(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871445
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】液晶組成物および液晶素子
(51)【国際特許分類】
C09K 19/02 20060101AFI20160216BHJP
C09K 19/42 20060101ALI20160216BHJP
C09K 19/54 20060101ALI20160216BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
C09K19/02
C09K19/42
C09K19/54 B
G02F1/13 500
【請求項の数】26
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2007-59754(P2007-59754)
(22)【出願日】2007年3月9日
(65)【公開番号】特開2007-277531(P2007-277531A)
(43)【公開日】2007年10月25日
【審査請求日】2010年2月22日
【審判番号】不服2013-21572(P2013-21572/J1)
【審判請求日】2013年11月5日
(31)【優先権主張番号】特願2006-67521(P2006-67521)
(32)【優先日】2006年3月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】菊池 裕嗣
(72)【発明者】
【氏名】長谷場 康宏
【合議体】
【審判長】
星野 紹英
【審判官】
橋本 栄和
【審判官】
菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−336477(JP,A)
【文献】
特開2004−018581(JP,A)
【文献】
2002年日本液晶学会討論会講演予稿集,2002年,p.165−166
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K19/00-19/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の温度範囲において光学的に等方性の液晶相を発現し、
キラルネマチック相と非液晶等方相とが共存する上限温度と下限温度との差が3℃〜150℃である組成物に、さらにキラル剤を添加して得られ、
透明点T
1の化合物1と、透明点T
2の化合物2とを含む、透明点がTxの液晶組成物であって、
液晶組成物に対して化合物1を10〜80重量%および化合物2を20〜90重量%含み、
透明点T
1と透明点T
2と液晶組成物の透明点Txとが、
T
1>T
2
T
1−Tx≧100℃
を満たし、
化合物1が、下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
aは水素、炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル基中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
R
bは水素、ハロゲン、−CN、−N=C=O、−N=C=S、−CF
3、−OCF
3または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、このアルキル中の−CH
3は−CNで置き換えられてもよく;
A
1〜A
5は独立に芳香族性あるいは非芳香族性の3〜8員環、または炭素数9以上の縮合環であり、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、またはハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく、環の−CH
2−は−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよいが、A
1〜A
5がテトラヒドロピラン環であることはなく、;
Z
1〜Z
4は独立に単結合、炭素数1〜8のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−N(O)=N−、−N=N(O)−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
n
1〜n
3は独立に0または1であり、R
bが水素またはフッ素の場合はn
2およびn
3は1であり、Z
4が−COO−である場合は、n
2とn
3が1であり、A
4またはA
5の少なくとも一つが炭素数9以上の縮合環である場合のみn
1〜n
3すべてが0となりうる。)
で表され、透明点が150℃〜400℃である化合物であり、
光学的に等方性の液晶相で駆動させる素子に用いられる光学的に等方性の液晶組成物。
【請求項2】
特定の温度範囲において光学的に等方性の液晶相を発現
し、
キラルネマチック相と非液晶等方相とが共存する上限温度と下限温度との差が3℃〜150℃である組成物に、さらにキラル剤を添加して得られ、
透明点T
1の化合物1と、透明点T
2の化合物2とを含む、透明点がTxの液晶組成物であって、
液晶組成物に対して化合物1を5〜70重量%および化合物2を30〜95重量%含み、
透明点T
1と透明点T
2と液晶組成物の透明点Txとが、
T
1>T
2
T
1−Tx≧150℃
を満たし、
化合物1が、下記一般式(1)
【化2】
(式中、R
aは水素、炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル基中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
R
bは水素、ハロゲン、−CN、−N=C=O、−N=C=S、−CF
3、−OCF
3または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、このアルキル中の−CH
3は−CNで置き換えられてもよく;
A
1〜A
5は独立に芳香族性あるいは非芳香族性の3〜8員環、または炭素数9以上の縮合環であり、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、またはハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく、環の−CH
2−は−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよいが、A
1〜A
5がテトラヒドロピラン環であることはなく、;
Z
1〜Z
4は独立に単結合、炭素数1〜8のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−N(O)=N−、−N=N(O)−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
n
1〜n
3は独立に0または1であり、R
bが水素またはフッ素の場合はn
2およびn
3は1であり、Z
4が−COO−である場合は、n
2とn
3が1であり、A
4またはA
5の少なくとも一つが炭素数9以上の縮合環である場合のみn
1〜n
3すべてが0となりうる。)
で表され、透明点が150℃〜400℃である化合物であり、
光学的に等方性の液晶相で駆動させる素子に用いられる光学的に等方性の液晶組成物。
【請求項3】
特定の温度範囲において光学的に等方性の液晶相を発現
し、
キラルネマチック相と非液晶等方相とが共存する上限温度と下限温度との差が3℃〜150℃である組成物に、さらにキラル剤を添加して得られ、
透明点T
1の化合物1と、透明点T
2の化合物2とを含む、透明点がTxの液晶組成物であって、
液晶組成物に対して化合物1を5〜70重量%および化合物2を30〜95重量%含み、
透明点T
1と透明点T
2と液晶組成物の透明点Txとが、
T
1>T
2
T
1−Tx≧200℃
を満たし、
化合物1が、下記一般式(1)
【化3】
(式中、R
aは水素、炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル基中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
R
bは水素、ハロゲン、−CN、−N=C=O、−N=C=S、−CF
3、−OCF
3または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、このアルキル中の−CH
3は−CNで置き換えられてもよく;
A
1〜A
5は独立に芳香族性あるいは非芳香族性の3〜8員環、または炭素数9以上の縮合環であり、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、またはハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく、環の−CH
2−は−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよいが、A
1〜A
5がテトラヒドロピラン環であることはなく、;
Z
1〜Z
4は独立に単結合、炭素数1〜8のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−N(O)=N−、−N=N(O)−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
n
1〜n
3は独立に0または1であり、R
bが水素またはフッ素の場合はn
2およびn
3は1であり、Z
4が−COO−である場合は、n
2とn
3が1であり、A
4またはA
5の少なくとも一つが炭素数9以上の縮合環である場合のみn
1〜n
3すべてが0となりうる。)
で表され、透明点が150℃〜400℃である化合物であり、
光学的に等方性の液晶相で駆動させる素子に用いられる光学的に等方性の液晶組成物。
【請求項4】
液晶組成物に対して化合物1を30〜60重量%、および、化合物2を30〜70重量%含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項5】
式(1)中、Raは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
Rbはハロゲン、−CN、−N=C=O、−N=C=S、−CF3、−OCF3または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、このアルキル中の−CH3は−CNで置き換えられてもよく;
A1〜A5は独立にベンゼン環、ナフタレン環またはシクロヘキサン環であり、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、またはハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく、環の−CH2−は−O−または−S−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;
Z1〜Z4は独立に単結合、炭素数1〜4のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
n1〜n3は独立に0または1であり、Rbが水素またはフッ素の場合はn2およびn3は1であり、A4またはA5の少なくとも一つが炭素数9以上の縮合環である場合のみn1〜n3すべてが0となりうる、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項6】
式(1)中、Raが炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH2−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
Rbはフッ素、塩素、−CN、−N=C=Sまたは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
A1〜A5が独立にベンゼン環、ナフタレン環またはシクロヘキサン環であり、これらの環の任意の水素がフッ素または塩素、メチル、またはハロゲン化メチルで置き換えられてもよく、−CH2−は−O−または−S−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;
Z1〜Z4は独立に単結合または−C≡C−であり;
n1〜n3は独立に0または1であり、Rbが水素またはフッ素の場合はn2およびn3は1であり、A4またはA5の少なくとも一つが炭素数9以上の縮合環である場合のみn1〜n3すべてが0となりうる、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項7】
式(1)中、Raが炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH2−は、−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;
Rbがフッ素、塩素、−CN、または炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH2−は、−O−で置き換えられてもよく;
A1〜A5が独立にベンゼン環、ジオキサン環またはシクロヘキサン環であり、ベンゼン環の任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく;
Z1〜Z4は独立に単結合または−C≡C−であり;
