(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ステップa)で出発物質として使用される式IIIの4-tert-ブチルトルエンが、式III及びIVの化合物の全質量に対して、2〜4重量%の含有量の式IVの3-tert-ブチルトルエンを有する、請求項1に記載の方法。
ステップb)の蒸留後に得られる式IX及びXのベンズアルデヒドの混合物が、式IX及びXの化合物の全質量に対して、0.1重量%未満の含有量の式Xのベンズアルデヒドを有する、請求項1又は2に記載の方法。
ステップd)又はe)の蒸留の後で得られる式I及びIIのプロパナールの混合物が、式I及びIIの化合物の全質量に対して、0.05重量%未満の含有量の式IIのプロパナールを有する、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
式Xのベンズアルデヒドが、室温で、化学変換によって、亜硫酸水素塩付加物、イミン、オキシム、セミカルバゾン誘導体、又はヒドラゾン誘導体の固体へと変換される、請求項9に記載の方法。
ステップi)において、式Xのベンズアルデヒドが、室温で、亜硫酸水素塩付加物、イミン、オキシム、セミカルバゾン誘導体、又はヒドラゾン誘導体の固体へと変換され、ステップii)において、ステップi)で形成されるヒドラゾン誘導体、セミカルバゾン誘導体、オキシム、イミン、又は亜硫酸水素塩付加物が、留出物の他の液体成分から取り除かれ、ステップiii)において、式Xのベンズアルデヒドが、ステップii)で取り除かれるヒドラゾン誘導体、セミカルバゾン誘導体、オキシム、イミン、又は亜硫酸水素塩付加物から遊離される、請求項12に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
前記目的は、式Iの2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール
【化6】
【0015】
(式I及びIIの化合物の全質量に対して、0.3重量%未満、好ましくは0.1重量%未満の含有量の式IIの2-メチル-3-(3-tert-ブチルフェニル)プロパナール
【化7】
【0016】
を有する)を製造するための方法であって、
出発物質として、式IIIの4-tert-ブチルトルエン
【化8】
【0017】
(式III及びIVの化合物の全質量に対して、最大でも5重量%、好ましくは0.01〜5重量%、特に0.1〜5重量%、特に0.5〜5重量%の含有量の式IVの3-tert-ブチルトルエン
【化9】
【0018】
を有する)から開始して、
a)式III及びIVの化合物を含み、中間体として生成される式V及びVIのベンジルエーテル
【化10】
【0019】
をさらに含む混合物を電気化学的陽極メトキシル化することによって、式VII及びVIIIのジメチルアセタール
【化11】
【0020】
を、メタノールと、少なくとも1種の導電性の塩と、さらに場合により1種の共溶媒又は複数の様々な共溶媒とを含む電解溶液中に得るステップと、
b)ステップa)で形成される式VII及びVIIIのジメチルアセタールの混合物を加水分解することによって、式IX及びXの対応するベンズアルデヒド
【化12】
【0021】
を得て、次いで蒸留を使用することによって、式Xのベンズアルデヒドの濃度を減少させるステップと、
c)ステップb)で得られる式IX及びXのベンズアルデヒドの混合物であって、0.5重量%未満、好ましくは0.3重量%未満の式Xのベンズアルデヒドを含む混合物を、プロパナールと塩基性条件下で反応させることによって、式XI及びXIIのデヒドロシンナムアルデヒド
【化13】
【0022】
を得るステップと、
d)ステップc)で調製される式XI及びXIIのデヒドロシンナムアルデヒドを接触水素化することによって、式I及びIIのプロパナール
【化14】
【0023】
を得て、次いで場合により、蒸留を使用することによって、溶媒残留物、前駆体、及び副生成物を取り除くステップであって、式IIのプロパナールの含有量が、式I及びIIの化合物の全質量に対して、0.3重量%未満である、ステップと、
e)場合により、式IIのプロパナールの濃度を減少させるための、ステップd)で得られる式I及びIIのプロパナールの最終の蒸留ステップと
を含む方法を介して達成される。
【0024】
本発明の方法のステップa)において、出発物質として、式IIIの4-tert-ブチルトルエン
【化15】
【0025】
(式IIIとIVの化合物の全質量に対して、最大でも5重量%、好ましくは0.01〜5重量%、特に0.1〜5重量%、特に0.5〜5重量%の含有量の式IVの3-tert-ブチルトルエン
【化16】
【0026】
を有する)
及びさらに中間体として生成される式V及びVIのベンジルエーテル
【化17】
【0027】
を含む混合物を、電気化学的陽極メトキシル化を介して変換することによって、メタノールと、少なくとも1種の導電性の塩と、さらに場合により1種の共溶媒又は複数の様々な共溶媒とを含む電解溶液中に、式VII及びVIIIのジメチルアセタール
【化18】
【0029】
トルエン誘導体の電気化学的陽極メトキシル化は、原理的に知られており、例としてEP0638665において、並びにその中で引用された引用文献、例えばDE-A4106661及びEP0012240において、さらに以下の文献:H. Puetter, (2001) Industrial electroorganic chemistry.、H. L and, O. Hammerich (eds.) Organic electrochemistry, 4th ed.、Marcel Dekker, New York, NY 2001, pp. 1259-1307、さらにP. Loyson, S. Gouws, B. Zeelie, S. Afr. J. Chem., 2002, 55, 125-131及びP. Loyson, S. Gouws, B. Barton, M. Ackermann, S. Afr. J. Chem., 2004, 57, 53-56、及びこれらの中で記載されている引用文献において記載されている(上記文献、さらに本出願で引用された他の書類のすべてが、参照によりそれら全体において本発明の開示に組み込まれている)。
【0030】
本発明の方法の目的のため、電解溶液は、式III及びIV(トルエン)の出発物質、さらに中間体として生成される式V及びVIのベンジルエーテルばかりでなく、少なくともメタノール、さらに少なくとも1種の導電性の塩も含む。
【化19】
【0031】
電解溶液中に含むことのできる導電性の塩は、一般的にアルカリ金属塩又はテトラ(C
1-C
