【実施例】
【0037】
以下に添付図面を参照して、この発明に係るリチウム空気電池についての実施例を詳細に説明する。なお、本発明は下記の実施例に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0038】
(実施例1〜4)
リチウム空気電池は、以下の手順で作製した。
【0039】
正極(空気電極)は、電極触媒であるLa
0.6Sr
0.4Fe
0.6Mn
0.4Os(LSFM)粉末、ケッチェンブラック粉末及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末を50:30:20の重量比で、らいかい機を用いて十分に粉砕・混合し、ロール成形し、シート状電極(厚さ:0.5mm)を作製した。このシート状電極を直径16mmの円形に切り抜き、チタンメッシュ上にプレスすることにより、ガス拡散型空気極を得た。なお、LSFM粉末は、金属硝酸塩を出発原料とする公知の手法によって合成した。
【0040】
また、固体電解質は、公知の材料であるthioLISICON(Li
3.25Ge
0.25P
0.75S
4)を既知の手法を用いて合成し、粉末をプレスによりディスク状(直径16mm、厚さ0.2mm)に成型することにより形成した。
【0041】
さらに、ディスク状の固体電解質に、イオン液体N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(実施例1)、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(実施例2)、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(実施例3)、N−メチル−N−ブチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(実施例4)をそれぞれ0.1mL(0.05mL/cm
2)含浸させた。
【0042】
負極は直径16mm、厚さ0.6mmの金属リチウムを用いた。
【0043】
図1に、円柱形のリチウム空気電池セルの断面図を示す。正極1は、PTFE被覆された正極支持体2の凹部に配置し、正極固定用PTFEリングで固定した。なお、正極と正極支持体が接触する部分は、電気的接触をとるためにPTFE被覆されていない。負極固定用座金6に負極7である厚さ150μmの4枚の金属リチウム箔(直径16mm)に同心円上に重ねて圧着した。負極固定用リング5を、正極を設置する凹部と対向する逆の凹部に配置し、中央部に金属リチウムが圧着された負極固定用座金6をさらに配置した。Oリング8は、図に示すようにセットした。セルの内部の正極と負極に挟まれるように、固体電解質ディスクを充填し、負極支持体10を被せて、セル固定用ねじ11で、セル全体を固定した。電池性能の測定試験には、正極端子4および負極端子12を用いた。
【0044】
電池の放電試験は、市販の充放電測定システムを用いて、正極の有効面積当たりの電流密度で5μA/cm
2を通電し、開回路電圧から電池電圧が、1.0Vに低下するまで測定を行った。電池の作製は、露点が−60℃以下の乾燥空気中で行い、電池の放電試験は、25℃の環境下で測定を行った。
【0045】
実施例2において作製した電池の放電曲線を、
図2に示す。該放電曲線より、実施例2によるリチウム空気電池は、開回路電圧として約2.70Vを示し、約270時間の放電が可能であり、電池としての動作を確認した。
【0046】
表1に、実施例1〜4におけるリチウム空気電池の電圧および放電時間についての電池性能を示す。比較として、電解質にイオン液体を含浸しない固体電解質のみを用いた場合(比較例1)の結果も併せて示す。
【0047】
いずれの実施例においても、空気電池としての作動が確認された。本発明のリチウム空気電池は、イオン液体を含浸させない比較例1に比べて高い放電電圧で100時間以上も長い放電時間を得ることができた。また、実施例2における空気電池が、最も長時間の放電が可能であった。
【0048】
【表1】
【0049】
(実施例5〜7)
実施例2で高い性能を示したイオン液体N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにリチウム塩を添加し、電解質全体のイオン伝導性を増大させることにより電池性能の改善を試みた。
【0050】
正極、固体電解質、負極、イオン液体溶媒は実施例2と同様のものを用いた。
【0051】
上記実施例と同様の方法で作製したディスク状の固体電解質に、イオン液体N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにリチウム塩:LiTFSI、LiPF
6、LiClO
4をそれぞれ0.4mol/Lで溶解させたリチウム塩含有イオン液体を0.1mL(0.05mL/cm
