【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/革新的光通信インフラの研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態にかかるコネクタ構造について説明する。
図1は多心光コネクタ1の斜視図、
図2は平面図である。また、
図3(a)は、
図2のA部拡大図であり、
図3(b)は、マルチコアファイバ13の正面図である。多心光コネクタ1は、主に、フェルール3、マルチコアファイバ13等から構成される。
【0030】
フェルール3には複数の孔7が形成される。孔7は、マルチコアファイバ13の先端が挿通される部位である。また、フェルール3の端面において、複数の孔7の両側部にはガイド機構であるガイド穴5が形成される。ガイド穴5には、ガイドピン15が挿入される。ガイドピン15によって、接続対象のコネクタ等との位置決めがなされる。
【0031】
このように、マルチコアファイバ13の両側にガイドピン15またはガイド穴5を設けることで、ガイド機構を有するいわゆるMTコネクタ(Mechanically Transferable Splicing Connector)として使用可能である。したがって、従来のコネクタと同様に取り扱うことが可能である。
【0032】
なお、以下の説明においては、本発明のコネクタ構造として、複数のマルチコアファイバ13からなるMTタイプの多心光コネクタに適用する例を示すが、本発明はこれに限られない。接続対象に対して、位置決めが可能であれば他の構造としてもよい。また、1本のマルチコアファイバ13からなる単心光コネクタであってもよい。
【0033】
図3(b)に示すように、マルチコアファイバ13は、断面が略円形であり、複数のコア19が所定の間隔で配置され、周囲を複数のコアよりも屈折率が低いクラッド21で覆われた光ファイバである。例えば、全部で7つのコア19は、マルチコアファイバ13の中心と、その周囲に正六角形の各頂点位置に配置される。すなわち、中心のコア19と周囲の6つのコア19とは全て一定の間隔となる。また、6つのコア19において、隣り合う互いのコア19同士の間隔も同一となる。コア19は、信号光の導波路となる。なお、コア19の配置は、図示した例には限られない。
【0034】
複数のマルチコアファイバ13は、フェルール3の端面から、その先端が所定長だけ突出する。
【0035】
このように、マルチコアファイバ13の先端をフェルール3の端面から突き出させる方法としては、マルチコアファイバ13をフェルール3に固定した後、フェルール3の端面をバフ研磨する方法がある(以下、「突き出し研磨」とする)。バフ研磨は、ペースト状の研磨剤や懸濁液を布製やペーパー製の研磨布にしみ込ませて研磨を行うものである。研磨樹脂製のフェルール3が優先的に研磨されることで、ガラス(たとえば石英ガラス)製のマルチコアファイバ13のみをフェルール3の端面から突き出させることができる。なお、研磨剤としては、例えばアルミナが用いられる。
【0036】
図3(a)に示すように、突き出し研磨によるマルチコアファイバ13の突き出し高さ(図中h)は、ある程度大きくする必要がある。これは、光接続部に対する、フェルール3に含まれるフィラー11などの影響を小さくするためである。このように、フィラー11の影響を受けにくくするためには、マルチコアファイバ13の突き出し高さhは、5μm以上とすることが望ましい。このように、マルチコアファイバ13の突き出し高さhを十分に確保することで、介在物に阻害されずに確実にマルチコアファイバ13同士のフィジカルコンタクトを担保することができる。
【0037】
一方、マルチコアファイバ13の突き出し高さhを大きくしすぎると、コネクタの繰り返しの脱着時などにおけるマルチコアファイバ13の耐久性の観点から望ましくない。したがって、マルチコアファイバ13の突き出し高さhは、20μm以下とすることが望ましい。
【0038】
ここで、フェルール3の突き出し研磨量を大きくすると、マルチコアファイバ13の先端部の縁部の研磨ダレ(略球面形状)が大きくなる。すなわち、マルチコアファイバ13の先端面のR(曲率半径)が小さくなる。
【0039】
ここで、
