特許第5871212号(P5871212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5871212アジュバント活性を有する新規核酸およびその利用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871212
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】アジュバント活性を有する新規核酸およびその利用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20160216BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20160216BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20160216BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20160216BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160216BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   A61K31/713
   A61P37/04
   A61K39/39
   A61P43/00 107
   A61P43/00 105
   A61P35/00
【請求項の数】12
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2012-526535(P2012-526535)
(86)(22)【出願日】2011年7月27日
(86)【国際出願番号】JP2011067143
(87)【国際公開番号】WO2012014945
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2014年7月18日
(31)【優先権主張番号】特願2010-169407(P2010-169407)
(32)【優先日】2010年7月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】瀬谷 司
(72)【発明者】
【氏名】松本 美佐子
【審査官】 植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/065752(WO,A1)
【文献】 J. Immunol.,2008年,Vol.181, No.8,pp.5522-5529
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 − 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹状細胞のエンドソームに送達される一本鎖DNAと、TLR3活性化能を有する二本鎖RNAとを、少なくとも含むことを特徴とする核酸であって、前記一本鎖DNAが、配列番号1〜4、11〜14のいずれかに示される塩基配列またはその5塩基以上の長さを有する部分配列からなり、前記TLR3活性化能を有する二本鎖RNAが、配列番号5〜7、15〜20のいずれかに示される塩基配列およびその相補配列からなるRNAであることを特徴とする核酸
【請求項2】
前記一本鎖DNAが、15塩基以上の長さを有することを特徴とする請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
前記一本鎖DNAを構成するヌクレオチドの全部または一部が、ホスホロチオエート修飾されていることを特徴とする請求項1または2に記載の核酸。
【請求項4】
前記一本鎖DNAと、前記二本鎖RNAとが、リンカー配列を介して連結していることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の核酸。
【請求項5】
前記一本鎖DNAと、前記二本鎖RNAとが、直接連結していることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の核酸。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかに記載の核酸を含有する医薬組成物。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかに記載の核酸を有効成分として含有するIFN−β発現促進剤。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかに記載の核酸を有効成分として含有するNK細胞活性化剤。
【請求項9】
請求項1〜のいずれかに記載の核酸を有効成分として含有する細胞障害性T細胞誘導剤。
【請求項10】
請求項1〜のいずれかに記載の核酸を有効成分として含有する免疫賦活化剤。
【請求項11】
請求項1〜のいずれかに記載の核酸を有効成分として含有するワクチンアジュバント剤。
【請求項12】
請求項1〜のいずれかに記載の核酸を有効成分として含有する癌治療薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アジュバント活性を有する新規核酸および当該核酸を含有する医薬組成物、IFN−β発現促進剤、NK細胞活性化剤、細胞障害性T細胞誘導剤、免疫賦活化剤、ワクチンアジュバント剤および癌治療薬に関するものである。
【背景技術】
【0002】
癌の治療法の一つに、患者自身の癌細胞に対する免疫力を亢進させて癌の退縮を誘導する、いわゆる癌免疫療法がある。この癌免疫療法は、癌抗原としてペプチドワクチンを投与する方法が主流であるが、有効率を上げる方法として、癌抗原の投与と同時に、樹状細胞を活性化させるアジュバントを同時投与する方法が提唱されている。
【0003】
