特許第5871012号(P5871012)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5871012接眼レンズ、これを備えたファインダー光学系及び光学機器、並びに接眼レンズの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871012
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】接眼レンズ、これを備えたファインダー光学系及び光学機器、並びに接眼レンズの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 25/00 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
   G02B25/00 A
【請求項の数】23
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2013-551224(P2013-551224)
(86)(22)【出願日】2012年12月21日
(86)【国際出願番号】JP2012008184
(87)【国際公開番号】WO2013099181
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2014年6月10日
(31)【優先権主張番号】特願2011-289183(P2011-289183)
(32)【優先日】2011年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】田中 一政
(72)【発明者】
【氏名】原田 壮基
(72)【発明者】
【氏名】松尾 拓
【審査官】 堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−322968(JP,A)
【文献】 特開2008−052085(JP,A)
【文献】 特開2007−322967(JP,A)
【文献】 特開平10−123436(JP,A)
【文献】 特開2006−342311(JP,A)
【文献】 特開平10−245523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00−17/08
G02B 21/02−21/04
G02B 25/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズによって形成された像、表示部材によって表示された像又は物体を接眼レンズにより観察するファインダー光学系に用いられる接眼レンズにおいて、
前記接眼レンズを構成する光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜を設け、前記反射防止膜は屈折率ndが1.30以下の層を少なくとも1層含み、
物体側から順に光軸に沿って並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群とを有し、
以下の条件式を満足することを特徴とする接眼レンズ。
Nn(ABE) > 1.870
N2p(ABE) ≧ 1.750
但し、
Nn(ABE):前記第1レンズ群及び前記第3レンズ群に含まれる負の屈折力を有するレンズのd線に対する屈折率の平均値、
N2p(ABE):前記第2レンズ群に含まれる正レンズのd線に対する屈折率の平均値。
【請求項2】
対物レンズによって形成された像、表示部材によって表示された像又は物体を接眼レンズにより観察するファインダー光学系に用いられる接眼レンズにおいて、
前記接眼レンズを構成する光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜を設け、前記反射防止膜は屈折率ndが1.30以下の層を少なくとも1層含み、
物体側から順に光軸に沿って並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群とを有し、
以下の条件式を満足することを特徴とする接眼レンズ。
Nn(ABE) > 1.870
29.0 > ν(ABE)
但し、
Nn(ABE):前記第1レンズ群及び前記第3レンズ群に含まれる負の屈折力を有するレンズのd線に対する屈折率の平均値、
ν(ABE):前記第1レンズ群及び前記第3レンズ群に含まれる負の屈折力を有するレンズのd線を基準とするアッベ数の平均値。
【請求項3】
対物レンズによって形成された像、表示部材によって表示された像又は物体を接眼レンズにより観察するファインダー光学系に用いられる接眼レンズにおいて、
前記接眼レンズを構成する光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜を設け、前記反射防止膜は屈折率ndが1.30以下の層を少なくとも1層含み、
物体側から順に光軸に沿って並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群とを有し、
以下の条件式を満足することを特徴とする接眼レンズ。
29.0 > ν(ABE)
ν2 ≧ 47.3
但し、
ν(ABE):前記第1レンズ群及び前記第3レンズ群に含まれる負の屈折力を有するレンズのd線を基準とするアッベ数の平均値、
ν2:前記第2レンズ群に含まれるレンズのd線を基準とするアッベ数の平均値。
【請求項4】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載の接眼レンズ。
30.0 > ν(ABE)
但し、
ν(ABE):前記第1レンズ群及び前記第3レンズ群に含まれる負の屈折力を有するレンズのd線を基準とするアッベ数の平均値。
【請求項5】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項2に記載の接眼レンズ。
ν2>40
但し、
ν2:前記第2レンズ群に含まれるレンズのd線を基準とするアッベ数の平均値。
【請求項6】
前記第1レンズ群、前記第2レンズ群及び前記第3レンズ群のうち少なくとも1つを光軸に沿って移動させることにより視度調節を行うことが可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の接眼レンズ。
【請求項7】
前記第2レンズ群は、両凸レンズ成分を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の接眼レンズ。
【請求項8】
前記第3レンズ群は、物体側に凸面を向けたメニスカスレンズ成分を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の接眼レンズ。
【請求項9】
前記第2レンズ群における少なくとも一つの光学面が非球面であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の接眼レンズ。
【請求項10】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の接眼レンズ。
S3>2.4
但し、
S3:前記第3レンズ群の最もアイポイント側に位置するレンズ成分のシェイプファクター(すなわち、前記第3レンズ群の最もアイポイント側に位置する前記レンズ成分における物体側の面の曲率半径をRo3とし、前記第3レンズ群の最もアイポイント側に位置する前記レンズ成分におけるアイポイント側の面の曲率半径をRe3としたとき、(Ro3+Re3)/(Ro3−Re3)で定義される値)。
【請求項11】
前記第2レンズ群を光軸に沿って移動させることにより視度調節を行うことが可能であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の接眼レンズ。
【請求項12】
前記反射防止膜は多層膜であり、
前記屈折率ndが1.30以下の層は、前記多層膜を構成する層のうち最も表面側の層であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の接眼レンズ。
【請求項13】
前記反射防止膜が設けられた前記光学面は、アイポイントから見て凹形状のレンズ面であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の接眼レンズ。
【請求項14】
物体側から順に光軸に沿って並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群とを有し、
前記反射防止膜が設けられた前記光学面は、アイポイントから見て凹形状のレンズ面であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の接眼レンズ。
【請求項15】
前記アイポイントから見て凹形状のレンズ面は、前記第1レンズ群から前記第3レンズ群における光学面のうち物体側のレンズ面であることを特徴とする請求項14に記載の接眼レンズ。
【請求項16】
前記アイポイントから見て凹形状のレンズ面は、前記第1レンズ群から前記第3レンズ群における光学面のうち像面側のレンズ面であることを特徴とする請求項14に記載の接眼レンズ。
【請求項17】
前記反射防止膜が設けられた前記光学面は、物体側から見て凹形状のレンズ面であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の接眼レンズ。
【請求項18】
物体側から順に光軸に沿って並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群とを有し、
前記反射防止膜が設けられた前記光学面は、物体側から見て凹形状のレンズ面であることを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載の接眼レンズ。
【請求項19】
前記反射防止膜が設けられた前記凹形状のレンズ面は、前記第2レンズ群における光学面のうち像面側のレンズ面であることを特徴とする請求項18に記載の接眼レンズ。
【請求項20】
前記反射防止膜が設けられた前記光学面は、最もアイポイント側の光学面以外の光学面であることを特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載の接眼レンズ。
【請求項21】
対物レンズによって形成された像を接眼レンズにより観察するファインダー光学系において、前記接眼レンズが請求項1〜20のいずれか一項に記載の接眼レンズであることを特徴とするファインダー光学系。
【請求項22】
対物レンズによって形成された像を接眼レンズにより観察するファインダー光学系を備え、前記ファインダー光学系が請求項21に記載のファインダー光学系であることを特徴とする光学機器。
【請求項23】
対物レンズによって形成された像、表示部材によって表示された像又は物体を接眼レンズにより観察するファインダー光学系に用いられる接眼レンズの製造方法であって、
前記接眼レンズを構成する光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜を設け、前記反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含み、
物体側から順に光軸に沿って並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群とを有し、
以下の条件式を満足するように、
レンズ鏡筒内に各レンズを配置することを特徴とする接眼レンズの製造方法。
Nn(ABE) > 1.870
N2p(ABE) ≧ 1.750
但し、
Nn(ABE):前記第1レンズ群及び前記第3レンズ群に含まれる負の屈折力を有するレンズのd線に対する屈折率の平均値、
N2p(ABE):前記第2レンズ群に含まれる正レンズのd線に対する屈折率の平均値。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接眼レンズに関し、特に、一眼レフファインダーに用いられる接眼レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
一眼レフファインダーは、撮影レンズの実像を正の屈折力の接眼レンズで観察する実像式ファインダーであり、撮影レンズの倒立像をクイックリターンミラーと呼ばれる表面鏡とペンタダハプリズムを用いて正立化し、色消しされた正レンズの接眼レンズによって観察するという構成が一般的である。撮影者の使い易さを向上させるため、一眼レフファインダーには、高い観察倍率、視度調節機能が求められている。また、暗い場所での使用や、撮影者の目と接眼レンズの射出瞳がずれていた場合を考えて、アイポイントで、約φ10mmで良好に収差補正された広い瞳を確保することも望まれている。
【0003】
観察倍率を大きくするには、接眼レンズの焦点距離を短くすることが必要となる。しかしながら、視度を−1[m-1]付近に設定することが必要なため、焦点板から接眼レンズまでの距離によって実質的な接眼レンズの焦点距離が決定されてしまう。したがって、最も単純にファインダーの観察倍率を大きくするには、ペンタプリズムの光路長を短くし、接眼レンズをペンタプリズムに接近させて配置すればよい。一方、接眼レンズのアイポイント側レンズ面頂点からアイポイントまでの距離(アイレリーフ)を十分長くとろうとすると、ペンタプリズム射出面でのケラレを少なくするためにペンタプリズムを大型化しなければならない。そのため、ペンタプリズムの光路長が長くなり、観察倍率が低下してしまう。すなわち、観察倍率を上げることと、アイレリーフを十分長くとることは、互いに相反することであった。
【0004】
なお、正立系を介して対物レンズの結像を観察する接眼レンズには、一眼レフカメラに用いられ、アイポイント側から順に、負レンズ群(第1レンズ群)と、正レンズ群(第2レンズ群)と、負レンズ群(第3レンズ群)とを備え、第2レンズ群及び第3レンズ群の屈折力を適切に設定するとともに、第2レンズ群を光軸上に沿って移動させることにより、諸収差を良好に補正しつつ、観察倍率が高く、視度調節が可能なタイプのものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。また近年、このような接眼レンズに対しては、収差性能だけではなく、ファインダーとしての光学性能を損なう要因の一つであるゴーストやフレアに関する要求も厳しさを増しており、そのためレンズ面に施される反射防止膜にもより高い性能が要求され、要求に応えるべく多層膜設計技術や多層膜成膜技術も進歩を続けている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−324684号公報
【特許文献2】特開2000−356704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、カメラのデジタル化に伴い、カメラには液晶画面や様々な電子部品が搭載され、撮像素子面またはフィルム面からカメラ後端面までの距離が大幅に長くなっている。撮影者がファインダーを覗きやすくするためには、アイポイントとカメラ後端面からの距離を十分長く確保しなくてはならないが、そのためには、接眼レンズをカメラの後端面付近に配置し、さらに、接眼レンズのアイレリーフを十分に確保する必要がある。
【0007】
ところが、接眼レンズをカメラの後端面付近に配置すると、焦点板から接眼レンズまでの距離が長くなり、観察倍率を上げるのが困難になる。また、カメラの後端面付近に配置された接眼レンズのアイレリーフを十分に確保しようとすると、前述したように、ペンタプリズムを大型化しなければならず、ペンタプリズムの光路長(硝路長)が長くなって焦点板から接眼レンズまでの距離が長くなり、観察倍率を上げるのがさらに困難になる。このように、カメラのデジタル化に伴い、視野の高い観察倍率を確保することは非常に困難となっていた。
