【実施例1】
【0014】
図2に、本発明に係る回路パターンの画像を取得する走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:以下、SEM)の構成概要ブロックを示す。電子光学系202は、電子線(一次電子)204を発生する電子銃203と、該電子銃203から発生した電子線204を収束させるコンデンサレンズ205と、収束された電子線204を偏向させる偏向器206と、二次電子を検出するためのExB偏向器207と、収束された電子線を半導体のウエハ201上に結像させる対物レンズ208とを備えて構成される。ウエハ201は、XYステージ217上に載置される。その結果、偏向器206および対物レンズ208は、ステージ217上に載置されたウエハ201上の任意の位置において電子線が焦点を結んで照射されるように、電子線の照射位置と絞りとを制御する。ところで、XYステージ217はウエハ201を移動させ、該ウエハ201の任意位置の画像撮像を可能にしている。そのため、XYステージ217により観察位置を変更することをステージシフト、偏向器206により電子線を偏向して観察位置を変更することをビームシフトと呼ぶ。一方、電子線が照射されたウエハ201からは、2次電子と反射電子が放出され、2次電子は二次電子検出器209により検出される。一方、反射電子は反射電子検出器210,211により検出される。なお、反射電子検出器210と211とは互いに異なる位置に設置されている。二次電子検出器209および反射電子検出器210,211で検出された2次電子および反射電子はA/D変換器212,213,214でデジタル信号に変換され、処理制御部215に入力されて画像メモリ252に格納され、CPU251や画像処理ハードウェアであるLSI253等で目的に応じた画像処理を行って回路パターンの形状評価が行われる。即ち、処理制御部215は、後述の撮像レシピ生成部225で作成された、パターンの形状評価手順を示す撮像レシピを基に形状評価ポイントを撮像するために、ステージコントローラ219や偏向制御部220に対して制御信号を送り、さらにウエハ201上の観察画像に対し各種画像処理を行う等の処理及び制御を行って回路パターンの形状評価を行う。
【0015】
なお、処理制御部215は、光学顕微鏡(図示せず)等でウエハ201上のグローバルアライメントマークを観察することによりウエハ201の原点ずれやウエハの回転を補正するグローバルアライメント制御も含めてステージ217の位置及び移動を制御するステージコントローラ219と、偏向器206を制御して電子線のビームシフト(ビーム偏向)を制御する偏向制御部220と、対物レンズ208を制御してフォーカス制御するフォーカス制御部221とに接続される。さらに、処理制御部215は、入力手段を備えたディスプレイ216と接続してユーザに対して画像や形状評価結果等を表示するGUI(Graphical User Interface)等の機能を有することになる。なお、反射電子像の検出器を2つ備えた実施例を示したが、前記反射電子像の検出器の数を増やすことも減らすことも可能である。また、処理制御部215における制御の一部又は全てを、CPUや画像の蓄積が可能なメモリを搭載した電子計算機等に割り振って処理・制御することも可能である。
【0016】
処理制御部215は、更に回路パターンの座標、該座標に相当する位置決め用の設計データのテンプレート及びSEM観察の撮像条件(撮像倍率や画質等を含む)の情報等を含む撮像レシピを作成する撮像レシピ生成部225とネットワークまたはバス等を介して接続される。撮像レシピ生成部225は、設計データを取得するために、EDA(Electric Design Automation)ツールなどの設計システム230とネットワーク等を介して接続される。撮像レシピ生成部225は、形状評価すべきウエハ上の撮影ポイントの情報から、設計データを利用して撮影レシピを作成するものであり、例えば特開2006−3517146号に開示されている撮影レシピ作成装置がこれに相当する。設計データから撮影レシピを作成する概念は古くから提案されているものであり、設計データから撮影レシピを生成する方法,装置についてこれを限定するものではない。撮影レシピの作成は一般的にCPU,メモリ等を搭載した電子計算機のソフトウェア処理やCPU,ASIC,FPGA,メモリ等を搭載したハードウェア処理で実行する。
【0017】
