【実施例】
【0055】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明の特徴とするところをより一層明確にする。ただし、本発明は、これら実施例及び比較例に限定されるものではない。なお、後述するメタノール転化率及び一酸化炭素選択率は、ガスクロマトグラフによる反応器出口ガスの組成分析により決定した値である。なお、組成分析に用いた装置は、島津製作所製ガスクロマトグラフ(型番:GC−8A)である。また、一酸化炭素選択率は、生成した一酸化炭素のモル数を生成した二酸化炭素と一酸化炭素のモル数の和で除したものである。また、下記実施例及び比較例では反応ガスにアルゴンガスが含まれているが、単に実験を容易とするためのものであり、実際の実施では必ずしも必要としない。
【0056】
[比較例1]
硝酸銅、硝酸亜鉛、及び硝酸ジルコニルを、モル比で1.0:1.04:0.52となるように蒸留水に溶解し、その合計濃度を0.5mol/Lとした。得られた金属化合物を含有する水溶液を80℃に加熱し、該金属化合物含有水溶液中の金属元素の合計当量数に対して、1.2倍当量となる量の80℃の1規定の炭酸ナトリウム水溶液を加えて1時間攪拌することにより沈殿を得た。得られた沈殿を蒸留水で洗浄後、130℃で15時間乾燥させ、続けて空気中500℃で12時間加熱することにより、酸化銅微粒子、酸化亜鉛微粒子、酸化ジルコニウム微粒子の混合凝集体からなる共沈法銅触媒を得た。得られた触媒を破砕することにより、50〜100メッシュの粉末状とした。
【0057】
得られた共沈法触媒は、該触媒中に含まれる銅、亜鉛、及びジルコニウムの各金属元素量に基づいて、これらを酸化物とした時の重量に換算し、その合計量を基準として、銅を27重量%含むものであった。この共沈法銅触媒のX線回折パターンから求められた酸化銅の結晶子径は12nm、酸化亜鉛の結晶子径は10nm、酸化ジルコニウムの結晶子径は7nmであった。なお、X線回析パターンは、マックサイエンス社製のX線回折装置(型番:MP6XCE)を用いて測定した。
【0058】
この触媒を固定床流通式反応装置の反応器に充填後、メタノール、水蒸気及びアルゴンからなる反応ガス(容積比 メタノール:水蒸気:アルゴン=1:1.2:0.51)をメタノール供給速度40L/g(触媒)・hの条件で、250℃で1時間反応器に供給することによって触媒を還元した。
【0059】
還元後、反応器を400℃に昇温することによりメタノールの水蒸気改質反応を開始し、メタノールを主として水素及び二酸化炭素に変換した。反応開始1時間後におけるメタノール転化率は91%、一酸化炭素選択率は3.8%であった。触媒の耐久性を評価するため、その後、反応ガス流通下で500℃に昇温して6時間保ち、引き続き400℃で1時間保った時のメタノール転化率は69%、一酸化炭素転化率は4.3%であった。そして、反応を停止して触媒を室温にした。次に、触媒の長期耐久性を評価する試験としてアルゴン気流下で室温から400℃まで0.5時間で昇温し、反応ガスの供給下400℃で1時間、500℃で7時間、400℃で1時間反応を行った後、反応を停止することを2回繰り返した。400℃における最終的なメタノール転化率は49%、一酸化炭素選択率は4.3%であった。反応後における銅微粒子の結晶子径は17nm、酸化亜鉛微粒子の結晶子径は16nm、また、酸化ジルコニウムの結晶子径は13nmであった。
【0060】
[実施例1]
比較例1と同様に硝酸銅、硝酸亜鉛、及び硝酸ジルコニルを、モル比で1.0:1.04:0.52となるように蒸留水に溶解し、その合計濃度を0.5mol/Lとした。これにジルコニア担体粉末(触媒学会、参照触媒JRC−ZRO−2:比表面積、254m
2/g)を溶解された金属量に対してモル比で1.57倍加え、撹拌して懸濁させた。得られた懸濁液を80℃に加熱し、比較例1と同様に炭酸ナトリウム水溶液を加えて攪拌することにより沈殿を得た。
【0061】