本発明者らは、癌免疫療法に用いるアジュバントについて研究を進めており、麻疹ウイルス由来のdiRNA(defective interference RNA)が、アジュバントの機能を有することを見出し、特許文献1で開示している。具体的には、当該diRNAは、ヒト細胞に対してIFN−β発現を誘導し、NK細胞のNK活性を増強させ、B16メラノーマ細胞を移植した担癌マウスに対して癌抗原エピトープと共に投与すると顕著な癌の退縮効果を示したことを開示している。しかし、細胞外の当該diRNAは、エンドソーム上のTLR3(Toll様受容体3、Toll‐like receptor 3)に到達しないので、細胞外に投与した場合にはアジュバント活性が十分でないという問題が見出された。一方、TLR3の合成リガンドとして広く知られているポリICは、細胞外に投与しても強いアジュバント活性を有するが、サイトカインの過剰産生(サイトカインストーム)等の副作用の懸念があり、臨床応用ができないという問題を有している。
【0004】
他方、本発明者らは、ポリICのTLR3を介したIFN−β発現誘導を阻害するオリゴDNAを見出し、当該オリゴDNAは、ポリICと共通のレセプターを介して細胞内に取り込まれ、取り込まれたオリゴDNAの一部がTLR3に局在することを報告している(非特許文献1)。しかし、非特許文献1には当該オリゴDNAが他の核酸を連結してエンドソーム上のTLR3に送達できることを示唆する記載はなく、非特許文献1に記載のオリゴDNAが、特許文献1に記載のステムループ構造を有するdiRNAを連結して、エンドソーム上のTLR3に送達可能か否かは予測できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/065752号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】The Journal of Immunology, 2008, 181: 5522-5529
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、副作用が少なく、エンドソーム上のTLR3に到達可能であり、強いアジュバント活性を有する核酸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の各発明を包含する。
[1]樹状細胞のエンドソームに送達される一本鎖DNAと、TLR3活性化能を有する二本鎖RNAとを、少なくとも含むことを特徴とする核酸。
[2]前記一本鎖DNAが、以下の(a)〜(d)のいずれかである前記[1]に記載の核酸。
(a)TLR9リガンド活性を有するBタイプまたはCタイプのCpG−DNA
(b)上記(a)においてCpGをGpCに変換したDNA
(c)上記(b)においてGpCをTpCに変換したDNA
(d)上記(b)においてGpCをCpCに変換したDNA
[3]前記一本鎖DNAが、配列番号1〜4、11〜14のいずれかに示される塩基配列またはその部分配列からなることを特徴とする前記[2]に記載の核酸。
[4]前記一本鎖DNAが、15塩基以上の長さを有することを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の核酸。
[5]前記一本鎖DNAを構成するヌクレオチドの全部または一部が、ホスホロチオエート修飾されていることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の核酸。
[6]TLR3活性化能を有する二本鎖RNAが、RNAウイルス由来のRNA配列を有することを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれかに記載の核酸。
[7]前記RNAウイルスが、麻疹ウイルス、センダイウイルス、RSウイルス、C型肝炎ウイルス、ポリオウイルスおよびロタウイルスから選択されることを特徴とする前記[6]に記載の核酸。
[8]TLR3活性化能を有する二本鎖RNAが、配列番号5〜7、15〜20のいずれかに示される塩基配列およびその相補配列からなるRNAであることを特徴とする前記[7]に記載の核酸。
[9]TLR3活性化能を有する二本鎖RNAが、40〜200塩基対の長さを有することを特徴とする前記[1]〜[8]のいずれかに記載の核酸。
[10]前記一本鎖DNAと、前記二本鎖RNAとが、リンカー配列を介して連結していることを特徴とする前記[1]〜[9]のいずれかに記載の核酸。
[11]前記一本鎖DNAと、前記二本鎖RNAとが、直接連結していることを特徴とする前記[1]〜[9]のいずれかに記載の核酸。
[12]前記[1]〜[11]のいずれかに記載の核酸を含有する医薬組成物。
[13]前記[1]〜[11]のいずれかに記載の核酸を有効成分として含有するIFN−β発現促進剤。
[14]前記[1]〜[11]のいずれかに記載の核酸を有効成分として含有するNK細胞活性化剤。
[15]前記[1]〜[11]のいずれかに記載の核酸を有効成分として含有する細胞障害性T細胞誘導剤。
[16]前記[1]〜[11]のいずれかに記載の核酸を有効成分として含有する免疫賦活化剤。
[17]前記[1]〜[11]のいずれかに記載の核酸を有効成分として含有するワクチンアジュバント剤。
[18]前記[1]〜[11]のいずれかに記載の核酸を有効成分として含有する癌治療薬。
[19]哺乳動物に対して、前記[1]〜[11]のいずれかに記載の核酸の有効量を投与することを特徴とする癌の治療方法。
[20]癌治療薬を製造するための、前記[1]〜[11]のいずれかに記載の核酸の使用。
[21]癌の治療に使用するための、前記[1]〜[11]のいずれかに記載の核酸。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、副作用が少なく、エンドソーム上のTLR3に到達可能であり、強いアジュバント活性を有する核酸を提供することができる。本発明の核酸は、IFN−β発現促進し、NK細胞活性化し、細胞障害性T細胞誘導することができるので、免疫賦活化剤、ワクチンアジュバント剤として有用性が高い。また、単独投与で強い腫瘍退縮効果を奏するため、癌治療薬として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の核酸によるIFN−βプロモーター活性化を、FCSを含まない培地を用いて評価した結果を示す図である。
図2】本発明の核酸によるIFN−βプロモーター活性化を、FCSを含む培地を用いて評価した結果を示す図である。
図3】本発明の核酸による移植担癌の退縮効果を評価した試験(1回目)の結果を示す図であり、(a)は蒸留水(DW)投与群、(b)はポリIC投与群、(c)は核酸2投与群、(d)は核酸3投与群の結果である。