次に、ウエハ上の任意の形状評価ポイント(以下、EP)を観察するための撮像シーケンスについて
図22を用いて説明する。また、
図23に設計レイアウト2301上のEP2305に対するアドレッシングポイント(以下、AP)2303,オートフォーカスポイント(以下、FP)2302,スティグマ補正ポイントであるオートスティグマポイント(以下、SP)2306,ブライトネス,コントラスト調整ポイントであるブライトネス,コントラストポイント(以下、BP)2304、の設定例を示した図である。撮像シーケンスにおける撮像箇所ならびに撮像条件(撮像倍率や画質等を含む)、更にEPにおける形状評価条件は設計データと形状評価ポイントの情報に基づき、撮像レシピとして撮像レシピ生成部225で作成されて例えば記憶装置223に記憶されて管理される。
【0018】
まず、ウエハ201をステージ217上に取り付ける(2201)。次に、光学顕微鏡(図示せず)等で試料上のグローバルアライメントマークを観察することにより処理制御部215は試料の原点ずれや回転ずれを算出し、これらのずれ量を基にステージコントローラ219を介してステージ217を制御することによって補正する(2202)。次に、処理制御部215は、ステージ217を移動して、撮像レシピ生成部225で作成された撮像ポイントの座標及び撮像条件に従って撮像位置をAPに移動してEP撮像時よりも低倍の撮像条件で撮像する(2203)。ここでAPについて説明を加えておく。直接EPを観測しようとした場合、ステージの位置決め精度等の理由により観察箇所がSEMの視野からずれてしまう問題を解決するため、一旦位置決め用として予め撮像レシピ生成部225で作成されて記憶装置223に登録された座標が既知であるAPを一旦観察し、処理制御部215は予め撮像レシピ生成部225で作成されて記憶装置223に登録されたAPにおける設計データテンプレートと前記観察したAPのSEM画像とのマッチングを行うことによって設計データテンプレートの中心座標と実際にAPを観測した際の中心座標とのずれベクトルを検出する。次に、処理制御部215は、設計データテンプレートの座標とEPの座標との相対ベクトルから上記検出されたずれベクトルを差し引いた分だけ、偏向制御部220を介して偏向器206を制御してビームシフト(ビームの入射方向を傾けて照射位置を変更)をさせて、撮像位置を移動してEPを観察することにより、高い座標精度でEPを撮像することができることになる(一般的にビームシフトの位置決め精度はステージの位置決め精度よりも高い)。次に、処理制御部215の制御及び処理に基づいてビームシフトにより撮像位置をFPに移動して撮像してオートフォーカスのパラメータを求め、該求められたパラメータに基づいてオートフォーカスを行う(2204)。
【0019】
次に、処理制御部215の制御及び処理に基づいて、ビームシフトにより撮像位置をSPに移動して撮像して非点収差補正のパラメータを求め、該求められたパラメータに基づいて自動非点収差補正(オートスティグマ補正)を行う(2205)。
【0020】
次に、処理制御部215の制御及び処理に基づいて、ビームシフトにより撮像位置をBPに移動して撮像してブライトネス&コントラスト調整のパラメータを求め、該求められたパラメータに基づいて自動ブライトネス&コントラスト調整を行う(2206)。なお、前述したステップ2203,2204,2205,2206におけるアドレッシング,オートフォーカス,オートスティグマ,オートブライトネス&コントラストは場合によって、一部あるいは全てが省略される、あるいは2203,2204,2205,2206の順番が任意に入れ替わる、あるいはAP,FP,SP,BP、の座標で重複するものがある(例えばオートフォーカス,オートスティグマを同一箇所で行う)等のバリエーションがある。最後に、処理制御部215の制御及び処理に基づいてビームシフトにより撮像
位置をEPに移動して撮像し、記憶装置223に登録されたEPにおける設計データテンプレートと前記観察したEPのSEM画像とのマッチングを行って、SEM画像内における形状評価対象ポイントのシフト量を算出する(2207)。
【0021】
