(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明で好適に使用される散気装置を備えた排水処理装置の一例を概略的に示す構成図である。
この例の排水処理装置10は、被処理水である活性汚泥11が投入された活性汚泥曝気槽12と、活性汚泥曝気槽12内に浸漬され、固液分離用膜エレメント13を具備した膜分離装置と、活性汚泥曝気槽12内に散気用気体を噴出するための散気装置20とを備えている。固液分離用膜エレメント13は、この例では中空糸膜などの分離膜を備えて構成されている。また、固液分離用膜エレメント13には、吸引配管14及び吸引ポンプ15からなる吸引手段16が接続され、吸引濾過が可能に構成されている。
【0012】
散気装置20は、活性汚泥曝気槽12内の底部近傍に略水平配置された1本の散気管(散気部)21と、この散気管21に散気用気体を供給するための気体供給部22とを有している。散気管は、その軸方向の勾配が1/50以内、好ましくは1/100以内となるように設置されることが好適である。
この例の散気管21は、長手方向に垂直な断面(以下、垂直断面という。)が円形の円管からなり、その鉛直上部には、散気用気体を噴出するための円形の散気穴23が複数(
図1の例では6つ。)長手方向に沿って一列に形成され、一方、周壁の下部には、活性汚泥11が散気管21内に出入りするための円形の汚泥出入穴24が、この例では1つ形成されている。具体的には、この例の散気穴23及び汚泥出入穴24は、散気管21の軸線と交差する鉛直線(鉛直方向の垂線)と、散気管21の周壁との交点に、各穴の中心が位置するように配置されている。すなわち、この例では、散気穴23は、散気管21の軸線と交差する鉛直上方向の垂線と、散気管21の周壁との交点に、各散気穴23の中心が位置するように配置されている。また、汚泥出入穴24は、散気管21の軸線と交差する鉛直下方向の垂線と、散気管21の周壁との交点に、汚泥出入穴24の中心が位置するように配置されている。散気管21は、例えばポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂や、金属等などからなる。
【0013】
なおここで周壁の下部とは、散気管21の軸線よりも下側に位置する部分の周壁である。汚泥出入穴24の中心が周壁の下部に位置している場合、この汚泥出入穴24は散気管21の下部に形成されているものとする。
汚泥出入穴は、その中心が、散気管21の軸線から鉛直下方向に引いた線から、周壁上45°以内の範囲に位置するように形成されることが好適であり、さらに好ましくは30°以内である。
【0014】
気体供給部22は、送気手段であるブロワ25と、ブロワ25と散気管21を接続する送気管26とを備えている。この例では、送気管26は、
図2Aにも示すように散気管21の一端21aに接続されて、ブロワ25からの散気用気体を散気管21内に供給するものである。散気管21の汚泥出入穴24は、送気管26が接続された散気管21の一端21aとは反対側の閉塞した他端21bの近傍に形成されている。また、この例の送気管26には、
図1に示すように、送気管26内の散気用気体を大気中に逃して排出するため排気管27が分岐形成され、分岐部分には三方バルブ28が設けられている。また、この例の気体供給部22は制御装置29を有し、ブロワ25及び三方バルブ28の動作は、この制御装置29により自動制御される。
【0015】
係る構成により、本発明の散気装置の散気管は、散気停止時においても管内圧力が大気開放されない構造となっている。例えば、
図1では、三方バルブ28を用いているため、ブロワ25と排気管27とが連通するように三方バルブ28を開放すれば、ブロワを停止することなく、給気停止することができるとともに、散気管の管内圧力は維持される。
なお、バルブの個数は、
図2のように、バルブを2つ用いても良いが、ひとつであってもよい。
【0016】
本発明の散気装置の運転方法においては、気体供給部22から散気管21へ散気用気体を供給する供給工程と、気体供給部22からの散気用気体の供給を停止する停止工程とを繰り返し行う。
具体的には、まず制御装置29により三方バルブ28を操作して、ブロワ25と散気管21とが連通し、排気管27側が閉じるようにする。そして、ブロワ25を作動させ、所定流量の散気用気体を、送気管26を通じて散気管21に供給する(供給工程)。
