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特許5871337高分子アクチュエータ素子及び前記高分子アクチュエータ素子の駆動装置ならびに駆動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871337
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】高分子アクチュエータ素子及び前記高分子アクチュエータ素子の駆動装置ならびに駆動方法
(51)【国際特許分類】
   H02N 11/00 20060101AFI20160216BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20160216BHJP
   H01L 41/193 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   H02N11/00 Z
   H01L41/09
   H01L41/193
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-557479(P2013-557479)
(86)(22)【出願日】2013年1月31日
(86)【国際出願番号】JP2013052147
(87)【国際公開番号】WO2013118628
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2014年10月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-24690(P2012-24690)
(32)【優先日】2012年2月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000162847
【氏名又は名称】ステラケミファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 順彦
(72)【発明者】
【氏名】菅原 哲平
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 宣明
(72)【発明者】
【氏名】安積 欣志
(72)【発明者】
【氏名】杉野 卓司
(72)【発明者】
【氏名】西田 哲郎
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−096315(JP,A)
【文献】 特開2008−211922(JP,A)
【文献】 特開2011−078262(JP,A)
【文献】 特開2009−247175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 3/00−99/00
H01L 41/09
H01L 41/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層と、前記電解質層の厚さ方向の両面に形成された第1電極層及び第2電極層とを有する素子部を備え、前記電極層間に電圧を付与すると湾曲する高分子アクチュエータ素子において、
前記第1電極層と前記第2電極層との間に前記電解質層と接する前記第1電極層及び前記第2電極層より小さい面積の参照電極層が設けられ
前記素子部の一端が前記素子部を固定支持するための固定部とされ、他端が変形部とされており、
前記第1電極層と前記第2電極層との間に介在する前記参照電極層は、前記固定部から前記変形部へと至る方向である前後方向に延出しており、前記参照電極層の前記前後方向と直交する左右方向における幅寸法が、前記第1電極層及び前記第2電極層より細く形成され、前記参照電極層の前記幅方向の両側に、前記電解質層を介して前記第1電極層と前記第2電極層とが重ねられた3層構造が存在することを特徴とする高分子アクチュエータ素子。
【請求項2】
前記素子部の一部が、前記参照電極層と前記第1電極層との間、及び前記参照電極層と前記第2電極層との間に前記電解質層を介在させた5層構造を有して構成される請求項1記載の高分子アクチュエータ素子。
【請求項3】
前記参照電極層は湾曲変形可能な材質で形成されている請求項1または2に記載の高分子アクチュエータ素子。
【請求項4】
前記参照電極層は、前記素子部の固定部とされた一端から変形部とされた他端との間にわたって設けられている請求項3記載の高分子アクチュエータ素子。
【請求項5】
前記参照電極層は前記固定部の外方にまで延出しており、前記変形部では前記参照電極層の端面が、前記第1電極層及び前記第2電極層の各端面と略同一面で形成されており、前記電解質層は、前記参照電極層の変形部端面よりも外方及び前記第1電極層及び前記第2電極層の各固定部端面よりも外方にまで延出して設けられている請求項4記載の高分子アクチュエータ素子。
【請求項6】
前記第1電極層、前記第2電極層及び前記参照電極層は、同じ材質で形成される請求項1ないし5のいずれか1項に記載の高分子アクチュエータ素子。
【請求項7】
前記第1電極層、前記第2電極層及び前記参照電極層にはカーボンナノチューブが含まれる請求項6記載の高分子アクチュエータ素子。