n1が1、n2とn3が0である、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項8】
化合物2が、下記一般式(2)
【化4】
(式中、R
cは水素、炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
R
dはハロゲン、−CN、−N=C=O、−N=C=S、−CF
3、−OCF
3、−C≡C−CN、または−C≡C−CF
3であり;
A
6とA
7は独立に芳香族性あるいは非芳香族性の3〜8員環、または炭素数9以上の縮合環であり、この環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、またはハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく、この環の任意の−CH
2−は−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;
Z
6は単結合または炭素数1〜8のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−N(O)=N−、−N=N(O)−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキレン中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
n
6は0または1であり、A
7が炭素数9以上の縮合環である場合、n
6は0である。)
で表される化合物である
請求項1〜7のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項9】
Rcは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
Rdはハロゲン、−CN、−N=C=S、−CF3、−C≡C−CN、−C≡C−CF3であり;
A6とA7は独立にベンゼン環、ナフタレン環、シクロヘキサン環であり、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、またはハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく、この環の任意の−CH2−は−O−または−S−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;
Z6は単結合、炭素数1〜4のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキレン中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
n6は0または1であり、A7がナフタレン環である場合、n6は0である、
請求項8に記載の液晶組成物。
【請求項10】
Rcは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH2−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
Rdはハロゲン、−CN、−N=C=S、−CF3、−C≡C−CN、−C≡C−CF3であり;
A6とA7は独立にベンゼン環、ナフタレン環、シクロヘキサン環であり、これらの環の任意の水素がフッ素または塩素、メチル、またはハロゲン化メチルで置き換えられてもよく、この環の任意の−CH2−は−O−または−S−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;
Z6は単結合、−COO−、−CF2O−または−C≡C−であり;
n6は0または1であり、A7がナフタレン環である場合は0である、
請求項8に記載の液晶組成物。
【請求項11】
Rcは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH2−は、−O−で置き換えられてもよく;
Rdはハロゲン、−CNであり;
A6とA7は独立にベンゼン環、ジオキサン環またはシクロヘキサン環であり、ベンゼン環の任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく;
Z6は単結合または−COO−であり;
n6は0または1であり、
請求項8に記載の液晶組成物。
【請求項12】
化合物2が、下記一般式(3)
【化5】
(式中、R
eは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
X
aはフッ素、塩素、−CN、−N=C=S、−CF
3−、−C≡C−CNまたは−C≡C−CF
3であり;
Z
12は単結合、−COO−または−C≡C−であり;
L
8〜L
11は独立して水素またはフッ素である。)
で表される化合物である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項13】
Reは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
Xaはフッ素または−CNであり;
Z12は−COO−であり、
L8〜L11は独立して水素またはフッ素であり、それらの少なくとも2個以上がフッ素である、
請求項12に記載の液晶組成物。
【請求項14】
液晶組成物の全重量に対して、キラル剤を1〜40重量%含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項15】
液晶組成物の全重量に対して、キラル剤を5〜15重量%含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項16】
ピッチが700nm以下である、請求項14または15に記載の液晶組成物。
【請求項17】
キラル剤が、下記式(K1)〜(K5)
【化6】
(式(K1)〜(K5)中、
R
Kは独立に、水素、ハロゲン、−CN、−N=C=O、−N=C=Sまたは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
Aは独立に、芳香族性あるいは非芳香族性の3ないし8員環、または、炭素数9以上の縮合環であり、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたはハロアルキルで置き換えられてもよく、環の−CH
2−は−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;
Zは独立に、単結合、炭素数1〜8のアルキレンであるが、任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−N(O)=N−、−N=N(O)−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
Xは単結合、−COO−、−CH
2O−、−CF
2O−、−CH
2CH
2−であり;
mは1〜4である。)
で表される化合物を1種以上含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項18】
キラル剤が、下記式(K2−1)〜(K2−8)および(K5−1)〜(K5−3)
【化7】
【化8】
【化9】
(R
Kは独立に、炭素数3〜10のアルキルであり、このアルキル中の環に隣接する−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−CH=CH−で置き換えられてもよい。)
で表される化合物を1種以上含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項19】
透明点T
1の化合物1と、透明点T
2の化合物2とキラル剤とを含む、透明点がTxの液晶組成物であって、
液晶組成物に対して化合物1を20〜40重量%、化合物2を20〜60重量%およびキラル剤を5〜20重量%含み、
化合物1が下記一般式(1)
【化10】
(式中、R
aおよびR
bは、それぞれ独立して炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−で置き換えられてもよく;
A
1〜A
4が独立にベンゼン環、ジオキサン環またはシクロヘキサン環であり、これらの環の任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、A
5がベンゼン環であり;
Z
1〜Z
4は独立に単結合または−C≡C−であり;
n
1が1、n
2とn
3が0である)
で表される化合物であり、
化合物2が下記一般式(2)
【化11】
(式中、R
cは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−で置き換えられてもよく;
R
dはハロゲン、−CNであり;
A
6はベンゼン環またはシクロヘキサン環であり、これらの環の任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、A
7は独立にベンゼン環であり;
Z
6は単結合または−COO−であり;
n
6は1である。)
で表される化合物と、下記一般式(3)
【化12】
(式中、R
eは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
X
aはフッ素または−CNであり;
Z
12は−COO−であり、
L
8〜L
11は独立して水素またはフッ素であり、それらの少なくとも2個以上がフッ素であり、L
10およびL
11のうち少なくとも1つはフッ素である。)
で表される化合物とからなり、
キラル剤が、下記式(K2−5)〜(K2−8)
【化13】
(R
Kは独立に、炭素数3〜10のアルキルであり、このアルキル中の環に隣接する−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−CH=CH−で置き換えられてもよい。)
で表される化合物を1種以上含み、
透明点T
1と透明点T
2と液晶組成物の透明点Txとが、
T
1>T
2
T
1−Tx≧100℃
を満たし、
光学的に等方性の液晶相が二色以上の回折光を示さない光学的に等方性の相を有する液晶組成物。
【請求項20】
透明点T
1の化合物1と、透明点T
2の化合物2とキラル剤とを含む、透明点がTxの液晶組成物であって、
液晶組成物に対して化合物1を8〜30重量%、化合物2を40〜60重量%およびキラル剤を5〜20重量%含み、
化合物1が下記一般式(1)
【化14】
(式中、R
aは、炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−で置き換えられてもよく;
A
1〜A
4が独立にベンゼン環、ジオキサン環またはシクロヘキサン環であり、これらベンゼン環の任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、A
5がベンゼン環であり;
Z
1〜Z
4は独立に単結合または−C≡C−であり;
n
1とn
2が1、n
3が0である)
で表される化合物であり、
化合物2が下記一般式(3)
【化15】
(式中、R
eは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
X
aはフッ素または−CNであり;
Z
12は−COO−であり、
L
8〜L
11は独立して水素またはフッ素であり、それらの少なくとも2個以上がフッ素であり、L
10およびL
11のうち少なくとも1つはフッ素である。)
で表される化合物であり、
キラル剤が、下記式(K2−5)〜(K2−8)
【化16】
(R
Kは独立に、炭素数3〜10のアルキルであり、このアルキル中の環に隣接する−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−CH=CH−で置き換えられてもよい。)
で表される化合物を1種以上含み、
透明点T
1と透明点T
2と液晶組成物の透明点Txとが、
T
1>T
2
T
1−Tx≧150℃
を満たし、
光学的に等方性の液晶相が二色以上の回折光を示す光学的に等方性の相を有する液晶組成物。
【請求項21】
透明点T
1の化合物1と、透明点T
2の化合物2とキラル剤とを含む、透明点がTxの液晶組成物であって、
液晶組成物に対して化合物1を20〜40重量%、化合物2を20〜60重量%およびキラル剤を5〜25重量%含み、
化合物1が下記一般式(1)
【化17】
(式中、Raが炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−で置き換えられてもよく;
R
bは、ハロゲン、−CN、−N=C=O、−N=C=S、−CF
3、−OCF
3であり;
A
1〜A
4が独立にベンゼン環、ジオキサン環またはシクロヘキサン環であり、ベンゼン環の任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、A
5がベンゼン環であり;
Z
1〜Z
4は独立に単結合または−C≡C−であり;
n
1が1、n
2とn
3が0である)
で表される化合物であり、
化合物2が下記一般式(2)
【化18】
(式中、R
cは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−で置き換えられてもよく;
R
dはハロゲン、−CNであり;
A
6はベンゼン環またはシクロヘキサン環であり、これらの環の任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、A
7は独立にベンゼン環であり;
Z
6は単結合または−COO−であり;
n
6は1である。)