次に、EPのSEM画像や、EPマッチングによるシフト量を利用して本発明のパターンの形状評価を行う。パターンの形状評価では、最初にウエハ上の製造ポイントもしくはウエハが異なる複数のパターンの撮影画像からプロセス変動によるパターンの変形や、画像に含まれたノイズの影響によるパターンの形状の歪みや、個々のパターンが有するラフネスなどの歪みを抑えた参照パターンを生成する。次に、参照パターンと評価対象パターンの形状を比較して、参照パターンの形状に対する評価対象パターンの形状評価値を生成する。なお、上記複数のパターンは設計データ上では形状が等価な複数のパターンを示している。
【0022】
複数のパターンとは、例えば以下(A)〜(D)のような条件のパターンである。なお、
図3は、これらA〜Dの関係を示した図であり、2枚のウエハ301,305,ウエハ301内のショットエリア302,ショットエリア内のチップ303、チップ内のパターン304の関係を示した図である。ショットとは、一度に転写できる露光エリアであり、このショット内に複数のチップが存在している。
【0023】
(A)ウエハが異なる複数のパターン(例306)。
【0024】
(B)ショットが異なる複数のパターン(例307)。
【0025】
(C)同一ショット内でチップが異なる複数のパターン(例308)。
【0026】
(D)同一チップ内で座標が異なる複数のパターン(例309)。
【0027】
なお、上記条件はあくまで一例であり、これらA〜Dが混在した複数のパターンを利用して参照パターンを生成してもよい。
【0028】
以下、本発明のパターン形状評価方法について詳細を説明する。
【0029】
図1は本発明に係るパターン形状評価方法のフローチャートを示したものであり、処理制御部215のCPU251や画像メモリ252等を利用したソフトウェア処理で実行する。ただし、電子光学系202からの画像と撮影レシピ生成部225からの設計データテンプレートをLANやバス経由、また携帯型のメモリ、ハードディスクなどの記憶媒体経由で入力可能な電子計算機のCPU,メモリ等を利用したソフトウェア処理でも実行することもできる。以下、各ステップについて詳細を説明する。
【0030】
最初に回路パターンの撮影画像を読み込む(101)。パターンの形状評価に用いる画像は、撮影レシピ生成部225で、上記A〜Dのような条件下にある、参照パターンの生成を目的とした複数のパターンと、評価対象パターンの画像を撮影するレシピを作成し、そのレシピで電子光学系202を制御することによって取得する。
【0031】
次に、画像から回路パターンの輪郭線を抽出する(102)。輪郭線の抽出は様々提案がされているが、例えば特開2006−66478号等で開示の手法や「R.Matsuoka、 New method of Contour based mask shape compiler、SPIE Proc 6730−21、2007.9.21」に開示された手法等が適用できる。SEMでパターンを撮影すると、
図4(a)のように、パターンの傾斜部や突起部が白帯状の像として画像化される。上記に開示した手法等を適用することによりこの白帯像401を
図4(b)のような線画の輪郭データ403として抽出することができる。画像の読み込み(101)と輪郭抽出(102)は参照パターン生成用の画像および評価対象パターンの全ての画像に対し実行する(103)。
【0032】
次に、参照パターン生成用の画像から抽出した複数の輪郭データを用いて参照パターンを生成する。参照パターンの生成には、プロセス変動によるパターン形状の変形や、パターン個々に生じたラフネス等によるパターンの歪みや、画像に含まれたノイズによる輪郭の歪みを抑制するために、より多くのパターンを利用することが望ましい。
〔輪郭の合成〕
参照パターンを生成する事前準備として、
図21(a)のように画像から抽出した複数の輪郭データ2101,2102を重ね合わせ、輪郭の合成像を生成する(104)。上述したようにステージの位置決め精度等の問題から、画像内におけるパターンの輪郭位置が輪郭データ毎に異なる場合は、画像内における輪郭の位置を考慮して輪郭データの重ね合わせを行う。重ね合わせ位置は、形状評価ポイントの特定に利用したEPのマッチング結果を利用することで自動的に特定できる。重ね合わせ位置を自動的に特定する方法について、
図5を用いて説明する。
図5(a)〜(c)は参照パターンの生成に用いる3枚の輪郭データを示している。これらはステージ位置精度等の問題で、画像内における輪郭位置が異なる。
図5(d)はマッチングに利用する設計データテンプレートである。EPマッチングにより、設計データテンプレートに対するそれぞれの画像(e)(f)(g)のシフト量501〜503が検出できる。このシフト量を参考に
