(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御ユニット(50)は、走査方向(Y)に沿った前記光パターン(LP)の長さが前記装置(10)の走査処理中に徐々に変更され、それに対して該走査方向に垂直な方向に沿った該光パターンの該長さが一定に留まるように前記ビーム偏向要素(Mij)を制御するように構成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の照明系。
少なくとも1つの光入射ファセット(92a、92b、92c)には、該光入射ファセット(92a、92b、92c)の対向する側に配置された1対の遮光体(926、96b、96c)が設けられることを特徴とする請求項6に記載の照明系。
前記ビーム偏向デバイスの直近に配置されたダイヤフラム(98)と、該ダイヤフラムを前記マイクロリソグラフィ投影露光装置(10)の走査方向(Y)に対して平行に移動させるためのアクチュエータ(100)とを含むことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の照明系。
1つの前記光入射ファセット(92)上に生成される各前記スポット(90)の合計面積は、前記光入射ファセット(92)のうちで最大面積を有する光入射ファセット(92)の面積よりも少なくとも5倍、好ましくは、少なくとも10倍、より好ましくは、少なくとも20倍小さいことを特徴とする請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
前記ビーム偏向デバイスの直近に配置されたダイヤフラム(98)が、前記マイクロリソグラフィ投影露光装置(10)の走査方向(Y)に沿って前記照明系(12)の光軸(OA)に対して少なくとも実質的に垂直に移動されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
マイクロリソグラフィ(フォトリソグラフィ又は単純にリソグラフィとも呼ぶ)は、集積回路、液晶ディスプレイ、及び他の微細構造デバイスの製作のための技術である。マイクロリソグラフィの工程は、エッチング処理との関連で基板、例えば、シリコンウェーハ上に形成された薄膜積層体内に特徴部をパターン形成するのに用いられる。製作の各階層において、ウェーハは、最初に、深紫外(DUV)光のような放射線に敏感な材料であるフォトレジストで被覆される。次に、上部にフォトレジストを有するウェーハは、投影露光装置内で投影光に露光される。この装置は、パターンを含むマスクをフォトレジスト上に、フォトレジストが、マスクパターンによって決められるある一定の位置においてのみ露光されるように投影する。露光の後に、フォトレジストは現像されてマスクパターンに対応する像が生成される。次に、エッチング処理が、このパターンをウェーハ上の薄膜積層体へと転写する。最後にフォトレジストが除去される。異なるマスクを用いたこの工程の繰返しにより、多層微細構造構成要素が生じる。
【0003】
一般的に、投影露光装置は、マスクを照明するための照明系、マスクを整列させるためのマスク台、投影対物系、及びフォトレジストで被覆されたウェーハを整列させるためのウェーハアラインメント台を含む。照明系は、マスク上で、例えば、矩形スリット又は湾曲スリットの形状を有することができる視野を照明する。
【0004】
現在の投影露光装置では、2つの異なる種類の装置の間で区別を付けることができる。一方の種類では、ウェーハ上の各対象部分が、マスクパターン全体を対象部分の上に1回で露光することによって照射される。そのような装置は、一般的に、ウェーハステッパと呼ばれる。一般的に、ステップアンドスキャン装置又はスキャナと呼ばれる他方の種類の装置では、各対象部分は、投影ビームの下で走査方向に沿ってマスクパターンを漸次的に走査し、同時に基板をこの方向に対して平行又は反平行に同期して移動させることによって照射される。ウェーハの速度とマスクの速度との比は、通常は1よりも小さく、例えば、1:4である投影対物系の倍率に等しい。
【0005】
「マスク」(又はレチクル)という用語は、パターン形成手段として広義に解釈すべきであることは理解されるものとする。一般的に、用いられるマスクは、透過性又は反射性のパターンを含み、例えば、バイナリ型、交互位相シフト型、減衰位相シフト型、又は様々な混成マスク型のものとすることができる。しかし、能動マスク、例えば、プログラマブルミラーアレイとして達成されるマスクも存在する。同様に、プログラマブルLCDアレイを能動マスクとして用いることができる。
【0006】
微細構造デバイスを製造するための技術が進歩すると、照明系に対しても絶えず高まる要求が存在する。理想的には、照明系は、マスク上の照明視野の各点を明確に定められた放射照度及び角度分布を有する投影光で照明する。角度分布という用語は、マスク平面内の特定の点に対して収束する光束の合計光エネルギが、光束を構成する光線の様々な方向の間で如何に配分されるかを表している。
【0007】
マスク上に入射する投影光の角度分布は、通常、フォトレジスト上に投影されるパターンの種類に適合される。例えば、比較的大きいサイズの特徴部は、小さいサイズの特徴部とは異なる角度分布を必要とする可能性がある。投影光の最も一般的に用いられる角度分布は、従来照明設定、環状照明設定、二重極照明設定、及び四重極照明設定と呼ばれる。これらの用語は、照明系の系瞳面内の放射照度分布を意味する。例えば、環状照明設定では、系瞳面内の環状領域のみが照明される。この場合、投影光の角度分布には小さい角度範囲しか存在せず、従って、全ての光線が、類似の角度でマスク上に傾斜して入射する。
【0008】
当業技術では、望ましい照明設定を得るために、マスク平面内の投影光の角度分布を修正する様々な手段が公知である。最も簡単な場合には、1つ又はそれよりも多くの開口を含む絞り(ダイヤフラム)が、照明系の瞳面に位置決めされる。瞳面内の位置は、マスク平面のようなフーリエ関連視野平面内の角度に変換されるので、系瞳面内の開口のサイズ、形状、及び位置は、マスク平面内の角度分布を決める。しかし、照明設定のいかなる変更も絞りの交換を必要とする。照明設定の調節は、僅かに異なるサイズ、形状、又は位置を有する開口を有する非常に多数の絞りを必要とすることになるので、上述のことによって照明設定を最終的に調節するのは困難になる。
【0009】
