特許第5871127号(P5871127)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871127
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】円筒状ケーシング収納用の治具
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/02 20060101AFI20160216BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20160216BHJP
   B04B 5/02 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   B01D63/02
   B01D63/00 500
   B04B5/02 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-22137(P2012-22137)
(22)【出願日】2012年2月3日
(65)【公開番号】特開2013-158690(P2013-158690A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2015年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】板倉 正則
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正則
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−275876(JP,A)
【文献】 特開平06−246191(JP,A)
【文献】 特開2004−049970(JP,A)
【文献】 特開平06−099086(JP,A)
【文献】 特開平05−138072(JP,A)
【文献】 特開昭61−171526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 63/00−04
B04B 5/02
B01L 9/00−06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数本の中空糸膜からなる中空糸膜束が収められ一端に底板が形成された円筒状ケーシングを収容し、旋回軸を中心にした旋回に伴う遠心力によって前記円筒状ケーシングを前記底板が回転の径方向外方に向くように配向させ、前記円筒状ケーシングの底板付近に接着用樹脂を充填する遠心装置であって、前記円筒状ケーシングを開口部に収容し、前記円筒状ケーシングを上下方向に支持した初期位置から前記遠心力によって前記円筒状ケーシングの底板が回転の径方向外方に配向される遠心位置に移動可能な収納プレートを備えた遠心装置に使用される円筒状ケーシング収納用の治具であって、
少なくとも一端が開口した略円筒形状を有し、
該治具の外周は、前記収納プレートの前記開口部の内径と略等しい外径を有する外側支持部と、該外側支持部の前記一端側に配置され前記外側支持部より大きな外径を有する外側大径部と、前記外側支持部と外側大径部とを接続する外側段部とを備え、
前記治具の内周は、前記一端側に配置された内側大径部と、該内側大径部の他端側に配置された前記内側大径部より小さな内径を有する内側中径部と、前記内側大径部と内側中径部とを接続する内側段部と、を備えている、
ことを特徴とする治具。
【請求項2】
前記内側中径部の他端側に配置され前記内側中径部より小さな内径を有する内側小径部と、前記内側中径部と内側小径部とを接続する第2内側段部と、を内周に備えている、
請求項1に記載の治具。
【請求項3】
合成樹脂によって一体形成されている、
請求項1又は2に記載の治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には、円筒状ケーシング収納用の治具に関し、詳細には、浄水器に使用される中空糸膜モジュールの製造において接着剤を充填する際に使用される遠心装置で使用される治具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各家庭などにおいて、水道水を浄化する浄水器が一般に使用されてきている。このような浄水器では、例えば、円筒状ケーシング10内で、中空糸膜12の円柱体14の一端14aが接着剤16で固定されている中空糸膜モジュール18(図1)を濾過材として使用してすることが多い。
【0003】
このような中空糸膜モジュール18を製造する場合には、まず、中空糸膜12を多数回一定の長さで折返しシート状とした後、その両端端の近傍をポリエステルフィラメント糸などのかがり糸20で編んで長尺状編地22(図2)とする。
次いで、この長尺状編地22を、所定長に切断し、図3に示すような樹脂注入用のセンタチューブ24を中心にして、中空糸膜12の長さ方向に直交する方向に巻き込んで円柱体14(図4)とする。
【0004】
そして、この円柱体14を、一端が底板10aで閉鎖された円筒状ケーシング10の底部に収容する。さらに、下部に排出管26が一体形成された樹脂ポット(液状樹脂溜め容器)28の排出管26を、円柱状の中空糸膜(円柱体)22の中心に巻き込まれているセンタチューブ24に差し込み、さらに、樹脂ポット28内に固定用の液状樹脂Rを入れ(図5)、中空糸膜モジュールの中間体Mとする。この中間体Mを遠心装置に取付け、樹脂ポッティング28内に樹脂を、センタチューブ24を通して円筒状ケーシング10の底部に充填し、円筒状ケーシング10の底部に接着剤(樹脂)層16を形成する。
