、被加工物Wを吸引することで保持するものである。保持部11は、吸着部11aと基部11bとを有する。吸着部11aは、ポーラスセラミック等から形成された円盤形状であり、
図2に示すように、基部11bに形成された図示しない円形凹部に挿入され、一部が基部11bから外部に突出するように取り付けられている。基部11bは、吸着部11aを支持するとともに、吸着部11aに保持された被加工物Wの補強部w3を支持するものである。ここで、吸着部11aの外径Dは、円形凹部w4の内径dに基づいて設定されている。具体的には、外径Dは、内径dよりも小さいが、チャックテーブル10に保持された被加工物Wにリング加工を行う場合に、補強部w3をリング状に切削した際にデバイス部w2の外周端部となる部分を十分に支持することができる大きさである。基部11bは、吸着部11aの内部に負圧を導入する図示しない真空吸引経路が形成されている。真空吸引経路は、図示しない真空吸引源と接続されている。
【0016】
支持部12は、基部11bを固定するものである。支持部12は、SUS等から形成されたものであり、後述するテーブル移動基台2に図示は省略するが着脱機構により着脱自在に取り付けられている。つまり、チャックテーブル10は、テーブル移動基台2に着脱自在に取り付けられている。チャックテーブル10は、真空吸引源からの負圧が真空吸引経路を介して保持部11に導入される。保持部11に導入された負圧は、吸着部11aと保持部11に載置された被加工物Wとの間に、吸着部11aの被加工物Wと対向する面から導入され、被加工物Wに対する吸引力を発生し、被加工物Wを保持する。なお、真空吸引源は、制御手段100と接続されており、チャックテーブル10による被加工物Wの吸引保持が制御手段100により制御される。
【0017】
ここで、本実施形態では、被加工物WA〜WCをそれぞれ保持することができるチャックテーブル10として、3種類のチャックテーブル10A〜10Cを加工装置1に取り付けることができる。各チャックテーブル10A〜10Cは、吸着部11aの外径Dが被加工物Wの円形凹部w4の内径d1〜d3にそれぞれ対応して設定されている。チャックテーブル10Aの上記外径が被加工物WAの上記内径d1に対応したD1であり、チャックテーブル10Bの外径が被加工物WBの内径d2に対応したD2であり、チャックテーブル10Cの外径が被加工物WCの内径d3に対応したD3であり、外径D1〜D3はそれぞれ異なり、D1>D2>D3の関係を有する値とする。つまり、各チャックテーブル10A〜10Cは、各被加工物WA〜WCの円形凹部w4の内径d1〜d3に対応した吸着部11aをそれぞれ有する。
【0018】
識別マーク13は、チャックテーブル10(以下、チャックテーブル10には、3種類のチャックテーブル10A〜10Cが含まれるものとする)を識別するためのマークである。識別マーク13は、
図1に示すように、保持部11の外側に設置されている。識別マーク13は、本実施形態では、各チャックテーブル10A〜10Cの支持部12に形成された貫通穴である。例えば、チャックテーブル10Aには識別マーク13Aとして1つの貫通穴が形成され、チャックテーブル10Bには識別マーク13Bとして2つの貫通穴が形成され、チャックテーブル10Cには識別マーク13Cとして3つの貫通穴が形成されている。つまり、識別マーク13A〜13Cは、チャックテーブル10A〜10Cがそれぞれ保持することができる被加工物WA〜WCにそれぞれ対応したものである。なお、貫通穴の数は、上記に限定されるものではなく、チャックテーブル10A〜10Cのいずれかが0であっても良い。
【0019】
加工手段20は、チャックテーブル10に保持された被加工物Wを加工するものである。加工手段20は、切削ブレード21により被加工物Wを切削するものである。切削ブレード21は、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。切削ブレード21は、スピンドル22に着脱自在に装着される。スピンドル22は、円筒形状のハウジング23に回転自在に支持されている。また、スピンドル22は、ハウジング23に収納されている図示しないブレード駆動源に連結されている。切削ブレード21は、ブレード駆動源により発生した回転力により回転駆動することとなる。