図4】本発明の核酸による移植担癌の退縮効果を評価した試験(2回目)の結果を示す図であり、(a)は蒸留水(DW)投与群、(b)はポリIC投与群、(c)は核酸1投与群、(d)は核酸2投与群、(e)は核酸1のエンドソーム移行配列(核酸1ODN)投与群の結果である。
図5】本発明の核酸において二本鎖RNAの長さがIFN−βプロモーター活性化に及ぼす影響を評価した結果を示す図である。
図6(A)】本発明の核酸においてエンドソーム移行配列(一本鎖DNA)の塩基配列がIFN−βプロモーター活性化に及ぼす影響を、FCSを含む培地を用いて評価した結果を示す図である。
図6(B)】本発明の核酸においてエンドソーム移行配列(一本鎖DNA)の塩基配列がIFN−βプロモーター活性化に及ぼす影響を、FCSを含まない培地を用いて評価した結果を示す図である。
図7】本発明の核酸においてエンドソーム移行配列(一本鎖DNA)の長さがIFN−βプロモーター活性化に及ぼす影響を、FCSを含まない培地を用いて評価した結果を示す図である。
図8(A)】本発明の核酸によるRIG−I/MDA5経路によるIFN−βプロモーター活性化を、FCSを含む培地を用いて評価した結果を示す図である。
図8(B)】本発明の核酸によるRIG−I/MDA5経路によるIFN−βプロモーター活性化を、FCSを含む培地を用いて評価した結果を示す図である。
図9(A)】本発明の核酸によるIL−6産生を、野生型マウスおよびTICAM−1ノックアウトマウス由来の脾臓樹状細胞を用いてin vitroで評価した結果を示す図である。
図9(B)】本発明の核酸によるTNF−α産生を、野生型マウスおよびTICAM−1ノックアウトマウス由来の脾臓樹状細胞を用いてin vitroで評価した結果を示す図である。
図9(C)】本発明の核酸によるIFN−β産生を、野生型マウスおよびTICAM−1ノックアウトマウス由来の脾臓樹状細胞を用いてin vitroで評価した結果を示す図である。
図10(A)】本発明の核酸によるIL−6産生を、野生型マウスおよびTICAM−1ノックアウトマウス由来の骨髄樹状細胞を用いてin vitroで評価した結果を示す図である。
図10(B)】本発明の核酸によるTNF−α産生を、野生型マウスおよびTICAM−1ノックアウトマウス由来の骨髄樹状細胞を用いてin vitroで評価した結果を示す図である。
図11(A)】本発明の核酸によるin vivoサイトカイン産生の評価において、核酸2によるTNF−α産生の結果を示す図である。
図11(B)】本発明の核酸によるin vivoサイトカイン産生の評価において、核酸2によるIL−6産生の結果を示す図である。
図11(C)】本発明の核酸によるin vivoサイトカイン産生の評価において、核酸22、核酸23によるTNF−α産生の結果を示す図である。
図11(D)】本発明の核酸によるin vivoサイトカイン産生の評価において、核酸22、核酸23によるIL−6産生の結果を示す図である。
図11(E)】本発明の核酸によるin vivoサイトカイン産生の評価において、核酸22、核酸23によるIL−10産生の結果を示す図である。
図12】本発明の核酸による移植担癌の退縮効果の評価において、B16メラノーマ担癌野生型マウスに対する退縮効果の結果を示す図である。
図13】本発明の核酸による移植担癌の退縮効果の評価において、EL4担癌野生型マウスに対する退縮効果の結果を示す図である。
図14(A)】本発明の核酸による移植担癌の退縮効果の評価において、B16メラノーマ担癌野生型マウスに対する退縮効果の結果を示す図である。
図14(A)】本発明の核酸による移植担癌の退縮効果の評価において、B16メラノーマ担癌TICAM−1ノックアウトマウスに対する退縮効果の結果を示す図である。
図15】本発明の核酸による移植担癌の退縮効果の評価において、B16メラノーマ担癌野生型マウスに対し、in vivoトランスフェクション試薬を用いて本発明の核酸を腫瘍近傍に皮下投与した場合の退縮効果の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔本発明の核酸〕
本発明の核酸は、樹状細胞のエンドソームに送達される一本鎖DNAと、TLR3活性化能を有する二本鎖RNAとを、少なくとも含む核酸であればよい。
樹状細胞のエンドソームに送達される一本鎖DNAは特に限定されず、樹状細胞の外部から細胞内に取り込まれ、エンドソームに達することができるものであればよい。好ましい前記一本鎖DNAとして、以下の(a)〜(d)が挙げられる。
(a)TLR9リガンド活性を有するBタイプまたはCタイプのCpG−DNA
(b)上記(a)においてCpGをGpCに変換したDNA
(c)上記(b)においてGpCをTpCに変換したDNA
(d)上記(b)においてGpCをCpCに変換したDNA
CpG−DNAは、細菌やウイルスの遺伝子に特有のCpGモチーフを有するDNAである。BタイプのCpG−DNAはB細胞の反応を強く誘導する作用を有し、CタイプのTLR9リガンドはBタイプの作用とAタイプの作用(NK細胞や形質細胞様樹状細胞の反応を強く誘導)を併せ持つ。上記(a)に該当する一本鎖DNAとしては、例えば、ODN 2006、ODN M362、ODN 2395、ODN 1668、ODN 1826、ODN 2007(いずれも製品名、InvivoGen社製)などが挙げられる。また、上記(a)においてCpGをGpCに変換したDNAも樹状細胞のエンドソームに送達されることが、本発明者らにより確認されている。さらに、上記(b)においてGpCをTpCまたはCpCに変換したDNAもエンドソームに送達されることが、本発明者らにより確認されている。
【0012】
樹状細胞のエンドソームに送達される一本鎖DNAとして好ましくは、表1に記載の配列番号1〜4に示される塩基配列からなる一本鎖DNAが挙げられる。
【表1】
【0013】
さらに、配列番号2においてGpCをTpCに変換したDNA(配列番号11)、GpCをCpCに変換したDNA(配列番号12)、配列番号4においてGpCをTpCに変換したDNA(配列番号13)、GpCをCpCに変換したDNA(配列番号14)なども、樹状細胞のエンドソームに送達される一本鎖DNAとして好ましく使用することができる。
【0014】
