特許第5869704号(P5869704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5869704
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】光学部材貼合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20160210BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20160210BHJP
【FI】
   G02B5/30
   G02F1/1335 510
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-556409(P2014-556409)
(86)(22)【出願日】2014年1月7日
(86)【国際出願番号】JP2014050060
(87)【国際公開番号】WO2014109306
(87)【国際公開日】20140717
【審査請求日】2015年6月10日
(31)【優先権主張番号】特願2013-2831(P2013-2831)
(32)【優先日】2013年1月10日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】藤井 幹士
【審査官】 廣田 かおり
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−264723(JP,A)
【文献】 特開昭61−238025(JP,A)
【文献】 特開2005−49744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/1335
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学表示部品に光学部材を貼合して構成される光学部材貼合体の製造方法であって、
前記光学表示部品に前記光学表示部品の外形よりも大きい第1光学部材シートを貼り合わせて第1貼合体とする第1の工程と、
前記第1貼合体を加熱し、前記第1光学部材シートを収縮させて、前記第1光学部材シートの外形と前記光学表示部品の外形とを実質的に一致させることで、前記第1貼合体を、前記光学表示部品及び前記光学表示部品に重なる前記光学部材を含む前記光学部材貼合体とする第2の工程と、
を含む光学部材貼合体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の工程では、前記光学表示部品に前記第1光学部材シートの外形よりも大きい第2光学部材シートを貼り合わせて第2貼合体とし、前記第2光学部材シートを前記光学表示部品の外形に沿って前記光学表示部品の外形よりも大きくレーザーカットすることで、前記第2貼合体を、前記光学表示部品及び前記光学表示部品に重なる前記第1光学部材シートを含む前記第1貼合体とする請求項1記載の光学部材貼合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材貼合体の製造方法及び光学部材貼合体に関する。
本願は、2013年1月10日に出願された特願2013−002831号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ等の光学表示デバイスの生産システムにおいて、液晶パネル(光学表示部品)に貼合する偏光板等の光学部材は、長尺フィルムから液晶パネルの表示領域に合わせたサイズのシート片に切り出された後、液晶パネルに貼合されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2003−255132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の構成では、光学部材の外形と液晶パネルの外形とを一致させても、その後のタッチパネルの取り付け工程や耐熱試験等により加熱されると、光学部材が寸法収縮して表示エリアよりも小さくなる場合がある。寸法収縮を抑えるために、液晶パネルと光学部材との間の接着剤を固い強固なものにすることも考えられるが、この場合、熱収縮に伴う応力によって液晶パネルに反りが発生する。そのため、従来の構成では、表示領域周辺の額縁領域を小さくすることができず、機器の小型化が阻害されるという課題があった。
【0005】
本発明の態様はこのような事情に鑑みてなされたものであって、額縁領域を縮小して表示エリアの拡大及び機器の小型化を図ることができる光学部材貼合体の製造方法及び光学部材貼合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の態様に係る光学部材貼合体の製造方法及び光学部材貼合体は以下の手段を採用した。
(1)本発明の一態様に係る光学部材貼合体の製造方法は、光学表示部品に光学部材を貼合して構成される光学部材貼合体の製造方法であって、前記光学表示部品に前記光学表示部品の外形よりも大きい第1光学部材シートを貼り合わせて第1貼合体とする第1の工程と、前記第1貼合体を加熱し、前記第1光学部材シートを収縮させて、前記第1光学部材シートの外形と前記光学表示部品の外形とを実質的に一致させることで、前記第1貼合体を、前記光学表示部品及び前記光学表示部品に重なる前記光学部材を含む前記光学部材貼合体とする第2の工程と、を含む。
【0007】
(2)上記(1)の態様では、前記第1の工程で、前記光学表示部品と前記第1光学部材シートとを、貯蔵弾性率が温度80℃において0.56Mpa以下の接着剤を用いて貼り合わせてもよい。
【0008】
(3)上記(1)又は(2)の態様では、前記第1の工程で、前記光学表示部品に前記第1光学部材シートの外形よりも大きい第2光学部材シートを貼り合わせて第2貼合体とし、前記第2光学部材シートを前記光学表示部品の外形に沿って前記光学表示部品の外形よりも大きくレーザーカットすることで、前記第2貼合体を、前記光学表示部品及び前記光学表示部品に重なる前記第1光学部材シートを含む前記第1貼合体としてもよい。
【0009】
