特許第5871394号(P5871394)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5871394-リチウム空気電池 図000011
  • 特許5871394-リチウム空気電池 図000012
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871394
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】リチウム空気電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 12/06 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
   H01M12/06 G
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-228898(P2012-228898)
(22)【出願日】2012年10月16日
(65)【公開番号】特開2014-82091(P2014-82091A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2014年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蓑輪 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】林 政彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 隆一
(72)【発明者】
【氏名】菅野 了次
(72)【発明者】
【氏名】平山 雅章
【審査官】 太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/086664(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/161822(WO,A1)
【文献】 特開2008−112661(JP,A)
【文献】 特開2008−243736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 12/00 − 12/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素還元および発生の触媒機能を有する正極、
金属リチウムまたはリチウム含有物質を含む負極、および
前記負極と前記正極との間に配置された固体電解質を含むリチウム空気電池であって、
前記固体電解質にイオン液体含浸しており、
前記イオン液体は融点が50℃以下であることを特徴とするリチウム空気電池。
【請求項2】
前記イオン液体にリチウム塩が溶解されていることを特徴とする請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項3】
前記正極および前記負極の少なくともいずれか一方に、前記イオン液体含浸していることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウム空気電池。
【請求項4】
前記リチウム塩が0.5〜0.7mol/Lの濃度で前記イオン液体に溶解していることを特徴とする請求項2に記載のリチウム空気電池。
【請求項5】
前記イオン液体が、前記固体電解質、前記正極、および/または前記負極の電極/固体電解質界面の面積を基準に、0.1〜0.2mL/cm2の量で前記固体電解質、前記正極、および/または前記負極に含浸していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のリチウム空気電池。
【請求項6】
前記固体電解質の電極との接触表面が、接触する電極の構成材料で被覆されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のリチウム空気電池。
【請求項7】
前記固体電解質がLiを含有し、Ge、P、Al、Si、Znのうち少なくともいずれか一種を含む硫化物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のリチウム空気電池。
【請求項8】
前記固体電解質が、Li3.25Ge0.250.754の組成であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のリチウム空気電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期安定性に優れたリチウム空気電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム空気電池は、正極活物質として空気中の酸素を用い、電池外部から常に酸素が供給され、電池内に大量の負極活物質である金属リチウムを充填することができるため、非常に大きな放電容量を示すことが報告されている。
【0003】
例えば、非特許文献1では、溶質として1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、有機溶媒として炭酸プロピレン(PC)と1,2−ジメトキシエタン(DME)の混合溶媒を用いて、電解液を作製し、リチウム空気(酸素)電池の評価を行っている。
【0004】
また、非特許文献2では、電解液として、溶質に1mol/LのLi(CFSON (以下、LiTFSIと表記)を、有機溶媒に炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)の混合溶媒を用いて、リチウム空気電池を作製し評価を行っている。
【0005】
いずれの文献でも、空気電池として作動し、大きな放電容量が得られることを報告している。
【0006】
しかしながら、これらの文献で用いられている有機溶媒には揮発性があるため、空気を電池内に取り込む構造を有するリチウム空気電池においては、長期作動での安定性に課題があると考えられる。つまり、長期の電池作動時には、正極側から電解液が揮発することによって電池抵抗が増大し、電池性能が著しく低下することが予想される。また、これらの有機電解液は、揮発性かつ引火性があるため、火災事故などの安全性が懸念される。
【0007】
このような課題に対処するため、電解質として揮発性のない固体電解質を用いた全固体型リチウム二次電池が提案されている。しかしながら、固体電解質のイオン伝導度が低いことから十分な電池性能を有するリチウム空気電池は報告されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J. Read et al., Journal of The Electrochemical Society, Vol. 150, pp. A1351-A1356 (2003).