で表される化合物と、下記一般式(3)
【化19】
(式中、R
eは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
X
aはフッ素または−CNであり;
Z
12は−COO−であり、
L
8〜L
11は独立して水素またはフッ素であり、それらの少なくとも2個以上がフッ素であり、L
10およびL
11のうち少なくとも1つはフッ素である。)
で表される化合物とからなり、
キラル剤が、下記式(K2−5)〜(K2−8)
【化20】
(R
Kは独立に、炭素数3〜10のアルキルであり、このアルキル中の環に隣接する−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−CH=CH−で置き換えられてもよい。)
で表される化合物を1種以上含み、
透明点T
1と透明点T
2と液晶組成物の透明点Txとが、
T
1>T
2
T
1−Tx≧100℃
を満たし、
光学的に等方性の液晶相が二色以上の回折光を示さない光学的に等方性の相を有する液晶組成物。
【請求項22】
一方または両方の面に電極が配置され、
基板間に配置された液晶組成物、および
電極を介して液晶組成物に電界を印加する電界印加手段を備えた液晶素子であって、
前記液晶組成物が、請求項1〜21のいずれか1項に記載の液晶組成物である液晶素子。
【請求項23】
一方または両方の面に電極が配置され、少なくとも一方が透明な一組の基板、
基板間に配置された液晶組成物、および
基板の外側に配置された偏光板
を有し、電極を介して液晶組成物に電界を印加する電界印加手段を備えた液晶素子であって、
前記液晶組成物が、請求項1〜21のいずれか1項に記載の液晶組成物である液晶素子。
【請求項24】
一組の基板の少なくとも一方の基板上において、少なくとも2方向に電界を印加できるように電極が構成されている請求項23に記載の液晶素子。
【請求項25】
互いに平行に配置された一組の基板の一方または両方に、少なくとも2方向に電界を印加できるように電極が構成されている請求項23に記載の液晶素子。
【請求項26】
電極がマトリックス状に配置されて、画素電極を構成し、各画素がアクティブ素子を備え、このアクティブ素子が薄膜トランジスター(TFT)である請求項22〜25のいずれか1項に記載の液晶素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的に等方性の液晶相で駆動させる素子に用いられる光学的に等方性の液晶組成物およびその組成物を用いた液晶素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ネマチック液晶材料をネマチック相が発現している状態から加熱していくと等方相が発現する。このようなネマチック液晶材料における等方相(本明細書中、「非液晶等方相」ということがある)では、電気複屈折値(等方性媒体に電界を印加した時に誘起される複屈折値)Δn
Eが電場Eの二乗に比例する現象であるカー効果[Δn
E=KλE
2(K:カー係数(カー定数)、λ:波長)]が観測される。具体的には、ネマチック相−等方相転移温度直上において、大きなカー係数が観測されている。このようなカー効果は非液晶等方相中において熱ゆらぎによって生じるネマチック的分子配列の短距離秩序の存在に起因するものと考えられている。
【0003】
液晶材料では、非液晶等方相だけではなくブルー相においてもカー効果が観測される。一般的に、ブルー相はキラルネマチック相と非液晶等方相との間で発現するが、その温度範囲は一般に1〜2℃程度と極めて狭い。
【0004】
他方、高分子とキラル液晶の複合材料において、比較的広い温度範囲で、「光学的に等方性の液晶相(巨視的には液晶分子配列は等方的であるが微視的には液晶秩序が存在する相)」を発現し、これらの相では大きなカー係数のカー効果が観測されている[例えば、特開2003−327966号公報(特許文献1)、Nature Materials,
1, 64-68 (2002)(非特許文献1)、Advanced Materials,
17, 96-98 (2005) (非特許文献2)、Advanced Materials,
17, 2311-2315 (2005)(非特許文献3)を参照]。
【0005】
しかしながら、このような複合材料では高分子を含有するため、高電界印加後に電界を印加しない状態に戻しても複屈折が残存する場合があるという問題点があった。また、高分子を含む複合材料を液晶素子に用いた場合、駆動電圧の上昇や長期的信頼性に問題点が生じる可能性があった。したがって、表示素子等の液晶素子では、高分子との複合材料を用いることができるケースは限られていた。
【特許文献1】特開2003−327966号公報
【非特許文献1】Nature Materials, 1, 64-68 (2002)
【非特許文献2】Advanced Materials, 17, 96-98 (2005)
【非特許文献3】Advanced Materials, 17, 2311-2315 (2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の状況の下、大きな電気複屈折(大きなカー係数のカー効果を含む)が観測できる液晶材料が求められている。また、高電界印加後に電界を印加しない状態に戻しても複屈折が残存しない液晶材料が求められている。長期的信頼性に優れた液晶材料が求められている。また、高分子を含まない液晶材料が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、新しい液晶組成物を見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。本発明は以下のような液晶組成物および液晶素子等を提供する。 なお、本明細書において、特に言及がなければ、ネマチック相はキラルネマチック相を含まない、狭義のネマチック相を意味する。
【0008】
[1] 光学的に等方性の液晶相で駆動させる素子に用いられ、ネマチック相を発現しない、光学的に等方性の液晶組成物。
[2] 光学的に等方性の液晶相が二色以上の回折光を示さない、請求項1に記載の液晶組成物。
[3] 光学的に等方性の液晶相が二色以上の回折光を示す、請求項1に記載の液晶組成物。
【0009】
[4] 透明点T
1の化合物1と、透明点T
2の化合物2とを含む、透明点がTxの液晶組成物であって、 液晶組成物に対して化合物1を10〜80重量%および化合物2を20〜90重量%含み、 透明点T
1と透明点T
2と液晶組成物の透明点Txとが、
T
1>T
2
T
1−Tx≧100℃
を満たす、[2]または[3]に記載の液晶組成物。
[5] 透明点T
1の化合物1と、透明点T
2の化合物2とを含む、透明点がTxの液晶組成物であって、 液晶組成物に対して化合物1を5〜70重量%および化合物2を30〜95重量%含み、透明点T
1と透明点T
2と液晶組成物の透明点Txとが、
T
1>T
2
T
1−Tx≧150℃
を満たす、[2]または[3]に記載の液晶組成物。
[6] 透明点T
1の化合物1と、透明点T
2の化合物2とを含む、透明点がTxの液晶組成物であって、 液晶組成物に対して化合物1を5〜70重量%および化合物2を30〜95重量%含み、透明点T
1と透明点T
2と液晶組成物の透明点Txとが、
T
1>T
2
T
1−Tx≧200℃
を満たす、[2]または[3]に記載の液晶組成物。
【0010】
[7] 透明点T
1の化合物1と、透明点T
2の化合物2とを含む、透明点がTxの液晶組成物であって、液晶組成物に対して化合物1を10〜80重量%および化合物2を20〜90重量%含み、透明点T
1と透明点T
2と液晶組成物の透明点Txとが、
T
1>T
2
T
1−Tx≧100℃
を満たし、キラルネマチック相と非液晶等方相とが共存する上限温度と下限温度との差が3℃〜150℃である組成物に、さらにキラル剤を添加して得られる、[2]または[3]に記載の液晶組成物。
[8] 透明点T
1の化合物1と、透明点T
2の化合物2とを含む、透明点がTxの液晶組成物であって、液晶組成物に対して化合物1を5〜70重量%および化合物2を30〜95重量%含み、透明点T
1と透明点T
2と液晶組成物の透明点Txとが、
T
1>T
2
T
1−Tx≧150℃
を満たし、キラルネマチック相と非液晶等方相とが共存する上限温度と下限温度との差が3℃〜150℃である組成物に、さらにキラル剤を添加して得られる、[2]または[3]に記載の液晶組成物。
[9] 液晶組成物に対して化合物1を30〜60重量%、および、化合物2を30〜70重量%含む、請求項7に記載の液晶組成物。
【0011】
[10] 化合物1が、下記一般式(1)
【化22】
(式中、R
aは水素、炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル基中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;R
bは水素、ハロゲン、−CN、−N=C=O、−N=C=S、−CF
3、−OCF
3または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、このアルキル中の−CH
3は−CNで置き換えられてもよく;A
1〜A
5は独立に芳香族性あるいは非芳香族性の3〜8員環、または炭素数9以上の縮合環であり、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、またはハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく、環の−CH
2−は−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよいが、A
1〜A
5がテトラヒドロピラン環であることはなく、;Z
1〜Z
4は独立に単結合、炭素数1〜8のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−N(O)=N−、−N=N(O)−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;n
1〜n
3は独立に0または1であり、R
bが水素またはフッ素の場合はn
2およびn
3は1であり、Z
4が−COO−である場合は、n
2とn
3が1であり、A4またはA5の少なくとも一つが炭素数9以上の縮合環である場合のみn
1〜n
3すべてが0となりうる。)で表され、透明点が150℃〜400℃である化合物である、[4]〜[9]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0012】
[11] R
aは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;R
bはハロゲン、−CN、−N=C=O、−N=C=S、−CF
3、−OCF
3または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、このアルキル中の−CH
3は−CNで置き換えられてもよく;A
1〜A
5は独立にベンゼン環、ナフタレン環またはシクロヘキサン環であり、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、またはハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく、環の−CH
2−は−O−または−S−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;Z
1〜Z
4は独立に単結合、炭素数1〜4のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;n
1〜n
3は独立に0または1であり、R
bが水素またはフッ素の場合はn
2およびn
3は1であり、A4またはA5の少なくとも一つが炭素数9以上の縮合環である場合のみn
1〜n
3すべてが0となりうる、[10]に記載の液晶組成物。
[12] R
aが炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;R
bはフッ素、塩素、−CN、−N=C=Sまたは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;A
1〜A
5が独立にベンゼン環、ナフタレン環またはシクロヘキサン環であり、これらの環の任意の水素がフッ素または塩素、メチル、またはハロゲン化メチルで置き換えられてもよく、−CH
2−は−O−または−S−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;Z
1〜Z
4は独立に単結合または−C≡C−であり;n
1〜n
3は独立に0または1であり、R
bが水素またはフッ素の場合はn
2およびn
3は1であり、A4またはA5の少なくとも一つが炭素数9以上の縮合環である場合のみn
1〜n
3すべてが0となりうる、[10]に記載の液晶組成物。
[13] R
aが炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;R
bがフッ素、塩素、−CN、または炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−で置き換えられてもよく;
A
1〜A
5が独立にベンゼン環、ジオキサン環またはシクロヘキサン環であり、ベンゼン環の任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく;Z
1〜Z
4は独立に単結合または−C≡C−であり;n