(4)本発明の他の態様に係る光学部材貼合体は、光学表示部品に光学部材を貼合して構成される光学部材貼合体であって、上記(1)から(3)までの態様のいずれか一項に記載の光学部材貼合体の製造方法によって製造される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の態様によれば、額縁領域を縮小して表示エリアの拡大及び機器の小型化を図ることができる光学部材貼合体の製造方法及び光学部材貼合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る光学部材貼合体の製造装置を示す模式図である。
図2】液晶パネルの平面図である。
図3図2のA−A断面図である。
図4】光学シートの断面図である。
図5】切断装置の動作を示す図である。
図6】液晶パネルの外形に対するシート片の外形を示す平面図である。
図7A】液晶パネルに対するシート片の貼合位置の決定方法の一例を示す図である。
図7B】液晶パネルに対するシート片の貼合位置の決定方法の一例を示す図である。
図8】光学部材貼合体の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。また、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
以下の説明においては、必要に応じてXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。本実施形態においては、光学表示部品である液晶パネルの搬送方向をX方向としており、液晶パネルの面内においてX方向に直交する方向(液晶パネルの幅方向)をY方向、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向としている。
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る光学部材貼合体の製造装置であるフィルム貼合システム1について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態のフィルム貼合システム1の概略構成を示す図である。
フィルム貼合システム1は、例えば液晶パネルや有機ELパネルといったパネル状の光学表示部品に、偏光フィルムや反射防止フィルム、光拡散フィルムといったフィルム状の光学部材を貼合する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態のフィルム貼合システム1は、液晶パネルPの製造ラインの一工程として設けられている。フィルム貼合システム1の各部は、電子制御装置としての制御部40により統括制御される。
【0017】
図2は、液晶パネルPを液晶パネルPの液晶層P3の厚さ方向から見た平面図である。液晶パネルPは、平面視で長方形状を有する第1基板P1と、第1基板P1に対向して配置され、第1基板P1と比較して小形の長方形状を有する第2基板P2と、第1基板P1と第2基板P2との間に封入された液晶層P3とを備える。液晶パネルPは、平面視で第1基板P1の外形状に沿う長方形状を有する。液晶パネルPの、平面視で液晶層P3の外周の内側に収まる領域が、表示領域P4に設定される。
【0018】
図3図2のA−A断面図である。液晶パネルPの表裏面には、長尺帯状の第1光学シートF1及び第2光学シートF2(図1参照、以下、光学シートFXと総称することがある。)を基に形成された第1光学部材F11及び第2光学部材F12(以下、光学部材F1Xと総称することがある。)が貼合される。本実施形態では、液晶パネルPのバックライト側及び表示面側の両面には、偏光フィルムがそれぞれ貼合される。液晶パネルPのバックライト側の面には、偏光フィルムとして第1光学部材F11が貼合される。液晶パネルPの表示面側の面には、偏光フィルムとして第2光学部材F12が貼合される。
【0019】
第1光学部材F11は、後述する第1中間シート片F1wから切り出された第1シート片F1mを加熱収縮させることにより形成される。第2光学部材F12は、後述する第2中間シート片F2wから切り出された第2シート片F2mを加熱収縮させることにより形成される。
以下、第1中間シート片F1w及び第2中間シート片F2wは、中間シート片FXwと総称することがある。第1シート片F1m及び第2シート片F2mは、シート片FXmと総称することがある。中間シート片FXwは、第2光学部材シートに相当する。シート片FXmは、第1光学部材シートに相当する。
【0020】
図4は液晶パネルPに貼合する光学シートFXの部分断面図である。光学シートFXは、フィルム状の光学部材本体F1aと、光学部材本体F1aの一方の面(図4では上面)に設けられた粘着層F2aと、粘着層F2aを介して光学部材本体F1aの一方の面に分離可能に積層されたセパレータF3aと、光学部材本体F1aの他方の面(図4では下面)に積層された表面保護フィルムF4aとを有する。光学部材本体F1aは偏光板として機能し、液晶パネルPの表示領域P4の全域とその周辺領域とにわたって貼合される。なお、図示都合上、図4の各層のハッチングは省略する。
【0021】
光学部材本体F1aは、その一方の面に粘着層F2aを残しつつセパレータF3aを分離させた状態で、液晶パネルPに粘着層F2aを介して貼合される。以下、光学シートFXからセパレータF3aを除いた部分を貼合シートF5という。粘着層F2aは、接着剤に相当する。
【0022】
セパレータF3aは、粘着層F2aから分離されるまでの間に粘着層F2a及び光学部材本体F1aを保護する。表面保護フィルムF4aは、光学部材本体F1aと共に液晶パネルPに貼合される。表面保護フィルムF4aは、光学部材本体F1aに対して液晶パネルPと反対側に配置されて光学部材本体F1aを保護する。表面保護フィルムF4aは、所定のタイミングで光学部材本体F1aから分離される。なお、光学シートFXが表面保護フィルムF4aを含まない構成であってもよい。表面保護フィルムF4aが光学部材本体F1aから分離されない構成であってもよい。
【0023】
光学部材本体F1aは、シート状の偏光子F6と、偏光子F6の一方の面に接着剤等で接合される第1フィルムF7と、偏光子F6の他方の面に接着剤等で接合される第2フィルムF8とを有する。第1フィルムF7及び第2フィルムF8は、例えば偏光子F6を保護する保護フィルムである。