【0005】
尚、この円筒状ケーシング10は、底部に隣接する部分が小径部10bとされ、この小径部10bは、段部10cによって上側部分と接続されている。
【0006】
この接着剤(樹脂)層16によって、円柱体14が円筒状ケーシング10の内周面に対して固定されると共に、円柱体14内の各中空糸膜12が相互に接着され一体化している。
【0007】
上述のような樹脂充填で使用される遠心装置として、例えば、図6および図7に示すような、鉛直方向に配された旋回軸30と、中間体Mを保持しながら旋回軸30を中心として旋回する部分とを備えた装置がある(特許文献1)。
【0008】
この遠心装置は、遠心機の筐体内に収容され遠心機の主要部をなす装置であり、中心が旋回軸30に固定され旋回軸30から水平方向に放射線状に延びる6本のアーム32を備えた回転部材34と、隣り合う2本のアーム32の先端に跨るように吊設され、アーム32との接続部を中心に径方向外方に揺動可能に設けられた6つのバケット36とを備えている。
【0009】
各バケット36は、水平に配され、中間体Mの円筒状ケーシング10を収容可能な4つの開口部38が形成された保持板40と、保持板40を吊設する一対の吊設部材42とを備え、各開口部38に中間体Mの円筒状ケーシング10の底部を嵌合させることにより、円筒状ケーシング10を、その長さ方向が鉛直方向となるように固定、保持できるようになっている。
【0010】
この保持板40の開口部38に、図5に示されているように内部に中空糸膜の円柱体14と樹脂Rを収容した樹脂ポット28が配置されたケーシング10を嵌合させて、回転部材34を、旋回軸30を中心に回転させる。
【0011】
この回転によって、回転部材34の6本のアーム32の先端に吊設されたバケット36は、旋回に伴う遠心力に応じて、アーム32との接続部を中心に径方向外方に揺動する。この結果、バケット36の保持板40の開口に嵌合された中間体Mの円筒状ケーシング10は、外方に傾斜する(図8)。
【0012】
そして、このような傾斜によって、樹脂ポット28内の樹脂液Rが、遠心力により、樹脂ポット28の排出管26からセンタチューブ24を通して円筒状ケーシング10の底部に充填され、円筒状ケーシング10の底部に接着剤(樹脂)層16が形成されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第4095800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ここで、浄水器の中空糸膜モジュール(中間体)に使用される円筒状ケーシングの外径寸法は、取付けられる浄水器のサイズ等によって異なる。したがって、中空糸膜モジュールの製造工程の一部である充填工程も、異なった外径を有する円筒状ケーシングに対応する必要がある。
【0015】
しかしながら、特許文献1等の遠心装置では、各バケット36の保持板40の開口部38に円筒状ケーシング10を嵌合させることにより、円筒状ケーシング10を、その長さ方向が鉛直方向となるように固定、保持して充填工程を行う構成であるため、異なった外径の円筒状ケーシングに対して、接着剤の充填作業を行うことが出来ない。
【0016】
また、異なった径の開口部が形成された複数枚の保持板を用意し、対象となる円筒状ケーシングの外径に応じて、保持板を付け替える手法も考えられるが、保持板は金属部品であるため高価であり、さらに対象となる円筒状ケーシングの外径に応じて、保持板を付け替える作業が生産効率を低下させるという問題があった。
【0017】
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、異なった外径の円筒状ケーシングを有する中空糸膜モジュールの製造を、安価かつ簡便にすることが出来る円筒状ケーシング収納用の治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、
多数本の中空糸膜からなる中空糸膜束が収められ一端に底板が形成された円筒状ケーシングを収容し、旋回軸を中心した旋回に伴う遠心力によって前記円筒状ケーシングを前記底板が回転の径方向外方に向くように配向させ、前記円筒状ケーシングの底板付近に接着用樹脂を充填する遠心装置であって、前記円筒状ケーシングを開口部に収容し、前記円筒状ケーシングを上下方向に支持した初期位置から前記遠心力によって前記円筒状ケーシングの底板が回転の径方向外方に配向される遠心位置に移動可能な収納プレートを備えた遠心装置に使用される円筒状ケーシング収納用の治具であって、
少なくとも一端が開口した略円筒形状を有し、
該治具の外周は、前記収納プレートの前記開口部の内径と略等しい外径を有する外側支持部と、該外側支持部の前記一端側に配置され前記外側支持部より大きな外径を有する外側大径部と、前記外側支持部と外側大径部とを接続する外側段部とを備え、
前記治具の内周は、前記一端側に配置された内側大径部と、該内側大径部の他端側に配置された前記内側大径部より小さな内径を有する内側中径部と、前記内側大径部と内側中径部とを接続する内側段部と、を備えている、
ことを特徴とする治具が提供される。
【0019】
このような構成によれば、治具内部に内径が異なる部分が設けられているので、これら内径のいずれかに対応する外径を有するケーシングを備えた中空糸膜モジュールであれば、この治具を介して遠心装置に取付けて、接着剤の充填作業を行うことができる。