樹状細胞のエンドソームに送達される一本鎖DNAの長さは特に限定されず、5塩基以上であれば目的の効果を奏することが確認されている。好ましくは約15塩基以上である。上限も特に限定されないが、約25塩基程度の長さがあれば、目的の効果を奏すると考えられる。したがって、樹状細胞のエンドソームに送達される一本鎖DNAの長さとしては、約5〜30塩基が好ましく、約15〜25塩基がより好ましい。例えば、配列番号1〜4、11〜14のいずれかに示される塩基配列の一部(部分配列)からなるDNAであって、5塩基以上、好ましくは15塩基以上の長さを有する一本鎖DNAを好適に用いることができる。
【0015】
樹状細胞のエンドソームに送達される一本鎖DNAは、ホスホロチオエート修飾(「S化修飾」とも称される)されていることが好ましい。ホスホロチオエート修飾は前記一本鎖DNAの一部でもよく、全部でもよい。全部がホスホロチオエート修飾されていることがより好ましい。ホスホロチオエート修飾により、ヌクレアーゼ耐性を示すとともに、エンドソームへの送達性が向上する。
【0016】
TLR3活性化能を有する二本鎖RNAは、TLR3活性化能を有する限り限定されないが、RNAウイルス由来のRNA配列を有することが好ましい。RNAウイルスは特に限定されず、マイナス鎖一本鎖RNAウイルス、プラス鎖一本鎖RNAウイルス、二本鎖RNAウイルスのいずれであってもよい。具体的には、麻疹ウイルス、センダイウイルス、RSウイルス、C型肝炎ウイルス、ポリオウイルス、ロタウイルスなどが挙げられ、好ましくは、マイナス鎖一本鎖RNAウイルスの麻疹ウイルス、センダイウイルスおよびRSウイルスであり、より好ましくは、麻疹ウイルス、センダイウイルスおよびRSウイルスのワクチン株である。
【0017】
TLR3活性化能を有する二本鎖RNAの長さは特に限定されないが、約40塩基対以上が好ましく、約60塩基対以上がより好ましく、約90塩基対がさらに好ましい。上限も特に限定されないが、約150塩基対程度の長さがあれば、目的の効果を奏すると考えられる。したがって、TLR3活性化能を有する二本鎖RNAの長さとしては、約40〜200塩基対が好ましく、約60〜180塩基対がより好ましく、約90〜150塩基対がさらに好ましい。
【0018】
TLR3活性化能を有する二本鎖RNAとして好ましくは、配列番号5〜7、15〜20に示される塩基配列およびその相補配列からなる二本鎖RNAが挙げられる。配列番号5〜7、15〜20に示される塩基配列は、馴化麻疹ウイルス株であるEdmonston(ED)株由来のdiRNAの塩基配列(配列番号8)の一部を有している。配列番号5に示される塩基配列は、配列番号8の第1017位〜第1074位の塩基配列である。配列番号6に示される塩基配列は、配列番号8の第1077位〜第1152位の5’末端にシトシンを3個付加した塩基配列である。配列番号7に示される塩基配列は、配列番号8の第1017位〜第1152位の5’末端にシトシンを3個付加した塩基配列である。配列番号15に示される塩基配列は、配列番号8の第1077位〜第1152位の3’末端にシトシンを3個付加した塩基配列である。配列番号16に示される塩基配列は、配列番号8の第1017位〜第1152位の3’末端にシトシンを3個付加した塩基配列である。配列番号17に示される塩基配列は、配列番号8の第1057位〜第1152位の3’末端にシトシンを3個付加した塩基配列である。配列番号18に示される塩基配列は、配列番号8の第1046位〜第1152位の3’末端にシトシンを3個付加した塩基配列である。配列番号19に示される塩基配列は、配列番号8の第1037位〜第1152位の3’末端にシトシンを3個付加した塩基配列である。配列番号20に示される塩基配列は、配列番号8の第1017位〜第1089位の塩基配列である。
【0019】
本発明の核酸は、樹状細胞のエンドソームに送達される一本鎖DNAおよびTLR3活性化能を有する二本鎖RNAのみからなる核酸でもよく、これら以外の核酸(以下「他の核酸」という。)を含むものでもよい。一本鎖DNAは二本鎖RNAのいずれの鎖に連結していてもよい。一本鎖DNAと二本鎖RNAは、直接連結していてもよく、他の核酸を介して連結していてもよい。また、DNAの3’側がRNAの5’側と結合していてもよく、DNAの5’側がRNAの3’側と結合していてもよいが、DNAの3’側がRNAの5’側と結合していることが好ましい。
【0020】
本発明の核酸が、樹状細胞のエンドソームに送達される一本鎖DNA、TLR3活性化能を有する二本鎖RNA、およびこれら以外の核酸(以下「他の核酸」という。)からなる場合、他の核酸は、一本鎖または二本鎖DNAでもよく、一本鎖または二本鎖RNAでもよく、DNAとRNAのハイブリッドでもよい。好ましくは二本鎖RNAまたはDNAとRNAのハイブリッドである。樹状細胞のエンドソームに送達される一本鎖DNAとTLR3活性化能を有する二本鎖RNAとが直接連結している場合、他の核酸は、いずれか一方の末端に連結していてもよく、両末端にそれぞれ連結していてもよいが、DNAの3’側またはRNAの3’側に連結していることが好ましい。また、本発明の核酸の機能を損なわない限りにおいて、他の核酸の長さ(塩基数)は限定されない。
【0021】
また、樹状細胞のエンドソームに送達される一本鎖DNAおよびTLR3活性化能を有する二本鎖RNAは、他の核酸を介して連結していてもよい。すなわち、リンカー配列を介して連結していてもよい。リンカー配列は一本鎖または二本鎖DNAでもよく、一本鎖または二本鎖RNAでもよく、DNAとRNAのハイブリッドでもよい。好ましくは二本鎖RNAまたはDNAとRNAのハイブリッドである。また、本発明の核酸の機能を損なわない限りにおいて、リンカー配列の長さ(塩基数)は限定されない。リンカー配列以外に、いずれか一方の末端または両末端に、さらに他の核酸を連結していてもよい。この場合、RNAの3’側に他の核酸を連結していることが好ましい。
【0022】
本発明の核酸の作製方法は特に限定されず、公知の方法を用いて作製することができる。例えば、一般的な核酸の化学合成法を好ましく用いることができる。また、RNA鎖は、公知のin vitro転写法を好ましく用いることができる。具体的には、DNAとRNAとが連結した鎖と、RNAの相補鎖を別々に合成し、その後、適切な条件で二本鎖化することにより、本発明の核酸を作製できる。本発明の核酸が他の核酸を含む場合も、同様に作製することができる。
【0023】
〔本発明の核酸の用途〕