【0024】
なお、光学部材本体F1aは、一層の光学層からなる単層構造でもよい。光学部材本体F1aは、複数の光学層が互いに積層された積層構造でもよい。光学層は、偏光子F6の他に、位相差フィルムや輝度向上フィルム等でもよい。第1フィルムF7と第2フィルムF8の少なくとも一方は、液晶表示素子の最外面を保護するハードコート処理やアンチグレア処理を含む防眩などの効果が得られる表面処理が施されてもよい。光学部材本体F1aは、第1フィルムF7と第2フィルムF8の少なくとも一方を含まなくてもよい。例えば第1フィルムF7を省略した場合、セパレータF3aを光学部材本体F1aの一方の面に粘着層F2aを介して貼り合わせてもよい。
【0025】
次に、本実施形態のフィルム貼合システム1について、詳しく説明する。
図1に示すように、本実施形態のフィルム貼合システム1は、図中右側の液晶パネルPの搬送方向上流側(+X方向側)から図中左側の液晶パネルPの搬送方向下流側(−X方向側)に至り、液晶パネルPを水平状態で搬送する駆動式のローラコンベア5を備えている。
【0026】
ローラコンベア5は、後述する反転装置15を境に、上流側コンベア6と下流側コンベア7とに分かれる。上流側コンベア6では、液晶パネルPは表示領域P4の短辺を搬送方向に沿うようにして搬送される。一方、下流側コンベア7では、液晶パネルPは表示領域P4の長辺を搬送方向に沿うようにして搬送される。この液晶パネルPの表裏面に対して、帯状の光学シートFXから所定長さに切り出した貼合シートF5のシート片である中間シート片FXw(光学部材F1Xに相当)が貼合される。
【0027】
上流側コンベア6は、後述する第1吸着装置11では、下流側に独立したフリーローラコンベア24を備えている。一方、下流側コンベア7は、後述する第2吸着装置20では、下流側に独立したフリーローラコンベア24を備えている。
【0028】
本実施形態のフィルム貼合システム1は、第1吸着装置11、第1集塵装置12、第1貼合装置13、第1切断装置31、反転装置15、第2集塵装置16、第2貼合装置17、第2切断装置32、加熱装置50及び制御部40を備えている。
【0029】
第1吸着装置11は、液晶パネルPを吸着して上流側コンベア6に搬送すると共に液晶パネルPのアライメント(位置決め)を行う。第1吸着装置11は、パネル保持部11aと、アライメントカメラ11bと、レールRと、を有する。
【0030】
パネル保持部11aは、上流側コンベア6により下流側のストッパSに当接した液晶パネルPを上下方向及び水平方向に移動可能に保持すると共に液晶パネルPのアライメントを行う。パネル保持部11aは、ストッパSに当接した液晶パネルPの上面を真空吸着によって吸着保持する。パネル保持部11aは、液晶パネルPを吸着保持した状態でレールR上を移動して液晶パネルPを搬送する。パネル保持部11aは、搬送が終わると吸着保持を解除して液晶パネルPをフリーローラコンベア24に受け渡す。
【0031】
アライメントカメラ11bは、ストッパSに当接した液晶パネルPをパネル保持部11aが保持し、上昇した状態で液晶パネルPのアライメントマークや先端形状等を撮像する。アライメントカメラ11bによる撮像データは制御部40に送信され、この撮像データに基づき、パネル保持部11aが作動して搬送先のフリーローラコンベア24に対する液晶パネルPのアライメントが行われる。つまり、液晶パネルPは、フリーローラコンベア24に対する搬送方向、搬送方向と直交する方向、及び液晶パネルPの垂直軸回りの旋回方向でのズレ分を加味した状態でフリーローラコンベア24に搬送される。
パネル保持部11aによりレールR上を搬送された液晶パネルPは吸着パッド26に吸着された状態で中間シート片FXwと共に先端部を挟圧ロール23に挟持される。
【0032】
第1集塵装置12は、第1貼合装置13の貼合位置である挟圧ロール23の、液晶パネルPの搬送上流側に設けられている。第1集塵装置12は、貼合位置に導入される前の液晶パネルPの周辺の塵埃、特に下面側の塵埃を除去するため、静電気の除去及び集塵を行う。
【0033】
第1貼合装置13は、第1吸着装置11よりもパネル搬送下流側に設けられている。第1貼合装置13は、貼合位置に導入された液晶パネルPの下面に対して、所定サイズにカットした貼合シートF5(第1中間シート片F1wに相当)の貼合を行う。
【0034】
第1貼合装置13は、搬送装置22と、挟圧ロール23とを備えている。
【0035】
搬送装置22は、光学シートFXが巻回された原反ロールR1から光学シートFXを巻き出しつつ光学シートFXを光学シートFXの長手方向に沿って搬送する。搬送装置22は、セパレータF3aをキャリアとして貼合シートF5を搬送する。搬送装置22は、ロール保持部22aと、複数のガイドローラ22bと、切断装置22cと、ナイフエッジ22dと、巻き取り部22eと、を有する。
【0036】
ロール保持部22aは、帯状の光学シートFXを巻回した原反ロールR1を保持すると共に光学シートFXを光学シートFXの長手方向に沿って繰り出す。
複数のガイドローラ22bは、原反ロールR1から巻き出した光学シートFXを所定の搬送経路に沿って案内するように光学シートFXを巻きかける。
切断装置22cは、搬送経路上の光学シートFXにハーフカットを施す。
ナイフエッジ22dは、ハーフカットを施した光学シートFXを鋭角に巻きかけてセパレータF3aから貼合シートF5を分離させつつ貼合シートF5を貼合位置に供給する。
巻き取り部22eは、ナイフエッジ22dを経て単独となったセパレータF3aを巻き取るセパレータロールR2を保持する。
【0037】
搬送装置22の始点に位置するロール保持部22aと搬送装置22の終点に位置する巻き取り部22eとは、例えば互いに同期して駆動する。これにより、ロール保持部22aが光学シートFXを光学シートFXの搬送方向へ繰り出しつつ、巻き取り部22eがナイフエッジ22dを経たセパレータF3aを巻き取る。以下、搬送装置22における光学シートFX(セパレータF3a)の搬送方向上流側をシート搬送上流側、搬送方向下流側をシート搬送下流側という。
【0038】