ここで、散気用気体としては、通常は空気を使用するが、必要に応じて酸素などを使用してもよい。また、散気用気体の流量は、通常、活性汚泥処理(生物処理)に必要な流量とされるが、この例の排水処理装置のように、膜分離装置を具備する装置での散気の場合には、膜分離装置の膜面を効果的に洗浄する観点も考慮して散気用気体の流量を決定してもよい。
【0017】
ついで、散気用気体を供給する供給工程を所定時間行った後、散気用気体の散気管21への供給を停止する(停止工程)。散気用気体の供給を停止する際には、ブロワ25自体を停止させてもよいが、制御装置29により三方バルブ28を操作して、ブロワ25と排気管27とが連通し、送気管26の分岐部分よりも下流側(散気管21側)の流路が閉じるようにしてもよい。これにより、停止工程においては、散気管21への散気用気体の供給は停止され、かつ、散気管21内が大気圧に開放されることはなく、散気管21内の圧力(管内圧力)が維持される。
【0018】
ついで、散気用気体の供給を停止する停止工程を所定時間行った後、再度、気体供給部22から散気管21へ散気用気体を供給する供給工程を行う。
【0019】
このように、鉛直上部には、散気用気体を噴出する複数の散気穴23が形成され、一方、下部には、活性汚泥11が散気管21に出入りする1つ以上の汚泥出入穴24が形成された散気管21を散気装置20に備え、上述した供給工程と停止工程とを繰り返す運転方法によれば、ブロワ25に過度の負荷をかけたり、排水処理装置に新たに設備を設置したりすることなく、散気穴23を閉塞するような散気管21への活性汚泥11の乾燥固結を防止することができる。
すなわち、この例のように、散気管21の下部ではなく、上部に散気穴23が設けられていると、供給工程から停止工程に切り替わった際に、散気管21内に残存する散気用気体は、活性汚泥11よりも低比重であるために散気穴23から上方へと排出される。すると、この散気管21の下部には、汚泥出入穴24が形成されているため、このような散気用気体の排出にともなって、汚泥出入穴24からは活性汚泥11が散気管21内に流入する。このように散気管21の上部に散気穴23が形成され、下部に汚泥出入穴24が形成されていると、供給工程から停止工程に切り替わった際に、散気管21内を大気圧に開放するなどして、その管内圧力を低下させなくても、散気管21内の散気用気体は排出され、代わりに活性汚泥11が充満する。そのため、停止工程において散気管21内は活性汚泥11により湿潤状態となり、散気管21内の活性汚泥11の乾燥固結を防止できる。
【0020】
また、このように散気穴23と汚泥出入穴24とが形成された散気管21を採用した場合には、上述のとおり、散気管21内を大気圧に開放するなどして管内圧力を低下させなくても、散気管21内に活性汚泥11を流入させることができるため、散気管21内を大気圧に開放することによる不都合を回避することができる。
すなわち、停止工程に切り替わった際に、仮に、三方バルブ28を操作して、排気管27と散気管21側の送気管26とを連通させ、管内圧力を低下させ大気圧とすると、散気管21内だけでなく送気管26内までが大気圧となる。その結果、活性汚泥曝気槽12内の活性汚泥11が散気管21内に流入するだけでなく、送気管26内にも大量に流入してしまう。具体的には、
図1中、符号L1で示す位置(活性汚泥曝気槽12における活性汚泥11の液面高さ)まで、送気管26内に活性汚泥11が流入してしまう。このように大量の活性汚泥11が送気管26内に流入すると、次の供給工程で散気用気体の供給を開始する際に、ブロワ25は大量の活性汚泥11を送気管26から押し出す必要があるため、ブロワ25には過剰な負荷がかかる。また、送気管26内に大量の活性汚泥11が付着して乾燥し、この乾燥した活性汚泥11が散気管21に運ばれて散気穴23を閉塞させるおそれもある。これに対して、停止工程に切り替わった際に、管内圧力を維持し、敢えて低下させない場合には、活性汚泥11は送気管26内に流入したとしても、符号L2で示す位置(散気穴23の形成位置に対応する高さ)までしか流入しない。そのため、次の供給工程で散気用気体の供給を再開した際には、ブロワ25には大きな負荷をかけることなく、湿潤状態の散気管21内で剥離しやすくなった活性汚泥11を汚泥出入穴24や散気穴23から散気管21外に排出することができる。