【0020】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記内側中径部の他端側に配置され前記内側中径部より小さな内径を有する内側小径部と、前記内側中径部と内側小径部とを接続する第2内側段部と、を内周に備えている。
【0021】
本発明の他の好ましい態様によれば、
合成樹脂によって一体形成されている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、異なった外径の円筒状ケーシングを有する中空糸膜モジュールの製造を、安価かつ簡便にすることが出来る円筒状ケーシング収納用の治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の好ましい態様の治具を用いて製造される中空糸膜モジュールの断面図である。
図2図1の中空糸膜モジュールに使用される中空糸膜の長尺状編地の平面図である。
図3図1の中空糸膜モジュールの製造時に使用されるセンタチューブの斜視図である。
図4図1の中空糸膜モジュールで使用される中空糸膜の円柱体の斜視図である。
図5図1の中空糸膜モジュールの製造工程を説明するための、中空糸膜モジュールの中間体の断面図である。
図6】本発明の好ましい態様の治具が使用される遠心装置の斜視図である。
図7】本発明の好ましい態様の治具が使用される遠心装置の平面図である。
図8】本発明の好ましい態様の治具が使用される遠心装置の動作を説明する側面図である。
図9】本発明の好ましい態様の治具の斜視図である。
図10】本発明の好ましい態様の治具の縦断面図である。
図11】本発明の好ましい態様の治具を支持板に取付けた状態の斜視図である。
図12】本発明の好ましい態様の治具に中空糸膜モジュールの中間体を取付けた状態の縦断面図である。
図13】本発明の好ましい態様の治具に中空糸膜モジュールの他の中間体を取付けた状態の縦断面図である。
図14】本発明の好ましい態様の治具に中空糸膜モジュールのもう一つの中間体を取付けた状態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態の治具50について説明する。この治具は、例えば、特許文献1に記載されている遠心装置で使用可能であるが、他の形式の遠心装置に使用することも可能である。
【0025】
図9および図10に示されているように、治具50は、一端が開口端52とされた略円筒形状を有し、合成樹脂で一体成形されたカップ状部材である。
【0026】
治具50の外周には、治具50の長手方向(軸線方向)中央に設けられ、遠心装置の保持板40の開口部38の内径と略等しい外径を有する円筒状の外側支持部54が設けられている。さらに、治具50の外周には、外側支持部54の開口端52側に配置され、外側支持部54より大きな外径を有する円筒状の外側大径部56が設けられている。
【0027】
外側支持部54と外側大径部56との間には、外側段部58が形成されている。外側段部58は、治具50の径方向に延びる環状部分を有し、外側支持部54の上端と外側大径部56の下端とを連結している。
【0028】
さらに、治具50の外周には、外側支持部54の他端側に配置され、外側支持部54より小さな外径を有する円筒状の外側小径部60が設けられている。
【0029】
外側支持部54と外側小径部60との間には、第2外側段部62が形成されている。第2外側段部62は、外側段部58と同様に治具50の径方向に延びる下方を向いた環状部分を有し、外側支持部54の下端と外側小径部60の上端とを連結している。
【0030】
このような構成によって、治具50を、遠心装置の保持板40の開口部38に収容すると、外側段部58と同様に治具50の径方向に延びる環状部分が、収納プレート40の上面と当接して、治具50が開口部38に嵌合する(図11)。
【0031】
一方、治具50の内周には、一端(開口端)側に配置され円筒状の内周壁を有する内側大径部64と、内側大径部64の他端側に配置され内側大径部64より小さな内径の円筒状の内周壁を有する内側中径部66とが設けられている。内側大径部64と内側中径部66との間には、内側段部68が形成されている。
【0032】
内側段部68は、治具50の径方向に延びる環状部分を有し、内側部大径部64の下端と内側中径部66の上端とを連結している。
【0033】
さらに、内側中径部66の他端側には、内側中径部66より小さな内径の円筒状の内周壁を有する内側小径部70が設けられている。内側中径部64と内側小径部70との間には第2内側段部72が設けられている。
【0034】
第2内側段部72は、内側段部68と同様に治具50の径方向に延びる上方を向いた環状部分を有し、内側中径部66の下端と内側小径部70の上端とを連結している。
【0035】
本実施形態では、内側小径部70の内径は、円筒状ケーシング10の底部10aに隣接した小径部10bの外径に略等しく設定され、内側中径部66の内径は、円筒状ケーシング10の本体部の外径と略等しい寸法に設定されている。
【0036】
このような構成によって、図5に示されている中空糸膜モジュールの中間体Mを、底部が下になるようにして、治具50の開口端52から治具50内に差し込むと、中間体Mを構成する円筒状ケーシング10の小径部10bが、治具50の内側小径部70の内周面に当接し、さらに、円筒状ケーシング10の小径部10bと本体部の間の段部10cが治具50の第2内側段部72と係合することによって、中間体Mが治具50内に保持される(図12)。