【非特許文献2】A. K. Thapa, 西面和希、松本広重、石原達己、電気化学会第76回大会講演要旨集、3P23, pp. 383 (2009).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、揮発による電解質の減少がなく、電池の長期の安定作動が可能で安全なリチウム空気電池を供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し目的を達するために、本発明のリチウム空気電池は、酸素還元触媒機能を有する正極、金属リチウムまたはリチウム含有物質を含む負極、および前記負極と前記正極との間に配置された固体電解質を含むリチウム空気電池であって、前記固体電解質にイオン液体を含浸させる構造を有する。該イオン液体はリチウム塩を溶解してもよい。固体電解質に不揮発性溶媒であるイオン液体またはイオン液体にリチウム塩を溶解させたリチウム塩含有イオン液体を含浸させることにより、固体電解質内のイオン移動度が向上し、さらに電解質/電極界面で形成される反応サイトが増大する一方で、有機電解液のような揮発現象が起こらないため、電池の放電容量の増大および安定作動に大きく寄与する。
【0011】
また、本発明における固体電解質は、Liを含有し、Ge、P、Al、Si、Znのうち少なくともいずれか一種を含む硫化物が好ましい。
【0012】
さらに、本発明において、該固体電解質の電極との接触表面が、接触する電極の構成材料で被覆されることが好ましい。このような構造を有することにより、電解質/電極界面の接触抵抗が減少し、良好な電池性能を示すことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、長期安定性に優れ、高安全性で高性能なリチウム空気電池を供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】リチウム空気電池の断面図である。
図2】実施例2、5、9、13、20、26、および30ならびに比較例1および2に係るリチウム空気電池の放電曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を、詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の単なる一例であって、当業者であれば、適宜設計変更可能である。
【0016】
本発明に係るリチウム空気電池は、酸素還元および発生触媒機能を有する正極、金属リチウム又はリチウム含有物質を含む負極、および前記負極と前記正極との間に配置され、イオン液体を含浸する固体電解質を含む。
【0017】
(正極)
本発明において、正極活物質として酸素が使用される。そのため、本発明で用いる正極は、酸素還元および発生機能を有し、酸素およびリチウムイオンが移動できる空隙を有する導電性材料を含む空気電極であり、バインダーを含有してもよい。また、酸素の酸化還元および発生反応を促進する触媒を含有してもよい。
【0018】
本願発明の空気電極に用いられる導電性材料には、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック類、活性炭類、グラファイト類、カーボン繊維類などのカーボンを用いることができる。好ましくは、該カーボンは空気電極中の反応サイトを十分に確保するために表面積が大きなものが適しており、具体的にはBET比表面積で300m/g以上の値を有しているものが望ましい。
【0019】
また、本発明の空気電極はバインダーを含んでもよく、バインダーとして熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等を使用することができる。例えば、特に限定されるものではないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレンブタジエンゴムなどを用いることができる。
【0020】
さらに、本発明の空気電極は、酸素還元・酸素発生反応に高活性な触媒を含んでもよい。該触媒としては、構造中にMn、Fe、Co、Ni、V、W等の遷移金属を少なくとも一種含む酸化物が好適であり、具体的には、MnO、Mn、MnO、FeO、Fe、FeO、CoO、Co、NiO、NiO、V、WOなどの単独酸化物や、La0.6Sr0.4MnO、La0.6Sr0.4FeO、La0.6Sr0.4CoO、La0.6Sr0.4CoO、Pr0.6Ca0.4MnO、LaNiO、La0.6Sr0.4Mn0.4Fe0.6などのペロブスカイト型構造を有する複合酸化物を用いることができる。
【0021】
これらの触媒は、固相法や液相法などの公知のプロセスを用いて合成することができる。使用する触媒は高表面積あることが望ましく、焼成後の比表面積が10m/g以上であることが好適である。
【0022】
また、空気電極に添加される触媒として、中心金属にMn、Fe、Co、Ni、V、W等の遷移金属を少なくとも一種含むポルフィリンやフタロシアニンなどの大環状金属錯体も用いることができる。これらの金属錯体は、カーボンと混合後、不活性ガス雰囲気中で熱処理を行い活性化させてもよい。
