【実施例】
【0038】
以下に、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。なお、用いた原材料は次のとおりである。
なお、実施例1〜14及び、比較例1〜15の各試料は下記の成分を混練後、下記に示す評価を行なった。
【0039】
(1)エポキシ樹脂化合物
2官能エポキシ樹脂化合物A ビスフェノールA型エポキシ樹脂化合物(三菱化学株式会社製:jER−828、粘度13.5Pa・s)
2官能エポキシ樹脂化合物B ビスフェノールF型エポキシ樹脂化合物(三菱化学株式会社製:jER−807、粘度3.3Pa・s)
2官能エポキシ樹脂化合物C ビスフェノールA型エポキシ樹脂化合物(三菱化学株式会社製:JER−YL980、粘度15Pa・s)
3官能エポキシ樹脂化合物 フェノールノボラック型エポキシ樹脂化合物(三菱化学株式会社製:JER−604、粘度7.5Pa・s)
【0040】
(2)フェノール樹脂化合物
フェノール樹脂化合物A ノボラックフェノール樹脂化合物(明和化成株式会社製:MEHC−7800H)
フェノール樹脂化合物B レゾールフェノール樹脂化合物(住友ベークライト株式会社:PR−50607B)
フェノール樹脂化合物C アラルキル型フェノール樹脂化合物(三井化学株式会社製:ミレニックスXLC−4L)
フェノール変性キシレン樹脂 ノボラック型フェノール変性キシレン樹脂(フドー株式会社製:P−100)
【0041】
(3)硬化促進剤
硬化促進剤A 2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成株式会社:キュアゾール2PHZ−PW、反応開始温度:146℃)
硬化促進剤B 2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成株式会社:キュアゾール2P4MHZ−PW、反応開始温度:130℃)
硬化促進剤C 2−フェニル−4−メチルイミダゾール(四国化成株式会社:キュアゾール2P4MZ、反応開始温度:97℃)
硬化促進剤D トリパラトリルホスフィン(北興化学工業株式会社:TPTP、反応開始温度:165℃)
【0042】
(4)無機粉末
シリカ 二酸化珪素(日本アエロジル株式会社製:RY200S)
アルミナ 酸化アルミニウム(西尾工業株式会社:溶融アルミナ#8000)
【0043】
(5)溶剤
溶剤A 2−(2−n−ブトキシエトキシ)エタノール(関東化学株式会社:2−(2−n−ブトキシエトキシ)エタノール)
溶剤B 酢酸2−(2−n−ブトキシエトキシ)エチル(関東化学株式会社:酢酸2−(2−n−ブトキシエトキシ)エチル
【0044】
(6)添加剤
カーボンブラック 三菱カーボンブラック(三菱化学株式会社製:CB−44)
カップリング剤 3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(JNC株式会社製:S510)
エラストマー 末端カルボキシル基アクリロニトリルブタジエンゴム(日本ゼオン株式会社製:Nipol1072J)
ベントナイト ベントナイト(株式会社ホージュン社製のエスベンNZ)
タルク 微粉タルク(日本タルク株式会社製:SG−95)
【0045】
(1)抵抗値変化率の測定
予めアルミナ基板に、Ag/Pd抵抗ペーストとして公称抵抗値1MΩのペースト(住友金属鉱山株式会社製、製品番号:R−16UM)を印刷し、ピーク温度850℃、ピーク時間9分で焼成し、電極を形成して厚膜抵抗体を形成した。得られた厚膜抵抗体のサイズは電極間が0.3mm、幅が0.3mm、膜厚が12μmであった。この厚膜抵抗体を覆うようにガラスペースト(住友金属鉱山株式会社製、IG−9001)を印刷し、ピーク温度600℃、ピーク時間5分で焼成した。このガラスコートした抵抗体の抵抗値が1.5倍となるようにレーザトリミングを行なった。レーザトリミングの条件は、スピード60mm/s、Q−レート9kHz、パワー4Wであり、レーザトリミング形状は直線カットとした。
【0046】
次に、レーザトリミング後の抵抗体に実施例または比較例で調製した保護膜層用封止剤組成物を印刷し、200℃で10分乾燥させ、その後、200℃に保持されたオーブンに30分間放置し、保護膜層用封止剤組成物を硬化させ抵抗器を作製した。