【請求項8】
前記第1電極層、前記第2電極層、前記参照電極層及び前記電解質層に同じイオン液体が含まれる請求項1ないし7のいずれか1項に記載の高分子アクチュエータ素子。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載された高分子アクチュエータ素子を有し、
前記参照電極層に対して第1電極層及び第2電極層の一方を作用極、他方を対極とし、前記参照電極層を基準電位としたポテンシオスタットにより前記素子部が駆動されることを特徴とする高分子アクチュエータ素子の駆動装置。
【請求項10】
前記素子部が定電位駆動される請求項9記載の高分子アクチュエータ素子の駆動装置。
【請求項11】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載された高分子アクチュエータ素子を有し、
前記参照電極層に対して第1電極層及び第2電極層の一方を作用極、他方を対極とし、前記参照電極層を基準電位としたポテンシオスタットを用いて前記素子部を駆動することを特徴とする高分子アクチュエータ素子の駆動方法。
【請求項12】
前記素子部を定電位駆動する請求項11記載の高分子アクチュエータ素子の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧を印加すると湾曲する高分子アクチュエータ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高分子アクチュータに関する発明が開示されている。高分子アクチュエータは、電解質層と、前記電解質層の厚さ方向の両側に設けられた一対の電極層とを有して構成されている。そして、固定端側の一対の電極層間に電圧を付与すると、湾曲するように構成されている。
【0003】
動作時、電圧(電位差)はポテンシオスタットによって精密に制御されているが、長時間動作させると電極周辺や電極自身の変化等により電位シフトを生じた。このため初期設定では、電極層及び電解質層に含まれるイオン液体の電位窓(電解が起こる閾値)内で駆動されていた状態が、上記の電位シフトによりイオン液体の電位窓を越えてしまいイオン液体の電解が生じ、同じ電圧を付与しても素子の変位位置(変位量)が初期設定から変化してしまう等、信頼性が低下する問題があった。またイオン液体の電解により素子寿命が短くなる問題があった。
【0004】
特に比表面積が大きく、種々活性点を持つナノカーボン材料を電極層に含む構成ではイオン液体の電位窓が狭くなり、上記した問題が起こりやすくなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−34268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、特に、湾曲変形する素子部を安定して駆動させることができる高分子アクチュエータ素子及び前記高分子アクチュエータ素子の駆動装置ならびに駆動方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電解質層と、前記電解質層の厚さ方向の両面に形成された第1電極層及び第2電極層とを有する素子部を備え、前記電極層間に電圧を付与すると湾曲する高分子アクチュエータ素子において、
前記第1電極層と前記第2電極層との間に前記電解質層と接する前記第1電極層及び前記第2電極層より小さい面積の参照電極層が設けられ
前記素子部の一端が前記素子部を固定支持するための固定部とされ、他端が変形部とされており、
前記第1電極層と前記第2電極層との間に介在する前記参照電極層は、前記固定部から前記変形部へと至る方向である前後方向に延出しており、前記参照電極層の前記前後方向と直交する左右方向における幅寸法が、前記第1電極層及び前記第2電極層より細く形成され、前記参照電極層の前記幅方向の両側に、前記電解質層を介して前記第1電極層と前記第2電極層とが重ねられた3層構造が存在することを特徴とするものである。
【0008】
また本発明は、高分子アクチュエータ素子の駆動装置であり、前記参照電極層に対して第1電極層及び第2電極層の一方を作用極、他方を対極とし、前記参照電極層を基準電位としたポテンシオスタットにより前記素子部が駆動されることを特徴とするものである。
【0009】
また本発明は、高分子アクチュエータ素子の駆動方法であり、前記参照電極層に対して第1電極層及び第2電極層の一方を作用極、他方を対極とし、前記参照電極層を基準電位としたポテンシオスタットを用いて前記素子部を駆動することを特徴とするものである。このとき、本発明では、前記素子部を定電位駆動することができる。
【0010】
このように基準電位を有する参照電極層を備えた3極構造とすることで、従来の2極構造のときの電位シフトを抑制でき、安定した動作特性(湾曲時の変位位置や戻り位置の安定化等)を得ることができる。
【0011】
また、前記前記第1電極層と前記第2電極層との間に介在する前記参照電極層前記第1電極層及び前記第2電極層より小さい面積で形成されているので、参照電極層が素子部を湾曲変形させる際の妨げにならず、高分子アクチュエータ素子を適切に駆動させることができる。
【0013】