【0020】
検出手段30は、チャックテーブル10の識別マーク13(以下、識別マーク13には、3種類の識別マーク13A〜13Cが含まれるものとする)を検出するものである。検出手段30は、チャックテーブル10および加工手段20が、加工装置1が加工動作を開始する前の基準位置に位置した状態で、識別マーク13とZ軸方向において対向するように、加工手段20が支持されている支持部4に取り付けられている。検出手段30は、本実施形態では、反射センサであり、チャックテーブル10に照射された光が支持部12の検出手段30と対向する側の表面で反射した際の反射量を出力値Xとして出力するものである。検出手段30は、光を識別マーク13に向けて照射する図示しない光源と、光源から照射された光の反射光を受光する受光素子とを有する。各チャックテーブル10A〜10Cの識別マーク13A〜13Cは、穴の数が異なるため、光源から照射された光の一部が穴を通過することとなり、チャックテーブル10A〜10Cごとに反射量が異なる。例えば、チャックテーブル10Aの識別マーク13Aを検出した場合に出力値XAとなり、チャックテーブル10Bの識別マーク13Bを検出した場合に出力値XBとなり、チャックテーブル10Cの識別マーク13Cを検出した場合に出力値XCとなる。出力値XA〜XCは、識別マーク13A〜13Cの順で貫通穴の数が増加するので、XA<XB<XCの関係を有する。なお、検出手段30は、制御手段100と接続されており、出力値Xが制御手段100に出力される。
【0021】
X軸移動手段40は、切削ブレード21とチャックテーブル10に保持された被加工物WとをX軸方向において相対移動させることで、被加工物Wに対する加工送りを実現するものである。X軸移動手段40は、本実施形態では、切削ブレード21に対して保持された被加工物WをX軸方向に相対移動させる。X軸移動手段40は、テーブル移動基台2を介して、テーブル移動基台2に取り付けられているチャックテーブル10を加工装置本体3に対してX軸方向に移動させる。X軸移動手段40は、図示しないX軸ボールねじと、図示しないX軸パルスモータと、図示しない一対のX軸ガイドレールとを含んで構成されている。X軸ボールねじは、加工装置本体3においてX軸方向に配設されており、テーブル移動基台2の下部に設けられた図示しないナットと螺合している。X軸パルスモータは、X軸ボールねじの一端に連結されている。一対のX軸ガイドレールは、加工装置本体3においてX軸ボールねじと平行に形成され、テーブル移動基台2の下部に設けられた図示しないレール受け部を加工装置本体3に対してX軸方向に沿って移動できるように案内するものである。X軸移動手段40は、X軸パルスモータにより発生した回転力によりX軸ボールねじを回転駆動させることで、テーブル移動基台2を一対のX軸ガイドレールによりガイドしつつX軸方向に移動させることができる。
【0022】
ここで、テーブル移動基台2は、加工装置本体3においてZ軸周りに回転自在に支持されている。テーブル移動基台2は、加工装置本体3に収納されている図示しないZ軸周り駆動源に連結されている。テーブル移動基台2は、Z軸周り駆動源により発生した回転力により任意の角度、例えば90度回転や連続回転することができる。従って、テーブル移動基台2に取り付けられているチャックテーブル10は、切削ブレード21に対してZ軸周りに任意の角度回転や連続回転などの回転駆動することができる。
【0023】
Y軸移動手段50は、切削ブレード21とチャックテーブル10に保持された被加工物WとをY軸方向において相対移動させることで、被加工物Wに対する割り出し送りを実現するものである。Y軸移動手段50は、本実施形態では、保持された被加工物Wに対して切削ブレード21をY軸方向に相対移動させる。Y軸移動手段50は、支持部4を介して加工手段20が支持されている壁部5を加工装置本体3に対してY軸方向に移動させる。Y軸移動手段50は、図示しないY軸ボールねじと、Y軸パルスモータ51と、図示しない一対のY軸ガイドレールとを含んで構成されている。