本発明の核酸は、樹状細胞のエンドソームに送達され、TLR3を活性化することができるので、種々の免疫反応を増強することができる。具体的には、IFN−β発現を促進し、NK細胞を活性化し、細胞障害性T細胞を誘導することができる。したがって、本発明は、上記本発明の核酸を有効成分として含有するIFN−β発現促進剤、NK細胞活性化剤、細胞障害性T細胞誘導剤、免疫賦活化剤、ワクチンアジュバント剤を提供する。また、癌細胞を皮下に移植して腫瘍を形成させたマウスに対して本発明の核酸を単独で投与したところ、腫瘍を退縮させることができたことから、上記本発明の核酸は、癌治療に有用であることが明らかとなった。したがって、本発明は、上記本発明の核酸を有効成分として含有する癌治療薬を提供する。
【0024】
さらに、本発明の核酸を有効成分とする上記の各医薬は、副作用が少ない点で非常に有用である。TLR3の合成リガンドであるポリICは、TLR3以外に細胞内RNAセンサーであるRIG/MDA5を活性化するためサイトカインストームを引き起こすと考えられるが、本発明の核酸に含まれるTLR3活性化能を有する二本鎖RNAは、ポリICと異なり、TLR3下流のTICAM−1を介するシグナル伝達系を選択的に活性化するので、サイトカインストームを引き起こす懸念がないからである。
【0025】
本発明の医薬組成物は、上記本発明の核酸および薬学的に許容される担体または添加剤を適宜配合して製剤化することができる。具体的には錠剤、被覆錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤等の経口剤、注射剤、輸液、坐剤、軟膏、パッチ剤等の非経口剤とすることができる。担体または添加剤の配合割合については、医薬品分野において通常採用されている範囲に基づいて適宜設定すればよい。配合できる担体または添加剤は特に制限されないが、例えば、水、生理食塩水、その他の水性溶媒、水性または油性基剤等の各種担体;賦形剤、結合剤、pH調整剤、崩壊剤、吸収促進剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、香料等の各種添加剤が挙げられる。
【0026】
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。
【0027】
このようにして得られる製剤は、例えば、ヒトや他の哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。なお、本発明の医薬組成物をワクチンアジュバント剤として投与する場合は、ワクチンとして作用する抗原と共に投与することを要する。
本発明の医薬組成物の投与量、投与頻度は、投与目的、投与対象の年齢、体重、性別、既往歴、投与方法などを考慮して、適宜設定することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
〔実施例1:核酸の合成(1)〕
表2に示す10種類の核酸を、株式会社ジーンデザインまたは筑波技術産業総合研究所に委託して合成した。すなわち、RNA部分の化学合成にはtBDMS RNA amiditeを、DNA部分の化学合成には一般的なDNA amiditeを、S化(ホスホロチオエート)部分はPADSを使用した。合成方法は固相担体を用いたホスホロアミダイト法(Scaringe, S. A.et al, ;J Am Chem 1998;120:11820-11821)を基本とし、最適化したパラメーターを用いて実行した。合成機は長鎖合成に至適化されたns−8核酸合成機(ジーンデザイン製)を用いた。合成完了後、一般的な方法を用いて塩基部分および2’位に存在する保護基を除去し、逆相HPLCにて精製を行った後脱塩し、各一本鎖を得た。各一本鎖を適切な濃度に調整し、終濃度4.1mMのTris−HCl(pH8.0)および8.3mMのNaClを二本鎖化溶液として加え、最適化した温度条件で加温した後、−1℃/minの温度グラジエントを用い30℃まで徐冷することにより、二本鎖化を達成し、凍結乾燥することで目的の核酸を得た。二本鎖化は12%の非変性ゲル電気泳動を用い、一本鎖RNAの泳動位置および二本鎖マーカーの泳動位置から相対評価した。また、表2に示す10種類の核酸のうちの一部は、T7 transcription kit(EPICENTRE)を用いて合成したin vitro transcribed RNAを用いて二本鎖RNAを調製した。
【0030】
【表2】
【0031】
〔実施例2:IFN−βプロモーター活性化の評価〕
HEK293細胞(2×105cells/well)を24wellの培養プレートに播種した。FuGENE HD(Roche Diagnostics)を用いて、ヒトTLR3発現ベクター(100ng/well)を、レポータープラスミドp−125(100ng/well)および内部コントロールベクターであるphRL−TK(5ng/well、Promega)と共に、HEK293細胞にトランスフェクションした。レポータープラスミドp−125は、ヒトIFN−βプロモーター(-125〜+19)を含むものであり、東京大学の谷口博士から分与を受けた。また、ヒトTLR3を発現させないコントロール細胞も同時に作製した。トランスフェクションに供するトータルDNA量は、空ベクターを添加することによりいずれも500ng/wellとした。培地には加熱不活化した10%ウシ胎児血清(FCS)および抗生物質を含むダルベッコ改変イーグル培地−低グルコース(Invitrogen)を用いた。
【0032】
トランスフェクションから24時間後に、FCSを含まない培地またはFCSを含む培地に交換し、10μg/mLとなるように核酸を添加してさらに6時間培養した。被験核酸として、表2に記載の核酸8、核酸10およびFITC標識した核酸8、核酸8のエンドソーム移行配列、核酸10のエンドソーム移行配列、核酸8および10の二本鎖RNA部分を用いた。陽性対照にはポリICを用いた。細胞を洗浄した後、溶解バッファー(Promega)を用いて細胞を溶解し、dual−luciferase reporter assay kit(Promega)を用いてホタルルシフェラーゼ活性およびウミシイタケルシフェラーゼ活性を定量した。ホタルルシフェラーゼ活性は、ウミシイタケルシフェラーゼ活性で標準化し、相対的な誘導強度として表した。なお、すべてのアッセイはトリプリケートで行った。
【0033】
