(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5869976
(24)【登録日】2016年1月15日
(45)【発行日】2016年2月24日
(54)【発明の名称】金属−液晶ポリマー複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 26/00 20060101AFI20160210BHJP
H01L 33/48 20100101ALI20160210BHJP
H01G 9/08 20060101ALI20160210BHJP
H01L 23/50 20060101ALI20160210BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20160210BHJP
B29K 105/22 20060101ALN20160210BHJP
【FI】
C23C26/00 A
H01L33/00 400
H01G9/08 C
H01L23/50 V
B29C45/14
B29K105:22
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-164849(P2012-164849)
(22)【出願日】2012年7月25日
(65)【公開番号】特開2014-27053(P2014-27053A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2014年12月19日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】古澤 秀樹
【審査官】
祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−245303(JP,A)
【文献】
特開2010−287588(JP,A)
【文献】
特開2010−199166(JP,A)
【文献】
特開昭63−270108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 24/00−30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗面化処理されていない金属材料に窒素を含む官能基を有するカップリング剤の水溶液を用いた表面処理を行い、この処理面に液晶ポリマーを射出成形で接合させる、金属−液晶ポリマー複合体の製造方法。
【請求項2】
前記カップリング剤の主成分元素がSi、Ti及びAlのいずれかである請求項1に記載の金属−液晶ポリマー複合体の製造方法。
【請求項3】
前記窒素を含む官能基がアミノ基、イソシアネート基及びウレイド基のいずれかである請求項1又は2に記載の金属−液晶ポリマー複合体の製造方法。
【請求項4】
前記カップリング剤の水溶液を用いた表面処理を行った金属材料が、前記金属材料表面のSi、Ti、Alの下方に、Cu、Al、Cr、Ag、Ni、In、Snのいずれか1種以上の金属又はその酸化物の層を有する請求項1〜3のいずれかに記載の金属−液晶ポリマー複合体の製造方法。
【請求項5】
前記カップリング剤の水溶液を用いた表面処理を、カップリング剤が均一に溶解した溶液で行う請求項1〜4のいずれかに記載の金属−液晶ポリマー複合体の製造方法。
【請求項6】
前記カップリング剤の水溶液を用いた表面処理を、カップリング剤が溶解したpH7〜14の溶液で行う請求項1〜5のいずれかに記載の金属−液晶ポリマー複合体の製造方法。
【請求項7】
プレス加工または曲げ加工した後に金属材料に前記表面処理を施し、この処理面に液晶ポリマーを射出成形で接合させる請求項1〜6のいずれかに記載の金属−液晶ポリマー複合体の製造方法。
【請求項8】
金属材料に前記表面処理を施した後にプレス加工または曲げ加工し、前記表面処理面に液晶ポリマーを射出成形で接合させる請求項1〜7のいずれかに記載の金属−液晶ポリマー複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料と液晶ポリマーとが良好な密着力で接合している金属−液晶ポリマー複合体の製造方法及び当該金属−液晶ポリマー複合体を備えた電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネ、低コスト化の観点からLEDの普及が進行している。LEDの発光素子から放たれる光を最大限利用するために、素子を搭載する電極にはAgを主成分とした白色めっきが施されている。耐硫化性や低コスト化の観点から純AgめっきではなくInやSnをはじめとした合金めっきが開発されている。