2)含浸させた。
【0052】
リチウム空気電池セルの作製および充放電試験の条件は実施例2と同様の方法で行った。表2に、実施例5〜7の電池性能を示す。リチウム塩を含まないイオン液体(実施例2)および有機電解液1mol/L LiTFSI/EC:DMC(1:1)を固体電解質に含浸させたリチウム空気電池(比較例2)の結果も併せて示した。
【0053】
リチウム塩の添加により、平均放電電圧が向上し、放電時間が増加することが確認された。さらに、従来の有機電解液と比較して、より高い放電電圧で100時間以上も長い放電時間を得ることができた。
【0054】
実施例5のリチウム空気電池の放電曲線を、
図2に示す。該放電曲線より、平均放電電圧、放電時間について、電池性能が改善されることが確認された。これは、イオン液体にリチウム塩を溶解させたイオン液体を固体電解質に含浸させることが有効であることを示している。
【0055】
一方、比較例2のリチウム空気電池は、時間の経過とともに放電電圧が減少することが確認された。これは、有機電解液の揮発による減少が原因であると考えられる。これに対し、イオン液体を含浸させた固体電解質を用いた本発明のリチウム空気電池は、測定した時間内において、ほとんど放電電圧及び容量の減少は見られなかった。この結果は、本発明によるイオン液体を含浸させた固体電解質の使用が、電池の長期安定作動に非常に有効であることを示している。
【0056】
【表2】
【0057】
(実施例8〜11)
実施例5で高い性能を示したイオン液体N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにリチウム塩LiTFSIを溶解させたリチウム塩含有イオン液体において、溶解させるリチウム塩LiTFSIの濃度を増大させることにより電池性能の改善を試みた。
【0058】
正極、固体電解質、負極、リチウム塩含有イオン液体は実施例5と同様のものを用いた。
【0059】
実施例5と同様の方法で作製したディスク状の固体電解質に、イオン液体N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにリチウム塩LiTFSIを0.5mol/L(実施例8)、0.6mol/L(実施例9)、0.7mol/L(実施例10)、0.8mol/L(実施例11)でそれぞれ溶解させたイオン液体を0.1mL(0.05mL/cm
2)含浸させた。
【0060】
リチウム空気電池セルの作製および充放電試験の条件は実施例5と同様の方法で行った。表3に、実施例8〜11の電池性能を、実施例5の結果と併せて示した。
【0061】
リチウム塩の添加量の増加により、一定濃度までは平均放電電圧が向上し、放電時間が増加することが確認された。これは、リチウム塩の濃度が高いとリチウムイオンの伝導量は増加するが、イオン液体の粘度も高くなりリチウムイオン伝導性は低下するためと考えられる。
【0062】
実施例9による電池の放電曲線を、
図2に示す。該放電曲線より、平均放電電圧、放電時間について、電池性能は改善されることが確認された。
【0063】
【表3】
【0064】
(実施例12〜15)
実施例9で高い性能を示したイオン液体N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにリチウム塩LiTFSIを0.6mol/Lで溶解させたリチウム塩含有イオン液体において、含浸させるイオン液体の量を制御することにより電池性能の改善を試みた。
【0065】
正極、固体電解質、負極、リチウム塩含有イオン液体は実施例9と同様のものを用いた。
【0066】
実施例9と同様の方法で作製したディスク状の固体電解質に、イオン液体N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにリチウム塩LiTFSIを0.6mol/Lで溶解させたリチウム塩含有イオン液体を、0.2mL(0.10mL/cm
2)(実施例12)、0.3mL(0.15mL/cm
2)(実施例13)、0.4mL(0.20mL/cm
2)(実施例14)、0.5mL(0.25mL/cm
2)(実施例15)含浸させた。
【0067】
リチウム空気電池セルの作製および充放電試験の条件は実施例9と同様の方法で行った。表4に、実施例12〜15の電池性能を、実施例9の結果も併せて示した。
【0068】
イオン液体の含浸量の増加により、一定量までは平均放電電圧が向上し、放電時間が増加することが確認された。これは、リチウム塩含有イオン液体の含浸量が多くなると正極/電解質界面の反応サイト数が増大するものの、固体電解質を構成する材料の密着性(パッキング密度)が損なわれるため、性能が低下するためと考えられる。
【0069】
実施例13による電池の放電曲線を、