6-アルキル)アンモニウム塩であり、好ましくはトリ(C
1-C
6-アルキル)メチルアンモニウム塩である。使用することができる対イオンは、硫酸塩、硫酸水素塩、アルキル硫酸塩、アリール硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、ハロゲン化物、リン酸塩、炭酸塩、アルキルリン酸塩、アルキル炭酸塩、硝酸塩、アルコラート、テトラフルオロホウ酸塩、又は過塩素酸塩である。
【0032】
上記アニオンから誘導される酸はまた、導電性の塩として使用することもでき、これらの例は、硫酸、スルホン酸、さらにカルボン酸である。
【0033】
他の適切な導電性の塩は、イオン液体である。適切なイオン液体は、"Ionic Liquids in Synthesis", eds. Peter Wasserscheid, Tom Welton, Verlag Wiley VCH, 2003, chapters 1-3、さらにDE-A102004011427において記載されている。
【0034】
本発明の方法のステップa)の好ましい導電性の塩は、メチルトリブチルアンモニウムメチル硫酸塩(MTBS)、メチルトリエチルアンモニウムメチル硫酸塩、メチル硫酸ナトリウム塩、エタンスルホン酸ナトリウム塩、及び硫酸などである。
【0035】
本発明の方法のステップa)の一つの有利な実施形態の目的のため、電解溶液中の導電性の塩の濃度は、通常0.1〜30重量パーセント(重量%)の範囲内、好ましくは0.2〜10重量%の範囲内、特に好ましくは0.25〜4重量%から選択される。すべての重量%データは、電解溶液の総重量に対するものである。
【0036】
本発明の方法のステップa)の別の好ましい実施形態は、電気化学的陽極メトキシル化が、35〜70℃の範囲、特に45〜60℃の範囲の電解溶液温度で行われる実施形態である。
【0037】
さらに、本発明の方法のステップa)は、電気化学的陽極メトキシル化が、500〜100000mbarの範囲の絶対圧力、好ましくは1000〜4000mbarの範囲の絶対圧力で行われるような方法で行われるのがさらに好ましい。
【0038】
従来の共溶媒は、場合により電解溶液に添加される。これらは有機化学で周知の、高い酸化能力のある不活性溶媒である。例として炭酸ジメチル又は炭酸プロピレンを挙げることができる。したがって、一つの好ましい実施形態の目的のため、本発明の方法のステップa)は、共溶媒として炭酸ジメチル及び/又は炭酸プロピレンの存在下で行われる。
【0039】
原理的には、水は共溶媒としても適切であり、電解液(=電解溶液)中の水の割合は、好ましくは最大でも20重量%、特に最大でも10重量%、好ましくは最大でも5重量%、特に最大でも0.05重量%である。
【0040】
本発明の方法のステップa)の別の好ましい実施形態は、水含有量が通常0.001〜5重量%の範囲、好ましくは0.01〜1重量%の範囲、特に好ましくは0.01〜0.5重量%の範囲の電解液(=電解溶液)を使用する。すべての重量%データは、反応開始時の電解溶液の総重量に対するものである。
【0041】
本発明はまた、ステップa)の間はずっと、電解溶液の水含有量は最大でも20重量%、特に最大でも10重量%、好ましくは最大でも5重量%、特に最大でも0.05重量%、特に最大でも0.01重量%であることが有利であるという発見も含む。
【0042】
水の割合は、文献から公知の様々な方法で判定することができる。ある特定の適切な方法は、Karl Fischer滴定である。水は、共溶媒として電解液に添加することもでき、又はメタノール若しくは硫酸などの出発物質のうちの一つから誘導することもでき、又はtert-ブチルベンズアルデヒドを戻すことによって合成に導入することもできる(例として実施例2のステップ2.3を参照されたい)。tert-ブチルベンズアルデヒドが電気化学的メトキシル化方法(ステップa))に戻された場合、tert-ブチルベンズアルデヒドを、電解液中の酸性媒体(pH<7)の中でアセタール化することによって、1当量の水の遊離と共に、対応するtert-ブチルベンズアルデヒドジメチルアセタールが得られる。tert-ブチルベンズアルデヒドのアセタール化中に生成した水は、この平衡物から取り除くことが好ましい。
【0043】
水は、蒸留により、好ましくは溶媒及び/又は添加溶剤、例えばトルエン若しくはメタノールなどの使用を介して取り除くことができる。
【0044】
電解液から水を取り除くための別の可能性は、脱水剤、例えばオルトエステルなどの使用に存する。
【0045】
本発明の好ましい一実施形態において、ステップa)の電解溶液は、0.1〜10重量%のオルトエステル又は様々なオルトエステルの混合物を含む。この重量%データは、電解溶液の総重量に基づく。
【0046】
本発明の好ましい一実施形態において、ステップa)の電解溶液は、メタノール、少なくとも1種の導電性の塩、さらに場合により共溶媒又は複数の様々な共溶媒ばかりでなく、電解溶液の総重量に対して、0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%、非常に特に好ましくは0.5〜5重量%のオルトエステル又は様々なオルトエステルの混合物も含む。
【0047】
オルトエステルは、オルトカルボン酸のアルキルエステル及びアリールエステルであり、非エステル化形態では知られておらず、したがってエステルは、一般式R
1-C(OR
2)
3(式中、R
1はH又はC1〜C6アルキル部分であり、R
2は相互に独立してC1〜C6アルキル部分である)の化合物である。
【0048】
適切なオルトエステルの例は、オルトギ酸エステル(オルトホルメート)(R
1=H)及びオルト酢酸エステル(オルトアセテ-ト、R
1=CH
3)、さらにこれらの混合物である。
【0049】
適切なオルトギ酸エステルの例は、オルトギ酸トリメチル(R
1=H、R
2=CH
3)及びオルトギ酸トリエチル(R
1=H、R
2=C
2H
5)である。
【0050】
適切なオルト酢酸エステルの例は、オルト酢酸トリメチル(R
1=CH
3、R
2=CH
3)及びオルト酢酸トリエチル(R
1=CH
3、R
2=C
2H
5)である。
【0051】
オルトギ酸トリメチル(R
1=H、R
2=CH
3)又はオルト酢酸トリメチル(R
1=CH
3、R
2=CH
3)を使用するのが好ましく、オルトギ酸トリメチル(R
1=H、R
2=CH
3)を使用するのが非常に特に好ましい。
【0052】
次いで生成した副生成物、酢酸メチル及び酢酸エチル、並びにギ酸メチル及びギ酸エチルは、これに続くステップにおいて蒸留によりこの反応混合物から容易に取り除くことができる。オルトギ酸トリメチル(トリメトキシメタン、CAS 14-73-5)を使用するのが好ましい。