【0037】
また、全体が、治具50の内側小径部70より小さい外径を有するケーシングを有する中間体M’は、内側小径部70内に保持することができる(図13)。
【0038】
さらに、治具50の内側大径部64より大きい外径を有するケーシングを有する中間体M”は、内側大径部64内に保持することができる(図14)。
【0039】
このように本実施形態の治具を用いれば、異なる外径の円筒状ケーシングを有する中間体M等を遠心装置にセットすることができる。
【0040】
中間体M等を遠心装置にセットした後は、遠心装置を作動させ、図8に示されるように中間体M等に遠心力を作用させ、樹脂ポット28から樹脂Rを円筒状ケーシング10の底部に充填することになる。
【0041】
なお、遠心装置は、図6ないし図8に示されている遠心装置は、内部の温度等を制御することができる筐体80に収容されて遠心機をされるのが一般的である。
【0042】
遠心機82は、筐体80の内部に配置されたヒータとファンとを備え、筐体内が均一な所望温度となるように制御される。
【0043】
上記中空糸膜モジュール18、中間体M、M’、M”等で使用する中空糸膜としては、種々のものが使用でき、例えばセルロース系、ポリオレフィン系、ポリビニルアルコール系、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)系、ポリスルフォン系など、各種材科からなる中空糸膜が使用できる。とくに、ポリエチレン等の強伸度の高い材質からなる中空糸膜が好ましい。
【0044】
なお、中空糸膜の孔径、空孔率、膜厚、外径等は、中空糸膜を濾過膜として使用可能な寸法であれば、特に限定されるものではないが、例えば、外径20〜2000μm、孔径は0.01〜1μm、空径率20〜90%、膜厚5〜300μm程度が好ましい。
【0045】
また、ケーシング10の材質は、機械的強度および耐久性を有するものであればよく、例えばポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリオレフィン、PVC(ポリ塩化ビニル)、アクリル樹脂、ABS樹脂、変成PPE(ポリフェニレンエーテル)等が用いられる。
【0046】
固定用樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン系充填材、各種ホットメルト樹脂等を用いることができ、適宜選定することが可能である。また、固化前の固定用樹脂の粘度も、特に限定はされないが、500〜5000mPa・sが好ましく、より好ましくは2000〜3000mPa・sの範囲である。
【0047】
固定用樹脂の粘度が500mPa・s未満では、固定用樹脂が中空糸膜の開口端部まで流動し、該開口端部を閉塞する原因となるおそれがある。固定用樹脂の粘度が5000mPa・sを超えると、中空糸膜間に含浸することが困難となるので好ましくない。
【0048】
遠心装置の作動によって、バケット36が径方向外方に揺動し、バケットに収容された中間体Mは、ケーシング10の底面側が外側に開口端側が内側に向くように配向され、遠心力を受ける。この遠心力により、液状樹脂溜め容器28内の液状樹脂が、矢印Cで示すように、センタチューブ24を通して、ケーシング10の底部に達する。
【0049】
この遠心工程中は、筐体内でヒータおよびファンを作動させ、筐体内が均一な所望温度となるように制御される。
【0050】
所定時間経過後、遠心装置等を停止させ、ケーシング10を遠心装置から取り出し、ケーシング10の底部に達した液状樹脂を硬化させて、ケーシング10に底部に、ケーシング10の内部空間を軸線方向に密閉する樹脂(接着剤)層16を形成する。
【0051】
この樹脂層16によって、円柱体14がケーシング10の内周面に固定され、さらに円柱体14内で中空糸膜12同士が接合される。
【0052】
最後に、ケーシング10の底板10a近傍で、ケーシング10と樹脂層16によって一体化された円柱体11を、ケーシング10の径方向に切断し、円柱体14を構成する中空糸膜12の開口端を外部に露出させ、中空糸膜モジュール18(図1)の製造を終了する。
【0053】
本実施形態の治具では、中空糸膜モジュールの円筒状ケーシングの外径によって、治具50に対する円筒状ケーシングの高さ位置が異なる。
【0054】
したがって、同一の治具を使用した場合、遠心工程における遠心装置の回転軸と円筒状ケーシングの間の距離は、治具50に対する円筒状ケーシングの高さ位置の差によって異なり、円筒状ケーシングの外径によって、中空糸膜モジュールに作用する遠心力の大きさも異なることになる。すなわち、同一の治具を使用した場合には、外径が小さな円筒状ケーシングに大きな遠心力がかけることができる。
【0055】
一方、外側段部、内側段部、第2内側段部等の高さ位置を変更することによって、中空糸膜モジュールに作用する遠心力の大きさを変更することもできる。
【0056】
本発明の前記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
【符号の説明】
【0057】
38:開口部
40:保持板
50:治具
52:開口端
54:外側支持部
56:外側大径部
58:外側段部
60:外側小径部
62:第2外側段部
64:内側大径部
66:内側中径部
68:内側段部
70:内側小径部
72:第2内側段部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14