【0023】
本発明の空気電極に添加される触媒としては上記の化合物系だけでなく、Pt、Au、Pdなどの貴金属、およびCo、Ni、Mnなどの遷移金属の単体金属を用いてもよい。例えば、これらの金属をカーボン上に高分散担持させることにより高い活性を発現することができる。
【0024】
本発明の空気電極は、好ましくは、カーボン、バインダーおよび酸素還元・発生触媒を含む。本発明の空気電極の形状は、電極表面上での酸素還元・発生反応が十分に行われるものであれば特に限定されない。例えば本発明の空気電極は、カーボン、バインダーおよび酸素還元・発生触媒の混合物をチタンメッシュ等の支持体上に圧着成形する、あるいは、前述の混合物を有機溶剤等の溶媒中に分散してスラリー状にし、金属メッシュ又はカーボンクロス上に塗布し乾燥する、などの手段によって形成することができる。
【0025】
(負極)
本発明の負極は、リチウムイオンの吸蔵および放出が可能な負極活物質を含む。負極の活物質としては、金属リチウム、または、リチウムを含むシリコン合金もしくはスズ合金およびLi2.6Co0.4Nなどのリチウム含有窒化物等のリチウムイオンを放出することができる物質も使用することができる。さらに、本発明の負極はバインダーを含んでもよく、また負極活物質とともに導電性材料を含んでもよい。例えばリチウム二次電池用負極材料として用いることができる材料であれば使用することができる。
【0026】
(固体電解質)
固体電解質材料としては、リチウムイオン伝導性を有する材料であれば用いることができるが、室温において少なくとも1×10−3mS/cm以上、好ましくは5×10−2mS/cm以上の導電率を有しているものを用いることが望ましい。具体的には、LiN等の窒化物系材料、LiP(O,N)、LiLaZr12、LiPO、La0.5Li0.5TiOなどの酸化物系材料、LiS、LiPSなどの硫化物系材料を用いることができる。好ましくは硫化物系材料であり、より好ましくはLiならびにGe、P、Al、Al、Si、およびZnのうち少なくともいずれか一種を含む硫化物系材料である。特にLi3.25Ge0.250.75の組成を有する材料が、その導電性から最も高い性能を示し、好ましい。
【0027】
本発明の固体電解質は、上記固体電解質材料を含む成形体を圧縮成形により得ることができる。例えば、鋳型を用いたプレス成形や射出成形、ドクターブレードなどを用いることができる。また該成形体を、加圧後に焼成、または加圧しながら焼成してもよい。
【0028】
一般的に、電解質に固体電解質を用いた全固体型電池では、電極/固体電解質間の接触抵抗が大きく、電池性能を著しく低下させる。本発明の固体電解質は、電極と接する部分に、接触する該電極材料を塗布してもよい。例えば、正極構成材料のカーボン、触媒、バインダーを揮発性溶媒中に分散させ、固体電解質上に塗布し、乾燥させることにより、固体電解質上に正極材料を堆積させ、固体電解質/正極界面の接触抵抗を減少することができる。また、負極材料も同様の方法で固体電解質上に堆積させることができ、固体電解質/負極界面の接触抵抗を減少することができる。
【0029】
(イオン液体)
さらに本発明では、固体電解質はイオン液体を含浸する。イオン液体は、後述するとおりリチウム塩を含んでもよい。さらに、上記正極および/または負極にイオン液体を含浸させてもよい。
【0030】
本発明の「イオン液体」とは、カチオン部分とアニオン部分とからなるイオン性物質であって、融点が180℃以下のものをいう。好ましくは融点が50℃以下のものであり、より好ましくは融点は15℃以下である。電池の長期安定性のため、該イオン液体は疎水性であることが望ましい。
【0031】
イオン液体のカチオン部分には、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、第四級アンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオン等を用いることができる。具体的には、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム(化学式1)、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム(化学式2)、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム(化学式3)、N−メチル−N−ブチルピロリジニウム(化学式4)を用いることができる。
【0032】
【化1】
【0033】
また、イオン液体のアニオン部分には、Cl、Br、I、BF、BF、PF、NO、CFCO、CFSO、(CFSO、(FSO、(CFSO、(CSO等を用いることができ、好ましくは(CSOである。
【0034】
イオン液体に添加するリチウム塩としては、LiTFSI、LiPF、LiClOなど従来のリチウムイオン電池で使用されている公知のものが使用できる。イオン液体のアニオン部分として(CSOを選んだ場合、リチウム塩は電池特性の観点からLiTFSIを用いることが好ましい。
