【文献】
ZAMKOTSIAN,F. 他,“DMD-based MOS demonstrator on Galileo telescope”,Proceedings of SPIE,2010年 7月20日,Volume 7735,Article 77356E, 12 Pages
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施形態]
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。まず、
図1〜
図3を用いて第1の実施形態に係る分光器を有する顕微分光システムの構成について説明する。
図1に示すように、この顕微分光システム1は、光源系10、共焦点ユニット20及び顕微鏡30を有する共焦点顕微鏡と、分光器40と、制御部50と、を有する。この顕微分光システム1において、共焦点ユニット20と分光器40とは、ファイバカプラ29a,29bを介して光ファイバ28により光学的に接続されている。
【0019】
光源系10は、レーザ装置11と、光ファイバ13と、ファイバカプラ12,14と、を有する。レーザ装置11は、例えば、レーザーダイオードを備え、目的の波長特性を有する照明光を射出する。この照明光は、光ファイバ13を介して共焦点ユニット20に導かれる。なお、
図1の例では、照明光として、標本33を励起して蛍光を発光させるための励起光を射出する。
【0020】
共焦点ユニット20は、光源系10からの照明光を略平行光束とするコリメートレンズ21と、ダイクロイックミラー22と、走査ユニット23と、スキャナレンズ24と、集光レンズ25と、ピンホール26aを有するピンホール板26と、リレーレンズ27と、を有する。また、顕微鏡30は、第2対物レンズ31及び対物レンズ32と、標本33が載置されるステージ34と、を有する。これらの共焦点ユニット20と顕微鏡30とを組み合わせて走査型共焦点顕微鏡が構成される。なお、ダイクロイックミラー22は、光源系10から射出されたレーザ光を顕微鏡30側に反射し、このレーザ光により励起した標本33から放射される蛍光を透過するように構成されている。また、集光レンズ25の像側焦点は、ピンホール板26のピンホール26aと略一致するように配置されている。
【0021】
光源である光源系10のレーザ装置11から射出されたレーザ光(励起光)はファイバカプラ12を介して光ファイバ13に導入される。さらにこの光ファイバ13を通ったレーザ光はファイバカプラ14から共焦点ユニット20のコリメートレンズ21に入射する。そして、このレーザ光はコリメートレンズ21で略平行光に変換された後、ダイクロイックミラー22で顕微鏡30側の光路に反射され、直交配置された2つのガルバノミラーからなる走査ユニット23及びスキャナレンズ24に導入されて、二次元的に走査される。走査されたレーザ光は、第2対物レンズ31で略平行光にされた後、対物レンズ32で集光され、標本33上の1点に集光される。なお、走査ユニット23により二次元的に走査される標本33上の位置は、制御部50により走査ユニット23におけるガルバノミラーの動作を制御することにより制御される。そして、このレーザ光により励起された標本33から放射された蛍光(信号光)は、対物レンズ32で略平行光に変換され、レーザ光(励起光)と逆の経路を辿ってダイクロイックミラー22に入射する。さらに、ダイクロイックミラー22に入射した蛍光はこのダイクロイックミラー22を透過し、集光レンズ25によりピンホール板26のピンホール26a上に集光される。
【0022】
ピンホール26aを通過した光は、リレーレンズ27を経て、ファイバカプラ29aから光ファイバ28に導かれる。リレーレンズ27を介すると、
図1に示すように、ピンホール26aを通過した光が、そのままであると発散光束となるところを、再び、集光され、光ファイバ28の開口端において、見かけ上、小さな開口径でも、有効に(ロスが少なく)入射できるようになる。
【0023】