Y軸ボールねじは、加工装置本体3においてY軸方向に配設されており、壁部5と一体に形成されたブレード移動基台6の内部に設けられた図示しないナットと螺合している。Y軸パルスモータ51は、Y軸ボールねじの一端に連結されている。一対のY軸ガイドレールは、加工装置本体3においてY軸ボールねじと平行に形成され、ブレード移動基台6の下部に設けられた図示しないレール受け部を加工装置本体3に対してY軸方向に沿って移動できるように案内するものである。Y軸移動手段50は、Y軸パルスモータ51により発生した回転力によりY軸ボールねじを回転駆動させることで、ブレード移動基台6を一対のY軸ガイドレールによりガイドしつつY軸方向に移動させることができる。
【0024】
Z軸移動手段60は、切削ブレード21とチャックテーブル10に保持された被加工物WとをZ軸方向において相対移動させることで、被加工物Wに対する切り込み量の制御を実現するものである。Z軸移動手段60は、本実施形態では、保持された被加工物Wに対して切削ブレード21をZ軸方向に相対移動させる。Z軸移動手段60は、支持部4を壁部5に対してZ軸方向に移動させる。Z軸移動手段60は、Z軸ボールねじ61と、Z軸パルスモータ62と、一対のZ軸ガイドレール63とを含んで構成されている。Z軸ボールねじ61は、壁部5においてZ軸方向に配設されており、支持部4の内部に設けられた図示しないナットと螺合している。Z軸パルスモータ62は、Z軸ボールねじ61の一端に連結されている。一対のZ軸ガイドレール63は、壁部5においてZ軸ボールねじ61と平行に形成され、支持部4の壁部5と対向する部分に設けられた図示しないレール受け部を壁部5に対してZ軸方向に沿って移動できるように案内するものである。Z軸移動手段60は、Z軸パルスモータ62により発生した回転力によりZ軸ボールねじ61を回転駆動させることで、支持部4を一対のZ軸ガイドレール63によりガイドしつつZ軸方向に移動させることができる。
【0025】
カセットエレベータ70は、加工装置1による加工動作において加工対象となる複数の被加工物Wを収納するものである。また、本実施形態では、カセットエレベータ70は、加工後の被加工物Wを収納するものでもある。カセットエレベータ70は、被加工物Wを1枚ずつ収納する収納部がZ軸方向に複数形成されており、一度に複数の被加工物Wを収納することができる。カセットエレベータ70は、加工装置本体3の内部に形成された空間部をZ軸方向において昇降自在に構成されている。カセットエレベータ70は、加工装置本体3上で、後述する搬出入手段130による収納部に収納された被加工物Wの搬出、および加工後の被加工物Wの搬入を行うことができる搬出入位置に位置するように、図示しない昇降駆動源により昇降動作を行う。
【0026】
仮置き手段80は、一時的に被加工物Wが載置されるものである。仮置き手段80は、一対のレール81を有し、加工前の被加工物Wをチャックテーブル10に搬送する際、あるいは洗浄・乾燥後の被加工物Wをカセットエレベータ70に搬入する際に、被加工物Wが一対のレール81上に載置される。被加工物Wをカセットエレベータ70から仮置き手段80に搬出、あるいは仮置き手段80からカセットエレベータ70に搬入する場合は、搬出入手段130により行われる。ここで、搬送手段130は、カセットエレベータ70と仮置き手段80との間を移動可能に配設されており、被加工物Wをカセットエレベータ70、仮置き手段80の間で移動することができるものである。なお、仮置き手段80に載置された被加工物Wは図示しない搬送手段によりチャックテーブル10に搬送される。
【0027】
洗浄・乾燥手段90は、加工手段20による加工後の被加工物Wを洗浄し、洗浄後の被加工物Wを乾燥させるものである。洗浄・乾燥手段90は、被加工物Wが載置されたスピンナテーブル91を回転させた状態で、被加工物Wの洗浄・乾燥を行う。スピンナテーブル91は、加工装置本体3に収納されているスピンナテーブル駆動源と連結されている。洗浄・乾燥手段90は、スピンナテーブル91に載置された被加工物Wに対して洗浄液を噴射する図示しない洗浄液噴射装置と、洗浄液が噴射された被加工物Wに対して気体を噴射する図示しない気体噴射装置とを有する。洗浄・乾燥手段90は、加工後の被加工物Wが、チャックテーブル10から図示しない搬送手段によってスピンナテーブル91に載置されると、スピンナテーブル駆動源が発生する回転力により、被加工物Wが回転し、洗浄液噴射装置に より回転している被加工物Wに洗浄液を噴射することで洗浄し、気体噴射装置により洗浄された被加工物Wに気体を噴射して乾燥する。なお、洗浄・乾燥が終了した被加工物Wは、図示しない搬送手段により仮置き手段80に搬送され、搬出入手段130によりカセットエレベータ70の収納部に収納される。