【0035】
このように、電解質にイオン液体を含浸させた固体電解質を用いることにより、全固体型リチウム空気電池のイオン伝導度が向上し、電極/固体電解質間の接触抵抗が低減され、過電圧が減少するため、放電電圧の上昇や充電電圧の低下が可能となる。
【0036】
また、上記のように固体電解質および不揮発性イオン液体またはリチウム塩含有イオン液体を用いることにより、揮発性の有機電解液を用いる場合よりも引火性等がないため、電池の安全性が大きく向上する効果も得られる。
【実施例】
【0037】
以下に添付図面を参照して、この発明に係るリチウム空気電池についての実施例を詳細に説明する。なお、本発明は下記の実施例に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0038】
(実施例1〜4)
リチウム空気電池は、以下の手順で作製した。
【0039】
正極(空気電極)は、電極触媒であるLa0.6Sr0.4Fe0.6Mn0.4Os(LSFM)粉末、ケッチェンブラック粉末及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末を50:30:20の重量比で、らいかい機を用いて十分に粉砕・混合し、ロール成形し、シート状電極(厚さ:0.5mm)を作製した。このシート状電極を直径16mmの円形に切り抜き、チタンメッシュ上にプレスすることにより、ガス拡散型空気極を得た。なお、LSFM粉末は、金属硝酸塩を出発原料とする公知の手法によって合成した。
【0040】
また、固体電解質は、公知の材料であるthioLISICON(Li3.25Ge0.250.75)を既知の手法を用いて合成し、粉末をプレスによりディスク状(直径16mm、厚さ0.2mm)に成型することにより形成した。
【0041】
さらに、ディスク状の固体電解質に、イオン液体N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(実施例1)、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(実施例2)、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(実施例3)、N−メチル−N−ブチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(実施例4)をそれぞれ0.1mL(0.05mL/cm)含浸させた。
【0042】
負極は直径16mm、厚さ0.6mmの金属リチウムを用いた。
【0043】
図1に、円柱形のリチウム空気電池セルの断面図を示す。正極1は、PTFE被覆された正極支持体2の凹部に配置し、正極固定用PTFEリングで固定した。なお、正極と正極支持体が接触する部分は、電気的接触をとるためにPTFE被覆されていない。負極固定用座金6に負極7である厚さ150μmの4枚の金属リチウム箔(直径16mm)に同心円上に重ねて圧着した。負極固定用リング5を、正極を設置する凹部と対向する逆の凹部に配置し、中央部に金属リチウムが圧着された負極固定用座金6をさらに配置した。Oリング8は、図に示すようにセットした。セルの内部の正極と負極に挟まれるように、固体電解質ディスクを充填し、負極支持体10を被せて、セル固定用ねじ11で、セル全体を固定した。電池性能の測定試験には、正極端子4および負極端子12を用いた。
【0044】
電池の放電試験は、市販の充放電測定システムを用いて、正極の有効面積当たりの電流密度で5μA/cmを通電し、開回路電圧から電池電圧が、1.0Vに低下するまで測定を行った。電池の作製は、露点が−60℃以下の乾燥空気中で行い、電池の放電試験は、25℃の環境下で測定を行った。
【0045】
実施例2において作製した電池の放電曲線を、図2に示す。該放電曲線より、実施例2によるリチウム空気電池は、開回路電圧として約2.70Vを示し、約270時間の放電が可能であり、電池としての動作を確認した。
【0046】
表1に、実施例1〜4におけるリチウム空気電池の電圧および放電時間についての電池性能を示す。比較として、電解質にイオン液体を含浸しない固体電解質のみを用いた場合(比較例1)の結果も併せて示す。
【0047】
いずれの実施例においても、空気電池としての作動が確認された。本発明のリチウム空気電池は、イオン液体を含浸させない比較例1に比べて高い放電電圧で100時間以上も長い放電時間を得ることができた。また、実施例2における空気電池が、最も長時間の放電が可能であった。
【0048】
【表1】
【0049】
(実施例5〜7)
実施例2で高い性能を示したイオン液体N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにリチウム塩を添加し、電解質全体のイオン伝導性を増大させることにより電池性能の改善を試みた。
【0050】
正極、固体電解質、負極、イオン液体溶媒は実施例2と同様のものを用いた。