こうして、散気穴23を閉塞するような散気管21への活性汚泥11の乾燥固結を防止することができる。
【0021】
ここで散気用気体の供給を継続する時間、すなわち、1回の供給工程を行う時間は、30分〜12時間であることが好ましい。1回の供給工程を行う時間が30分未満であると、ブロワ25の起動・停止頻度、三方バルブ28の開閉頻度が多くなり、ブロワ25や三方バルブ28の機械的損傷が早まる。一方、1回の供給工程を行う時間が12時間を超えると、散気管21内の活性汚泥11の一部が乾燥してしまい、長期使用のうちに散気穴23が閉塞してしまうおそれがある。
また、散気用気体の供給を停止する時間、すなわち、1回の停止工程を行う時間は、15〜600秒間であることが好ましい。1回の停止工程を行う時間が15秒間未満であると、散気管21内に活性汚泥11が充分に流入しないうちに、供給工程に切り替わってしまうおそれがある。一方、1回の停止工程を行う時間が600秒間を超えると、活性汚泥11の生物処理に必要な活性汚泥曝気槽12内の散気用気体量が不足するおそれがある。
また、この例のように、膜分離装置が浸漬された活性汚泥曝気槽12の場合、停止工程時には膜分離装置による濾過処理も通常は停止する必要がある。したがって、1回の停止工程を行う時間が600秒間を超えると、膜分離装置による処理水量を低下させてしまう。
【0022】
また、各供給工程においては、所定流量の散気用気体を散気管21に供給した際に、下記式(I)により算出される圧力水頭ΔHが、散気管21の内径d
1の0.2〜0.9倍の値となるように、各散気穴23からの散気用気体の噴出速度v(m/sec)、各散気穴の面積A
0(m
2)、散気管21の断面積(長手方向に垂直な断面の内径基準面積)A
1(m
2)、各散気穴23の内径d
0(m)、散気管21の内径d
1(m)、1本の散気管21に供給される散気用気体の流量Q(m
3/sec)、散気穴23の数を決定することが好ましい。
下記式(I)は、オリフィスの流量計算に用いられる式として一般に知られている。
【数4】
【数5】
【数6】
【0023】
なお、図示例の散気装置20は、散気管21を1本具備しているが、複数本具備していてもよく、その場合には、各散気管21について、式(I)により算出される圧力水頭ΔHが、散気管21の内径d
1の0.2〜0.9倍の値とされることが好ましい。また、1本の散気管21に供給される散気用気体の流量Qは、活性汚泥曝気槽12に散気される全流量を散気管21の本数で除した値となる。散気管21の本数は、活性汚泥曝気槽12の形状、大きさ、また、膜分離装置を備える場合にはその形状、大きさ、設置数などに応じて、任意に設定される。
【0024】
なお、散気用気体が空気である場合には、散気用気体の密度ρ’は1.2(kg/m
3)とすればよい。活性汚泥11の密度ρは、実際に密度を測定してその値を採用する。
また、散気穴23からの散気用気体の噴出速度v(m/sec)は、1本の散気管21本に供給される散気用気体の流量Qを、この散気管21に形成された散気穴23の総面積(散気穴1個あたりの面積×1本の散気管に形成された散気穴の総数)で除した値である。
また、この例では、散気管21には、垂直断面が円形の円管を使用しているが、垂直断面の形状には特に制限はなく、例えば、楕円形、四角形などの多角形であってもよい。その場合には、式(III)において、各散気穴23の面積A
0及び散気管21の断面積A
1の値からmを求め、このmを用いて圧力水頭ΔHを算出し、その値が内径d
1の0.2〜0.9倍の値となるようにすればよい。
なお、式中、mは開口比であり、各散気穴23の面積A
0に対する散気管21の断面積A
1の比を示す。Cは流出係数である。
【0025】
このように、上記式(I)により算出される圧力水頭ΔH、すなわち、散気管21内に作用する圧力が散気管21の内径d
1に相当する圧力よりも小さく、特に内径d
1の0.2〜0.9倍の値であると、散気管21に散気用気体を供給している時、すなわち、供給工程においても、汚泥出入穴24からは活性汚泥11が散気管21内に流入する。そのため、停止工程時だけでなく、供給工程時にも、散気管21内に常時活性汚泥11が存在することになり、散気管21内は湿潤状態に保たれ、散気管21内の活性汚泥11の乾燥固結をより一層防止できる。