FCSを含まない培地を用いて行った結果を図1に示した。図1から明らかなように、TLR3発現細胞に対して核酸8、核酸10を添加した場合、ポリICを添加した場合より強い誘導強度を示した。また、FITC標識は、誘導強度に影響を及ぼさなかった。一方、核酸8のエンドソーム移行配列(図中、核酸8ODN)、核酸10のエンドソーム移行配列(図中、核酸10ODN)、核酸8および10の二本鎖RNA部分(図中、二本鎖RNA)を添加した場合は、効果を示さなかった。この結果から、本願発明の核酸(核酸8、核酸10)は、TLR3を介してIFN−βプロモーターを活性化することが明らかとなった。
【0034】
FCSを含む培地を用いて行った結果を図2に示した。FCSにはRNaseが混入しているため活性の低下が懸念されたが、多少の低下傾向が認められたものの、図1に示した結果と同様に、核酸8および核酸10は、TLR3発現細胞のIFN−βプロモーターを活性化した。
【0035】
〔実施例3:移植担癌の退縮効果(1)〕
C57BL/6Jマウスの側腹部皮下にB16メラノーマ細胞(B16D8)を6×10cells/200μL移植し、腫瘍の大きさ(縦×横×0.4)を経時的に測定した。細胞移植後12日目に被験物質または対照物質を腹腔内投与し、腫瘍の退縮効果を評価した。なお、B16メラノーマ細胞はMHCクラスI分子を発現していないため、キラーT細胞の活性化が誘導されず、樹状細胞のTLR3を介したシグナルによって増強されたNK細胞の活性によってのみB16メラノーマ腫瘍が退縮する。
【0036】
試験は2回行った。1回目の試験では、被験物質として表2に記載の核酸2および核酸3を用いた。2回目の試験では、被験物質として表2に記載の核酸1、核酸4、ならびに核酸1のエンドソーム移行配列(核酸4のエンドソーム移行配列も同じ)を用いた。両試験とも陰性対照群には蒸留水(DW)を、陽性対照群にはポリICを投与した。核酸の投与量は150μg/匹とした。
【0037】
1回目の試験結果を図3(a)〜(d)に示した。(a)は蒸留水(DW)投与群(3匹)、(b)はポリIC投与群(2匹)、(c)は核酸2投与群(3匹)、(d)は核酸3投与群(3匹)の結果である。図3(a)〜(d)から明らかなように、本願発明の核酸(核酸2、核酸3)は、ポリIC投与群と同等の腫瘍退縮効果を示した。
【0038】
2回目の試験結果を図4(a)〜(e)に示した。(a)は蒸留水(DW)投与群(2匹)、(b)はポリIC投与群(3匹)、(c)は核酸1投与群(3匹)、(d)は核酸2投与群(3匹)、(e)は核酸1のエンドソーム移行配列(核酸1ODN)投与群(3匹)の結果である。図4(a)〜(e)から明らかなように、本願発明の核酸(核酸1、核酸4)は、ポリIC投与群より劣るものの、蒸留水(DW)投与群と比較して顕著な腫瘍退縮効果を示した。一方、(e)核酸1のエンドソーム移行配列のみの投与では、腫瘍退縮効果は認められなかった。
【0039】
〔実施例4:核酸の合成(2)〕
表3および表4に示す21種類の核酸を、株式会社ジーンデザインまたは筑波技術産業総合研究所に委託して合成した。合成方法は、実施例1と同様である。
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
〔実施例5:IFN−βプロモーター活性化〕
レポータープラスミドp−125がトランスフェクションされ、かつヒトTLR3を発現するHEK293細胞、およびレポータープラスミドp−125がトランスフェクションされ、ヒトTLR3を発現しないHEK293細胞を用いて以下の実験を行った(実施例2参照)。
【0043】
(1)二本鎖RNAの長さによるIFN−βプロモーター活性化能の検討
実施例2と同様に、各種ベクターのトランスフェクションから24時間後にFCSを含まない培地に交換し、10μg/mLとなるように被験核酸を添加してさらに6時間培養した。細胞を洗浄した後、溶解バッファー(Promega)を用いて細胞を溶解し、dual−luciferase reporter assay kit(Promega)を用いて、実施例2と同様にルシフェラーゼ活性を定量した。被験核酸として、表3および表4に記載の核酸11(二本鎖RNA:79塩基対)、核酸12(二本鎖RNA:99塩基対)、核酸13(二本鎖RNA:110塩基対)、核酸14(二本鎖RNA:119塩基対)、核酸19(二本鎖RNA:99塩基対)、核酸20(二本鎖RNA:110塩基対)、核酸21(二本鎖RNA:119塩基対)および核酸22(二本鎖RNA:139塩基対)を用いた。陽性対照にはポリICを用いた。
【0044】
結果を図5に示した。図5から明らかなように、in vitroにおけるTLR3依存的IFN−βプロモーター活性化には、約90塩基対以上の長さの二本鎖RNAが必要であることが示された。
【0045】
(2)エンドソーム移行配列の塩基配列によるIFN−βプロモーター活性化能の検討
実施例2と同様に、各種ベクターのトランスフェクションから24時間後にFCSを含まない培地またはFCSを含む培地に交換し、10μg/mLとなるように被験核酸を添加してさらに6時間培養した。細胞を洗浄した後、溶解バッファー(Promega)を用いて細胞を溶解し、dual−luciferase reporter assay kit(Promega)を用いて、実施例2と同様にルシフェラーゼ活性を定量した。被験核酸として、表3および表4に記載の核酸16(一本鎖DNAの塩基配列:配列番号4)、核酸22(一本鎖DNAの塩基配列:配列番号2)、核酸26(一本鎖DNAの塩基配列:配列番号11)および核酸27(一本鎖DNAの塩基配列:配列番号14)を用いた。陽性対照にはポリICを用いた。また、エンドソーム移行配列のみ(配列番号4の一本鎖DNA(図中DNA4)、配列番号11の一本鎖DNA(図中DNA11)、配列番号14の一本鎖DNA(図中DNA14))も使用した。
【0046】
結果を図6(A)、(B)に示した。(A)はFCSを含む培地を用いた結果、(B)はFCSを含まない培地を用いた結果である。いずれの培地においても、配列番号2のGpCをTpCに変換した一本鎖DNA(配列番号11)を有する核酸26、配列番号4のGpCをCpCに変換した一本鎖DNA(配列番号14)を有する核酸27は、TLR3依存的IFN−βプロモーター活性化能を有することが示された。一方、エンドソーム移行配列(一本鎖DNA)のみではIFN−βプロモーターを活性化させなかった。
【0047】
(3)エンドソーム移行配列の長さによるIFN−βプロモーター活性化能の検討
