(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明においては各種アミノ酸残基を次の略語で記述する。
Ala:L−アラニン残基
Arg:L−アルギニン残基
Asn:L−アスパラギン残基
Asp:L−アスパラギン酸残基
Cys:L−システイン残基
Gln:L−グルタミン残基
Glu:L−グルタミン酸残基
Gly:グリシン残基
His:L−ヒスチジン残基
Hyp:L−ヒドロキシプロリン残基
Ile:L−イソロイシン残基
Leu:L−ロイシン残基
Lys:L−リジン残基
Met:L−メチオニン残基
Phe:L−フェニルアラニン残基
Pro:L−プロリン残基
Sar:サルコシン残基
Ser:L−セリン残基
Thr:L−トレオニン残基
Trp:L−トリプトファン残基
Tyr:L−チロシン残基
Val:L−バリン残基
なお、本明細書におけるペプチド鎖のアミノ酸配列は、定法に従い、N末端のアミノ酸残基を左側に、C末端のアミノ酸残基を右側に位置させて記載する。
【0011】
本発明のナノファイバーの製造方法は、合成コラーゲンとポリマーとを含有する紡糸溶液を調製する工程と、前記紡糸溶液を用いてエレクトロスピニング法により紡糸する工程とを含む。以下に、本発明について詳細に説明する。
【0012】
<1>合成コラーゲン
本発明の方法に用いられる合成コラーゲンは、次式(1)で示されるペプチドフラグメント(以降、ポリPYGと記す)を有するポリペプチドである(以降、合成コラーゲンと記す場合もある)。
―(Pro−Y−Gly)
n― (1)
ここでYはヒドロキシプロリンまたはプロリンであり、ヒドロキシプロリンは、例えば4Hypであり、trans−4−ヒドロキシ−L−プロリンが好ましい。
また、式(1)中、繰り返し数nは5〜9000の整数である。nがこの範囲であることにより、ポリペプチドは3重らせん構造形成をとり、ナノファイバー形成が容易となる。また、3重らせん構造の安定性の観点からnは5〜1000がより好ましく、10〜500がさらに好ましい。
本発明における合成コラーゲンのポリペプチド鎖は、直線状または1以上の分岐を有していてもよい。分岐を有する場合、分岐点以降に3重らせん構造が形成されていてもよく、さらにその3重らせん構造の後ろに分岐を有していてもよい。
なお、ポリペプチドが3重らせん構造をとっているか否かは、ポリペプチド溶液について円二色性スペクトルを測定することにより確認することができる。具体的には、波長220〜230nmに正のコットン効果、および波長195〜205nmに負のコットン効果を示す場合、そのポリペプチドは3重らせん構造をとっていると考えられる。
また、本発明における合成コラーゲンのポリペプチド鎖どうしは、互いに架橋されていてもよい。
【0013】
本発明における合成コラーゲンの重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、紡糸溶液の調製、紡糸の効率、及び3重らせん構造の安定性の観点から570〜700万が好ましく、2850〜30万がより好ましい。
ここで、合成コラーゲンの重量平均分子量は、例えば特開2003-321500号公
報に記載されている、カラム:Superdex 200 HR 10/30(GEヘルス
ケア・ジャパン株式会社製)、流速:0.5mL/min、溶離液:150mMのNaClを含む10mMリン酸塩緩衝液(pH7.4))分子量標準としてGelFiltra
tion LMW Calibration Kit及びGel Filtration H
MW Calibration Kit(GEヘルスケア・ジャパン株式会社製)を使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる方法、あるいは、カラム:Superdex peptide PE 7.5/300(GEヘルスケア・ジャパン株式会社製)
、流速:0.25mL/min、溶離液:150mMのNaClを含む10mMリン酸塩緩衝液(pH7.4))、分子量標準としてGel Filtration LMW Ca
libration Kit(GEヘルスケア・ジャパン株式会社製)とヒトインシュリ
ン、グリシンを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる方法により測定することができる。別の方法として、カラム:TSK−GEL6000PW XL−CP 8.0 x 300mm(東ソー製)、移動相20mM KH
2PO
4・H
3PO
4(pH3.0
):MeOH=8:2、カラム温度40℃、流速0.5mL/min、検出はUVモニターによる215nm及び示差屈折系、分子量標準として分子量50000から1600000のプルラン(昭和電工製)および分子量11900000のデキストラン(Polymer Standards Service GmbH)によるHPLCゲルパーミエー
ションクロマトグラフィーにより測定できる。また、このHPLCゲルパーミエーションクロマトグラフィーの検出器にWyatt Technology社のDAWN HELEOS、Optolab rEXを用いる事で、ゲル浸透クロマトグラフ/多角度レーザー