図3(b)に示すように、マルチコアファイバ13の正面視において、マルチコアファイバ13の中心を中心として、全てのコア19のモードフィールド径を包含する最小の円を基準円9とする。すなわち、少なくとも全てのコア19は、基準円9の内部に包含される。ここで、基準円9の半径をaとした際に、基準円9の内部での最も突出代の大きな部位と、最も突出代の小さな部位の突出代の差(以下、単に突出代差)をΔとする。
【0040】
図4は、突き出し研磨時の突き出し高さh(μm)と、前述した突出代差Δ(μm)との相関を示す図である。なお、用いたマルチコアファイバ13(クラッド21)の外径は181.5μm、コアピッチは44.5μmであった。また、1550nmに対するモードフィールド径は10.2μmであり、基準円9の半径は約50μmであった。
【0041】
図4に示すように、突き出し研磨量を増やして、突き出し高さhを高くしていくと、突出代差Δが線形で大きくなる(図中直線F)。すなわち、所定量以上の突き出し高さhを確保しようとすると、それに応じて、マルチコアファイバ13の先端部の突出代差Δが大きくなる。
【0042】
図5(a)は、マルチコアファイバ13同士を対向して突き合せた状態を示す図である。一対のマルチコアファイバ13の先端面の曲率半径をそれぞれ、R
1、R
2とする。また、一対のマルチコアファイバ13の先端の突出代差をそれぞれ、Δ
1、Δ
2(μm)とする。また、それぞれの基準円9(不図示)の半径をa(μm)とする。
【0043】
この状態から、
図5(b)に示すように、マルチコアファイバ13の先端同士を押圧し、全てのコア19同士をフィジカルコンタクトさせるために必要な押圧力Fpc(N)はHertzの式により(1)式で表される。
Fpc=(4a
3E)/(3(1−ν
2))・(R
1+R
2)/(2R
1R
2)・・・(1)
(但し、E:マルチコアファイバ13のヤング率、ν:マルチコアファイバ13のポアソン比)
なお、マルチコアファイバ13の先端同士は、コネクタ構造に含まれるコネクタスプリングなどの弾性部材(図示省略)によって押圧される。
【0044】
マルチコアファイバ13の先端においては、R>>a>>Δが成り立つため、
R≒a
2/2Δと表すことができ、これを(1)式に代入すると、(2)式を得ることができる。
Fpc=(4aE)/(3(1−ν
2))・(Δ
1+Δ
2)・・・(2)
【0045】
(2)式より、Fpcは、(Δ
1+Δ
2)に対して線形であると言える。
【0046】
一方、
図6に示すように、コネクタスプリングの押圧力Fpを変化させて、Δ
1+Δ
2との相関を評価した。図中の白丸(図中D)は、フィジカルコンタクトしなかったものであり、黒丸(図中E)は、フィジカルコンタクトしたものである。なお、用いたマルチコアファイバは、
図4で示したものと同様である。また、簡単のため、
図6に示す例では、単心のマルチコアファイバ13同士のフィジカルコンタクトの可否を評価したものである。
【0047】
図中の直線Bは、マルチコアファイバ13のヤング率E=71.5GPa、ポアソン比ν=0.14として、(2)式で計算される理論上の直線である。すなわち、理論上は、直線Bよりも上側(コネクタスプリングによる押圧力の強い側)であれば、フィジカルコンタクトすることが期待される。しかし、発明者らが実際に評価を行うと、フィジカルコンタクトの可否の境界は、直線Cであることが分かった。
【0048】
理論上の直線Bに対して実際のフィジカルコンタクトの可否の境界である直線Cがずれる理由は以下のように考えられる。まず、Δ
1+Δ
2=0においてネクタスプリングによる押圧力Fpが0ではない点は、コネクタ同士のガイドピンの挿入抵抗などによって、コネクタスプリングの押圧力Fpの全てが、マルチコアファイバ13の先端の押圧力に利用されないためと考えられる。すなわち、コネクタスプリングの押圧力Fp=マルチコアファイバに加わる押圧力Fpc+コネクタの抵抗力Frと言える。
【0049】
今回用いたコネクタの抵抗力Frは、約4Nであった。コネクタの抵抗力Frは、用いられるコネクタに依存する。したがって、コネクタスプリングの押圧力の設定時には、予めFrを評価して、マルチコアファイバ13のフィジカルコンタクトに必要な押圧力にFrを加えたFpを設定すればよい。
【0050】
次に、直線Bと直線Cとの傾きのずれについて考察する。理論上の直線Bに対して実際のフィジカルコンタクトの可否の境界である直線Cの傾きが大きい理由としては、例えば、マルチコアファイバ13の先端形状が、