【0053】
本発明の好ましい一実施形態において、オルトエステルの量は、オルトエステルと、電解溶液中に含まれる(添加又は返還を介して)tert-ブチルベンズアルデヒド全体のモル比が、0.1〜1.5:1の範囲、好ましくは0.1〜1:1の範囲となるように選択される。
【0054】
一実施形態において、オルトエステル、例えばオルトギ酸トリメチルなどは、少しずつ及び/又は連続的に電解液に計量される。
【0055】
電解液から水を取り除くための別の可能性は、イオン交換体又はモレキュラーシーブの使用に存する。イオン交換体及びモレキュラーシーブは、それ自体公知である。モレキュラーシーブは、天然に形成されたゼオライト及び合成ゼオライトから選択されるのが好ましく、これらは、球体(ビーズ)、粉末、又は伸長ペレットの形態を取ることができる。4Åモレキュラーシーブを使用するのが好ましく、3Åモレキュラーシーブを使用するのが特に好ましい。
【0056】
本発明の一実施形態において、モレキュラーシーブ、又は好ましくは、イオン交換体は、ステップa)の電解液と混和させ、モレキュラーシーブ及びイオン交換体をそれぞれ電解液に作用させる。このための方法の例は、電解液中のモレキュラーシーブ及びイオン交換体の懸濁液をそれぞれ、具体的には連続的又は規定の間隔の間撹拌する。撹拌の代わりに、水含有量が0.5重量%未満に到達するまで振盪又はポンプによる循環を使用することも可能である。モレキュラーシーブ又はイオン交換体が電解液に作用したら、モレキュラーシーブ及びイオン交換体をそれぞれ取り除く必要がある。これらは、電解液の蒸留又はデカント、又は好ましくは濾過により取り除くことができる。
【0057】
本発明の一実施形態では、ステップa)の前に、水含有量が最大でも0.05重量%となるまで、電解溶液をモレキュラーシーブ、好ましくは4Åモレキュラーシーブ上、特に好ましくは3Åモレキュラーシーブ上で乾燥させ、モレキュラーシーブをステップa)より前に濾過することにより電解液から取り除く。
【0058】
水の除去のために使用したモレキュラーシーブを取り除いた後、これらを再生し(例えばこれに熱風流を通すことによって、又は真空中でこれを加熱することによって)、再利用することができる。これらの方法は当業者に公知である。
【0059】
電気化学的メトキシル化方法において、別のやり方として、同じ電解液ではあるが、乾燥させていない、又は部分的にしか乾燥させていない電解液を使用するよりも、むしろ水含有量を減少させて電解液を使用することの利点とは、例として、反応の選択性がより高いこと、さらに有用な生成物(単位:kg)に基づき、特定の電気エネルギーの消耗がより低いことにある。
【0060】
本発明の方法のステップa)は、従来の分離タイプ又は非分離タイプの電解セルのいずれでも行うことができる。これは、バッチ方式又は持続方式のいずれかで行うことができ、優れた結果をもたらす。一つの好ましい実施形態の目的のため、本発明の方法のステップa)を連続的に行う。非分離の貫通流セルを用いて連続的に作動させることが好ましい。
【0061】
非常にとりわけ適切なセルは、バイポーラキャピラリーセル又はプレートスタックセルであり、電極はプレートとして構成され、互いに平行に配置されている(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 1999 electronic release, Sixth Edition, VCH-Verlag Weinheim, Volume Electrochemistry, Chapter 3.5 Special cell designs、さらにChapter 5, Organic Electrochemistry, Subchapter 5.4.3.2 Cell Design)。好ましい電極材料は、貴金属、例えば白金など、混合酸化物電極、例えばRuO
xTiO
xなど(DSA電極として知られている)、又は炭素含有材料、例えばグラファイト、ガラス状炭素、若しくはダイヤモンド電極などである。グラファイト電極を使用するのが非常にとりわけ好ましい。一つの好ましい実施形態の目的のため、本発明の方法のステップa)は、プレートスタックセルを使用して行う。
【0062】
ステップa)を実行するために使用する電流密度は、一般的に1〜1000mA/cm
2、好ましくは10〜100mA/cm
2である。本発明の方法のステップa)を、10〜50mA/cm
2の電流密度で実行するのが特に好ましい。作動は一般的に大気圧で行われる。相対的に高温で作動させることを意図する場合、より高い圧力を使用するのが好ましく、その目的は、出発化合物又は溶媒の沸騰を回避させることである。
【0063】
適切なアノード材料の例は貴金属、例えば白金又は金属酸化物など、例えばルテニウム酸化物又はクロム酸化物、又はRuO
x又はTiO
xタイプの混合酸化物、又は他にダイヤモンド電極である。グラファイト又は炭素電極が好ましい。
【0064】
使用することができるカソード材料の例は、鉄、スチール、ステンレススチール、ニッケル、又は貴金属、例えば白金など、さらにグラファイト若しくは炭素材料、及びダイヤモンド電極である。アノード及びカソードとしてグラファイトを有する、さもなければアノードとしてグラファイト及びカソードとしてニッケル、スチール、若しくはステンレススチールを有するシステムが好ましい。
【0065】
ステップa)で出発物質として使用される式IIIの4-tert-ブチルトルエンが、式III及びIVの化合物の全質量に対して、2〜4重量%、特に2.5〜3.5重量%の含有量の式IVの3-tert-ブチルトルエンを有する本発明の方法が好ましい。新鮮な出発物質としてそれぞれ使用する4-tert-ブチルトルエンと同時に、未反応の及び再生された式III及びIVの出発物質、さらに中間体として形成した式V及びVIのベンジルエーテルを、ステップa)で初めて使用した新鮮な式IIIの4-tert-ブチルトルエンに、最大でも5重量%、好ましくは0.01〜5重量%、特に0.1〜5重量%、特に0.5〜5重量%、好ましくは2〜4重量%、特に好ましくは2.5〜3.5重量%の含有量の式IVの3-tert-ブチルトルエンと共に添加することもまた可能である。ステップb)で再生された式IIIの4-tert-ブチルトルエン中の式IVの3-tert-ブチルトルエンの含有量は、使用する新鮮な4-tert-ブチルトルエン中に存在する3-tert-ブチルトルエンの含有量と通常異なる。
【0066】
本発明の方法のステップb)において、ステップa)で形成される、式VII及びVIIIのジメチルアセタールの混合物を加水分解することによって、対応する式IX及びXのベンズアルデヒド