比較例1と同様にして得られた沈殿を洗浄後、乾燥・加熱して、ジルコニア担体に酸化銅微粒子・酸化亜鉛微粒子・酸化ジルコニウム微粒子の混合凝集体が覆うように付着した銅触媒を得た。得られた銅触媒は、該触媒中に含まれる銅、亜鉛、及びジルコニウムの各金属元素量に基づいて、これらを酸化物とした時の重量に換算し、その合計量を基準として、銅を9重量%、ジルコニア担体を68重量%含むものであった。この銅触媒のX線回折パターンから求められた酸化銅の結晶子径は13nm、酸化亜鉛の結晶子径は10nmであり、比較例1と比べてほぼ同じであった。このことはジルコニア担体を被覆している微粒子の凝集体は比較例1で製造された微粒子の凝集体とほぼ同じであることを示している。また、酸化ジルコニウムの結晶子径は15nmであったが、これはジルコニア担体に由来するものであると考えられる。得られた銅触媒の透過電子顕微鏡写真を
図1に示す。この図から上記方法によって得られた酸化銅微粒子・酸化亜鉛微粒子・酸化ジルコニウム微粒子の混合凝集体は担体粒子表面(金属酸化物担体表面)をほぼ完全に覆うように付着していることがわかる。
【0062】
この触媒を比較例1と同一の条件でメタノールの水蒸気改質反応に供した。400℃での反応開始1時間後におけるメタノール転化率は90%、一酸化炭素選択率は3.7%であり、比較例1の共沈法銅触媒とほぼ同等の触媒活性を示した。触媒の耐久性を評価するため、その後、反応ガス流通下で500℃に昇温して6時間保ち、引き続き400℃で1時間保った時のメタノール転化率は69%、一酸化炭素転化率は3.0%であり、比較例1の共沈法銅触媒とほぼ同等の触媒活性を示した。そして、反応を停止して触媒を室温にした。その後の触媒の長期耐久性を評価するための試験では400℃における最終的なメタノール転化率は54%、一酸化炭素選択率は2.9%であり比較例1の共沈法銅触媒より高い活性を示した。反応後における銅微粒子の結晶子径は12nm、酸化亜鉛微粒子の結晶子径は14nmであり、比較例1に比べて小さく、ジルコニア担体に覆うように付着している微粒子の混合凝集体の焼結の進行は、その組成・形状が類似しているにもかかわらず共沈法で製造された混合凝集体に比べて遅く、その結果、反応活性低下が小さいことが示された。尚、酸化ジルコニウムの結晶子径は16nmであった。
【0063】
[比較例2]
硝酸銅、硝酸亜鉛、硝酸ジルコニル、硝酸イットリウム、硝酸インジウムを、モル比で1.0:1.04:0.33:0.11:0.08となるように蒸留水に溶解し、その合計濃度を0.5mol/Lとした。比較例1と同様に炭酸ナトリウム水溶液を加えて攪拌することにより沈殿を得た。得られた沈殿を洗浄後、乾燥・加熱して、酸化銅微粒子・酸化亜鉛微粒子・イットリア−ジルコニア微粒子・酸化インジウム微粒子の混合凝集体からなる共沈銅触媒を得た。
【0064】
得られた共沈銅触媒は、該触媒中に含まれる銅、亜鉛、ジルコニウム、イットリウム、インジウムの各金属元素量に基づいて、これらを酸化物とした時の重量に換算し、その合計量を基準として、銅を28重量%含むものであった。この共沈銅触媒のX線回折パターンから求められた酸化銅の結晶子径は13nm、酸化亜鉛の結晶子径は12nmであった。また、イットリア−ジルコニアの結晶子径は7nmであった。
【0065】
この触媒を固定床流通式反応装置の反応器に充填後、メタノール、水蒸気及びアルゴンからなる反応ガス(容積比 メタノール:水蒸気:アルゴン=1:1.2:0.51)をメタノール供給速度20L/g(触媒)・hの条件で250℃で1時間反応器に供給することによって触媒を還元した。
【0066】
還元後、反応器を400℃に昇温することによりメタノールの水蒸気改質反応を開始し、メタノールを主として水素及び二酸化炭素に変換した。反応開始1時間後におけるメタノール転化率は93%、一酸化炭素選択率は2.9%であった。その後、触媒の耐久性を評価するため、反応ガス流通下で500℃に昇温して6時間保ち、引き続き400℃で1時間保った時のメタノール転化率は47%、一酸化炭素転化率は2.0%であった。その後、反応を停止して触媒を室温にした。次に、触媒の長期耐久性を評価する試験としてアルゴン気流下で室温から400℃まで0.5時間で昇温し、反応ガスの供給下400℃で1時間、500℃で7時間、400℃で1時間反応を行った後、反応を停止することを2回繰り返した。400℃における最終的なメタノール転化率は40%、一酸化炭素選択率は1.9%であった。反応後における銅微粒子の結晶子径は15nm、酸化亜鉛微粒子の結晶子径は18nm、また、イットリア−ジルコニアの結晶子径は7nmであった。