各ガイドローラ22bは、搬送中の光学シートFXの進行方向を搬送経路に沿って変化させると共に、複数のガイドローラ22bの少なくとも一部が搬送中の光学シートFXのテンションを調整するように可動する。
【0039】
なお、ロール保持部22aと切断装置22cとの間には、図示しないダンサローラが配置されていてもよい。ダンサローラは、光学シートFXが切断装置22cで切断される間に、ロール保持部22aから搬送される光学シートFXの繰り出し量を吸収する。
【0040】
図5は、本実施形態の切断装置22cの動作を示す図である。
図5に示すように、切断装置22cは、光学シートFXが所定長さ繰り出された際、光学シートFXの長手方向と直交する幅方向の全幅にわたって、光学シートFXの厚さ方向の一部を切断するハーフカットを行う。本実施形態の切断装置22cは、光学シートFXに対してセパレータF3aとは反対側から光学シートFXに向かって進退可能に設けられている。
【0041】
切断装置22cは、光学シートFXの搬送中に働くテンションによって光学シートFX(セパレータF3a)が破断しないように(所定の厚さがセパレータF3aに残るように)、切断刃の進退位置を調整し、粘着層F2aとセパレータF3aとの界面の近傍までハーフカットを施す。なお、切断刃に代わるレーザー装置を用いてもよい。
【0042】
ハーフカット後の光学シートFXには、光学シートFXの厚さ方向で光学部材本体F1a及び表面保護フィルムF4aが切断されることにより、光学シートFXの幅方向の全幅にわたる切込線L1,L2が形成される。切込線L1,L2は、帯状の光学シートFXの長手方向で複数並ぶように形成される。例えば同一サイズの液晶パネルPを搬送する貼合工程の場合、複数の切込線L1,L2は光学シートFXの長手方向で等間隔に形成される。光学シートFXは、複数の切込線L1,L2によって長手方向で複数の区画に分けられる。光学シートFXにおける長手方向で隣り合う一対の切込線L1,L2に挟まれる区画は、それぞれ貼合シートF5における一つの中間シート片FXwに対応する。
【0043】
図6は、液晶パネルPの外形に対する中間シート片FXwの外形、シート片FXmの外形を示す平面図である。
図6に示すように、中間シート片FXwは、液晶パネルPの外形よりも大きいサイズ(具体的にはシート片FXmの外形よりも大きいサイズ)の光学シートFXのシート片である。
【0044】
図1に戻り、ナイフエッジ22dは、上流側コンベア6の下方に配置されて光学シートFXの幅方向で少なくとも光学シートFXの全幅にわたって延在する。ナイフエッジ22dは、ハーフカット後の光学シートFXのセパレータF3a側に摺接するように光学シートFXを巻きかける。
【0045】
ナイフエッジ22dは、光学シートFXの幅方向(上流側コンベア6の幅方向)から見て下方に傾斜して配置される第1面と、光学シートFXの幅方向から見て第1面と第2面とが鋭角を形成するように第1面の上方に配置される第2面と、第1面及び第2面が交わる先端部とを有する。
【0046】
第1貼合装置13において、ナイフエッジ22dは、ナイフエッジ22dの先端部に第1光学シートF1を、第1光学シートF1が鋭角に折り返されるように巻きかける。第1光学シートF1は、ナイフエッジ22dの先端部で鋭角に折り返す際、セパレータF3aから貼合シートF5のシート片(第1中間シート片F1w)を分離させる。ナイフエッジ22dの先端部は、挟圧ロール23のパネル搬送上流側に近接して配置される。ナイフエッジ22dによりセパレータF3aから分離した第1中間シート片F1wは、第1吸着装置11に吸着された状態の液晶パネルPの下面に重なりつつ、挟圧ロール23の一対の貼合ローラ23a間に導入される。第1中間シート片F1wは、液晶パネルPの外形よりも大きいサイズ(具体的には第1シート片F1mの外形よりも大きいサイズ)の第1光学シートF1のシート片である。
【0047】
一方、ナイフエッジ22dにより、貼合シートF5と分離されたセパレータF3aは巻き取り部22eに向かう。巻き取り部22eは、貼合シートF5から分離されたセパレータF3aを巻き取り、回収する。
【0048】
挟圧ロール23は、搬送装置22が第1光学シートF1から分離させた第1中間シート片F1wを上流側コンベア6により搬送される液晶パネルPの下面に貼合する。
【0049】
挟圧ロール23は、互いに軸方向を平行にして配置された一対の貼合ローラ23a,23aを有する(上方の貼合ローラ23aは上下方向に移動可能である)。一対の貼合ローラ23a,23a間には所定の間隙が形成され、この間隙内が第1貼合装置13の貼合位置となる。
【0050】
間隙内には、液晶パネルP及び第1中間シート片F1wが重なり合って導入される。液晶パネルP及び第1中間シート片F1wは、一対の貼合ローラ23aに挟圧されつつ上流側コンベア6のパネル搬送下流側に送り出される。本実施形態では、挟圧ロール23により液晶パネルPのバックライト側の面に第1中間シート片F1wが貼合されることにより、第1光学部材貼合体PA1が形成される。第1光学部材貼合体PA1は、第2貼合体に相当する。
【0051】
第1切断装置31は、第1貼合装置13よりもパネル搬送下流側に設けられている。第1切断装置31は、液晶パネルPに貼合された第1中間シート片F1wを液晶パネルPの外形に沿って液晶パネルPの外形よりも大きくレーザーカットする。これにより、第1光学部材貼合体PA1を、液晶パネルP及びその液晶パネルPに重なる第1シート片F1mを含む第2光学部材貼合体PA2とする(図6参照)。第2光学部材貼合体PA2は、第1貼合体に相当する。
【0052】
第1切断装置31により第1光学部材貼合体PA1から第1中間シート片F1wの余剰部分が切り離されることにより、液晶パネルPのバックライト側の面に第1シート片F1mが貼合されて構成される第2光学部材貼合体PA2が形成される。第1中間シート片F1wから切り離された余剰部分は、不図示の剥離装置によって液晶パネルPから剥離され回収される。
【0053】
反転装置15は、液晶パネルPの表示面側を上面にした第2光学部材貼合体PA2を表裏反転させて液晶パネルPのバックライト側を上面にすると共に、第2貼合装置17に対する液晶パネルPのアライメントを行う。
【0054】