【0028】
制御手段100は、加工装置1による加工動作を制御するものである。制御手段100は、真空供給源、ブレード駆動源、X軸パルスモータ、Z軸周り駆動源、Y軸パルスモータ51、Z軸パルスモータ62、昇降駆動源、スピンナテーブル駆動源、洗浄液噴射装置、気体噴射装置などに接続されている。制御手段100は、チャックテーブル10による被加工物Wの保持、切削ブレード21の回転駆動、チャックテーブル10のX軸方向移動量、Z軸周りの回転角度・回転速度、切削ブレード21のY軸方向移動量、Z軸方向移動量、カセットエレベータ70の昇降動作、洗浄・乾燥手段90による洗浄・乾燥動作などの制御を行うことで加工動作を制御する。また、制御手段100は、チャックテーブル10の識別マーク13と加工動作を開始しようとする被加工物Wとが対応関係を具備するか否かを判断するものである。制御手段100は、加工動作開始前に検出手段30から出力された出力値Xと、記録手段110に格納されている後述する対応関係情報と、オペレータが入力した加工内容情報とに基づいて対応関係を具備するか否かを判断する。また、制御手段100は、対応関係を具備しないと判断すると警告手段120に警告を発生させるものである。なお、制御手段100は、例えばCPU等で構成された演算処理装置やROM、RAM等を備える図示しないマイクロプロセッサを主体として構成されており、加工動作の状態を表示する表示手段や、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる操作手段と接続されている。
【0029】
記録手段110は、加工内容情報や対応関係情報を記録するものである。加工内容情報は、オペレータが操作手段により入力された加工装置1による被加工物Wの加工内容の情報である。ここで、加工内容情報には、1種類の被加工物Wの加工枚数、異なる種類の被加工物Wの加工順番、各被加工物Wの加工動作の種類(分割加工、リング加工など)などが含まれる。対応関係情報は、チャックテーブル10の識別マーク13とチャックテーブル10が保持することができる被加工物Wとの対応関係の情報を含む。本実施形態では、
図3に示すように、対応関係情報は、被加工物と、識別マーク情報と、加工動作情報とが対応し、関連づけられている。被加工物は、加工対象となる被加工物Wである。識別マーク情報は、被加工物Wを保持することができるチャックテーブル10の識別マーク13に関する情報である。ここで、識別マーク情報は、検出手段30により検出されたチャックテーブル10の識別マーク13に応じて制御手段100に出力される出力値Xである。加工動作情報は、被加工物Wに応じた各加工動作に必要な情報Y(例えば、切削ブレード21の回転速度、移動速度、チャックテーブル10の移動速度、回転角度、回転速度など)である。例えば、同図に示すように、被加工物WAは、識別マーク情報XA(識別マーク13A)および加工動作情報YAに対応し、関連づけられている。被加工物WBは、識別マーク情報XB(識別マーク13B)および加工動作情報YBに対応し、関連づけられている。被加工物WCは、識別マーク情報XC(識別マーク13C)および加工動作情報YCに対応し、関連づけられている。つまり、記録手段110には、被加工物WA〜WCと識別マーク情報XA〜XCとの対応関係に関する情報として対応関係情報が被加工物WA〜WCごとに記録されている。
【0030】