【0026】
ここで式(I)による圧力水頭(ΔH)が、内径d
1の0.2倍未満の値である場合には、散気管21の散気穴23の数及び散気穴23の直径に対して、散気管21に供給される散気用気体の量が少ない。よって、この場合には、各散気穴23から噴出する散気用気体の量に偏りが生じやすくなる。具体的には、送気管26が接続された散気管21の一端21aに近い位置に形成された散気穴ほど、多量の散気用気体が噴出され、他端21bに近い位置に形成された散気穴23から噴出する散気用気体は少量となる傾向にある。一方、内径d
1の0.9倍を超える値である場合には、供給工程において散気管21内に供給される散気用気体の量が多く、そのため、供給工程において散気管21内に存在する活性汚泥11の量が減少してしまい、散気管21内を充分な湿潤状態に維持することが困難となる。
【0027】
ここで、気体供給量は、バルブ等により一定量に設定されるが、ブロワ起動時間やバルブ開閉時間において、瞬間的に設定量から外れることは当然に発生しうる。
ただし、気体供給を再開した際に、急激な流量変動が散気管内に発生することによって散気管内洗浄効果は高くなる。
よって、散気管内に急激な流量変動を与えるためには、式(I)から外れる流量が散気管に供給される時間は10秒以内であることが好ましい。より好ましくは5秒以内である。
【0028】
また、この際、各散気穴23の直径(内径)は、1.5〜30mmの範囲内に設定されることが好ましい。1.5mm未満であると、活性汚泥11に含まれる、しさや固形物などの異物により散気穴23が閉塞しやすい傾向にある。また、供給工程から停止工程に切り替わっても、表面張力の作用により散気穴23から散気管21内の散気用気体が排出されず、その結果、汚泥出入穴24からの活性汚泥11の流入も不充分となる傾向にある。一方、30mmを超えると、供給工程において散気穴23から噴出する散気用気体の気泡が粗大化して散気用気体の溶解効率が減少し、活性汚泥11の生物処理に必要な散気量が不足したり、活性汚泥処理が非効率になったりする可能性がある。
なお、各散気穴23の形状は円形に限定されない。
【0029】
各散気穴23は、図示例のように、散気管21の軸線と交差する鉛直線と、周壁との交点に、各穴の中心が位置するように、一列に形成されることが好ましい。このように形成されると、各散気穴23からバランスよく散気用気体が噴出されやすい。
また、散気穴23が散気管21の軸線と交差する鉛直線と、周壁との交点に、各穴の中心が位置するようにすると、散気用気体の供給を停止する停止工程の際に、汚泥出入穴から流入した汚泥により管内が確実に汚泥で充満させることが可能となりより好ましい。
散気穴23が、散気管21の軸線と交差する鉛直線と周壁との交点からずれた位置に設置された場合、散気管21内のうち散気穴から上の空間には、散気用気体の供給を停止する停止工程においても汚泥が充満しないため、前記空間に接する散気管の内壁に乾燥汚泥が付着するおそれがある。
また、各散気穴23は、散気21管の長手方向において均等な間隔で形成されることが好ましい。
【0030】
汚泥出入穴24は、散気管21の下部に形成される限り、その数に制限はなく、1つ以上形成されればよい。
汚泥出入穴24の直径は、3mm以上が好ましい。3mm未満であると、活性汚泥11に含まれる、しさや固形分などの異物により汚泥出入穴24が閉塞しやすくなる。
また、汚泥出入穴24は、散気管21と送気管26の接続位置から最も離れた位置に設けることが好ましい。すなわち、この例のように、送気管26が散気管21の一端21aのみに接続されている場合には、送気管26が接続されていない側の散気管21の端部(他端)21bの近傍に形成されることが好ましい。一般的に、散気管21内において、散気管21と送気管26の接続位置付近は最も管内圧力が高くなるため、この部分に汚泥出入穴24を設けると、汚泥出入穴24から活性汚泥11が出入せず、散気用気体が噴出してしまうおそれがある。
また、
図2Bに示すように、散気管21の両端21a、21bに送気管26を接続して、両端21a、21bから散気用気体を散気管21内に供給する形態の場合には、例えば散気管21の長さが1m以上である場合などでも、散気穴23から均等に散気用気体を噴出させることができ好適である。その場合、汚泥出入穴24は、散気管21の長手方向の中心部付近に形成されることが好ましい。