図5(h)のように3つの輪郭データの重ね合わせ位置504を特定する。設計データと輪郭データの形状は異なるが、これらの形状差を吸収して高精度にマッチング位置を求め、シフト量を検出する手法は様々提案されおり、例えば特開2007−79982号で開示されている手法の適用より、シフト量を検出することができる。
【0033】
輪郭データの重ね合わせの処理フローを
図6に示す。最初に複数の輪郭データ(もしくは輪郭を抽出する前の画像)を読み込む(601)。次に、輪郭データ(もしくは輪郭を抽出する前の画像)と設計データテンプレートとのマッチングを行う(602)。マッチングによる結果から、それぞれの輪郭データと設計データテンプレートのシフト量を算出する(603)。次に、シフト量を基準とし、複数の輪郭データを重ね合わせた像を形成する(604)。輪郭合成像をメモリ等の書き込む(605)。
【0034】
また、一枚の画像内に重ね合わせの対象となるパターンが複数含まれている場合も、EPマッチングによるシフト量と、設計データから導いたパターンの間隔を利用することで、容易に重ね合わせることができる。
図7の処理概要図と
図8のフローチャートを用いて同一画像内の複数の輪郭データを合成する例を説明する。まず、輪郭データを読み込む(801)。次に設計データテンプレートと輪郭データ(もしくは輪郭を抽出する画像)のパターンマッチングを行う(802、EPマッチングに相当)。パターンマッチング結果より、シフト量(
図7(a)701)を算出する(803)。次に、シフト量701と設計データ上でのパターンの配置間隔から、輪郭データ上の輪郭合成点702〜704と、合成領域705〜707を決定する。次に輪郭合成点702〜704と合成領域705〜707に基づき、輪郭合成像を生成する805。
図7(b)は輪郭合成点702〜704を輪郭合成像の座標708に対応させ、合成領域705〜707の輪郭データを重ね合わせた像を示している。最後に輪郭合成像をメモリに書き込む(806)。なお、ユーザがディスプレイ216に接続された入力手段を介して輪郭合成点と合成領域を指定することも可能である。この場合、ディスプレイ216に輪郭データを表示し、入力手段で指定された輪郭合成点と合成領域をメモリに保存する。この輪郭合成点と合成領域を元に輪郭データの合成を行ってメモリに書き込む。
【0035】
輪郭合成像の例を
図12(a)に示す。プロセス変動やパターン個々のラフネス等によって評価対象パターンの形状がそれぞれ異なる場合、輪郭の重ね合わせによって、
図12(b)のようなパターン形状の分布(以下輪郭分布とする。)を持つ輪郭合成像が得られる。このような輪郭合成像から参照パターンを生成する(105)。
〔参照パターンの生成〕
輪郭合成像の輪郭の分布状態から所定の規則に基づき参照パターンを決定する。所定の規則とは、形状評価の目的によって変更されるべきものであり、これを限定したものではない。以下に輪郭合成像から参照パターンを生成する例を2つ説明する。
【0036】
1)輪郭分布の平均形状
輪郭分布の平均的なポイントを参照パターン化する。この参照パターンと評価対象パターンの形状を比較することにより、平均的なパターン形状に対する評価対象パターンの形状評価が可能になる。
図24(a)は、輪郭分布を示した図であり、輪郭分布の平均的なポイントを参照パターン(破線)化した例を示した図である。
図24(c)は、輪郭分布Q−Pの直線上における輪郭の数をグラフ化した図であり、Q−P間の輪郭分布における平均的な参照パターンのポイント2401を示している。
【0037】
輪郭分布の平均的なポイントを特定するためには、輪郭合成像を生成する際に輪郭が重なった数を輪郭合成像の画素値として保存しておく。更に、この輪郭合成像に対し、田村秀行著コンピュータ画像処理(以下、参考文献1とする)のP11平滑化と雑音除去の項にある移動平均フィルタ等を施すことにより、輪郭分布の平均的なポイントにピークを有する輪郭合成像が生成できる。最後に、輪郭分布内において連続したピーク位置を特定し、そのピーク位置を参照パターン(
図23(a)中破線)とする。
【0038】
2)輪郭分布枠の中心形状
輪郭分布の範囲枠の中心を参照パターン化する。この参照パターンと評価対象パターンの形状を比較することにより、評価対象パターンの形状変形範囲の中心に対する評価対象パターンの形状評価が可能になる。