図3(a)に示したような理想形状ではなく、中心と突出代の最高点とのずれや、Δが基準円の周方向に一定ではないなどによるものと考えられる。このため、Δ
1+Δ
2が大きくなるほど、理論値からのずれ量が大きくなり、この結果、必要な押圧力Fpcが大きくなったものと考えられる。
【0051】
そこで、発明者らは、理論上の直線Bの傾きに対して、実際の直線Cの傾きとなるように補正係数αを算出したところ、α=1.39であった。
【0052】
したがって、マルチコアファイバの本数をn本とすると、フィジカルコンタクトが可能な条件は、(3)式で表される。
Fp≧(4aEαn)/(3(1−ν
2))・(Δ
1+Δ
2)+Fr・・・(3)
【0053】
ここで、Fp=Fr+Fpcである。したがって、フィジカルコンタクトが可能な条件は、(4)式で表される。
Fpc≧(4aEαn)/(3(1−ν
2))・(Δ
1+Δ
2)・・・(4)
【0054】
なお、マルチコアファイバ13の先端にかける押圧力Fpcを大きくしていくと、コア同士をフィジカルコンタクトさせることが可能であるが、マルチコアファイバ13の先端に付与できる押圧力には限界がある。実際には、マルチコアファイバ13の一本あたりに付与可能な押圧力は4N程度である。マルチコアファイバ13の1本当たりの押圧力が4Nを超えると、先端の破損の恐れがある。すなわち、Fpc(N)=4nと表される。
【0055】
したがって、(3)式に対して、マルチコアファイバ13のヤング率E=71.5GPa、ポアソン比ν=0.14、α=1.39を代入すると、(5)式で表される。
(Δ
1+Δ
2)(μm)≦29.6/a・・・(5)
【0056】
また、Δ
1とΔ
2が同じΔであるとすると、(6)式の条件を満たせば、全てのコアについてフィジカルコンタクトさせることができる。
Δ(μm)≦14.8/a・・・(6)
ここで、例えば、a=50μmの場合には、Δ(μm)≦0.296μm≒0.3μmの条件を満たすことで、全てのコアについてフィジカルコンタクトさせることができることとなる。
【0057】
ここで、前述した様に、マルチコアファイバ13の突き出し高さhを高くしようとすると、Δは大きくなる傾向にある。したがって、フィラー11の影響を受けないように、マルチコアファイバ13の突き出し高さhを高くすると、Δが大きくなり、(6)式を満たさなくなる恐れがある。
【0058】
そこで、本発明では、フェルール3にマルチコアファイバ13を固定し、突き出し研磨によってマルチコアファイバ13の先端を突出させた後、さらに、マルチコアファイバ13の先端に平坦部を形成することもできる。
【0059】
図7(a)は、突き出し研磨後に、さらに平坦部17を形成した状態を示すマルチコアファイバ13を示す側方図であり、
図7(b)は正面図である。前述した様に、突き出し研磨は、フェルール3の端面を選択的に研磨してマルチコアファイバ13の先端を突出させるため、バフを用いたバフ研磨等が採用される。一方、平坦部17は、研磨シート等を用いて研磨を行うことで、形成することができる(以下、単に、平坦研磨とする)。
【0060】
平坦研磨としては、例えば、定盤上に研磨シートなどを配置して、マルチコアファイバ13の先端部を、マルチコアファイバ13の長手方向に対して垂直に研磨すればよい。すなわち、バフ等を用いずに研磨を行う。
【0061】
なお、形成される平坦部17の範囲は、基準円9よりも広くすることが望ましい。このようにすることで、全てのコア19のモードフィールド径が、平坦部17内に包含される。このように平坦部17を形成することで、突出代差Δを極めて小さくすることができる。
【0062】
図8の上段は、平坦部17を形成しないマルチコアファイバ13の先端部を示すレーザ顕微鏡写真であり、下段は3D斜視図である。また、
図9は、平坦部17を形成したマルチコアファイバ13の先端部を示すレーザ顕微鏡写真であり、下段は3D斜視図である。なお、レーザ顕微鏡写真において、中央の大きな円形がマルチコアファイバ13であり、周囲の小さな円形は、フェルール端面に露出したフィラー11である。
【0063】