【0031】
散気穴23の直径と汚泥出入穴24の直径は、それぞれが上記好適な範囲を満足していることが好ましいが、さらに、汚泥出入穴24の直径が散気穴23の直径よりも大きく形成されていると、汚泥出入穴24において活性汚泥11がより円滑に出入りしやすくなり好適である。
【0032】
散気管21の内径d
1は、10〜100mmの範囲内に設定されることが好ましい。内径d
1が10mm未満であると、活性汚泥11に存在する、しさや固形分などの異物により、散気管21内が閉塞しやすくなる。また、内径d
1が10mm未満であると、式(I)の範囲内となる、散気管1本あたりに供給される散気用気体の流量のレンジが小さくなってしまう。
また、散気管21は複数本が水平方向に並べられて配置されてもよく、その場合に、散気管21の内径d
1が100mm以下であると、散気管21を密に配置でき、結果、散気穴23も密に配置することができる。この場合、活性汚泥曝気槽12内をより均等に散気することができる。
さらに内径d
1が100mm以上であると、式(I)の下限値(内径d
1の0.2)を満たすために必要となる「散気管1本あたりに供給される散気用気体の流量」が大きくなってしまう。
【0033】
以上の説明では、散気部として散気管21を例示したが、例えば
図3及び4に示すように、平行に配置された複数の散気管21と、これら複数の散気管21の両端に接続された一組のヘッダー管30とから散気部を構成し、各ヘッダー管30それぞれに送気管26が接続されるようにしてもよい。この場合、散気用気体は送気管26からヘッダー管30に供給され、ヘッダー管30を経て各散気管21に供給される。また、この場合、汚泥出入穴24は、各散気管の下部に形成してもよいし(
図3)、各ヘッダー管30の下部に形成してもよい(
図4)。
【0034】
また、気体供給部22としては、以上の例では、送気手段としてブロワ25を具備するものを示したが、ブロワ25に代えてコンプレッサーを用いてもよい。
また、
図1の例の送気管26は、分岐部分に三方バルブ28が設けられているが、三方バルブ28を設けるかわりに、
図5に示すように、2つの開閉バルブ(二方バルブ)31、32を設置してもよい。この場合、供給工程では、排気管27に設けられた二方バルブ31を閉じ、分岐部分よりも下流側(散気管21側)の送気管26に設けられた二方バルブ32を開ける。停止工程では、反対に、排気管27に設けられた二方バルブ31を開け、分岐部分よりも下流側の二方バルブ32を閉じる。これにより、停止工程においては、散気管21への散気用気体の供給は停止され、かつ、散気管21内が大気圧に開放されることはない。
【0035】
また、本発明の運転方法では、散気部と、散気部に散気用気体を供給するための気体供給部とを有する散気装置を複数用いてもよい。その場合、各散気装置間で、供給工程と停止工程が切り替わるタイミングを同時にしてもよいが、各散気装置ごとにタイミングをずらしてもよい。特に、膜分離装置が浸漬された活性汚泥曝気装置の場合、気体の供給が無い場合には、膜分離装置による濾過処理も通常停止される。そのため、各散気装置ごとに供給工程と停止工程とが切り替わるタイミングをずらしておき、いずれかの散気装置は少なくとも供給工程にあるようにしておくと、活性汚泥曝気槽には常時散気が行われることとなり、膜分離装置による濾過処理を停止する必要がなくなる。また、このように、常時散気が行われると、連続的に活性汚泥処理を実施できる点でも好適である。
なお、以上の例では、活性汚泥曝気槽12内に、固液分離用膜エレメント13を備えた膜分離装置が浸漬された排水処理装置10を示して説明したが、本発明の運転方法は膜分離装置を備えない水処理装置にも好適に適用できる。
【0036】
(実施例1)
図1の構成の排水処理装置において、水処理を行った。
固液分離用膜エレメント13には、ステラポアーSADF(商品名、三菱レイヨン・エンジニアリング(株)製、ポリフッ化ビニリデン製中空糸膜)を使用した。被処理水である活性汚泥11には、MLSS濃度として約9,500mg/Lの活性汚泥を用いた。
散気管21としては、内径d