【0008】
さらに、撮影者が点光源などの輝度の高い物体をファインダーで観察した際、もしくは、アイポイント側から接眼レンズに光線が入射した際に、接眼レンズにおける光学面からは、ゴーストやフレアとなる反射光が発生しやすいという課題もあった。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、視度調節が可能で大きな瞳径を有しながら、ゴーストやフレアをより低減させ、比較的高い視野の観察倍率が確保された接眼レンズを提供することを目的とする。また、このような接眼レンズを備えたファインダー光学系及び光学機器、並びに接眼レンズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するため、本発明に係る接眼レンズは、対物レンズによって形成された像、表示部材によって表示された像又は物体を接眼レンズにより観察するファインダー光学系に用いられる接眼レンズにおいて、前記接眼レンズを構成する光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜を設け、前記反射防止膜は屈折率ndが1.30以下の層を少なくとも1層含み、物体側から順に光軸に沿って並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群とを有し、次の条件式を満足する。
【0011】
Nn(ABE) > 1.870
N2p(ABE) ≧ 1.750
但し、
Nn(ABE):前記第1レンズ群及び前記第3レンズ群に含まれる負の屈折力を有するレンズのd線に対する屈折率の平均値、
N2p(ABE):前記第2レンズ群に含まれる正レンズのd線に対する屈折率の平均値。
【0012】
また、本発明に係る接眼レンズは、対物レンズによって形成された像、表示部材によって表示された像又は物体を接眼レンズにより観察するファインダー光学系に用いられる接眼レンズにおいて、前記接眼レンズを構成する光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜を設け、前記反射防止膜は屈折率ndが1.30以下の層を少なくとも1層含み、物体側から順に光軸に沿って並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群とを有し、次の条件式を満足する。
【0013】
Nn(ABE) > 1.870
29.0 > ν(ABE)
但し、
Nn(ABE):前記第1レンズ群及び前記第3レンズ群に含まれる負の屈折力を有するレンズのd線に対する屈折率の平均値、
ν(ABE):前記第1レンズ群及び前記第3レンズ群に含まれる負の屈折力を有するレンズのd線を基準とするアッベ数の平均値。
【0014】
また、本発明に係る接眼レンズは、対物レンズによって形成された像、表示部材によって表示された像又は物体を接眼レンズにより観察するファインダー光学系に用いられる接眼レンズにおいて、前記接眼レンズを構成する光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜を設け、前記反射防止膜は屈折率ndが1.30以下の層を少なくとも1層含み、物体側から順に光軸に沿って並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群とを有し、次の条件式を満足する。
【0015】
29.0 > ν(ABE)
ν2 ≧ 47.3
但し、
ν(ABE):前記第1レンズ群及び前記第3レンズ群に含まれる負の屈折力を有するレンズのd線を基準とするアッベ数の平均値、
ν2:前記第2レンズ群に含まれるレンズのd線を基準とするアッベ数の平均値。
【0038】
本発明に係るファインダー光学系は、対物レンズによって形成された像を接眼レンズにより観察するファインダー光学系において、前記接眼レンズが上記いずれかの接眼レンズである
【0039】
本発明に係る光学機器は、対物レンズによって形成された像を接眼レンズにより観察するファインダー光学系を備え、前記ファインダー光学系が上記のファインダー光学系である。
【0040】
本発明に係る接眼レンズの製造方法は、対物レンズによって形成された像、表示部材によって表示された像又は物体を接眼レンズにより観察するファインダー光学系に用いられる接眼レンズの製造方法であって、前記接眼レンズを構成する光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜を設け、前記反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含み、物体側から順に光軸に沿って並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群とを有し、次の条件式を満足するように、レンズ鏡筒内に各レンズを配置する
【0041】
Nn(ABE) > 1.870
N2p(ABE) ≧ 1.750
但し、
Nn(ABE):前記第1レンズ群及び前記第3レンズ群に含まれる負の屈折力を有するレンズのd線に対する屈折率の平均値、
N2p(ABE):前記第2レンズ群に含まれる正レンズのd線に対する屈折率の平均値。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、視度調節が可能で大きな瞳径を有しながら、ゴーストやフレアをより低減させ、比較的高い視野の観察倍率が確保された接眼レンズを得ることができる。また、このような接眼レンズを備えたファインダー光学系及び光学機器、並びに接眼レンズの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】第1実施例に係る接眼レンズの構成図である。
図2】第1実施例に係る接眼レンズの諸収差図(球面収差、非点収差、コマ収差及び歪曲収差)であり、(a)は視度−1[m-1]時の諸収差図、(b)は視度−3[m-1]時の諸収差図、(c)は視度+1[m-1]時の諸収差図をそれぞれ示す。
図3】第1実施例に係る接眼レンズのレンズ構成を示す断面図であって、アイポイント側から入射した光線が第1番目の反射光発生面で反射する様子の一例を説明する図である。
図4】第1実施例に係る接眼レンズのレンズ構成を示す断面図であって、物体側から入射した光線が第1番目の反射光発生面と第2番目の反射光発生面で反射する様子の一例を説明する図である。
図5】第2実施例に係る接眼レンズの構成図である。
図6】第2実施例に係る接眼レンズの諸収差図(球面収差、非点収差、コマ収差及び歪曲収差)であり、(a)は視度−1[m-1]時の諸収差図、(b)は視度−3[m-1]時の諸収差図、(c)は視度+1[m-1]時の諸収差図をそれぞれ示す。
図7】第3実施例に係る接眼レンズの構成図である。
図8】第3実施例に係る接眼レンズの諸収差図(球面収差、非点収差、コマ収差及び歪曲収差)であり、(a)は視度−1[m-1]時の諸収差図、(b)は視度−3[m-1]時の諸収差図、(c)は視度+1[m-1]時の諸収差図をそれぞれ示す。
図9】第1実施形態に係る接眼レンズ及びファインダー光学系を備えた一眼レフカメラの概略構成図である。
図10】第1実施形態に係る接眼レンズの製造方法を説明するためのフローチャートである。
図11】反射防止膜の層構造の一例を示す説明図である。
図12】反射防止膜の分光特性を示すグラフである。
図13】変形例に係る反射防止膜の分光特性を示すグラフである。
図14】変形例に係る反射防止膜の分光特性の入射角度依存性を示すグラフである。
図15】従来技術で作成した反射防止膜の分光特性を示すグラフである。
図16】従来技術で作成した反射防止膜の分光特性の入射角度依存性を示すグラフである。
図17】第4実施例に係る接眼光学系の構成を示す断面図である。
図18】第4実施例に係る接眼光学系の諸収差図である。
図19】第5実施例に係る接眼光学系の構成を示す断面図である。
図20】第5実施例に係る接眼光学系の諸収差図である。
図21】第6実施例に係る接眼光学系の構成を示す断面図である。
図22】第6実施例に係る接眼光学系の諸収差図である。
図23】第7実施例に係る接眼光学系の構成を示す断面図である。
図24】第7実施例に係る接眼光学系の諸収差図である。
図25】第8実施例に係る接眼光学系の構成を示す断面図である。
図26】第8実施例に係る接眼光学系の諸収差図である。
図27】参考例に係る接眼光学系の構成を示す断面図である。
図28】参考例に係る接眼光学系の諸収差図である。
図29】第2及び第3実施形態に係る接眼光学系を備えたカメラの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態について上記図面を参照しながら説明する。まず、図1図16を参照しながら、本発明の第1実施形態について説明する。次に、図17図29を参照しながら、本発明の第2実施形態及び第3実施形態について説明する。
【0046】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る接眼レンズEL及びファインダー光学系VFを備えた一眼レフカメラCAMが図9に示されている。この一眼レフカメラCAMは、対物レンズOLと、ミラーMと、撮影用の撮像素子CCDと、ファインダー光学系VFとを備えて構成される。また、ファインダー光学系VFは、物体側から順に光軸に沿って並んだ、焦点板Fと、コンデンサレンズCと、ペンタプリズムPと、接眼レンズELとを有して構成され、対物レンズOLによって焦点板F上に形成(結像)された像を接眼レンズELにより観察できるようになっている。なお、接眼レンズELの後方にアイポイントE.Pが設けられている。
【0047】
対物レンズOLは、被写体像を撮像素子CCD上もしくは焦点板F上に結像する。ミラーMは、対物レンズOLを通る光軸に対して45度の角度で挿入されており、通常時(撮影待機状態)には、対物レンズOLを通った被写体(図示せず)からの光を反射して焦点板F上に結像させ、シャッターレリーズ時にはミラーアップ状態となって跳ね上がり、対物レンズOLを通った被写体(図示せず)からの光が撮像素子CCD上に結像するようになっている。すなわち、撮像素子CCDと焦点板Fとは、光学的に共役な位置に配設される。
【0048】
ペンタプリズムPは、対物レンズOLによって結像された焦点板F上の被写体像(倒立像)を、上下左右反転して正立像にする。また、ペンタプリズムPは、観察者が被写体像を正立像として観察できるようにするとともに、ファインダー光学系VFをコンパクトに構成できるようにしている。焦点板FとペンタプリズムPとの間にコンデンサレンズCが設けられ、焦点板F上の被写体像をペンタプリズムPに導いている。コンデンサレンズCは、光束の発散を抑える正の屈折力を有しており、対物レンズOLの射出瞳から離れるに従い光束の広がりが大きくなることから、正立光学系や接眼光学系が大型化するのを防ぐため、対物レンズOLによって形成される被写体像の結像位置の近傍(例えば、本実施形態のように焦点板FとペンタプリズムPとの間)に配設されている。
【0049】
接眼レンズELは、物体側から順に光軸に沿って並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とを備え、第2レンズ群G2を光軸に沿って移動させることにより視度調節を行うことができるようになっており、第2レンズ群G2は両凸レンズ成分L2を有している。また、第3レンズ群G3は、物体側に凸面を向けた負の屈折力を有するメニスカスレンズ成分L3を有している。なお、本実施形態では、第3レンズ群G3を構成する前記メニスカスレンズ成分L3は、第3レンズ群G3内において最もアイポイントE.P側に位置している。
【0050】
このように、第3レンズ群G3を物体側に凸面を向けた負の屈折力を有するメニスカスレンズ成分L3を含む構成にすることで、十分なアイレリーフをとりつつ、所定の観察倍率を確保することが可能になる。
【0051】
ここで、一般に、d線に対する屈折率の高い高屈折率材料が知られている。例えば、第1レンズ群G1に含まれる負の屈折力を有するレンズの屈折率の平均値n1が小さいと、第1レンズ群G1に含まれるレンズの曲率半径が小さくなる傾向があり、その結果、歪曲収差及び像面湾曲が悪化しやすくなる。また、第3レンズ群G3に含まれる負の屈折力を有するレンズの屈折率の平均値n3が小さいと、第3レンズ群G3に含まれるレンズの曲率半径が小さくなる傾向があり、その結果、球面収差及びコマ収差が悪化しやすくなる。そこで、第1レンズ群G1,第3レンズ群G3に含まれる負の屈折力を有するレンズの屈折率の平均値n1,n3をそれぞれ高くすることで、第1レンズ群G1,第3レンズ群G3にそれぞれ大きな屈折力を持たせつつも、これらレンズ群G1,G3に含まれる負の屈折力を有するレンズの曲率半径を大きくすることが可能になり、その結果、歪曲収差、像面湾曲、球面収差及びコマ収差を良好に補正することができる。
【0052】
そして、本実施形態に係る接眼レンズELは、次の条件式(1)を満足する。
【0053】
Nn(ABE) > 1.870 …(1)
但し、
Nn(ABE):第1レンズ群G1及び第3レンズ群G3に含まれる負の屈折力を有するレンズのd線に対する屈折率の平均値。
【0054】
このように、本実施形態に係る接眼レンズELは、条件式(1)を満足するように、第1レンズ群G1及び第3レンズ群G3に含まれる負の屈折力を有するレンズのd線に対する屈折率の平均値を高くすることで、第1レンズ群G1又は第3レンズ群G3に含まれる負の屈折力を有するレンズの少なくとも一つに高屈折率材料を採用した際に増加する傾向にあるペッツバール和を最適化することが可能となり、その結果、像面湾曲をより良好に補正することができる。つまり、本実施形態に係る接眼レンズELは、単に第1レンズ群G1又は第3レンズ群G3に含まれる負の屈折力を有するレンズのd線に対する屈折率の平均値n1又はn3を高くするのとは異なり、条件式(1)を満足するように、第1レンズ群G1及び第3レンズ群G3に含まれる負の屈折力を有するレンズのd線に対する屈折率の平均値を高くするので、ペッツバール和を最適にして像面湾曲を良好に補正することができる。
【0055】
なお、条件式(1)の下限値を1.875にすることにより、本実施形態の効果をより発揮できる。
【0056】
さらに、第1レンズ群G1及び第3レンズ群G3に含まれる負の屈折力を有するレンズの屈折率の平均値が条件式(1)を満たし、かつ、第1レンズ群G1に含まれる負の屈折力を有するレンズの屈折率の平均値n1及び第3レンズ群G3に含まれる負の屈折力を有するレンズの屈折率の平均値n3を大きくする(例えば、n1>1.83、n2>1.83)ことで、歪曲収差、像面湾曲、球面収差及びコマ収差を補正することができ、より良好な光学性能を得ることができる。
【0057】
また、第2レンズ群G2に含まれる正の屈折力を有するレンズは、曲率半径が小さいと、外径を確保するためにレンズ厚を厚くしなければならないが、高屈折率のガラスを用いることで従来よりも薄型化することができる。レンズの薄型化により、ペンタプリズムPの射出面とアイポイントE.Pとの間の距離を短くすることができ、高い観察倍率の確保に繋げることができる。
【0058】
なお、本実施形態において、第2レンズ群G2に含まれる正レンズのd線に対する屈折率の平均値は、1.75以上であることが好ましい。
【0059】
またこのとき、第2レンズ群G2における少なくとも一つの光学面を非球面にすることで、球面収差をさらに良好に補正することが可能になる。特に、第2レンズ群G2の両凸レンズ成分の物体側の光学面を非球面にすることで、非球面を効果的に利用することができるため、視度調節時における各視度での球面収差及びコマ収差を良好に補正することが可能となり、視度調節時の収差変動を抑えることができる。