警告手段120は、警告を発生するものである。警告手段120は、制御手段100が対応関係を具備しない、すなわちテーブル移動基台2に取り付けられたチャックテーブル10が加工動作を開始しようとする被加工物Wを保持することができないチャックテーブル10であると判断すると、オペレータに取り付けられたチャックテーブル10が加工動作を開始する被加工物Wに適していないことを認知させる。警告手段120は、発生された警告をオペレータの五感により認識することができるものであれば、いずれでもよく、例えば警告音、警告灯の点灯などでオペレータにむけて警告を発生するものである。
【0031】
次に、本実施形態に係る加工装置1の加工動作について説明する。
図4は、実施形態に係る加工装置の動作フローを示す図である。まず、オペレータは、加工内容情報を登録する(ステップST1)。ここでは、オペレータにより今回登録された加工装置1によって加工する加工内容が加工内容情報として記録手段110に記録される。
【0032】
次に、制御手段100は、加工動作の開始指示があるか否かを判断する(ステップST2)。ここでは、オペレータが制御手段100と接続されている図示しない操作手段により、加工装置1による加工動作の開始指示を行ったか否かを判断する。なお、オペレータは、加工動作の開始指示を行う前に、テーブル移動基台2にチャックテーブル10を取り付けている。
【0033】
次に、制御手段100は、加工動作の開始指示があると判断する(ステップST2肯定)と、チャックテーブル10と加工動作が開始しようとする被加工物Wとが対応関係を具備しているか否かを判断する(ステップST3)。ここでは、加工動作開始前に検出手段30によりチャックテーブル10の識別マーク13を検出し、検出した識別マーク13と加工動作を開始しようとする被加工物Wとが対応関係、すなわちテーブル移動基台2に取り付けられたチャックテーブル10が加工動作を開始しようとする被加工物Wを保持することができるチャックテーブルであるか否かを判断する。具体的には、検出手段30により検出されたチャックテーブル10の識別マーク13に応じて制御手段100に出力される出力値Xと、対応関係情報において、記録手段110に記録された加工内容情報の最初の加工対象である被加工物Wと対応関係にある識別マーク13に応じた出力値Xとが一致するか否かを判断する。なお、制御手段100は、加工動作の開始指示がないと判断する(ステップST2否定)と、加工動作の開始指示があるまで、ステップST2を繰り返す。
【0034】
次に、制御手段100は、対応関係を具備していると判断する(ステップST3肯定)と、加工動作を開始する(ステップST4)。例えば、チャックテーブル10Aがテーブル移動基台2に取り付けられており、加工内容情報の最初の加工対象が被加工物WAであると、検出手段30により検出されたチャックテーブル10Aの識別マーク13Aに応じて制御手段100に出力値XAが出力される。従って、制御手段100は、テーブル移動基台2に取り付けられたチャックテーブル10Aが加工動作を開始しようとする被加工物WAを保持することができるものであると判断し、加工内容情報の最初の加工対象である被加工物WAに対応した加工動作を開始する。具体的には、被加工物WAは、搬出入手段130によりカセットエレベータ70から仮置き手段80まで搬出され、仮置き手段80の一対のレール81上に載置された後、図示しない搬送手段により開始位置のチャックテーブル10Aまで搬送され、チャックテーブル10Aに保持される。保持された被加工物WAは、加工動作情報YAに基づいて分割加工あるいはリング加工が行われる。分割加工の場合は、分割予定ラインに沿って、切削ブレード21と被加工物WAとの相対位置を変化させながら、切削ブレード21により被加工物WAを切削し、各デバイスw1をダイス状にダイシングテープTを残して分割する。リング加工の場合は、切削ブレード21をデバイス部w2と補強部w3との間に位置させるとともに、その位置で被加工物WAを回転させることで、切削ブレード21により被加工物WAをリング状に切削し、デバイス部w2からダイシングテープTを残して補強部w3を切除する。加工が行われた被加工物WAは、図示しない図示しない搬送手段によりチャックテーブル10Aから洗浄・乾燥手段90まで搬送され、洗浄・乾燥手段90により洗浄・乾燥された後、図示しない搬送手段により仮置き手段80まで搬送され、搬出入手段130により仮置き手段80からカセットエレベータ70に搬入される。
【0035】