従って、多くの一般的な照明系は、少なくともある一定の範囲で瞳面の照明を連続的に変更することを可能にする調節可能な要素を含む。従来、この目的でズーム対物系及びアキシコン要素対を含むズームアキシコン系が用いられている。アキシコン要素は、一方の側に円錐面を有し、通常は反対側が平面である屈折レンズである。一方が円錐凸面を有し、他方が補完的な円錐凹面を有する1対のそのような要素を設けることにより、光エネルギをラジアルにシフトさせることができる。このシフトは、アキシコン要素の間の距離の関数である。ズーム対物系は、瞳面内の照明区域のサイズを変更することを可能にする。
【0010】
マスク平面に異なる角度分布を生成する柔軟性を更に高めるために、瞳面を照明するミラーアレイを用いることが提案されている。
【0011】
EP 1 262 836 A1では、ミラーアレイは、1000個を超える微細なミラーを含むマイクロ電気機械系(MEMS)として達成される。ミラーの各々は、互いに対して垂直な2つの異なる平面内で傾斜させることができる。従って、そのようなミラーデバイス上に入射する放射線を半球の(実質的に)あらゆる望ましい方向に反射することができる。ミラーアレイと瞳面の間に配置されたコンデンサーレンズは、ミラーによって生成される反射角を瞳面内の位置に変換する。この公知の照明系は、各々が1つの特定の微細なミラーに関連付けられ、かつこのミラーを傾斜させることによって瞳面にわたって自由に移動可能な複数の円形スポットで瞳面を照明することを可能にする。
【0012】
類似の照明系が、US 2006/0087634 A1、US 7,061,582 B2、及びWO 2005/026843 A2から公知である。
【0013】
マスク平面内で照明される視野の幾何学形状は、通常、複数の構成要素によって決められる。この点に関して最も重要な構成要素のうちの1つは、系瞳平面に複数の2次光源を生成する光学ラスタ要素である。2次光源によって放出される光束の角度分布は、マスク平面内で照明される視野の幾何学形状に直接関連する。光学ラスタ要素の光学特性、例えば、直交方向の屈折力を適切に判断することにより、望ましい視野幾何学形状を得ることができる。
【0014】
通常は照明視野の幾何学形状を少なくともある一定の範囲で変更することができることが望ましい。光学ラスタ要素の光学特性は容易には変更することができないので、視野絞り対物系によってマスク上に結像される視野絞りが設けられる。通常、視野絞りは、マスク内で照明される視野の境界を形成するように個別に移動させることができる複数のブレードを含む。また、視野絞りは、照明視野の鮮明な縁部を保証する。スキャナ型の装置では、各走査処理の開始及び終了それぞれにおいて照明視野を開放及び遮断するために、調節可能な視野絞りが必要である。
【0015】
照明視野の幾何学形状が、調節可能な視野絞りを用いて変更される場合には、投影光の一部分が、視野絞りのブレードによって遮蔽されるので、光損失が不可避である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、より少ない光損失しか伴わずに照明視野の幾何学形状を変更することを可能にする照明系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によると、上述の目的は、1次光源、系瞳面、及び照明されるマスクを配置することができるマスク平面を含む照明系によって達成される。この照明系は、系瞳面内に位置する複数の2次光源を生成するように構成された光学ラスタ要素を更に含む。光学ラスタ要素は、各々が2次光源のうちの1つに関連付けられた複数の光入射ファセットを有する。照明系のビーム偏向デバイスは、反射性又は透過性のビーム偏向要素のビーム偏向アレイを含む。各ビーム偏向要素は、これらのビーム偏向要素によって生成される偏向角を変化させることによって可変である位置において、光入射ファセットのうちの1つの上のスポットを照明するように構成される。スポットから編成される可変光パターンを複数の光入射ファセットのうちの少なくとも1つの上に形成することができるように、制御ユニットが、ビーム偏向要素を制御するように構成される。
【0019】
本発明は、光学ラスタ要素の光ファセット上の位置が、2次光源によって放出される光の角度に変換されることを利用する。従って、ファセット上で照明される各光パターンは、この光入射ファセットに関連付けられた2次光源によって放出される光の異なる角度分布に関連付けられる。2次光源の角度分布は、マスク平面内の照明視野の幾何学形状に変換し戻されるので、光入射ファセット上で照明される光パターンは、マスク平面内の照明視野の幾何学形状に対して1対1の対応を有する。光学収差が不在の場合には、照明視野は、光学ラスタ要素の光入射ファセット上に形成された光パターンの像の重ね合わせである。
【0020】
ビーム偏向デバイスの具備により、光学ラスタ要素の光入射ファセット上で照明されるスポットの位置を正確に変更することが可能になる。異なる光パターンを生成するためには、ビーム偏向要素によって照明されるスポットが、光入射ファセットの最大全面積よりも十分小さい面積を有するビーム偏向要素によって照明されることだけが必要である。好ましくは、スポット面積は、光入射ファセットのあらゆる上述の最大全面積よりも少なくとも5倍、より好ましくは、少なくとも10倍、最も好ましくは、少なくとも20倍小さい。
【0021】
スポットが、光入射ファセットの少なくとも実質的に完全な区域を照明するように決められるビーム偏向デバイスを含む従来技術の照明系とは対照的に、本発明の実質的に小さいスポットサイズ(ファセットの面積と比較した場合に)は、光学ラスタ要素上で照明視野の幾何学形状が符号化される一種の照明微細構造を生成することを可能にする。
【0022】
この微細構造を変化させることにより、調節可能な視野絞りがこの目的に用いられる場合にそうであるように、実質的な光損失を被ることなく照明視野の幾何学形状を変更することができる。更に、視野絞りを完全に省くこと、同じく視野絞り対物系を完全に省くことも可能であり、それによって照明系の全体のレイアウトが大きく簡略化される。それにも関わらず視野絞りが設けられる場合には、様々な幾何学形状は、主にビーム偏向デバイスによって判断されることになり、それに対して視野絞りは、専ら鮮明な縁部を保証し、投影光のごく僅かな部分しか遮蔽しない。