【0067】
[実施例2]
比較例2と同様に硝酸銅、硝酸亜鉛、硝酸ジルコニル、硝酸イットリウム、硝酸インジウムを、モル比で1.0:1.04:0.33:0.11:0.08となるように蒸留水に溶解し、その合計濃度を0.5mol/Lとした。これにセリア担体粉末(触媒学会、参照触媒JRC−CEO−2:比表面積、123m
2/g)を溶解された金属量に対してモル比で0.32倍加え、撹拌して懸濁させた。得られた懸濁液を80℃に加熱し、比較例2と同様に炭酸ナトリウム水溶液を加えて攪拌することにより沈殿を得た。
【0068】
比較例2と同様にして得られた沈殿を洗浄後、乾燥・加熱して、セリア担体に酸化銅微粒子・酸化亜鉛微粒子・イットリア−ジルコニア微粒子・酸化インジウム微粒子の混合凝集体が覆うように付着した銅触媒を得た。
【0069】
得られた銅触媒は、該触媒中に含まれる銅、亜鉛、ジルコニウム、イットリウム、インジウム、及びセリウムの各金属元素量に基づいて、これらを酸化物とした時の重量に換算し、その合計量を基準として、銅を17重量%、セリア担体を38重量%含むものであった。この銅触媒のX線回折パターンから求められた酸化銅の結晶子径は12nm、酸化亜鉛の結晶子径は13nmであり、比較例2と比べてほぼ同じであった。このことはセリア担体を覆うように付着している微粒子の混合凝集体は比較例2で製造された微粒子の混合凝集体とほぼ同じであることを示している。尚、セリアの結晶子径は8nmであり、イットリア−ジルコニアに由来するピークはセリアに由来するピークと重なり結晶子径を求められなかった。
【0070】
この触媒を比較例2と同一の条件でメタノールの水蒸気改質反応に供した。400℃での反応開始1時間後におけるメタノール転化率は89%、一酸化炭素選択率は4.1%であり、比較例2の共沈法銅触媒とほぼ同等の触媒活性を示した。触媒の耐久性を評価するため、その後、反応ガス流通下で500℃に昇温して6時間保ち、引き続き400℃で1時間保った時のメタノール転化率は62%、一酸化炭素転化率は2.7%であり、比較例2の共沈法銅触媒に比べて高い触媒活性を示した。そして、反応を停止して触媒を室温にした。その後の触媒の長期耐久性を評価するための試験では400℃における最終的なメタノール転化率は49%、一酸化炭素選択率は2.6%であり比較例2の共沈法銅触媒より高い活性を示した。反応後における銅微粒子の結晶子径は13nm、酸化亜鉛微粒子の結晶子径は17nmであり、比較例2に比べて小さく、セリア担体を覆うように付着している微粒子の混合凝集体の焼結の進行は、その組成・形状が類似しているにもかかわらず共沈法で製造された混合凝集体に比べて遅く、その結果、反応活性低下が小さいことが示された。尚、セリアの結晶子径は9nmであった。
【0071】
[実施例3]
比較例2と同様に硝酸銅、硝酸亜鉛、硝酸ジルコニル、硝酸イットリウム、硝酸インジウムを、モル比で1.0:1.04:0.33:0.11:0.08となるように蒸留水に溶解し、その合計濃度を0.5mol/Lとした。これにジルコニア担体粉末(触媒学会、参照触媒JRC−ZRO−2:比表面積、254m
2/g)を溶解された金属量に対してモル比で0.17倍加え、撹拌して懸濁させた。得られた懸濁液を80℃に加熱し、比較例2と同様に炭酸ナトリウム水溶液を加えて攪拌することにより沈殿を得た。
【0072】
比較例2と同様にして得られた沈殿を洗浄後、乾燥・加熱して、ジルコニア担体に酸化銅微粒子・酸化亜鉛微粒子・イットリア−ジルコニア微粒子・酸化インジウム微粒子の混合凝集体が覆うように付着した銅触媒を得た。
【0073】