図8に示すように、突き出し研磨のみを行い、平坦部17が形成されていないマルチコアファイバ13の、突き出し高さhと突出代差Δを測定したところ、突き出し高さh=6.49μmであり、突出代差Δ=0.52μmであった。
【0064】
一方、
図9に示すように、突き出し研磨後、平坦研磨を行い、平坦部17が形成されたたマルチコアファイバ13の、突き出し高さhと突出代差Δを測定したところ、突き出し高さh=6.45μmであり、突出代差Δ=0.07μmであった。このように、平坦部17を形成することで、ほぼ同様の突き出し高さhを確保しても、突出代差Δを極めて小さくすることができることが分かった。
【0065】
図10は、平坦部17の有無による、突き出し高さh
avg.とΔ
1+Δ
2の関係を示す図である。なお、図の横軸は、それぞれのマルチコアファイバ13の突き出し高さh
1とh
2の平均(すなわち、h
avg.=(h
1+h
2)/2)であり、縦軸は、Δ
1+Δ
2の和である。また、図中のひし形(図中V)は、平坦部を形成しない場合であり、図中の四角(図中G)は、平坦部を形成した場合である。
【0066】
前述した様に、通常の突き出し研磨のみを行った際の突き出し高さh
avg.と突出代差Δ
1+Δ
2は、相関を有する(図中直線I)。すなわち、突き出し高さh
avg.を高くすると、突出代差Δ
1+Δ
2が直線的に大きくなる。一方、平坦化処理を行うことで、この直線Iよりも下方(Δ
1+Δ
2が小さい方向)に分布させることができる(図中G)。すなわち、突き出し高さh
avg.を高くしても、突出代差Δ
1+Δ
2を小さく抑えることが可能となる。
【0067】
このように、平坦部17を形成することで、突き出し高さhを大きくしても、突出代差Δを小さくすることができる。したがって、全てのコア19について、より確実にフィジカルコンタクトさせることができる。
【0068】
また、
図7(a)に示すように、平坦部17の周囲には、突き出し研磨時によって面取部23が形成される。このように、マルチコアファイバ13の先端縁部が面取りされていることで、フィジカルコンタクトに好ましいマルチコアファイバ13の端面形状となる。なお、突出代差Δは0であることが望ましいが、完全にΔを0とすることは製造上困難であるため、Δは0.01μm以上とする。
【0069】
また、さらに、平坦研磨後に、平坦部17と面取部23との境界部をバフ研磨等によってなだらかにして、連続面としてもよい。
【0070】
次に、突き出し研磨時のマルチコアファイバ13の先端の形状の変化についてより詳細に観察すると、まず、突き出し研磨初期においては、
図11(a)に示すように、マルチコアファイバ13の先端がわずかにフェルール3の端面から突出する。この際、マルチコアファイバ13の先端縁部の一部が面取り研磨される。
【0071】
さらに、突き出し研磨を継続すると、
図11(b)のように、マルチコアファイバ13の突き出し高さが高くなる。なお、マルチコアファイバ13の突き出し高さが低い場合には、マルチコアファイバ13の先端部に、平坦部17が形成されているのと同様の形態となる。
【0072】
一方、所定以上の突き出し高さを確保しようとすると、
図11(c)のように、マルチコアファイバ13の先端縁部の面ダレが大きくなり、コア19の部位にも面ダレ部がかかる。この結果、コア19同士の突出代差が生じることとなる。
【0073】
ここで、基準円9における最外周に位置するコア19からマルチコアファイバ13の外周面までのクラッド21の厚みをtとする。この場合、外周クラッド厚tを厚くすれば、マルチコアファイバ13の先端縁部の面ダレを小さくすることができ、コア19同士の突出代差を小さくすることができる。
【0074】
しかし、外周クラッド厚tを大きくすると、マルチコアファイバ13の外径が大きくなるため望ましくない。また、マルチコアファイバ13の外径を一定にして、コア19同士を近づけることで、外周クラッド厚tを大きくする方法もあるが、クロストークなどの問題があるため、限界がある。したがって、所望のコア19のピッチを維持したまま、外周クラッド厚tを50μm以下とすることが望ましい。一方、外周クラッド厚tを薄くしすぎると、所望の光学特性を満たさない恐れがあるため、外周クラッド厚tは30μm以上であることが望ましい。
【0075】