実施例2と同様に、各種ベクターのトランスフェクションから24時間後にFCSを含まない培地に交換し、10μg/mLとなるように被験核酸を添加してさらに6時間培養した。細胞を洗浄した後、溶解バッファー(Promega)を用いて細胞を溶解し、dual−luciferase reporter assay kit(Promega)を用いて、実施例2と同様にルシフェラーゼ活性を定量した。被験核酸として、表4に記載の核酸28(一本鎖DNAの長さ:5塩基)、核酸29(一本鎖DNAの長さ:10塩基)、核酸30(一本鎖DNAの長さ:15塩基)、核酸31(一本鎖DNAの長さ:20塩基)および核酸22(一本鎖DNAの長さ:25塩基)を用いた。陽性対照にはポリICを用いた。
【0048】
結果を図7に示した。図7から明らかなように、エンドソーム移行配列(一本鎖DNA)の長さが5塩基でもin vitroにおけるTLR3依存的IFN−βプロモーター活性化能を有するが、エンドソーム移行配列(一本鎖DNA)の長さが15塩基以上であることが好ましく、20塩基以上であることがより好ましいことが示された。
【0049】
(4)RIG−I/MDA5経路によるIFN−βプロモーター活性化能の検討
レポータープラスミドp−125がトランスフェクションされ、かつヒトTLR3を発現しないHEK293細胞(24wellプレート)に、被験核酸を1μg/wellとなるようLipofectamine(Invitrogen)で導入し、FCSを含む培地で24時間培養した。細胞を洗浄した後、溶解バッファー(Promega)を用いて細胞を溶解し、dual−luciferase reporter assay kit(Promega)を用いて、実施例2と同様にルシフェラーゼ活性を定量した。実験は2回行った。1回目の実験では、被験核酸として、表2および表3に記載の核酸1、核酸2、核酸3、核酸7、核酸11、核酸15、核酸16および核酸17、ならびに配列番号3の一本鎖DNA(図中DNA3)、配列番号5とその相補鎖からなる二本鎖RNA(図中dsRNA5)および配列番号16とその相補鎖からなる二本鎖RNA(図中dsRNA16)を用いた。陽性対照にはポリICを用いた。2回目の実験では、被験核酸として表4に記載の核酸28(一本鎖DNAの長さ:5塩基)、核酸29(一本鎖DNAの長さ:10塩基)、核酸30(一本鎖DNAの長さ:15塩基)、核酸31(一本鎖DNAの長さ:20塩基)および核酸22(一本鎖DNAの長さ:25塩基)、ならびに配列番号16とその相補鎖からなる二本鎖RNA(図中dsRNA16)を用いた。陽性対照にはポリICを使用した。
【0050】
結果を図8(A)、(B)に示した。(A)は1回目の実験結果、(B)は2回目の実験結果である。図8(A)、(B)から明らかなように、二本鎖RNAはRIG−I/MDA5経路活性化するが、5塩基以上のエンドソーム移行配列(一本鎖DNA)が結合した二本鎖RNAは、RIG−I/MDA5経路活性化しないことが明らかとなった。
【0051】
〔実施例6:TICAM−1依存的サイトカイン産生〕
(1)脾臓から単離した樹状細胞(脾臓DC)におけるサイトカイン産生
C57BL/6Jマウス(野生型:WT)およびTICAM−1ノックアウトマウス(TICAM−1 KO、発明者らが作製)からそれぞれ脾臓を摘出し、コラゲナーゼ処理を行った。フィルターを通過させ、溶血後、培地で洗浄し、anti−CD11c microbeadsを用いたMACS system(miltenyi biotech)でCD11c陽性細胞を単離し、脾臓DCとした。
脾臓DCを5×10個/500μl培地/ウェルとなるように24ウェルプレートに分注し、被験核酸(50μg/ml)を添加して24時間培養した。培地には、10%FCS、抗生物質、10mM HEPESおよび55μM 2−MEを含有するRPMI1640を使用した。24時間後、培養上精を回収し、IL−6、TNF−αおよびIFN−βの産生量をBD CBA kitを用いて測定した。被験核酸として、表4に記載の核酸23および核酸25を用いた。陽性対照にはポリICを用いた。
【0052】
結果を図9(A)、(B)、(C)に示した。(A)はIL−6の結果、(B)はTNF−αの結果、(C)はIFN−βの結果である。核酸23および核酸25で処理した野生型マウス由来の脾臓DCは、いずれのサイトカインも産生したが、核酸23および核酸25で処理したTICAM−1 KOマウス由来の脾臓DCは、いずれのサイトカインもほとんど産生しなかった。この結果から、本発明の核酸は、TICAM−1を介するシグナル伝達で効果を発揮することが示された。
【0053】
(2)骨髄から単離した樹状細胞(BMDC)におけるサイトカイン産生
C57BL/6Jマウス(野生型:WT)およびTICAM−1ノックアウトマウス(TICAM−1 KO)の大腿骨から骨髄液を採取し、溶血後、リコンビナントmurine GM−CSF(final 10ng/ml, Peprotech社)を添加した培養液(RPMI1640/10%FCS/2−ME/HEPES)に懸濁して、1×10個/ml/ウェルとなるように24ウェルプレートに分注し、37℃で培養した。2日おきにrmGM−CSF(10ng/ml)を含む新鮮な培養液で培地交換し、6日目に浮遊細胞を回収してBMDCとした。
得られたBMDCを1×10個/200μlのAIM無血清培地(GIBCO社)/ウェルとなるように96ウェル丸底プレートに分注し、被験核酸(10μg/ml)を添加して24時間培養した。24時間後、培養上精を回収し、IL−6およびTNF−αの産生量をBD CBA kitを用いて測定した。被験核酸として、表2に記載の核酸1および核酸2を用いた。陽性対照にはポリICを用いた。
【0054】
結果を図10(A)、(B)に示した。(A)はIL−6の結果、(B)はTNF−αの結果である。TICAM−1 KOマウス由来のBMDCのサイトカイン産生量は、野生型マウス由来のBMDCのサイトカイン産生量より顕著に抑制されていた。この結果から、本発明の核酸は、TICAM−1を介するシグナル伝達で効果を発揮することが示された。
【0055】
〔実施例7:NK活性増強効果〕
C57BL/6Jマウスから脾臓をとりだし、メッシュを用いて破砕し、15mlチューブに回収した。溶血後、培養液で洗浄し、anti−CD49b(DX5)microbeadsを用いたMACS system(miltenyi biotech)でDX5陽性NK細胞を単離した。