1が1、n
2とn
3が0である、[10]に記載の液晶組成物。
【0013】
[14] 化合物2が、下記一般式(2)
【化23】
(式中、R
cは水素、炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;R
dはハロゲン、−CN、−N=C=O、−N=C=S、−CF
3、−OCF
3、−C≡C−CN、または−C≡C−CF
3であり;A
6とA
7は独立に芳香族性あるいは非芳香族性の3〜8員環、または炭素数9以上の縮合環であり、この環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、またはハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく、この環の任意の−CH
2−は−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;Z
6は単結合または炭素数1〜8のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−N(O)=N−、−N=N(O)−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキレン中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;n
6は0または1であり、A
7が炭素数9以上の縮合環である場合、n
6は0である。)で表される化合物である[10]〜[13]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
[15] R
cは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;R
dはハロゲン、−CN、−N=C=S、−CF
3、−C≡C−CN、−C≡C−CF
3であり;A
6とA
7は独立にベンゼン環、ナフタレン環、シクロヘキサン環であり、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、またはハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく、この環の任意の−CH
2−は−O−または−S−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;Z
6は単結合、炭素数1〜4のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキレン中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;n
6は0または1であり、A
7がナフタレン環である場合、n
6は0である、[10]〜[13]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
[16] R
cは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;R
dはハロゲン、−CN、−N=C=S、−CF
3、−C≡C−CN、−C≡C−CF
3であり;A
6とA
7は独立にベンゼン環、ナフタレン環、シクロヘキサン環であり、これらの環の任意の水素がフッ素または塩素、メチル、またはハロゲン化メチルで置き換えられてもよく、この環の任意の−CH
2−は−O−または−S−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;Z
6は単結合、−COO−、−CF
2O−または−C≡C−であり;n
6は0または1であり、A
7がナフタレン環である場合は0である、[10]〜[13]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
[17] R
cは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−で置き換えられてもよく;R
dはハロゲン、−CNであり;A
6とA
7は独立にベンゼン環、ジオキサン環またはシクロヘキサン環であり、ベンゼン環の任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく;Z
6は単結合または−COO−であり;n
6は0または1であり、[10]〜[13]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0014】
[18] 化合物2が、下記一般式(3)
【化22】
(式中、R
eは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;X
aはフッ素、塩素、−CN、−N=C=S、−CF
3、−C≡C−CNまたは−C≡C−CF
3であり;Z
12は単結合、−COO−または−C≡C−であり;L
8〜L
11は独立して水素またはフッ素である。)で表される化合物である、[10]〜[13]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
[19] R
eは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
X
aはフッ素または−CNであり;Z
12は−COO−であり、L
8〜L
11は独立して水素またはフッ素であり、それらの少なくとも2個以上がフッ素である、[10]〜[13]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0015】
[20] キラルネマチック相と非液晶等方相とが共存する上限温度と下限温度との差が3℃〜150℃である組成物に、さらにキラル剤を添加して得られる、[2]または[3]に記載の液晶組成物。
[21] キラルネマチック相と非液晶等方相とが共存する上限温度と下限温度との差が5℃〜150である組成物に、さらにキラル剤を添加して得られる、[2]または[3]に記載の液晶組成物。
[22] ネマチック相と非液晶等方相とが共存する上限温度と下限温度との差が3℃〜150℃である組成物に、さらにキラル剤を添加して得られる、[2]または[3]に記載の液晶組成物。
[23] 液晶組成物の全重量に対して、キラル剤を1〜40重量%含む、[1]〜[22]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
[24] 液晶組成物の全重量に対して、キラル剤を5〜15重量%含む、[1]〜[22]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
[25] ピッチが700nm以下である、[23]または[24]に記載の液晶組成物。
【0016】
[26] キラル剤が、下記式(K1)〜(K5)
【化23】
(式(K1)〜(K5)中、R
Kは独立に、水素、ハロゲン、−CN、−N=C=O、−N=C=Sまたは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;Aは独立に、芳香族性あるいは非芳香族性の3ないし8員環、または、炭素数9以上の縮合環であり、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたはハロアルキルで置き換えられてもよく、環の−CH
2−は−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;Zは独立に、単結合、炭素数1〜8のアルキレンであるが、任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−N(O)=N−、−N=N(O)−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;Xは
独立して、単結合、−COO−、−CH
2O−、−CF
2O−、−CH
2CH
2−であり;mは
独立して、1〜4である。)
で表される化合物を1種以上含む、[23]〜[25]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0017】
[27] キラル剤が、下記式(K2−1)〜(K2−8)および(K5−1)〜(K5−3)
【化26】
【化27】
【化28】
(R
Kは独立に、炭素数3〜10のアルキルであり、このアルキル中の環に隣接する−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−CH=CH−で置き換えられてもよい。)で表される化合物を1種以上含む、[23]〜[25]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
[28] 透明点T
1の化合物1と、透明点T
2の化合物2とキラル剤とを含む、透明点がTxの液晶組成物であって、液晶組成物に対して化合物1を20〜40重量%、化合物2を20〜60重量%およびキラル剤を5〜20重量%含み、
化合物1が下記一般式(1)
【化29】
(式中、R
aおよびR
bは、それぞれ独立して炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−で置き換えられてもよく;A
1〜A
4が独立にベンゼン環、ジオキサン環またはシクロヘキサン環であり、これらの環の任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、A
5がベンゼン環であり;Z
1〜Z
4は独立に単結合または−C≡C−であり;n
1が1、n
2とn
3が0である)で表される化合物であり、
化合物2が下記一般式(2)
【化30】
(式中、R
cは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−で置き換えられてもよく;R
dはハロゲン、−CNであり;A
6はベンゼン環またはシクロヘキサン環であり、これらの環の任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、A
7は独立にベンゼン環であり;Z
6は単結合または−COO−であり;n
6は1である。)で表される化合物と、下記一般式(3)
【化31】
(式中、R
eは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
X
aはフッ素または−CNであり;Z
12は−COO−であり、L
8〜L
11は独立して水素またはフッ素であり、それらの少なくとも2個以上がフッ素であり、L
10およびL
11のうち少なくとも1つはフッ素である。)で表される化合物とからなり、キラル剤が、下記式(K2−5)〜(K2−8)
【化32】
(R
Kは独立に、炭素数3〜10のアルキルであり、このアルキル中の環に隣接する−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−CH=CH−で置き換えられてもよい。)で表される化合物を1種以上含み、透明点T
1と透明点T
2と液晶組成物の透明点Txとが、
T
1>T
2
T
1−Tx≧100℃
を満たし、光学的に等方性の液晶相が二色以上の回折光を示さない光学的に等方性の相を有する液晶組成物。
【0018】
[29] 透明点T
1の化合物1と、透明点T
2の化合物2とキラル剤とを含む、透明点がTxの液晶組成物であって、液晶組成物に対して化合物1を8〜30重量%、化合物2を40〜60重量%およびキラル剤を5〜20重量%含み、
化合物1が下記一般式(1)
【化33】
(式中、R
aは、炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−で置き換えられてもよく;A
1〜A
4が独立にベンゼン環、ジオキサン環またはシクロヘキサン環であり、これらベンゼン環の任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、A
5がベンゼン環であり;Z
1〜Z
4は独立に単結合または−C≡C−であり;n
1とn
2が1、n
3が0である)
で表される化合物であり、化合物2が下記一般式(3)
【化34】
(式中、R
eは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
X
aはフッ素または−CNであり;Z
12は−COO−であり、L
8〜L
11は独立して水素またはフッ素であり、それらの少なくとも2個以上がフッ素であり、L
10およびL
11のうち少なくとも1つはフッ素である。)で表される化合物であり、キラル剤が、下記式(K2−5)〜(K2−8)
【化35】
(R
Kは独立に、炭素数3〜10のアルキルであり、このアルキル中の環に隣接する−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−CH=CH−で置き換えられてもよい。)で表される化合物を1種以上含み、透明点T
1と透明点T
2と液晶組成物の透明点Txとが、
T
1>T
2
T
1−Tx≧150℃
を満たし、光学的に等方性の液晶相が二色以上の回折光を示す光学的に等方性の相を有する液晶組成物。
【0019】
[30] 透明点T
1の化合物1と、透明点T
2の化合物2とキラル剤とを含む、透明点がTxの液晶組成物であって、液晶組成物に対して化合物1を20〜40重量%、化合物2を20〜60重量%およびキラル剤を5〜25重量%含み、
化合物1が下記一般式(1)
【化36】
(式中、Raが炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−で置き換えられてもよく;R