光散乱検出器(GPC−MALS)法としても測定する事ができる。本明細書において合成コラーゲンの重量平均分子量は、これらの方法によって測定された値である。
【0014】
本発明における合成コラーゲンのポリペプチドは、ポリPYGのみからなるものであってもよいが、3重らせん構造の安定性を損なわず、また本発明の効果を損なわない範囲において、ポリPYGの他にアミノ酸残基もしくはペプチドフラグメントまたはアルキレンを含んでもよい。
アミノ酸残基としては、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Hyp、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Sar、Ser、Thr、Trp、Tyr、Valから選択された少なくとも1種が挙げられる。ペプチドフラグメントとしては、前記アミノ酸残基の1種以上が複数個結合したペプチドが挙げられる。アルキレンとしては、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、特に限定されるものではないが、具体的には炭素数1〜18のアルキレンが挙げられ、実用的には炭素数2〜12のアルキレンが好ましい。
本発明における合成コラーゲンのポリペプチドは、ポリPYGとポリPYGの他のアミノ酸残基もしくはペプチドフラグメントまたはアルキレンを、重量比においてポリPYG:他のアミノ酸残基もしくはペプチドフラグメントまたはアルキレン他のペプチドフラグメント=1:99〜100:0、好ましくは10:90〜100:0の範囲で有する。
【0015】
本発明における合成コラーゲンのポリペプチドは、ナノファイバーの紡糸を阻害しない限り、無機酸(塩酸、硫酸等)、有機酸(酢酸、乳酸、マレイン酸、シュウ酸、クエン酸等)、金属(ナトリウム、カリウム等)、有機塩基(トリメチルアミン、トリエチルアミン等)との塩であってもよい。本発明における合成コラーゲンのポリペプチドの塩化合物は、単独または二種類以上の組合せであってもよい。
【0016】
ポリPYGを有するポリペプチドは、いずれの方法により得られたものであってもよい。
例えば、既知の固相合成法または液相合成法により取得したポリPYGを構成するアミノ酸からなるペプチドオリゴマーを用いて、縮合反応を行う方法により好ましく取得できる。
上記ペプチドオリゴマーの縮合反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒は、原料となるペプチドオリゴマーを溶解(一部または全部を溶解)または懸濁可能なものであればよく、通常、水または有機溶剤が使用できる。具体的には、水、アミド類(ジメチルホルムア
ミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホロアミド等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、窒素含有環状化合物(N−メチルピロリドン、ピリジン等)、ニトリル類(アセトニトリル等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等)、およびこれらの混合溶媒等である。これらの溶媒のうち、水、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドが好ましく使用される。
【0017】
また、上記ペプチドオリゴマーの縮合反応は、脱水剤(脱水縮合剤、縮合助剤)の存在下で行うことが好ましい。脱水縮合剤と縮合助剤との存在下で反応させると、脱保護とアミノ酸結合とを繰返す煩雑な処理を経ることなく、二量化や環化を抑制しつつ円滑に縮合反応が進行する。
【0018】
脱水縮合剤は、前記溶媒中で脱水縮合を効率よく行える限り特に限定されるものではなく、例えば、カルボジイミド系縮合剤(ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC=WSCI)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(WSCI
・HCl)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等)、フルオロホスフェート系
縮合剤(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゾトリアゾール−1−イル−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン化物塩(BOP))等)、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)が例示できる。
これらの脱水縮合剤は単独で又は二種以上組み合わせて混合物として使用できる。好ましい脱水縮合剤は、カルボジイミド系縮合剤(例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩)である。
【0019】