ここで、ピンホール26aに形成される集光点は標本33上での光スポットの像となっているため、標本33上の他の点から発した光がたとえあったとしても、ピンホール26aでは像を結ばずピンホール板26により遮られ、ファイバカプラ29aにほとんど到達できない。そのため、このピンホール26aを通過できた光のみが、リレーレンズ27を介してファイバカプラ29aに到達できる。この結果、走査型共焦点顕微鏡では高い横分解能だけでなく、高い縦分解能を持って標本を観察できる顕微鏡となっている。
【0024】
ファイバカプラ29aに入射した蛍光は、光ファイバ28を通り、ファイバカプラ29bを介して分光器40に導入される。
【0025】
図2に示すように、分光器40は、光ファイバ28から入射する信号光(
図1の例では蛍光)を略平行光束とするコリメート光学系41と、分光特性を有する波長分散素子(以下「分光素子」と呼ぶ)である回折格子42と、2次元に微小反射鏡(微小鏡)が配列されて空間光変調面を形成する空間光変調素子44と、回折格子42で波長分散を受けた信号光(分光光)を空間光変調素子44の空間光変調素子面上に2次元に集光する集光光学系43と、複数の受光素子46aがアレー状に並べられた受光素子アレーを有して受光面を形成する受光器46と、空間光変調素子44で反射された信号光(分光光)を受光器46の受光面に結像させる投影光学系45と、を有する。以下、この分光器40の光軸方向(光ファイバ28から出射した信号光が進む中心方向)をZ軸とし、この光軸に直交する面内において水平方向をX軸とし、垂直方向をY軸として説明する。
【0026】
この分光器40では、光ファイバ28により導入された信号光を、コリメート光学系41により略平行光とし、回折格子42に照射する。この回折格子42は、X軸方向に延びる回折格子溝が微小間隔でY軸方向に複数並んで刻まれている。そのため、この回折格子42に入射した信号光は、Y軸方向に回折される。このとき回折角はその波長によって決まるため、この信号光はY軸方向に波長に応じて分散され、分光される。すなわち、光軸に直交する面内において、回折格子42による分光方向がY軸方向に相当し、この分光方向に直交する方向がX軸方向に相当する。
【0027】
そして、このようにして分光された信号光(分光光)は集光光学系43に入射する。この集光光学系43は、X軸方向とY軸方向の屈折力が異なるように構成されており、この
図2においてはY軸方向の屈折力がX軸方向の屈折力より大きくなるように構成されている。例えば、この2次元集光光学系43としては、Y軸方向にのみ屈折力を有するシリンドリカルレンズを用いることができる。そのため、この集光光学系43に入射した分光光は、X軸方向には同一の長さであるがY軸方向に並ぶライン毎に異なる光波長からなる光パターンが生成され、空間光変調素子44上に投影される。例えば、
図2の構成の場合、回折格子42でY軸方向上側に回折された分光光LI1は、集光光学系43により空間光変調素子44のY軸方向上側に光パターンIM11として集光される。また、回折格子42でY軸方向下側に回折された分光光LI2は、集光光学系43により空間光変調素子44のY軸方向下側に光パターンIM12として集光される。
【0028】
空間光変調素子44は、
図3に示すような構造をした微小鏡44aが1次元、若しくは2次元に配列しているものである。各微小鏡44aはヒンジ44bで支えられた軸44cの周りに電極44dに加えられた電圧によって所定の1次元方向(本実施形態では分光方向と略直交する方向であるX軸方向)に鏡面を傾斜させる(回転させる)ことができるように構成されている。一般に極端に縦横の長さの異なる微小鏡44aは製造が困難であることから、縦横の空間光変調素子44として十分な横幅が得られない場合には2次元配列したものを利用し、X軸方向に並ぶ微小鏡44aのX軸方向の各ラインに同一の制御を行うことで、あたかもY軸方向の幅が狭くX軸方向に長い鏡があるようにすることもできる。
【0029】