bは、ハロゲン、−CN、−N=C=O、−N=C=S、−CF
3、−OCF
3であり;A
1〜A
4が独立にベンゼン環、ジオキサン環またはシクロヘキサン環であり、ベンゼン環の任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、A
5がベンゼン環であり;Z
1〜Z
4は独立に単結合または−C≡C−であり;n
1が1、n
2とn
3が0である)で表される化合物であり、化合物2が下記一般式(2)
【化37】
(式中、R
cは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−で置き換えられてもよく;R
dはハロゲン、−CNであり;A
6はベンゼン環またはシクロヘキサン環であり、これらの環の任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、A
7は独立にベンゼン環であり;Z
6は単結合または−COO−であり;n
6は1である。)で表される化合物と、下記一般式(3)
【化38】
(式中、R
eは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;X
aはフッ素または−CNであり;Z
12は−COO−であり、L
8〜L
11は独立して水素またはフッ素であり、それらの少なくとも2個以上がフッ素であり、L
10およびL
11のうち少なくとも1つはフッ素である。)で表される化合物とからなり、キラル剤が、下記式(K2−5)〜(K2−8)
【化39】
(R
Kは独立に、炭素数3〜10のアルキルであり、このアルキル中の環に隣接する−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−CH=CH−で置き換えられてもよい。)で表される化合物を1種以上含み、透明点T
1と透明点T
2と液晶組成物の透明点Txとが、
T
1>T
2
T
1−Tx≧100℃
を満たし、光学的に等方性の液晶相が二色以上の回折光を示さない光学的に等方性の相を有する液晶組成物。
【0020】
[31] 一方または両方の面に電極が配置され、基板間に配置された液晶組成物、および電極を介して液晶組成物に電界を印加する電界印加手段を備えた液晶素子であって、前記液晶組成物が、[1]〜[30]のいずれか1項に記載の液晶組成物である液晶素子。
[32] 一方または両方の面に電極が配置され、少なくとも一方が透明な一組の基板、 基板間に配置された液晶組成物、および基板の外側に配置された偏光板を有し、電極を介して液晶組成物に電界を印加する電界印加手段を備えた液晶素子であって、前記液晶組成物が、[1]〜[30]のいずれか1項に記載の液晶組成物である液晶素子。
[33] 一組の基板の少なくとも一方の基板上において、少なくとも2方向に電界を印加できるように電極が構成されている[32]に記載の液晶素子。
[34] 互いに平行に配置された一組の基板の一方または両方に、少なくとも2方向に電界を印加できるように電極が構成されている[32]に記載の液晶素子。
【0021】
[35] 電極がマトリックス状に配置されて、画素電極を構成し、各画素がアクティブ素子を備え、このアクティブ素子が薄膜トランジスター(TFT)である[31]〜[34]のいずれか1項に記載の液晶素子。
[36] 透明点T
1の化合物1と、透明点T
2の化合物2とを含む、透明点がTxの液晶組成物であって、液晶組成物に対して化合物1を10〜80重量%および化合物2を20〜90重量%含み、透明点T
1と透明点T
2と液晶組成物の透明点Txとが、
T
1>T
2
T
1−Tx≧100℃
を満たす、光学的に等方性の液晶相で駆動させる素子に用いられる液晶組成物。
[37] キラルネマチック相と非液晶等方相とが共存する上限温度と下限温度との差が3℃〜150℃である、光学的に等方性の液晶相で駆動させる素子に用いられる液晶組成物の成分である液晶組成物。
[38] キラルネマチック相と非液晶等方相とが共存する上限温度と下限温度との差が3℃〜150℃である、[36]に記載の液晶組成物。
【0022】
[39] 化合物1が、下記一般式(1)
【化40】
(式中、R
aは水素、炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル基中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;R
bは水素、ハロゲン、−CN、−N=C=O、−N=C=S、−CF
3、−OCF
3または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、このアルキル中の−CH
3は−CNで置き換えられてもよく;A
1〜A
5は独立に芳香族性あるいは非芳香族性の3〜8員環、または炭素数9以上の縮合環であり、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、またはハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく、環の−CH
2−は−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよいが、A
1〜A
5がテトラヒドロピラン環であることはなく、;Z
1〜Z
4は独立に単結合、炭素数1〜8のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−N(O)=N−、−N=N(O)−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;n
1〜n
3は独立に0または1であり、R
bが水素またはフッ素の場合はn
2およびn
3は1であり、Z
4が−COO−である場合は、n
2とn
3が1であり、A4またはA5の少なくとも一つが炭素数9以上の縮合環である場合のみn
1〜n
3すべてが0となりうる。)で表され透明点が150℃〜400℃である化合物である、[36]または[38]に記載の液晶組成物。
[40] 化合物2が、下記一般式(2)
【化41】
(式中、R
cは水素、炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;R
dはハロゲン、−CN、−N=C=O、−N=C=S、−CF
3、−OCF
3、−C≡C−CN、または−C≡C−CF
3であり;A
6とA
7は独立に芳香族性あるいは非芳香族性の3〜8員環、または炭素数9以上の縮合環であり、この環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、またはハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく、この環の任意の−CH
2−は−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;Z
6は単結合または炭素数1〜8のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−N(O)=N−、−N=N(O)−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキレン中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;n
6は0または1であり、A
7が炭素数9以上の縮合環である場合、n
6は0である。)で表される化合物である[36]、[38]または[39]に記載の液晶組成物。
【0023】
[41] 化合物2が、下記一般式(3)
【化24】
(式中、R
eは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;X
aはフッ素、塩素、−CN、−N=C=S、−CF
3、−C≡C−CNまたは−C≡C−CF
3であり;Z
12は単結合、−COO−または−C≡C−であり;L
8〜L
11は独立して水素またはフッ素である。)で表される化合物である、[36]または[38]〜[40]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【発明の効果】
【0024】
本発明の好ましい態様に係る液晶組成物は、高分子物質を実質的に含まずに、光学的に等方性の液晶相を広い温度範囲で発現させることができる。また、本発明の好ましい態様に係る液晶組成物は、大きな電気複屈折(大きなカー係数のカー効果を含む)が観測できる。また、本発明の好ましい態様に係る液晶組成物は、応答速度が極めて速く、また単色化が可能である。本発明の好ましい態様に係る液晶組成物は、高電界印加後に電界を印加しない状態に戻しても残留する複屈折を軽減できる。また、本発明の好ましい態様に係る液晶組成物は、これらの効果に基づいて表示素子等の液晶素子等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の液晶組成物は、光学的に等方性の液晶相で駆動させる素子に用いられる光学的に等方性の液晶組成物である。すなわち、本発明の液晶組成物は、液晶素子に用いられる液晶組成物であって、光学的に等方性の性質を示す液晶状態(例えばブルー相)で液晶素子に用いることができる液晶組成物である。
ネマチック相(キラルネマチック相を除く)を発現する液晶組成物は、どのような温度でも光学的に等方性の液晶相を発現しない。したがって、本発明の液晶組成物は、ネマチック相を、どのような温度でも発現しない組成物である。
また、ネマチック相とキラルネマチック相は共に光学的に等方性の相ではない。したがって、光学的に等方性の液晶相で駆動する素子に用いる本発明の液晶組成物は、ネマチック相またはキラルネマチック相で駆動される素子に用いられる液晶組成物を含まない。
本発明の液晶組成物は、たとえば、式(1)で表される化合物1と、式(2)または式(3)で表される化合物2とを混合して得られる液晶組成物A、および当該組成物にさらに一定量のキラル剤を添加して得られる、光学的に等方性の液晶相を発現する液晶組成物Bである。ただし液晶組成物Aは光学的に等方性の液晶相を発現しない範囲内でキラル剤を含有していてもよい。
本発明の液晶組成物Aにおいて、化合物1は、式(1)で表される1つの化合物でも、式(1)で表される複数の化合物からなるものでもよい。同様に、化合物2は、式(2)または式(3)で表される1つの化合物でも、式(2)または式(3)で表される複数の化合物からなるものでもよい。
また、本明細書において、液晶組成物とは液晶相を有する組成物、または、液晶材料との混合により液晶相−非液晶等方相転移温度を著しく低下させることのないものをいう。
また、液晶性化合物あるいは液晶性組成物が液晶相を発現しない場合は、後述する液晶相−非液晶等方相転移点の外挿法による算出法を適用する。液晶相−非液晶等方相転移点が液晶の熱分解温度より高温である化合物、組成物についてもこの外挿法を適用してもよい。
【0026】
1 液晶組成物A
1.1 透明点
本発明の液晶組成物Aにおいて、当該液晶組成物Aに含まれる化合物1の透明点(T
1)と化合物2の透明点(T
2)と液晶組成物Aの透明点(Tx)は、
T
1>T
2
T
1−Tx≧100℃
を満たすことが好ましい。また、
T
1>T
2
T
1−Tx≧150℃
であることがさらに好ましい。
【0027】
ここで、透明点とは、化合物または組成物が昇温過程で、非液晶等方相を発現する点をいう。透明点の具体例としては、ネマチック相から非液晶等方相への相転移点であるN−I点等が挙げられる。また、本発明の液晶組成物の場合、非液晶等方相と液晶相の共存状態が発現することがあるが、この場合は昇温過程において非液晶等方相が最初に発現した温度を透明点とする。また液晶相を発現しない化合物、すなわちK−I点を有する化合物の透明点は、K−I点以下であり、必要に応じて、後述の液晶相−非液晶等方相転移点の外挿法による算出法を適用してもよい。
【0028】
1.2 化合物1
化合物1は、比較的透明点が高い化合物が好ましい。具体的には、化合物1は、式(1)で表される化合物であることが好ましい。式(1)中、R
aは水素、炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル基中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい。これらの中でも、R
aは、好ましくは、炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、さらに好ましくは、炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよい。これらの中でも、R
aは炭素数1〜10のアルキルまたはアルコキシが最も好ましい。
【0029】
式(1)中、R
bは水素、ハロゲン、−CN、−N=C=O、−N=C=S、−CF
3、−OCF
3または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、このアルキル中の−CH
3は−CNで置き換えられてもよい。これらの中でも、R
bは好ましくは、ハロゲン、−CN、−N=C=O、−N=C=S、−CF
3、−OCF
3または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、このアルキル中の−CH
3は−CNで置き換えられてもよく、さらに好ましくは、R
bはフッ素、塩素、−CN、−N=C=Sまたは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよい。
【0030】
式(1)中、A
1〜A