脱水縮合剤の使用量は、ペプチドフラグメントの総量1モルに対して、通常、水を含まない非水系溶媒を用いる場合0.7〜5モル、好ましくは0.8〜2.5モル、さらに好ましくは0.9〜2.3モル(例えば1〜2モル)の範囲である。水を含む溶媒(水系溶媒)においては、水による脱水縮合剤の失活があるので、脱水縮合剤の使用量は、ペプチドフラグメントの総量1モルに対して、通常、2〜500モル、好ましくは5〜250モル、さらに好ましくは10〜125モルの範囲である。
【0020】
縮合助剤は、縮合反応を促進する限り特に制限されず、例えば、N−ヒドロキシ多価カルボン酸イミド類(例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド(HONSu)、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イミド(HONB)等のN−ヒドロキシジカルボン酸イミド類)、N−ヒドロキシトリアゾール類(例えば、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)等のN−ヒドロキシベンゾトリアゾール類)、3−ヒドロキシ−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1,2,3−ベンゾトリアジン(HOObt)等のトリアジン類、2−ヒドロキシイミノ−2−シアノ酢酸エチルエステルが例示できる。
これらの縮合助剤も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい縮合助剤は、N−ヒドロキシジカルボン酸イミド類(HONSu等)、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール又はN−ヒドロキシベンゾトリアジン類(HOBt等)である。
縮合助剤の使用量は、溶媒の種類に関係なく、ペプチドフラグメントの総量1モルに対して、通常、0.5〜5モル、好ましくは0.7〜2モル、さらに好ましくは0.8〜1.5モルの範囲である。
【0021】
脱水縮合剤と縮合助剤とは適当に組み合わせて使用することが好ましい。脱水縮合剤と
縮合助剤との組合せとしては、例えば、DCC−HONSu(HOBtまたはHOOBt)、WSCI−HONSu(HOBt又はHOOBt)が挙げられる。
【0022】
上記ペプチドオリゴマーの縮合反応においては、反応溶液のpHを調節してもよく、通常、反応溶液のpHは中性付近(pH=6〜8程度)に調整される。pHの調節は、通常、無機塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなど)、有機塩基、無機酸(塩酸など)や有機酸を用いて行うことができる。
また、縮合反応に関与しない塩基を反応溶液に添加してもよい。縮合反応に関与しない塩基としては、第三級アミン類、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどのトリアルキルアミン類、N−メチルモルホリン、ピリジンなどの複素環式第三級アミン類などが例示できる。このような塩基の使用量は、通常、本ペプチドオリゴマーの総モル数の1〜2倍程度の範囲から選択できる。
【0023】
以上のようにして得られたポリペプチドには、反応に用いた試薬が残存している。これは本発明の方法における紡糸工程に影響するため、除去することが好ましい。残存している試薬の除去は、透析法、カラム法、限外ろ過法等の既知の手法を用いることができる。
【0024】
また、ポリペプチドの安定性および取扱いの容易さから考えると、反応溶媒を保存溶媒に置換することが好ましい。反応溶媒から目的とする保存溶媒への置換は、透析法においては目的とする保存溶媒を透析外液として使用することにより、カラム法においては目的とする保存溶媒を移動相として用いることにより置換することができる。
保存溶媒としては、得られた有効成分ポリペプチドの物理的性質等の変化を抑えられるものであれば特に限定されない。例えば、水、生理食塩水、弱酸から弱アルカリに緩衝能を有するバッファーを挙げることができる。ただし、本発明の方法における紡糸工程に影響を与える物質を含有しないことが好ましい。
【0025】
<2>ポリマー
本発明のナノファイバーの製造方法においては、ポリマーを紡糸基材として用いることにより、これまでナノファイバー化が困難であった合成コラーゲンをエレクトロスピニング法にて紡糸することが可能となる。その結果、合成コラーゲンを含有する均一かつ長い繊維状のナノファイバーを得ることができる。
【0026】