【0023】
ビーム偏向要素によって光入射ファセット上で照明されるスポットは、あらゆる任意の幾何学形状を有することができる。これらの幾何学形状は、全てのスポットにおいて等しくなくてもよい。例えば、異なるスポットサイズを有する矩形スポット、又は矩形スポットと三角形スポットとの組合せを考えることができる。好ましくは、スポットは、隣接するスポット間にいかなる間隙も残らないか、又はごく僅かな間隙しか残らないように、大きい区域へと編成することができる幾何学形状を有する。通常は、光入射ファセット上で照明されるスポットの幾何学形状は、主に、マイクロミラー上に入射する光の角度分布に依存する。マイクロミラーの前方に配置されるマイクロレンズアレイは、望ましいスポット幾何学形状をもたらす角度分布を生成するのに用いることができる。
【0024】
一実施形態では、スポットは、少なくとも実質的に矩形の幾何学形状を有する。この矩形幾何学形状は、そのようなスポットを列に沿って並べることができ、その後(続いて)これらの列を単一の光入射ファセット上で照明されるより大きい矩形区域へと組み合わせることができることから有利である。
【0025】
通常は、所定の瞬間において、照明される全ての光入射ファセット上に生成される光パターンが等しい場合は好ましいことになる。それによって強度が照明視野にわたって少なくとも実質的に等しくなるように、全ての2次光源が、マスク平面内で同じ視野を照明することが保証される。しかし、他の場合には、照明視野内である一定の強度プロフィールを有することが望ましい場合がある。例えば、スキャナ型の一部の投影露光装置では、装置の走査方向に対して垂直に延びる縁部で滑らかに増加及び減少する強度を有する強度プロフィールを有することが望ましい。この場合、所定の瞬間において照明される光入射ファセット上に異なる光パターンが存在すべきである。
【0026】
一実施形態では、装置の走査処理中に、走査方向に沿った光パターンの長さが徐々に変更され、それに対して、走査方向に対して垂直な方向に沿った光パターンの長さが一定に留まるように、制御ユニットが、ビーム偏向要素を制御するように構成される。この構成は、各走査処理の開始及び終了において調節可能な視野絞りの機能を模倣するのに用いることができる。
【0027】
照明系内の1次光源としてパルスレーザが用いられる場合には、光パターンの変化をレーザのパルス繰返し数と同期させなければならない。
【0028】
そのような同期は、光入射ファセットのうちの少なくとも一部に遮光体が設けられる場合は必要ではないと考えられる。これらの遮光体の具備により、遮光体がスポットのうちのより多くのものを徐々に遮光するように、光入射パターンを光入射ファセットにわたって連続的に移動させることが可能になる。更に、それによって光パターンのサイズ、従って、マスク平面内で照明される視野のサイズの段階的な縮小が生じる。
【0029】
この関連において、少なくとも1つの光入射ファセットには、光入射ファセットの対向する側に配置された遮光体対が設けられるように考えることができる。そのような構成は、走査処理の開始及び終了それぞれにおいて、照明視野を走査方向に沿って増幅及び減幅すべきである場合に特に有利である。
【0030】
別の実施形態によると、照明系は、ビーム偏向デバイスの直近に配置されたダイヤフラムを含む。ダイヤフラムをマイクロリソグラフィ投影露光装置の走査方向に対して平行に移動させるために、アクチュエータが設けられる。ダイヤフラムが、ビーム偏向要素に関連付けられた光束内に連続的又は断続的に移動すると、これらの光束の増加部分又は減少部分は、ダイヤフラムによって遮蔽されることになる。例えば、最初に、マスク上で照明される視野内のある一定の区域の照明にのみ寄与する光束が遮蔽される場合に、ダイヤフラムが移動し始めると、この区域は暗くなることになる。一実施形態では、この区域は、ダイヤフラムの移動が、各走査処理の開始及び終了において必要とされる一般的な視野幾何学形状変化をもたらすように、走査方向に対して垂直に延びる線である。
【0031】
ビーム偏向要素は、角度をその間に形成する2つの傾斜軸によって傾斜させることができるミラーとして構成することができる。別の実施形態では、ビーム偏向要素は、電気光学要素又は音響光学要素である。
【0032】
本発明によると、方法に関する上述の目的は、a)複数の光入射ファセットを有する光学ラスタ要素を含むマイクロリソグラフィ投影露光装置の照明系を準備する段階と、b)個別スポットから編成される光パターンを光学ラスタ要素の光入射ファセット上に生成する段階と、c)マスク平面内で照明される視野の幾何学形状を変更すべきであると判断する段階と、d)スポットを再配列、及び/又は除去、及び/又は追加することによって光入射ファセット上の光パターンを変更する段階とを含む方法によって解決される。
【0033】
本発明による照明系に関して上記に行った記載の内容は、必要な変更を加えた場合にも適用される。
【0034】
本発明の様々な特徴及び利点は、添付図面と併せて以下の詳細説明を参照することによってより容易に理解することができるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0036】
I.投影露光装置の一般的な構造
図1は、投影光ビームを生成するための照明系12を含む投影露光装置10の非常に簡単な斜視図である。投影光ビームは、微小構造18を含むマスク16上の視野14を照明する。この実施形態では、照明視野14は、ほぼリングセグメントの形状を有する。しかし、他の例えば矩形形状の照明視野14も考えられている。
【0037】
投影対物系20は、照明視野14内の構造18を基板24上に堆積させた感光層22、例えば、フォトレジスト上に結像する。シリコンウェーハによって形成することができる基板24は、感光層22の上面が、投影対物系20の像平面に厳密に位置するようにウェーハ台(図示せず)上に配置される。マスク16は、投影対物系20の物体平面内にマスク台(図示せず)を用いて位置決めされる。投影対物系20は、1よりも小さい倍率を有するので、照明視野14内にある構造18の縮小像14’が、感光層22上に投影される。
【0038】