次に、制御手段100は、加工内容を完了したか否かを判断する(ステップST5)。ここでは、制御手段100は、記録手段110に記録されている加工内容情報に基づいてすべての被加工物Wに対する加工動作を行ったか否かを判断する。
【0036】
次に、制御手段100は、加工内容を完了したと判断する(ステップST5肯定)と、加工装置1による加工動作を終了する。
【0037】
また、制御手段100は、対応関係を具備していないと判断する(ステップST3否定)と、警告を発生する(ステップST6)。例えば、チャックテーブル10Bがテーブル移動基台2に取り付けられており、加工内容情報の最初の加工対象が被加工物WAであると、検出手段30により検出されたチャックテーブル10Bの識別マーク13Bに応じて制御手段100に出力値XBが出力される。従って、制御手段100は、テーブル移動基台2に取り付けられたチャックテーブル10Bが加工動作を開始しようとする被加工物WAを保持することができないものであると判断し、加工内容情報の最初の加工対象である被加工物WAに対応した加工動作を開始せず、警告手段120により警告をオペレータに向けて発生する。制御手段100は、警告を発生後、加工動作の開始指示があるか否かを再び判断(ステップST2)し、対応関係を具備しているか否かを判断する(ステップST3)。ここで、オペレータは、警告を認識したのち、テーブル移動基台2に取り付けられているチャックテーブル10Bをチャックテーブル10Aに変更し、加工動作の開始指示を行うので、加工動作の開始指示があると判断され(ステップST2肯定)、対応関係を具備していると判断(ステップST3肯定)されることとなり、加工動作が開始される(ステップST4)。
【0038】
また、制御手段100は、加工内容を完了していないと判断する(ステップST5否定)と、チャックテーブル10の変更の必要があるか否かを判断する(ステップST7)。ここでは、制御手段100は、加工内容情報に基づいて、次回の被加工物Wが、直前の加工動作で加工が行われた被加工物Wと種類が異なるか否かを判断する。つまり、異なる種類の被加工物Wの加工動作が開始される前に、事前にチャックテーブル10の変更をオペレータに認識させる必要があるか否かを判断する。
【0039】
次に、制御手段100は、チャックテーブル10の変更の必要があると判断する(ステップST7肯定)と、加工装置1を停止する(ステップST8)。ここでは、制御手段100は、オペレータにチャックテーブル10の変更を行わせるため、直前の被加工物Wの加工動作を行った後、次回の被加工物Wの加工動作を開始する前に加工装置1を停止する。制御手段100は、加工装置1の停止後、加工動作の開始指示があるか否かを再び判断(ステップST2)し、対応関係を具備しているか否かを判断する(ステップST3)。ここで、オペレータは、加工装置1の停止を認識したのち、例えばテーブル移動基台2に取り付けられているチャックテーブル10Aを次回の加工対象である被加工物WCを保持することができるチャックテーブル10Cに変更し、加工動作の開始指示を行うので、加工動作の開始指示があると判断され(ステップST2肯定)、対応関係を具備していると判断(ステップST3肯定)されることとなり、被加工物WCに対する加工動作が開始される(ステップST4)。なお、チャックテーブル10の変更の必要がないと判断する(ステップST7否定)と、加工内容を完了するまで、被加工物Wの加工動作を継続する。また、加工装置1の停止に伴い、オペレータにチャックテーブル10の変更を指示することが好ましい。チャックテーブル10の変更指示は、例えば上記警告手段120により警告を発生させても良い。
【0040】
