(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、ゴム部材を用いてズーム操作環に対して常時一定の付勢力を付与している。このため、ズーム操作環を回転する際にズーム操作環に作用する抗力(抵抗力)がズーム操作環の位置(固定筒に対する角度)に応じて異なるようなレンズ鏡筒に、上記特許文献1の技術を採用しても、ズーム操作環の操作を一定の操作トルクで行うことができないおそれがある。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、操作トルクの変化を小さく抑えることが可能なレンズ鏡筒及び光学機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレンズ鏡筒は、所定軸(AX)方向に対して湾曲した形状を有するカム溝(15a)が形成された第1筒(15)と、前記第1筒の
外周面に沿った前記所定軸回りの回転が可能で、前記所定軸方向に延びる直進溝(17a)が形成された第2筒(20)と、前記カム溝及び前記直進溝に沿って移動するカムピン(19)を有し、前記第1筒と前記第2筒の一方が他方に対して回転するのに伴って、前記第1筒の内部でレンズ(L2)を保持して前記所定軸方向に移動する移動部材(12)と、前記所定軸方向に対する前記カム溝の角度に応じた制動力を、前記第2筒に付与する制動機構(23、21)と、を備え、前記制動機構は、対向する前記第1筒の少なくとも一部の面と前記第2筒の少なくとも一部の面のうちの一方の面に設けられ
、他方の面の周方向に沿って設けられた凹溝を付勢する付勢部材を備え、前記周方向の位置により
前記付勢部材が前記凹溝を付勢する付勢力が変化するレンズ鏡筒である。
【0007】
また、本発明のレンズ鏡筒は、所定軸(AX)方向に対して湾曲した形状を有するカム溝(15a)が形成された第1筒(15)と、前記第1筒の
外周面に沿った前記所定軸回りの回転が可能で、前記所定軸方向に延びる直進溝(17a)が形成された第2筒(17)と、前記直進溝及び前記カム溝に沿って移動するカムピン(19)を有し、前記第1筒と前記第2筒の一方が他方に対して回転するのに伴って、前記第1筒の内部でレンズを保持して前記所定軸方向に移動する移動部材(12)と、前記所定軸方向に対する前記カム溝の角度に応じた制動力を、前記第2筒に付与する制動機構(23,21)と、を備え、前記制動機構は、対向する前記第1筒の少なくとも一部の面と前記第2筒の少なくとも一部の面のうちの一方の面に設けられて他方の面を付勢する付勢部材(23)を有し、前記他方の面は周方向の位置により前記レンズの光軸からの距離が変化するレンズ鏡筒である。
【0009】
また、
前記第2筒は、前記第1筒の外周面に沿った前記所定軸回りの回転が可能であり、前記付勢部材は、前記第1筒の外周面に設けられ、前記第2筒の内周面の少なくとも一部を付勢することとすることができる。また、前記第1筒は、前記第2筒の外周面に沿った前記所定軸回りの回転が可能であり、前記付勢部材は、前記第2筒の外周面に設けられ、前記第1筒の内周面の少なくとも一部を付勢することとすることができる。
【0011】
また、前記
付勢部材は、
前記他方の面に向かう方向の力で常時付勢されていることとしてもよい。
【0012】
本発明の光学機器は、本発明のレンズ鏡筒を備えている。
【0013】
なお、本発明をわかりやすく説明するために、上記においては一実施形態を表す図面の符号に対応つけて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、後述の実施形態の構成を適宜改良しても良く、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させても良い。更に、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のレンズ鏡筒及び光学機器は、操作トルクの変化を小さく抑えることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、一実施形態について、
図1〜
図6に基づいて説明する。
図1には、一実施形態に係るカメラ100の構成が概略的に、一部断面して示されている。
【0017】
カメラ100は、カメラ本体200と、レンズ鏡筒300とを備える。カメラ本体200は、筐体、及び筐体内に収容された各種光学系、撮像素子、シャッタ等を有している。カメラ本体200の筐体の一部には、カメラマウントが設けられている。このカメラマウントには、レンズ鏡筒300が有するレンズマウント50が係合可能となっている。カメラマウントとレンズマウント50は、例えばバヨネット式のマウントである。