【0051】
上記実施例と同様の方法で作製したディスク状の固体電解質に、イオン液体N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにリチウム塩:LiTFSI、LiPF、LiClOをそれぞれ0.4mol/Lで溶解させたリチウム塩含有イオン液体を0.1mL(0.05mL/cm)含浸させた。
【0052】
リチウム空気電池セルの作製および充放電試験の条件は実施例2と同様の方法で行った。表2に、実施例5〜7の電池性能を示す。リチウム塩を含まないイオン液体(実施例2)および有機電解液1mol/L LiTFSI/EC:DMC(1:1)を固体電解質に含浸させたリチウム空気電池(比較例2)の結果も併せて示した。
【0053】
リチウム塩の添加により、平均放電電圧が向上し、放電時間が増加することが確認された。さらに、従来の有機電解液と比較して、より高い放電電圧で100時間以上も長い放電時間を得ることができた。
【0054】
実施例5のリチウム空気電池の放電曲線を、図2に示す。該放電曲線より、平均放電電圧、放電時間について、電池性能が改善されることが確認された。これは、イオン液体にリチウム塩を溶解させたイオン液体を固体電解質に含浸させることが有効であることを示している。
【0055】
一方、比較例2のリチウム空気電池は、時間の経過とともに放電電圧が減少することが確認された。これは、有機電解液の揮発による減少が原因であると考えられる。これに対し、イオン液体を含浸させた固体電解質を用いた本発明のリチウム空気電池は、測定した時間内において、ほとんど放電電圧及び容量の減少は見られなかった。この結果は、本発明によるイオン液体を含浸させた固体電解質の使用が、電池の長期安定作動に非常に有効であることを示している。
【0056】
【表2】
【0057】
(実施例8〜11)
実施例5で高い性能を示したイオン液体N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにリチウム塩LiTFSIを溶解させたリチウム塩含有イオン液体において、溶解させるリチウム塩LiTFSIの濃度を増大させることにより電池性能の改善を試みた。
【0058】
正極、固体電解質、負極、リチウム塩含有イオン液体は実施例5と同様のものを用いた。
【0059】
実施例5と同様の方法で作製したディスク状の固体電解質に、イオン液体N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにリチウム塩LiTFSIを0.5mol/L(実施例8)、0.6mol/L(実施例9)、0.7mol/L(実施例10)、0.8mol/L(実施例11)でそれぞれ溶解させたイオン液体を0.1mL(0.05mL/cm)含浸させた。
【0060】
リチウム空気電池セルの作製および充放電試験の条件は実施例5と同様の方法で行った。表3に、実施例8〜11の電池性能を、実施例5の結果と併せて示した。
【0061】
リチウム塩の添加量の増加により、一定濃度までは平均放電電圧が向上し、放電時間が増加することが確認された。これは、リチウム塩の濃度が高いとリチウムイオンの伝導量は増加するが、イオン液体の粘度も高くなりリチウムイオン伝導性は低下するためと考えられる。
【0062】
実施例9による電池の放電曲線を、図2に示す。該放電曲線より、平均放電電圧、放電時間について、電池性能は改善されることが確認された。
【0063】
【表3】
【0064】
(実施例12〜15)
実施例9で高い性能を示したイオン液体N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにリチウム塩LiTFSIを0.6mol/Lで溶解させたリチウム塩含有イオン液体において、含浸させるイオン液体の量を制御することにより電池性能の改善を試みた。
【0065】
正極、固体電解質、負極、リチウム塩含有イオン液体は実施例9と同様のものを用いた。
【0066】
実施例9と同様の方法で作製したディスク状の固体電解質に、イオン液体N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにリチウム塩LiTFSIを0.6mol/Lで溶解させたリチウム塩含有イオン液体を、0.2mL(0.10mL/cm)(実施例12)、0.3mL(0.15mL/cm)(実施例13)、0.4mL(0.20mL/cm)(実施例14)、0.5mL(0.25mL/cm)(実施例15)含浸させた。
【0067】
リチウム空気電池セルの作製および充放電試験の条件は実施例9と同様の方法で行った。表4に、実施例12〜15の電池性能を、実施例9の結果も併せて示した。
【0068】
イオン液体の含浸量の増加により、一定量までは平均放電電圧が向上し、放電時間が増加することが確認された。これは、リチウム塩含有イオン液体の含浸量が多くなると正極/電解質界面の反応サイト数が増大するものの、固体電解質を構成する材料の密着性(パッキング密度)が損なわれるため、性能が低下するためと考えられる。