図2に示す。該放電曲線より、平均放電電圧、放電時間について、電池性能は改善されることが確認された。
【0070】
【表4】
【0071】
(実施例16〜21)
実施例13で高い性能を示したリチウム空気電池において、正極にイオン液体またはリチウム塩含有イオン液体を含浸させて接触抵抗を低減させることにより電池性能の改善を試みた。
【0072】
正極、固体電解質、負極、イオン液体、リチウム塩含有イオン液体は実施例13と同様のものを用いた。
【0073】
実施例13と同様の方法で作製した正極に対し、イオン液体N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドをそれぞれ0.1mL(0.05mL/cm
2)(実施例16)、0.2mL(0.10mL/cm
2)(実施例17)、0.3mL(0.15mL/cm
2)(実施例18)含浸させた。同様に、正極にN−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにリチウム塩LiTFSIを0.6mol/Lで溶解させたイオン液体を、それぞれ0.1mL(0.05mL/cm
2)(実施例19)、0.2mL(0.10mL/cm
2)(実施例20)、0.3mL(0.15mL/cm
2)(実施例21)含浸させた。
【0074】
リチウム空気電池セルの作製および充放電試験の条件は実施例13と同様の方法で行った。表5に、実施例16〜21の電池性能を、実施例13の結果も併せて示した。
【0075】
正極への各イオン液体の含浸量の増加により、一定量までは放電時間が増加することが確認された。これは、リチウム塩含有イオン液体の含浸量が多くなると正極/電解質界面の反応サイト数が増大するものの、正極を構成する材料の密着性(パッキング密度)が損なわれるため、性能が低下するためと考えられる。
【0076】
実施例20による電池の放電曲線を、
図2に示す。該放電曲線より、平均放電電圧、放電時間について、電池性能は改善されることが確認された。
【0077】
【表5】
【0078】
(実施例22〜27)
実施例20で高い性能を示したリチウム空気電池において、負極にイオン液体またはリチウム塩含有イオン液体を含浸させて接触抵抗を低減させることにより電池性能の改善を試みた。
【0079】
負極は、Li
22Si
5合金粉末、アセチレンブラック粉末及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末を70:25:5の重量比で、らいかい機を用いて十分に粉砕・混合し、ロール成形してシート状電極(厚さ:0.5mm)を作製し、このシート状電極を直径16mmの円形に切り抜くことにより得た。
【0080】
正極、固体電解質、イオン液体、リチウム塩含有イオン液体は実施例20と同様のものを用いた。
【0081】
上記の方法で作製した負極に対し、イオン液体N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドをそれぞれ0.1mL(0.05mL/cm
2)(実施例22)、0.2mL(0.10mL/cm
2)(実施例23)、0.3mL(0.15mL/cm
2)(実施例24)含浸させた。また、同様に、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにリチウム塩LiTFSIを0.6mol/Lで溶解させたイオン液体を、0.1mL(0.05mL/cm
2)(実施例25)、0.2mL(0.10mL/cm
2)(実施例26)、0.3mL(0.15mL/cm
2)(実施例27)それぞれ含浸させた。
【0082】
リチウム空気電池セルの作製および充放電試験の条件は実施例20と同様の方法で行った。表6に、実施例22〜27の電池性能を、実施例20の結果と併せて示した。
【0083】
負極への各イオン液体の含浸量の増加により、一定量までは放電時間が増加することが確認された。これは、リチウム塩含有イオン液体の含浸量が多くなると負極/電解質界面の反応サイト数が増大するものの、負極を構成する材料の密着性(パッキング密度)が損なわれるため、性能が低下するためと考えられる。
【0084】
実施例26による電池の放電曲線を、
図2に示す。該放電曲線より、平均放電電圧、放電時間について、電池性能は改善されることが確認された。
【0085】
【表6】
【0086】
(実施例28)
実施例26で高い性能を示したリチウム空気電池において、正極の構成材料をそれぞれ揮発性溶媒中に分散させ、固体電解質上に塗布することで接触抵抗を低減させることにより電池性能の改善を試みた。
【0087】
固体電解質、負極、リチウム塩含有イオン液体は実施例26と同様のものを用いた。
【0088】