また本発明では、前記素子部の一部が、前記参照電極層と前記第1電極層との間、及び前記参照電極層と前記第2電極層との間に前記電解質層を介在させた5層構造を有して構成されることが好ましい。
【0014】
また本発明では、前記参照電極層は湾曲変形可能な材質で形成されていることが好ましい。参照電極層を変形部に設けることで、変形部での電位シフトを効果的に抑制でき、より安定した動作特性を得ることができる。また参照電極層を湾曲変形可能な材質で形成したことで適切に素子部を湾曲変形できる。
【0015】
また本発明では、前記参照電極層は、前記素子部の固定部とされた一端から変形部とされた他端との間にわたって設けられていることが好ましい。これにより参照電極層を簡単に設置できるとともに、素子部全体における電位シフトを効果的に抑制でき、より安定した動作特性を得ることができる。
【0016】
また本発明では、前記参照電極層は前記固定部の外方にまで延出しており、前記変形部では前記参照電極層の端面が、前記第1電極層及び前記第2電極層の各端面と略同一面で形成されており、前記電解質層は、前記参照電極層の変形部端面よりも外方及び前記第1電極層及び前記第2電極層の各固定部端面よりも外方にまで延出して設けられていることが好ましい。これにより、第1電極層、第2電極層及び参照電極層が互いに変形部端面及び固定部端面の位置にてショートするのを防止できる。
【0017】
また本発明では、前記第1電極層、前記第2電極層及び前記参照電極層は、同じ材質で形成されることが好ましい。このとき、前記第1電極層、前記第2電極層及び前記参照電極層にはカーボンナノチューブが含まれることが好ましい。これにより各電極層の電極特性を同じにでき、参照電極層が電解質層を介した第1電極層と第2電極層間のイオン移動等の妨げにならず、また、上記したように参照電極層を湾曲変形可能な材質で形成でき、適切に素子部を湾曲変形させることができる。また製造効率の向上、製造コストの低減を図ることができる。
【0018】
また本発明では、前記第1電極層、前記第2電極層、前記参照電極層及び前記電解質層に同じイオン液体が含まれることが好ましい。素子部全体に同じ材質のイオン液体を含ませることができ、駆動電位を前記イオン液体の電位窓内にて適切に設定でき、安定した動作特性を得ることが出来る。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基準電位を有する参照電極層を備えた3極構造とすることで、従来の2極構造のときの電位シフトを抑制でき、安定した動作特性(湾曲時の変位位置や戻り位置の安定化)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1(a)は、本発明の実施形態における高分子アクチュエータ素子の平面図、図1(b)は、図1(a)に示すA−A線から厚み方向に切断し矢印方向から見た縦断面図、図1(c)は、図1(a)に示すB−B線から厚み方向に切断し矢印方向から見た縦断面図である。
図2図2は、本実施形態における高分子アクチュエータ素子の駆動装置の概念図である。
図3図3(a)〜図3(e)は、参照電極層の幅寸法を変化させたときのサイクリックボルタンメトリー(CV)である。
図4図4(a)(b)は、比較例の高分子アクチュエータ素子の縦断面図である。
図5図5(a)は、実施例の高分子アクチュエータ素子のサイクリックボルタンメトリー(CV)であり、図5(b)は、図4(a)の比較例における高分子アクチュエータ素子のサイクリックボルタンメトリー(CV)である。
図6図6(a)は、実施例(3極構造)の変位及び電流の繰り返し特性の実験結果、図6(b)は、比較例(2極構造)の変位及び電流の繰り返し特性の実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1(a)は、本発明の実施形態における高分子アクチュエータ素子の平面図、図1(b)は、図1(a)に示すA−A線から厚み方向に切断した縦断面図、図1(c)は、図1(a)に示すB−B線から厚み方向に切断した縦断面図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態における高分子アクチュエータ素子1は、電解質層(イオン伝導層)2と、電解質層2の厚さ方向(Z1−Z2)の両側表面に形成される第1電極層3と第2電極層4とを有する素子部1aを備える。
【0023】
本発明における実施形態の高分子アクチュエータ素子1は、イオン液体とベースポリマーを有する電解質層2と、カーボンナノチューブとベースポリマー、及びイオン液体を有する電極層3,4とを有して構成される。
【0024】
ベースポリマーとしては、ポリフッ化ビニリデン系ポリマーや、ポリメチルメタクリレート(PMMA)系ポリマー等を提示できる。このうち、特に、ポリフッ化ビニリデン系ポリマーを用いることが好ましい。
【0025】
イオン液体には、エチルメチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート(EMIBF4)や、エチルメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EMITFSI)等を用いることが可能である。