【0069】
実施例13による電池の放電曲線を、図2に示す。該放電曲線より、平均放電電圧、放電時間について、電池性能は改善されることが確認された。
【0070】
【表4】
【0071】
(実施例16〜21)
実施例13で高い性能を示したリチウム空気電池において、正極にイオン液体またはリチウム塩含有イオン液体を含浸させて接触抵抗を低減させることにより電池性能の改善を試みた。
【0072】
正極、固体電解質、負極、イオン液体、リチウム塩含有イオン液体は実施例13と同様のものを用いた。
【0073】
実施例13と同様の方法で作製した正極に対し、イオン液体N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドをそれぞれ0.1mL(0.05mL/cm)(実施例16)、0.2mL(0.10mL/cm)(実施例17)、0.3mL(0.15mL/cm)(実施例18)含浸させた。同様に、正極にN−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにリチウム塩LiTFSIを0.6mol/Lで溶解させたイオン液体を、それぞれ0.1mL(0.05mL/cm)(実施例19)、0.2mL(0.10mL/cm)(実施例20)、0.3mL(0.15mL/cm)(実施例21)含浸させた。
【0074】
リチウム空気電池セルの作製および充放電試験の条件は実施例13と同様の方法で行った。表5に、実施例16〜21の電池性能を、実施例13の結果も併せて示した。
【0075】
正極への各イオン液体の含浸量の増加により、一定量までは放電時間が増加することが確認された。これは、リチウム塩含有イオン液体の含浸量が多くなると正極/電解質界面の反応サイト数が増大するものの、正極を構成する材料の密着性(パッキング密度)が損なわれるため、性能が低下するためと考えられる。
【0076】
実施例20による電池の放電曲線を、図2に示す。該放電曲線より、平均放電電圧、放電時間について、電池性能は改善されることが確認された。
【0077】
【表5】
【0078】
(実施例22〜27)
実施例20で高い性能を示したリチウム空気電池において、負極にイオン液体またはリチウム塩含有イオン液体を含浸させて接触抵抗を低減させることにより電池性能の改善を試みた。
【0079】
負極は、Li22Si合金粉末、アセチレンブラック粉末及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末を70:25:5の重量比で、らいかい機を用いて十分に粉砕・混合し、ロール成形してシート状電極(厚さ:0.5mm)を作製し、このシート状電極を直径16mmの円形に切り抜くことにより得た。
【0080】
正極、固体電解質、イオン液体、リチウム塩含有イオン液体は実施例20と同様のものを用いた。
【0081】
上記の方法で作製した負極に対し、イオン液体N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドをそれぞれ0.1mL(0.05mL/cm)(実施例22)、0.2mL(0.10mL/cm)(実施例23)、0.3mL(0.15mL/cm)(実施例24)含浸させた。また、同様に、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにリチウム塩LiTFSIを0.6mol/Lで溶解させたイオン液体を、0.1mL(0.05mL/cm)(実施例25)、0.2mL(0.10mL/cm)(実施例26)、0.3mL(0.15mL/cm)(実施例27)それぞれ含浸させた。
【0082】
リチウム空気電池セルの作製および充放電試験の条件は実施例20と同様の方法で行った。表6に、実施例22〜27の電池性能を、実施例20の結果と併せて示した。
【0083】
負極への各イオン液体の含浸量の増加により、一定量までは放電時間が増加することが確認された。これは、リチウム塩含有イオン液体の含浸量が多くなると負極/電解質界面の反応サイト数が増大するものの、負極を構成する材料の密着性(パッキング密度)が損なわれるため、性能が低下するためと考えられる。
【0084】
実施例26による電池の放電曲線を、図2に示す。該放電曲線より、平均放電電圧、放電時間について、電池性能は改善されることが確認された。
【0085】
【表6】
【0086】
(実施例28)
実施例26で高い性能を示したリチウム空気電池において、正極の構成材料をそれぞれ揮発性溶媒中に分散させ、固体電解質上に塗布することで接触抵抗を低減させることにより電池性能の改善を試みた。
【0087】
固体電解質、負極、リチウム塩含有イオン液体は実施例26と同様のものを用いた。
【0088】
実施例26と同様の方法で作製したディスク状の固体電解質の片面に、正極材料に用いた触媒、カーボン、およびポリフッ化ビニリデン(PVdF)をN−メチルピロリドン(NMP)に分散・混合してスラリー状としたものを塗布し、90℃で乾燥した。ついで、該固体電解質にイオン液体N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにリチウム塩LiTFSIを0.6mol/Lで溶解させたイオン液体を0.1mL(0.05mL/cm)含浸させた。