得られた銅触媒は、該触媒中に含まれる銅、亜鉛、ジルコニウム、イットリウム、インジウム、及びセリウムの各金属元素量に基づいて、これらを酸化物とした時の重量に換算し、その合計量を基準として、銅を23重量%、ジルコニア担体を19重量%含むものであった。この銅触媒のX線回折パターンから求められた酸化銅の結晶子径は12nm、酸化亜鉛の結晶子径は10nmであり、比較例2と比べてほぼ同じであった。このことはジルコニア担体を覆うように付着している微粒子の混合凝集体は比較例2で製造された微粒子の混合凝集体とほぼ同じであることを示している。また、酸化ジルコニウムの結晶子径は10nmであったが、これはジルコニア担体に由来するものであると考えられる。
【0074】
この触媒を比較例2と同一の条件でメタノールの水蒸気改質反応に供した。400℃での反応開始1時間後におけるメタノール転化率は93%、一酸化炭素選択率は3.0%であり、比較例2の共沈法銅触媒とほぼ同等の触媒活性を示した。触媒の耐久性を評価するため、その後、反応ガス流通下で500℃に昇温して6時間保ち、引き続き400℃で1時間保った時のメタノール転化率は59%、一酸化炭素転化率は1.4%であり、比較例2の共沈法銅触媒に比べて高い触媒活性を示した。そして、反応を停止して触媒を室温にした。その後の触媒の長期耐久性を評価するための試験では400℃における最終的なメタノール転化率は51%、一酸化炭素選択率は1.5%であり比較例2の共沈法銅触媒より高い活性を示した。反応後における銅微粒子の結晶子径は13nm、酸化亜鉛微粒子の結晶子径は17nmであり、比較例2に比べて小さく、ジルコニア担体を覆うように付着している微粒子の混合凝集体の焼結の進行は、その組成・形状が類似しているにもかかわらず共沈法で製造された凝集体に比べて遅く、その結果、反応活性低下が小さいことが示された。尚、酸化ジルコニウムの結晶子径は12nmであった。
【0075】
[実施例4]
比較例2と同様に硝酸銅、硝酸亜鉛、硝酸ジルコニル、硝酸イットリウム、硝酸インジウムを、モル比で1.0:1.04:0.33:0.11:0.08となるように蒸留水に溶解し、その合計濃度を0.5mol/Lとした。これにジルコニア担体粉末(触媒学会、参照触媒JRC−ZRO−3:比表面積、94m
2/g)を溶解された金属量に対してモル比で0.67倍加え、撹拌して懸濁させた。得られた懸濁液を80℃に加熱し、比較例2と同様に炭酸ナトリウム水溶液を加えて攪拌することにより沈殿を得た。
【0076】
比較例2と同様にして得られた沈殿を洗浄後、乾燥・加熱して、ジルコニア担体に酸化銅微粒子・酸化亜鉛微粒子・イットリア−ジルコニア微粒子・酸化インジウム微粒子の混合凝集体が覆うように付着した銅触媒を得た。
【0077】
得られた銅触媒は、該触媒中に含まれる銅、亜鉛、ジルコニウム、イットリウム、インジウム、及びセリウムの各金属元素量に基づいて、これらを酸化物とした時の重量に換算し、その合計量を基準として、銅を14重量%、ジルコニア担体を48重量%含むものであった。この銅触媒のX線回折パターンから求められた酸化銅の結晶子径は12nm、酸化亜鉛の結晶子径は10nmであり、比較例2と比べてほぼ同じであった。このことはジルコニア担体を覆うように付着している微粒子の混合凝集体は比較例2で製造された微粒子の混合凝集体とほぼ同じであることを示している。また、酸化ジルコニウムの結晶子径は10nmであったが、これはジルコニア担体に由来するものであると考えられる。
【0078】
この触媒を比較例2と同一の条件でメタノールの水蒸気改質反応に供した。400℃での反応開始1時間後におけるメタノール転化率は96%、一酸化炭素選択率は2.9%であり、比較例2の共沈法銅触媒とほぼ同等の触媒活性を示した。触媒の耐久性を評価するため、その後、反応ガス流通下で500℃に昇温して6時間保ち、引き続き400℃で1時間保った時のメタノール転化率は63%、一酸化炭素転化率は1.9%であり、比較例2の共沈法銅触媒に比べて高い触媒活性を示した。そして、反応を停止して触媒を室温にした。その後の触媒の長期耐久性を評価するための試験では、400℃における最終的なメタノール転化率は57%、一酸化炭素選択率は2.0%であり比較例2の共沈法銅触媒より高い活性を示した。反応後における銅微粒子の結晶子径は14nm、酸化亜鉛微粒子の結晶子径は10nmであり、比較例2に比べて小さく、ジルコニア担体を覆うように付着している微粒子の混合凝集体の焼結の進行は、その組成・形状が類似しているにもかかわらず共沈法で製造された凝集体に比べて遅く、その結果、反応活性低下が小さいことが示された。尚、酸化ジルコニウムの結晶子径は12nmであった。