1が 20mm(0.02m)で、長さ650mmの塩化ビニル樹脂製円管を使用し、直径φ5mm(0.005m)の散気穴23を散気管21の鉛直上部(散気管 の軸線と交差する鉛直線上)に均等な間隔で形成した。散気管の軸方向の勾配は、1/100以内であった。なお、
図1では、散気穴23を6つ図示している が、本実施例1では、5つ形成した。
送気管26は散気管21の一端21aのみに接続し、送気管26が接続されていない側の他端21bの近傍に は、周壁の下部に、直径φ10mmの汚泥出入穴24を1つ形成した。ブロワ25としてはルーツブロワを用い、散気管1本あたりに供給される流量Qが 60L/min(1.0×10
−3 m
3/sec)となるように、送気管26を通じて散気管21に散気用気体を供給した。散気用気体には空気を用い、散気用気体の密度ρ’は1.2kg/m
3、活性汚泥11の密度ρは1,000kg/m
3、重力加速度gは9.8m/sec
2とした。
以上の数値を用いて式(I)より算出した管内圧力水頭ΔHは、18mm(0.018m)となり、散気管21の内径d
1の0.9倍の値であり、本発明における好ましい範囲内であった。
そして、この装置において、散気用気体を供給する供給工程を6時間行い、ついで、散気用気体の供給を停止する停止工程を180秒間行うことを繰り返しながら、水処理試験を行った。
このような水処理試験を30日間継続した結果、散気管21における13箇所の散気穴23の全てにおいて、活性汚泥11による閉塞は確認されなかった。
散気管内21の内壁に若干汚泥が付着していたものの、汚泥出入穴24においては、活性汚泥11による閉塞は確認されなかった。
また、30日間の試験期間中に、固液分離用膜エレメント13への活性汚泥11の付着も確認されず、安定した膜濾過が継続できた。
【0037】
(実施例2)
散気穴23の直径をφ4mm(0.004m)として、散気穴23を13箇所形成した以外は、実施例1と全て同じ条件で水処理試験を実施した。
以上の数値を用いて式(I)より算出した管内圧力水頭ΔHは、6mm(0.006m)となり、散気管21の内径d
1の0.3倍の値であり、本発明における好ましい範囲内であった。
このような水処理試験を30日間継続した結果、散気管21における13箇所の散気穴23の全てにおいて、活性汚泥11による閉塞は確認されなかった。
散気管内21の内壁に若干汚泥が付着していたものの、汚泥出入穴24においては、活性汚泥11による閉塞は確認されなかった。
また、30日間の試験期間中に、固液分離用膜エレメント13への活性汚泥11の付着も確認されず、安定した膜濾過が継続できた。
【0038】
(実施例3)
散気管1本あたりに供給される散気用気体の流量Qを50L/min(8.3×10
−4m
3/sec)とした以外は、実施例1と同じ条件で水処理試験を実施した。
以上の数値を用いて式(I)より算出した管内圧力水頭ΔHは、12mm(0.012m)で、散気管21の内径d
1の0.6倍であり、本発明における好ましい範囲内であった。
このような水処理試験を30日間継続した結果、散気管21における5箇所の散気穴23の全てにおいて、活性汚泥11による閉塞は確認されず、汚泥出入穴24においても、活性汚泥11による閉塞は確認されなかった。また30日間の試験期間中に、固液分離用膜エレメント13への活性汚泥11の付着も確認されず、安定した膜濾過が継続できた。
【0039】
(実施例4)
散気管1本あたりに供給される散気用気体の流量Qを55L/min(9.16×10
−4m
3/sec)とした以外は、実施例1と同じ条件で水処理試験を実施した。
以上の数値を用いて式(I)より算出した管内圧力水頭ΔHは、15mm(0.015m)で、散気管21の内径d
1の0.75倍であり、本発明における好ましい範囲内であった。
このような水処理試験を30日間継続した結果、散気管21における5箇所の散気穴23の全てにおいて、活性汚泥11による閉塞は確認されず、汚泥出入穴24においても、活性汚泥11による閉塞は確認されなかった。また30日間の試験期間中に、固液分離用膜エレメント13への活性汚泥11の付着も確認されず、安定した膜濾過が継続できた。
【0040】
(比較例1)