投影中には、マスク16と基板24は、Y方向に一致する走査方向に沿って移動する。従って、照明視野14は、照明視野14よりも大きい構造化区域を連続的に投影することができるようにマスク16にわたって走査される。多くの場合に、そのような種類の投影露光装置を「ステップアンドスキャン装置」又は簡単に「スキャナ」と呼ぶ。マスク16の速度と基板24の速度の間の比は、投影対物系20の倍率に等しい。投影対物系20が像を反転する場合には、マスク16と基板24とは、
図1に矢印A1とA2で示しているように反対方向に移動する。しかし、本発明は、マスク16と基板24がマスクの投影中に移動しないステッパツールに対して用いることもできる。
【0039】
図示の実施形態では、照明視野14は、投影対物系20の光軸26に対して中心に位置しない。そのような変形照明視野14は、ある一定の種類の投影対物系20において必要である場合がある。他の実施形態では、照明視野14は、光軸26に対して中心に位置する。
【0040】
II.照明系の一般的な構造
図2は、
図1に示している照明系12を通るより詳細な子午断面図である。明瞭化の目的で、
図2の図は大きく簡略化されており、正確な縮尺のものではない。これは、特に、異なる光学ユニットをごく少数の光学要素だけによって表していることを意味する。現実には、これらのユニットは、かなり多くのレンズ及び他の光学要素を含むことができる。
【0041】
照明系12は、ハウジング28、及び図示の実施形態ではエキシマレーザ30として達成される光源を含む。エキシマレーザ30は、約193nmの波長を有する投影光を放出する。他の種類の光源及び他の波長、例えば、248nm又は157nmも考えられている。
【0042】
図示の実施形態では、エキシマレーザ30によって放出された投影光は、ビーム拡大ユニット32に入射し、ビーム拡大ユニット32では、光ビームが、幾何学的光束を変化させることなく拡大される。ビーム拡大ユニット32は、例えば、
図2に示しているようにいくつかのレンズを含むことができ、又はミラー配列として達成することができる。投影光は、ビーム拡大ユニット32から実質的に平行なビーム34として射出する。他の実施形態では、ビームは、有意な発散を有することができる。平行ビーム34は、照明系12の全体の寸法を縮小するために設けられた平面折り返しミラー36上に入射する。
【0043】
折り返しミラー36からの反射の後に、ビーム34は、マイクロレンズ40のアレイ38上に入射する。マイクロレンズ40の後側焦点面内、又はその近くにはミラーアレイ46が配置される。以下により詳細に説明するが、ミラーアレイ46は、好ましくは、互いに対して垂直に整列した2つの傾斜軸によって互いに独立して傾斜させることができる複数の小さい個別ミラー要素M
ijを含む。ミラー要素M
ijの合計数は、100を超えるとすることができ、又は更に数1000を超えるとすることができる。ミラー要素M
ijの反射面は平面とすることができるが、付加的な屈折力が望ましい場合は湾曲したものとすることができる。それとは別に、ミラー面には、回折構造を設けることができる。この実施形態では、ミラー要素M
ijの数は、マイクロレンズアレイ38内に含まれるマイクロレンズ40の数に等しい。従って、各マイクロレンズ40は、収束光束をミラーアレイ46の1つのミラー要素M
ij上に誘導する。
【0044】
個別ミラー要素M
ijの傾斜移動は、照明系12の全体的系制御器52に接続したミラー制御ユニット50によって制御される。ミラー要素M
ijの望ましい傾斜角を設定するのに用いられるアクチュエータは、各個別ミラー要素M
ijが、制御信号に応じて変更することができる反射角によって入射光線を反射することができるように、ミラー制御ユニット50から制御信号を受け取る。図示の実施形態では、個別ミラー要素M
ijを配置することができる連続傾斜角度範囲が存在する。他の実施形態では、アクチュエータは、限られた数の離散傾斜角度しか設定することができないように構成される。
【0045】
図3は、簡略化の目的で8・8=64個のミラー要素M
ijのみを含むミラーアレイ46の斜視図である。ミラーアレイ46上に入射する光束54aは、ミラー要素M
ijの傾斜角に依存して異なる方向に反射される。この概略図では、ミラー要素M
35とM
77によって反射される光束54b、54b’が、それぞれ異なる方向に反射されるように、特定のミラー要素M
35が、別のミラー要素M
77に対して2つの傾斜角56x、56yの回りに傾斜されると仮定している。
【0046】
ミラーアレイ46は、構造上に入射する光線を適切な制御信号の印加を受けて異なる構造部分において個別に変更することができる様々な方向に誘導することを可能にするあらゆる他の偏向構造によって置換することができる。そのような別の構造は、例えば、電気光学要素又は音響光学要素を含むことができる。そのような要素では、適切な材料を超音波又は電界それぞれに露出することによって屈折率を変更することができる。これらの効果は、入射光を様々な方向に誘導する屈折率格子を製造するのに利用することができる。
【0047】
再度
図2を参照すると、ミラー要素M
ijから反射された光束は、第1のコンデンサー58上に入射し、コンデンサー58は、若干発散する光束が、光学インテグレーター72上に、この時点では少なくとも実質的に平行な光束として入射することを保証し、光学インテグレーター72は、複数の2次光源を生成する。光学インテグレーター72は、光線と照明系12の光軸OAの間に形成される角度範囲を拡大する。他の実施形態では、光学インテグレーター72上に入射する光束が大きい発散を有するように、第1のコンデンサー58は省かれる。
【0048】
図示の実施形態では、光学インテグレーター72は、各々が、平行な円柱マイクロレンズの2つの直交アレイを含む2つの基板74、76を含むフライアイレンズとして達成される。光学インテグレーターの他の構成、例えば、回転対称な面を有するが、矩形の境界を有するマイクロレンズのアレイを含むインテグレーターも考えられている。照明系12に適する様々な種類の光学インテグレーターが説明されているWO 2005/078522 A、US 2004/0036977 A1、及びUS 2005/0018294 A1を参照されたい。光学インテグレーター72の機能に対しては、
図5a及び
図5bを参照して以下により詳細に説明する。
【0049】