【0060】
本実施形態に係る接眼レンズELは、第2レンズ群G2を光軸に沿って移動させることにより視度調節を行うことで、視度調節時にレンズを動かすことによる収差変動(特に、球面収差の収差変動)を少なくすることができる。
【0061】
本実施形態に係る接眼レンズELは、該接眼レンズを構成する光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、この反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含んでいる。このように構成することで、本実施形態に係る接眼レンズELは、物体側からもしくはアイポイントE.P側からの光が光学面で反射されて生じるゴーストやフレアをさらに低減することができ、高い結像性能を達成することができる。
【0062】
本実施形態に係る接眼レンズELにおいて、反射防止膜は多層膜であり、ウェットプロセスで形成された層は、多層膜を構成する層のうち最も表面の層であることが好ましい。このようにすれば、空気との屈折率差を小さくすることができるため、光の反射をより小さくすることが可能になり、ゴーストやフレアをさらに低減させることができる。
【0063】
本実施形態に係る接眼レンズELにおいて、次の条件式を満足することが好ましい。
【0064】
nd≦1.30
但し、
nd:反射防止膜のウェットプロセスを用いて形成された層のd線に対する屈折率。
【0065】
上記条件式を満足することにより、反射防止膜のウェットプロセスを用いて形成された層と空気との屈折率差を小さくすることができるため、光の反射をより小さくすることが可能になり、ゴーストやフレアをさらに低減させることができる。
【0066】
本実施形態に係る接眼レンズELにおいて、第1レンズ群G1から第3レンズ群G3における光学面のうち、反射防止膜が設けられた光学面は、アイポイントE.P側から見て凹形状のレンズ面であることが好ましい。反射光が発生し易いこのような光学面に反射防止膜を形成することで、ゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0067】
本実施形態に係る接眼レンズELにおいて、第1レンズ群G1から第3レンズ群G3における光学面のうち、反射防止膜が設けられた、アイポイントE.P側から見て凹形状のレンズ面は、物体側のレンズ面であることが好ましい。反射光が発生し易いこのような光学面に反射防止膜を形成することで、ゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0068】
本実施形態に係る接眼レンズELにおいて、第1レンズ群G1から第3レンズ群G3における光学面のうち、反射防止膜が設けられた、アイポイントE.P側から見て凹形状のレンズ面は、像面側のレンズ面であることが好ましい。反射光が発生し易いこのような光学面に反射防止膜を形成することで、ゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0069】
本実施形態に係る接眼レンズELにおいて、第1レンズ群G1から第3レンズ群G3における光学面のうち、反射防止膜が設けられた光学面は、物体側から見て凹形状のレンズ面であることが好ましい。反射光が発生し易いこのような光学面に反射防止膜を形成することで、ゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0070】
本実施形態に係る接眼レンズELにおいて、反射防止膜が設けられた、物体側から見て凹形状のレンズ面は、第2レンズ群G2における光学面のうち像面側レンズ面であることが好ましい。反射光が発生し易いこのような光学面に反射防止膜を形成することで、ゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0071】
本実施形態に係る接眼レンズELにおいて、反射防止膜は、ウェットプロセスに限らず、ドライプロセス等により形成しても良い。この際、反射防止膜は、d線に対する屈折率が1.30以下となる層を少なくとも1層含むようにすることが好ましい。反射防止膜が、d線に対する屈折率が1.30以下となる層を少なくとも1層含むようにすることで、反射防止膜をドライプロセス等で形成しても、ウェットプロセスを用いた場合と同様の効果を得ることができる。なおこのとき、d線に対する屈折率が1.30以下になる層は、多層膜を構成する層のうち最も表面側の層であることが好ましい。
【0072】
本実施形態に係る接眼レンズELは、次の条件式(2)を満足することが好ましい。
【0073】
30.0 > ν(ABE)…(2)
但し、
ν(ABE):第1レンズ群G1及び第3レンズ群G3に含まれる負の屈折力を有するレンズのd線を基準とするアッベ数の平均値。
【0074】
条件式(2)を満足することで、第1レンズ群G1及び第3レンズ群G3により第2レンズ群G2で発生する色収差、本実施形態においては倍率色収差と軸上色収差の両方において十分な補正が可能になる。なお、条件式(2)の上限値を上回る場合、第1レンズ群G1及び第3レンズ群G3により、第2レンズ群G2で発生する倍率色収差を補正しきれない。
【0075】
なお、条件式(2)の上限値を29.5にすることで、本実施形態の効果をより発揮できる。また、条件式(2)の上限値を29.0とすることで、本実施形態の効果をさらに発揮できる。
【0076】
さらに、第1レンズ群G1及び第3レンズ群G3が条件式(2)を満足した上で、第2レンズ群G2は次の条件式(3)を満足することが好ましい。
【0077】
ν2>40 …(3)
但し、
ν2:第2レンズ群G2に含まれるレンズのd線を基準とするアッベ数の平均値。
【0078】
条件式(3)を満足することで、第2レンズ群G2で発生する色収差、具体的には倍率色収差と軸上色収差をともに抑えることができる。なお、条件式(3)の下限値を下回る場合、第1レンズ群G1に負荷がかかり、ここで除去している像面湾曲及び歪曲収差の悪化を招き、好ましくない。
【0079】
本実施形態に係る接眼レンズELにおいて、第3レンズ群G3は、十分なアイレリーフを確保しつつ、観察倍率を高めるため、次の条件式(4)を満足することが好ましい。
【0080】
S3>2.4 …(4)
【0081】
ここで、S3は第3レンズ群G3の最もアイポイントE.P側に位置するレンズ成分のシェイプファクターであり、S3=(Ro3+Re3)/(Ro3−Re3)の条件式で定義される。なお、Ro3は第3レンズ群G3の最もアイポイントE.P側に位置するレンズ成分における物体側の面の曲率半径であり、Re3は第3レンズ群G3の最もアイポイントE.P側に位置するレンズ成分におけるアイポイントE.P側の面の曲率半径である。
【0082】
条件式(4)は、第3レンズ群G3の最もアイポイントE.P側に位置するレンズ成分(本実施形態ではメニスカスレンズ成分L3が該当)の形状を規定するものである。本来、このレンズ成分の負の屈折率が強いほど、観察倍率を高めるには有利である。しかしながら、視度調節を行うためには、第1レンズ群G1の負の屈折力が強くなくてはならない。そこで、第3レンズ群G3の最もアイポイントE.P側に位置するレンズ成分は、負の屈折力を小さくしつつもレンズ厚を厚くし、条件式(4)を満たすような形状を取ることにより、当該レンズ成分における物体側の面がランド光に対して正の働きをし、アイポイントE.P側の面が負の働きをすることで、主点をアイポイントE.P側にし、主点間隔を広げ、観察倍率を高めている。なお、ランド光とは、像高が零に達する光線のうち、最も光軸から離れた光線のことである。
【0083】
さらに、アイポイントE.P側から光の軌跡を考えると、斜光束に対して、第3レンズ群G3の最もアイポイントE.P側に位置するレンズ成分はアイポイントE.Pから光を大きく屈折させることなく第2レンズ群G2へと結び、これにより、ペンタプリズムPの射出面での光線高を抑えてケラレを防止できることから、ペンタプリズムPの大型化を避けることができる。また、条件式(4)の形状は、アイレリーフの確保も容易にしている。
【0084】
なお、条件式(4)の下限値を3.4にすることで、本実施形態の効果をより発揮できる。また、条件式(4)の下限値を4.0とすることで、本実施形態の効果をさらに発揮できる。
【0085】
以上のような構成の一眼レフカメラCAMにおいて、被写体(不図示)からの光は、対物レンズOLを通り、ミラーMで焦点板Fの方向に反射され、焦点板F上に被写体像が結像される。そして、ファインダー光学系VFにおいて、焦点板F上の被写体像からの光束は、コンデンサレンズC、ペンタプリズムP、及び接眼レンズELを通過してアイポイントE.Pに導かれ、アイポイントE.Pにて観察者は被写体(不図示)の実像を観察することができる。また、シャッターレリーズ時には、対物レンズOLを通った被写体(不図示)からの光は、ミラーMがミラーアップ状態となるため、撮像素子CCD上に結像される。
【0086】
続いて、図10を参照しながら、上述の接眼レンズELの製造方法について説明する。なお、この接眼レンズの製造方法は、上述のように対物レンズによって形成された像を観察するファインダー光学系に用いられる接眼レンズだけではなく、後述するような(液晶等の)表示部材によって表示された像又は物体を観察するファインダー光学系に用いられる接眼レンズにも適している。まず、ウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含む反射防止膜を、前記接眼レンズELを構成する光学面のうち少なくとも1面に形成する(ステップST10)。そして、この反射防止膜が形成された光学面を有するレンズを含む、各レンズをレンズ鏡筒内に配置する(ステップST20)。
【0087】
このような本実施形態に係る接眼レンズの製造方法によれば、視度調節が可能で大きな瞳径を有しながら、ゴーストやフレアをより低減させ、比較的高い視野の観察倍率が確保された接眼レンズを得ることができる。また、このような接眼レンズを備えたファインダー光学系及び光学機器を得ることができる。
【0088】
以下、第1実施形態に係る接眼レンズの各実施例について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0089】
なお、本実施形態の第1実施例に係る図1に対する各参照符号は、参照符号の桁数の増大による説明の煩雑化を避けるため、実施例ごとに独立して用いている。ゆえに、他の実施例に係る図面と共通の参照符号を付していても、それらは他の実施例とは必ずしも共通の構成ではない。
【0090】
以下に表1〜表3を示すが、これらは本実施形態に係る接眼レンズの第1〜第3実施例における各レンズの諸元の表である。
【0091】
表中の[レンズデータ]において、面番号は焦点板Fに形成される焦点面を1として光線の進行する方向に沿った物体側からの光学面の順序を、Rは各光学面の曲率半径(マイナスは物体側に凹形状を示す)を、dは各光学面から次の光学面までの光軸上の距離である面間隔を、n(d)はレンズに用いる硝材のd線(波長587.6nm)に対する屈折率を、νdはレンズに用いる硝材のd線を基準とするアッベ数を示す。レンズ面が非球面である場合には、面番号に*印を付し、曲率半径Rの欄には近軸曲率半径を示す。曲率半径の「∞」は平面を、E.Pはアイポイントを示す。空気の屈折率「1.00000」の記載は省略する。[可変間隔データ]において、fは接眼レンズEL全系の焦点距離を、di(但し、iは整数)は第i面の可変の面間隔を示す。[条件式]には、各条件式に対応する値を示す。
【0092】
表中の[非球面データ]には、[レンズデータ]において*印が付された非球面について、その形状を次式(a)で示す。すなわち、光軸に垂直な方向の高さをyとし、非球面の頂点における接平面から高さyにおける非球面上の位置までの光軸に沿った距離(サグ量)をS(y)とし、基準球面の曲率半径(近軸曲率半径)をRとし、円錐係数をκとし、n次の非球面係数をAnとしたとき、以下の式(a)で示している。また、E-nは、×10-nを表す。例えば、1.234E-05=1.234×10-5である。
【0093】
S(y)=(y2/R)/{1+(1−κ・y2/R21/2}+A4×y4+A6×y6+A8×y8 …(a)
【0094】
表中の焦点距離f、曲率半径R、面間隔d、その他の長さの単位は「mm」である。但し、光学系は、比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、単位は「mm」に限定されることなく、他の適当な単位を用いることが可能である。
【0095】
表中の視度の単位は[m-1]である。例えば、視度X[m-1]とは、接眼レンズELによる像がアイポイントE.Pから光軸上に1/X[m(メートル)]の位置にできる状態を示している。なおこのとき、符号は、像がアイポイントE.Pより物体側にできた場合を負とする。
【0096】
ここまでの表の説明は全ての実施例において共通であり、以下での説明を省略する。
【0097】
(第1実施例)
第1実施例について、図1図4及び表1を用いて説明する。図1は、第1実施例に係る接眼レンズEL(EL1)のレンズ構成図(視度−1[m-1]時)である。図1では、ペンタプリズムPは厚い平行平面板に展開した状態で示され、焦点板Fは該焦点板Fに形成される焦点面Iのみが示されている。
【0098】
第1実施例に係る接眼レンズEL1は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とを備え、第2レンズ群G2を光軸に沿って移動させることにより視度調節を可能としている。第1レンズ群G1は物体側に凸面を向けたメニスカスレンズL1を有し、第2レンズ群G2は両凸レンズL2を有し、第3レンズ群G3は物体側に凸面を向けたメニスカスレンズL3を有して構成されている。
【0099】
本実施例では、焦点面Iと第1レンズ群G1との間に、不図示の対物レンズの実像面すなわち焦点面I側から順に、光軸に沿って、焦点面I近傍に配置されたコンデンサレンズCと、ペンタプリズムPとが配置されている。
【0100】
上記構成を有する第1実施例に係る接眼レンズEL1では、(不図示の対物レンズにより結像された)焦点面I上の像を、コンデンサレンズC、ペンタプリズムPを順に介して正立像とした後に、第1レンズ群G1〜第3レンズ群G3で構成された接眼レンズEL1により拡大し、アイポイントE.Pにて観察するようになっている。
【0101】
第1実施例に係る接眼レンズEL1では、第1レンズ群G1の負メニスカスレンズL1の像面側レンズ面(表1中の面番号7)と、第2レンズ群G2の両凸形状の正レンズL2の物体側レンズ面(表1中の面番号8)に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0102】
以下の表1に、第1実施例に係る接眼レンズEL1の諸元値を掲げる。表1における面番号1〜11は、図1に示す曲率半径R1〜R11の各光学面に対応している。
【0103】
(表1)
[レンズデータ]
面番号 R d n(d) νd
1 ∞ 2.10
2 ∞ 4.70 1.56883 56.34
3 -65.035 1.30
4 0.000 110.53 1.51680 64.10
5 0.000 0.35
6 501.286 1.10 1.84666 23.78
7 44.978 d7(可変)
*8 26.575 5.40 1.77387 47.25
9 -115.804 d9(可変)
10 27.617 5.00 1.90366 31.27
11 19.001 d11(可変)
E.P