図12は、外周クラッド厚tの違いによる、マルチコアファイバ13先端形状の違いについて評価した結果を示す図である。縦軸は、各部における中心との突出代差Δを示し、横軸は、マルチコアファイバ13の中心からの距離を示す。図中Oは、マルチコアファイバの中心であり、図中Tは、r=a(すなわち、基準円9の円周上)の位置を示す。また、図中Pは、フィジカルコンタクトに必要な突出代差Δを示す。なお、図に示す例では、a=50μmとしたため、図中Pは、Δ=0.3μmを示す。
【0076】
また、図の実線Jは、外周クラッド厚t=41μmの場合であり、図の破線Kは、外周クラッド厚t=52μmの場合を示す。すなわち、曲線J、Kともに、rの最大値は、クラッド端部の位置を示す。具体的には、外周クラッド厚t=41μmである実線Jの横軸の最大値(図中Q)は、r=50μm+41μmであり、外周クラッド厚t=52μmである破線Kの横軸の最大値(図中S)は、r=50μm+52μmとなる。
【0077】
また、図中L群は、突き出し高さh=2μmの場合、図中M群は、突き出し高さh=4μmの場合、図中N群は、突き出し高さh=6μmの場合を示す。前述した様に、突き出し高さhを高くしていくと、突出代差Δが大きくなる。
【0078】
図から明らかなように、外周クラッド厚tが小さい方(実線J)が、外周クラッド厚tが大きい場合(破線K)と比較して、突出代差Δが起きくなる傾向がある。これは、
図11でも示したように、外周クラッド厚tが大きい場合には、研磨によって生じる面ダレの影響が、基準円に対して影響しにくいため、突出代差Δが小さくなるためである。
【0079】
しかしながら、前述した様に、マルチコアファイバ13の外径を小さく抑えるためには、外周クラッド厚tは50μm以下とすることが望ましい。また、前述した様に、フィラー11等の影響を排除するためには、突き出し高さhは5μm以上とすることが望ましい。すなわち、図中N群における実線Jにおいても、突出代差Δ=0.3μm以下とする必要がある。しかし、図からも明らかなように、図中N群における実線Jは、突出代差Δ=0.3μmを超えている。このため、フィジカルコンタクトをさせることができない。
【0080】
このような場合に、
図7に示すような平坦部17を形成することで、外周クラッド厚tを50μm以下とし、突き出し高さhを5μm以上とした場合でも、突出代差Δ=0.3μm以下とすることができる。
【0081】
次に、本発明のコネクタ構造の製造方法について説明する。前述した様に、フェルール3に対して、マルチコアファイバ13を挿通して固定した後、フェルール3の端面に対して突き出し研磨(および平坦研磨)を行うことで、コネクタ構造を製造することができる。一方、本発明のコネクタ構造は、以下のように製造することもできる。
【0082】
まず、
図13(a)に示すように、マルチコアファイバ13を、フェルール3に挿通する。次に、フェルール3の接続方向(マルチコアファイバ13先端の突出方向)に突き当て部材33を配置し、フェルール3に突き当てる(図中矢印U)。突き当て部材33は、例えば、ガイドピン15と嵌合するガイド孔を有し、マルチコアファイバ13の突出範囲に凹部35が形成された部材である。
【0083】
図13(b)に示すように、突き当て部材33をフェルール3に突き当てると、フェルール3の端面と突き当て部材33との間に凹部35によるクリアランスが形成される。ここで、フェルール3の先端方向にマルチコアファイバ13を押し込むことで、それぞれのマルチコアファイバ13の先端が突き当て部材33に突き当たる。したがって、凹部35に応じた所定の突出し量で、マルチコアファイバ13の先端をフェルール3の端面から突出させることができる。
【0084】
この状態で、フェルール3に対して、それぞれのマルチコアファイバ13を接着して固定する。以上により、コネクタ構造を構築することができる。なお、フェルール3に挿通するマルチコアファイバ13は、例えば、レーザクリーバで切断することで、マルチコアファイバ13の先端の一部(例えば基準円)を略平坦にすることができる。また、レーザクリーバで切断することで、石英ガラスの表面張力によって、クラッドのエッジを、丸みを帯びた形状とすることができる。
【0085】