参照番号70は、マスク14上に入射する光の角度分布を実質的に形成する照明系12の系瞳面を表している。系瞳面70は、通常は平面又は若干湾曲したものであり、光学インテグレーター72内、又はその直近に配置される。系瞳面70内の角度光分布は、その後の視野平面内の強度分布へと直接変換されるので、光学インテグレーター72は、マスク16上の照明視野14の基本的な幾何学形状を実質的に決める。光学インテグレーター72は、走査方向YよりもX方向により大きく角度範囲を拡大するので、照明視野14は、走査方向Yに沿ってよりもX方向に沿って大きい寸法を有する。
【0050】
光学インテグレーター72によって生成された2次光源から射出する投影光は、
図2では簡略化の目的で単一のレンズだけによって表している第2のコンデンサー78に入射する。第2のコンデンサー78は、系瞳面70と、視野絞り82が配置されたその後の中間視野平面80の間のフーリエ関係を保証する。第2のコンデンサー78は、2次光源によって生成された光束を中間視野平面80内で重ね合わせ、それによって中間視野平面80の非常に均一な照明を提供する。
【0051】
視野絞り82は、複数の可動ブレードを含むことができ、マスク16上の照明視野14の鮮明な縁部を保証する。ブレードは、異なる寸法を有する新しいマスクを投影される時だけではなく、マスク16上の各点が、同じ量の光エネルギを受けることを保証するために、各走査処理の開始及び終了においても移動される。
【0052】
視野絞り対物系84は、中間視野平面80と、マスク16が配置されたマスク平面86の間に光学共役性を与える。従って、視野絞り82は、視野絞り対物系84によってマスク16上に鮮明に結像される。以下に説明するが、視野絞り82及び視野絞り対物系84は、他の実施形態では省くことができる。
【0053】
III.照明系の機能及び制御
図4は、ミラーアレイ46、第1のコンデンサー58、及び光学インテグレーター72の第1の基板74上に形成された第1のマイクロレンズ88を示す
図2の抜粋図である。この実施形態では、マイクロレンズ88は回転対称であるが、正方形の境界線を有する。他の実施形態では、各マイクロレンズは、交差する2つの円柱マイクロレンズで形成される。
【0054】
図4に例示しているように、各ミラー要素M
ijは、第1のマイクロレンズ88のうちの1つの光入射ファセット92上に小さいスポットを照明する光束L
ijを生成する。スポットの位置は、ミラー要素M
ijを傾斜させることによって変更することができる。スポット90の幾何学形状は、特に、アレイ38のマイクロレンズ40の光学特性及びミラー要素M
ijの光学特性に依存する。一部の実施形態では、スポット90の幾何学形状は円形であり、以下に説明する他の実施形態では、幾何学形状はほぼ矩形であり、特に、正方形である。
【0055】
図4で分るように、スポット90の直径Dは、照明される第1のマイクロレンズ88の入射ファセット92の直径よりも小さい。一般的に、第1のマイクロレンズ88の光入射ファセット92上で照明される各スポット90の全面積は、それぞれの光入射ファセット92の面積よりも有意に小さく、例えば、少なくとも5倍、好ましくは、少なくとも10倍、より好ましくは、少なくとも20倍小さくなければならない。光入射ファセット92が異なる面積を有し、これらのファセットのうちのいずれの上でも各スポット90を生成することができる場合には、光入射ファセット92の最大面積を基準とすることができる。スポット90が、第1のマイクロレンズ88の光入射ファセット92と比較して十分に小さい場合には、光入射ファセット92上に異なる光パターンを生成することができる。光パターンは、ミラー制御ユニット50を用いてミラー要素M
ijを適切に制御することによって容易に変更することができる。
【0056】
図5aを参照して、光入射ファセット92上に異なる光パターンを照明することによって生成される効果を解説する。この図は、光学インテグレーター72、第2のコンデンサー78、及び中間視野平面80を示す
図2の拡大抜粋図であり、正確な縮尺の図ではない。簡略化の目的で、光学インテグレーター72からは、第1のマイクロレンズ88と第2のマイクロレンズ94との2つの対のみを示している。上述の場合のように、時によっては視野ハニカムレンズ及び瞳ハニカムレンズとも呼ぶマイクロレンズ88、94は、例えば、回転対称な反射面及び矩形の境界線を有する個別マイクロレンズとして、又は
図2に示しているように交差円柱マイクロレンズとして構成することができる。マイクロレンズ88、94は、照明系12の光軸OAに対して垂直な少なくとも1つの方向に沿って非ゼロ屈折力を有することしか必要とされない。
【0057】
隣接するマイクロレンズ88、94の各対は、2次光源を生成する。
図5aの上側半分では、それぞれ実線、点線、及び破線で例示している収束光束L
1a、L
2a、及びL
3aは、第1のマイクロレンズ88の光入射ファセット92の異なる点上に入射すると仮定している。2つのマイクロレンズ88、94及びコンデンサー78を通過した後に、各光束L
1a、L
2a、及びL
3aは、それぞれ焦点F
1、F
2、及びF
3に収束する。従って、
図5aの上側半分から、一方で光線が光入射ファセット92上に入射する位置と、この光線が中間視野平面80(又はあらゆる他の共役視野平面)を通過する位置との間で1対1の対応が存在することが明らかになる。その結果、第1のマイクロレンズ88の光入射ファセット上で照明される領域を変更することにより、中間視野平面80内で照明される視野(従って、マスク平面86内で照明される視野14)の寸法を変更することができる。この領域は、
図4を参照して上述したミラーデバイス46を用いて非常に有効に変更することができる。
【0058】
当然ながら、これらの考察は、X方向とY方向に対して別々に適用される。従って、X方向とY方向においてそれぞれ別々に光入射ファセット92の照明を変更することにより、照明視野14の幾何学形状をX方向とY方向で独立して変更することができる。言い換えれば、第1のマイクロレンズ88の光入射ファセット92上で照明される区域が適切に決められる場合には、中間視野平面80内のほぼあらゆる任意の幾何学形状の照明視野を得ることができる。
【0059】
図5aの下側半分は、平行光束L
1b、L
2b、及びL
3bが、第1のマイクロレンズ88の光入射ファセット92の異なる区域上に入射する場合を示している。光束は、第2のマイクロレンズ94内に位置する共通焦点Fに集束され、その後、中間視野平面80をこの時点で前と同様に平行に通過する。上述の場合のように、光束L