空間光変調素子44において反射された信号光(分光光)は、投影光学系45によって受光器46に導かれる。なお、受光器46の複数の受光素子46aは、X軸方向にアレー状に並んで配置されている。すなわち、受光器46の受光素子46aは、空間光変調素子44の微小鏡44aの回転可能な1次元方向(X軸方向)に配列されている。この投影光学系45は、光軸に対して回転対称な屈折力を有する第1集光レンズ45aと、Y軸方向の屈折力の方がX軸方向の屈折力より大きい第2集光レンズ45bとからなり、合成焦点距離がY軸方向とX軸方向とで異なるように設計されている。このとき、受光器46は、投影光学系45の光軸と略直交する面内における分光方向と略直交する方向、すなわち、空間光変調素子44の微小鏡44aの回転可能な1次元方向(X軸方向)に関して、投影光学系45の後側焦点位置に配置されている。また、空間光変調素子44及び受光器46は、投影光学系45を介して、この投影光学系45の分光方向、すなわち、空間光変調素子44の微小鏡44aの回転可能な1次元方向と略直交する方向(Y軸方向)に関して、共役関係に配置されている。なお、この投影光学系45の第2集光レンズ45bも、Y軸方向(分光方向)にのみ屈折力を有するシリンドリカルレンズを用いることができる。
【0030】
上述のように、この第1の実施形態では投影光学系45のX軸方向の焦点距離は、この投影光学系45のX軸方向主面と受光器46との距離L2に等しくなるように設計されている。そのため、空間光変調素子44上の微小鏡44aによる信号光(分光光)の反射方向に依存して受光器46を構成する受光素子46aのうちのどの受光素子46aに入射するかを選択することができる。
【0031】
一方、投影光学系45のY軸方向の焦点距離に関しては、空間光変調素子44と受光器46とが共役になるように設計されている。すなわち、空間光変調素子44と投影光学系45のY軸方向主面との距離がL1である場合に、Y軸方向の焦点距離fが次式(1)を満足するように設計されている。
【0032】
f = L1×L2/(L1+L2) (1)
【0033】
このとき、空間光変調素子44の像が受光素子46aの受光領域に収まる必要があることから、投影光学系45のY軸方向の倍率は、受光素子46aと空間光変調素子44の大きさの比以下となっている必要がある。すなわち、投影光学系45のY軸方向の倍率は、受光素子46aの受光領域の大きさと空間光変調素子44の空間光変調素子面の大きさとの比以下となっている必要がある。ここで、投影光学系45の倍率は上述の距離L2と距離L1との比に等しいので、次式(2)の関係を満たす必要がある。
【0034】
L2/L1 ≦ 受光領域Y軸方向サイズ/空間光変調素子面Y軸方向サイズ (2)
【0035】
以上より、この第1の実施形態に係る分光器40においては、空間光変調素子44のX軸方向に並ぶ微小鏡44aから構成されるラインの各々に、分光された波長の異なる信号光が入射するため、ライン毎に微小鏡44aの傾斜角度を制御することにより、分光された信号光を波長毎にどの受光素子46aに入射させるかを制御することができる。例えば、空間光変調素子44のY軸方向上側に集光された光パターンIM11の反射光LO1は、X軸方向左側の受光素子46aに集光されて像IM21を形成し、空間光変調素子44のY軸方向下側に集光された光パターンIM12の反射光LO2は、X軸方向右側の受光素子46aに集光されて像IM22を形成している。
【0036】
なお、受光器46の受光素子46aは、これらの受光素子46aに入射する分光光の強度を検出し、その検出値が制御部50に渡され、制御部50で演算処理されて画像として図示しない表示装置等に出力される。
【0037】
それでは、この第1の実施形態に係る分光器40の具体的な設計手段を以下に示す。なお、集光光学系43及び第2集光レンズ45bについてはY軸方向(空間光変調素子44の微小鏡44aの回転可能な1次元方向と略直交する方向)にのみ屈折力を有するシリンドリカルレンズを用いる場合について説明する。
【0038】
まず、コリメート光学系41の焦点距離fcは、このコリメート光学系41を通過した後の光ビームの幅がおおよそ空間光変調素子44の横幅(X軸方向幅)と等しくなるようにすれば良いので、空間光変調素子44のX軸方向幅をWとすると、次の条件式(3)を満足すれば良い。但し、NA
fは光ファイバ28の開口数である。
【0040】
次に集光光学系(シリンドリカルレンズ)43のY軸方向の焦点距離f
1については、波長としてλ
1〜λ