また、LED素子を封止材で封止するために形成されるボディケースは高耐熱性のナイロンを射出成形して形成される。このボディケース用の樹脂としては例えば芳香族ポリアミドのアモデル(登録商標)がある。
また、電子機器で取り扱う信号は高周波数帯であることが多く、例えば、タンタルコンデンサは電源平滑用やノイズ除去のバイパスコンデンサとして用いられる。このタンタルコンデンサは陰極端子、陽極端子、及び、Agペーストで覆われたコンデンサ本体をエポキシ樹脂で覆うことで構成されている。タンタルコンデンサでは誘電率が高い酸化タンタルが誘電体として用いられている。さらに、最近では酸化タンタルよりも誘電率が高い酸化ニオブを誘電体としたニオブコンデンサが注目を集めている。
【0003】
このような技術として、例えば、特許文献1には、高反射率に加え、製造性に優れたLED用リードフレームの表面処理技術が開示されている。また、特許文献2にはエポキシ樹脂を封止剤としたタンタルコンデンサが、特許文献3にはニオブコンデンサが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−89638号公報
【特許文献2】特許3700771号公報
【特許文献3】特許4817468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LEDのケースボディで使用されるアモデルに代表される芳香族ポリアミドは、流動性に劣り、ケースボディの射出成形に問題があった。これに対し、本発明者は、芳香族ポリアミドを液晶ポリマーに代えると流動性が増すため、ケースボディの射出成形が容易になることを見出した。また、液晶ポリマー自体が白いので、白色の電極とあわせてよりLED素子の白色光をより効率よく放つことが可能となる。
また、タンタルコンデンサのカバーに使用されているエポキシ樹脂は硬化剤を混ぜ合わせなければならないので、樹脂の調合工程が必要であるが、このエポキシ樹脂を液晶ポリマーとすれば、調合工程を省くことが可能となる。
一方、Agめっきをはじめとした白色めっきをした電極に液晶ポリマーを射出成形すると、電極表面と液晶ポリマーの密着性が低いためか、隙間ができてしまい、このようなケースボディに封止樹脂を充填しても隙間から封止樹脂が漏れてしまう問題を発見した。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、金属材料と液晶ポリマーとが良好な密着力で接合している金属−液晶ポリマー複合体の製造方法及び当該金属−液晶ポリマー複合体を備えた電子部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
電極、端子の表面処理は、反射率、耐硫化性等、様々な特性に合わせて最適化されていることが多い。そこで、本発明者は、鋭意検討の結果、これらの表面処理を生かしつつ、液晶ポリマーとの密着力を向上させる手段として、金属側をカップリング剤処理することに着目した。
カップリング剤の主成分元素としてはSi、Ti、Zr、Al、Sn、Ceがあるが、安定性の観点から、Si、Tiが望ましい。また、分子内に窒素を含む官能基を有していると、金属材料の、液晶ポリマーとの密着力が向上することを見出した。
【0007】
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、粗面化処理されていない金属材料に窒素を含む官能基を有するカップリング剤の水溶液を用いた表面処理を行い、この処理面に液晶ポリマー
を射出成形で接合させる、金属−液晶ポリマー複合体の製造方法である。
【0008】
本発明に係る金属−液晶ポリマー複合体の製造方法は一実施形態において、前記カップリング剤の主成分元素がSi、Ti及びAlのいずれかである。
【0009】
本発明に係る金属−液晶ポリマー複合体の製造方法は別の一実施形態において、前記窒素を含む官能基がアミノ基、イソシアネート基及びウレイド基のいずれかである。
【0010】
本発明に係る金属−液晶ポリマー複合体の製造方法は更に別の一実施形態において、前記カップリング剤
の水溶液を用いた表面処理を行った金属材料が、前記金属材料表面のSi、Ti、Alの下方に、Cu、Al、Cr、Ag、Ni、In、Snのいずれか1種以上の金属又はその酸化物の層を有する。
【0011】
本発明に係る金属−液晶ポリマー複合体の製造方法は更に別の一実施形態において、前記カップリング剤
の水溶液を用いた表面処理を、カップリング剤が均一に溶解した溶液で行う。