[非球面データ]
第8面 κ=1.0000,A4=-7.4129E-06,A6=-7.2215E-09,A8=1.6391E-12

[可変間隔データ]
視度 -1 -3 +1
f 72.8 70.0 76.2
d7 0.6 2.8 5.3
d9 5.3 3.1 0.6
d11 20.6 23.6 25.6

[条件式]
条件式(1)Nn(ABE)=1.875
条件式(2)ν(ABE)=27.5
条件式(3)ν2=47.3
条件式(4)S3=5.42
【0104】
表1に示す諸元の表から、第1実施例に係る接眼レンズEL1は、上記条件式(1)〜(4)を満たすことが分かる。
【0105】
図2は、第1実施例に係る接眼レンズEL1の諸収差図(紙面左から、球面収差、非点収差、コマ収差及び歪曲収差)であり、(a)は視度−1[m-1]時の諸収差図、(b)は視度−3[m-1]時の諸収差図、(c)は視度+1[m-1]時の諸収差図をそれぞれ示す。
【0106】
各収差図において、Y1はペンタプリズムPへの光線の入射高さを、Y0は焦点面I上での物体高を示す。非点収差図では、実線はサジタル像面を、破線はメリディオナル像面を示す。コマ収差図では、「min」は角度単位の「分」を示す。球面収差図及び非点収差図では、それぞれ横軸の単位は[m-1]であり、図中では「D」で表す。また、CはC線(波長656.3nm)、Dはd線(波長587.6nm)、FはF線(波長486.1nm)、Gはg線(波長435.8nm)における収差曲線を示す。この収差図の説明は、第1〜第3実施例においても同様とし、その説明を省略する。
【0107】
第1実施例は、各収差図から明らかなように、ファインダー光学系VFの光路長が長く視度調節が可能であるにもかかわらず、各視度での光学系の諸収差が良好に補正されていることが分かる。また、第1実施例は、各収差図はアイポイントE.Pの瞳径をφ10mmとした場合の収差を示しているが、このような大きな瞳径において、コマ収差、球面収差、及び歪曲収差が良好に補正されていることも分かる。
【0108】
その結果、第1実施例に係る接眼レンズEL1によれば、ペンタプリズムPを利用する一眼レフカメラCAMのファインダー光学系VFにおいて、焦点板Fから接眼レンズEL1までの距離が非常に長いにもかかわらず、視度調節が可能で大きな瞳径を有しながら、比較的高い視野の観察倍率が確保された接眼レンズEL1を得ることができる。また、このような接眼レンズEL1を備えたファインダー光学系VF及び一眼レフカメラCAM(図9参照)によれば、焦点板Fから接眼レンズEL1までの距離が非常に長いにもかかわらず、視度調節が可能で大きな瞳径を有しながら、比較的高い視野の観察倍率を確保することができる。
【0109】
図3は、上記第1実施例と同様の構成の接眼レンズEL1であって、アイポイントE.P側から入射した光線が第1番目の反射面で反射してアイポイントE.P側にゴーストやフレアを形成する様子の一例を示す図である。
【0110】
図3において、アイポイントE.P側からの光線BMが図示のように接眼レンズELに入射すると、両凸形状の正レンズL2における曲率半径がR8の物体側のレンズ面(第1番目の反射光の発生面であり、表1中の面番号は8)で反射してアイポイントE.P側に到達し、ゴースト及びフレアを発生させる。なお、第1番目の反射光の発生面R8は、アイポイントE.P側から見て凹形状のレンズ面である。このような面に、より広い波長範囲で広入射角に対応した反射防止膜を形成することで、ゴースト及びフレアを効果的に低減させることができる。
【0111】
図4は、上記第1実施例と同様の構成の接眼レンズEL1であって、物体側から入射した光線が第1番目の反射面と第2番目の反射面で反射してアイポイントE.P側にゴーストやフレアを形成する様子の一例を示す図である。
【0112】
図4において、物体側からの光線BMが図示のように接眼レンズELに入射すると、両凸形状の正レンズL2における曲率半径がR8の物体側のレンズ面(第1番目の反射光の発生面であり、表1中の面番号は8)で反射し、その反射光は負メニスカスレンズL1における曲率半径がR7の像面側のレンズ面(第2番目の反射光の発生面であり、表1中の面番号は7)で再度反射してアイポイントE.P側に到達し、ゴースト及びフレアを発生させる。なお、第1番目の反射光の発生面R8は、アイポイントE.P側から見て凹形状のレンズ面である。また、第2番目の反射光の発生面R7は、アイポイントE.P側から見て凹形状のレンズ面である。このような面に、より広い波長範囲で広入射角に対応した反射防止膜を形成することで、ゴースト及びフレアを効果的に低減させることができる。
【0113】
(第2実施例)
第2実施例について、図5図6及び表2を用いて説明する。図5は、第2実施例に係る接眼レンズEL(EL2)のレンズ構成図(視度−1[m-1]時)である。図5では、ペンタプリズムPは厚い平行平面板に展開した状態で示され、焦点板Fは該焦点板Fに形成される焦点面Iのみが示されている。
【0114】
第2実施例に係る接眼レンズEL2は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とを備え、第2レンズ群G2を光軸に沿って移動させることにより視度調節を行うことができるようになっている。第1レンズ群G1は物体側に凸面を向けたメニスカスレンズL1を有し、第2レンズ群G2は両凸レンズL2を有し、第3レンズ群G3は物体側に凸面を向けたメニスカスレンズL3を有して構成されている。
【0115】
本実施例では、焦点面Iと第1レンズ群G1との間に、不図示の対物レンズの実像面すなわち焦点面I側から順に、光軸に沿って、焦点面I近傍に配置されたコンデンサレンズCと、ペンタプリズムPとが配置されている。
【0116】
上記構成を有する第2実施例に係る接眼レンズEL2では、(不図示の対物レンズにより結像された)焦点面I上の像を、コンデンサレンズC、ペンタプリズムPを順に介して正立像とした後に、第1レンズ群G1〜第3レンズ群G3で構成された接眼レンズEL2により拡大し、アイポイントE.Pにて観察するようになっている。
【0117】
第2実施例に係る接眼レンズEL2では、第2レンズ群G2の両凸形状の正レンズL2の像面側レンズ面(表2中の面番号9)と、第3レンズ群G3の負メニスカスレンズL3の物体側レンズ面(表2中の面番号10)に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0118】
以下の表2に、第2実施例に係る接眼レンズEL2の諸元値を掲げる。表2における面番号1〜11は、図5に示す曲率半径R1〜R11の各光学面に対応している。
【0119】
(表2)
[レンズデータ]
面番号 R d n(d) νd
1 ∞ 2.00
2 ∞ 4.70 1.56883 56.34
3 -65.035 1.30
4 0.000 110.53 1.51680 64.10
5 0.000 0.25
6 1159.197 2.82 2.00069 25.45
7 56.134 d7(可変)
*8 27.121 5.40 1.75550 55.10
9 -104.236 d9(可変)
10 25.552 4.93 1.90366 31.27
11 18.069 d11(可変)
E.P