【0079】
[実施例5]
比較例2と同様に硝酸銅、硝酸亜鉛、硝酸ジルコニル、硝酸イットリウム、硝酸インジウムを、モル比で1.0:1.04:0.33:0.11:0.08となるように蒸留水に溶解し、その合計濃度を0.5mol/Lとした。これにジルコニア担体粉末(触媒学会、参照触媒JRC−ZRO−2:比表面積、254m
2/g)を溶解された金属量に対してモル比で1.57倍加え、撹拌して懸濁させた。得られた懸濁液を80℃に加熱し、比較例2と同様に炭酸ナトリウム水溶液を加えて攪拌することにより沈殿を得た。
【0080】
比較例2と同様にして得られた沈殿を洗浄後、乾燥・加熱して、ジルコニア担体に酸化銅微粒子・酸化亜鉛微粒子・イットリア−ジルコニア微粒子・酸化インジウム微粒子の混合凝集体が覆うように付着した銅触媒を得た。
【0081】
得られた銅触媒は、該触媒中に含まれる銅、亜鉛、ジルコニウム、イットリウム、インジウム、及びセリウムの各金属元素量に基づいて、これらを酸化物とした時の重量に換算し、その合計量を基準として、銅を9重量%、ジルコニア担体を68重量%含むものであった。この銅触媒のX線回折パターンからは酸化銅及び酸化亜鉛の明瞭なピークは観測されなかった。このことはジルコニア担体を覆うように付着している微粒子の混合凝集体中の粒子サイズが比較例2で製造された微粒子の凝集体と比べて小さいことを示しており、条件を選ぶことにより単なる共沈法による微粒子混合凝集体より更に微粒子化が可能であることを示唆している。また、酸化ジルコニウムの結晶子径は16nmであったが、これはジルコニア担体に由来するものであると考えられる。
【0082】
この触媒を比較例2と同一の条件でメタノールの水蒸気改質反応に供した。400℃での反応開始1時間後におけるメタノール転化率は93%、一酸化炭素選択率は3.3%であり、比較例2の共沈法銅触媒とほぼ同等の触媒活性を示した。触媒の耐久性を評価するため、その後、反応ガス流通下で500℃に昇温して6時間保ち、引き続き400℃で1時間保った時のメタノール転化率は70%、一酸化炭素転化率は1.9%であり、比較例2の共沈法銅触媒に比べて高い触媒活性を示した。そして、反応を停止して触媒を室温にした。次に、触媒の長期耐久性を評価する試験としてアルゴン気流下で室温から400℃まで0.5時間で昇温し、反応ガスの供給下400℃で1時間、500℃で7時間、400℃で1時間反応を行った後、反応を停止することを2回繰り返した。その結果、400℃におけるメタノール転化率は59%、一酸化炭素選択率は1.7%であり比較例2の共沈法銅触媒より高い活性を示した。更に同様の反応試験を3回繰り返した。400℃における最終的なメタノール転化率は54%、一酸化炭素選択率は1.5%であった。反応後における銅微粒子の結晶子径は9nm、酸化亜鉛微粒子の結晶子径は22nmであり、比較例2に比べて銅微粒子の結晶子径は明らかに小さく長期にわたる試験においてもジルコニア担体を覆うように付着している微粒子の混合凝集体の焼結の進行が遅く、その結果、反応活性低下が小さいことが示された。尚、酸化ジルコニウムの結晶子径は16nmであった。
【0083】
[実施例6]
比較例2と同様に硝酸銅、硝酸亜鉛、硝酸ジルコニル、硝酸イットリウム、硝酸インジウムを、モル比で1.0:1.04:0.33:0.11:0.08となるように蒸留水に溶解し、その合計濃度を0.5mol/Lとした。これにジルコニア担体粉末(触媒学会、参照触媒JRC−ZRO−2:比表面積、254m
2/g)を溶解された金属量に対してモル比で2.69倍加え、撹拌して懸濁させた。得られた懸濁液を80℃に加熱し、比較例2と同様に炭酸ナトリウム水溶液を加えて攪拌することにより沈殿を得た。
【0084】