【0026】
また本発明において使用するイオン液体は種々カチオンとアニオンとの組み合わせから形成され、これらは1種でも2種以上を併用してもよい。本発明で使用するアンモニウムカチオンとしてはテトラアルキルアンモニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、トリアゾリウムカチオン、ピリダジニウムカチオン、チアゾリウムカチオン、オキサゾリウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラジニウムカチオンなどが挙げられるがこの限りではない。
【0027】
テトラアルキルアンモニウムカチオンとしては、テトラエチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、トリメチルエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、トリメチルブチルアンモニウム、ジメチルエチルプロピルアンモニウム、メチルエチルプロピルブチルアンモニウム、N,N−ジメチルピロリジニウム、N−エチル−N−メチルピロリジニウム、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム、N−エチル−N−プロピルピロリジニウム、N,N−ジメチルピペリジニウム、N−メチル−N−エチルピペリジニウム、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム、N−エチル−N−プロピルピペリジニウム、N,N−ジメチルモルホリニウム、N−メチル−N−エチルモルホリニウム、N−メチル−N−プロピルモルホリニウム、N−エチル−N−プロピルモルホリニウム、トリメチルメトキシメチルアンモニウム、ジメチルエチルメトキシメチルアンモニウム、ジメチルプロピルメトキシメチルアンモニウム、ジメチルブチルメトキシメチルアンモニウム、ジエチルメチルメトキシメチルアンモニウム、メチルエチルプロピルメトキシメチルアンモニウム、トリエチルメトキシメチルアンモニウム、ジエチルプロピルメトキシメチルアンモニウム、ジエチルブチルメトキシメチルアンモニウム、ジプロピルメチルメトキシメチルアンモニウム、ジプロピルエチルメトキシメチルアンモニウム、トリプロピルメトキシメチルアンモニウム、トリブチルメトキシメチルアンモニウム、トリメチルエトキシメチルアンモニウム、ジメチルエチルエトキシメチルアンモニウム、ジメチルプロピルエトキシメチルアンモニウム、ジメチルブチルエトキシメチルアンモニウム、ジエチルメチルエトキシメチルアンモニウム、トリエチルエトキシメチルアンモニウム、ジエチルプロピルエトキシメチルアンモニウム、ジエチルブチルエトキシメチルアンモニウム、ジプロピルメチルエトキシメチルアンモニウム、ジプロピルエチルエトキシメチルアンモニウム、トリプロピルエトキシメチルアンモニウム、トリブチルエトキシメチルアンモニウム、N−メチル−N−メトキシメチルピロリジニウム、N−エチル−N−メトキシメチルピロリジニウム、N−プロピル−N−メトキシメチルピロリジニウム、N−ブチル−N−メトキシメチルピロリジニウム、N−メチル−N−エトキシメチルピロリジニウム、N−メチル−N−プロポキシメチルピロリジニウム、N−メチル−N−ブトキシメチルピロリジニウム、N−メチル−N−メトキシメチルピペリジニウム、N−エチル−N−メトキシメチルピロリジニウム、N−メチル−N−エトキシメチルピロリジニウム、N−プロピル−N−メトキシメチルピロリジニウム、N−メチル−N−プロポキシメチルピロリジニウムなどが挙げられるがこれらの限りではない。テトラアルキルホスホニウムカチオンとしては、テトラエチルホスホニウム、テトラメチルホスホニウム、テトラプロピルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、トリエチルメチルホスホニウム、トリメチルエチルホスホニウム、ジメチルジエチルホスホニウム、トリメチルプロピルホスホニウム、トリメチルブチルホスホニウム、ジメチルエチルプロピルホスホニウム、メチルエチルプロピルブチルホスホニウムなどが挙げられる。
【0028】
イミダゾリウムカチオンとしては、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、1−メチル−3−イソプロピルイミダゾリウム、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、1−メトキメチル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウム、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウム、1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−ブチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−ヘキシルイミダゾリウムなどが挙げられるがこれらの限りではない。