得られた抵抗器にSnメッキCu線を電線としてはんだ付けし、その両端をプレッシャークッカー試験機の中に配線した。それを温度が121℃、相対湿度が100%に保持し、100時間50Vを印加し加速試験を行なった。試験後の抵抗値を試験前の抵抗値で除した値を抵抗値変化率として表した。
【0047】
(2)ポットライフ
混練された保護層膜用封止剤組成物を25℃で保管しながら、1回/日の頻度で粘度を測定し、初期粘度から20%以上高くなるまでの日数を測定した。
ブルックフィールド社製のB型粘度計を用い、50rpm時の粘度を計測した。
【0048】
(3)クラック評価
保護膜層用封止剤組成物の硬化後、クラックが入っているか顕微鏡で観察した。クラックが1つでも確認されるものは不可(×)、それが確認されない場合は良(○)とした。
【0049】
(4)塗布性
試料(保護層膜用封止剤組成物)を用いて、400メッシュのスクリーンにて長さ0.3mm、幅0.3mmのパターンを印刷し、印刷面に欠け、かすれ、ダレ等があるものは不可(×)、それらが確認されない場合は良(○)とした。
【0050】
(5)総合評価
上記の4項目において、抵抗値変化率が0.4以下、ポットライフが20日以上、クラック評価が良(○)、塗布性が良(○)の条件を全て満たしたもののみ良(○)とし、1つでも条件に満たさないものがある場合は不可(×)とした。
【0051】
(実施例1)
樹脂成分として2官能エポキシ樹脂化合物A(三菱化学株式会社製:jER−828)、硬化剤成分として、ノボラックフェノール樹脂化合物A(明和化成株式会社製:MEHC−7800H)、硬化促進剤成分Aとして、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成株式会社:キュアゾール2PHZ−PW)、添加剤成分として、二酸化珪素(日本アエロジル株式会社製:RY200S)及び、三菱カーボンブラック(三菱化学株式会社製:CB−44)を用意し、溶剤成分Aの2−(2−n−ブトキシエトキシ)エタノール(関東化学株式会社:2−(2−n−ブトキシエトキシ)エタノール)を混合して、保護膜層用封止剤組成物を調製し、3本ロール型混練機を使用して混練し、本発明の保護膜層用封止剤組成物を得た。
この封止剤組成物を用いて、アルミナ基板上に印刷し、上記の条件で抵抗値を測定し抵抗値変化率を算出した。また、当該封止剤組成物の25℃保持におけるポットライフ、硬化後のクラックの有無、また、スクリーンにより基板へ印刷し、塗布性を評価した。この結果は表1に併記した。表1中、各成分の濃度は重量%で示している。
【0052】
(実施例2〜14)
表1に記載したように樹脂成分、硬化剤成分、硬化剤成分、硬化促進剤成分、添加剤成分、溶剤成分の種類を変えるか、それらの配合量を変えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製し、3本ロール型混練機を使用して混練し、本発明の保護膜用封止剤組成物を得た。その後、この封止剤組成物を用いて、アルミナ基板上に印刷し、上記の条件で抵抗値変化率を算出した。また、当該封止剤組成物の25℃保持におけるポットライフ、硬化後のクラックの有無、また、スクリーンにより基板へ印刷し、塗布性を評価した。この結果は表1に併記した。
【0053】
(比較例1〜2)
表2に記載したように2官能エポキシ樹脂化合物の代わりに3官能エポキシ樹脂化合物としてフェノールノボラック型エポキシ樹脂化合物(三菱化学株式会社製:JER−152)を用いたか、硬化促進剤Aの代わりに硬化促進剤Cとして2−フェニル−4−メチルイミダゾール(四国化成株式会社:キュアゾール2P4MZ)を使用した以外は実施例1と同様にして、封止剤組成物を調製し、3本ロール型混練機を使用して混練し、比較用の保護膜用封止剤組成物を得た。その後、この封止剤組成物を用いて、アルミナ基板上に印刷し、上記の条件で抵抗値変化率を算出した。また、当該封止剤組成物の25℃保持におけるポットライフ、硬化後のクラックの有無、また、スクリーンにより基板へ印刷し、塗布性を評価した。この結果は表2に併記した。