反転装置15は、第1吸着装置11のパネル保持部11aと同様のアライメント機能を有する。反転装置15には、第1吸着装置11のアライメントカメラ11bと同様のアライメントカメラ15cが設けられている。
【0055】
反転装置15は、制御部40に記憶された光学軸方向の検査データ及びアライメントカメラ15cの撮像データに基づき、第2貼合装置17に対する第2光学部材貼合体PA2の部品幅方向での位置決め及び回転方向での位置決めを行う。この位置決め後、第2光学部材貼合体PA2が第2貼合装置17の貼合位置に導入される。
【0056】
第2吸着装置20は、第1吸着装置11と同様の構成を備えているため同一部分に同一符号を付して説明する。第2吸着装置20は、第2光学部材貼合体PA2を吸着して下流側コンベア7に搬送すると共に第2光学部材貼合体PA2のアライメント(位置決め)を行う。第2吸着装置20は、パネル保持部11aと、アライメントカメラ11bと、レールRと、を有する。
【0057】
パネル保持部11aは、下流側コンベア7により下流側のストッパSに当接した第2光学部材貼合体PA2を上下方向及び水平方向に移動可能に保持すると共に第2光学部材貼合体PA2のアライメントを行う。パネル保持部11aは、ストッパSに当接した第2光学部材貼合体PA2の上面を真空吸着によって吸着保持する。パネル保持部11aは、第2光学部材貼合体PA2を吸着保持した状態でレールR上を移動して第2光学部材貼合体PA2を搬送する。パネル保持部11aは、この搬送が終わると吸着保持を解除して第2光学部材貼合体PA2をフリーローラコンベア24に受け渡す。
【0058】
アライメントカメラ11bは、ストッパSに当接した第2光学部材貼合体PA2をパネル保持部11aが保持し、上昇した状態で第2光学部材貼合体PA2のアライメントマークや先端形状等を撮像する。アライメントカメラ11bによる撮像データは制御部40に送信され、この撮像データに基づき、パネル保持部11aが作動して搬送先のフリーローラコンベア24に対する第2光学部材貼合体PA2のアライメントが行われる。つまり、第2光学部材貼合体PA2は、フリーローラコンベア24に対する搬送方向、搬送方向と直交する方向、及び第2光学部材貼合体PA2の垂直軸回りの旋回方向でのズレ分を加味した状態でフリーローラコンベア24に搬送される。
【0059】
第2集塵装置16は、第2貼合装置17の貼合位置である挟圧ロール23の、液晶パネルPの搬送方向上流側に配置されている。第2集塵装置16は、貼合位置に導入される前の第2光学部材貼合体PA2の周辺の塵埃、特に下面側の塵埃を除去するため、静電気の除去及び集塵を行う。
【0060】
第2貼合装置17は、第2集塵装置16よりもパネル搬送下流側に設けられている。第2貼合装置17は、貼合位置に導入された第2光学部材貼合体PA2の下面に対して、所定サイズにカットした貼合シートF5(第2中間シート片F2wに相当)の貼合を行う。
第2貼合装置17は、第1貼合装置13と同様の搬送装置22及び挟圧ロール23を備えている。
【0061】
挟圧ロール23の一対の貼合ローラ23a間の間隙内(第2貼合装置17の貼合位置)には、第2光学部材貼合体PA2及び第2中間シート片F2wが重なり合って導入される。第2中間シート片F2wは、液晶パネルPの外形よりも大きいサイズ(具体的には第2シート片F2mの外形よりも大きいサイズ)の第2光学シートF2のシート片である。
【0062】
第2光学部材貼合体PA2及び第2中間シート片F2wは、一対の貼合ローラ23aに挟圧されつつ下流側コンベア7のパネル搬送下流側に送り出される。本実施形態では、挟圧ロール23により液晶パネルPの表示面側の面(第2光学部材貼合体PA2の第1シート片F1mが貼合された面とは反対側の面)に第2中間シート片F2wが貼合されることにより、第3光学部材貼合体PA3が形成される。第3光学部材貼合体PA3は、第2貼合体に相当する。
【0063】
第2切断装置32は、第2貼合装置17よりもパネル搬送下流側に設けられている。第2切断装置32は、液晶パネルPに貼合された第2中間シート片F2wを液晶パネルPの外形に沿って液晶パネルPの外形よりも大きくレーザーカットする。これにより、第3光学部材貼合体PA3を、液晶パネルP及びその液晶パネルPに重なる第1シート片F1m及び第2シート片F2mを含む第4光学部材貼合体PA4とする(図6参照)。第4光学部材貼合体PA4は、第1貼合体に相当する。
【0064】
第2切断装置32により第3光学部材貼合体PA3から第2中間シート片F2wの余剰部分が切り離されることにより、液晶パネルPの表示面側の面に第2シート片F2mが貼合され、且つ、液晶パネルPのバックライト側の面に第1シート片F1mが貼合されて構成される第4光学部材貼合体PA4が形成される。第2中間シート片F2wから切り離された余剰部分は、不図示の剥離装置によって液晶パネルPから剥離され回収される。
【0065】
第1切断装置31および第2切断装置32は、例えばCOレーザーカッターである。第1切断装置31および第2切断装置32は、液晶パネルPに貼合された中間シート片FXwを液晶パネルPの外形に沿って液晶パネルPの外形よりも大きく(具体的にはシート片FXmの外形よりも大きく)無端状に切断する。
【0066】
加熱装置50は、第2切断装置32よりもパネル搬送下流側に設けられている。加熱装置50は、第4光学部材貼合体PA4を加熱し、第1シート片F1m及び第2シート片F2mの各々を収縮させて、第1シート片F1mの外形及び第2シート片F2mの外形をそれぞれ液晶パネルPの外形と実質的に一致させる。
【0067】
ここで、「実質的に一致させる」とは、第1シート片F1mの外形、第2シート片F2mの外形及び液晶パネルPの外形の間に大きな位置ズレが生じない範囲で、各々の外形を若干異ならせてもよいことを意味する。例えば、第1シート片F1mの外形、第2シート片F2mの外形及び液晶パネルPの外形が矩形であるとき、第1シート片F1mの一辺の長さV1と液晶パネルPの一辺の長さVpとの比V1/Vpが0.999/1以上1.001/1以下の範囲であり、且つ、第2シート片F2mの一辺の長さV2と液晶パネルPの一辺の長さVpとの比V2/Vpが0.999/1以上1.001/1以下の範囲であれば、各辺の長さは実質的に一致しているといえる。このような範囲であれば、第1シート片F1mの外形、第2シート片F2mの外形及び液晶パネルPの外形との間の位置ズレを十分に抑制することができる。