また、フェルール3に挿通するマルチコアファイバ13を、ファイバクリーバで切断することもできる。この場合には、切断面を熱処理(アーク放電やバーナ加熱など)することで、レーザクリーバで切断したのと同様の先端形状を得ることもできる。また、マルチコアファイバ13の先端をふっ酸などによって、ケミカルエッチングすることで、同様の形状を得ることもできる。さらに、予めマルチコアファイバ13の先端縁部を面取加工(面取り研磨など)したものを用いてもよい。
【0086】
以上のような方法によっても、本発明のコネクタ構造を得ることができる。また、このような方法によれば、突き出し高さhは、突き当て部材33の凹部35の深さによって制御することができるため、突き出し高さhを高くしても、突出代差Δの小さいコネクタ構造を得ることができる。
【0087】
また、
図14に示すようなフェルール3aを用いてもよい。フェルール3aは、孔7が形成される部位が先端側に突出するように凸部25が形成される。すなわち、凸部25に孔7が形成され、マルチコアファイバ13が挿通される。フェルール3aにマルチコアファイバ13を挿通した後、軽く突き出し研磨を行うことで、突出代差Δを小さく抑えるとともに、凸部25の高さ分だけ突き出し高さhを確保し、フィラー11等の影響を抑制することができる。
【0088】
以上、本実施の形態によれば、突出代差Δ(μm)≦14.8/aとすることで、接続対象とのフィジカルコンタクトを確実に確保することが可能なコネクト構造を得ることができる。また、突き出し高さhを十分に確保することで、マルチコアファイバ13の先端の接続部に対して、フェルール3の端面のフィラー11等による影響を抑制することができる。
【0089】
また、突き出し研磨を行う場合は、通常、突き出し高さhを高くすると、突出代差Δが大きくなる。したがって、接続対象とのフィジカルコンタクトが困難となる。しかし、本発明では、突き出し高さhを高くし、突出代差Δが大きくなる場合には、平坦研磨を行うことで、突出代差Δを小さくすることができる。また、平坦部17を形成することで、外周クラッド厚tを小さくしても、突出代差Δを小さくすることができる。さらに、この場合、平坦部17の周囲には、突き出し研磨時に生じた面ダレ部が面取部として機能するため、フィジカルコンタクトに適した先端形状を得ることができる。
【0090】
また、突き当て部材33を用いることで、マルチコアファイバ13の先端を容易に所定量だけフェルール3の端面から突出させることができる。このため、フェルール3の端面を突き出し研磨する必要がない。この結果、マルチコアファイバ13の端面縁部の研磨ダレの発生を抑制することができる。
【0091】
また、この際、マルチコアファイバ13をフェルール3に挿通する前に、予めマルチコアファイバ13の先端の面取り加工を行っておくことで、フィジカルコンタクトに適した先端形状を得ることができる。
【0092】
また、フェルール3の先端部に凸部25を形成し、凸部25の端面からマルチコアファイバ13を突出させることで、突き出し研磨量を少なくしても、突き出し高さhを確保することができる。
【0093】
なお、本発明にかかるコネクタ接続構造は、
図15に示すように、対向するマルチコアファイバ13のそれぞれの突き出し高さh
1、h
2と、突出代差Δ
1、Δ
2は、同一でなくてもよい。この場合には前述した(5)式を満たせばよい。
【0094】
また、この際は
図16に示すように、対向するマルチコアファイバ13のうち片方の突き出し高さh
1、突出代差Δ
1がほぼ0の場合も含む。この場合、もう片方のマルチコアファイバ13の突出代差Δ
2が突出代差Δ
2(μm)≦29.6/aを満たせばよい。上記突き出し高さh
1、突出代差Δ
1がほぼ0のマルチコアファイバ13の端面形状は、フェルール3を、研磨シートを用いて平坦研磨することで得ることができる。
【0095】
また、本発明のマルチコアファイバ13のコア19の配置としては、
図3(b)で示したような、中心とその周囲に最密に配置される場合には限られない。例えば、
図17(a)に示すマルチコアファイバ13aのように、コア19は環状に配置されていてもよく、または、
図17(b)に示すマルチコアファイバ13bのように、ランダムに配置されていてもよい。なお、この場合でも、マルチコアファイバの中心に対して、全てのコア19のモードフィールド径が含まれる最小の円を基準円9とすればよい。
【0096】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。