特許第5871204号(P5871204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5871204
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】土木建築材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20160216BHJP
   C08L 5/16 20060101ALI20160216BHJP
   E04F 13/02 20060101ALI20160216BHJP
   E01C 23/14 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   C08L75/04
   C08L5/16
   E04F13/02 A
   E01C23/14
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-543616(P2015-543616)
(86)(22)【出願日】2015年4月14日
(86)【国際出願番号】JP2015061421
【審査請求日】2015年9月2日
(31)【優先権主張番号】特願2014-124286(P2014-124286)
(32)【優先日】2014年6月17日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】入江 博美
(72)【発明者】
【氏名】西村 紀夫
(72)【発明者】
【氏名】松本 高志
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−329982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 75/04
C08L 5/16
E01C 23/14
E04F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン樹脂(A)、並びに、アルキル化シクロデキストリン(B)を含有することを特徴とする土木建築材料。
【請求項2】
前記アルキル化シクロデキストリン(B)の含有量が、前記ウレタン樹脂(A)100質量部に対して0.1〜20質量部の範囲である請求項1記載の土木建築材料。
【請求項3】
前記ウレタン樹脂(A)が、イソシアネート基を有するものである請求項1記載の土木建築材料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の土木建築材料からなる道路用プライマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート補修材や道路用プライマー等に好適に使用できる土木建築材料に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の補修等の土木建築業界では、笹子トンネル崩落事故などを背景にインフラ補修に対する注目が集まっている。高度経済成長期以降に建設されたコンクリート構造物は、今後30年間に建築から50年を超えるため、コンクリート補修の需要は増加傾向にある。
【0003】
前記コンクリートの補修材としては、機械的強度等の性能で優位性のあるエポキシ樹脂が市場の約70%のシェアを占め、その他アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が残りの3割近くを占める。
【0004】
今後のコンクリート補修材に対する需要増加に伴い、更なる性能向上や工期短縮が必要とされる。特に雨天や下水道などの多湿な環境においてもコンクリートに対する良好な接着性が求められる。
【0005】
前記多湿な環境においてもコンクリートに対して良好な接着性を有するウレタン樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂及び酸化アルミニウム粉末を含有する組成物が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。しかしながら、前記組成物はウレタン樹脂に無機粉末を分散させているため、基体に塗布する際に抵抗感があったり塗布面にムラが生じたりする問題があり、また、ウレタン樹脂と無機粉末とが継時的に分離するため、貯蔵安定性にも改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−128479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、貯蔵安定性及び湿潤したコンクリートへの接着性に優れ、塗布する際に抵抗感がなく塗布面にムラ等も生じない作業性に優れる土木建築材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ウレタン樹脂(A)、並びに、シクロデキストリン及び/又はその誘導体(B)を含有することを特徴とする土木建築材料を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の土木建築材料は、貯蔵安定性に優れ、乾燥したコンクリートのみならず、湿潤したコンクリートに対しても優れた接着性(以下、「湿潤面接着性」と略記する。)を有するものである。また、塗布する際に抵抗感がなく塗布面にムラ等も生じないため作業性にも優れるものである。更に、本発明の土木建築材料は、作業性及び引張物性等の機械的強度にも優れるものである。
【0010】
従って、本発明の土木建築材料は、土木、建築、鉄道、道路、橋梁等の分野における被覆材;プライマー、補修材等として好適に使用することができ、コンクリート補修材、コンクリート防水材、道路用プライマー、道路用舗装材として特に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の土木建築材料は、ウレタン樹脂(A)、並びに、シクロデキストリン及び/又はその誘導体(B)を必須成分として含有するものである。
【0012】
前記ウレタン樹脂(A)としては、例えば、ポリオール(a1)、ポリイソシアネート(a2)及び必要に応じて鎖伸長剤(a3)を反応させて得られるものを用いることができる。
【0013】
前記ポリオール(a1)としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリイソプレンポリオール、ダイマージオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0014】