比較例2と同様にして得られた沈殿を洗浄後、乾燥・加熱して、ジルコニア担体に酸化銅微粒子・酸化亜鉛微粒子・イットリア−ジルコニア微粒子・酸化インジウム微粒子の混合凝集体が覆うように付着した銅触媒を得た。
【0085】
得られた銅触媒は、該触媒中に含まれる銅、亜鉛、ジルコニウム、イットリウム、インジウム、及びセリウムの各金属元素量に基づいて、これらを酸化物とした時の重量に換算し、その合計量を基準として、銅を6重量%、ジルコニア担体を79重量%含むものであった。この銅触媒のX線回折パターンからは酸化銅及び酸化亜鉛の明瞭なピークは観測されなかった。このことはジルコニア担体を覆うように付着している微粒子の混合凝集体中の粒子サイズが比較例2で製造された微粒子の凝集体と比べて小さいことを示しており、条件を選ぶことにより単なる共沈法による微粒子混合凝集体より更に微粒子化が可能であることを示唆している。また、酸化ジルコニウムの結晶子径は14nmであったが、これはジルコニア担体に由来するものであると考えられる。
【0086】
この触媒を比較例2と同一の条件でメタノールの水蒸気改質反応に供した。400℃での反応開始1時間後におけるメタノール転化率は100%、一酸化炭素選択率は3.7%であり、比較例2の共沈法銅触媒より高い触媒媒活性を示した。触媒の耐久性を評価するため、その後、反応ガス流通下で500℃に昇温して6時間保ち、引き続き400℃で1時間保った時のメタノール転化率は74%、一酸化炭素転化率は2.3%であり、比較例2の共沈法銅触媒に比べて高い触媒活性を示した。そして、反応を停止して触媒を室温にした。次に、触媒の長期耐久性を評価する試験としてアルゴン気流下で室温から400℃まで0.5時間で昇温し、反応ガスの供給下400℃で1時間、500℃で7時間、400℃で1時間反応を行った後、反応を停止することを2回繰り返した。その結果、400℃におけるメタノール転化率は59%、一酸化炭素選択率は1.9%であり比較例2の共沈法銅触媒より高い活性を示した。更に同様の反応試験を3回繰り返した。400℃における最終的なメタノール転化率は54%、一酸化炭素選択率は1.5%であった。反応後における銅微粒子の結晶子径は9nm、酸化亜鉛に由来するXRDピークは検出されず、比較例2に比べて銅微粒子の結晶子径は明らかに小さく長期にわたる試験においてもジルコニア担体を覆うように付着している微粒子の混合凝集体の焼結の進行が遅く、その結果、反応活性低下が小さいことが示された。尚、酸化ジルコニウムの結晶子径は16nmであった。
【0087】
[実施例7]
比較例2と同様に硝酸銅、硝酸亜鉛、硝酸ジルコニル、硝酸イットリウム、硝酸インジウムを、モル比で1.0:1.04:0.33:0.11:0.08となるように蒸留水に溶解し、その合計濃度を0.5mol/Lとした。これにジルコニア担体粉末(触媒学会、参照触媒JRC−ZRO−2:比表面積、254m
2/g)を溶解された金属量に対してモル比で6.05倍加え、撹拌して懸濁させた。得られた懸濁液を80℃に加熱し、比較例2と同様に炭酸ナトリウム水溶液を加えて攪拌することにより沈殿を得た。
【0088】
比較例2と同様にして得られた沈殿を洗浄後、乾燥・加熱して、ジルコニア担体に酸化銅微粒子・酸化亜鉛微粒子・イットリア−ジルコニア微粒子・酸化インジウム微粒子の混合凝集体が覆うように付着した銅触媒を得た。
【0089】
得られた銅触媒は、該触媒中に含まれる銅、亜鉛、ジルコニウム、イットリウム、インジウム、及びセリウムの各金属元素量に基づいて、これらを酸化物とした時の重量に換算し、その合計量を基準として、銅を3重量%、ジルコニア担体を89重量%含むものであった。この銅触媒のX線回折パターンからは酸化銅及び酸化亜鉛の明瞭なピークは観測されなかった。このことはジルコニア担体を覆うように付着している微粒子の混合凝集体中の粒子サイズが比較例2で製造された微粒子の凝集体と比べて小さいことを示しており、条件を選ぶことにより単なる共沈法による微粒子混合凝集体より更に微粒子化が可能であることを示唆している。また、酸化ジルコニウムの結晶子径は15nmであったが、これはジルコニア担体に由来するものであると考えられる。