【0012】
本発明に係る金属−液晶ポリマー複合体の製造方法は更に別の一実施形態において、前記カップリング剤
の水溶液を用いた表面処理を、カップリング剤が溶解したpH7〜14の溶液で行う。
【0013】
本発明に係る金属−液晶ポリマー複合体の製造方法は更に別の一実施形態において、プレス加工または曲げ加工した後に金属材料に前記表面処理を施し、この処理面に液晶ポリマー
を射出成形で接合させる。
【0014】
本発明に係る金属−液晶ポリマー複合体の製造方法は更に別の一実施形態において、金属材料に前記表面処理を施した後にプレス加工または曲げ加工し、前記表面処理面に液晶ポリマー
を射出成形で接合させる。
【0015】
本発明は別の一側面において、本発明の金属−液晶ポリマー複合体の製造方法で得られた金属−液晶ポリマー複合体を備えた電子部品である。
【0016】
本発明の電子部品は一実施形態において、前記金属材料が白色めっきをしたリードフレームであり、液晶ポリマーと接合させるための前記金属材料の表面が、前記リードフレームの白色めっき表面に窒素を分子内に有するカップリング剤
の水溶液を用いた表面処理で形成されており、前記リードフレームをケース電極とし、前記ケース電極上にLEDチップが実装され、前記チップが周辺を前記液晶ポリマーからなるケースボディで覆われ、前記ケースボディ内に蛍光体を含有する封止樹脂が充填されることで構成されたLEDパッケージである。
【0017】
本発明の電子部品は別の一実施形態において、前記金属材料が陰極端子、陽極端子、及び、最表層が金属ペーストで覆われたコンデンサ本体の一部または全部であり、前記陰極端子、前記陽極端子、及び、前記コンデンサ本体が液晶ポリマーで覆われて構成されたアルミ、タンタル及びニオブのいずれかのコンデンサである。
【0018】
本発明の電子部品は更に別の一実施形態において、前記液晶ポリマーの前記金属材料との熱膨張係数の差が±10ppm/℃である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、金属材料と液晶ポリマーとが良好な密着力で接合している金属−液晶ポリマー複合体の製造方法及び当該金属−液晶ポリマー複合体を備えた電子部品を提供することができる。また、本発明によれば、金属材料と絶縁基板との密着力向上に利用される粗面化処理を行うことなく、液晶ポリマーと金属材料の密着力を確保できるので、製造工程の観点からもメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明のLEDパッケージの断面模式図を示す。
【
図2】本発明のタンタルコンデンサの断面模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(金属材料)
本発明に係る金属材料は、粗面化処理されていない、液晶ポリマーと接合させるための表面を有する金属材料である。本発明に係る金属材料は、例えば、以下の(1)〜(5)で示す構成のいずれかであってもよい。
(1)金属基材+金属基材の酸化物層+
カップリング剤層
(2)金属基材+めっき層+
カップリング剤層
(3)金属基材+めっき層+めっき層の酸化物層+
カップリング剤層
(4)金属基材+金属基材の酸化物層+めっき層+
カップリング剤層
(5)金属基材+金属基材の酸化物層+めっき層+めっき層の酸化物層+
カップリング剤層
【0022】
すなわち、本発明に係る金属材料は、(1)〜(5)で示す構成のように、金属基材上には、直接、めっき層及び/又は
カップリング剤層が形成されていてもよく、金属基材の酸化により酸化物層が形成された後に、めっき層及び/又は
カップリング剤層が形成されていてもよい。また、めっき層上には、直接
カップリング剤層が形成されていてもよく、めっき層の酸化により酸化物層が形成された後に、
カップリング剤層が形成されていてもよい。
【0023】
金属基材としては、特に限定されないが、例えば、銅、チタン、銅合金又はチタン合金等が挙げられる。このうち、銅又は銅合金は、導電性が高い、展延性に富む、及び、ばね特性が良好という利点を有する。
【0024】
めっき層としては、特に限定されないが、例えば銀層、銀と同じく白色のNiやSnやInなどとの銀合金層、Ag層と別の金属層または合金層との複層構造等が挙げられる。
【0025】
カップリング剤層は、分子内に窒素を含む官能基を有するシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、マグネシウムカップリング剤、スズカップリング剤、セリウムカップリング剤等で金属材料に表面処理することで形成される。