前記ポリオール(a1)の数平均分子量としては、機械的強度の点から、700〜5,000の範囲であることが好ましく、800〜4,000の範囲がより好ましい。なお、前記ポリオール(a1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0015】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0016】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0017】
前記ポリイソシアネート(a2)としては、例えば、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等の脂肪族/又は脂環式ポリイソシアネート;これらのアダクト体;ヌレート体;ビュレット体などを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0018】
前記鎖伸長剤(a3)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の脂肪族ポリオール化合物;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等の芳香族ポリオール化合物;水などを用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記ウレタン樹脂(A)の製造方法としては、公知慣用の方法を使用することができ、例えば、前記ポリイソシアネート(a2)が有するイソシアネート基と、前記ポリオール(a1)及び前記鎖伸長剤(a3)が有する水酸基の合計とのモル比[NCO/OH]が、0.3〜10の範囲であることが好ましく、0.5〜8の範囲であることが好ましく。
【0020】
なお、前記[NCO/OH]が1未満である場合には、水酸基を有するウレタン樹脂が得られ、また前記[NCO/OH]が1を超える場合には、イソシアネート基を有するウレタン樹脂が得られる。
【0021】
前記水酸基を有するウレタン樹脂を得る際の前記[NCO/OH]としては、0.3〜0.99の範囲であること好ましく、0.5〜0.95の範囲がより好ましい。
【0022】
前記イソシアネート基を有するウレタン樹脂を得る際の前記[NCO/OH]としては、1.01〜8の範囲であることが好ましく、1.05〜5の範囲がより好ましい。
【0023】
前記ウレタン樹脂(A)としては、湿気架橋により機械的強度がより一層向上する点から、イソシアネート基を有するウレタン樹脂を用いることが好ましい。なお、本発明においては、前記イソシアネート基を有するウレタン樹脂を用いても、貯蔵安定性に優れるものである。
【0024】
前記ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量としては、作業性、貯蔵安定性及び機械的強度の点から、1,000〜1,000,000の範囲であるであることが好ましく、1,500〜100,000の範囲であることがより好ましい。なお、前記ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は、前記ポリオール(a1)の数平均分子量と同様に測定して得られた値を示す。
【0025】
前記ウレタン樹脂(A)を製造する場合には、必要に応じて、溶媒を用いてもよい。
【0026】
前記溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、メチルセロソルブ、カルビトールアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、メタノール、ブタノール、水等を用いることができる。これらの溶媒は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記溶媒を用いる場合の使用量としては、前記ウレタン樹脂100質量部に対して、10〜1,000質量部の範囲であることが好ましく、30〜500質量部の範囲であることがより好ましい。
【0028】
前記シクロデキストリン及び/又はその誘導体(C)は、優れた貯蔵安定性、作業性及び湿潤面接着性を得るうえで必須の成分であり、例えば、シクロデキストリン;アルキル化シクロデキストリン、アセチル化シクロデキストリン、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン等のシクロデキストリンのグルコース単位の水酸基の水素原子を他の官能基で置換したものなどを用いることができる。また、シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体におけるシクロデキストリン骨格としては、6個のグルコース単位からなるα−シクロデキストリン、7個のグルコース単位からなるβ−シクロデキストリン、8個のグルコース単位からなるγ−シクロデキストリンのいずれも用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記ウレタン樹脂(A)との相溶性をより一層向上でき、湿潤面接着性をより一層向上できる点から、シクロデキストリン誘導体を用いることが好ましく、アルキル化シクロデキストリンを用いることがより好ましい。
【0029】
前記シクロデキストリン誘導体における他の官能基の置換度としては、前記ウレタン樹脂(A)との相溶性及び湿潤面接着性の点から、0.3〜14個/グルコースの範囲であることが好ましく、0.5〜8個/グルコースの範囲であることがより好ましい。
【0030】
前記アルキル化シクロデキストリンとしては、例えば、メチル−α−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、メチル−γ−シクロデキストリン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記アセチル化シクロデキストリンとしては、例えば、モノアセチル−α−シクロデキストリン、モノアセチル−β−シクロデキストリン、モノアセチル−γ−シクロデキストリン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記ヒドロキシアルキル化シクロデキストリンとしては、例えば、ヒドロキシプロピル−α−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記シクロデキストリン及び/又はその誘導体(C)の含有量としては、前記ウレタン樹脂(A)との相溶性、作業性、貯蔵安定性、機械的強度及び湿潤面接着性をより一層向上できる点から、前記ウレタン樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部の範囲であることが好ましく、0.3〜15質量部の範囲がより好ましく、0.5〜5質量部の範囲が更に好ましい。
【0034】