2の範囲の信号光を分光して検出するために、回折格子42として格子定数dのものを使い、この回折格子42への入射角をθ
1とすると、回折格子42からの出射角θ
2は、sin
-1(λ
1/d−sinθ
1)からsin
-1(λ
2/d−sinθ
1)までの範囲となる。従って、回折格子42から出射する分光光の半画角Δθは次式(4)で表される。
【0041】
Δθ=(sin
-1(λ
2/d−sinθ
1)−sin
-1(λ
1/d−sinθ
1))/2
(4)
【0042】
よって、空間光変調素子44の微小鏡44aのY軸方向のピクセルピッチをP
SLMとし、Y軸方向に並ぶピクセル数をN
SLMとすると、集光光学系43のY軸方向の焦点距離f
1は、次の条件式(5)を満たすようにすれば良い。
【0043】
2×f
1×sinΔθ = P
SLM×N
SLM (5)
【0044】
最後に投影光学系45の焦点距離については、X軸方向の焦点距離f
2TとY軸方向の焦点距離f
2Lとがあるが、これらはそれぞれ次のように決める。
【0045】
まず、受光素子46aの横幅(X軸方向幅)がW
dTで、この受光素子46aがX軸方向にN
d本並んでおり、空間光変調素子44の各微小鏡44aは±α
mの偏向角を持つとすると、この投影光学系45のX軸方向の焦点距離f
2Tは、次式(6)の関係を満たせば良い。
【0046】
f
2T×sinα
m = W
dT×N
d/2 (6)
【0047】
なお、空間光変調素子44の縦幅(Y軸方向幅)がP
SLM×N
SLMとして表されるため、この空間光変調素子44で反射された分光光のうち、Y軸方向の成分が、投影光学系45で集光されて受光素子46aの縦幅(Y軸方向幅)W
dLに入ればいいので、投影光学系45の倍率Mを次式(7)となるようにすれば良い。
【0048】
M = W
dL/(P
SLM×N
SLM) (7)
【0049】
一方、投影光学系45のY軸方向の焦点距離f
2Lは、投影光学系45から受光器46までの距離L2が、投影光学系45のY軸方向焦点距離f
2Tに等しいので、空間光変調素子44と投影光学系45のY軸方向主面との距離がL1であれば、上述の式(1)の関係より、次式(8)のように表される。
【0050】
f
2L = L1×f
2T/(L1+f
2T) (8)
【0051】
このように設計された光学系において、光軸に対してX軸方向にk番目の位置にある受光素子46aに入射させる際には、空間光変調素子44でその蛍光波長を反射している微小鏡44aの傾きαを、次式(9)となるように制御すれば良い。なお、回折格子42で分光された波長毎の分光光をどの受光素子46aに入射させるかは、制御部50により空間光変調素子44の微小鏡44aの傾斜角を制御することにより選択することができる。
【0052】
α = sin
-1(k×W
dT/f
2T) (9)
【0053】
空間光変調素子44上の微小鏡44aはこの第1の実施形態のような光学配置の場合にはY軸方向に1次元に配列していることが望ましいが、微小鏡44aが2次元に配列していてもかまわない。その際にはY軸方向の同一高さにありX軸方向に並ぶ微小鏡44aが同一の反射角となるように制御されれば良い。
【0054】
蛍光検出をする際に使われる励起光など受光素子46aに入射することが望ましくない波長の光に関しては、空間光変調素子44上のその光の波長に対応する微小鏡44aの傾きを大きくすることで受光素子46aに入射しない方向に飛ばしてしまうこともできる。上記の設計手順において受光器46を構成する受光素子46aのうち最も端に位置するものをブランクにしてしまうことで、検出が不要な励起光についてはその位置に集光するように空間光変調素子44を制御することで、受光器46に対して不要な光が入射することを防ぐことができる。
【0055】
このように、この第1の実施形態に係る分光器40は、信号光の波長ごとに受光素子46aを選択することができるので、必要以上に波長分割をすることなく必要最小限の受光素子46aで十分なS/Nを持った分光を行うことができる。さらに、励起光など不要な光が受光素子46aに入射して信号強度を乱したり受光素子46aを傷めたりすることを避けることができる。また、任意の励起波長が受光器46に入ることを避けられるので、特に複数の励起波長で観察する共焦点顕微鏡に最適である。