ピラゾリウムカチオンとしては1,2−ジメチルピラゾリウム、1−メチル−2−エチルピラゾリウム、1−プロピル−2−メチルピラゾリウム、1−メチル−2−ブチルピラゾリウムなどが挙げられるがこれらの限りではない。ピリジニウムカチオンとしてはN−メチルピリジニウム、N−エチルピリジニウム、N−プロピルピリジニウム、N−メトキメチルピリジニウム、N−イソプロピルピリジニウム、N−ブチルピリジニウム、N−ペンチルピリジニウム、N−ヘキシルピリジニウムなどが挙げられるがこれらの限りではない。トリアゾリウムカチオンとしては、1−メチルトリアゾリウム、1−エチルトリアゾリウム、1−プロピルトリアゾリウム、1−イソプロピルトリアゾリウム、1−ブチルトリアゾリウム、1−ペンチルトリアゾリウム、1−ヘキシルトリアゾリウムなどが挙げられるがこれらの限りではない。ピリダジニウムカチオンとしては1−メチルピリダジニウム、1−エチルピリダジニウム、1−プロピルピリダジニウム、1−イソプロピルピリダジニウム、1−メトキシメチルピリダジニウム、1−ブチルピリダジニウム、1−ペンチルピリダジニウム、1−ヘキシルピリダジニウムなどが挙げられるがこれらの限りではない。チアゾリウムカチオンとしては、1,2-ジメチルチアゾリウム、1,2-ジメチル−3−プロピルチアゾリウムなどが挙げられるがこれらの限りではない。オキサゾリウムカチオンとしては、1−エチル−2−メチルオキサゾリウム、1,3−ジメチルオキサゾリウムなどが挙げられるがこれらの限りではない。ピリミジニウムカチオンとしては、1,2−ジメチルピリミジニウム、1-メチル-3−プロピルピリミジニウムなどが挙げられるがこれらの限りではない。ピラジニウムカチオンとしては、1−エチル-2-メチルピラジニウム、1−ブチルピラジニウムなどが挙げられるがこれらに限定するものではない。
【0029】
本発明で使用するアンモニウム塩を構成するアニオンの具体例としては、例えば、BF4-、PF6-、BF3CF3-、BF325-BF3(CN)-B(CN)4-、CF3SO3-、C25SO3-、C37SO3-、C49SO3-、N(SO2F)2-、N(CF3SO22-、N(C25SO22-、N(CF3SO2)(CF3CO)-、N(CF3SO2)(C25SO2-、N(CF3SO2)(FS2-などが挙げられる。
【0030】
図1に示すY1−Y2方向とX1−X2方向は平面方向(厚さ方向(Z1−Z2)に対して直交する平面)にて直交する2方向を示し、Y1−Y2方向を前後方向、Y1方向を前方、Y2方向を後方、X1−X2方向を左右方向、X1方向を右方向、X2方向を左方向と定義する。
【0031】
図1に示す実施形態では、高分子アクチュエータ素子1を構成する素子部1aの固定部5がY2側の後方に位置しており、固定部5は、図示しない固定支持部にて固定支持されている。図1に示す高分子アクチュエータ素子1は、片持ちで支持されている。固定部5よりもY1側に位置する前方に変形部6が設けられている。このように本実施形態では、前後方向(Y1−Y2)が、素子部1aの固定部5から変形部6に至る方向とされている。なお図1の固定部5及び変形部6の形態は一例であり、図1以外の構成であってもよい。例えば素子部1aの中央に固定部5が設けられ、その前後方向の両側に変形部6が設けられた構成とすることも可能である。
【0032】
図1(a)に示すように、第1電極層3は、左右方向(X1−X2)の幅寸法がT1で形成され、前後方向(Y1−Y2)の長さ寸法がL1で形成されている。なお第2電極層4も第1電極層3と同じ幅寸法T1及び長さ寸法L1で形成されている。
【0033】
また図1(a)に示すように、電解質層2は、第1電極層3よりも一回り大きい面積で形成されており、左右方向(X1−X2)の幅寸法及び前後方向(Y1−Y2)の長さ寸法が第1電極層3よりも大きくされている。電解質層2を第1電極層3及び第2電極層4とほぼ同じ大きさで形成することもできるが、電解質層2をやや大きく形成したほうが端部における各電極層間のショートを防止でき好適である。
【0034】
また図1では、第1電極層3、第2電極層4及び電解質層2の平面形状が略矩形状とされているが形状を限定するものでない。
【0035】
本実施形態では、図1(a)(b)に示すように、第1電極層3と第2電極層4との間に電解質層2に接する参照電極層7が設けられている。
【0036】
図1(b)に示す断面部分では、参照電極層7と第1電極層3との間、及び参照電極層7と第2電極層4との間には電解質層2が介在した5層構造を構成している。一方、図1(c)に示す断面部分には、第1電極層3と第2電極層4との間に参照電極層7が存在せず、第1電極層3、電解質層2及び第2電極層4の3層構造で構成されている。
【0037】
図1(a)に示すように、参照電極層7は、左右方向(X1−X2)への幅寸法がT2で形成され、この幅寸法T2は、第1電極層3及び第2電極層4の幅寸法T1よりも小さく形成されている。
【0038】