このように種々のカップリング剤を用いることができるが、カップリング剤の主成分元素がSi、Ti及びAlのいずれかであると、生産性、保存性が安定しているので、好ましい。これら以外のカップリング剤であると、水溶液にすると安定性がないので、ゲル化し、金属表面を覆うことが困難となるおそれがある。また、安定性がないので、製造することも困難となるおそれがある。
分子内に窒素を含む官能基を有するシランカップリング剤については、窒素を含む官能基がアミノ基、イソシアネート基及びウレイド基のいずれかであると、金属材料との密着力が向上するので好ましい。
カップリング剤を用いた表面処理は、カップリング剤が均一に溶解した溶液で行うと、カップリング剤1分子が均一に分散するので、金属材料を効率よく被覆することが可能となる。一方、均一に溶解しない場合は溶剤分子と反発したカップリング剤同士が凝集しゲル化してしまうおそれがある。また、当該表面処理を、カップリング剤が溶解したpH7〜14の溶液で行うと、アルカリ性なのでカップリング剤水溶液自体が脱脂の効果を持つため、フレッシュな金属材料にカップリング剤が吸着することが可能になるので、好ましい。
【0026】
本発明の金属材料は、液晶ポリマーと接合させるための表面を有し、XPS(X線光電子分光装置)のSurvey測定で前記表面の元素分析を行ったとき、Si、Ti、Al、Zr、Sn、Mg、Ceのいずれか1種以上が0.5at%以上、Nが1.5at%以上で検出される。
このような構成によれば、金属材料とLCPとの密着力が十分に確保される。Si、Ti、Al、Zr、Sn、Mg、Ceはカップリング剤の中心元素であるのが好ましい。Nはカップリング剤の前記カップリング材の官能基であるのが好ましい。カップリング剤であれば金属材料表面には高々数層しか存在しないので、すでにめっきで金属材料に付与された高反射率、耐硫化性等の特性を損なうことはない。また、本発明によれば、銅箔と絶縁基板との密着力向上に利用される粗面化処理を行うことなく、LCPと金属材料の密着力を確保できるので、製造工程の観点からもメリットがある。
例えば、LEDのリードフレーム材用の金属材料の場合、より多くの光が反射して明るくなるように、すなわち反射率を高くするために、背景の部材は白いことが望ましい。リードフレーム材ではこの反射率を上げるために銀系のめっきが施される。このリードフレーム材は反射率に加えて耐硫化性も求められるため、めっき層を合金化する、或いは複層化する等、種々の観点から金属材料表面が最適化されている。このように既に最適化された表面にシラン処理を行うことで、本発明の金属材料を作製することができ、金属材料に付与された特性を維持したまま、液晶ポリマーとの密着力を向上させることができる。
【0027】
本発明の金属材料は、前記表面のSi、Ti、Al、Zr、Sn、Mg、Ceの下方に、Cu、Al、Cr、Ag、Ni、In、Snのいずれか1種以上の金属又はその酸化物の層を有するのが好ましい。
このような構成によれば、Cu、Alをはじめとした金属素地、さらにこれらに低接触抵抗、高反射率、耐硫化性の観点からクロメート、Ag、Ni、In、Snなどの金属めっきまたはこれらの合金めっきの上にカップリング剤由来のSi、Ti、Al、Zr、Sn、Mg、Ceが存在していると粗面化処理を行わなくてもLCPと金属材料の密着力を確保できる。Si、Ti、Al、Zr、Sn、Mg、Ceはカップリング剤由来であるのが好ましい。カップリング剤であれば、高々数層でしか材料表面に存在しないので、下地の機能めっきにより付与された特性を失うことはない。
【0028】
(金属−液晶ポリマー複合体の製造方法)
本発明の金属−液晶ポリマー複合体は、本発明の金属材料の前記表面に液晶ポリマーを接合して作製される。金属−液晶ポリマー複合体は、プレス加工または曲げ加工した後に金属材料に表面処理を施し、この処理面に液晶ポリマーを圧着又は射出成形で接合させて作製してもよい。また、金属−液晶ポリマー複合体は、金属材料に表面処理を施した後にプレス加工または曲げ加工し、表面処理面に液晶ポリマーを圧着又は射出成形で接合させてもよい。液晶ポリマーは、パラヒドロキシ安息香酸などを基本とし、各種の成分と直鎖状にエステル結合させた芳香族ポリエステル系樹脂である。溶融状態で分子の直鎖が規則正しく並んだ液晶様性質を示す。諸特性、例えば熱膨張係数を制御するために、無機フィラーを分散させることがある。