本発明の土木建築材料は、前記ウレタン樹脂(A)、並びに、シクロデキストリン及び/又はその誘導体(B)を必須成分として含有するが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0035】
前記その他の添加剤としては、例えば、硬化剤、硬化促進剤、石油ワックス、重合禁止剤、顔料、チキソ性付与剤、酸化防止剤、溶剤、充填剤、補強材、骨材、難燃剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0036】
以上の方法で得られる本発明の土木建築材料は、貯蔵安定性に優れ、乾燥したコンクリートのみならず、優れた湿潤面接着性を有するものである。また、塗布する際に抵抗感がなく塗布面にムラ等も生じないため作業性にも優れるものである。更に、本発明の土木建築材料は、作業性及び引張物性等の機械的強度にも優れるものである。
【0037】
従って、本発明のどの土木建築材料は、土木、建築、鉄道、道路、橋梁等の分野における被覆材;プライマー、補修材等として好適に使用することができ、コンクリート補修材、コンクリート防水材、道路用プライマー、道路用舗装材として特に好適に使用することができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0039】
[合成例1]ウレタン樹脂(A−1)の合成
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、空気導入口及び還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、[NCO/OH]が3.8となるように、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製「ミリオネートMR−200」)を322質量部、ポリプロピレングリコール(数平均分子量;1,000)を68質量部、トルエンを362質量部、酢酸エチルを362質量部仕込み、80℃で5時間反応を行い、ウレタン樹脂(A−1)を得た。
【0040】
[合成例2]ウレタン樹脂(A−2)の合成
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、空気導入口及び還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、[NCO/OH]が1.6となるように、トルエンジイソシアネート(三井化学株式会社製「コスモネートT−80」)を217質量部、ポリプロピレングリコール(数平均分子量;1,000)を156質量部、1,3−ブタンジオールを56質量部仕込み、80℃で4時間反応させ、その後、キシレンを285質量部、トルエンを285質量部添加・混合することでウレタン樹脂(A−2)を得た。
【0041】
[実施例1]
合成例1で得られたウレタン樹脂(A−1)100質量部とメチル化β−シクロデキストリン(株式会社シクロケム製)1質量部を混合し、土木建築材料を得た。
【0042】
[実施例2〜4、比較例1〜2]
用いるウレタン樹脂(A)とシクロデキストリン及び/又はその誘導体(B)との種類及び/又は量を表1に変更した以外は、実施例1と同様にして土木建築材料を得た。
【0043】
[比較例3]
合成例1で得られたウレタン樹脂(A−1)100質量部と活性アルミナ250質量部を混合し、土木建築材料を得た。
【0044】
[比較例4]
合成例1で得られたウレタン樹脂(A−2)100質量部とポルトランドセメント250質量部を混合し、土木建築材料を得た。
【0045】
[比較例5]
用いる活性アルミナの使用量を3質量部変更した以外は比較例3と同様にして土木建築材料を得た。
【0046】
[比較例6]
用いるポルトランドセメントの使用量を3質量部変更した以外は比較例4と同様にして土木建築材料を得た。
【0047】
[作業性の評価方法]
コンクリート舗装板上にローラーを用いて、実施例及び比較例で得られた土木建築材料を塗布した。その際、均一に抵抗なく塗り広げられる場合は「T」、抵抗感があったり、塗り斑が発生する場合は「F」と評価した。
【0048】
[貯蔵安定性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた土木建築材料を、500mLの缶に350g充填し、密封した後、50℃に保った乾燥機内に1週間放置した。その後、缶を開封し、沈降分離の有無を目視観察した。なお、沈降分離が生じていないものは「T」、生じているものは「F」と評価した。
【0049】
[湿潤面接着性の評価方法]
コンクリート舗装板を24時間水中に浸漬し取出した。その直後に表面をウエスで拭いた後、実施例及び比較例で得られた土木建築材料を0.2kg/mmの量で塗布し、その後24時間養生した。その後、建研式引張試験機(オックスジャッキ株式会社製「LPT−1000」)を使用して、JISK6849−1994に準拠して建研式接着強度(N/25mm)を測定した。また、その測定後の基材の破壊状態も目視で観察し、以下のように評価した。
「T」;接着強度が2N/25mm以上であり、かつ、基体破壊を起こしている。
「F」;接着強度が2N/25mm未満であり、かつ、界面剥離を起こしている。
【0050】
【表1】
【0051】
本発明の土木建築材料である実施例1〜4は、貯蔵安定性及び湿潤したコンクリートへの接着性に優れ、塗布する際に抵抗感がなく塗布面にムラ等も生じない作業性に優れることが分かった。
【0052】
一方、比較例1及び2は、シクロデキストリン及び/又はその誘導体(B)を含有しない態様であるが、湿潤面接着性が著しく不良であった。
【0053】
また、比較例3及び4は、シクロデキストリン及び/又はその誘導体(B)の代わりに、活性アルミナやポルトランドセメント等の無機粉末を用いた態様であるが、塗布する際に抵抗感があり塗布面にムラが生じてしまい作業性が不良であり、また貯蔵安定性も不良であった。
【0054】
比較例5及び6は、比較例3お及び4で用いる無機粉末の使用量を下げた態様であるが、湿潤面接着性が不良であった。
【要約】
本発明が解決しようとする課題は、貯蔵安定性及び湿潤したコンクリートへの接着性に優れ、塗布する際に抵抗感がなく塗布面にムラ等も生じない作業性に優れる土木建築材料を提供することである。本発明は、ウレタン樹脂(A)、並びに、シクロデキストリン及び/又はその誘導体(B)を含有することを特徴とする土木建築材料を提供するものである。本発明の土木建築材料は、貯蔵安定性に優れ、乾燥したコンクリートのみならず、湿潤したコンクリートに対しても優れた接着性を有するものである。また、塗布する際に抵抗感がなく塗布面にムラ等も生じないため作業性にも優れるものである。更に、本発明の土木建築材料は、作業性及び引張物性等の機械的強度にも優れるものである。