図1(a)(b)に示すように、参照電極層7は、素子部1aの固定部5から変形部6に至る方向の前後方向(Y1−Y2)に延出し、これにより参照電極層7は素子部1aの前後方向の両端部1b、1c間にわたって形成されている。さらに参照電極層7は、素子部1aの後方部に位置する固定部5よりも後方(外方)(Y2)に延出しており、駆動装置側との接続部7bを構成している。また図1(a)(b)に示すように、参照電極層7の前端面(変形部端面)7aは、第1電極層3及び第2電極層4の各前端面(変形部端面)3a,4aと略同一面で形成されている。そして、電解質層2は参照電極層7の前端面7aの前方(外方)にまで延出している。参照電極層7の前端面7aの前方に位置する電解質層2a(電解質層の形成場所を特定すべく符号2aを付した)は、参照電極層7と第1電極層3との間、参照電極層7と第2電極層4との間、及び第1電極層3と第2電極層4との間に介在する電解質層2と一体化している。
【0039】
参照電極層7は、第1電極層3及び第2電極層4と同じ材質で形成されることが好ましい。上記したように本実施形態の第1電極層3及び第2電極層4は、カーボンナノチューブ及びイオン液体を有して構成されており、したがって参照電極層7もカーボンナノチューブ及びイオン液体を有した構成とされている。また本実施形態では、第1電極層3、第2電極層4、参照電極層7及び電解質層2には同じイオン液体が含まれることが好適である。
【0040】
本実施形態における高分子アクチュエータ素子1は図2に示すポテンシオスタット10に接続されている。第1電極層3及び第2電極層4の一方がポテンシオスタット10の作用極(WE)、他方が対極(CE)として構成される。図2に示すRefは、参照電極層7にて構成される。ポテンシオスタット10において、参照電極層7(Ref)は、作用極(WE)の電位を決定する際の基準となる電極である。
【0041】
ポテンシオスタット10には非反転入力端子(+)、反転入力端子(−)及び出力端子を有する演算増幅回路11が設けられている。図2に示すように出力端子は抵抗Rmを介して対極(CE)に接続されている。また反転入力端子(−)は参照電極層7(Ref)に接続されている。また非反転入力端子(+)は入力電圧源12に接続されている。
【0042】
なお、以下では第1電極層3を作用極(WE)として、第2電極層4を対極(CE)として説明する。図2に示すポテンシオスタット10により本実施形態の高分子アクチュエータ素子1を駆動させる。参照電極層7はほぼ固定された基準電位(自然電位)を有し、この基準電位に基づいて作用極(WE)の電位を規制する。すなわち作用極(WE)である第1電極層3の電位を参照電極層7に対して所定値あるいは所定範囲内で規制する。そして例えば素子部1aを交流駆動(AC駆動)させて、変形部6を上方(Z1)及び下方(Z2)に湾曲させる。
【0043】
ここで交流駆動の一例を示す。作用極(WE)の第1電極層3と参照電極層7との間に例えば、+1.15V〜−1.35Vの電圧を矩形波にて周波数5mHzの条件で作用させる。このように、+1.15V,−1.35Vの電圧を第1電極層3と参照電極層7との間に作用させることで、図2のポテンシオスタット10により、作用極(WE)の第1電極層3と対極(CE)の第2電極層4との間には±2.5Vの電圧(電位差)が生じる。第1電極層3と参照電極層7との間に、+1.15Vの電圧を印加すると電解質層2内のイオン移動で電極間に膨潤の差が生じるなどして変形部6は例えば上方(Z1)に湾曲変形し、第1電極層3と参照電極層7との間に、−1.35Vの電圧を印加すると変形部6は例えば下方(Z2)に湾曲変形する。当然、印加電圧と湾曲方向との関係は上記と逆であってもよい。なおイオン移動で電極間に膨潤の差が生じる原理は一般に一義的ではないとされているが、代表的な原理要因の1つに、陽イオンと陰イオンのイオン半径の差で膨潤に差が生じることが知られている。
【0044】
本実施形態では、参照電極層7の基準電位に基づいて第1電極層3と第2電極層4との間の電圧(電位差)を規制するため、定電位駆動が可能になる。上記の例で言えば、第1電極層3と第2電極層4と間の電圧を+2.5Vとしたとき、第1電極層3と第2電極層4と間の電圧を−2.5Vとしたときの夫々において、素子部1aを定電位駆動させることができ、したがって従来の2極構造のときのような電位シフトが生じるのを規制できる。よって、第1電極層3と第2電極層4と間に+2.5Vの電圧を周期的に印加したときの素子部1aの各変位位置(変位量)H1をほぼ同じにでき、第1電極層3と第2電極層4と間に−2.5Vの電圧を周期的に印加したときの素子部1aの各変位位置(変位量)H2をほぼ同じにできる(図1(b)参照)。また、図1(b)の実線に示す初期状態を高さ0としたときの変位位置H1までの変位量(H1)と、変位位置H2までの変位量(−H2)との絶対値をほぼ同じに出来る。ここで変位位置H1,H2とは素子部1aが湾曲変形したとき、初期状態に対して最大の変位位置を示す。
【0045】
上記のように、第1電極層3と参照電極層7との間にプラスの電圧を印加するときは、+1.15Vとし、第1電極層3と参照電極層7との間にマイナスの電圧を印加するときは、−1.35Vとしており、±2.5Vを二分した+1.25V及び−1.25Vの電圧印加となっていないのは、参照電極層7の基準電位(自然電位)が0Vでないためである。参照電極層7の基準電位が不明であっても第1電極層3と第2電極層4との間に流れる電流値を計測する等して、参照電極層7に対する第1電極層3の電位を制御することが出来る。なお参照電極層7には電流を流さない。