直径φ5mm(0.005m)の散気穴23が散気管の周壁の下側に5箇所形成され、汚泥出入穴24が形成されていない散気管を用いた以外は、実施例1と全て同じ条件として、水処理試験を7日間行った結果、5箇所の散気穴23のうち3箇所において閉塞が確認された。また、散気管21の 内部において活性汚泥11の固着が確認された。また、試験終了後、閉塞が確認された散気穴23の上部に位置する中空糸膜に活性汚泥11の付着が確認され た。
【0041】
(比較例2)
散気用気体を連続して給気し停止しなかった以外は、実施例1と同じ条件として、水処理試験を10日間行った結果、5箇所の散気穴23のうち3箇所において閉塞が確認された。また、散気管21の内部において活性汚泥11の固着が確認された。また、 試験終了後、閉塞が確認された散気穴23の上部に位置する中空糸膜に活性汚泥11の付着が確認された。
【0042】
(比較例3)
散気管1本あたりに供給される散気用気体の流量Qを25L/min(4.17×10
−4m
3/sec)とした以外は、実施例1と同じ条件で水処理試験を実施した。
以上の数値を用いて式(I)より算出した管内圧力水頭ΔHは、3mm(0.003m)で、散気管21の内径d
1の0.15倍であり、本発明における好ましい範囲外であった。
このような水処理試験を15日間継続した結果、散気管21における5箇所の散気穴23のうち3箇所において閉塞が確認された。また、散気管21の内部において活性汚泥11の固着が確認された。また、試験終了後、閉塞が確認された散気穴23の上部に位置する中空糸膜に活性汚泥11の付着が確認された。
【0043】
(比較例4)
散気管1本あたりに供給される散気用気体の流量Qを70L/min(1.17×10
−3m
3/sec)とした以外は、実施例1と同じ条件で水処理試験を実施した。
以上の数値を用いて式(I)より算出した管内圧力水頭ΔHは、24mm(0.024m)で、散気管21の内径d
1の1.2倍であり、本発明における好ましい範囲外であった。
このような水処理試験を15日間継続した結果、散気管21における5箇所の散気穴23のうち4箇所において閉塞が確認された。また、散気管21の内部において活性汚泥11の固着が確認された。また、試験終了後、閉塞が確認された散気穴23の上部に位置する中空糸膜に活性汚泥11の付着が確認された。
【0044】
(比較例5)
図1の構成の排水処理装置において、水処理を行った。
固液分離用膜エレメント13には、ステラポアーSADF(商品名、三菱レイヨン・エンジニアリング(株)製、ポリフッ化ビニリデン製中空糸膜)を使用した。被処理水である活性汚泥11には、MLSS濃度として約9,500mg/Lの活性汚泥を用いた。
散気管21としては、内径d
1が8mm(
0.008m)で、長さ200mmの塩化ビニル樹脂製円管を使用し、直径φ1mm(0.001m)の散気穴23を散気管21の鉛直上部(散気管の軸線と交差する鉛直線上)に均等な間隔で形成した。散気管の軸方向の勾配は、1/100以内であった。なお、
図1では、散気穴23を6つ図示している が、本実施例1では、5つ形成した。
送気管26は散気管21の一端21aのみに接続し、送気管26が接続されていない側の他端21bの近傍に は、周壁の下部に、直径φ3mmの汚泥出入穴24を1つ形成した。ブロワ25としてはルーツブロワを用い、散気管1本あたりに供給される流量Qが 2L/min(3.3×10
−5m
3/sec)となるように、送気管26を通じて散気管21に散気用気体を供給した。散気用気体には空気を用い、散気用気体の密度ρ’は1.2kg/m
3、活性汚泥11の密度ρは1,000kg/m
3、重力加速度gは9.8m/sec
2とした。
以上の数値を用いて式(I)より算出した管内圧力水頭ΔHは、12mm(0.012m)となり、散気管21の内径d
1の1.5倍の値であり、本発明における好ましい範囲外であった。
そして、この装置において、散気用気体を供給する供給工程を6時間行い、ついで、散気用気体の供給を停止する停止工程を180秒間行うことを繰り返しながら、水処理試験を行った。
このような水処理試験を7日間継続した結果、散気管21における5箇所の散気穴23のうち4箇所において閉塞が確認された。また、散気管21の内部において活性汚泥11の固着が確認された。また、試験終了後、閉塞が確認された散気穴23の上部に位置する中空糸膜に活性汚泥11の付着が確認された。