【0056】
また、この第1の実施形態に係る分光器40は、光ファイバ28を入射端としているので、容易に共焦点顕微鏡に接続することが可能である。すなわち、一般に共焦点顕微鏡では光検出をピンホールに接続した光検出器で行っているが、ピンホール透過後の光を光ファイバに入射させることで光検出器への光導入を容易に光ファイバで行うことが可能である。このようにして、分光機能を持った共焦点顕微鏡に適した分光器を構成することができる。
【0057】
[第2の実施形態]
図4に、第2の実施形態に係る分光器140の構成を示す。第1の実施形態に係る分光器40との違いは、横方向(XZ断面におけるX軸方向であって、空間光変調素子44の微小鏡44aの回転可能な1次元方向)において光ファイバ28の射出端と空間光変調素子44とが共役関係であり、同様に横方向(X軸方向)において回折格子42と受光器46の受光面とが共役関係になったことである。なお、縦方向(Y軸方向であって、空間光変調素子44の微小鏡44aの回転可能な1次元方向と略直交する方向)の関係は第1の実施形態と同様であり、また、この第1の実施形態と同様の構成要素については、同一の符合を付し、詳細な説明は省略する。
【0058】
図4(a)に示す分光器140は、光ファイバ28から入射する信号光を略平行光とするコリメート光学系41と、分光特性を有する波長分散素子(分光素子)である回折格子42と、2次元に微小反射鏡(微小鏡)が配列された空間光変調素子44と、回折格子42で波長分散を受けた信号光(分光光)を空間光変調素子44の空間光変調素子面上に1次元に集光する集光光学系143と、複数の受光素子46aがX軸方向にアレー状に並べられた受光素子アレーを有する受光器46と、空間光変調素子44で反射した光を受光器46の受光面に結像させる投影光学系45と、を有する。
【0059】
この分光器140では、光ファイバ28を介して取り込まれた信号光を、コリメート光学系41により略平行光とし、回折格子42に照射する。この信号光は回折格子42で波長毎に異なる角度に分散されて集光光学系143により空間光変調素子44上に集光される。なお、空間光変調素子44は第1の実施形態と同様に、
図3に示す構成を有している。また、この第2の実施形態において、集光光学系143は光軸に回転対称な屈折力を有している。そのため、回折格子42でY軸方向上側に回折された分光光LI1は、集光光学系143により空間光変調素子44のY軸方向上側に点像IM11として集光される。また、回折格子42でY軸方向下側に回折された分光光LI2は、集光光学系143により空間光変調素子44のY軸方向下側に点像IM12として集光される。
【0060】
空間光変調素子44で反射された分光光は投影光学系45によって受光器46に導かれる。ここで、投影光学系45は第1の実施形態と同様、光軸に回転対称な屈折力を有する第1集光レンズ45aと例えばシリンドリカルレンズで構成される第2集光レンズ45bとからなり、合成焦点距離がY軸方向とX軸方向で異なるように設計されている。なお、空間光変調素子44及び受光器46の投影光学系45に対する配置位置は、第1の実施形態と同様である。
【0061】
この第2の実施形態においても、投影光学系45のX軸方向の焦点距離は、第1の実施形態と同様に、投影光学系45のX軸方向主面と受光器46との距離L22に等しくなるように設計されており、
図4(b)に示すように、空間光変調素子44上の微小鏡44aによる信号光(分光光LI1)の反射方向(反射光LO1の方向)に依存して受光器46を構成する受光素子46aのうちのどの受光素子46aに入射するかを選択することができる。
【0062】
また、投影光学系45のY軸方向の焦点距離に関しても、第1の実施形態と同様に、空間光変調素子44と受光器46とが共役となるように設計されている。すなわち、空間光変調素子44と投影光学系45のY軸方向主面との距離がL21である場合に焦点距離fが、次式(10)の関係となるように設定されている。
【0063】
f = L21×L22/(L21+L22) (10)
【0064】