【0046】
また入力電圧源12に対する入力電圧により、変位量(H1)と、変位量(−H2)との絶対値とを異ならせることも可能である。
【0047】
また従来の2極構造では、電位シフトにより第1電極層と第2電極層間の印加電圧を除去しても元の基準状態に戻りにくくなるが、本実施形態では3極構造としたことにより、電位を初期状態(基準状態)に適切に戻すことができ図1(b)に示す実線での初期位置(基準位置)に素子部1aを適切に戻すことができる。
【0048】
本実施形態では、素子部1aを構成する各電極層3,4,7及び電解質層2に同じイオン液体を用いており、前記イオン液体の電位窓内に素子部1aに対する駆動電位を適切に設定できる。イオン液体の電位窓はある程度わかっており、本実施形態では、電位窓内に駆動電位が収まるように適切に調整できる。また参照電極層7の基準電位はほぼ固定されており、長時間の使用等によっても電位シフトを適切に抑制でき、イオン液体の電解を抑制でき、安定した動作特性(湾曲時の変位位置や戻り位置の安定化)を得ることができる。
【0049】
特に、比表面積が広く、種々活性点を有するカーボンナノチューブを電極層に含む構成ではイオン液体の電位窓が狭くなるが、本実施形態では作用極、対極、参照電極を備えるポテンシオスタットを用いることで、狭い電位窓内に駆動電位を適切に収めることができる。この結果、変位量の大きい高分子アクチュエータ素子1を安定して駆動させることが出来るとともに、高分子アクチュエータ素子1の長寿命化を図ることが出来る。
【0050】
図1(a)に示すように、参照電極層7の左右方向(X1−X2)における幅寸法T2を第1電極層3及び第2電極層4の幅寸法T1よりも細く形成している。これにより図1(c)に示すように、電解質層2を介して第1電極層3と第2電極層4とが対向する3層構造の部分が参照電極層7の両側に存在する。これにより電圧印加により第1電極層3と第2電極層4との間で適切にイオン移動が起こり、変形部6を適切に湾曲変形させることができる。
【0051】
本実施形態では、参照電極層7は第1電極層3及び第2電極層4よりも小さい面積で形成されるが、上記のように参照電極層7の幅寸法T2を細くして面積を小さくしてもよいし、他の手段を用いてもよい。例えば、参照電極層7の幅寸法T2は第1電極層3及び第2電極層4の幅寸法T1とほぼ同じであるが、例えば参照電極層7に厚み方向にて貫通する単数あるいは複数のスリットや貫通孔が形成された構成とすることもできる。これにより参照電極層7の面積を第1電極層3及び第2電極層4より小さくできる。ただし参照電極層7を幅細で形成する形態としたほうが、参照電極層7の構成を簡単にできる。参照電極層7の幅寸法T2は、第1電極層3及び第4電極層4の幅寸法T1に対して20%〜60%程度であることが好ましい。
【0052】
また図1(a)(b)のように、参照電極層7は素子部1aの固定部5から変形部6にまで延出して形成されている。よって参照電極層7は変形部6の湾曲変形を妨げないように湾曲変形可能な材質で形成されることが必要である。本実施形態では、第1電極層3及び第2電極層4と同じ材質で参照電極層7を形成し、第1電極層3及び第2電極層4ともに参照電極層7を湾曲変形可能な材質で形成できる。また変形部6にまで参照電極層7を伸ばしたことで、変形部6での電位シフトを効果的に抑制でき、より安定した動作特性を得ることができる。
【0053】
図1(a)(b)に示すように、参照電極層7の前端面(変形部端面)7aは、第1電極層3及び第2電極層4の各前端面(変形部端面)3a,4aと略同一面で形成されており、参照電極層7の前端面7aの前方(外方)に電解質層2aが延出した形態とされている。このように電解質層2aにて参照電極層7の前端面7aの前方を覆うことで、第1電極層3、第2電極層4及び参照電極層7が互いに前端面付近にてショートするのを防止できる。すなわち各層を積層した後、素子部1aをプレスする工程があるが、第1電極層3と参照電極層7との間、及び第2電極層4と参照電極層7との間の各間隔(図1(b))は、参照電極層7が介在しない第1電極層3と第2電極層4との間の間隔(図1(c))よりも狭くなる。よって図1(a)(b)の構成とすることでプレス工程によっても第1電極層3、第2電極層4及び参照電極層7が互いに前端面付近にてショートするのを防止できる。また図1(a)(b)に示すように、素子部1aの後端部1cでも電解質層2を第1電極層3及び第2電極層4の後端面(固定部端面)3b,4bよりも後方(外方)に突出させており、これにより、第1電極層3、第2電極層4及び参照電極層7が互いに後端面面付近にてショートするのを防止できる。
【0054】
本実施形態における高分子アクチュエータ素子1は交流駆動のみならず直流駆動させることも可能である。かかる場合でも、従来の2極構造のときのような電位シフトを抑制でき、安定した動作特性を得ることが可能になる。
【実施例】
【0055】
(参照電極層の幅寸法のCV測定)
実験では、図1(a)に示す第1電極層3及び第2電極層4の幅寸法T1を5mmとし、長さ寸法L1を10mmとした。そして、参照電極層7の長さ寸法を10mmに固定し、幅寸法T2を0mm〜5mmの範囲内で変化させて、サイクリックボルタンメトリー(CV)を測定した。