【0068】
通常、偏光板は、環境により、0.1%〜0.8%程度は収縮する。仮に、偏光板を収縮させないように液晶パネルと偏光板とを貼り合わせる接着剤を強固なものにすると、偏光板の収縮に伴い液晶パネルが反ってしまう。そのため、本実施形態においては後述する柔軟な接着剤を用いて液晶パネルと偏光板とを貼合し、偏光板の収縮分を考慮した大きめのサイズで加工を行う。
なお、収縮は、偏光板全体で生じる。柔軟な接着剤を使用している痕跡は、偏光板が収縮により液晶パネルの外形よりも小さくなる場合には、偏光板の収縮後に液晶パネルの端部に残存した接着剤を確認することにより調べることができる。
【0069】
これにより、第4光学部材貼合体PA4を、液晶パネルP及びその液晶パネルPに重なる第1光学部材F11及び第2光学部材F12を含む第5光学部材貼合体PA5とする。第5光学部材貼合体PA5は、光学部材貼合体に相当する。
【0070】
加熱装置50により第1シート片F1m及び第2シート片F2mの各々が収縮されることにより、液晶パネルPの表示面側の面に第2光学部材F12が貼合され、且つ、液晶パネルPのバックライト側の面に第1光学部材F11が貼合されて構成される第5光学部材貼合体PA5が形成される。
【0071】
加熱装置50よりもパネル搬送下流側には、不図示の貼合検査装置が設けられている。
貼合検査装置では、フィルム貼合がなされたワーク(液晶パネルP)の不図示の検査装置による検査(光学部材F1Xの位置が適正か否か(位置ズレが公差範囲内にあるか否か)等の検査)が行われる。液晶パネルPに対する光学部材F1Xの位置が適正ではないと判定されたワークは、不図示の払い出し手段によりシステム外に排出される。
【0072】
なお、本実施形態においてフィルム貼合システム1の各部を統括制御する電子制御装置としての制御部40は、コンピュータシステムを含んで構成されている。このコンピュータシステムは、CPU等の演算処理部と、メモリやハードディスク等の記憶部とを備える。
本実施形態の制御部40は、コンピュータシステムの外部の装置との通信を実行可能なインターフェースを含む。制御部40には、入力信号を入力可能な入力装置が接続されていてもよい。上記の入力装置は、キーボード、マウス等の入力機器、あるいはコンピュータシステムの外部の装置からのデータを入力可能な通信装置等を含む。制御部40は、フィルム貼合システム1の各部の動作状況を示す液晶表示ディスプレイ等の表示装置を含んでいてもよい。制御部40は、表示装置と接続されていてもよい。
【0073】
制御部40の記憶部には、コンピュータシステムを制御するオペレーティングシステム(OS)がインストールされている。制御部40の記憶部には、演算処理部にフィルム貼合システム1の各部を制御させることによって、フィルム貼合システム1の各部に光学シートFを精度よく搬送させるための処理を実行させるプログラムが記録されている。記憶部に記録されているプログラムを含む各種情報は、制御部40の演算処理部が読み取り可能である。制御部40は、フィルム貼合システム1の各部の制御に要する各種処理を実行するASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の論理回路を含んでいてもよい。
【0074】
記憶部は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などといった半導体メモリや、ハードディスク、CD−ROM読取り装置、ディスク型記憶媒体などといった外部記憶装置などを含む。記憶部には、機能的には、第1吸着装置11、第1集塵装置12、第1貼合装置13、第1切断装置31、反転装置15、第2吸着装置20、第2集塵装置16、第2貼合装置17、第2切断装置32、加熱装置50の動作の制御手順が記述されたプログラムソフトを記憶する記憶領域、その他各種の記憶領域が設定される。
【0075】
以下、図7A、7Bを参照して、液晶パネルPに対する中間シート片FXwの貼合位置(相対貼合位置)の決定方法の一例を説明する。
【0076】
まず、図7Aに示すように、光学シートFXの幅方向に複数の検査ポイントCPを設定し、各検査ポイントCPにおいて光学シートFXの光学軸の方向を検出する。光学軸を検出するタイミングは、原反ロールR1の製造時でもよく、原反ロールR1から光学シートFXを巻き出してハーフカットするまでの間でもよい。光学シートFXの光学軸方向のデータは、光学シートFXの位置(光学シートFXの長手方向の位置および幅方向の位置)と関連付けられて不図示の記憶装置に記憶される。
【0077】
制御部40は、記憶装置から各検査ポイントCPの光学軸のデータ(光学軸の面内分布の検査データ)を取得し、シート片FXmが切り出される部分の光学シートFX(切込線CLによって区画される領域)の平均的な光学軸の方向を検出する。
【0078】
例えば、図7Bに示すように、光学軸の方向と光学シートFXのエッジラインELとのなす角度(ずれ角)を検査ポイントCP毎に検出し、ずれ角のうち最も大きな角度(最大ずれ角)をθmaxとし、最も小さな角度(最小ずれ角)をθminとしたときに、最大ずれ角θmaxと最小ずれ角θminとの平均値θmid(=(θmax+θmin)/2)を平均ずれ角として検出する。そして、光学シートFXのエッジラインELに対して平均ずれ角θmidをなす方向を光学シートFXの平均的な光学軸の方向として検出する。なお、ずれ角は、例えば、光学シートFXのエッジラインELに対して左回りの方向を正とし、右回りの方向を負として算出される。
【0079】
そして、上記の方法で検出された光学シートFXの平均的な光学軸の方向が、液晶パネルPの表示領域P4の長辺または短辺に対して所望の角度をなすように、液晶パネルPに対する中間シート片FXwの貼合位置(相対貼合位置)が決定される。例えば、設計仕様によって光学部材F1Xの光学軸の方向が表示領域P4の長辺または短辺に対して90°をなす方向に設定されている場合には、光学シートFXの平均的な光学軸の方向が表示領域P4の長辺又は短辺に対して90°をなすように、中間シート片FXwが液晶パネルPに貼合される。