[非球面データ]
第8面 κ=0.4984,A4=-4.6337E-06,A6=-5.1922E-09,A8=1.1396E-11

[可変間隔データ]
視度 -1 -3 +1
f 73.4 70.7 76.6
d7 2.7 0.5 5.1
d9 2.8 5.0 0.4
d11 2.8 5.0 0.4

[条件式]
条件式(1)Nn(ABE)=1.952
条件式(2)ν(ABE)=28.4
条件式(3)ν2=55.1
条件式(4)S3=5.83
【0120】
表2に示す諸元の表から、第2実施例に係る接眼レンズEL2は、上記条件式(1)〜(4)を満たすことが分かる。
【0121】
図6は、第2実施例に係る接眼レンズEL2の諸収差図(紙面左から、球面収差、非点収差、コマ収差及び歪曲収差)であり、(a)は視度−1[m-1]時の諸収差図、(b)は視度−3[m-1]時の諸収差図、(c)は視度+1[m-1]時の諸収差図をそれぞれ示す。各収差図から明らかなように、第2実施例は、ファインダー光学系VFの光路長が長く視度調節が可能であるにもかかわらず、各視度での光学系の諸収差が良好に補正されていることが分かる。また、第2実施例は、各収差図はアイポイントE.Pの瞳径をφ10mmとした場合の収差を示しているが、このような大きな瞳径において、コマ収差、球面収差、及び歪曲収差が良好に補正されていることも分かる。
【0122】
その結果、第2実施例に係る接眼レンズEL2によれば、ペンタプリズムPを利用する一眼レフカメラCAMのファインダー光学系VFにおいて、焦点板Fから接眼レンズEL2までの距離が非常に長いにもかかわらず、視度調節が可能で大きな瞳径を有しながら、比較的高い視野の観察倍率が確保された接眼レンズEL2を得ることができる。また、このような接眼レンズEL2を備えたファインダー光学系VF及び一眼レフカメラCAM(図9参照)によれば、焦点板Fから接眼レンズEL2までの距離が非常に長いにもかかわらず、視度調節が可能で大きな瞳径を有しながら、比較的高い視野の観察倍率を確保することができる。
【0123】
(第3実施例)
第3実施例について、図7図8及び表3を用いて説明する。図7は、第3実施例に係る接眼レンズEL(EL3)のレンズ構成図(視度−1[m-1]時)である。図7では、ペンタプリズムPは厚い平行平面板に展開した状態で示され、焦点板Fは該焦点板Fに形成される焦点面Iのみが示されている。
【0124】
第3実施例に係る接眼レンズEL3は、光軸に沿って物体側から順に並んだ、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3とを備え、第2レンズ群G2を光軸に沿って移動させることにより視度調節を行い、第1レンズ群G1は物体側に凸面を向けたメニスカスレンズL1を有し、第2レンズ群G2は両凸レンズL2を有し、第3レンズ群G3は物体側に凸面を向けたメニスカスレンズL3を有して構成されている。
【0125】
本実施例では、焦点面Iと第1レンズ群G1との間に、不図示の対物レンズの実像面すなわち焦点面I側から順に、光軸に沿って、焦点面I近傍に配置されたコンデンサレンズCと、ペンタプリズムPとが配置されている。
【0126】
上記構成を有する第1実施例に係る接眼レンズEL3では、(不図示の対物レンズにより結像された)焦点面I上の像を、コンデンサレンズC、ペンタプリズムPを順に介して正立像とした後に、第1レンズ群G1〜第3レンズ群G3で構成された接眼レンズEL3により拡大し、アイポイントE.Pにて観察するようになっている。
【0127】
第3実施例に係る接眼レンズEL3は、第2レンズ群G2の両凸形状の正レンズL2の物体側レンズ面(表3中の面番号8)と、第2レンズ群G2の両凸形状の正レンズL2の像面側レンズ面(表3中の面番号9)に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0128】
以下の表3に、第3実施例に係る接眼レンズEL3の諸元値を掲げる。表3における面番号1〜11は、図7に示す曲率半径R1〜R11の各光学面に対応している。
【0129】
(表3)
[レンズデータ]
面番号 R d n(d) νd
1 ∞ 2.10
2 ∞ 4.70 1.56883 56.34
3 -65.035 1.30
4 0.000 110.53 1.51680 64.10
5 0.000 0.25
6 3941.586 1.10 2.00069 25.45
7 57.369 d7(可変)
*8 28.042 5.32 1.77250 49.61
9 -104.701 d9(可変)
10 25.668 4.90 2.00069 25.45
11 18.606 d11(可変)
E.P

[非球面データ]
第8面 κ=-0.1749,A4=-5.2054E-07,A6=-4.5613E-09,A8=1.2666E-11

[可変間隔データ]
視度 -1 -3 +1
f 70.4 72.9 75.9
d7 0.6 2.8 5.2
d9 5.2 3.0 0.6
d11 24.0 26.0 28.0