5は独立に芳香族性あるいは非芳香族性の3〜8員環、または炭素数9以上の縮合環であり、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、またはハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく、環の−CH
2−は−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよいが、A
1〜A
5がテトラヒドロピラン環であることはない。これらの中でも、A
1〜A
5は好ましくは、独立にベンゼン環、ナフタレン環、ジオキサン環またはシクロヘキサン環であり、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、またはハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく、環の−CH
2−は−O−または−S−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく、さらに好ましくは、A
1〜A
5は独立にベンゼン環、ナフタレン環、ジオキサン環またはシクロヘキサン環であり、ベンゼン環またはナフタレン環の任意の水素がフッ素または塩素、メチル、またはハロゲン化メチルで置き換えられてもよく、−CH
2−は−O−または−S−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよい。これらの中でも、A
1〜A
5は、最も好ましくは、独立にベンゼン環、ジオキサン環またはシクロヘキサン環であり、ベンゼン環の任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい。
【0031】
式(1)中、Z
1〜Z
4は独立に単結合、炭素数1〜8のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−N(O)=N−、−N=N(O)−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい。これらの中でも、Z
1〜Z
4は好ましくは、独立に単結合、炭素数1〜4のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、さらに好ましくは、Z
1〜Z
4は独立に単結合または−C≡C−である。
【0032】
式(1)中、n
1〜n
3は独立に0または1であり、R
bが水素またはフッ素の場合はn
2およびn
3は1であり、Z
4が−COO−である場合は、n
2とn
3が1であり、A4またはA5の少なくとも一つが炭素数9以上の縮合環である場合のみn
1〜n
3すべてが0となりうる。これらの中でも、n
1〜n
3は好ましくは、独立に0または1であり、R
bが水素またはフッ素の場合はn
2およびn
3は1であり、A4またはA5の少なくとも一つが炭素数9以上の縮合環である場合のみn
1〜n
3すべてが0となりうる。これらの中でも、n
1〜n
3は、さらに好ましくは、独立に0または1であり、R
bが水素またはフッ素の場合はn
2およびn
3は1であり、A4またはA5の少なくとも一つが炭素数9以上の縮合環である場合のみn
1〜n
3すべてが0となりうる。
【0033】
また、式(1)で表される化合物は、透明点が150℃〜400℃であることが好ましく、200℃〜350℃であることがさらに好ましい。透明点が150℃より低いと、化合物1の透明点(T
1)と液晶組成物Aの透明点(Tx)の関係式(T
1−Tx≧100℃)を満たす上で不利となる。透明点が400℃を超えると、組み合わせる他の化合物によっては、相溶性が悪くなり、低温で結晶が析出するなど、液晶相の下限温度が高くなることがある。
【0034】
1.3 化合物2
化合物2は、透明点が低く、誘電率異方性が大きい化合物が好ましい。具体的には、化合物2は、式(2)または式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0035】
1.3.1 式(2)で表される化合物
式(2)中、R
cは水素、炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい。これらの中でも、R
cは好ましくは、炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、R
cは、さらに好ましくは、炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよい。R
cは、最も好ましくは、炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−で置き換えられてもよい。
【0036】
式(2)中、R
dはハロゲン、−CN、−N=C=O、−N=C=S、−CF
3、−OCF
3−、−C≡C−CN、または−C≡C−CF
3である。これらの中でも、R
dは好ましくは、ハロゲン、−CN、−N=C=S、−CF
3、−C≡C−CN、−C≡C−CF
3である。
【0037】
式(2)中、A
6とA
7は独立に芳香族性あるいは非芳香族性の3〜8員環、または炭素数9以上の縮合環であり、この環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、またはハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく、この環の任意の−CH
2−は−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよい。
これらの中でも、A
6とA
7は、さらに好ましくは、独立にベンゼン環、ナフタレン環、シクロヘキサン環であり、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、またはハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく、この環の任意の−CH
2−は−O−または−S−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく、さらに好ましくは、A
6とA
7は独立にベンゼン環、ナフタレン環、シクロヘキサン環であり、これらの環の任意の水素がフッ素または塩素、メチル、またはハロゲン化メチルで置き換えられてもよく、この環の任意の−CH
2−は−O−または−S−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよい。A
6とA
7は、最も好ましくは、独立にベンゼン環、ジオキサン環またはシクロヘキサン環であり、ベンゼン環の任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい。
【0038】
式(2)中、Z
6は単結合または炭素数1〜8のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−N(O)=N−、−N=N(O)−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキレン中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい。これらの中でも、Z
6は好ましくは、単結合、炭素数1〜4のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキレン中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、さらに好ましくは、Z
6は単結合、−COO−、−CF
2O−または−C≡C−である。最も好ましくは、Z
6は単結合または−COO−である。
【0039】
式(2)中、n
6は0または1であるがA
7が炭素数9以上の縮合環である場合、n
6は0である。これらの中でも、n
6は、好ましくは、0または1であるがA
7がナフタレン環である場合、n
6は0であり、さらに好ましくは、n
6は0または1であり、A
7がナフタレン環である場合は0である。n
6は、最も好ましくは、n
6は0または1である。
【0040】
1.3.2 式(3)で表される化合物
式(3)中、R
eは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい。これらの中でも、R
eは、好ましくは、炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよい。
【0041】
式(3)中、X
aはフッ素、塩素、−CN、−N=C=S、−CF
3、−C≡C−CNまたは−C≡C−CF
3である。
【0042】
式(3)中、Z
12は単結合、−COO−または−C≡C−であり、これらの中でも−COO−が好ましい。
【0043】
式(3)中、L
8〜L
11は独立して水素またはフッ素である。これらの中でも、 L
8〜L
11は、好ましくは、独立して水素またはフッ素であり、それらの少なくとも2個以上がフッ素である。
【0044】
1.4 重量比
化合物1の透明点が150〜250℃である場合、液晶組成物Aに対して化合物1を10〜80重量%および化合物2を20〜90重量%含むことが好ましく、化合物1を30〜60重量%および化合物2を30〜70重量%含むことがさらに好ましい。また、化合物1の透明点が250〜400℃である場合、液晶組成物Aに対して化合物1を5〜70重量%および化合物2を30〜95重量%含むことが好ましい。なお、上述の通り、本発明の液晶組成物において、化合物1として式(1)で表される複数の化合物を含んでもよく、同様に、化合物2として式(2)で表される複数の化合物2を含んでもよい。したがって、たとえば、式(1)で表される化合物が複数含まれている場合には、式(1)で表される全ての化合物の合計が10〜80重量%(または5〜70重量%)ということになる。
【0045】
1.5 (キラル)ネマチック相と非液晶等方相とが共存する温度範囲
液晶組成物Aは、キラル剤を含んでいない場合、降温過程でネマチック相と非液晶等方相の共存状態が発現し、キラル剤を含んでいる場合、降温過程でキラルネマチック相と非液晶等方相の共存状態が発現する液晶組成物であって、光学的等方性の液晶相を発現しない組成物である。なお、(キラル)ネマチック相と非液晶等方相との共存状態は、たとえば偏光顕微鏡観察で確認できる。なお、この共存状態は液晶組成物にかかる温度勾配によるものではない。
本発明の液晶組成物としては、(キラル)ネマチック相と非液晶等方相とが共存する液晶組成物Aにおいて、(キラル)ネマチック相と非液晶等方相とが共存する温度範囲が広いことが好ましく、具体的には、これらの相が共存する上限温度と下限温度との差が、3℃〜150℃であることがさらに好ましい。両者が共存する温度範囲が広いと、さらにキラル剤を添加して得られる液晶組成物Bが、広い温度範囲で光学的に等方性の液晶相を有するようになりやすいからである。
また、ネマチック相と非液晶等方相とが広い温度範囲で共存するキラル剤を含まない液晶組成物Aにキラル剤を添加すると、広い温度範囲でキラルネマチック相と非液晶等方相とが共存する液晶組成物Aを得ることが容易である。
【0046】
液晶組成物Aにおいて非液晶等方相と共存しないキラルネマチック相のピッチが700nm以上であるが、後述の通り、さらにキラル剤を添加すると、ピッチが短い液晶組成物Bが得られる。
【0047】
2 液晶組成物B
2.1 液晶組成物Bの組成
液晶組成物Bは、光学的等方性の液晶相を発現する組成物である。液晶組成物Bは、例えば、液晶組成物Aにさらにキラル剤を添加して得ることができる。
当該液晶組成物Aの組成およびさらに添加されるキラル剤の種類等に依存するが、液晶組成物Bに含まれるキラル剤が組成物Bの全重量に対して1〜40重量、好ましくは5〜15重量%となるように添加した液晶組成物は、光学的に等方性の液晶相を有するようになりやすく、好ましい。
液晶組成物Aにキラル剤を添加することを特徴とする液晶組成物Bの製造工程において、予め液晶組成物Aが含み得るキラル剤と、液晶組成物Bを得るためにさらに添加されるキラル剤とは同一でも異なっていてもよい。
【0048】
2.2 キラル剤
液晶組成物Bが含有するキラル剤としては、ねじり力(Helical Twisting Power)が大きい化合物が好ましい。ねじり力が大きい化合物は所望のピッチを得るために必要な添加量が少なくできるので、駆動電圧の上昇を抑えられ、実用上有利である。具体的には、上記式(K1)〜(K5)で表される化合物が好ましい。
【0049】
式(K1)〜(K5)中、R
Kは独立に、水素、ハロゲン、−CN、−N=C=O、−N=C=Sまたは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキル中の任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;Aは独立に、芳香族性あるいは非芳香族性の3ないし8員環、または、炭素数9以上の縮合環であり、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたはハロアルキルで置き換えられてもよく、−CH
2−は−O−、−S−または−NH−で置き換えられてもよく、−CH=は−N=で置き換えられてもよく;Zは独立に、単結合、炭素数1〜8のアルキレンであるが、任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−N(O)=N−、−N=N(O)−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;Xは