【0089】
リチウム空気電池セルの作製および充放電試験の条件は実施例26と同様の方法で行った。
【0090】
(実施例29)
実施例26で高い性能を示したリチウム空気電池において、負極の構成材料をそれぞれ揮発性溶媒中に分散させ、固体電解質上に塗布することで接触抵抗を低減させることにより電池性能の改善を試みた。
【0091】
正極、固体電解質、負極、リチウム塩含有イオン液体は実施例26と同様のものを用いた。
【0092】
実施例26と同様の方法で作製したディスク状の固体電解質の片面に、負極材料に用いたLi22Si合金粉末、カーボン、およびPVdFをNMPに分散・混合してスラリー状としたものを塗布し、90℃で乾燥した。次いで、該固体電解質にイオン液体N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにリチウム塩LiTFSIを0.6mol/Lで溶解させたイオン液体を0.1mL(0.05mL/cm)含浸させた。
【0093】
リチウム空気電池セルの作製および充放電試験の条件は実施例26と同様の方法で行った。
【0094】
(実施例30)
実施例26で高い性能を示したリチウム空気電池において、正極及び負極の構成材料をそれぞれ揮発性溶媒中に分散させ、固体電解質上に塗布することで接触抵抗を低減させることにより電池性能の改善を試みた。
【0095】
正極、固体電解質、負極、リチウム塩含有イオン液体は実施例26と同様のものを用いた。
【0096】
実施例26と同様の方法で作製したディスク状の固体電解質の片面に、正極材料に用いた触媒、カーボン、およびPVdFをNMPに分散・混合してスラリー状としたものを塗布し、90℃で乾燥した。また固体電解質のもう一方の面に、Li22Si合金粉末、アセチレンブラック粉末、PVdFを、NMPに分散・混合し、スラリー状としたものを塗布し、90℃で乾燥した。ついで、該固体電解質にイオン液体N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにリチウム塩LiTFSIを0.6mol/Lで溶解させたイオン液体を0.1mL(0.05mL/cm)含浸させた。該固体電解質を正極側からチタンメッシュ、負極側から負極固定用座金で挟み込み、全体をプレスすることでリチウム空気電池セルを作製した。
【0097】
充放電試験の条件は実施例26と同様の方法で行った。表7に、実施例28〜30の電池性能を、実施例26の結果と併せて示した。
【0098】
固体電解質表面への電極材料の塗布により、平均放電電圧が向上し、放電時間が増加することが確認された。これは、固体電解質に電極材料を塗布することで、各電極との接触抵抗が低減されたためと考えられる。
【0099】
実施例30による電池の放電曲線を、図2に示す。該放電曲線より、平均放電電圧、放電時間について、電池性能は改善されることが確認された。
【0100】
【表7】
【0101】
(実施例31〜35)
実施例30で高い性能を示したリチウム空気電池において、用いる固体電解質に関する検討を行うことにより電池性能の改善を試みた。
【0102】
正極、負極、リチウム塩含有イオン液体は実施例30と同様のものを用いた。
【0103】
固体電解質は、以下の材料を用いた。
(実施例31)La0.5Li0.5TiO、(実施例32)LiPO、(実施例33)LiSiS、(実施例34)LiAlS、(実施例35)LiZnGeS
【0104】
実施例30と同様に各固体電解質表面に電極材料を塗布し、さらにリチウム塩含有イオン液体を含浸させ、リチウム空気電池セルを作製した。さらに実施例30と同様に充放電試験を行った。表8に、実施例31〜35の電池性能を、実施例30ならびに比較例1(イオン液体なし)および比較例2(有機電解液使用)の結果と併せて示した。
【0105】
本発明のリチウム空気電池は、イオン液体を含浸させない比較例1および有機電解液を用いた比較例2に比べて、種々の固体電解質を用いた場合でも100時間以上も長い放電時間を得ることができた。固体電解質の中では硫化物系材料を用いたものが好ましく、中でもLi3.25Ge0.250.75(実施例30)を用いた場合に、最も高い電圧で最も長時間の放電が可能であった。
【0106】
【表8】
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明により、長期安定性に優れ、安全なリチウム空気電池を作製することができ、様々な電子機器の駆動源として使用することができる。
【符号の説明】
【0108】
1 正極
2 正極支持体(PTFE被覆)
3 正極固定用PTFEリング
4 正極端子
5 負極固定用PTFEリング
6 負極固定用座金
7 負極
8 Oリング
9 固体電解質
10 負極支持体
11 セル固定用ねじ(PTFE被覆)
12 負極端子
図1
図2