図24(b)は、
図24(a)と同様の輪郭分布と輪郭分布枠の中心位置を参照パターン(実線)化した例を示した図であり、
図24(d)はQ−P間の直線上における輪郭線の数をグラフ化した図であり、Q−P間の輪郭分布枠2403,2404と、その輪郭分布枠2403,2404の中心位置に相当する参照パターンのポイント2402を示している。
【0039】
輪郭合成像から輪郭分布枠の中心を検出する方法についてフローチャートを
図10に示す。
【0040】
最初に輪郭合成像を読み込む(1001)。次に輪郭の塗りつぶしを行う1002。
図12(b)は
図12(a)のような輪郭合成像の輪郭分布を拡大した図である。このように輪郭分布内には、輪郭が存在するポイントと輪郭が存在しないポイントがある。塗りつぶしとは、輪郭間の領域の画素に輪郭と同様の値を書き込む処理である。例えば、輪郭合成像が二値データであり、輪郭が存在するポイントの画素値が「1」で輪郭が存在しないポイントが「0」の場合、参考文献1のP154「収縮と膨張」の項にあるようなモフォロジーフィルタ(膨張処理→収縮処理)による画像処理手法を適用することで、
図12(c)のように、輪郭にはさまれた領域の画素の値を全て「1」に変更することができる。
【0041】
次に、輪郭の塗りつぶし結果を用いて、輪郭分布の中心位置1203を検出する1103。中心位置の検出は、例えば参考文献1のP158の「細線化」の項にある細線化処理の適用により実現できる。細線化処理は、広範囲に分布したパターンの中心線を特定することを目的とした処理であり、塗りつぶされた輪郭分布を細線化することによって
図12(d)に示すような輪郭分布の中心位置1203を求めることができる。この輪郭分布の中心位置を参照パターンとし、メモリ等に書き込む1004。
【0042】
また、参照パターン位置を輪郭分布枠の中心位置ではなく、例えば、
図12(f)のように、輪郭分布の中心位置1203から外枠1202方向や内枠1201方向に数画素ずらしたポイント1213,1214にすることも可能である。このような参照パターンを生成する方法について、処理フローを
図11に示す。なお、1101〜1103は
図10に示した処理フロー1001〜1003と処理が等価なため、説明を省略する。
【0043】
輪郭分布の中心位置を特定した後、
図12(d)に示すような内枠1201と外枠1202を特定する1104。塗りつぶし後の輪郭の画素値が「1」で、それ以外の領域が「0」の輪郭分布像の場合、中心線1212に対し、画素値「0」から「1」に変化する部位を内枠1201,パターン形状の中心線1212に対し、「1」から「0」に変化する部位を外枠1202とする。輪郭分布像におけるパターン形状の中心線の位置は、
図12(f)に示すようなEPマッチングによる設計データ1211と輪郭データ(複数パターンのうちいずれか一つ)のシフト量と設計データの回路パターン形状の中心線1212を利用することで、特定できる。
図25を利用して設計データからパターン形状の中心線位置を求める方法を説明する。
【0044】
設計データは
図25(a)に示したように、パターンの閉図形を構成する複数の頂点座標データ2501の集合として設計システム230等から提供される。この頂点座標を直線で接続したものが設計データのパターンである。この直線で構成されたパターンを描画し、パターンの内部を
図25(b)のように塗りつぶした画像を作成する。例えば、設計データの直線と塗りつぶし領域の画素値を「1」、それ以外の領域を「0」とする。
【0045】
次に設計データのパターン内部を塗りつぶした画像に対し、前述した細線化処理を施すことで
図25(c)のような設計データのパターン形状の中心線位置を特定することができる。
【0046】
このように特定した設計データのパターン形状の中心線位置と、EPマッチングのシフト量から、輪郭分布像における中心線1212を特定することができ、中心線1212と画素値の切り替え位置の位置関係により、内枠1201と外枠1202を特定できる。
【0047】
パターン形状の中心位置を利用して、内枠1201,外枠1202を特定した後、輪郭分布の中心位置1203を基準とし、参照パターンの位置を特定する1105。「輪郭分布の中心位置に対して外枠方向にL画素のポイント」といった規定に基づき、参照パターンを特定する例を
図26を用いて説明する。
【0048】