【化20】
【0067】
を得て、次いで蒸留を使用することによって、式Xのベンズアルデヒドの濃度を減少させる。
【0068】
酸性条件での水の存在下で、対応する式IX及びXのベンズアルデヒドを得るための式VII及びVIIIのジメチルアセタールの加水分解は、原理的には公知であり、例としてH. PUtter, (2001) Industrial electroorganic chemistry、及びH. Lund, O. Hammerich (eds.) Organic electrochemistry, 4th ed., Marcel Dekker, New York, NY 2001, pp. 1288-1289、又はK. Schwetlick, Organikum, 21st edition 2001, Wiley-VCH, Weinheim, p. 182において記載されている。
【0069】
蒸留を使用することによって、式Xの所望しないベンズアルデヒドを取り除く。式IX及びXの化合物の全質量に対して、0.5重量%未満、好ましくは0.3重量%未満、好ましくは0.2重量%未満、特に0.1重量%未満の含有量の式Xのベンズアルデヒドを有する、式IXのベンズアルデヒドが得られることがここでは好ましい。
【0070】
ステップb)で行われる蒸留は、1段階、2段階、さもなければ複数の段階で行ってもよく、当業者に公知の塔タイプをここでは使用することができる。
【0071】
ステップb)の蒸留後に得られる式IX及びXのベンズアルデヒドの混合物が、式IX及びXの化合物の全質量に対して、0.1重量%未満の含有量の式Xのベンズアルデヒドを有する本発明の方法が好ましい。
【0072】
ステップb)の蒸留が、第1の蒸留において、式III及びIVの未反応の出発物質と、さらにステップa)で中間体として生成される式V及びVIのベンジルエーテルと、式Xのベンズアルデヒドとから構成される混合物の80重量%超を含む留出物を、第1の蒸留塔の最上部で取り除くために、第1の蒸留塔を使用すること、
【化21】
【0073】
及び第2の蒸留において、第2の蒸留塔の最上部で、式IX及びXの化合物の全質量に対して、0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満の含有量の式Xのベンズアルデヒドを有する式IXのベンズアルデヒド
【化22】
【0074】
を、第1の蒸留の底部生成物から取り除くために第2の蒸留塔を使用することによって、2段階で行われ、場合により、第1の蒸留塔の最上部で得られ、式III、IV、V、VI、及びXの化合物を含む留出物が、出発物質として使用される式IIIの4-tert-ブチルトルエンと一緒にステップa)で再利用される、本発明の方法が特に好ましい。
【0075】
ステップb)で使用される第1の蒸留塔は、40を超える、特に50を超える理論段数を有することが好ましい。塔は、Montz又はSulzerから入手可能なタイプの市販の金網パッキング(metal gauze packing)を有することが好ましい。
【0076】
好ましい2段階蒸留は、原理的には単一の仕切付き塔内でも実行することができる。しかし、二つの蒸留ステップが、互いに別々に実行され、特に、特定の分離要求にそれぞれ適応した二つの異なる蒸留塔内で実行される蒸留が好ましい。
【0077】
ステップc)において、ステップb)で得られる、式IX及びXのベンズアルデヒドの混合物であって、0.5重量%未満、好ましくは0.3重量%未満の式Xのベンズアルデヒドを含む混合物を、塩基性条件下でプロパナールと反応させることによって、式XI及びXIIのデヒドロシンナムアルデヒドを得る。
【化23】
【0078】
ステップd)において、ステップc)で調製した式XI及びXIIのデヒドロシンナムアルデヒドを接触水素化することによって、式I及びIIのプロパナール
【化24】
【0079】
を得て、場合により、それに続いて蒸留を使用することによって、溶媒残留物、前駆体、及び副生成物を取り除き、ここで、式IIのプロパナールの含有量は、式I及びIIの化合物の全質量に対して、0.3重量%未満である。
【0080】
ステップe)において、ステップd)で得られる式I及びIIのプロパナールは、場合により最終蒸留に供することによって、式IIのプロパナールの濃度を減少させる。
【0081】
ステップc)及びd)は、WO2001/027061又はH. Surburg, J. Panten, Common Fragrance and Flavor Materials, 5th edition, Wiley-VCH, Weinheim 2006, pp. 115-117に記載されているように通常行う。
【0082】
ステップd)において、接触水素化の粗生成物を、蒸留に供することによって、溶媒残留物、前駆体、及び副生成物を取り除く本発明の方法が好ましい。
【0083】
生成した式Iのプロパナールが、過剰な含有量の式IIのプロパナールを依然として有する場合、式IIのプロパナールの濃度を、最終蒸留を介してさらに減少させることができる。このタイプの最終蒸留は、例えばDE10223970に記載されているタイプの仕切付き塔内で行うことが好ましい。
【0084】
ステップd)又はe)の蒸留の後で得られる式I及びIIのプロパナールの混合物が、式I及びIIの化合物の全質量に対して、0.05重量%未満の含有量の式IIのプロパナールを有する本発明の方法が特に好ましい。
【0085】
本発明はまた、式IXの4-tert-ブチルベンズアルデヒド
【化25】
【0086】
(式IX及びXの化合物の全質量に対して、0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満の含有量の式Xの3-tert-ブチルベンズアルデヒド
【化26】
【0087】
を有する)を製造するための方法であって、
出発物質として、式IIIの4-tert-ブチルトルエン
【化27】
【0088】
(式III及びIVの化合物の全質量に対して、最大でも5重量%、好ましくは0.01〜5重量%、特に0.1〜5重量%、特に0.5〜5重量%の含有量の式IVの3-tert-ブチルトルエン
【化28】
【0089】
を有する)から開始して、
a)式III及びIVの化合物を含み、中間体として生成される、式V及びVIのベンジルエーテル
【化29】
【0090】
をさらに含む混合物を電気化学的陽極メトキシル化することによって、式VII及びVIIIのジメチルアセタール
【化30】
【0091】
を、メタノールと、少なくとも1種の導電性の塩と、さらに場合により1種の共溶媒又は複数の様々な共溶媒とを含む電解溶液中に得るステップと、