【0080】
前述した切断装置31,32は、液晶パネルPの外形の外周縁をカメラ等の検出手段で検出し、液晶パネルPに貼合された中間シート片FXwを液晶パネルPの外形に沿ってその液晶パネルPの外形よりも大きく無端状に切断する。液晶パネルPの外形は、液晶パネルPの最外縁若しくは液晶パネルPに設けられたアライメントマークなどを撮像することによって検出される。表示領域P4の外側には、液晶パネルPの第1基板P1及び第2基板P2を接合するシール剤等を配置する所定幅の額縁部G(図3参照)が設けられており、この額縁部Gよりも大きいサイズで切断装置31,32による中間シート片FXwの切断(カットライン:WCL)が行われる。本実施形態では、この額縁部Gよりも大きいサイズで各切断装置31,32によるレーザーカットが行われる。例えば、額縁部Gの幅は250μm程度である。
【0081】
レーザー加工機の切断線の振れ幅(公差)は切断刃のそれよりも小さい。したがって本実施形態では、光学シートFXから液晶パネルPの外形よりも大きいサイズの光学シートFXの中間シート片FXwを切り出し、この切り出した中間シート片FXwを液晶パネルPに貼合した後に、中間シート片FXwを液晶パネルPの外形に沿って液晶パネルPの外形よりも大きくカットする場合、切断線の振れ公差のみを考慮すればよい(±0.1mm以下)。
【0082】
(光学部材貼合体の製造方法)
図8は、本実施形態の光学部材貼合体の製造方法のフローチャートである。
先ず、使用する光学シートFXを巻回した原反ロールR1をロール保持部22aに装填する。この装填が完了した後、オペレータは、操作パネルなどを利用して初期設定を行う(図8に示すステップS1)。例えば、初期設定により、光学シートFXの切断サイズ、厚み、供給速度、切断装置22c(切断刃)の切り込み深さ、ロール保持部22aの繰り出し速度、ローラコンベア5の搬送速度などが設定される。
【0083】
初期設定が完了すると、ロール保持部22aは、制御部40の制御に基づいて、光学シートFXの搬送を開始する(図8に示すステップS2)。
【0084】
切断装置22cは、制御部40の制御に基づいて、光学シートFXに切込線を形成する(図8に示すステップS3)。切込線は、帯状の光学シートFXの長手方向で所定間隔に形成される。光学シートFXの長手方向で隣り合う一対の切込線に挟まれる区画部分それぞれが、貼合シートF5における一つの中間シート片FXwとなる。
【0085】
ローラコンベア5は、制御部40の制御に基づいて、貼合エリアに貼合シートF5が搬送されてくるタイミングと同期させて貼合エリアへ液晶パネルPを搬送する(図8に示すステップS4)。
【0086】
第1貼合装置13は、制御部40の制御に基づいて、第1中間シート片F1wを液晶パネルPのバックライト側の面に貼り合わせる(図8に示すステップS5)。これにより、第2貼合体としての第1光学部材貼合体PA1が形成される。
【0087】
第1切断装置31は、制御部40の制御に基づいて、第1中間シート片F1wを液晶パネルPの外形に沿って液晶パネルPの外形よりも大きくレーザーカットする。例えば、第1中間シート片F1wを、液晶パネルPの端縁(パネルエッジ)に対して30μm〜50μm大きめにカットする。これにより、第1光学部材貼合体PA1を、液晶パネルPのバックライト側の面に第1シート片F1mが貼合されて構成される第2光学部材貼合体PA2とする(図8に示すステップS6)。
【0088】
反転装置15は、制御部40の制御に基づいて、液晶パネルPの表示面側を上面にした第2光学部材貼合体PA2を表裏反転させて液晶パネルPのバックライト側を上面にすると共に、第2貼合装置17に対する液晶パネルPのアライメントを行う。
【0089】
第2貼合装置17は、制御部40の制御に基づいて、第2中間シート片F2wを液晶パネルPの表示面側の面に貼り合わせる(図8に示すステップS5)。これにより、第2貼合体としての第3光学部材貼合体PA3が形成される。
【0090】
第2切断装置32は、制御部40の制御に基づいて、第2中間シート片F2wを液晶パネルPの外形に沿って液晶パネルPの外形よりも大きくレーザーカットする。例えば、第2中間シート片F2wを、液晶パネルPの端縁(パネルエッジ)に対して30μm〜50μm大きめにカットする。これにより、第3光学部材貼合体PA3を、液晶パネルPの表示面側の面に第2シート片F2mが貼合され、且つ、液晶パネルPのバックライト側の面に第1シート片F1mが貼合されて構成される第4光学部材貼合体PA4とする(図8に示すステップS6、第1の工程)。
【0091】
本実施形態において、液晶パネルPとシート片FXmとを貼り合わせる接着剤としての粘着層F2a(図4参照)としては、貯蔵弾性率が温度80℃において0.56MPa以下のものを用いる。本実施形態では、例えば貯蔵弾性率が温度80℃において0.24MPaの粘着層F2aを用いる。
【0092】
「貯蔵弾性率」は、JIS K7244−6:1999「プラスチック−動的機械特性の試験方法−第6部:せん断振動−非共振法」に準拠して測定した。このとき、粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製の「DVA−220」)を用い、周波数を1Hzとして、昇温速度10℃/分で温度を20℃から100℃まで上げ、その昇温途中である80℃における貯蔵弾性率を測定した。
【0093】
加熱装置50は、制御部40の制御に基づいて、第4光学部材貼合体PA4を加熱し、第1シート片F1m及び第2シート片F2mの各々を収縮させて、第1シート片F1mの外形及び第2シート片F2mの外形をそれぞれ液晶パネルPの外形と実質的に一致させる。
【0094】
第4光学部材貼合体PA4の加熱処理の条件(加熱温度、加熱時間など)は、出荷物である第5光学部材貼合体PA5の形成工程以降に予定されている加熱処理の条件に基づいて決定される。この場合、第4光学部材貼合体PA4の加熱処理の条件は、表示画像の色味が変化するのを抑制する観点から、熱が偏光子に影響しない範囲で設定する。このような条件は、予め制御部40の記憶部に記憶させておく。切断装置31,32によって中間シート片FXwから切り出すシート片FXmの大きさは、上記の加熱処理の条件によって熱収縮したときに液晶パネルPの外形と実質的に一致するような大きさとして決定される。