【0018】
レンズ鏡筒300は、被写体側(カメラ本体200とは反対側)から順に配列された、第1レンズ群L1、第2レンズ群L2、第3レンズ群L3を備えている。各レンズ群は、光軸AXが一致するように位置関係が調整されている。
【0019】
また、レンズ鏡筒300は、第2レンズ群L2を支持する第2レンズ群支持枠12と、レンズマウント50(及びカメラ本体200)に対して、回転及び移動が不能な状態とされている固定筒15と、レンズマウント50に固定され、固定筒15の外側に設けられた外筒22と、外筒22と固定筒15に対して光軸AX回りに回転可能とされた操作環20と、を備える。
【0020】
なお、レンズ鏡筒300内には、第1レンズ群L1、第3レンズ群L3を支持する支持枠も存在しているが、図示の便宜上及び説明の簡素化のため、図示を省略している。第1レンズ群L1の支持枠は、例えば、固定筒15の被写体側の内周に固定され、第3レンズ群L3の支持枠は、例えば、レンズマウント50の内側に固定される。なお、絞り機構などその他の機構、構造もレンズ鏡筒300に含まれているが、これらについても図示を省略している。
【0021】
第2レンズ群支持枠12は、第2レンズ群L2を支持する概略筒状部材であり、その外周面には、カムピン19が突設されている。
【0022】
固定筒15には、光軸AX方向に対して湾曲した形状(スパイラル形状)(
図2(a)参照)を有するカム溝15aが貫通形成されている。カム溝15aには、カムピン19が係合した状態となっている。なお、カム溝15aが湾曲しているのは、ズーム比が5倍を超えるような高倍率ズームレンズではレンズ群(本実施形態では第2レンズ群)の移動量が大きくなる一方、固定筒15に対する操作環20の回転角は一定角度に制限されているためである。
【0023】
操作環20は、操作部18と、筒部17とを有する。操作部18と筒部17とはピン等により固定されている。操作環20は、筒部17の内周面が固定筒15の外周面に沿った状態で光軸AX回りに回転するようになっている。
【0024】
操作部18の外周面は、ゴムなどにより滑り止め加工が施されている。筒部17には、光軸方向に延びる直進溝17aが貫通形成されている(
図3参照)。この直進溝17aには、カムピン19が係合した状態となっている。すなわち、カムピン19は、カム溝15aと直進溝17aとが交差する箇所に挿入された状態となっている(
図2(c)参照)。なお、直進溝17aは、筒部17を貫通しない凹溝であってもよい。
【0025】
なお、
図1では、カムピン19が1つのみ図示されているが、カムピン19は第2レンズ群支持枠12の外周面に複数設けられていてもよい。このようにカムピン19を複数設ける場合、これに対応して固定筒15に複数のカム溝15aを形成するとともに、筒部17に直進溝17aを複数設けることとする。
【0026】
図2(a)は、操作環20を固定筒15に対して回転させたときの、カムピン19のカム溝15a内における動きを示した図であり、
図2(b)は、カムピン19の直進溝17a内における動きを示した図である。また、
図2(c)は、
図2(a)と
図2(b)を重ねた状態を示す図である。これらの図からわかるように、直進溝17aに係合するカムピン19は、操作環20とともに回転方向に移動するが、カムピン19は、カム溝15aにも係合しているので、回転方向への移動と同時に、直進溝17a内を光軸AX方向に沿って移動することになる。これにより、操作環20の回転による第2レンズ群L2の光軸AX方向への移動(ズーミング動作)が可能となっている。
【0027】
ここで、
図2(a)〜
図2(c)に示すように、操作環20は、固定筒15に対して、ワイド側からテレ側に角度(θ1+θ2+θ3)の範囲で回転できるようになっているものとする。この場合において、ワイド側近傍の角度θ1の間及びテレ側近傍の角度θ3の間で操作環20を回転させる場合には、カム溝15aの角度(カムピン19の進行方向)と操作環20の回転方向との差が小さいため、カムピン19が回転方向に移動する際にカム溝15aから受ける抗力が小さい。このため、カムピン19はカム溝15a内を移動しやすくなっている。なお、本実施形態では、カムピン19は、角度θ1の間よりも角度θ3の間のほうが移動しやすいものとする。一方、テレ側とワイド側の中間の角度θ2の間で操作環20を回転させる場合、カム溝15aの角度(カムピン19の進行方向)と操作環20の回転方向との差が大きいため、カムピン19が回転方向に移動する際にカム溝15aから受ける抗力が大きい。このため、カムピン19はカム溝15a内を移動しにくくなっている。
【0028】