最初に輪郭分布の中心位置1203のパターンに対し、上記で説明したモフォロジーフィルタ(膨張処理)を適用する。膨張処理はパターンの幅を拡張する処理である。輪郭分布の中心位置のパターンは1画素幅である。このパターンに膨張処理を1回施すことで、輪郭分布の中心位置の画素を中心とした3画素幅のパターンを生成することができる。
図26に膨張処理の例を示す。
図26は中心パターン2602と、輪郭分布の内枠2601,外枠2603を示した図である。中心パターン2602に対し膨張処理を1回施すと
図26(a)の拡大ウィンドウのように、中心パターン2602の両サイドが1画素拡張される。膨張処理で新たに追加された画素は、中心パターン2602から1画素離れたポイントに存在する画素である。このため、1回目の膨張処理で新たに追加された画素に中心パターンからの距離値「1」を書き込む。この膨張処理と距離値の書き込みを繰り返すことによって、拡大ウィンドウ
図26(b)のように輪郭分布の内枠2601と輪郭分布の外枠2603の間に存在する画素に中心パターンからの距離値を書き込むことができる。このようにして得られた輪郭分布の中心からの距離情報と、輪郭分布の内枠2601,外枠2603の関係を利用することにより、輪郭分布の中心から外枠方向にL画素のポイントを容易に特定できる。
【0049】
また、設計データのパターン形状に基づき、輪郭分布枠の中心位置を参照パターン化することも可能である。
図9はEPマッチングによるシフト量に基づき、設計データ900と輪郭分布の内枠905,外枠903を重ね合わせた図である。輪郭分布枠間の中心位置908は、設計データ900の中心線901に対し、法線方向(中心線の端点909,910は扇状)に引いた直線上にある、内枠905と直線の交点906と外枠903と直線の交点907の中点として求めればよい。最後に中点の分布から近似直線および近似曲線を求め、参照パターンを生成する。
【0050】
また、
図12(e)のように、カーソル1210の操作によってユーザがディスプレイ216に接続された入力手段を介して参照パターンの位置を決定させることもできる。このような場合、ディスプレイ216に輪郭分布像を表示することで、ユーザが輪郭分布像を確認しながら、参照パターンを決定することができる。
〔形状比較検査〕
次に輪郭合成像から生成した参照パターンと評価対象パターンの形状を比較し、参照パターンの形状に対する評価対象パターンの形状評価値を生成する106。形状評価値は、後述する評価対象パターンの良否判定に利用するデータである。
【0051】
処理フローを
図13に示す。最初に参照パターンを読み込む1301。続いて、評価対象パターンの輪郭データを読み込む1302。次に参照パターンを用いて、以下に例示するような手法により、参照パターンの形状に対する評価対象パターンの形状の評価値を求め1303、その形状評価値をメモリ等に書き込む1304。以下、
図14を利用して形状評価値を生成する3つの方法について説明するが、評価対象パターンの良否を判定できるような形状評価値の生成方法であればよいので、この生成方法に限定するものではない。
(1)パターンの間隔
図14(a)は、参照パターン1401と、評価対象パターン1402をEPマッチングのシフト量に基づき重ね合わせた像である。
【0052】
図14(b)は
図14(a)のような関係にある参照パターン1401と評価対象パターン1402の間隔を計測し、その間隔値を評価対象パターンの形状評価値とする例を示した図である。間隔の計測は、例えば、参照パターン上のポイント1409における参照パターンの法線方向に存在する評価対象パターンのポイント1410とその間隔1403を計測することで求めることができる。例えば参照パターン上のポイント1画素おきにこのような間隔計測を行うことで、参照パターンに対し、評価対象パターンの形状がどの程度変形しているのかを定量化できる。また、パターン間隔の平均や分散を求めて形状評価値とすることもできる。例えば、
図17(a)は、参照パターン1702とパターン1703の間隔L(n)(n:パターン1703を構成する画素数)を、計測する例を示した図である。間隔計測では、パターン1703を構成する画素、もしくはサブ画素単位で、間隔値が生成されるため、輪郭データ領域1701における間隔値L(n)が膨大となる。このため、間隔値L(n)から、間隔の平均(ΣL(n)/n))や間隔の分散(Σ(L(n)−ΣL(n)/n))^2/n)を求めることによって、形状評価値を単純化する。これにより、例えば、