独立して、単結合、−COO−、−CH
2O−、−CF
2O−、−CH
2CH
2−であり;mは
独立して、1〜4である。
【0050】
これらの中でも、液晶組成物Bに添加されるキラル剤としては、式(K2)に含まれる式(K2−1)〜式(K2−8)、および
、式(K5−1)〜式(K5−3)が好ましい(式中、R
Kは独立に、炭素数3〜10のアルキルであり、このアルキル中の環に隣接する−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は、−CH=CH−で置き換えられてもよい。)。
【0051】
液晶組成物Bの全重量に対して、キラル剤を1〜40重量%含むことが好ましく、3〜25重量%含むことがさらに好ましく、5〜15重量%含むことが最も好ましい。
【0052】
2.3 光学的に等方性の液晶相
液晶組成物Bは、光学的に等方性の液晶相を有する。液晶組成物が光学的等方性を有するとは、巨視的には液晶分子配列は等方的であるため光学的に等方性を示すが、微視的には液晶秩序が存在することをいう。液晶組成物Bが微視的に有する液晶秩序に基づくピッチは700nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがさらに好ましく、350nm以下であることが最も好ましい。
【0053】
ここで、「非液晶等方相」とは一般的に定義される等方相、すなわち、無秩序相であり、局所的な秩序パラメーターがゼロでない領域が生成したとしても、その原因がゆらぎによるものである等方相である。たとえばネマチック相の高温側に発現する等方相は、本明細書では非液晶等方相に該当する。本明細書におけるキラルな液晶についても、同様の定義があてはまるものとする。そして、本明細書において「光学的に等方性の液晶相」とは、ゆらぎではなく光学的に等方性の液晶相を発現する相を表し、たとえばプレートレット組織を発現する相(狭義のブルー相)はその一例である。
【0054】
本発明の液晶組成物Bにおいて、光学的に等方性の液晶相ではあるが、偏光顕微鏡観察下、ブルー相に典型的なプレートレット組織が観測されないことがある。そこで本明細書において、プレートレット組織を発現する相のみをブルー相(狭義のブルー相)と称し、二色以上の回折光を示さない光学的に等方性の液晶相とは区別する。
【0055】
一般的に、ブルー相は3種類に分類され(ブルー相I、ブルー相II、ブルー相III)、これら3種類のブルー相はすべて光学活性であり、かつ、等方性である。ブルー相Iやブルー相IIのブルー相では異なる格子面からのブラッグ反射に起因する2種以上の回折光が観測される。
光学的に等方性の液晶相が二色以上の回折光を示さない状態とは、ブルー相I、ブルー相IIに観測されるプレートレット組織が観測されず、概ね一面単色であることを意味する。二色以上の回折光を示さない光学的に等方性の液晶相では、色の明暗が面内で均一であることまでは不要である。
【0056】
二色以上の回折光を示さない光学的に等方性の液晶相は、ブラッグ反射による反射光強度が抑えられる、あるいは低波長側にシフトするという利点がある。
また、可視光の光を反射する液晶材料では、表示素子として利用する場合に色味が問題となることがあるが、二色以上の回折光を示さない液晶では、反射波長が低波長シフトするため、狭義のブルー相(プレートレット組織を発現する相)より長いピッチで可視光の反射を消失させることができる。
【0057】
光学的に等方性の液晶相における電気複屈折はピッチが長くなるほど大きくなるので、電気複屈折を大きくすることができる。この状態で液晶組成物Bに電界を印加すると残像のない速やかな応答が得られる。
【0058】
3 その他
本発明の液晶組成物は、その組成物の特性に影響を与えない範囲で、さらに高分子物質等の他の化合物が添加されてもよい。本発明の液晶組成物は、高分子物質の他にも、たとえば二色性色素、フォトクロミック化合物を含有していてもよい。
【0059】
本発明の液晶組成物の誘電率異方性の正負に関しては、特に制限されるものではないが、正のものが好ましい。液晶材料の誘電率異方性値(Δε)の絶対値と屈折率異方性値(Δn)とは大きいほど電気複屈折は大きくなるため、いずれも大きいほど好ましい。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0061】
本明細書の実施例において、Kは結晶相、Iは非液晶等方相、Nはネマチック相、N
*はキラルネマチック相、BPはブルー相、BPXは二色以上の回折光が観測されない光学的に等方性の液晶相を表す。2相の共存状態は(N
*+I)、(N
*+BPX)という形式で表記することがある。具体的には、(N
*+I)は、それぞれ非液晶等方相とキラルネマチック相がと共存する相を表し、(N
*+BPX)は、二色以上の回折光が観測されない光学的に等方性の液晶相とキラルネマチック相が共存した相を表す。Unは光学的等方性ではない未確認の相を表す。
本明細書において、I−N相転移点をN−I点ということがある。I−N
*転移点をN
*−I点ということがある。I−BP相転移点をBP−I点ということがある。
【0062】
本明細書の実施例において、物性値等の測定・算出は特に断らない限り、日本電子機械工業規格(Standard of Electronic Industries Association of Japan)、EIAJ・ED−2521Aに記載された方法に従った。具体的な測定方法、算出方法等は以下のとおりである。
【0063】
相転移点
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、クロスニコルの状態で、まず試料が非液晶等方相になる温度まで昇温した後、1℃/分の速度で降温し、完全にキラルネマチック相または光学的異方性の相が出現させた。その過程での相転移温度を測定し、次いで1℃/分の速度で加熱し、その過程における相転移温度を測定した。光学的に等方性の液晶相においてクロスニコル下では暗視野で相転移点の判別が困難な場合は、偏光板をクロスニコルの状態から1〜10°ずらして相転移温度を測定した。
【0064】
液晶相−非液晶等方相転移点の外挿法による算出法
ネマチック相を呈する母液晶85重量%と液晶性化合物あるいは液晶性組成物15重量%からなるネマチック液晶組成物を調製する。母液晶の液晶相−非液晶等方相転移点と後者の液晶相−非液晶等方相転移点から直線外挿し、液晶性化合物あるいは液晶性組成物の液晶相−非液晶等方相転移点を求めた。
【0065】
ネマチック相の下限温度(TC;℃)
ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、TC≦−20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0066】
粘度(η;20℃で測定;mPa・s)
粘度の測定にはE型粘度計を用いた。
【0067】
光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):
波長589nmの光によりを用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により測定した。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n‖は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。
【0068】
誘電率異方性(Δε;25℃で測定)
1)誘電率異方性が正である液晶材料
2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μm、ツイスト角が80度のTNセルに試料を入れた。このセルにサイン波(10V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。このセルにサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0069】
2)誘電率異方性が負である液晶材料
2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μm、ホメオトロピック配向に処理した液晶セルに試料を入れ、サイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後の誘電率(ε‖)を測定した。さらに2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μm、ホモジニアス配向に処理した液晶セルに試料を入れ、サイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後の誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0070】
電圧保持率(VHR;25℃で測定;%)
測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そしてセルギャップは6μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線によって重合する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60μ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7m秒のあいだ測定し、単位周期において電圧曲線と横軸との間の面積を求めた。TN素子を取り除いたあと測定した電圧の波形から同様にして面積を求めた。2つの面積の値を比較して電圧保持率を算出した。
【0071】
ピッチ(P;25℃で測定;nm)
ピッチ長は選択反射を用いて測定した(液晶便覧196頁(2000年発行、丸善)。選択反射波長λには、関係式<n>p/λ=1が成立する。ここで<n>は平均屈折率を表し、次式で与えられる。<n>=[(n‖
2+n⊥
2)/2]
1/2。選択反射波長は顕微分光光度計(日本電子(株)、商品名MSV-350)で測定した。得られた反射波長を平均屈折率で除すことにより、ピッチを求めた。
可視光より長波長領域に反射波長を有するコレステリック液晶のピッチは、光学活性化合物濃度が低い領域では光学活性化合物の濃度の逆数に比例することから、可視光領域に選択反射波長を有する液晶のピッチ長を数点測定し、直線外挿法により求めた。
【0072】
[実施例1]
下記式(a),(b−1)〜(b−5),(c)および(d)で表される化合物(以下、「化合物a」等という)を下記に示す重量比で混合してネマチック液晶組成物A−1を調製した。具体的には、上記式(1)で表される化合物1として透明点であるN−I点が202℃の化合物a、上記式(2)で表される化合物2として透明点(N−I点)が35.5℃の化合物c、上記式(3)で表される化合物2としてK−I点が49.8℃の化合物d、およびその他の化合物(化合物b−1〜化合物b5)を混合して調整した。重量比の右に示す値は、各化合物の相転移温度である。化合物dの透明点は、7.7℃であった。当該透明点は、母液晶ZLI−1132(メルク社製)に化合物dを15重量%混合して測定したNI点の外挿値として求めた。
【化43】
次に、液晶組成物A−1に、下記式で表されるキラル剤ISO−60BA2を添加して、液晶組成物A−2、A−3、A−4、A−5、A−6およびA−7を得た。
【化44】
【0073】
具体的には、表1に示すように、キラル剤の濃度が得られる液晶組成物に対して7.5、10.0、11.0、12.5、16.6、20.0重量%となる液晶組成物を調製し、それぞれ液晶組成物A−2、A−3、A−4、A−5、A−6、A−7とした。そして、各液晶組成物A−1〜A−7を配向処理の施されていないITO付ガラス2枚からなるセル(セル厚13マイクロメートル)に狭持し、偏光顕微鏡を用いて相転移温度を測定した。
【0074】
【表1】
【0075】
液晶組成物A−1〜A−7の相転移温度は表1に示すとおりであった。具体的には、−1℃/minの降温過程において、液晶組成物A−1ではネマチック相(N)と非液晶等方相(I)とが共存する上限温度(77℃)と下限温度(73℃)との差(以下、「共存温度範囲」ともいう)は4.0℃であった。液晶組成物A−2では、−1℃/minの降温過程においてキラルネマチック相(N
*)と非液晶等方相(I)とが共存する上限温度(63.7℃)と下限温度(56℃)との差(共存温度範囲)が7.7℃であった。同様に、液晶組成物A−3〜A−4の共存温度範囲はそれぞれ11.3、13.1℃であった。
【0076】
また、液晶組成物A−5の1℃/minの昇温過程において、光学的に等方性の液晶相が発現する上限温度(57℃〜52.2℃)と下限温度(42.4℃)との差(以下、「BPX温度範囲」ともいう)は9.8℃〜14.6℃であった。
同様に、液晶組成物A−6とA−7のBPX温度範囲はそれぞれ20、21℃であった。このように、液晶組成物A−5とA−7は昇温過程で、光学的に当方性の液晶相を広い温度範囲で発現した。
【0077】
液晶組成物A−5〜A−7の光学的に等方性の液晶相の光学組織において、ブルー相I、IIで確認されるプレートレット組織は観測されず、二色以上の回折光は観測されなかった。また液晶組成物A−7ではクロスニコルでの偏光顕微鏡観察において、色味もなく暗視野であった。
【0078】
化合物1である化合物aの透明点であるN−I点(T
1)は202℃
であった。
同様に、化合物1である化合物aの透明点であるN−I点(T
1)は202℃
であった。
同様に、液晶組成物A−3〜A−7におけるT