ところで、本実施形態では、筒部17を断面して示す
図3から分かるように、筒部17には、直進溝17aのほか、凹溝21も形成されている。なお、凹溝21は、筒部17の内周面に、その周方向に沿って形成されている。
【0029】
図4には、筒部17と固定筒15を、凹溝21を横切る光軸AXに垂直な面で断面した図が示されている。この
図4に示すように、凹溝21は、光軸AXからの半径方向の距離がR1の範囲と、R2(>R1)の範囲と、R3(<R1<R2)の範囲とを有している。
【0030】
凹溝21のうち、光軸AXからの距離がR1とされている範囲は、カムピン19がカム溝15aの角度θ1の範囲を移動するときに、固定筒15の基準点(点Pとする)が対向する範囲(角度θ1の範囲)である。また、凹溝21のうち、光軸AXからの距離がR2とされている範囲は、カムピン19がカム溝15aの角度θ2の範囲を移動するときに、固定筒15の基準点(点P)が対向する範囲(角度θ2の範囲)である。また、凹溝21のうち、光軸AXからの距離がR3とされている範囲は、カムピン19がカム溝15aの角度θ3の範囲を移動するときに、固定筒15の基準点(点P)が対向する範囲(角度θ3の範囲)である。なお、距離R1の範囲、距離R2の範囲の境目部分、及び距離R2の範囲、距離R3の範囲の境目部分には段差は無く、距離が滑らかに変化しているものとする。
【0031】
また、本実施形態では、固定筒15の凹溝21に対向する位置(点Pの位置)には、
図4に示すように、バネ部材23が設けられている。バネ部材23は、円弧状に湾曲された板バネなどであり、固定筒15の半径方向の弾性力を有している。すなわち、バネ部材23と凹溝21(筒部17の内周面)とが接触した状態では、バネ部材23から凹溝21に対して、筒部17の半径方向外側に向かう付勢力が付与される。
【0032】
次に、
図5(a)、
図5(b)、
図6に基づいて、固定筒15に対して操作環20(筒部17)を回転する場合の、バネ部材23と凹溝21との関係について説明する。
【0033】
図5(a)には、第2レンズ群L2がワイド側に位置している場合(点Pが角度θ1の間に位置している場合)の、筒部17と固定筒15との関係が示されている。この
図5(a)に示す状態では、凹溝21に対して、バネ部材23が接触しており、バネ部材23から筒部17に対して付勢力F1が付与された状態となっている。すなわち、この付勢力F1が、ワイド側から角度θ1の範囲で回転する操作環20に対する制動力(ブレーキ力)となる。
【0034】
図5(b)には、第2レンズ群L2がワイド側とテレ側の中間に位置している場合(点Pが角度θ2の間に位置している場合)の、筒部17と固定筒15との関係が示されている。この
図5(a)に示す状態では、凹溝21に対して、バネ部材23がわずかに接触している程度であり、バネ部材23から筒部17に対して付勢力F2(<F1)が付与された状態となっている。すなわち、この付勢力F2が、角度θ2の範囲で回転する操作環20に対する制動力(ブレーキ力)となる。
【0035】
図6には、第2レンズ群L2がテレ側に位置している場合(点Pが角度θ3の間に位置している場合)の、筒部17と固定筒15との関係が示されている。この
図6に示す状態では、凹溝21に対して、バネ部材23が接触している。ここで、距離R3は、距離R1よりも小さいことから、バネ部材23から筒部17に対して付勢力F3(>F1>F2)が付与された状態となっている。すなわち、この付勢力F3が、テレ側から角度θ3の範囲で回転する操作環20に対する制動力(ブレーキ力)となる。
【0036】
なお、角度θ1とθ2の境目近傍及びθ2とθ3の境目近傍では、バネ部材23から筒部17に付与される付勢力(制動力)が徐々に変化するようになっている。
【0037】
このように、本実施形態では、操作環20の回転に必要な力が大きい場合(点Pが角度θ2の範囲内にある場合)には、バネ部材23から筒部17に付与される付勢力(制動力)が小さい一方、操作環20の回転に必要な力が小さい場合(点Pが角度θ1やθ3の範囲内にある場合)には、バネ部材23から筒部17に付与される付勢力(制動力)(F1、F3)が大きくなる。これにより、操作環20の回転に必要な操作トルクの変化(トルクムラ)を小さくすることができるので、凹溝21の形状をカム溝15aの形状に応じて設計すれば、操作トルクをほぼ一定にすることができる。