1b、L
2b、及びL
3bが光入射ファセット92上に入射する領域は、中間視野平面内で照明される領域に変換されることが分る。
【0060】
図5aでは、系瞳面70が、第2のマイクロレンズ94の直後に位置決めされることを仮定している。
図5aの上側半分に例示しているように、強く収束する光束L
1a、L
2a、及びL
3aの場合には、光束L
1a、L
2a、及びL
3aは、第2のマイクロレンズ94の射出ファセットよりも若干大きい領域内で系瞳平面70と交わる。
図5aの下側半分に例示しているように、平行光束L
1a、L
2a、及びL
3aの場合には、光束L
1b、L
2b、及びL
3bは、第2のマイクロレンズ94の射出ファセットよりも大幅に小さい領域内で系瞳平面70と交わる。多くの場合に、光学インテグレーター72上に入射する光は若干発散し、これは、
図5aの上側半分に示しているものと下側半分内に示しているものとの間のどこかの箇所の光入射ファセット92上の照明状態に対応する。そのような場合には、2次光源は、系瞳平面70上の上面図である
図5bに示しているような幾何学形状を有することができる。2次光源を正方形95で示しており、円97は、系瞳面の有効直径を示している。1とは異なるアスペクト比を有する照明視野を得るために、各2次光源95から放出される光は、通常はX方向とY方向とに沿って異なる発散を有することになる。
【0061】
上述したものでは、2次光源95によって照明される視野が重ね合わさるように、全ての第1のマイクロレンズ88が同じ方式で照明されることを仮定した。照明視野内の強度が一定ではなく、少なくとも1つの方向に沿ってある一定の分布を有するべき場合には、第1のマイクロレンズ88の光入射ファセット92を異なって照明することができる。
【0062】
スポット90の幾何学形状によっては、第1のマイクロレンズ88の光入射ファセット92上で一定の放射照度で連続領域を照明することができない可能性がある。例えば、スポットが円形の幾何学形状を有する場合には、隣接するスポット90の間に(小さい)間隙が残るか、又はスポット90が部分的に重なり合うかのいずれかであるように光入射ファセット92上にこれらのスポットを配置することができる。この理由から、以下では光入射ファセット上で照明される領域は、間隙を含むことができる光パターン、又は間隙を含むことができない光パターンと呼ぶことにし、この領域内では、2つ又はそれよりも多くのスポット90が完全又は部分的に重なり合う場合に異なる非ゼロ強度を発生させることができる。
【0063】
一実施形態では、スポット90は、隣接するスポット間に(少なくとも近似的に)1つの非ゼロ強度のみを有し、いかなる間隙も持たない矩形光パターンを生成することができるように正方形又は矩形の幾何学形状を有する。
【0064】
これを7・7個の第1のマイクロレンズ88のアレイを示す光学インテグレーター72上の上面図である
図6に例示している。第1のマイクロレンズ88の境界線は、各々を異なる又は等しい光パターンで個別に照明することができる正方形の規則的な格子を形成する。
図6に示している構成では、太実線で囲んだ2つの極P1、P2内に位置する光入射ファセット92のみが照明されることを仮定している。極P1、P2は、光学インテグレーター72の反対辺に対称に配置され、ほぼT字形である。
【0065】
従来技術の方式とは対照的に、極P1、P2は完全には照明されず、各第1のマイクロレンズ88の光入射ファセット92上で均等に繰り返される矩形の光パターンLPで照明される。更に、各光パターン94は、線に沿って順次配置された正方形スポット90から編成される。この場合、各光パターン94のアスペクト比は4:1であり、長手側はX方向に沿って延びている。
【0066】
図5aを参照して上述したように、上述のアスペクト比により、中間視野平面80内で照明される同じく4:1のアスペクト比を有する視野が生じることになる(アナモフィック光学要素が間に存在しないと仮定して)。投影露光装置10の走査方向がY方向と一致する場合には、
図6に示している光学インテグレーター72の照明は、走査方向Yに沿って延びる短辺と、X方向に延びる長辺とを有する照明視野14が生じることになる。極P1、P2内にある光入射ファセット92のみが照明されるので、光は、二重極照明設定において特徴的なように、中間視野平面80上に、専ら反対辺から傾斜して入射することになる。
【0067】
照明視野を例えば2:1のアスペクト比を有する半分の幅のものとすべき場合には、2つの中間位置が2つのスポット90によって同時に照明されるように、各光パターンLP内の左右のスポット90を中心に対してシフトさせることができる。この場合、中間視野平面80内(及びあらゆるその後の視野平面内)の照明視野も同様に2:1のアスペクト比を有することになるが、照明系12内でいかなる光も遮蔽されないか、又はそうでなければ損失しないので、2倍の放射パワーを有する。放射パワーを倍加すべきでない場合には、左右のスポット90は単純にオフにされる(例えば、光学インテグレーター72から移動して離れる)。光パターンLPを変更することによる視野サイズの縮小は、マスク16上に入射する光の角度分布を実質的に変更しないことに注意すべきである。
【0068】
IV.視野絞り機能の代行
スキャナ型の投影露光装置10の照明系12では、視野絞り82は、鮮明な縁部を保証する(少なくとも、走査方向Yに対して平行に延びる、照明視野の長辺に沿って)だけではなく、走査処理の開始及び終了それぞれにおいて、照明視野14の走査方向Yに沿った長さを増減する。この開放及び遮断の機能は、マスク上の全ての点が同量の光エネルギを受けることを保証するのに必要とされる。この目的のために、通常は、走査方向Yに沿って移動させることができるブレードが設けられる。
【0069】
照明系12では、光学インテグレーター72の光入射ファセット92上で照明される光パターンを変更することにより、視野の幾何学形状を変更することができる。従って、少なくとも原理的には、そのような調節可能な視野絞り82の必要はない。視野絞り82がなければ、視野絞り対物系84も省くことができ、それによって照明系12の全体設計の非常に有意な簡略化が生じる。視野絞り対物系84を有するが、簡易的な視野絞り82、例えば、照明視野14の長手縁部のみの境界を形成する一方で垂直縁部が専ら光学インテグレーター72の照明によって決められる絞りを単に有することも可能である。