b)ステップa)で形成される式VII及びVIIIのジメチルアセタールの混合物を加水分解することによって、式IX及びXの対応するベンズアルデヒド
【化31】
【0092】
を得て、次いで蒸留を使用することによって、式Xのベンズアルデヒドの濃度を減少させるステップと
を含み、ステップb)の蒸留が
第1の蒸留において、式III及びIVの未反応の出発物質と、さらにステップa)で中間体として生成される式V及びVIのベンジルエーテルと、式Xのベンズアルデヒドとから構成される混合物の80重量%超を含む留出物を、第1の蒸留塔の最上部で取り除くために、第1の蒸留塔を使用すること、
【化32】
【0093】
及び、第2の蒸留において、第2の蒸留塔の最上部で、式IX及びXの化合物の全質量に対して、0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満の含有量の式Xのベンズアルデヒドを有する式IXのベンズアルデヒド
【化33】
【0094】
を、第1の蒸留の底部生成物から取り除くために第2の蒸留塔を使用することによって、2段階で行われ、場合により、第1の蒸留塔の最上部で得られ、式III、IV、V、VI、及びXの化合物を含む留出物が、出発物質として使用される式IIIの4-tert-ブチルトルエンと一緒にステップa)で再利用される、方法を提供する。
【0095】
ステップa)の好ましい実施形態は、上に記載されている。
【0096】
ステップb)の第2の蒸留の底部生成物は、通常廃棄されるのに対して、第1の蒸留塔の最上部で得られる留出物は、電気化学的、陽極メトキシル化の対象となるステップa)において、ある程度又は完全にこの混合物に添加することができる。
【0097】
ステップb)において第1の蒸留塔の最上部で得られる留出物を、出発物質として使用される式IIIの4-tert-ブチルトルエンと一緒にステップa)で再利用する、式VIIの4-tert-ブチルベンズアルデヒドを生成するための方法が好ましい。
【0098】
ステップb)において第1の蒸留塔の最上部で得られる留出物を、ステップa)で反復して再利用する場合、特に所望しない式Xのベンズアルデヒド、さらに式VIのベンジルエーテルの濃度の増加が生じる。
【0099】
例として、ガスクロマトグラフィーを、第1の蒸留塔の最上部で得られる留出物の構成を判定するために使用することができる。
【0100】
ステップa)及びb)を繰り返して行った後、50重量%、特に好ましくは1〜20重量%、特に2〜7重量%までの割合の第1の蒸留塔の最上部で得られる留出物を廃棄することが好ましい。
【0101】
留出物の廃棄される割合が、この画分の質量に対して、15重量%を超える、特に20重量%を超える式VIベンジルエーテル及び式Xのベンズアルデヒドから構成されることが特に好ましい。
【0102】
代替として、第1の蒸留塔の最上部で得られる留出物由来の式Xのベンズアルデヒドはまた、新規物質、特に固体への化学変換により取り除くこともでき、この固体は、式III、IV、V、及びVIの他の液体成分とはその物理的特性が顕著に異なる。
【0103】
したがって、固体への化学変換後、第1の蒸留塔の最上部で得られる留出物由来の式Xのベンズアルデヒドが、留出物の他の液体成分から、特に式III、IV、V、及びVIの化合物から取り除かれ、次いで実質的にアルデヒドを含まない精製された留出物が、出発物質として使用される式IIIの4-tert-ブチルトルエンと一緒にステップa)で再利用される、式IXの4-tert-ブチルベンズアルデヒドを生成するための方法がさらに好ましい。
【0104】
当業者は、アルデヒド官能基の変換を介した液体アルデヒドの特徴解析及び精製のための従来の方法から、室温で固体であるか、又は式III、IV、V、及びVIの液体成分のものとは異なる溶解度プロフィルを有する様々な誘導体を認識している。例として、式Xのベンズアルデヒドは、亜硫酸水素塩付加物、イミン、オキシム、セミカルバゾン誘導体、又はヒドラゾン誘導体の固体へ室温で変換することができ、公知の固体-液体-分離方法、例えば濾過又は遠心分離などを介して取り除くことができる。亜硫酸水素塩付加物の場合、水中への溶解を介して、式III、IV、V、及びVIの他の疎水性の液体成分からこれを取り除くこともできる。
【0105】
したがって、式IXの4-tert-ブチルベンズアルデヒドを生成するための、上に記載されている方法であって、第1の蒸留塔の最上部で得られる留出物由来の式Xのベンズアルデヒドが、式III、IV、V、及びVIの他の液体成分から、亜硫酸水素塩付加物、イミン、オキシム、セミカルバゾン誘導体、又はヒドラゾン誘導体の固体への室温での化学変換により取り除かれ、次いで実質的にアルデヒドを含まない精製された留出物が、出発物質として使用される式IIIの4-tert-ブチルトルエンと一緒にステップa)で再利用される方法が特に好ましい。
【0106】
式IXの4-tert-ブチルベンズアルデヒドを生成するための、上に記載されている方法により入手可能であり、式IX及びXの化合物の全質量に対して、0.1重量%未満の含有量の式Xのベンズアルデヒドを有する式IXのベンズアルデヒドは、好ましくは、式Iの2-メチル-3-(4-tert-ブチル-フェニル)プロパナールを生成するための導入部に記載されている方法のステップc)で使用することができる。したがって、式IXの4-tert-ブチルベンズアルデヒドを生成するための、上に記載されている方法において好ましい実施形態はまた、式Iの2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナールを生成するための方法のステップa)及びb)の特に好ましい実施形態を表す。
【0107】
式Xの3-tert-ブチルベンズアルデヒドは、2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナールの生成における中間体として所望されない。
【0108】
しかし、1,3-置換パターンを得るのは難しいので、式Xの3-tert-ブチルベンズアルデヒドは、他の合成法に対して有用な出発物質を意味する。したがって、その化合物の除去、精製、及び他での使用、又は市販は、本発明の方法全体の対費用効果性を増加させる。
【0109】
留出物の他の液体成分からの除去後得ることができる固体の逆分解(retro cleavage)を介して、式Xのアルデヒドを少なくとも80重量%の純度で得ることが可能である。
【0110】
したがって本発明はまた、式Xのベンズアルデヒド
【化34】
【0111】
を、少なくとも80重量%の純度で調製するための方法であって、
i)上に記載のような第1の蒸留塔の最上部で得られる留出物に含まれている式Xのベンズアルデヒドを固体へと化学変換するステップと、