図17(b)のようなパターン1704は、参照パターン1702の形状に対して全体的に膨張,収縮しているため、間隔分散値が小さく、間隔平均値が大きくなるといった傾向が形状評価値に表れる。また、
図17(c)のようなパターン1705は、参照パターン1702の形状に対して、局所的に歪みが発生しているため、間隔分散値が大きくなるといった傾向が形状評価値に表れる。このような間隔計測による形状評価値を
図15(a)のようなテーブル情報としてメモリ等に書き込む。
(2)形状変形許容範囲
図14(c)は
図14(a)のような関係にある参照パターン1401に形状変形の許容範囲を示すバンド1404を設定し、評価対象パターン1402のバンド内外判定結果を形状評価値とする例を示した図である。例えば、前述のモフォロジーフィルタによる膨張処理を参照パターンに適用し、形状変形を許容できる範囲までパターンを拡張する。これにより、参照パターン1401に対する形状変形許容範囲を示すバンド1404を生成できる。そのバンド1404と評価対象パターン1402をEPマッチングのシフト量に基づき重ね合わせ、評価対象パターン1402上の各ポイントがバンド1404の内部に存在するのか外部に存在するのかを判定する。この結果を形状評価値として
図15(b)のようなテーブル情報としてメモリ等に書き込む。
(3)パターンの面積
図14(d)は参照パターン1401が取り囲む領域1407と評価対象パターン1402が取り囲む領域1408を示した図である。これらの領域の面積は、パターンが取り囲む画素の数をカウントすることで求めることができる。この参照パターン1401に対する評価対象パターン1402の面積比を形状評価値としてメモリ等に書き込む。
〔良否判定〕
以上のように求めた形状評価値を利用して、パターンの良否判定を行う108。良否判定の処理フローを
図16に示す。最初にそれぞれの評価対象パターンの形状評価値を読み込む1601。次に形状評価値と、良品の形状情報を定義したデータ(規定値)と比較し、評価対象パターンの良否を判定する1602。全ての評価対象パターンに対して判定を行い1605、最後に評価結果をメモリ等に書き込む。また良品と判定されたパターンと、異常と判定されたパターンのウエハ上のポイントをユーザに分かりやすく提供するために、
図18のように、ウエハ1802上におけるパターンの位置と、良品の存在するエリア1801を示すウエハマップ画像を生成し、それをディスプレイに表示する。このようなウエハマップにより、ユーザは、プロセスの変動によってパターン形状の変形が大きくなるウエハ上のポイントを把握できることができる。
【0053】
形状評価値の判定方法は、生成した形状評価値によって異なる。前述した(1)〜(3)の形状比較値に対する判定方法を以下に示す。
(1)パターンの間隔
形状評価によって求めた参照パターンと評価対象パターンの間隔値と、参照パターンに対する良品パターンの間隔値の比較を行い、評価対象パターンとの間隔が、良品パターンの間隔以上の部位をパターンの異常部位とみなし、異常判定部位が存在する評価対象パターンを異常と判定する。また、形状評価値がパターン間隔の分散や平均の場合も同様に、閾値処理により、パターンの異常を判定する。
(2)形状変形許容範囲
評価対象パターンにパターンの形状変形許容範囲外のパターン部位が存在する場合、評価対象パターンを異常パターンと判定する。ただし、上述したように、画像から抽出した輪郭データにはノイズ情報が含まれており、ノイズによる輪郭の変形が原因となって、誤判定が発生する可能性がある。このため、パターンの形状変形許容範囲をはみ出したパターン部位が一定以上の場合に異常パターンと判定するような閾値判定により、画像に含まれたノイズの影響による異常パターンの誤検出を低減することができる。
(3)面積
参照パターンの領域1407の面積比がN以上、もしくはM以下(M<N)の評価対象パターンを異常なパターンとして判定する。
【0054】
以上説明したように、本発明によれば、電子デバイスの回路パターンの形状評価に用いる参照パターンを、複数の回路パターンの撮影画像から生成することにより、回路パターンの製造条件に適合し、かつ回路パターン個々の歪みを抑えた参照パターンを生成できる。この参照パターンと評価対象パターンの比較を行うことにより、形状評価パターンの形状評価を高精度に行うことができる。