また、第1の実施形態と同様に、空間光変調素子44の像が受光素子46aの受光面に収まる必要があることから、投影光学系45のY軸方向の倍率は受光素子46aの受光領域の大きさと空間光変調素子44の空間光変調素子面の大きさとの比以下となっている必要がある。ここで、投影光学系45の倍率は距離L22と距離L21との比に等しいので、次式(11)の関係を満たす必要がある。
【0065】
L22/L21≦受光領域Y軸方向サイズ/空間光変調素子面Y軸方向サイズ (11)
【0066】
以下に、この第2の実施形態に係る分光器140の具体的な設計手段を示す。なお、第2集光レンズ45bについてはY軸方向にのみ屈折力を有するシリンドリカルレンズを用いる場合について説明する。
【0067】
まず、コリメート光学系41の焦点距離fcは、このコリメート光学系41を通過した後の光ビームの幅がおおよそ受光素子46aの横幅(X軸方向幅)と等しくなるようにすれば良いので、受光素子46aのX軸方向幅をW′とすると、次式(12)の関係を満足すれば良い。但し、NA
fは光ファイバ28の開口数であり、f
22T及びf
21はそれぞれ下記の式から決まる投影光学系45のX軸方向の焦点距離及び集光光学系143の焦点距離である。
【0068】
W′ ≧ (f
22T/f
21)×2×fc×NA
f (12)
【0069】
次に集光光学系143の焦点距離f
21については、波長としてλ
1〜λ
2の範囲の信号光を検出するために、回折格子42として格子定数dのものを使い、回折格子42への入射角をθ
1とすると、回折格子42からの出射角θ
2は、sin
-1(λ
1/d−sinθ
1)からsin
-1(λ
2/d−sinθ
1)までの範囲となる。従って、回折格子42から出射する分光光の半画角Δθは第1の実施形態で示した式(4)で表される。よって、空間光変調素子44の微小鏡44aのY軸方向のピクセルピッチをP
SLMとし、Y軸方向に並ぶピクセル数をN
SLMとすると、集光光学系143の焦点距離f
21は、次の条件式(13)を満たすようにすれば良い。
【0070】
2×f
21×sinΔθ = P
SLM×N
SLM (13)
【0071】
最後に投影光学系45の焦点距離については、X軸方向の焦点距離f
22TとY軸方向の焦点距離f
22Lとがあるが、これらはそれぞれ次のように決める。
【0072】
まず、受光素子46aの横幅(X軸方向幅)がW
dTで、この受光素子46aがX軸方向にN
d本並んでおり、空間光変調素子44の各微小鏡44aは±α
mの偏向角を持つとすると、この投影光学系45のX軸方向の焦点距離f
22Tは、次式(14)の関係を満たせば良い。
【0073】
f
22T×sinα
m = W
dT×N
d/2 (14)
【0074】
なお、空間光変調素子44の縦幅(Y軸方向幅)がP
SLM×N
SLMとして表されるため、この空間光変調素子44で反射された分光光のうち、Y軸方向に延びる光が、投影光学系45で集光されて受光素子46aの縦幅(Y軸方向幅)W
dLに入ればいいので、投影光学系45の倍率Mは、第1の実施形態で示した式(7)となるようにすれば良い。
【0075】
一方、投影光学系45のY軸方向の焦点距離f
22Lは、投影光学系45から受光器46までの距離L22が、投影光学系45の横方向焦点距離f
22Tに等しいので、空間光変調素子44と投影光学系45のY軸方向主面との距離がL21であれば、上述の式(10)の関係より、次式(15)のように表される。
【0076】
f
22L = L21×f
22T/(L21+f
22T) (15)
【0077】
このように設計された光学系において、光軸に対してX軸方向にk番目の位置にある受光素子46aに入射させる際には、空間光変調素子44でその蛍光波長を反射している微小鏡44aの傾きαを、次式(16)となるように制御すれば良い。
【0078】
α = sin
-1(k×W
dT/f
22T) (16)
【0079】
例えば、