ii)留出物の他の液体成分から、特に式III、IV、V、及びVIの化合物から、ステップi)で形成される固体を取り除くステップと、
iii)ステップii)で取り除かれる固体から式Xのベンズアルデヒドを遊離させるステップと
を含む方法も提供する。
【0112】
上に記載のような式Xのベンズアルデヒドを生成するための方法であって、ステップi)において、式Xのベンズアルデヒドが、室温で、亜硫酸水素塩付加物、イミン、オキシム、セミカルバゾン誘導体、又はヒドラゾン誘導体の固体へと変換され、ステップii)において、ステップi)で形成されるヒドラゾン誘導体、セミカルバゾン誘導体、オキシム、イミン、又は亜硫酸水素塩付加物が、留出物の他の液体成分から、特に式III、IV、V、及びVIの化合物から取り除かれ、ステップiii)において、式Xのベンズアルデヒドが、ステップii)で取り除かれるヒドラゾン誘導体、セミカルバゾン誘導体、オキシム、イミン、又は亜硫酸水素塩付加物から遊離される方法が好ましい。
【0113】
式Xのベンズアルデヒドを、ヒドラゾン誘導体、セミカルバゾン誘導体、オキシム、イミン、又は亜硫酸水素塩付加物の形態で、第1の蒸留塔の最上部で上に記載のように得た留出物から取り除く場合、そこから式Xの3-tert-ブチルベンズアルデヒドを遊離することなく前記誘導体のうちの一つと共にさらなる処理を実施することも可能である。合成すべき化合物が、例えば、3-tert-ブチルベンジルアミンの場合、式Xの3-tert-ブチルベンズアルデヒドを第1の蒸留塔の留出物の、式III、IV、V、及びVIの他の成分から、3-tert-ブチルベンズアルデヒドイミンの形態で取り除き、3-tert-ブチルベンズアルデヒドイミンをよく知られた方法で還元することによって、3-tert-ブチルベンジルアミンを得る。
【0114】
式Iの2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナールを生成するための本発明の方法のある特定の特徴は、主な原料、すなわち式IIIの4-tert-ブチルトルエン出発物質の純度にいかなる変更も加える必要性がなく、又は使用する合成方法の原理を変更するいかなる要求事項もなしに、これを既存の方法へ容易に統合することができることである。式IXの4-tert-ブチルベンズアルデヒドを生成するための本発明の方法の別の特徴は、主な原料に、又は使用する合成方法の原理を変更する要求事項において、いかなる変更も加える必要性がなく、上に記載されているように、これを容易に既存の方法に統合することができることである。
【0115】
式Iの2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナールを生成するための本発明の方法のステップb)で、及び式IXの4-tert-ブチルベンズアルデヒドを生成するための本発明の方法で行われる蒸留、特に、優先度の高い式IXの4-tert-ブチルベンズアルデヒド生成中に式Xの3-tert-ブチルベンズアルデヒドの濃度を減少させる働きをする2段階蒸留は、高純度の式Iの2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナールを、他の手段では容易に入手できない式Xの3-tert-ブチルベンズアルデヒドを得る可能性と一緒に入手する、対費用効果の高い機会を提供する。
【実施例】
【0116】
以下の実施例は、本発明を例示するが、これに限定されない。
【0117】
比較例1-98.5重量%の2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナールと、0.7〜1.5重量%の2-メチル-3-(3-tert-ブチルフェニル)プロパナールとを含む混合物の調製
ステップ1.1. - tert-ブチルベンズアルデヒドジメチルアセタール(VII)及び(VIII)の合成:
96重量%の含有量の4-tert-ブチルトルエン(III)及び3重量%の3-tert-ブチルトルエン(IV)を有する、22重量%のtert-ブチルトルエンと、溶媒としての77.5重量%のメタノールと、導電性の塩としての0.5重量%の硫酸とから構成される混合物を、この反応混合物中の4-tert-ブチルベンズアルデヒドジメチルアセタール(VII)の含有量が約14重量%になるまで、グラファイト電極上のキャピラリーセル内で連続的に作動する反応器内で、45℃〜60℃の温度及び42A/dm
2の電流密度で電解した。
【0118】
ステップ1.1を繰り返した際に、電解を45℃〜60℃の温度で行い、達成した反応混合物中の4-tert-ブチルベンズアルデヒドジメチルアセタール(VII)の含有量は、12〜16重量%であった。
【0119】
ステップ1.2. - tert-ブチルベンズアルデヒド(IX)及び(X)を得るためのtert-ブチルベンズアルデヒドジメチルアセタール(VII)及び(VIII)の加水分解及び蒸留精製:
後処理のため、反応混合物を電解セルから連続的に放出させ、これを、96重量%の含有量の4-tert-ブチルトルエン及び3重量%の3-tert-ブチルトルエンを有する22重量%のtert-ブチルトルエンと、溶媒として77.5重量%のメタノールと、導電性の塩として0.5重量%の硫酸とから構成される未使用の反応混合物と置き換えた。メタノール溶媒を蒸留で取り除き、残っている粗製のアセタールを水で加水分解した。相分離により、4-及び3-tert-ブチルベンズアルデヒドばかりでなく、未反応の3-及び4-tert-ブチルトルエンも、さらに返還可能な中間体として3-及び4-tert-ブチルベンジルメチルエーテルも含む粗生成物も得た。蒸留の後処理を2段階(蒸留塔1、蒸留塔2)で行った。約60の理論段数を有する極めて効果的な塔を蒸留塔1として使用した。
【0120】
第1に、より低い沸点の3-及び4-tert-ブチルトルエン、さらに3-及び4-tert-ブチルベンジルメチルエーテル(V及びVI)を蒸留塔1の最上部で取り除き(35mbarでの温度プロファイル:T
底部=158.5℃、T
最上部=142℃)、電解に戻した(ステップ1.3を参照)。
【0121】
蒸留塔1から送られ、3-tert-ブチルベンズアルデヒド(X)、4-tert-ブチルベンズアルデヒド(IX)、さらに高沸点溶剤を含む底部生成物は、蒸留塔2に回された。蒸留塔2において、4-及び3-tert-ブチルベンズアルデヒドを最上部で高沸点混入物から分離し、プロパナール(ステップ1.4を参照)を使用する縮合プロセスへ導入した。蒸留塔2の底部生成物を廃棄した。
【0122】
97重量%の4-tert-ブチルベンズアルデヒド(IX)と1.5重量%の3-tert-ブチルベンズアルデヒド(X)とから構成されるtert-ブチルベンズアルデヒドが得られるように蒸留を行った。