[条件式]
条件式(1)Nn(ABE)=2.001
条件式(2)ν(ABE)=25.5
条件式(3)ν2=49.6
条件式(4)S3=6.27
【0130】
表3に示す諸元の表から、第3実施例に係る接眼レンズEL3は、上記条件式(1)〜(4)を満たすことが分かる。
【0131】
図8は、第3実施例に係る接眼レンズEL3の諸収差図(紙面左から、球面収差、非点収差、コマ収差及び歪曲収差)であり、(a)は視度−1[m-1]時の諸収差図、(b)は視度−3[m-1]時の諸収差図、(c)は視度+1[m-1]時の諸収差図をそれぞれ示す。各収差図から明らかなように、第3実施例は、ファインダー光学系VFの光路長が長く視度調節が可能であるにもかかわらず、各視度での光学系の諸収差が良好に補正されていることが分かる。また、第3実施例は、各収差図はアイポイントE.Pの瞳径をφ10mmとした場合の収差を示しているが、このような大きな瞳径において、コマ収差、球面収差、及び歪曲収差が良好に補正されていることも分かる。
【0132】
その結果、第3実施例に係る接眼レンズEL3によれば、ペンタプリズムPを利用する一眼レフカメラCAMのファインダー光学系VFにおいて、焦点板Fから接眼レンズEL3までの距離が非常に長いにもかかわらず、視度調節が可能で大きな瞳径を有しながら、比較的高い視野の観察倍率が確保された接眼レンズEL3を得ることができる。また、このような接眼レンズEL3を備えたファインダー光学系VF及び一眼レフカメラCAM(図9参照)によれば、焦点板Fから接眼レンズEL3までの距離が非常に長いにもかかわらず、視度調節が可能で大きな瞳径を有しながら、比較的高い視野の観察倍率を確保することができる。
【0133】
ここで、本実施形態に係る接眼レンズELに用いられる反射防止膜(多層広帯域反射防止膜とも言う)について説明する。図11は、反射防止膜の膜構成の一例を示す図である。この反射防止膜101は7層からなり、レンズ等の光学部材102の光学面に形成される。第1層101aは真空蒸着法で蒸着された酸化アルミニウムで形成されている。また、この第1層101aの上に更に真空蒸着法で蒸着された酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物からなる第2層101bが形成される。さらに、この第2層101bの上に真空蒸着法で蒸着された酸化アルミニウムからなる第3層101cが形成され、この第3層101cの上に真空蒸着法で蒸着された酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物からなる第4層101dが形成される。またさらに、この第4層101dの上に真空蒸着法で蒸着された酸化アルミニウムからなる第5層101eが形成され、この第5層101eの上に真空蒸着法で蒸着された酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物からなる第6層101fが形成される。
【0134】
そして、このようにして形成された第6層101fの上に、ウェットプロセスによりフッ化マグネシウムとシリカの混合物からなる第7層101gが形成され、本実施形態の反射防止膜101が形成される。第7層101gの形成には、ウェットプロセスの一種であるゾル−ゲル法を用いている。ゾル−ゲル法とは、原料を混合することにより得られたゾルを、加水分解・重縮合反応などにより流動性のないゲルとし、このゲルを加熱・分解して生成物を得る方法であり、光学薄膜の作製においては、光学部材の光学面上に光学薄膜材料ゾルを塗布し、乾燥固化によりゲル膜とすることで膜を生成することができる。なお、ウェットプロセスとして、ゾル−ゲル法に限らず、ゲル状態を経ないで固体膜を得る方法を用いるようにしてもよい。
【0135】
このように、この反射防止膜101の第1層101a〜第6層101fまではドライプロセスである電子ビーム蒸着により形成され、最上層である第7層101gはフッ酸/酢酸マグネシウム法で調製したゾル液を用いるウェットプロセスにより、以下の手順で形成されている。
【0136】
まず、予めレンズ成膜面(上述の光学部材102の光学面)に真空蒸着装置を用いて、第1層101aとなる酸化アルミニウム層、第2層101bとなる酸化チタン−酸化ジルコニウム混合層、第3層101cとなる酸化アルミニウム層、第4層101dとなる酸化チタン−酸化ジルコニウム混合層、第5層101eとなる酸化アルミニウム層、第6層101fとなる酸化チタン−酸化ジルコニウム混合層を順に形成する。そして、蒸着装置より光学部材102を取り出した後、フッ酸/酢酸マグネシウム法により調製したゾル液にシリコンアルコキシドを加えたものをスピンコート法により塗布することにより、第7層101gとなるフッ化マグネシウムとシリカの混合物からなる層を形成する。フッ酸/酢酸マグネシウム法によって調製される際の反応式を以下の式(b)に示す。
【0137】
2HF+Mg(CH3COO)2 → MgF2 + 2CH3COOH …(b)
【0138】
この成膜に用いたゾル液は、原料混合後、オートクレーブで140℃、24時間高温加圧熟成処理を施した後、成膜に用いられる。光学部材102は、第7層101gの成膜終了後、大気中で160℃、1時間加熱処理して完成される。このようなゾル−ゲル法を用いることにより、大きさが数nmから数十nmの粒子が空隙を残して堆積して第7層101gが形成される。
【0139】
上記のように形成された反射防止膜101を有する光学部材の光学的性能について、図12に示す分光特性を用いて説明する。
【0140】
本実施形態に係る反射防止膜を有する光学部材(レンズ)は、以下の表4に示す条件で形成されている。表4では、基準波長をλとし、基板(光学部材)の屈折率が1.62、1.74及び1.85の場合について、反射防止膜101の各層101a(第1層)〜101g(第7層)の光学膜厚をそれぞれ求めたものである。なお、表4では、酸化アルミニウムをAl2O3、酸化チタンと酸化ジルコニウム混合物をZrO2+TiO2、フッ化マグネシウムとシリカの混合物をMgF2+SiO2とそれぞれ表している。
【0141】
(表4)
物質 屈折率 光学膜厚 光学膜厚 光学膜厚
媒質 空気 1
第7層 MgF2+SiO2 1.26 0.268λ 0.271λ 0.269λ
第6層 ZrO2+TiO2 2.12 0.057λ 0.054λ 0.059λ
第5層 Al2O3 1.65 0.171λ 0.178λ 0.162λ
第4層 ZrO2+TiO2 2.12 0.127λ 0.13λ 0.158λ
第3層 Al2O3 1.65 0.122λ 0.107λ 0.08λ
第2層 ZrO2+TiO2 2.12 0.059λ 0.075λ 0.105λ
第1層 Al2O3 1.65 0.257λ 0.03λ 0.03λ
基板の屈折率 1.62 1.74 1.85
【0142】
図12は、表4において基準波長λを550nmとして反射防止膜101の各層の光学膜厚を設計した光学部材に、光線が垂直入射する時の分光特性を表している。
【0143】
図12から、基準波長λを550nmで設計した反射防止膜101を有する光学部材は、光線の波長が420nm〜720nmの全域で反射率を0.2%以下に抑えられることが分かる。また、表4において基準波長λをd線(波長587.6nm)として各光学膜厚を設計した反射防止膜101を有する光学部材でも、その分光特性にはほとんど影響せず、図12に示す基準波長λが550nmの場合とほぼ同等の分光特性を有する。
【0144】
次に、本実施形態に係る反射防止膜の変形例について説明する。この反射防止膜は5層からなり、表4と同様に、以下の表5で示される条件で基準波長λに対する各層の光学膜厚が設計される。本変形例では、第5層の形成に前述のゾル−ゲル法を用いている。
【0145】
(表5)
物質 屈折率 光学膜厚 光学膜厚
媒質 空気 1
第5層 MgF2+SiO2 1.26 0.275λ 0.269λ
第4層 ZrO2+TiO2 2.12 0.045λ 0.043λ
第3層 Al2O3 1.65 0.212λ 0.217λ
第2層 ZrO2+TiO2 2.12 0.077λ 0.066λ
第1層 Al2O3 1.65 0.288λ 0.290λ
基板の屈折率 1.46 1.52
【0146】
図13は、表5において、基板の屈折率が1.52及び基準波長λを550nmとして各光学膜厚を設計した反射防止膜を有する光学部材に、光線が垂直入射する時の分光特性を示している。図13から変形例の反射防止膜は、光線の波長が420nm〜720nmの全域で反射率が0.2%以下に抑えられることが分かる。なお、表5において基準波長λをd線(波長587.6nm)として各光学膜厚を設計した反射防止膜を有する光学部材でも、その分光特性にはほとんど影響せず、図13に示す分光特性とほぼ同等の特性を有する。
【0147】
図14は、図13に示す分光特性を有する光学部材への光線の入射角が30度、45度、60度の場合の分光特性をそれぞれ示す。なお、図13図14には、表5に示す基板の屈折率が1.46の反射防止膜を有する光学部材の分光特性が図示されていないが、基板の屈折率が1.52とほぼ同等の分光特性を有していることは言うまでもない。
【0148】
また比較のため、図15に、従来の真空蒸着法などのドライプロセスのみで成膜した反射防止膜の一例を示す。図15は、表5に示す基板の屈折率1.52に、以下の表6で示される条件で構成される反射防止膜を設計した光学部材に、光線が垂直入射する時の分光特性を示す。また、図16は、図15に示す分光特性を有する光学部材への光線の入射角が30度、45度、60度の場合の分光特性をそれぞれ示す。
【0149】
(表6)
物質 屈折率 光学膜厚
媒質 空気 1
第7層 MgF2 1.39 0.243λ
第6層 ZrO2+TiO2 2.12 0.119λ
第5層 Al2O3 1.65 0.057λ
第4層 ZrO2+TiO2 2.12 0.220λ
第3層 Al2O3 1.65 0.064λ
第2層 ZrO2+TiO2 2.12 0.057λ
第1層 Al2O3 1.65 0.193λ
基板の屈折率 1.52
【0150】
図12図14で示す本実施形態に係る反射防止膜を有する光学部材の分光特性を、図15及び図16で示す従来例の分光特性と比較すると、本実施形態に係る反射防止膜はいずれの入射角においてもより低い反射率を有し、しかもより広い帯域で低い反射率を有することが良く分かる。
【0151】
続いて、第1実施例〜第3実施例に係る接眼レンズEL(EL1〜EL3)に、表4に示す反射防止膜を適用した例について説明する。
【0152】
第1実施例の接眼レンズEL1において、表1に示すように、第1レンズ群G1の負メニスカスレンズL1の屈折率はnd=1.84666であり、第2レンズ群G2の両凸形状の正レンズL2の屈折率はnd=1.77387であるため、負メニスカスレンズL1における像面側のレンズ面に基板の屈折率が1.85に対応する反射防止膜101(表4参照)を用い、両凸形状の正レンズL2における物体側のレンズ面に基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜(表4参照)を用いることで、各レンズ面からの反射光を少なくすることができ、ゴーストやフレアを低減することができる。
【0153】
第2実施例の接眼レンズEL2において、表2に示すように、第2レンズ群G2の両凸形状の正レンズL2の屈折率はnd=1.75550であり、第3レンズ群G3の負メニスカスレンズL3の屈折率はnd=1.90366であるため、両凸形状の正レンズL2における像面側のレンズ面に基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜101(表4参照)を用い、負メニスカスレンズL3における物体側のレンズ面に基板の屈折率が1.85に対応する反射防止膜(表4参照)を用いることで、各レンズ面からの反射光を少なくすることができ、ゴーストやフレアを低減することができる。
【0154】
第3実施例の接眼レンズEL3において、表3に示すように、第2レンズ群G2の両凸形状の正レンズL2の屈折率はnd=1.77250であるため、両凸形状の正レンズL2における物体側のレンズ面に基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜101(表4参照)を用い、両凸形状の正レンズL2における像面側のレンズ面に基板の屈折率が1.85に対応する反射防止膜(表4参照)を用いることで、各レンズ面からの反射光を少なくすることができ、ゴーストやフレアを低減することができる。
【0155】
なお、本発明を分かりやすくするために、実施形態の構成要件を付して説明したが、本発明がこれに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0156】
例えば、本実施形態に係る接眼レンズELは、図9に示すような一眼レフカメラのファインダー光学系VFに用いられる接眼レンズに限らず、広く実像光学系のファインダー光学系の接眼レンズとして利用することも可能である。
【0157】
本実施形態に係る接眼レンズELにおいては、第2レンズ群G2を光軸に沿って移動させることにより視度調節を行うことができるように構成されているが、これに限られものではない。例えば、第1レンズ群G1を移動させたり、第1レンズ群G1及び第2レンズ群G2を2つとも移動させたりするなど、第1レンズ群G1、第2レンズ群G2及び第3レンズ群G3のうち少なくとも1つを光軸に沿って移動させることにより、視度調節を行うことができるように構成されていればよい。
【0158】
本実施形態に係る接眼レンズELにおいては、各レンズ面に、フレアやゴーストを軽減し高コントラストの高い光学性能を達成するために、広い波長域で高い透過率を有する反射防止膜を施してもよい。なお、本実施形態のウェットプロセスで形成した層を少なくとも1層含む反射防止膜を、各レンズ面に施しても構わないことは言うまでもない。
【0159】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態に係る接眼光学系について説明する。第2実施形態に係る接眼光学系は、液晶等の表示部材に表示された像を観察者の眼に結像させるために配置されているものである。また、本実施形態に係る接眼レンズは、該接眼レンズを構成する光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、この反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含んでいる。このように構成することで、本実施形態に係る接眼レンズELは、物体側からもしくはアイポイント側からの光が光学面で反射されて生じるゴーストやフレアをさらに低減することができ、高い結像性能を達成することができる。
【0160】
第2実施形態に係る接眼光学系は、接眼レンズと、該接眼レンズの眼側に保護窓として配置されたメニスカス形状の光学部材(以後、第2実施形態において「保護窓」という)と、を備え、前記接眼レンズの視度が0[m-1]の時の前記接眼レンズの焦点距離をfe、前記メニスカス形状の面の曲率半径をRmとしたとき、次の条件式(5)を満足することを特徴とする。
【0161】
2.00<Rm/fe<22.00 …(5)
【0162】
第2実施形態に係る接眼光学系は、接眼レンズの眼側に、最終光学部材としてメニスカス形状の保護窓を備えることにより、視野内の輝点像(表示部材の像)から保護窓の表面に入射して反射する光線に発散作用を与え、輝点像の再結像位置を表示部材から遠ざけることができる。そして、再結像したゴースト像と正規の実像を同時に注視できないようにして、ゴースト像の視認性を減少させている。
【0163】
上記条件式(5)は、保護窓の最適な形状を規定するものである。条件式(5)を満足することにより、効果的に高輝度の像に基づくゴーストを回避することができる。
【0164】
条件式(5)の下限値を下回ると視野内で生じるゴーストの回避は容易になるが、保護窓の屈折力が強くなるため接眼光学系全系の収差性能に悪影響を及ぼし高い結像性能が得られなくなる。なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(5)の下限値を4.85とすることがより好ましく、これにより、収差が少ないより良い光学性能が得られる。さらに下限値を5.50とするとより良い光学性能が得られる。
【0165】
また、条件式(5)の上限値を上回ると接眼光学系の収差性能に与える影響は小さくなるが、ゴースト光の再結像位置が表示部材に近づき、ゴースト光が発生しやすくなる。この場合、視度調整のために接眼光学系を光軸に沿って移動させると容易にゴースト光が観察される可能性がある。なお、本願の効果をより確実にするために、条件式の上限値を15.00とすることがより好ましく、これにより、ゴーストの影響をより少なくできる。さらに、上限値を10.00とするとゴーストの影響をより少なくできる。
【0166】
なお、第2実施形態においては、条件式(5)を最終光学部材としての保護窓の最適な形状を規定するものとしているが、接眼光学系よりも眼側に配置された光学部材であれば最終光学部材でなくても、条件式(5)を満たすことにより、効果的にゴースト光を軽減し高い結像性能を得ることができる。
【0167】
視度の単位[m-1]について、例えば、視度X[m-1]とは、接眼レンズによる像がアイポイントから光軸上に1/X[m(メートル)]の位置にできる状態のことを示す(符号は像が接眼レンズより観察者側にできた時を正とする)。
【0168】
視度調整を考慮すると、ゴースト光の再結像位置を表示部材位置から、光軸方向に最低でも3×(fe2/1000)離れて結像するように曲率半径を設定することが望ましい。この条件式は表示部材位置で1[m-1]視度を変化させるのに必要な表示部材の移動量の3倍を示すものである。すなわち、これは観察状態において表示部材に視度を合わせている場合にゴースト像の結像位置を実質3[m-1]程度視度が異なる状態にすることである。このような状態にすることにより、通常観察時にゴースト像を目立たなくすることができる。なお、結像位置を上記条件より大きく離した方が有利なのは言うまでもない。
【0169】
第2実施形態に係る接眼光学系では、メニスカス形状の光学部材は、眼側に凹面を向けて配置することが望ましい。このように眼側に凹面を向けることにより眼側からの外光が保護窓の眼側の面で反射して観察者の瞳に入りにくくなる。特に観察時の外光は、観察者の頭部との関係で接眼光軸に対して大きな角度で入射するため、眼側の光学面を凹面状にすることにより、凸面に比べて光学面が奥になり外光が入射しにくくなる。そして、入射したとしても凸面と比べて入射角が大きくなるため、外光が視野外に反射され易くなり観察者の眼に入りにくくなる。
【0170】
また、第2実施形態に係る接眼光学系は、観察する実像の最大像高をYとしたとき、次の条件式(6)及び(7)を満足する。
【0171】
fe<40.00 …(6)
Y<fe/3.00 …(7)
【0172】
条件式(6)は接眼レンズの焦点距離を規定するものであり、条件式(7)は実像の最大像高の上限を規定するものである。
【0173】
条件式(6)及び(7)を満たすことで、より効果的にゴーストを回避することができる。条件式(7)の上限を超えた場合、観察する実像面が大きくなるため、保護窓の曲率が接眼収差性能に影響する。特に視野の周辺性能に影響する。なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(7)の上限をfe/3.5とすることがより好ましく、これにより効果的にゴーストを回避できる。さらに、上限をfe/4.0とすると、さらに効果的にゴーストを回避できる。
【0174】
第2実施形態において、保護窓は樹脂から成ることが望ましい。これにより、保護窓が軽量となり、成形し易くなり、耐衝撃性を高めることができる。樹脂としては、例えば、アクリルやポリカーボネートを用いることができる。
【0175】
以下、第2実施形態に係る接眼光学系の各実施例について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0176】
(第4実施例)
図17は、第2実施形態の第4実施例に係る接眼光学系の構成を示す断面図である。第2実施形態の第4実施例に係る接眼光学系は、物体側から順に、接眼レンズ11と、保護窓12とからなる。
【0177】
接眼レンズ11は、両凸形状の正レンズL13と、両凹形状の負レンズL14と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL15と、からなる。
【0178】
第4実施例において、保護窓12は眼側に凹面を向けたメニスカス形状をしている。眼側に凹面を向けることにより眼側からの外光が最終光学部材面で反射して、観察者の瞳に入りにくくなる。特に観察時の外光は観察者の頭部との関係で接眼光軸に対して大きな角度で入射する。そのため、光学面を凹面形状にすることにより、凸面に比べて、光学面が奥になるため外光が入射しにくくなる。そして、入射したとしても凸面と比べて入射角が大きくなるため、外光が視野外に反射される可能性を高めることができる。
【0179】
また、第4実施例において、保護窓12は、物体側と眼側の両面とも曲率半径を50mmとしている。このように両面とも同じ曲率半径にした場合であっても、保護窓12は、極めて小さいが、屈折力を有する。しかし、第4実施例のように、曲率半径を大きくすることと、曲面を接眼レンズ側に凸面を向けるように構成することで、接眼レンズからアイポイントE.Pへ向かう収束光の曲面への入射角を小さくすることができるので、接眼レンズの収差性能にはほとんど影響しない。
【0180】
図17には、表示部材16からの表示光とゴースト光線の光路を示している。ゴースト光は、保護窓12に曲率を持たせることにより、表示部材16のA点の像の光束が保護窓12の表面(B点)で反射されても、保護窓12の表示部材16側の面が反射光束に対して発散するように作用するため、反射光の結像位置が、表示部材近傍ではなく、表示部材16の表面で反射されて接眼レンズ11及び保護窓12に入射してアイポイント近傍のD点に集光する。したがって、この反射光束は迷光として眼に到達するが、観察者にはゴースト像としては観察できなくなる。
【0181】
下記の表7に、第2実施形態の第4実施例に係る接眼光学系の諸元の値を掲げる。接眼レンズの焦点距離fe=24.59mmである。観察物体の最大物体高は第4実施例及び以降の実施例においても6.0mmを想定している。表7における面番号1〜10は、図17に示す曲率半径R1〜R9の各光学面に対応している。
【0182】
(表7)
[レンズデータ]
面番号 R d n(d) νd
1 ∞ 18.5
*2 18.46305 4.5 1.49108 57.57
3 -14.09265 1.0
*4 -10.86467 1.5 1.58518 30.24
5 203.88888 1.5
6 -95.39091 3.0 1.49108 57.57
*7 -11.57101 1.5
8 50.00000 1.0 1.49108 57.57
9 50.00000 15.0
10 E.P