【0090】
この触媒を比較例2と同一の条件でメタノールの水蒸気改質反応に供した。400℃での反応開始1時間後におけるメタノール転化率は100%、一酸化炭素選択率は3.1%であり、比較例2の共沈法銅触媒より高い触媒媒活性を示した。触媒の耐久性を評価するため、その後、反応ガス流通下で500℃に昇温して6時間保ち、引き続き400℃で1時間保った時のメタノール転化率は66%、一酸化炭素転化率は1.4%であり、比較例2の共沈法銅触媒に比べて高い触媒活性を示した。そして、反応を停止して触媒を室温にした。次に、触媒の長期耐久性を評価する試験としてアルゴン気流下で室温から400℃まで0.5時間で昇温し、反応ガスの供給下400℃で1時間、500℃で7時間、400℃で1時間反応を行った後、反応を停止することを2回繰り返した。その結果、400℃におけるメタノール転化率は47%、一酸化炭素選択率は1.3%であり比較例2の共沈法銅触媒より高い活性を示した。更に同様の反応試験を3回繰り返した。400℃における最終的なメタノール転化率は49%、一酸化炭素選択率は1.1%であった。反応後における銅微粒子の結晶子径は9nm、酸化亜鉛に由来するXRDピークは検出されず、比較例2に比べて銅微粒子の結晶子径は明らかに小さく長期にわたる試験においてもジルコニア担体を覆うように付着している微粒子の混合凝集体の焼結の進行が遅く、その結果、反応活性低下が小さいことが示された。尚、酸化ジルコニウムの結晶子径は16nmであった。
【0091】
[比較例3]
硝酸パラジウム、硝酸亜鉛を、モル比で1.0:11.8となるように蒸留水に溶解し、その合計濃度を0.2mol/Lとした。これにジルコニア担体粉末(触媒学会、参照触媒JRC−ZRO−2:比表面積、254m
2/g)を溶解された金属量に対してモル比で1.58倍加え、撹拌して懸濁させた。得られた懸濁液を80℃に加熱し、比較例1と同様に炭酸ナトリウム水溶液を加えて攪拌することにより沈殿を得た。
【0092】
比較例1と同様にして得られた沈殿を洗浄後、乾燥・加熱して、酸化パラジウム微粒子・酸化亜鉛微粒子の凝集体とジルコニア担体が混在した酸化物を得た。
【0093】
得られた酸化物は、該触媒中に含まれるパラジウム、亜鉛、ジルコニウムの各金属元素量に基づいて、これらを酸化物とした時の重量に換算し、その合計量を基準として、パラジウムを3重量%、ジルコニア担体を70重量%含むものであった。この共沈銅触媒のX線回折パターンから求められた酸化亜鉛の結晶子径は17nm、酸化パラジウムに由来するXRDピークは検出されなかった。また、酸化ジルコニウムの結晶子径は14nmであった。得られた酸化物の透過電子顕微鏡写真を
図2に示す。
図2下端部にジルコニア担体が偏在しており、この図から金属化合物水溶液中にジルコニウム、セリウム、アルミニウム、イットリウムの化合物の何れかが存在しないと金属酸化物担体表面に酸化物微粒子の混合凝集体が覆うように付着しないことがわかる。
【0094】
[実施例8]
硝酸パラジウム、硝酸亜鉛、硝酸セリウムを、モル比で1.0:9.15:1.24となるように蒸留水に溶解し、その合計濃度を0.5mol/Lとした。これにジルコニア担体粉末(触媒学会、参照触媒JRC−ZRO−6:比表面積、279m
2/g)を溶解された金属量に対してモル比で1.77倍加え、撹拌して懸濁させた。得られた懸濁液を80℃に加熱し、比較例3と同様に炭酸ナトリウム水溶液を加えて攪拌することにより沈殿を得た。
【0095】
比較例3と同様にして得られた沈殿を洗浄後、乾燥・加熱して、ジルコニア担体に酸化パラジウム微粒子・酸化亜鉛微粒子・酸化セリウム微粒子の混合凝集体が覆うように付着したパラジウム触媒を得た。得られたパラジウム触媒(微粒子凝集体)の透過電子顕微鏡写真を
図3に示す。
【0096】
得られたパラジウム触媒は、該触媒中に含まれるパラジウム、亜鉛、セリウム、ジルコニウムの各金属元素量に基づいて、これらを酸化物とした時の重量に換算し、その合計量を基準として、パラジウムを3重量%、ジルコニア担体を70重量%含むものであった。この共沈銅触媒のX線回折パターンから求められた酸化亜鉛の結晶子径は14nm、パラジウムに由来するXRDピークは検出されなかった。また、酸化ジルコニウムの結晶子径は13nmであった。