【0095】
例えば、第4光学部材貼合体PA4の加熱温度は、タッチパネルの取り付け工程や耐熱試験で予定されている60℃〜100℃の範囲の温度とし、加熱時間は15分〜60分の範囲の時間とする。本実施形態では、80℃で30分間加熱する。これにより、タッチパネルの取り付け工程や耐熱試験において、光学部材F1Xが大きく熱収縮することが抑制される。
【0096】
これにより、第4光学部材貼合体PA4を、液晶パネルPの表示面側の面に第2光学部材F12が貼合され、且つ、液晶パネルPのバックライト側の面に第1光学部材F11が貼合されて構成される第5光学部材貼合体PA5とする(図8に示すステップS7、第2の工程)。
【0097】
従来の構成では、長尺フィルムから切り出した偏光板を液晶パネルに貼り合わせて貼合体とし、その貼合体において偏光板の外形と液晶パネルの外形とを一致させても、熱耐久試験等により加熱されると、偏光板が寸法収縮して表示エリアよりも小さくなる場合がある。例えば、温度80℃で100時間〜300時間の条件で熱耐久試験を行い、タッチパネルへの取付工程等において温度80℃で30分間放置すると、偏光板は250μm〜1000μmの範囲で寸法収縮する。額縁部の幅を250μm未満に設定した場合、偏光板が寸法収縮して表示エリアよりも小さくなってしまう。そのため、額縁部を小さくすることができず、機器の小型化が阻害される。
【0098】
これに対し、本実施形態の光学部材貼合体の製造方法によれば、第1光学部材F11,第2光学部材F12が加熱収縮した状態で液晶パネルPに貼り合わされて第4光学部材貼合体PA4とされるため、第4光学部材貼合体PA4がその後の熱耐久試験等により加熱されても、第1光学部材F11,第2光学部材F12が寸法収縮して表示エリアよりも小さくなることが抑制される。従って、額縁部Gを狭めて表示エリアの拡大及び機器の小型化を図ることができる。
【0099】
また、本実施形態では、粘着層F2aとして、加熱処理条件における貯蔵弾性率が温度80℃において0.24Mpaの柔軟で接着力が比較的弱い接着剤を用いている。そのため、固く強固に接着する接着剤を用いる場合に比べて、加熱処理したときの液晶パネルPの反りが抑制される。本実施形態では、液晶パネルPとシート片FXmとの接着力を強固なものとせず、加熱処理時にシート片FXmの収縮に対して粘着層F2aが追従しやすくすることで、液晶パネルPの反りを抑制している。そのため、出荷品としての第5光学部材貼合体PA5の製造歩留りを向上できるとともに、第5光学部材貼合体PA5にタッチパネルなどを取り付けた最終製品の製造歩留りも向上することができる。
【0100】
また、第1シート片F1m,第2シート片F2mよりも大きい第1中間シート片F1w,第2中間シート片F2wを液晶パネルPに貼合することで、第1シート片F1m,第2シート片F2mの外形を液晶パネルPの外形に対して所望の量だけ大きく調整することが容易となる。
さらに、第1中間シート片F1w,第2中間シート片F2wの位置に応じてその光学軸方向が変化する場合でも、この光学軸方向に合わせて液晶パネルPをアライメントして貼合することができる。
これにより、液晶パネルPに対する第1光学部材F11,第2光学部材F12の光学軸方向の精度を向上させることができ、光学表示デバイスの精彩及びコントラストを高めることができる。
【0101】
なお、本実施形態では、加熱装置50が第2切断装置32よりもパネル搬送下流側に設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、第1加熱装置を第1切断装置31よりもパネル搬送下流側(第1切断装置31と反転装置15との間)に設けるとともに、第2加熱装置を第2切断装置32よりもパネル搬送下流側に設けてもよい。この場合、第1加熱装置は、第1シート片F1mを加熱収縮させて、第1シート片F1mの外形と液晶パネルPの外形とを実質的に一致させる。一方、第2加熱装置は、第2シート片F2mを加熱収縮させて、第2シート片F2mの外形と液晶パネルPの外形とを実質的に一致させる。
【0102】
また、本実施形態では、第1の工程において、液晶パネルPにシート片FXmの外形よりも大きい中間シート片FXwを貼り合わせて第2貼合体とし、中間シート片FXwを液晶パネルPの外形に沿ってその液晶パネルPの外形よりも大きくレーザーカットすることで、第2貼合体を、液晶パネルP及びその液晶パネルPに重なるシート片FXmを含む第1貼合体とする例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、第1の工程において、中間シート片FXwを形成せずに、液晶パネルPにその液晶パネルPの外形よりも大きいシート片FXmを貼り合わせて第1貼合体としてもよい。
【0103】
また、本実施形態では、光学シートFXをロール原反から引き出し、液晶パネルPに液晶パネルPの外形よりも大きい中間シート片FXwを貼合した後、中間シート片FXwを液晶パネルPの外形よりも大きいシート片FXmに切り出す場合を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ロール原反を用いずに、液晶パネルPの外形よりも大きいサイズに切り出された枚葉状の光学フィルムチップを液晶パネルに貼合する場合においても本発明を適用することができる。
【0104】
以上、添付図面を参照しながら本実施形態に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0105】
F2a…粘着層(接着剤)、P…液晶パネル(光学表示部品)、FX…光学シート、FXm…シート片(第1光学部材シート)、FXw…中間シート片(第2光学部材シート)、F1X…光学部材、PA1…第1光学部材貼合体(第2貼合体)、PA2…第2光学部材貼合体(第1貼合体)、PA3…第3光学部材貼合体(第2貼合体)、PA4…第4光学部材貼合体(第1貼合体)、PA5…第5光学部材貼合体(光学部材貼合体)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8