実施例6(2)で単離したBMDC(単離から6日目の細胞)を、1×10個/200μlのAIM無血清培地(GIBCO社)/ウェルとなるように96ウェル丸底プレートに播種し、被験核酸(10μg/ml)を添加して4時間プレ刺激した。その後、単離した上記NK細胞(DX5陽性細胞)を、2×10個/ウェルに調整して24時間37℃にて共培養した。24時間後、培養上清を回収し、IFN−γの産生量をELISA(eBioscience)で測定した。
【0056】
結果を表5に示した。本発明の核酸はBMDCのエンドソームに送達され、TLR3を活性化することを介して、NK細胞を活性化し、IFN−γの産生を亢進させることが示された。
【0057】
【表5】
【0058】
〔実施例8:in vivoサイトカイン産生〕
C57BL/6Jマウス(8〜12週齢、メス)に被験核酸(50μg)を腹腔内投与した。投与1、3、6時間後に麻酔下で採血し、血清中のTNF−α、IL−6、IL−10をBD CBA kitで測定した。被験核酸として、表2に記載の核酸2、表4に記載の核酸22、核酸23を用いた。対照核酸としてエンドソーム移行配列のみ(配列番号1の一本鎖DNA(図中DNA1))を用いた。陽性対照としてポリIC(200μg)を用いた。
【0059】
結果を図11(A)〜(E)に示した。(A)は核酸2によるTNF−αの結果、(B)は核酸2によるIL−6の結果、(C)は核酸22、核酸23によるTNF−αの結果、(D)は核酸22、核酸23によるIL−6の結果、(E)は核酸22、核酸23によるIL−10の結果である。本発明の核酸は、陽性対照のポリICと比較して、in vivoでのサイトカイン産生量が顕著に少ないことが示された。この結果から、本発明の核酸は、生体に投与した際にサイトカインストーム等の副作用の懸念がなく、安全性が高いと考えられた。
【0060】
〔実施例9:移植担癌の退縮効果(2)〕
(1)B16メラノーマ担癌野生型マウスに対する効果
C57BL/6Jマウスの側腹部皮下にB16メラノーマ細胞(B16D8)を6×10cells/200μL移植し、腫瘍の大きさ(縦×横×0.4)を経時的に測定した。細胞移植後12日目に被験物質または対照物質を腹腔内投与し、腫瘍の退縮効果を評価した。被験物質として表4に記載の核酸22を用いた。陰性対照群には蒸留水(DW)を、陽性対照群にはポリICを投与した。核酸の投与量は150μg/匹とした。なお、B16メラノーマ細胞はMHCクラスI分子を発現していないため、キラーT細胞の活性化が誘導されず、樹状細胞のTLR3を介したシグナルによって増強されたNK細胞の活性によってのみB16メラノーマ腫瘍が退縮する。
結果を図12に示した。図12から明らかなように、核酸22はポリICと同等の腫瘍退縮効果を示した。
【0061】
(2)EL4担癌野生型マウスに対する効果
C57BL/6Jマウスの側腹部皮下にEL4細胞(マウスリンパ腫細胞)を1×10cells/200μL移植し、腫瘍の大きさ(縦×横×0.4)を経時的に測定した。細胞移植後7日目および11日目に被験物質または対照物質を腹腔内投与し、腫瘍の退縮効果を評価した。被験物質として表4に記載の核酸24および核酸25を用いた。陰性対照群には蒸留水(DW)を、陽性対照群にはポリICを投与した。核酸の投与量は200μg/匹とした。なお、EL4担癌マウスは、CTL依存的な抗腫瘍効果を評価する系である。
結果を図13に示した。図13から明らかなように、核酸24および核酸25は、いずれもポリICより劣るものの、蒸留水(DW)投与と比較して顕著な腫瘍退縮効果を示した。
【0062】
(3)B16メラノーマ担癌TICAM−1 KOマウスに対する効果
C57BL/6Jマウス(野生型:WT)およびTICAM−1ノックアウトマウス(TICAM−1 KO)の側腹部皮下にそれぞれB16メラノーマ細胞(B16D8)を6×10cells/200μL移植し、腫瘍の大きさ(縦×横×0.4)を経時的に測定した。細胞移植後11日目に被験物質または対照物質を腹腔内投与し、腫瘍の退縮効果を評価した。被験物質として表4に記載の核酸25を用いた。対照物質として蒸留水(DW)を投与した。核酸の投与量は250μg/匹とした。
結果を図14(A)、(B)に示した。(A)は野生型マウスの結果、(B)はTICAM−1 KOマウスの結果である。核酸25は、野生型マウスにおいて蒸留水(DW)投与と比較して顕著な腫瘍退縮効果を示したが、TICAM−1 KOマウスにおいては、腫瘍退縮効果を示さなかった。この結果から、本発明の核酸は、TICAM−1を介するシグナル伝達で効果を発揮することが示された。
【0063】
(4)in vivo jetPEIを用いた核酸投与による移植担癌退縮効果
in vivo jetPEI(フナコシ)はin vivo用のトランスフェクション試薬である。これを用いて、本発明の核酸を腫瘍近傍に皮下投与して移植担癌退縮効果を評価した。
C57BL/6Jマウスの側腹部皮下にB16メラノーマ細胞(B16D8)を6×10cells/200μL移植し、腫瘍の大きさ(縦×横×0.4)を経時的に測定した。細胞移植後12日目に被験物質または対照物質を皮下投与し、腫瘍の退縮効果を評価した。被験物質として表4に記載の核酸25を用いた。陰性対照群には蒸留水(DW)を、陽性対照群にはポリICを投与した。核酸の投与量は50μg/匹とした。核酸投与用の溶液は、以下のとおり調製した。A液(10%グルコース:50μl、核酸(50μg)、DW(DNase, RNase-free, Ambion)を加えて100μlとする)およびB液(10%グルコース:50μl、DW(DNase, RNase-free, Ambion):43μl、in vivo jetPEI:7μl)を調製し、A液とB液を混合してゆるやかに撹拌後、室温で15分インキュベートした。得られた核酸溶液を腫瘍近傍2カ所に100μlずつ皮下投与した。
結果を図15に示した。図15から明らかなように、核酸25はポリICより劣るものの、蒸留水(DW)投与と比較して顕著な腫瘍退縮効果を示した。
【0064】
なお本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6(A)】
図6(B)】
図7
図8(A)】
図8(B)】
図9(A)】
図9(B)】
図9(C)】
図10(A)】
図10(B)】
図11(A)】
図11(B)】
図11(C)】
図11(D)】
図11(E)】
図12
図13
図14(A)】
図14(B)】
図15
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]