[非球面データ]
第2面 κ=-1.7818,A6=0.0
第4面 κ= 1.0000,A6=0.65762E-06
第7面 κ= 0.5034,A6=0.0

[条件式]
条件式(5)Rm/fe=2.03
条件式(6)fe=24.59
条件式(7)fe/3=8.19
【0183】
図18は本願の第4実施例に係る接眼光学系の諸収差図である。球面収差図において「Y1」は正立系への光線の入射高さを示し、非点収差図において「Y0」は表示部材高さを示している。コマ収差の「min」は角度単位の分を示す。図中の「C」、「F」、「D」、「G」はそれぞれC線(波長656.3nm)、F線(波長486.1nm)、d線(波長587.6nm)、g線(波長435.8nm)での収差曲線を示している。球面収差図と非点収差図において、横軸「D」の単位は「m-1」である。なお、後述する第5〜第8実施例の収差図においても、第4実施例と同様の符号を用いる。
【0184】
図18に示す各収差図より、第4実施例に係る接眼光学系10は、諸収差を良好に補正し優れた結像性能を有していることがわかる。後述する参考例における収差図、図28と比較することにより、上記条件式(5)の範囲内の曲率半径を有する保護窓12を配置しても、接眼光学系10の収差性能の劣化がないことが分かる。
【0185】
(第5実施例)
図19は、第2実施形態の第5実施例に係る接眼光学系20の構成を示す断面図である。第5実施例は、上記第4実施例と基本的なレンズ構成は共通しているが、保護窓22の曲率半径が、第4実施例においては50mmであったのに対して、第5実施例においては125mmである点において異なっている。
【0186】
図19には、表示部材26からの表示光とゴースト光線の光路を示している。第4実施例よりも保護窓22の曲率半径を大きくしたため、ゴースト光に対する発散作用が弱くなり、ゴースト光の再結像位置(D点)が、第4実施例の図17よりも表示部材に近い位置になることが分かる。しかし、上述した表示部材から3×(fe2/1000)の距離より十分に離れているので、観察者がアイポイントにおいて、再結像したものをゴースト像として観察することは困難である。これより、本発明の条件式(5)の下限値を下回らなければ、ゴーストを効果的に軽減することができるといえる。
【0187】
以下の表8に、第5実施例に係る接眼光学系の諸元の値を掲げる。接眼レンズの焦点距離fe=24.59mmである。表8における面番号1〜10は、図19に示す曲率半径R1〜R10の各光学面に対応している。
【0188】
(表8)
[レンズデータ]
面番号 R d n(d) νd
1 ∞ 18.5
*2 18.46305 4.5 1.49108 57.57
3 -14.09265 1.0
*4 -10.86467 1.5 1.58518 30.24
5 203.88888 1.5
6 -95.39091 3.0 1.49108 57.57
*7 -11.57101 1.5
8 125.00000 1.0 1.49108 57.57
9 125.00000 15.0
10 E.P

[非球面データ]
第2面 κ=-1.7818,A6=0.0
第4面 κ= 1.0000,A6=0.65762E-06
第7面 κ= 0.5034,A6=0.0

[条件式]
条件式(5)Rm/fe=5.08
条件式(6)fe=24.59
条件式(7)fe/3=8.19
【0189】
図20は本願の第5実施例に係る接眼光学系20の諸収差図である。各収差図より、第5実施例に係る接眼光学系20は、諸収差を良好に補正し優れた結像性能を有していることがわかる。また、後述する参考例における収差図、図28と比較することにより、上記条件式の範囲内の曲率半径を有する保護窓22を配置しても、接眼光学系20の収差性能の劣化がないことがわかる。
【0190】
(第6実施例)
図21は、第2実施形態の第6実施例に係る接眼光学系30の構成を示す断面図である。第6実施例に係る接眼光学系30は、物体側から順に、接眼レンズ31と、保護窓32とからなる。
【0191】
接眼レンズ31は、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL33と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズと両凸形状の正レンズとの接合レンズL34と、からなる。
【0192】
第6実施例において、保護窓32は眼側に凹面を向けたメニスカス形状をしており、物体側面の曲率半径が90mm、眼側の曲率半径が95mmであり、物体側と眼側の面において曲率が異なっている。
【0193】
本発明においては眼側に配置された光学部材に接眼レンズの焦点距離の1/100程度の屈折力を与えても接眼レンズの収差に影響しないので、その範囲内で最終光学部材の前後の曲率半径を変化させても問題はない。なお、物体側と眼側の両面を同心円になるように曲率を設定しても、収差性能に影響を与えることなくゴースト回避の効果を得ることは可能である。
【0194】
以下の表9に、第6実施例に係る接眼光学系の諸元の値を掲げる。接眼レンズの焦点距離fe=23.16mmである。表9における面番号1〜9は、図21に示す曲率半径R1〜R9の各光学面に対応している。
【0195】
(表9)
[レンズデータ]
面番号 R d n(d) νd
1 ∞ 20.2
2 -175.00000 2.2 1.51680 64.14
3 -29.50000 0.3
4 38.00000 1.2 1.84666 23.78
5 14.00000 4.5 1.80400 46.58
6 -78.00000 1.8
7 90.00000 1.0 1.49108 57.57
8 95.00000 15.2
9 E.P

[条件式]
条件式(5)Rm(物体側の面)/fe=3.88
条件式(5)Rm(眼側の面)/fe=4.09
条件式(6)fe=23.16
条件式(7)fe/3=7.72
【0196】
図22は第2実施形態の第6実施例に係る接眼光学系30の諸収差図である。各収差図より、第6実施例に係る接眼光学系30は、諸収差を良好に補正し優れた結像性能を有していることがわかる。また、第4実施例に係る図18、第5実施例に係る図20と比較することにより、条件式(5)の範囲内において保護窓32の物体側の面と眼側の面の曲率半径を異ならせても接眼光学系30の収差性能の劣化がないことが分かる。
【0197】
(第7実施例)
図23は、第2実施形態の第7実施例に係る接眼光学系の構成を示す断面図である。第7実施例は、上記第6実施例と基本的な構成は共通しているが、保護窓42の曲率半径が、第6実施例においては物体側の面が90mm、眼側の面が95mmであったのに対し、第7実施例においては物体側の面が200mm、眼側の面が240mmである点において異なっている。
【0198】
以下の表10に、第7実施例に係る接眼光学系の諸元の値を掲げる。接眼レンズの焦点距離fe=23.16mmである。表10における面番号1〜9は、図23に示す曲率半径R1〜R9の各光学面に対応している。
【0199】
(表10)
[レンズデータ]
面番号 R d n(d) νd
1 ∞ 20.2
2 -175.00000 2.2 1.51680 64.14
3 -29.50000 0.3
4 38.00000 1.2 1.84666 23.78
5 14.00000 4.5 1.80400 46.58
6 -78.00000 1.8
7 200.00000 1.0 1.49108 57.57
8 240.00000 15.2
9 E.P