【0038】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、固定筒15に光軸AX方向に対して湾曲した形状を有するカム溝15aが貫通形成され、操作環20(筒部17)は、固定筒15の外周面に沿った光軸AX回りの回転が可能で、光軸AX方向に延びる直進溝17aが形成されており、また、固定筒15の内部でレンズを支持する第2レンズ群支持枠12は、カム溝15a及び直進溝17aに沿って移動するカムピン19を有し、操作環20(筒部17)が固定筒15に対して回転するのに伴って光軸AX方向に移動する。そして、バネ部材23は、筒部17に対して、カム溝15aの光軸AX向に対する角度に応じた付勢力(制動力)を付与する。これにより、本実施形態のようにカム溝15aの光軸AX方向に対する角度に応じて、カムピン19のカム溝15a内における移動のしやすさが変化する場合でも、バネ部材23から操作環20(筒部17)に対してカム溝15aの光軸AX方向に対する角度に応じた付勢力(制動力)を付与することで、操作環20の回転に必要な操作トルクの変化を小さくすることができる。これにより、操作感触を良好にし、ズーミングの操作をしやすくすることが可能となる。
【0039】
また、本実施形態では、固定筒15にバネ部材23を設けるとともに、筒部17に凹溝21を形成するという簡易な構成で、カムピン19が係合するカム溝15aの光軸AX方向に対する角度に応じた制動力を付与することができるので、製造コストや製造工程の増加を抑制しつつ、操作環20の操作感触を良好にすることができる。
【0040】
なお、上記実施形態では、一例として、凹溝21の光軸からの距離が3段階で変化する場合について説明したが、これに限られるものではない。カム溝の光軸に対する角度に応じて、凹溝21の光軸からの距離を、多段階あるいはシームレスに変化させるようにしてもよい。また、上記実施形態では、バネ部材23が凹溝21に対して常時接触しているような場合について説明したが、これに限らず、一部においてバネ部材23と凹溝21とが非接触となってもよい。
【0041】
なお、上記実施形態では、バネ部材23を固定筒15に設け、操作環20の筒部17に凹溝21を形成する場合について説明したが、これに限られるものではなく、バネ部材23を筒部17に設け、固定筒15の外周面に凹溝21を形成することとしてもよい。このようにしても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0042】
なお、上記実施形態では、固定筒15にバネ部材23を設けて、筒部17に対して付勢力を付与する場合について説明したが、これに限らず、バネ部材23に代えて、その他の付勢力を付与することが可能な部材(例えばゴムなどの弾性部材)を用いることとしてもよい。
【0043】
なお、上記実施形態では、バネ部材23と凹溝21との接触状態の変化により、バネ部材23から筒部17(操作環)に付与される制動力を異ならせる場合について説明したが、これに限られるものではない。たとえば、固定筒15に筒部17と接触する接触部材を設け、接触部材が接触する筒部17の内周面に接触部材が接触したときに発生する摩擦力を変化させる摩擦係数が異なる面(面粗さが場所によって異なる面)を設けておくこととしてもよい。この場合、摩擦係数(面粗さ)は、カムピン19の位置するカム溝の角度(光軸AX方向に対する角度)に基づいて、決定することとする。このようにしても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、この場合においても、接触部材を筒部17に設け、摩擦係数が異なる面を固定筒15に設けることとしてもよい。
【0044】
なお、上記実施形態では、操作環20の回転に伴って第2レンズ群L2が回転するような構成のレンズ鏡筒を例に採り説明したが、これに限られるものではない。例えば、第2レンズ群L2が回転しないように、第2レンズ群支持枠12と、固定筒15との間に、筒状部材を介在させることとしてもよい。この場合、筒状部材の内周面に、カムピン19が係合可能な光軸回りの回転方向(円周方向)に延びる溝を形成し、外周面には、カム溝15a及び直進溝17aと係合するカムピンを設けておくことで、第2レンズ群L2を回転させることなく光軸方向に移動させることが可能となる。
【0045】
また、上記実施形態では、操作環20の筒部17に直進溝17aを形成するとともに、固定筒15にカム溝15aを形成する場合について説明したが、これに限られるものではなく、
図7に示すように、筒部17にカム溝15aを形成するとともに、固定筒15に直進溝17aを形成することとしてもよい。
【0046】
なお、上記実施形態のレンズ鏡筒300の構成は一例である。したがって、レンズ鏡筒の構成としては種々の構成を採用することができる。
【0047】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。