液晶ポリマーは、通常、金属材料との密着性が良くないが、本発明の特徴的な表面を有する金属材料と接合させることで、破壊試験を行った場合等、驚くべきことに、液晶ポリマー/金属界面の破壊ではなく、液晶ポリマーの内部で破壊が起きるほど、液晶ポリマー/金属界面の密着力が向上する。
【0029】
金属−液晶ポリマー複合体は、分子内に窒素を含む官能基を有するシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ジルコニアカップリング剤、マグネシウムカップリング剤、スズカップリング剤、セリウムカップリング剤のいずれかで本発明の金属材料に表面処理を施し、金属材料の前記処理面に液晶ポリマーを圧着又は射出成形で接合させることで作製することができる。
【0030】
(電子部品)
本発明の電子部品は、本発明の金属−液晶ポリマー複合体を備えていればよく、特に限定されないが、LEDパッケージやコンデンサ等が挙げられる。
本発明の電子部品がLEDパッケージである場合について説明する。
図1に、本発明のLEDパッケージの断面模式図を示す。当該LEDパッケージは、本発明の金属材料が白色めっきをしたリードフレームであり、液晶ポリマーと接合させるための金属材料の表面が、リードフレームの白色めっき表面に分子内に窒素を含む官能基を有するカップリング剤処理で形成されており、リードフレームをケース電極とし、ケース電極上にLEDチップが実装され、チップが周辺を液晶ポリマーからなるケースボディで覆われ、ケースボディ内に蛍光体を含有する封止樹脂が充填されることで構成されている。このような構成により、本発明のLEDパッケージは、リードフレームが液晶ポリマーと良好な密着力で接合されている。
【0031】
本発明の電子部品は、アルミ、タンタル、ニオブ等のコンデンサであってもよい。ここで、本発明の電子部品がタンタルコンデンサである場合について説明する。
図2に、本発明のタンタルコンデンサの断面模式図を示す。当該タンタルコンデンサは、本発明の金属材料が陰極端子、陽極端子、及び、最表層が金属ペーストで覆われたコンデンサ本体の一部または全部であり、陰極端子、陽極端子、及び、コンデンサ本体が液晶ポリマーで覆われて構成されている。このような構成により、本発明のタンタルコンデンサは、陰極端子、陽極端子、及び、コンデンサ本体が液晶ポリマーと良好な密着力で接合されている。
【0032】
本発明の電子部品において、液晶ポリマーは、金属材料との熱膨張係数の差が±10ppm/℃であるのが好ましい。このような構成によれば、金属材料と液晶ポリマーとが接合した金属−液晶ポリマー複合体に熱が加わった際、両者の熱膨張係数の差が小さいため、膨張による複合体の損傷が良好に抑制される。液晶ポリマーと金属材料との熱膨張係数の差は、より好ましくは±5ppm/℃である。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施例を示すが、これらは本発明をより良く理解するために提供するものであり、本発明が限定されることを意図するものではない。
【0034】
〔例1:実施例4〜6、9、10、12〕
(シラン溶液調整)
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン(モメンティブ社製)をそれぞれ10mL採取し、純水を加えてそれぞれ1Lの水溶液を調整した。3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランではシランと溶媒の水が分離している様子であった。
【0035】
(めっき板材へのシラン処理)
厚み0.1mmの銅板に1μmの厚みのAg、Ni、クロメートめっきをした。これらめっき銅板それぞれをアルカリ脱脂(NaOH:100g/L、30秒)、酸洗(H
2SO
4:10wt%、30秒)した後、上記シラン溶液に30秒浸漬させ、水洗し、乾燥させた。
【0036】
(液晶ポリマーとの密着力)
表面処理面に液晶ポリマーフィルム(クラレ社製 べクスターCT−Z)をラミネートで貼り合せ(295℃まで7℃/minで昇温、295℃で1時間保持)、金属−樹脂積層体を作製した。この積層体の樹脂側を引き剥がし、ピール強度を180°剥離法(JIS C 6471 8.1)に準拠して測定した。剥離後の金属側をSEMで観察し、樹脂(LCP)が金属面に残っていれば「剥離はLCP内部」、金属面に残っていなければ「剥離はLCP表面」と判断した。
【0037】
(めっき板材の表面分析〔XPS survey〕)
めっき板材の表面分析(SiとNの定量)を下記の条件にてXPS surveyで分析した。
装置:アルバックファイ社製5600MC