図4(c)に示すように、空間光変調素子44のY軸方向上側に集光された点像IM11の反射光LO1、はX軸方向左側の受光素子46aに集光されて像IM21を形成し、空間光変調素子44のY軸方向下側に集光された点像IM12の反射光LO2は、X軸方向右側の受光素子46aに集光されて像IM22を形成している。このとき、投影光学系45により形成される点像IM11,IM12の像は、X軸方向に延びるライン上の光パターンとなる。
【0080】
なお、この第2の実施形態においても、空間光変調素子44上の微小鏡44aはY軸方向に1次元に配列していることが望ましいが、微小鏡44aが2次元に配列していてもかまわない。その際にはY軸方向の同一高さにありX軸方向に並ぶ微小鏡44aが同一の反射角となるように制御されればよい。
【0081】
第2の実施形態に係る分光器140を以上のような構成にすることによって、空間光変調素子44の素子サイズを小さくすることができる。
【0082】
[第3の実施形態]
図5に、第3の実施形態に係る分光器240の構成を示す。第1及び第2の実施形態に係る分光器40,140との違いは、縦方向(YZ断面におけるY軸方向)及び横方向(XZ断面におけるX軸方向)で、光ファイバ28の射出端と空間光変調素子244が共役関係であり、同様に回折格子42と受光器246の受光面が共役関係になったことである。なお、第1及び第2の実施形態と同様の構成要素については、同一の符合を付し、詳細な説明は省略する。
【0083】
図5(a)に示す分光器240は、光ファイバ28から入射する信号光を略平行光とするコリメート光学系41と、分光特性を有する波長分散素子(分光素子)である回折格子42と、2次元に微小反射鏡(微小鏡)が配列された空間光変調素子244と、回折格子42で波長分散を受けた信号光(分光光)を空間光変調素子244上に1次元に集光する集光光学系143と、複数の受光素子246aを有する受光器246と、空間光変調素子244で反射した光を受光器246の受光面に結像させる投影光学系245と、を有する。なお、この第3の実施形態に係る分光器240においては、必ずしも受光素子246aはアレー上に並んでいる必要はなく、例えば、
図5(d)に示すように2次元に配置することができる。
【0084】
この分光器240では、光ファイバ28を介して取り込まれた信号光を、コリメート光学系41により略平行光とし、回折格子42に照射する。観察光は回折格子42で波長毎に異なる角度に分散されて集光光学系143により空間光変調素子244上に集光される。この第3の実施形態においても、第2の実施形態と同様に、集光光学系143は光軸に回転対称な屈折力を有している。そのため、
図5(a),(b)に示すように、回折格子42でY軸方向上側に回折された分光光LI1は、集光光学系143により空間光変調素子244のY軸方向上側に点像IM11として集光される。また、回折格子42でY軸方向下側に回折された分光光LI2は、集光光学系143により空間光変調素子244のY軸方向下側に点像IM12として集光される。
【0085】
また、空間光変調素子244は第1及び第2の実施形態とは異なり、上述の所定の1次元方向(X軸方向)に加えて、この1次元方向に略直交する方向(Y軸方向)にも鏡面を傾斜させることができる、すなわち、X軸方向及びY軸方向の2軸に鏡面を傾斜させることができるようになっている。例えば、
図6に示すように、各微小鏡244aは、第1ヒンジ244bで支えられた第1軸244cの周りに第1電極244fに加えられた電圧によってX軸方向に鏡面を傾斜させることができ、さらに、この第1ヒンジ244bは、第2ヒンジ244dで支えられた第2軸244eの周りに第2電極244gに加えられた電圧によってY軸方向に鏡面を傾斜させることができるように構成されている。
【0086】
空間光変調素子244において反射された分光光は投影光学系245によって受光器246に導かれる。ここで、投影光学系245は、第1及び第2の実施形態とは異なり、Y軸方向とX軸方向で焦点距離は同じである。例えば、この投影光学系245は、光軸に回転対称な屈折力を有して構成されている。この第3の実施形態において、受光器246は、投影光学系245の光軸と略直交する面内におけるY軸方向(分光方向)に関してこの投影光学系245の後側焦点位置に配置されている。すなわち、投影光学系245の焦点距離は、投影光学系245の主面と受光器246との距離L2に等しくなるように設計されており、