【0070】
視野絞り82及び視野絞り対物系84を省くべきである場合には、開放及び遮断の機能を照明系12の残りの構成要素、特に、ミラーアレイ46及びその制御器50に代行させなければならない。
【0071】
1.第1の手法
上述の代行を提供する1つの手法を単一の第1のマイクロレンズ88の光入射ファセット92上の異なる光パターンを示す
図7から
図9を参照して以下に説明する。
図7は、走査処理の中間点において、照明視野14が走査方向Yに沿って最大広がりを有する瞬間の光パターンLPを示している。光パターンLPは、上述のように、マスク16上の照明視野14のアスペクト比に対応するアスペクト比を有する矩形の幾何学形状を有する。矩形光パターンLPは、n個のスポット行R
1〜R
nから編成され、各行は、X方向に対して平行な線に沿って順次配置された複数のスポット90から編成される。
【0072】
走査処理の開始においては、光源30によってN個の光パルスが生成される時間間隔Tにわたって線R
1のみが照明される。これを
図8の左の図に示している。
【0073】
次に、別のN個の光パルスがマスク16上に入射し終わるまで、第2の行R
2が時間間隔Tにわたって更に照明され、これは
図8の中央の図を参照されたい。この状況は、従来の照明系において、視野絞り82が走査処理の開始において開放し始める状況に対応する。徐々に多くの行R
iをオンにする工程は、
図8の右の図に示しているように、
図7に示す光パターンLPの全てのn個の行R
1からR
nが照明されるまで続行される。これは、従来の照明系において視野絞り82が完全に開放される状況に対応する。
【0074】
次に、走査処理は、光パターンを修正することなく続行される。次に、上述の工程が逆向きに辿られ、すなわち、最後の行R
nだけが照明されるまで最初の行R
1で始まって1つづつオフにされ、これは
図9の右の図を参照されたい。最後の行Rnがオフにされると走査処理は終了する。
【0075】
残りのマイクロレンズ88の光入射ファセット92は、
図7から
図9を参照して上述したものと同一方式で照明することができる。行R
1からR
nの各々は、これらの行がオン又はオフにされる時に同数N個の光パルスを受けるので、マスク16上の各点が、走査処理全体の間に正確に同数の光パルスを受けることが保証される。従って、光源30は、光パルスの数に関する上述の条件が確実に成立することを保証するように、ミラー制御器50と同期させなければならない。
【0076】
行R
1からR
nのオン又はオフは、オン又はオフにされるスポットが、それぞれ、望ましい位置に誘導されるか、又は光学インテグレーター72の外側の光吸収面に誘導されるかのいずれかであるように、対応するミラー要素M
ijにおいて偏向角を設定することによって容易に達成することができる。スポット90をオン又はオフにすべきである場合には、光学インテグレーター72の光入射ファセットにわたってスポットを移動させることが必要である。望ましくない摂動を回避するために、スポット90は、連続する光パルスの間の間隔中に移動させなければならない。この移動は、ミラー要素M
ijの非常に迅速な移動を必要とする。
【0077】
2.第2の手法
長い距離にわたるスポット90のそのような迅速な移動は、スポット90を完全にオン又はオフにするのではなく、単一の第1のマイクロレンズ88の光入射ファセット92にわたって連続的に移動される場合に回避することができる。
【0078】
この手法を
図10から
図12を参照して以下に説明する。
【0079】
図10は、3つの隣接するマイクロレンズ88の光入射ファセット92a、92b、92c上の上面図である。光入射ファセット92a、92b、92cには、走査方向Yに沿って異なる高さの中心ストライプが覆われずに残るように、それぞれ遮光体対96a、96b、96cが固定される。この実施形態では、遮光体対96a、96b、96cは、中央の覆われないストライプが、X方向には制限されず、Y方向に沿ってのみ制限されるように寸法決めされる。
【0080】
簡略化の目的で、光学インテグレーター72の光入射ファセット92の3分の1に遮光体96aが設けられ、3分の1に遮光体96aが設けられ、残りの3分の1に遮光体96cが設けられると仮定している。
【0081】
図11aは、3種類92a、92b、92cの光入射ファセットが同数照明される場合に、中間視野平面80内で得られる強度分布を略示している。Y方向に沿った強度プロフィールは、最上位に達するまで増加し、その後再度減少する。この強度プロフィールは、走査方向Yに沿った台形強度プロフィールに近似する。異なる遮光体96a、96b、96cの数が増加すると、この近似は改善する。台形強度プロフィールの高さ及び傾きは、主に遮光体96a、96b、96cの分布によって決められる。
【0082】
走査処理の開始及び終了においては、走査方向Yに沿った強度プロフィールを修正すべきである。
図11b、
図11c、及び
図11dは、
図11aに示している強度プロフィールが、如何にして右側から徐々に切り整えられるかを示している。トリミング工程は、スポット90を走査方向Yに沿って遮光体96cで覆われた光入射ファセット92c上で移動させることで始まる。この場合、遮光体96cのうちの1つに最初に隣接しているスポット90の行がこの遮光体によって完全に遮蔽されることになり、この遮蔽は、
図11bに白い正方形90’で示している。この工程は繰り返されるが、今度は、遮光体96bが設けられた光入射ファセット92b上で照明されるスポット90も同様に同じ方向に沿って移動される。その結果、遮光体96bのうちの1つによってスポット90’’の行も同様に遮蔽される。この状況を
図11cに例示している。
【0083】
強度プロフィールの最上位に達すると、遮光体96aが設けられた光入射ファセット92a上のスポット90も同様に走査方向Yに沿って移動されることになる。その結果、遮光体96aのうちの1つによってスポット90’’’の行も同様に遮蔽される。この状況を
図11dに例示している。走査処理の開始においては、この工程を反対側から逆の順序で繰り返さなければならない。
【0084】