本発明におけるポリマーは、紡糸基材として用いることができるものであれば特に限定されず、合成物でも天然物でもよい。例えばポリエチレングリコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリベンズイミダゾール、ポリビニルアルコール、セルロース、酢酸セルロースブチレート、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンサルファイド、SBS共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、並びにこれらの共重合体、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンオキサイド、天然コラーゲン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸−グリコール酸共重合体、ポリアリレート、ポリプロピレンフマラート、ポリペプチド、タンパク質、コールタールピッチ、石油ピッチ、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネート、ポリビニルイソシアネート、ポリブチルイソシアネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリノルマルプロピルメタクリレート、ポリノルマルブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、これらのポリエステル樹脂の重合体、ポリパラフェニレンテレフタラミ
ド、ポリパラフェニレンテレフタラミド−3,4′―オキシジフェニレンテレフタラミド共重合体、ポリメタフェニレンイソフタラミド、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、メチルセルロース、プロピルセルロース、ベンジルセルロース、フィブロイン、天然ゴム、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルノルマルプロピルエーテル、ポリビニルイソプロピルエーテル、ポリビニルノルマルブチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリビニルターシャリーブチルエーテル、ポリビニリデンクロリド、ポリビニルメチルケトン、ポリメチルイソプロペニルケトン、ポリシクロペンテンオキシド、ポリスチレンサルホン、キチンおよびその誘導体、キトサンおよびその誘導体、ヒアルロン酸およびその誘導体、コンドロイチンおよびその誘導体、デオキシリボ核酸およびその誘導体、ポリグルタミン酸およびその誘導体、グルコマンナンおよびその誘導体などが挙げられる。これらのポリマーから選択される2種以上のポリマーの混合物が用いられてもよい。これらのうち、生体適合性のあるポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、天然コラーゲン、などが、得られるナノファイバーを医療材料用途に供するのに適するため、好ましい。
【0027】
本発明におけるポリマーの重量平均分子量は、特に限定されないが、5万〜100万であることが好ましく、6万〜90万であることがより好ましい。なお、かかる重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法、光散乱法で測定することができる。
【0028】
<3>溶媒
本発明における合成コラーゲンとポリマーとは、溶媒に溶解させて紡糸溶液として用いる。
かかる溶媒としては、合成コラーゲンやポリマーを溶解し、かつ紡糸する段階で蒸発し、繊維を形成可能なものであれば特に限定されない。例えば、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトン、スルホランアセトン、プロパノール、ジクロロメタン、蟻酸、ヘキサフルオロイソプロパノール、ヘキサフルオロアセトン、メチルエチルケトン、クロロホルム、イソプロパノール、トルエン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、ベンジルアルコール、1,4−ジオキサン、四塩化炭素、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、塩化メチレン、フェノール、ピリジン、トリクロロエタン、酢酸、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、アセトニトリル、N−メチルモルホリン−N−オキシド、ブチレンカーボネート、1,4−ブチロラクトン、ジエチルカーボネート、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジオキソラン、エチルメチルカーボネート、メチルホルマート、3−メチルオキサゾリジン−2−オン、メチルプロピオネート、2−メチルテトラヒドロフランなどが挙げられる。溶媒は一種を単独で用いてもよく、複数の溶媒の混合物であってもよい。
【0029】
<4>その他の任意成分
本発明の方法における紡糸溶液は、前述した必須成分の他に、紡糸を妨げない限りにおいて任意の成分を含有してもよい。かかる任意成分としては、接着剤、電解質などが挙げられる。