【0054】
(比較例3〜12)
表2に記載したように樹脂成分、硬化剤成分、硬化促進剤成分、添加剤成分、溶剤成分の配合量を変えた以外は実施例1と同様にして、封止剤組成物を調製し、3本ロール型混練機を使用して混練し、比較用の保護膜用封止剤組成物を得た。その後、この封止剤組成物を用いて、アルミナ基板上に印刷し、上記の条件で抵抗値変化率を算出した。また、当該封止剤組成物の25℃保持におけるポットライフ、硬化後のクラックの有無、また、スクリーンにより基板へ印刷し、塗布性を評価した。この結果は表2に併記した。
【0055】
(比較例13〜15)
保護層膜用封止剤組成物として、特許文献3に記載の封止剤組成物を参考に配合したものを用い(比較例13)、市販されているナミックス株式会社製、1033Bを比較例14として用いた。また、シリカ粉末を用いずに(比較例15)、比較用の保護層膜用封止剤組成物を調製した。
その後、実施例1〜14と同様にして、それぞれアルミナ基板上に印刷し、上記の条件で抵抗値変化率を算出した。また、当該封止剤組成物の25℃保持におけるポットライフ、硬化後のクラックの有無、また、スクリーンにより基板へ印刷し、塗布性を評価した。この結果は表3に併記した。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
「評価」
上記結果を示す表1から明らかなように、実施例1〜4、6〜10、12〜14の保護層膜用封止剤組成物は、2官能のエポキシ樹脂化合物や特定の硬化促進剤成分、無機粉末などを特定量含有しているために、抵抗変化率、ポットライフ、クラック性、塗布性のいずれも優れていることが分かる。なお、実施例5は、ポットライフがやや短めだが、実用上問題のないレベルである。実施例11は、抵抗率変化がやや大きめだが、実用上問題のないレベルである。
【0060】
これに対し、表2,3から明らかなように、比較例1は、3官能のエポキシ樹脂化合物を使用しており比較的低温でも反応が進むため、ポットライフが不可となった。
比較例2は、硬化促進剤Cを使用しており、反応開始温度が早いため2官能エポキシ樹脂化合物Aとの反応が活性化され、ポットライフが不可となった。比較例3は、2官能エポキシ樹脂化合物Aの量が20重量%未満のため、抵抗体との密着力不足の影響から抵抗値変化率が不可、また、相対的にフェノール樹脂化合物Aの濃度が高くなったため、室温で硬化が進みポットライフが不可となった。比較例4は、2官能エポキシ樹脂化合物Aが60重量%を超えているので、硬化剤であるフェノール樹脂化合物Aとの量が合わないことから、抵抗体との密着力不足が影響して抵抗値変化率が不可となった。比較例5は、2官能エポキシ樹脂化合物Aに対してフェノール樹脂化合物Aが少ないため硬化不足が起こり、抵抗値変化率が不可となった。比較例6は、2官能エポキシ樹脂化合物Aに対してフェノール樹脂化合物Aが多いため硬化が進み、ポットライフが不可となった。比較例7は、2官能エポキシ樹脂化合物Aに対して硬化促進剤Aが少ないため硬化時に硬化不足が起こり、抵抗値変化率で不可となった。比較例8は、2官能エポキシ樹脂化合物Aに対して硬化促進剤Aが多いため硬化が進み、ポットライフが不可となった。比較例9は、無機粉末が15重量%未満のため、塗布性が悪く、抵抗値変化率も不可となった。比較例10は、無機粉末が50重量%より多いため、塗布性が悪く、クラックも発生し不可となった。比較例11は、溶剤Aが5重量%未満のため、塗布性が悪く不可となった。比較例12は、溶剤Aが30重量%より多いため、塗布性が悪く不可で、抵抗値変化率も不可となった。
比較例13は、特開2009−91424号公報を参考に評価したが、抵抗値変化率が大きく不可で、ポットライフも不可となった。比較例14は、ナミックス株式会社製1003Bを参考に評価したが、抵抗値変化率が大きく不可で、ポットライフも不可となった。また、比較例15は、シリカを配合しなかったので塗布性が悪く、硬化促進剤が多く添加されているのでポットライフが不可となった。また、有機リン化合物を添加しているので環境への負担が大きく、展開するには課題が残る。