1−Txは以下のとおりであった
。
液晶組成物A−5: T
1−Tx=202℃−57℃=145℃
液晶組成物A−6: T
1−Tx=202℃−48℃=154℃
液晶組成物A−7: T
1−Tx=202℃−41℃=161℃
【0079】
[比較例1]
実施例1における液晶組成物A−1の成分に含まれる化合物aを用いずに、化合物b−1〜化合物dだけを用いて液晶組成物E−1を調製した。具体的な組成は以下のとおりであった。
【化45】
【0080】
次に、液晶組成物E−1に、キラル剤ISO−60BA2を混合して、液晶組成物E−2〜E−5を得た。
【0081】
具体的には、表2に示すように、キラル剤の濃度が2.0、3.5、5.0、7.0重量%となる液晶組成物を調製し、それぞれ液晶組成物E−2、E−3、E−4、E−5とした。そして、各液晶組成物E−1〜E−5を配向処理の施されていないITO付ガラス2枚からなるセル(セル厚13マイクロメートル)に狭持し、偏光顕微鏡を用いて相転移温度を測定した。
【0082】
【表2】
【0083】
液晶組成物E−1〜E−5の相転移温度は表2に示すとおりであった。具体的には、液晶組成物E−1では、−1℃/minの降温過程において、ネマチック相(N)と非液晶等方相(I)とが共存する上限温度(31.1℃)と下限温度(30.8℃)との差(共存温度範囲)は0.3℃であった。液晶組成物E−2では、−1℃/minの降温過程においてキラルネマチック相(N
*)と非液晶等方相(I)とが共存する上限温度(28.3℃)と下限温度(27.5℃)との差(共存温度範囲)が0.8℃であった。同様に、液晶組成物E−3〜E−4の共存温度範囲はそれぞれ1.2、1.3℃であった。
【0084】
また、液晶組成物E−5では降温過程と昇温過程においてブルー相Iが確認され、昇温過程におけるブルー相Iが発現する上限温度と下限温度との差は2.0℃であった。
【0085】
[実施例2]
下記式(e−1)(e−2),(f)〜(i)および(d)で表される化合物を下記に示す重量比で混合してネマチック液晶組成物B−1を調製した。具体的には、上記式(1)で表される化合物として、透明点であるN−I点が250℃以上であるの化合物e−1と化合物e−2、上記式(3)で表される化合物2として、K−I点が49.8℃で透明点(外挿値)が7.7℃である化合物d、および、化合物f〜化合物iを混合して調整した。重量比の右に示す値は、各化合物の相転移温度である。
【化46】
【0086】
次に、液晶組成物B−1に、キラル剤ISO−60BA2を添加して液晶組成物B−2、B−3、B−4およびB−5を得た。具体的には、表3に示すように、キラル剤の濃度が2.9、5.0、8.1、10.0重量%となる液晶組成物を調製し、それぞれ液晶組成物B−2、B−3、B−4、B−5とした。そして、各液晶組成物B−1〜B−5を配向処理の施されていないITO付ガラス2枚からなるセル(セル厚13マイクロメートル)に狭持し、偏光顕微鏡を用いて相転移温度を測定した。
【0087】
【表3】
【0088】
液晶組成物B−1〜B−5の相転移温度は表3に示すとおりであった。具体的には、液晶組成物B−1では−1℃/minの降温過程においてネマチック相(N)と非液晶等方相(I)とが共存する上限温度(60℃)と下限温度(54℃)との差(共存温度範囲)が6.0℃であった。液晶組成物B−2では、−1℃/minの降温過程においてキラルネマチック相(N
*)と非液晶等方相(I)とが共存する上限温度(54.7℃)と下限温度(48.6℃)との差(共存温度範囲)が6.1℃であった。
【0089】
また、液晶組成物B−4の1℃/minの昇温過程において、光学的に等方性の液晶相が発現する上限温度(41.9℃〜44.9℃)と下限温度(34.7℃)との差(BP温度範囲)は7.2℃〜10.2℃であった。同様に、液晶組成物B−5のBP温度範囲は10℃であった。このように、液晶組成物B−4とB−5は昇温過程で、光学的に等方性の液晶相を広い温度範囲で発現した。
【0090】
また、液晶組成物B−2の降温過程における54.5℃、52℃、49℃における偏光顕微鏡像(
図1)によれば、当該液晶組成物において非液晶等方相とキラルネマチック相が共存していることがわかった。
【0091】
化合物1である化合物e−1と化合物e−2の等重量混合物の透明点であるN−I点(T
1)は270℃以上であり、液晶組成物B−1の透明点であるN−I点(Tx)は56.5℃であるから(T
1−Tx)は213.5℃以上であった。また液晶組成物B−2の透明点であるN
*−I点(Tx)は51.5℃であるから、(T
1−Tx)は218.5℃以上であった。
同様に、液晶組成物B−3〜B−5におけるT
1−Txは以下のとおりであった。
液晶組成物B−3: T
1−Tx=270℃以上−51.0℃=219.0℃以上
液晶組成物B−4: T
1−Tx=270℃以上−41.9℃=228.1℃以上
液晶組成物B−5: T
1−Tx=270℃以上−40℃=230℃以上
【0092】
[比較例2]
化合物j〜化合物lおよび化合物cを用いて、液晶組成物C−1を調製した。具体的な組成は以下のとおりであった。
【化47】
【0093】
次に、液晶組成物C−1に、キラル剤ISO−60BA2を添加して、液晶組成物C−2〜C−5を得た。具体的には、表4に示すように、キラル剤の濃度が1.9、4.0、6.0、8.1重量%となる液晶組成物を調製し、それぞれ液晶組成物C−2、C−3、C−4、C−5とした。そして、各液晶組成物C−1〜C−5を配向処理の施されていないITO付ガラス2枚からなるセル(セル厚13マイクロメートル)に狭持し、偏光顕微鏡を用いて相転移温度を測定した。
【0094】
【表4】
【0095】
液晶組成物C−1〜C−5の相転移温度は表4に示すとおりであった。具体的には、液晶組成物C−1では−1℃/minの降温過程において、ネマチック相(N)と非液晶等方相(I)とが共存する上限温度(62℃)と下限温度(61.9℃)との差(共存温度範囲)は0.1℃であった。
液晶組成物C−2では、−1℃/minの降温過程においてキラルネマチック相(N
*)と非液晶等方相(I)とが共存する上限温度(59.2℃)と下限温度(58.7℃)との差(共存温度範囲)が0.5℃であった。同様に、液晶組成物C−3の共存温度範囲はそれぞれ1.2℃であった。
【0096】
液晶組成物C−4は昇温過程で発現した光学的に等方性の液晶相が発現する上限温度(53.0℃)と下限温度(51.5℃)との差(BP温度範囲)は1.5℃であった。同様に液晶組成物C−5のBP温度範囲は1.8℃であった。
【0097】
[実施例3]
下記式(m),(n),(c)および(d)で表される化合物を下記に示す重量比で混合してネマチック液晶組成物D−1を調製した。具体的には、上記式(1)で表される化合物1として透明点であるN−I点が239℃であるの化合物mと、N−I点が222℃である化合物n、上記式(2)で表される化合物2として透明点(N−I点)が36.5℃の化合物c、および、上記式(3)で表される化合物2としてK−I点が49.8℃で透明点(外挿値)が7.7℃である化合物dを混合して調整した。重量比の右に示す値は、各化合物の相転移温度である。
【0098】
【化48】
【0099】
次に、液晶組成物D−1に、キラル剤ISO−60BA2を添加して液晶組成物D−2、D−3およびD−4を得た。
具体的には、表5に示すように、キラル剤の濃度が9.1、14.3、20.4重量%となる液晶組成物を調製し、それぞれ液晶組成物D−2、D−3、D−4とした。そして、各液晶組成物D−1〜D−4を配向処理の施されていないITO付ガラス2枚からなるセル(セル厚13マイクロメートル)に狭持し、偏光顕微鏡を用いて相転移温度を測定した。
【0100】
【表5】
【0101】
液晶組成物D−1〜D−4の相転移温度は表5に示すとおりであった。具体的には、液晶組成物D−1では−1℃/minの降温過程においてネマチック相(N)と非液晶等方相(I)とが共存する上限温度(107.6℃)と下限温度(95℃)との差(共存温度範囲)が12.6℃であった。
液晶組成物D−2では、−1℃/minの降温過程においてキラルネマチック相(N
*)と非液晶等方相(I)とが共存する上限温度(91.5℃)と下限温度(72.0℃)との差(共存温度範囲)が19.5℃であった。同様に、液晶組成物D−3の共存温度範囲は30.8℃であった。
【0102】
また、液晶組成物D−4の1℃/minの昇温過程において、光学的に等方性の液晶相が発現する上限温度(68℃〜72℃)と下限温度(37℃)との差(BPX温度範囲)は31℃〜35℃であった。このように、液晶組成物D−4は昇温過程で、光学的に当方性の液晶相を広い温度範囲で発現した。
【0103】
液晶組成物D−4における光学的に等方性の液晶相の光学組織はブルー相I、IIで確認されるプレートレット組織は観測されず、二色以上の回折光は観測されなかった。またD−4ではクロスニコルでの偏光顕微鏡観察において、色味もなく暗視野であった。
【0104】
化合物1である化合物mと化合物nの等重量混合物の透明点であるN−I点(T
1)は230℃であり、液晶組成物D−1の透明点であるN−I点(Tx)は103.7℃であるから、(T
1−Tx)は126.3℃であった。
同様に、液晶組成物D−3〜D−4におけるT
1−Txは以下のとおりであった。
液晶組成物D−3: T
1−Tx=230℃−65.3℃=164.7℃
液晶組成物D−4: T
1−Tx=230℃−68℃=162℃
【0105】
[実施例4]
下記式(o−1)、(o−2)、(o−3)および(p)で表される化合物を下記に示す重量比で混合してネマチック液晶組成物F−1を調製した。具体的には、上記式(1)で表される化合物として、透明点であるN−I点が250℃以上であるの化合物(o−1)〜(o−3)、上記式(3)で表される化合物2として、K−I点が21.4℃で透明点(外挿値)が−41.6℃である化合物pを混合して調整した。重量比の右に示す値は、各化合物の相転移温度である。
【化49】
【0106】
次に、液晶組成物F−1に、キラル剤ISO−60BA2を添加して液晶組成物F−2、F−3を得た。具体的には、表に示すように、キラル剤の濃度が0.8、10.0重量%となる液晶組成物を調製し、それぞれ液晶組成物F−2、F−3とした。そして、各液晶組成物F−2〜F−3を配向処理の施されていないITO付ガラス2枚からなるセル(セル厚13マイクロメートル)に狭持し、偏光顕微鏡を用いて相転移温度を測定した。ここでF−3の透明点は実施例4で用いたセルと同様のセルを用い、偏光顕微鏡を確認しながら、80V交流正弦波を印加し、昇温条件下、透過率が急激に低下する温度を透明点とした。
【0107】
【表6】
【0108】
液晶組成物F−1〜F−3の相転移温度は表6に示すとおりであった。具体的には、液晶組成物F−1では−1℃/minの降温過程においてネマチック相(N)と非液晶等方相(I)とが共存する上限温度(98.7℃)と下限温度(85℃)との差(共存温度範囲)が13.7℃であった。液晶組成物F−2では、−1℃/minの降温過程においてキラルネマチック相(N
*)と非液晶等方相(I)とが共存する上限温度(97.2℃)と下限温度(81℃)との差(共存温度範囲)が16.2℃であった。
【0109】
また、液晶組成物F−3では、1℃/minの昇温過程において、光学的に等方性の液晶相が発現する上限温度(74℃)と下限温度(54℃)との差(BP(X)またはBP温度範囲)は20℃であった。このように、液晶組成物F−3は昇温過程で、光学的に等方性の液晶相を広い温度範囲で発現した。
【0110】
化合物1である化合物o−1、化合物o−2および化合物o−3の等重量混合物の透明点であるN−I点(T
1)は254℃であり、液晶組成物F−1の透明点であるN−I点(Tx)は89.2℃であるから(T
1−Tx)は164.8℃以上であった。また液晶組成物F−2の透明点N
*−I点(Tx)は84℃であるから、(T
1−Tx)は170℃であった。
【0111】
[実施例5]
実施例1の液晶組成物A−7を配向処理の施されていない櫛型電極基板(
図2)と対向ガラス基板(非電極付与)との間(セル厚12マイクロメートル)に狭持し、組成物を含むこれらの基板(櫛歯電極セル)を
図3に示した光学系に設置し、電気光学特性を測定した。
【0112】
櫛歯電極セルは、レーザー光のセルへの入射角度がセル面に対して垂直となるように、かつ、櫛型電極の線方向がPolarizerとAnalyzer偏光板に対してそれぞれ45°となるように設置した。振幅110Vの矩形波を印加することで透過率が飽和した。フォトディテクターで検出した電界無印加時の透過光強度は0.078、電界印加時の透過光強度は310であり、コントラストは3970と算出された。このときの応答速度は立ち上がり(透過率光強度が電界印加時の強度の10%から90%まで変化するのに要する時間)が150マイクロ秒、立ち下がり(透過率光強度が電界印加時の強度の90%から10%まで変化するのに要する時間)が110マイクロ秒であった。クロスニコルの偏光顕微鏡下で同様に電界を印加したところ残像は確認されなかった。なお、測定温度は室温の22℃である。
【0113】
このように、液晶組成物A−7は電界のオン/オフで明と暗の2状態を実現でき、かつ透過率が飽和するまで電界を印加しても高速応答が実現できた。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の活用法として、たとえば、液晶材料、および、液晶材料を用いる液晶素子が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【
図1】液晶組成物B−2の降温過程における偏光顕微鏡像を示す。