接着剤を添加すると、製造されたナノファイバーどうしが接触点で接着されるので、ナノファイバーを不織布の形態で得る際に強力で摩擦によるケバ立ちの少ない柔軟な不織布とすることができる。接着剤としては、製造されたナノファイバーどうしを接着でき、かつ紡糸溶液の溶媒に可溶であれば特に限定されないが、例えばホットメルト樹脂からなる接着剤、エラストマー系の接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ビニル系接着剤などが挙げられる。エラストマー系の接着剤としては、ポリクロロプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴムが例示され
る。接着剤を添加する場合は紡糸溶液中の合成コラーゲンとポリマーとの総量に対して0.5〜10重量%添加されることが好ましい。
【0030】
電解質を添加することによって紡糸溶液表面の電荷密度を上げることが出来、結果として紡糸性を向上させることが可能となる。電解質としては、紡糸溶液に可溶で、紡糸溶液中で電離するものであれば特に限定はされないが、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸二水素ナトリウム、炭酸マグネシウムが例示される。電解質を添加する場合は、紡糸溶液中の合成コラーゲンあるいはポリマーが塩析しない程度が望ましく、紡糸溶液中の合成コラーゲンとポリマーとの総量に対して0.5〜10重量%添加されることが好ましい。
【0031】
<5>紡糸溶液の調製工程
本発明の方法は、溶媒に合成コラーゲンとポリマーとを溶解させて紡糸溶液を調製する工程を含む。紡糸溶液の調製方法としては、合成コラーゲンとポリマーとはそれぞれ溶媒に溶解させて各溶液を混合してもよいし、いずれか一方を溶媒に溶解させた溶液に他方を添加して溶解させてもよい。また、調製の際は、合成コラーゲンを変性させない限りにおいて、適宜加温、攪拌等を行ってもよい。
紡糸溶液中の合成コラーゲンの濃度は0.1〜
10重量%であることが好ましく、
0.25〜
5.0重量%であることがより好ましい。また、紡糸溶液中のポリマーの濃度は0.1〜
10重量%であることが好ましく、
0.25〜10重量%であることがより好ましい。合成コラーゲンやポリマーの濃度をこのような範囲にすることにより、紡糸溶液中においてポリマー−ポリマー間またはポリマー−合成コラーゲン間に相互作用が生じ、連続繊維が形成されやすくなる。
紡糸溶液における合成コラーゲンとポリマーとの配合比率は、均一なナノファイバーをある程度の長さで得るためには、重量比で20:1〜1:100であることが好ましく、10:1〜1:40であることがより好ましい。
【0032】
<6>ナノファイバーの紡糸工程
本発明の方法は、前述したように調製した紡糸溶液を用いてエレクトロスピニング法(電界紡糸法)を行うことによりナノファイバーを紡糸する工程を含む。この工程によりナノスケールの微細かつ均一な径を有する繊維を製造できる。
エレクトロスピニング法は、周知の手段によって行うことができ、具体的には、紡糸溶液を充填したノズルとコレクター(基板)の間に電圧を印加した状態で、ノズルから紡糸溶液を吐出させて、コレクター上に繊維を回収する。エレクトロスピニング法を行う条件は、特に限定されず、紡糸溶液の種類や得られるナノファイバーの用途等に応じて適宜調整すればよい。本発明の方法における一般的な条件としては、例えば、印加電圧は8〜30kV、吐出速度は0.01〜1.00mL/時、ノズルとコレクターの間の垂直距離は100〜200mmとすることができ、ノズルは22〜25Gの径のものを使用することができる。紡糸環境は、相対湿度10〜40%、温度を10〜25℃とすることが好ましいが、特段厳密に制御を行わなくてもよい。
【0033】
本発明の製造方法により、直径5nm〜50μmの繊維を得ることができる。また、紡糸条件の設定・調整により、平均して200〜300nmの長く途切れないナノファイバーを得ることができる。また、ナノファイバー中に、塊状のビーズを含まないか含まれても少ない、均一なナノファイバーを得ることができる。
本発明により得られた合成コラーゲンを含有するナノファイバーは、機能性材料として、医療用材料など種々の用途に供することができる。例えば、合成コラーゲンの有する、血液凝固因子等の生体分子への高親和性を利用した吸着剤や、血液凝固能を利用した止血剤に適用したりすることができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
エレクトロスピニング法にて、実施例1〜7のナノファイバーを作製した。それらのナノファイバーについて、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。使用機器はJSM-5
600(JEOL社製)、加速電圧は20kVで観察を行った。
【0036】
<実施例1>SC/NC(10:1)ブレンドナノファイバー
合成コラーゲン(SC;JNC株式会社製)と、天然コラーゲン(NC;NMPコラーゲンPS/IP、ニッポンハム株式会社製)とを、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP;和光純薬社製)にSC/NC/HFIPが50mg/5mg/1mLとなるように溶解させて、紡糸溶液とした。25Gステンレスニードルとコレクターとの間(垂直距離150mm)に高電圧発生装置により10kVの電圧を印加した。紡糸溶液を前記ニードルに接続したシリンジに充填し、吐出速度0.1mL/時でコレクター上に押し出した。なお、紡糸環境の湿度及び温度は制御せず、実験室環境下にて紡糸を行った。