異なる遮光体対96a、96b、及び96cでそれぞれ覆われる光入射ファセット92a、92b、92cは、瞳面70内の強度分布に対する悪影響が最小にされるように、光学インテグレーター72の入射面にわたって分布させなければならない。そのような最適化された分布なしでは、スポット90が、走査処理の開始及び終了中に走査方向Yに沿って移動される時に、瞳面70内の光強度分布に対応する照明角度分布が変化することが生じる可能性がある。
【0085】
図12aから
図12cは、2つの極P1、P2が、光学インテグレーター72の光入射ファセット上で照明される二重極照明設定における上述の原理を示している。走査処理の開始及び終了においては、遮光体96cが設けられた光入射ファセット92cのみがマスク16の照明に寄与する。走査処理が続くと、遮光体96bが設けられた光入射ファセット92bも同様にマスク16の照明に寄与し、これは
図12bを参照されたい。最後に、遮光体96aが設けられた光入射ファセット92aも同様にマスク16の照明に寄与し、これは
図12cを参照されたい。
【0086】
図12aから
図12cで分るように、異なる種類の光入射ファセット92a、92b、92cは、これらの異なる種類の光入射ファセット92a、92b、92cのオン及びオフが各極P1、P2内の強度均衡に大きく影響を与えないように極P1、P2にわたって分布される。そのような均衡は、異なる種類の光入射ファセットが、
図12aから
図12cそれぞれの上部から下部に延びる3つの線に沿って配置された場合は得ることができない。
【0087】
この手法は、必要に応じて第1の手法と組み合わせることができる。この場合、走査方向Yに沿って照明視野14の台形又はあらゆる他の非矩形強度プロフィールを得ることができ、しかも遮光体対96a、96b、96cを用いずに得ることができる。この場合、オフにされるスポット90の行は遮光体へと移動せず、スポットを光学インテグレーター72の外側の吸収面に移動させることによってオフにされる。2つの連続する光パルス間の時間間隔が、スポット90を吸収面まで移動するのに十分であることを保証することのみが必要である。
【0088】
3.第3の手法
視野絞り対物系84のみを省き、その一方で照明系12内の別の位置において可動絞りブレードを用いることも可能である。これをミラーアレイ46、第1のコンデンサー58、及び第1のマイクロレンズ88と第2のマイクロレンズ94とを有する光学インテグレーター72を示す
図2の抜粋図である
図13に略示している。
【0089】
実線は、マイクロミラーM
ijのうちの第1の行RM
1のマイクロミラーM
ijから射出する光線LM
1を示している。この第1の行RM
1のマイクロミラーM
ijは、光学インテグレーター72の第1のマイクロレンズ88の光入射ファセット92の上部部分のみを照明するように制御される。その結果、光線LM
1は、マスク16上の視野14のうちでその縁部のうちの1つに最近接の部分を照明する。
【0090】
破線は、ミラーアレイ46のうちの中央行RM
5内のマイクロミラーM
ijから射出する光線LM
5を示している。この中央行RM
5のマイクロミラーM
ijは、光線LM
5が、第1のマイクロレンズ88の光入射ファセット92の中央部分のみを照明するように制御される。その結果、光線LM
5は、マスク16上で照明される視野14の中心を横断する線を照明する。
【0091】
点線は、マイクロミラーM
ijのうちの最終行RM
9のマイクロミラーM
ijから射出する光線LM
9を示している。この最終行RM
9のマイクロミラーM
ijは、光線LM
9が、第1のマイクロレンズ88の光入射ファセット92の下部部分のみを照明するように制御される。その結果、光線LM
9は、マスク16上で照明される視野14のうちで光線LM
1によって照明される縁部と反対に配置された縁部に最近接の部分を照明する。
【0092】
マイクロミラーアレイ46の直近には、不透明のブレード98が、走査処理中にアクチュエータ100を用いて走査方向Yに沿ってこのブレード98を移動させることができるように配置される。
図13に矢印で示しているように、ブレード98が下向きに移動し始めると、ブレード98は、最初にマイクロミラーM
ijのうちの第1の行RM
1のマイクロミラーM
ijから射出する光線LM
1を遮光することになる。その結果、マスク16上で照明される視野14は、Y方向から切り整えられることになる。次に、ブレード98は、マイクロミラーM
ijの隣接する行RM
2から射出する光線を遮蔽することになり、それによって照明視野14の更に別のトリミングが生じ、以降同様に続く。
【0093】
ブレード98が、中央行RM
5に達するまで移動し続けると、マスク16上で照明される視野14は、走査方向Yに沿ってその元の長さの半分しか持たないことになる。
【0094】
従って、第1のマイクロレンズ88の光入射ファセット92のある一定の部分を照明するミラー要素M
ijを適切に選択し、不透明のブレード又は別のダイヤフラムを用いてミラー要素M
ijを遮蔽することにより、マスク16上で照明される視野14の幾何学形状を変更することができる。
【0095】
V.作動方法
図14は、本発明によりマイクロリソグラフィ投影露光装置の照明系を作動させる方法の主要段階を示す流れ図である。
【0096】
第1の段階S1では、マイクロリソグラフィ投影露光装置10の照明系12が準備される。照明系12は、複数の光入射ファセット92を有する光学ラスタ要素72を含む。
【0097】
段階S2では、個別スポット90から編成される光パターンが、光学ラスタ要素72の光入射ファセット92上に生成される。
【0098】
段階S3では、マスク平面86内で照明される視野14の幾何学形状を変更すべきであると判断される。上述の判断を行う理由は、マスク16の変更、又は走査処理の開始及び終了それぞれにおいて照明視野14を開放及び遮断することを必要とする走査処理の変更とすることができる。
【0099】
次に、光入射ファセット92上の光パターンが、上述のように、スポットを再配列、及び/又は除去、及び/又は追加することによって変更される。
【0100】
好ましい実施形態の以上の説明は、一例として提供したものである。提供した開示内容から、当業者は、本発明及びそれに伴う利点を理解するだけでなく、開示した構造及び方法に対する明らかな様々な変形及び修正を見出すであろう。従って、本出願人は、特許請求の範囲及びその均等物によって定められる本発明の精神及び範囲に収まる全てのそのような変形及び修正を網羅することを求めるものである。