実施例26と同様の方法で作製したディスク状の固体電解質の片面に、正極材料に用いた触媒、カーボン、およびポリフッ化ビニリデン(PVdF)をN−メチルピロリドン(NMP)に分散・混合してスラリー状としたものを塗布し、90℃で乾燥した。ついで、該固体電解質にイオン液体N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにリチウム塩LiTFSIを0.6mol/Lで溶解させたイオン液体を0.1mL(0.05mL/cm
2)含浸させた。
【0089】
リチウム空気電池セルの作製および充放電試験の条件は実施例26と同様の方法で行った。
【0090】
(実施例29)
実施例26で高い性能を示したリチウム空気電池において、負極の構成材料をそれぞれ揮発性溶媒中に分散させ、固体電解質上に塗布することで接触抵抗を低減させることにより電池性能の改善を試みた。
【0091】
正極、固体電解質、負極、リチウム塩含有イオン液体は実施例26と同様のものを用いた。
【0092】
実施例26と同様の方法で作製したディスク状の固体電解質の片面に、負極材料に用いたLi
22Si
5合金粉末、カーボン、およびPVdFをNMPに分散・混合してスラリー状としたものを塗布し、90℃で乾燥した。次いで、該固体電解質にイオン液体N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにリチウム塩LiTFSIを0.6mol/Lで溶解させたイオン液体を0.1mL(0.05mL/cm
2)含浸させた。
【0093】
リチウム空気電池セルの作製および充放電試験の条件は実施例26と同様の方法で行った。
【0094】
(実施例30)
実施例26で高い性能を示したリチウム空気電池において、正極及び負極の構成材料をそれぞれ揮発性溶媒中に分散させ、固体電解質上に塗布することで接触抵抗を低減させることにより電池性能の改善を試みた。
【0095】
正極、固体電解質、負極、リチウム塩含有イオン液体は実施例26と同様のものを用いた。
【0096】
実施例26と同様の方法で作製したディスク状の固体電解質の片面に、正極材料に用いた触媒、カーボン、およびPVdFをNMPに分散・混合してスラリー状としたものを塗布し、90℃で乾燥した。また固体電解質のもう一方の面に、Li
22Si
5合金粉末、アセチレンブラック粉末、PVdFを、NMPに分散・混合し、スラリー状としたものを塗布し、90℃で乾燥した。ついで、該固体電解質にイオン液体N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドにリチウム塩LiTFSIを0.6mol/Lで溶解させたイオン液体を0.1mL(0.05mL/cm
2)含浸させた。該固体電解質を正極側からチタンメッシュ、負極側から負極固定用座金で挟み込み、全体をプレスすることでリチウム空気電池セルを作製した。
【0097】
充放電試験の条件は実施例26と同様の方法で行った。表7に、実施例28〜30の電池性能を、実施例26の結果と併せて示した。
【0098】
固体電解質表面への電極材料の塗布により、平均放電電圧が向上し、放電時間が増加することが確認された。これは、固体電解質に電極材料を塗布することで、各電極との接触抵抗が低減されたためと考えられる。
【0099】
実施例30による電池の放電曲線を、
図2に示す。該放電曲線より、平均放電電圧、放電時間について、電池性能は改善されることが確認された。
【0100】
【表7】
【0101】
(実施例31〜35)
実施例30で高い性能を示したリチウム空気電池において、用いる固体電解質に関する検討を行うことにより電池性能の改善を試みた。
【0102】
正極、負極、リチウム塩含有イオン液体は実施例30と同様のものを用いた。
【0103】
固体電解質は、以下の材料を用いた。
(実施例31)La
0.5Li
0.5TiO
3、(実施例32)Li
3PO
4、(実施例33)Li
4SiS
4、(実施例34)Li
5AlS
4、(実施例35)Li
2ZnGeS
4
【0104】
実施例30と同様に各固体電解質表面に電極材料を塗布し、さらにリチウム塩含有イオン液体を含浸させ、リチウム空気電池セルを作製した。さらに実施例30と同様に充放電試験を行った。表8に、実施例31〜35の電池性能を、実施例30ならびに比較例1(イオン液体なし)および比較例2(有機電解液使用)の結果と併せて示した。
【0105】
本発明のリチウム空気電池は、イオン液体を含浸させない比較例1および有機電解液を用いた比較例2に比べて、種々の固体電解質を用いた場合でも100時間以上も長い放電時間を得ることができた。固体電解質の中では硫化物系材料を用いたものが好ましく、中でもLi
3.25Ge
0.25P
0.75S
4(実施例30)を用いた場合に、最も高い電圧で最も長時間の放電が可能であった。
【0106】
【表8】