SEM観察したところ、平均直径145nmでビーズや粒子を含まない比較的均一なナノファイバーが得られたことがわかった(
図1a,b)。
【0037】
<実施例2>SC/NC(1:1)ブレンドナノファイバー
紡糸溶液の濃度を、SC/NC/HFIPが50mg/50mg/1mLとした他は実施例1と同様の操作を行い、紡糸した。
SEM観察したところ、リボン状ファイバーが得られたことがわかった(
図1c,d)
【0038】
<実施例3>SC/PGAブレンドナノファイバー
合成コラーゲン(SC;JNC株式会社製)と、ポリグリコール酸(PGA;シグマアルドリッチ社製)とを、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP;和光純薬社製)にSC/PGA/HFIPが50mg/10mg/1mLとなるように溶解させて、紡糸溶液とした。25Gステンレスニードルとコレクターとの間(垂直距離150mm)に高電圧発生装置により12kVの電圧を印加した。紡糸溶液を前記ニードルに接続したシリンジに充填し、吐出速度0.1mL/時でコレクター上に押し出した。なお、紡糸環境の湿度及び温度は制御せず、実験室環境下にて紡糸を行った。
SEM観察したところ、平均直径71nmであったが、多くのビーズを含むナノファイバーが得られたことがわかった(
図2)。
【0039】
<実施例4>SC/PEG500kブレンドナノファイバー
合成コラーゲン(SC;JNC株式会社製)の0.5重量%水溶液と、ポリエチレングリコール(PEG;重量平均分子量500,000、和光純薬社製)の10重量%水溶液とをそれぞれ調製し、SC:PEG=2:1(体積比)で混合し紡糸溶液とした。25Gステンレスニードルとアルミホイル製コレクターとの間(垂直距離200mm)に高電圧発生装置により8kVの電圧を印加した。紡糸溶液を前記ニードルに接続したシリンジに充填し、吐出速度0.01mL/時でコレクター上に押し出し、均一に分散した不織布として回収した。なお、紡糸環境の湿度は乾燥窒素を灌流することにより制御し、紡糸中は常に相対湿度15%以下に保持した。また、紡糸環境の温度は制御せず、室温下で紡糸を行った。
SEM観察したところ、平均直径115nmで比較的均一なナノファイバーが得られたことがわかった(
図3a,b)。
【0040】
<実施例5>SC/PEG900kブレンドナノファイバー
合成コラーゲン(SC;JNC株式会社製)の0.5重量%水溶液と、ポリエチレングリコール(PEG;重量平均分子量900,000、シグマアルドリッチ社製)の5重量%水溶液とをそれぞれ調製し、SC:PEG=2:1(体積比)で混合し紡糸溶液とした点、及び吐出速度を0.03mL/時とした点の他は実施例4と同様の操作を行い、紡糸した。
SEM観察したところ、平均直径87nmの繊維部分は比較的均一であったが、紡錘形ビーズが多数含まれるナノファイバーが得られたことがわかった(
図3c,d)。
【0041】
<実施例6>SC/PVA2000ブレンドナノファイバー
合成コラーゲン(SC;JNC株式会社製)の0.5重量%水溶液と、ポリビニルアルコール(PVA;平均重合度2,000、けん化度98.0mol%、和光純薬社製)の0.5重量%水溶液とをそれぞれ調製し、SC:PVA=1:1(体積比)で混合し紡糸溶液とした。25Gステンレスニードルとアルミホイル製コレクターとの間(垂直距離200mm)に高電圧発生装置により15kVの電圧を印加した。紡糸溶液を前記ニードルに接続したシリンジに充填し、吐出速度0.2mL/時でコレクター上に押し出し、均一に分散した不織布として回収した。なお、紡糸環境の湿度は乾燥窒素を灌流することにより制御し、紡糸中は常に相対湿度15%以下に保持した。また、紡糸環境の温度は制御せず、室温下で紡糸を行った。
SEM観察したところ、平均直径213nmでビーズや粒子を含まない比較的均一なナノファイバーが得られたことがわかった(
図4a,b)。
【0042】
<実施例7>SC/PVA1500ブレンドナノファイバー
合成コラーゲン(SC;JNC株式会社製)の0.5重量%水溶液と、ポリビニルアルコール(PVA;平均重合度1,500、けん化度78〜82mol%、和光純薬社製)の20重量%水溶液とをそれぞれ調製し、SC:PVA=1:1(体積比)で混合し紡糸溶液とした。25Gステンレスニードルとアルミホイル製コレクターとの間(垂直距離200mm)に高電圧発生装置により12kVの電圧を印加した。紡糸溶液を前記ニードルに接続したシリンジに充填し、吐出速度0.1mL/時でコレクター上に押し出し、均一に分散した不織布として回収した。なお、紡糸環境の湿度は乾燥窒素を灌流することにより制御し、紡糸中は常に相対湿度15%以下に保持した。また、紡糸環境の温度は制御せず、室温下で紡糸を行った。
SEM観察したところ、平均直径201nmでビーズや粒子を含まない比較的均一なナノファイバーが得られたことがわかった(
図4c,d)。