到達真空度:8.8×10
-10Torr
励起源:単色化 AlKα
出力:210W
検出面積:800μmφ
入射角:75°、取出角:15°
【0038】
(レッドインクテスト〔金属材料上に隙間なく液晶ポリマーの型が形成できているかの確認〕)
竪型射出成形機VH40(山城社製)を用いて表面処理をした板材上に液晶ポリマー(JX日鉱日石エネルギー社製 ザイダー)を、最高温度340℃、金型温度100℃、射出速度200mm/sで箱型に射出成形した。液晶ポリマーで形成された型内部に赤インク(ライオン事務器社製 スタンプインキ 赤)を垂らして、1日後、6日後にインクが型の外に漏れているかどうかを確認した。全くインクが漏れていない場合は「なし」、型の縁がにじんだ程度であれば「軽度のにじみ」、漏れていた場合は「あり」と判定した。
【0039】
〔例2:実施例1、2〕
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(モメンティブ社製)を10mL採取し、純水を加えて、酢酸でpHを調整し、2種類のpHの1Lの水溶液を調整した。このシラン溶液を用いて厚み1μmのAgめっきをした銅板に例1の手順で表面処理を施し、各種評価を行った。
【0040】
〔例3:実施例7、8〕
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(モメンティブ社製)を10mL採取し、純水を加えて1Lの水溶液を調整した。これを用いて、例1の手順で銅板、アルミ板に表面処理を施し、各種評価を行った。
【0041】
〔例4:実施例3〕
アミノ基を有するチタネートカップリング剤 プレンアクトKR44(味の素ファインテクノ社製)を10mL採取し、純水を加えて1Lの水溶液を調整した。例1の手順で1μm厚のAgめっきをした銅板に表面処理を施し、各種評価を行った。
【0042】
〔例5:実施例11〕
3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランを10mL、純水を4mL、残部をイソプロピルアルコールとした1Lのシラン溶液を調整した。純水の量はエトキシ基が加水分解してシラノール基が生成するのに十分な量とした。例1の水溶液とは異なり、シランと溶媒は均一に混ざっているように見えた。このシラン溶液を用いて厚み1μmのAgめっきをした銅板に例1の手順で表面処理を施し、各種評価を行った。
【0043】
〔例6:比較例1〕
3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(モメンティブ社製)を10mL採取し、純水を加えて、酢酸でpHを3に調整し、1Lの水溶液を調整した。これを用いて、例1の手順で1μm厚のAgめっきをした銅板に表面処理を施し、各種評価を行った。
【0044】
〔例7:比較例2〕
ビニルトリエトキシシラン(モメンティブ社製)を10mL採取し、純水を加えて、1Lの水溶液を調整した。これを用いて、例1の手順で1μm厚のAgめっきをした銅板に表面処理を施し、各種評価を行った。
【0045】
〔例8:比較例3〕
1,2,3−ベンゾトリアゾール(ナカライテスク社製)を10g採取し、純水を加えて、1Lの水溶液を調整した。これを用いて、例1の手順で1μm厚のAgめっきをした銅板に表面処理を施し、各種評価を行った。
【0046】
〔例9:比較例4〕
1μm厚のAgめっきをした銅板を用いて例1の手順で各種評価を行った。
実施例及び比較例の試験条件及び評価結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
実施例1〜12は、いずれも金属材料と液晶ポリマーとの密着力が良好であり、金属材料上に隙間なく液晶ポリマーの型が形成できていた。
アミノシランであれば、シラン水溶液のpHがアルカリ側だと、金属材料の最表面元素によらず密着力が増した。また、イソシアネートシランカップリング剤の場合は水溶液よりもアルコール溶液で処理した方が液晶ポリマーと金属の密着力が増した。これはアルコール溶液ではイソシアネートシランが溶媒に溶けたために、金属材料がシランで隙間なく被覆されたためであると推定される。
比較例1〜4は、液晶ポリマーとの密着力が不良であり、金属材料と液晶ポリマーとの間に隙間が生じ、インク漏れが生じた。
実施例1〜12で用いたカップリング剤とその評価結果から、アミノ基、イソシアネート基、ウレイド基を含むカップリング剤であれば、実施例で用いたものと同一のカップリング剤でなくても金属材料表面に同様の効果を与えるのに十分な量で付着すると推定される。