【0123】
ステップ1.3. - 蒸留塔1の最上部の生成物の返還:
蒸留塔1の最上部に生成した生成物を合成(ステップ1.1.)に戻した。
【0124】
ステップ1.4. - これに続くステージ:
WO2001/027061に記載されているようにこれに続くステップを行った。このステップによって、約98.5重量%の2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナールと、約1.1重量%の2-メチル-3-(3-tert-ブチルフェニル)プロパナールとを含む2-メチル-3-(tert-ブチルフェニル)プロパナールを得た。
【0125】
比較例1に記載されている合成を繰り返し行うことによって、約98.5重量%の2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナールと、0.7〜1.5重量%の2-メチル-3-(3-tert-ブチルフェニル)プロパナールとをそれぞれ含む混合物を得た。
【0126】
発明の実施例2 - 異性体純度の高い4-tert-ブチルベンズアルデヒドの調製
ステップ2.1. - tert-ブチルベンズアルデヒドジメチルアセタール(VII)及び(VIII)の合成:
比較例1、ステップ1.1の合成と同様に合成を行った。同じ出発物質を使用した。
【0127】
ステップ2.2. - tert-ブチルベンズアルデヒド(IX)及び(X)を得るためのtert-ブチルベンズアルデヒドジメチルアセタール(VII)及び(VIII)の加水分解及び蒸留精製:
後処理のため、反応混合物を電解セルから連続的に放出させ、これを、未使用の反応混合物と置き換えた。溶媒を蒸留で取り除き、残っている粗製のアセタールを水で加水分解した。相分離によって、4-及び3-tert-ブチルベンズアルデヒドばかりでなく、未反応の3-及び4-tert-ブチルトルエン、さらに返還可能な中間体として3-及び4-tert-ブチルベンジルメチルエーテルも含む粗生成物を得た。蒸留の後処理を2段階(蒸留塔1、蒸留塔2)で行った。蒸留塔1は約60の理論段数を有する、極めて効果的な塔である。
【0128】
第1に、より低い沸点の3-及び4-tert-ブチルトルエン、3-及び4-tert-ブチルベンジルメチルエーテル、さらに3-tert-ブチルベンズアルデヒドを蒸留塔1の最上部で取り除き(35mbarで、温度プロファイル:T
底部=159℃、T
最上部=147℃)、電解に戻した(ステップ2.3参照);4-tert-ブチルベンズアルデヒドは、この時点で蒸留塔1の底部生成物中にあった。
【0129】
蒸留塔1により生成され、特に4-tert-ブチルベンズアルデヒドを含む底部生成物、さらに高沸点蒸留分を蒸留塔2に回した。
【0130】
蒸留塔2において、4-tert-ブチルベンズアルデヒド(IX)を、高沸点の混入物から最上部で分離し、プロパナールを使用する縮合方法へ導入した(ステップ2.4を参照)。蒸留塔2の底部生成物を廃棄した。98〜99重量%の4-tert-ブチルベンズアルデヒド(IX)及び0.02〜0.08重量%の3-tert-ブチルベンズアルデヒド(X)から構成されるtert-ブチルベンズアルデヒドが得られるように、蒸留を行った。
【0131】
ステップ2.3. - 蒸留塔1の最上部の生成物の返還:
蒸留塔1の最上部に生成した生成物を合成(ステップ2.1.)に戻した。ステップ2.1及び2.2を繰り返して行った後、蒸留塔1の最上部から戻した生成物は、増大した量の3-tert-ブチルベンズアルデヒド(X)を含み、3-tert-ブチルベンズアルデヒドは、4-tert-ブチルベンジルメチルエーテル(V)から蒸留で分離できないので、蒸留塔1の最上部の生成物のほんの一部(2〜7重量%)を取り除き、廃棄した。
【0132】
ステップ2.4. - これに続くステージ:
これに続くステップをWO2001/027061に記載されているように行った。このステップによって、99.0重量%超の2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール及び0.05重量%未満の2-メチル-3-(3-tert-ブチルフェニル)プロパナールから構成される2-メチル-3-(tert-ブチルフェニル)プロパナールを得た。
【0133】
実施例3 - 導電性の塩、メチルトリブチルアンモニウムメチル硫酸塩(MTBS)を使用した、異性体純度の高い4-tert-ブチルベンズアルデヒドの調製
ステップ3.1. - tert-ブチルベンズアルデヒドジメチルアセタール(VII)及び(VIII)の合成:
96重量%の含有量の4-tert-ブチルトルエン(III)及び3重量%の3-tert-ブチルトルエン(IV)を有する、23重量%のtert-ブチルトルエンと、溶媒として74重量%のメタノールと、導電性の塩として3.0重量%のメチルトリブチルアンモニウムメチル硫酸塩(MTBS)とから構成される混合物を、4-tert-ブチルベンズアルデヒドジメチルアセタール(VII)の反応混合物中の含有量が約14重量%になるまで、グラファイト電極上のキャピラリーセルの連続的に作動する反応器内で、45℃〜60℃の温度で、22A/dm
2の電流密度で電解した。
【0134】
ステップ3.1を繰り返した場合、45℃〜60℃の温度で電解を行い、この反応混合物中で達成した4-tert-ブチルベンズアルデヒドジメチルアセタール(VII)の含有量は12〜16重量%であった。
【0135】
ステップ3.2. - tert-ブチルベンズアルデヒド(IX)及び(X)を得るためのtert-ブチルベンズアルデヒドジメチルアセタール(VII)及び(VIII)の加水分解及び蒸留精製:
後処理のため、反応混合物を電解セルから連続的に放出させ、これを未使用の反応混合物と置き換えた。溶媒を蒸留で取り除き、導電性の塩MTBSを取り除くために、真空中、薄膜エバポレータの中で、180℃〜220℃及び10mbar〜20mbarで、全体の蒸発を行った。不揮発性のMTBSを電解に戻した(ステップ3.1.)。粗製アセタールを凝縮し、水で加水分解した。相分離によって、4-及び3-tert-ブチルベンズアルデヒドばかりでなく、未反応の3-及び4-tert-ブチルトルエンも、さらに返還可能な中間体として3-及び4-tert-ブチルベンジルメチルエーテルも含む粗生成物を得た。蒸留の後処理を、ステップ2.2のように2段階(蒸留塔1、蒸留塔2)で行った。
【0136】
ステップ3.3. - 蒸留塔1の最上部の生成物の返還
ステップ2.3のように行う。
【0137】
ステップ3.4. - これに続くステージ:
ステップ2.4のように行う。
【0138】
4-tert-ブチルベンズアルデヒドジメチルアセタール(VII)を調製するためのバッチ方式の電解
装置:約3gの電解液を含有する、11の円形グラファイト電極(SGL MKUS F04、分離:1mm、10ギャップ)を備えた非分離の貫通流セル
電解液:蒸留塔1の600g(20重量%)の塔頂部生成物(実施例2のステップ2.3を参照(20.1重量%までの3-tert-ブチルベンズアルデヒドを含む)、2390g(79.6重量%)のMeOH、10.5gの濃硫酸(0.35重量%、含有量96%超)、さらに様々な割合のオルトギ酸トリメチル(他に述べられていない限り)
電解:ガスクロマトグラフィーでの判定により4-tert-ブチルトルエン(III)が完全に変換されるまで。
【0139】
電流密度:3.4Adm
-2(他に述べられていない限り)。
【0140】
温度:53℃(他に述べられていない限り)。
【0141】
蒸留塔1から使用した塔頂部生成物の主な成分の構成が、表B-1に示されている(データはGC面積%で表示。投入物重量600g)。GC面積値%において100%を埋め合わせる残りは、これ以上詳細には定義されていない補助成分を含む。電解液中のメタノールの割合は、オルトギ酸トリメチル(TMOF)が電解液に添加される範囲で、同じ値だけ減少する、すなわち電解液中のメタノール含有量及びTMOF含有量の合計は一定である。実施例のバランスをとるため、述べられているGC領域%値を、GC重量%値に一致させ、こうして、主成分に対して表B-1で特定された、計算による重量の割合を得る。電解プロセスに対して選択された終了点は、4-tert-ブチルトルエン(III)の完全な変換であり、これはガスクロマトグラフィーを用いて判定された。IIIの完全な変換に必要な、規定量の電荷は、電解時間を、電流の強さ及び使用したキャピラリーギャップセル内の電解ギャップの数で掛けることによって計算される。
【0142】
電解プロセスが終了すると、電解生成物は、蒸留によりMeOHを除去し、残留物を蒸留することによって、収量を判定した。表B-1は、こうして主成分に対して求めた重量が、個々の蒸留画分のガスクロマトグラムから計算されたことを提示している。
【化35】
【0143】
実施例4は、この一連の実験における、オルトギ酸トリメチル(TMOF)を電解液へ添加しない参照実験について記載している。IIIの完全な変換は、495Ah後に達成され、11.2gの4-tert-ブチルベンズアルデヒド(IX)、さらに254.0gの4-tert-ブチルベンズアルデヒドジメチルアセタール(VII)を得る。これらは、上に記載されている方法を使用して加水分解により4-tert-ブチルベンズアルデヒド(IX)へと変換することができる。
【0144】
実施例5は、電解液中の1重量%のTMOFの効果について記載している。IIIの完全な変換は、387Ah後に達成され、6.9gの4-tert-ブチルベンズアルデヒド(IX)、さらに287gの4-tert-ブチルベンズアルデヒドジメチルアセタール(VII)を得る。これらは、上に記載されている方法を使用して加水分解によりIXへと変換することができる。
【0145】
実施例6は、電解液中の2重量%のTMOFの効果について記載している。IIIの完全な変換は、333Ah後に達成され、2.4gの4-tert-ブチルベンズアルデヒド(IX)、さらに320.8gの4-tert-ブチルベンズアルデヒドジメチルアセタール(VII)を得た。これらは、上に記載されている方法を使用して加水分解によりIXへと変換することができる。
【0146】
実施例7は、電解液中の3重量%のTMOFの効果について記載している。IIIの完全な変換は、306Ah後に達成され、0.8gの4-tert-ブチルベンズアルデヒド(IX)、さらに334.5gの4-tert-ブチルベンズアルデヒドジメチルアセタール(VII)を得た。これらは、上に記載されている方法を使用して加水分解によりIXへと変換することができる。
【0147】
実施例8は、電解液中の3.5重量%のTMOFの効果について記載している。これは、電解プロセスに使用した3-tert-ブチルベンズアルデヒドの量に対して、約1モル当量に相当する。IIIの完全な変換は、293Ah後に達成され、0.6gの4-tert-ブチルベンズアルデヒド(IX)、さらに338.0gの4-tert-ブチルベンズアルデヒドジメチルアセタール(VII)を得る。これらは、上に記載されている方法を使用して加水分解によりIXへと変換することができる。
【0148】
実施例9は、電解液中の4重量%のTMOFの効果について記載している。IIIの完全な変換は、288Ah後に達成され、0.7gの4-tert-ブチルベンズアルデヒド(IX)、さらに337.5gの4-tert-ブチルベンズアルデヒドジメチルアセタール(VII)を得た。これらは、上に記載されている方法を使用して加水分解によりIXへと変換することができる。
【0149】
実施例10は、電解液中の4.5重量%のTMOFの効果について記載している。IIIの完全な変換は、279Ah後に達成され、0.6gの4-tert-ブチルベンズアルデヒド(IX)、さらに344.1gの4-tert-ブチルベンズアルデヒドジメチルアセタール(VII)を得た。これらは、上に記載されている方法を使用して加水分解によりIXへと変換することができる。
【0150】
実施例11は、電解液中の5.5重量%のTMOFの効果について記載している。IIIの完全な変換は、279Ah後に達成され、0.6gの4-tert-ブチルベンズアルデヒド(IX)、さらに339.2gの4-tert-ブチルベンズアルデヒドジメチルアセタール(VII)を得た。これらは、上に記載されている方法を使用して加水分解によりIXへと変換することができる。
【0151】
実施例12は、モレキュラーシーブ上で事前乾燥させた電解液の電気化学的メトキシル化法における使用について記載している。電解プロセスの開始前に、電解液を、水含有量が0.05重量%未満に到達するまで、Grace(Sylobead564C、3Å、180℃/3mbarで活性化)製モレキュラーシーブ上で乾燥させた(100gの電解液当たり、30gのモレキュラーシーブ)。不活性な気体の雰囲気内で濾過により電解液からモレキュラーシーブを取り除き、さらなる9gの濃硫酸を添加後、上記実験条件下で電解液を変換した。IIIの完全な変換を293Ah後に達成し、0.7gの4-tert-ブチルベンズアルデヒド(IX)、さらに355.6gの4-tert-ブチルベンズアルデヒドジメチルアセタール(VII)を得た。これらは、上に記載されている方法を使用して加水分解によりIXへと変換することができる。
【表1】
【0152】