以上のように、本実施形態に係る加工装置1は、予めチャックテーブル10の識別マーク13とチャックテーブル10が保持することができる被加工物Wとの対応関係情報が記録されており、加工動作開始前に取り付けられているチャックテーブル10の識別マーク13を検出手段30が検出し、被加工物Wの加工動作を開始する被加工物Wを保持することができるチャックテーブル10かどうかを判断し、対応関係を具備しない場合には警告手段120により警告を発生する。上述のように、チャックテーブル10A〜10Cでは、吸着部11aの外径D1〜D3が異なるのみであり、チャックテーブル10A〜10Cをテーブル移動基台2に取り付けるオペレータとしては、チャックテーブル10A〜10Cをそれぞれ明確に識別することが困難な場合がある。例えば、被加工物WBを加工する際にチャックテーブル10Aを取り付けた場合は、チャックテーブル10Aの吸着部11aの外径D1がチャックテーブル10Bの吸着部11aの外径D2よりも大きいため、上記吸着部11aを円形凹部w4に挿入する際に、被加工物WBに外力が加わり、被加工物WBが破損する虞がある。また、被加工物WAを加工する際にチャックテーブル10Bを取り付けた場合は、チャックテーブル10Bの吸着部11aの外径D2がチャックテーブル10Aの吸着部11aの外径D1よりも小さいため、吸着部11aを円形凹部w4に挿入することはできる。しかし、チャックテーブル10Bでは、チャックテーブル10Aと比較して、補強部w3と吸着部11aとの隙間が大きくなりすぎ、被加工物WBに対してリング加工を行う場合に、被加工物WBのデバイス部w2においてリング加工後の外周端部となる部分の支持が不十分となり、リング加工時に破損する虞がある。しかしながら、本発明に係る加工装置1は、加工動作の開始前に、被加工物Wの加工動作を開始する被加工物Wを保持することができるチャックテーブル10かどうかを判断する。従って、加工動作が開始された後に、被加工物Wを保持することができるチャックテーブル10かどうかを判断する場合と比較して、被加工物Wが保持することができないチャックテーブル10により保持される前に、加工動作が停止した状態で、警告を確実に発生することができる。これにより、被加工物Wと、被加工物Wを保持するチャックテーブル10のミスマッチを確実に防止することができるので、被加工物Wの破損を確実に抑制することができる。
【0041】
なお、上記実施形態では、検出手段30が光源を有していたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、テーブル移動基台2に光源が設けられており、識別マーク13に向けて光が照射され、検出手段30が識別マーク13である貫通穴を通過した光の光量に応じた出力値Xを制御手段100に出力するようにしても良い。
【0042】
また、上記実施形態では、各チャックテーブル10A〜10Cの識別マーク13A〜13Cを支持部12に形成された貫通穴の数(0も含む)で規定したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、貫通穴の位置、貫通穴の数及び位置、貫通穴ではなく閉塞穴の数、位置、深さなどであっても良い。さらに、識別マーク13としては、1次元バーコードやQRコードなどの2次元バーコードであっても良い。この場合は、検出手段30をこれらのバーコードを読むことができるバーコードリーダとする。
【0043】
また、上記実施形態では、被加工物Wとして、補強部w4により形成された円形凹部w4の内径dが異なる複数のウエーハについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、通常の円盤形状のウエーハに用いても良い。通常のウエーハにおいても、保持することができるチャックテーブル10と異なるチャックテーブル10により保持され、加工が行われると、加工精度が低下する虞がある。従って、被加工物Wを保持するチャックテーブル10のミスマッチを確実に防止することができることで、加工精度の低下を抑制することができる。
【0044】
また、上記実施形態では、対応関係情報が1種類の被加工物Wに対して1種類のチャックテーブル10であるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、1種類のチャックテーブルが2種類以上の被加工物Wを保持することができる場合は、対応関係情報を2種類の被加工物Wに対して1種類のチャックテーブル10としても良い。また、2種類のチャックテーブルのいずれもが1つの被加工物Wを保持することができる場合は、対応関係情報を1種類の被加工物Wに対して2種類のチャックテーブル10としても良い。