[条件式]
条件式(5)Rm(物体側の面)/fe=8.62
条件式(5)Rm(眼側の面)/fe=10.35
条件式(6)fe=23.16
条件式(7)fe/3=7.72
【0200】
図24は第2実施形態の第7実施例に係る接眼光学系40の諸収差図である。各収差図より、第7実施例に係る接眼光学系40は、諸収差を良好に補正し優れた結像性能を有していることがわかる。また、第6実施例に係る図22と比較することにより、条件式(5)の範囲内において保護窓42の物体側の面と眼側の面の曲率の差を大きくしても、接眼光学系40の収差性能の劣化がないことが分かる。
【0201】
(第8実施例)
図25は、第2実施形態の第8実施例に係る接眼光学系の構成を示す断面図である。第8実施例は、上記第6実施例、第7実施例と基本的なレンズ構成は共通しているが、保護窓52が物体側に凹面を向けている点と、物体側と眼側の面の曲率半径がいずれも150mmである点において異なっている。
【0202】
以下の表11に、第8実施例に係る接眼光学系の諸元の値を掲げる。接眼レンズの焦点距離fe=23.16mmである。表11における面番号1〜9は、図25に示す曲率半径R1〜R9の各光学面に対応している。
【0203】
(表11)
[レンズデータ]
面番号 R d n(d) νd
1 ∞ 20.2
2 -175.00000 2.2 1.51680 64.14
3 -29.50000 0.3
4 38.00000 1.2 1.84666 23.78
5 14.00000 4.5 1.80400 46.58
6 -78.00000 1.8
7 -150.00000 1.0 1.49108 57.57
8 -150.00000 15.2
9 E.P

[条件式]
条件式(5)Rm/fe=6.47
条件式(6)fe=23.16
条件式(7)fe/3=7.72
【0204】
図26は本願の第8実施例に係る接眼光学系50の諸収差図である。各収差図より、第8実施例に係る接眼光学系50は、諸収差を良好に補正し優れた結像性能を有していることがわかる。また、第6実施例に係る図22、第7実施例に係る図24と比較することにより、上記条件式の範囲内において保護窓52の凹面を物体側に向けたとしても接眼光学系50の収差性能の劣化がないことがわかる。
【0205】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態に係る接眼光学系について説明する。第3実施形態に係る接眼光学系は、液晶等の表示部材に表示された像を観察者の眼に結像させるために配置されているものである。また、本実施形態に係る接眼レンズは、該接眼レンズを構成する光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、この反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含んでいる。このように構成することで、本実施形態に係る接眼レンズは、物体側からもしくはアイポイント側からの光が光学面で反射されて生じるゴーストやフレアをさらに低減することができ、高い結像性能を達成することができる。
【0206】
第3実施形態に係る接眼光学系は、接眼レンズと、該接眼レンズの眼側に保護窓として配置された光学部材(以後、「保護窓」という)と、を備え、該光学部材は、周辺部がメニスカス形状を有し、前記接眼レンズの視度が0[m-1]の時の前記接眼レンズの焦点距離をfe、前記メニスカス形状の面の曲率半径をRmとしたとき、次の条件式(5)を満足していることを特徴とする。
【0207】
2.00<Rm/fe<22.00 …(5)
【0208】
第3実施形態に係る接眼光学系は、接眼レンズの眼側に、光軸からの距離が接眼レンズの周辺部がメニスカス形状の保護窓を備えることにより、視野内の輝点像(表示部材の像)から保護窓の周辺部に入射して反射する光線に発散作用を与え、輝点像の再結像位置を表示部材から遠ざけることができる。そして、再結像したゴースト像と正規の実像を同時に注視できないようにして、ゴースト像の視認性を減少させている。
【0209】
上記条件式(5)は、保護窓の周辺部の最適な形状を規定するものである。条件式(5)を満足することにより、効果的にゴーストを回避することができる。
【0210】
条件式(5)の下限値を下回ると視野内で生じるゴーストの回避は容易になるが、保護窓の周辺部の屈折力が強くなるため接眼光学系全系の収差性能に悪影響を及ぼし高い結像性能が得られなくなる。また、条件式(5)の上限値を上回ると接眼光学系の収差性能に与える影響はより小さくなるが、ゴースト光の再結像位置が表示部材に近づき、ゴースト光が発生しやすくなる。この場合、視度調整のために接眼光学系を光軸に沿って移動させると容易にゴースト光が観察される可能性がある。
【0211】
第3実施形態は、保護窓の周辺部を規定している点において第2実施形態と異なっているが、ゴースト光は眼側に配置された光学部材の周辺部において反射し易いため、このような構成とすることで、効果的にゴーストを回避することができる。
【0212】
第3実施形態において周辺部とは、光軸からの距離が接眼レンズの有効径の4分の1よりも外側の部分を意味している。特にこの部分がゴーストの発生に影響を及ぼし易いためである。
【0213】
一方、光軸からの距離が接眼レンズの有効系の4分の1よりも内側の中心部は光軸と垂直な平板状をしている。この部分がゴースト光を反射することは少ないため、このような形状とすることで、全面を曲面とした場合と比較して収差を抑えることができる。
【0214】
第3実施形態に係る接眼光学系では、メニスカス形状の光学部材は、眼側に凹面を向けて配置することが望ましい。このように眼側に凹面を向けることにより眼側からの外光が保護窓の眼側の面で反射して観察者の瞳に入りにくくなる。特に観察時の外光は、観察者の頭部との関係で接眼光軸に対して大きな角度で入射するため、眼側の光学面を凹面状にすることにより、凸面に比べて光学面が奥になり外光が入射しにくくなる。そして、入射したとしても凸面と比べて入射角が大きくなるため、外光が視野外に反射され易くなり観察者の眼に入りにくくなる。
【0215】
また、第3実施形態に係る接眼光学系は、観察する実像の最大像高をYとしたとき、次の条件式(6)及び(7)を満足する。
【0216】
fe<40.00 …(6)
Y<fe/3.00 …(7)
【0217】
条件式(6)は接眼レンズの焦点距離を規定するものであり、条件式(7)は実像の最大像高の上限を規定するものである。
【0218】
条件式(6)及び(7)を満たすことで、より効果的にゴーストを回避することができる。条件式(7)の上限を超えた場合、観察する実像面が大きくなるため、保護窓の曲率が接眼収差性能に影響する。特に視野の周辺性能に影響する。
【0219】
第3実施形態において、保護窓は樹脂から成ることが望ましい。これにより、保護窓が軽量となり、成形し易くなり、耐衝撃性を高めることができる。樹脂としては、例えば、アクリルやポリカーボネートを用いることができる。
【0220】
図27は、本願の実施例と比較するための参考例としての接眼光学系70の構成を示す断面図であり、電子ビューファインダー(EVF)などの表示部材76を3枚の接眼レンズ71で観察し、その眼側に平行平板で構成した保護窓72を配置したものである。
【0221】
接眼レンズ71は、第7実施例ないし第6実施例と同様に、両凸形状の正レンズL73と、両凹形状の負レンズL74と、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL75と、からなる。
【0222】
図27で示すように表示部材76のA点の像は接眼レンズを介してアイポイント(E.P)に導かれ観察することができる。ところが例えばA点の像の輝度が高いと、その光束が保護窓72を通過する際に、保護窓72の表面(B点)で反射する反射光束の強度が増す。その反射光は接眼レンズ71を透過して、表示部材76の表面(C点)でA点の像が再結像する。そして、表示部材76の表面で再び反射されアイポイント(E.P)に導かれる。このとき、C点付近の表示の明るさが暗いと、再結像したA点の表示像がゴーストとして観察されてしまう。
【0223】
以下の表12に、本参考例に係る接眼光学系の諸元の値を掲げる。接眼レンズの焦点距離fe=24.59mmである。表12における面番号1〜10は、図27に示す曲率半径R1〜R10の各光学面に対応している。
(表12)
面番号 R d n(d) νd
1 ∞ 18.5
*2 18.46305 4.5 1.49108 57.57
3 -14.09265 1.0
*4 -10.86467 1.5 1.58518 30.24
5 203.88888 1.5
6 -95.39091 3.0 1.49108 57.57
*7 -11.57101 1.5
8 0.00000 1.0 1.49108 57.57
9 0.00000 15.0
10 E.P

[非球面データ]
第2面 κ=-1.7818,A6=0.0
第4面 κ= 1.0000,A6=0.65762E-06
第7面 κ= 0.5034,A6=0.0
【0224】
図28は本参考例に係る接眼光学系70の諸収差図である。各収差図より、本参考例に係る接眼光学系70は、諸収差を良好に補正し優れた結像性能を有していることがわかる。
【0225】
以下、第2及び第3実施形態に係る接眼光学系を備えたカメラを図29に基づいて説明する。
【0226】
図29は、第2及び第3実施形態に係る接眼光学系を備えたカメラを示す図である。本カメラ60は、接眼光学系61として上記第4実施例に係る接眼光学系を備えたデジタル一眼レフカメラである。
【0227】
本カメラ60において、不図示の物体(被写体)からの光は、撮影レンズ62で集光されて、クイックリターンミラー63を介して焦点板64に結像される。そして焦点板64に結像されたこの光は、ペンタプリズム65中で複数回反射されて接眼光学系61へ導かれる。これにより撮影者は、被写体像を接眼光学系61を介して正立像として観察することができる。
【0228】
また、撮影者によって不図示のレリーズボタンが押されると、クイックリターンミラー63が光路外へ退避し、不図示の被写体からの光は撮像素子66へ到達する。これにより被写体からの光は、当該撮像素子66によって撮像されて、被写体画像として不図示のメモリに記録される。このようにして、撮影者は本カメラ60による被写体の撮影を行うことができる。
【0229】
ここで、本カメラ60に接眼光学系61として搭載した上記第4実施例に係る接眼光学系は、上述のように、接眼レンズの収差性能に影響を与えることなく、ゴーストの発生を回避している。これにより本カメラ60は、良好な光学性能を実現することができる。なお、上記第5ないし第8実施例に係る接眼光学系を接眼光学系61として搭載したカメラを構成しても、上記カメラ60と同様の効果を奏することができる。また、クイックリターンミラー63を有しない構成のカメラに上記各実施例に係る接眼光学系を搭載した場合でも、上記カメラ60と同様の効果を奏することができる。
【0230】
以上のように、本実施形態によれば、視野内の輝点等から射出された光束が接眼レンズよりも眼側の光学部材表面反射することで発生するゴーストを効果的に軽減できる接眼光学系及び該接眼光学系を備えた光学機器を提供することができる。
【符号の説明】
【0231】
G1 第1レンズ群(第1実施形態)
G2 第2レンズ群(第1実施形態)
G3 第3レンズ群(第1実施形態)
EL(EL1〜EL3) 接眼レンズ(第1実施形態)
VF ファインダー光学系(第1実施形態)
CAM デジタル一眼レフカメラ(光学機器/第1実施形態)
101 反射防止膜(第1実施形態)
102 光学部材(第1実施形態)
10、20、30、40、50、70 接眼光学系(第2及び第3実施形態)
11、21、31、41、51、71 接眼レンズ(第2及び第3実施形態)
12、22、32、42、52、72 保護窓(第2及び第3実施形態)
L13、L23、L73 正レンズ(第2及び第3実施形態)
L14、L24、L74 負レンズ(第2及び第3実施形態)
L15、L25、L75 正メニスカスレンズ(第2及び第3実施形態)
16、26、36、46、56、76 表示部材(第2及び第3実施形態)
L33、L43、L53 正メニスカスレンズ(第2及び第3実施形態)
L34、L44、L54 接合レンズ(第2及び第3実施形態)
60 カメラ(光学機器/第2及び第3実施形態)
61 接眼光学系(第2及び第3実施形態)
62 撮影レンズ(第2及び第3実施形態)
63 クイックリターンミラー(第2及び第3実施形態)
64 焦点板(第2及び第3実施形態)
65 ペンタプリズム(第2及び第3実施形態)
66 撮像素子(第2及び第3実施形態)
E.P アイポイント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29