図5(a),(c),(d)に示すように、空間光変調素子244上の微小鏡244aによる信号光(分光光LI1)の反射方向(反射光LO1の方向)に依存して受光器246を構成する受光素子246aのうちのどの受光素子246aに入射するかを選択することができる。
【0087】
以下に、この第3の実施形態に係る分光器240の具体的な設計手段を示す。
【0088】
まず、コリメート光学系41の焦点距離fcは、このコリメート光学系41を通過した後の光ビームの径に集光光学系143と投影光学系245で決まる倍率を乗じた径が受光素子246aの径に等しくなるようにすれば良いので、受光素子246aの径をΦとすると、次式(17)の関係を満たせば良い。但し、NA
fは光ファイバ28の開口数であり、f
32及びf
31はそれぞれ下記の式から決まる投影光学系245の焦点距離及び集光光学系143の焦点距離である。
【0089】
Φ ≧ (f
32/f
31)×2×fc×NA
f (17)
【0090】
次に集光光学系143の焦点距離f
31については、波長としてλ
1からλ
2の範囲の信号光を検出するために、回折格子42として格子定数dのものを使い、回折格子42への入射角をθ
1とすると、回折格子からの出射角θ
2は、sin
-1(λ
1/d−sinθ
1)からsin
-1(λ
2/d−sinθ
1)までの範囲となる。従って、回折格子42から射出する分高校の半画角Δθは第1の実施形態で示した式(4)で表される。よって、空間光変調素子244の微小鏡244aのY軸方向のピクセルピッチをP
SLMとし、Y軸方向に並ぶピクセル数をN
SLMとすると、集光光学系143の焦点距離f
31は、次の条件式(18)を満たすようにすれば良い。
【0091】
2×f
31×sinΔθ = P
SLM×N
SLM (18)
【0092】
最後に投影光学系245の焦点距離については、次のように決める。
【0093】
図5(d)に示すように、受光素子246aの縦幅(Y軸方向幅)がW
dLで、この受光素子246aがX軸方向にN
d列、横幅(X軸方向幅)がW
dTで、Y軸方向にM
d行、2次元上に並んでおり、また、空間光変調素子244の各微小鏡244aは縦方向(Y軸方向)に±α
mの偏向角を持ち、横方向(X軸方向)に±β
mの偏向角をもつとすると、この投影光学系245の焦点距離f
32は、次式(19),(20)の関係を満たせば良い。
【0094】
f
32×sinα
m = W
dL×N
d/2 (19)
f
32×sinβ
m = W
dT×M
d/2 (20)
【0095】
このように設計された光学系において、光軸に対して縦方向(Y軸方向)にj番目で、横方向(X軸方向)にk番目の位置にある受光素子246aに入射させる際には、空間光変調素子244でその蛍光波長を反射している微小鏡244aの傾きα,βを、次式(21),(22)となるように制御すれば良い。
【0096】
α = sin
-1(j×W
dL/f
32) (21)
β = sin
-1(k×W
dT/f
32) (22)
【0097】
例えば、
図5(d)に示すように、空間光変調素子244のY軸方向上側に集光された点像IM11の反射光LO1、は上段のX軸方向左側の受光素子246aに集光されて像IM21を形成し、空間光変調素子244のY軸方向下側に集光された点像IM12の反射光LO2は、下段のX軸方向右側の受光素子246aに集光されて像IM22を形成している。
【0098】
なお、この第3の実施形態においても、空間光変調素子244上の微小鏡244aはY軸方向に1次元に配列していることが望ましいが、微小鏡244aが2次元に配列していてもかまわない。その際にはY軸方向の同一高さにありX軸方向に並ぶ微小鏡244aが同一の反射角となるように制御されればよい。
【0099】
第3の実施形態に係る分光器240を以上のような構成にすることによって、空間光変調素子244の素子サイズを小さくすることができる。また、受光器246は、その受光素子246aを1次元だけでなく2次元に配置することもでき、分光された波長毎に、これらの受光素子246aの選択自由度を上げることができる。