【0097】
この触媒を固定床流通式反応装置の反応器に充填後、水素及びアルゴンからなる還元ガス(容積比、水素:アルゴン=1:9)を水素供給速度3L/g(触媒)・hの条件で500℃で2時間反応器に供給することによって触媒を還元した。
【0098】
還元後、反応器を400℃に降温し、メタノール、水蒸気及びアルゴンからなる反応ガス(容積比 メタノール:水蒸気:アルゴン=1:1.2:0.51)をメタノール供給速度100L/g(触媒)・hの条件で反応器に供給することによりメタノールの水蒸気改質反応を開始し、メタノールを主として水素及び二酸化炭素に変換した。反応開始1時間後におけるメタノール転化率は84%、一酸化炭素選択率は12%であった。その後、触媒の耐久性を評価するため、反応ガス流通下で550℃に昇温して5時間保ち、引き続き400℃で1時間保った時のメタノール転化率は82%、一酸化炭素転化率は6.5%であった。その後、反応を停止して触媒を室温にした。次に、触媒の長期耐久性を評価する試験としてアルゴン気流下で室温から400℃まで0.5時間で昇温し、反応ガスの供給下400℃で1時間、550℃で7時間、400℃で1時間反応を行った後、反応を停止した。その結果、400℃におけるメタノール転化率は79%、一酸化炭素選択率は5.7%であり活性の大きな劣化は認められなかった。反応後における酸化亜鉛微粒子の結晶子径は17nmであった。他に、パラジウム−亜鉛合金に由来するXRDピークが検出され、その結晶子径は21nmであった。また、酸化ジルコニウムの結晶子径は15nmであった。
【0099】
[実施例9]
硝酸パラジウム、硝酸亜鉛、硝酸アルミニウムを、モル比で1.0:10.5:2.09となるように蒸留水に溶解し、その合計濃度を0.2mol/Lとした。これにジルコニア担体粉末(触媒学会、参照触媒JRC−ZRO−6:比表面積、279m
2/g)を溶解された金属量に対してモル比で1.49倍加え、撹拌して懸濁させた。得られた懸濁液を80℃に加熱し、比較例3と同様に炭酸ナトリウム水溶液を加えて攪拌することにより沈殿を得た。
【0100】
比較例3と同様にして得られた沈殿を洗浄後、乾燥・加熱して、ジルコニア担体に酸化パラジウム微粒子・酸化亜鉛微粒子・酸化アルミニウム微粒子の混合凝集体が覆うように付着したパラジウム触媒を得た。得られたパラジウム触媒(微粒子凝集体)の透過電子顕微鏡写真を
図4に示す。
【0101】
得られたパラジウム触媒は、該触媒中に含まれるパラジウム、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウムの各金属元素量に基づいて、これらを酸化物とした時の重量に換算し、その合計量を基準として、パラジウムを3重量%、ジルコニア担体を70重量%含むものであった。この共沈銅触媒のX線回折パターンから求められた酸化ジルコニウムの結晶子径は14nmであった。酸化亜鉛及びパラジウムに由来するXRDピークは検出されなかった。
【0102】
この触媒を実施例8と同一の条件でメタノールの水蒸気改質反応に供した。400℃での反応開始1時間後におけるメタノール転化率は80%、一酸化炭素選択率は18%であった。その後、触媒の耐久性を評価するため、反応ガス流通下で550℃に昇温して5時間保ち、引き続き400℃で1時間保った時のメタノール転化率は82%、一酸化炭素転化率は6.4%であった。その後、反応を停止して触媒を室温にした。次に、触媒の長期耐久性を評価する試験としてアルゴン気流下で室温から400℃まで0.5時間で昇温し、反応ガスの供給下400℃で1時間、550℃で7時間、400℃で1時間反応を行った後、反応を停止した。その結果、400℃におけるメタノール転化率は76%、一酸化炭素選択率は4.8%であり活性の大きな劣化は認められなかった。反応後における酸化亜鉛微粒子の結晶子径は12nmであった。パラジウムに由来するXRDピークは検出されなかった。また、酸化ジルコニウムの結晶子径は14nmであった。