【0056】
図3は、参照電極層7の幅寸法T2を変化させたときのサイクリックボルタンメトリー(CV)である。図3(a)では、参照電極層7の幅寸法T2を0mm、すなわち参照電極層7が設けられていない2極構造のサイクリックボルタンメトリー(CV)である。図3(b)は、参照電極層7の幅寸法T2を1mmとした3極構造のサイクリックボルタンメトリー(CV)である。図3(c)は、参照電極層7の幅寸法T2を2mmとした3極構造のサイクリックボルタンメトリー(CV)である。図3(d)は、参照電極層7の幅寸法T2を3mmとした3極構造のサイクリックボルタンメトリー(CV)である。図3(e)は、参照電極層7の幅寸法T2を5mmとした3極構造のサイクリックボルタンメトリー(CV)である。
【0057】
図3(b)〜図3(d)では、ほぼ同じサイクリックボルタンメトリー(CV)を得ることが出来た。また図3(b)〜図3(d)の3極構造でのサイクリックボルタンメトリー(CV)は、図3(a)に示す2極構造や、3極構造であるが参照電極層7を第1電極層3及び第4電極層4と同じ大きさとした構造(図3(e))のサイクリックボルタンメトリー(CV)と異なる測定結果となった。このようなサイクリックボルタンメトリー(CV)の違いは、電圧印加に伴うイオン液体の移動のし易さやイオン液体の電解の有無等により起こるものと考えられ、図3(b)〜図3(d)では、安定した動作特性が得られることがわかった。図3(b)〜図3(d)では、第1電極層3及び第2電極層4の幅寸法T1に対する参照電極層7の幅寸法T2の比率が20%〜60%であった。
【0058】
(参照電極層の長さ寸法のCV測定)
図1に示す構造における参照電極層7の前後方向(Y1−Y2)の長さ寸法に関する実験を行った。
【0059】
実験では、参照電極層7が素子部1aの後端部1cから前端部1bに向けて1/3以上入り込んでいると、図3(b)〜図3(d)とほぼ同じサイクリックボルタンメトリー(CV)を得ることが出来た。なお、参照電極層7の長さ寸法が1/3より短いと図3(a)に似たサイクリックボルタンメトリー(CV)となった。
【0060】
また最適な膜厚寸法の一例としては、第1電極層3及び第2電極層4の膜厚が夫々112μm、参照電極層7の膜厚が40μm、第1電極層3と参照電極層7間の膜厚が21μm、第2電極層4と参照電極層7間の膜厚が23μmであった(図1(b)参照)。なお上記膜厚寸法はプレス前の数値であり、素子プレス後の全体の厚さは262μmであった。
【0061】
(実施例及び3極構造であるが実施例と異なる形態の比較例におけるCV測定)
比較例1として図4(a)(縦断面図)の構造の高分子アクチュエータ素子を作製した。比較例1では、電解質層20の両面に第1電極層21及び第2電極層22を夫々設けたが、いずれもY1側に寄って形成されており、空いたY2側の電極層20の両面に参照電極層23を設けた。
【0062】
比較例2として図4(b)(縦断面図)の構造の高分子アクチュエータ素子を作製した。比較例2では、電解質層25の両面に第1電極層26と第2電極層27を夫々設け、Y2側に延出した電解質層25にイオン液体28を介してPt線からなる参照電極層29を設けた。
【0063】
図5(a)は、図1に示す本実施例のサイクリックボルタンメトリー(CV)であり、図5(b)は、図4(a)の比較例1のサイクリックボルタンメトリー(CV)である。図5(c)の比較例2では、イオン液体28の流動により安定した特性を得ることが出来なかった。図5(b)に示すように比較例1では、図3(a)とほぼ同様のサイクリックボルタンメトリー(CV)となり参照電極層23を設けたことによる特性の改善ができないとわかった。
【0064】
(3極構造(実施例)と2極構造(比較例)の変位及び電流量の実験)
実施例として図1の3極構造の高分子アクチュエータ素子を作製し、比較例として図1から参照電極層7を除去した2極構造の高分子アクチュエータ素子を作製した。
【0065】
実施例の高分子アクチュエータ素子に対しては、参照電極層7と作用極である第1電極層3間に+1.15V〜−1.35Vの電圧(電位差)を矩形波の波形、5mHzの周波数の条件で付与して交流駆動させた。これにより第1電極層と第2電極層との間には±2.5Vの電圧が付与される。
【0066】
また比較例の高分子アクチュエータ素子に対しては、第1電極層と第2電極層との間に、±2.5Vの電圧を、矩形波の波形、5mHzの周波数の条件で付与して交流駆動させた。
【0067】
そして各高分子アクチュエータ素子の変位及び第1電極層と第2電極層間に流れる電流を測定した。その実験が図6に示されている。図6(a)は実施例の実験結果を示し、図6(b)は比較例の実験結果を示す。
【0068】
図6(b)に示すように比較例では、変位位置にシフトが見られるが、図6(a)の実施例では変位位置が非常に安定していることがわかった。
【符号の説明】
【0069】
1 高分子アクチュエータ素子
2 電解質層
3 第1電極層
4 第2電極層
5 固定部
6 変形部
7 参照電極層
10 ポテンシオスタット
図1
図2
図3
図4
図5
図6