(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記圧力センサは,前記各圧力検出孔にそれぞれ別々に接続された複数の圧力センサであり,前記4つ角部における前記被処理基板の裏面圧力を検出することを特徴とする請求項3に記載の基板保持機構。
前記位置ずれ検出手段は,前記各圧力センサからの検出圧力に基づいて,前記被処理基板の有無及び位置ずれ状態を判定することを特徴とする請求項4に記載の基板保持機構。
前記圧力検出孔は,前記基板保持面の4つ角部にそれぞれ形成されたものとは別に形成された他の圧力検出孔を含むことを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の基板保持機構。
処理室内に処理ガスを導入し,前記処理ガスのプラズマを発生させることによって,処理室内の載置台に載置保持された絶縁体からなる被処理基板に所定のプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって,
前記載置台とその基板保持面に保持された被処理基板との間にガス供給源からのガスを供給するためのガス流路と,
前記載置台の基板保持面に形成され,前記ガス流路からのガスを前記基板保持面上に案内する複数のガス孔と,
前記ガス孔を形成する領域よりも外側に,前記載置台を前記基板保持面まで貫通して形成され,複数の孔を形成した流路コマを嵌め込んだ複数の圧力検出孔と,
前記被処理基板の裏面にかかる圧力を,前記ガス流路の圧力とは別に,前記複数の圧力検出孔から直接検出する圧力センサと,
前記圧力センサからの検出圧力に基づいて前記被処理基板の位置ずれ検出を行う位置ずれ検出手段と,
を備えることを特徴とするプラズマ処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
(プラズマ処理装置の構成例)
先ず,本発明を複数のプラズマ処理装置を備えるマルチチャンバータイプの処理装置に適用した場合の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は,本実施形態にかかる処理装置100の外観斜視図である。同図に示す処理装置100は,フラットパネルディスプレイ用基板(FPD用基板)Gに対してプラズマ処理を施すための3つのプラズマ処理装置を備える。プラズマ処理装置はそれぞれ処理室200を備える。
【0019】
処理室200内には,例えばFPD用基板Gを載置する載置台が設けられており,この載置台の上方に処理ガス(例えばプロセスガス)を導入するためのシャワーヘッドが設けられている。載置台は下部電極を構成するサセプタを備え,これと平行に対向して設けられるシャワーヘッドは上部電極としての機能も兼ねる。各処理室200では同一の処理(例えばエッチング処理等)を行っても良いし,互いに異なった処理(例えばエッチング処理とアッシング処理等)を行うようにしても良い。なお,処理室200内の具体的構成例については後述する。
【0020】
各処理室200はそれぞれ,断面多角形状(例えば断面矩形状)の搬送室110の側面にゲートバルブ102を介して連結されている。搬送室110にはさらに,ロードロック室120がゲートバルブ104を介して連結されている。ロードロック室120には,基板搬出入機構130がゲートバルブ106を介して隣設されている。
【0021】
基板搬出入機構130にそれぞれ2つのインデクサ140が隣設されている。インデクサ140には,FPD用基板Gを収納するカセット142が載置される。カセット142は複数枚(例えば25枚)のFPD用基板Gが収納可能に構成されている。
【0022】
このようなプラズマ処理装置によってFPD用基板Gに対してプラズマ処理を行う際には,先ず基板搬出入機構130によりカセット142内のFPD用基板Gをロードロック室120内へ搬入する。このとき,ロードロック室120内に処理済みのFPD用基板Gがあれば,その処理済みのFPD用基板Gをロードロック室120内から搬出し,未処理のFPD用基板Gと置き換える。ロードロック室120内へFPD用基板Gが搬入されると,ゲートバルブ106を閉じる。
【0023】
次いで,ロードロック室120内を所定の真空度まで減圧した後,搬送室110とロードロック室120間のゲートバルブ104を開く。そして,ロードロック室120内のFPD用基板Gを搬送室110内の搬送機構(図示せず)により搬送室110内へ搬入した後,ゲートバルブ104を閉じる。
【0024】
搬送室110と処理室200との間のゲートバルブ102を開き,上記搬送機構により処理室200内の載置台に未処理のFPD用基板Gを搬入する。このとき,処理済みのFPD用基板Gがあれば,その処理済みのFPD用基板Gを搬出し,未処理のFPD用基板Gと置換える。
【0025】
処理室200内では,処理ガスをシャワーヘッドを介して処理室内に導入し,下部電極或は上部電極,又は上部電極と下部電極の両方に高周波電力を供給することによって,下部電極と上部電極との間に処理ガスのプラズマを発生させることによって,載置台上に保持されたFPD用基板Gに対して所定のプラズマ処理を行う。
【0027】
次に,処理室200の具体的構成例について図面を参照しながら説明する。ここでは,本発明のプラズマ処理装置を,例えばガラス基板などのFPD用の絶縁基板(以下,単に「基板」とも称する)Gをエッチングする容量結合型プラズマ(CCP)エッチング装置に適用した場合の処理室の構成例について説明する。
図2は,処理室200の概略構成を示す断面図である。
【0028】
図2に示す処理室200は,例えば表面が陽極酸化処理(アルマイト処理)されたアルミニウムからなる略角筒形状の処理容器202を備える。処理容器202は接地されている。処理室200内の底部には,下部電極を構成するサセプタ310を有する載置台300が配設されている。載置台300は,矩形の基板Gを固定保持する基板保持機構として機能し,矩形の基板Gに対応した矩形形状に形成される。この載置台の具体的構成例は後述する。
【0029】
載置台300の上方には,サセプタ310と平行に対向するように,上部電極として機能するシャワーヘッド210が対向配置されている。シャワーヘッド210は処理容器202の上部に支持されており,内部にバッファ室222を有するとともに,サセプタ310と対向する下面には処理ガスを吐出する多数の吐出孔224が形成されている。このシャワーヘッド210は接地されており,サセプタ310とともに一対の平行平板電極を構成している。
【0030】
シャワーヘッド210の上面にはガス導入口226が設けられ,ガス導入口226にはガス導入管228が接続されている。ガス導入管228には,開閉バルブ230,マスフローコントローラ(MFC)232を介して処理ガス供給源234が接続されている。
【0031】
処理ガス供給源234からの処理ガスは,マスフローコントローラ(MFC)232によって所定の流量に制御され,ガス導入口226を通ってシャワーヘッド210のバッファ室222に導入される。処理ガス(エッチングガス)としては,例えばハロゲン系のガス,O
2ガス,Arガスなど,通常この分野で用いられるガスを用いることができる。
【0032】
処理室200の側壁には基板搬入出口204を開閉するためのゲートバルブ102が設けられている。また,処理室200の側壁の下方には排気口が設けられ,排気口には排気管208を介して真空ポンプ(図示せず)を含む排気装置209が接続される。この排気装置209により処理室200の室内を排気することによって,プラズマ処理中に処理室200内を所定の真空雰囲気(たとえば10mTorr=約1.33Pa)に維持することができる。
【0033】
(基板保持機構を適用した載置台の構成例)
ここで,本発明にかかる基板保持機構を適用した載置台300の具体的な構成例について
図2,
図3を参照しながら説明する。
図3は,載置台300の伝熱ガス供給機構の構成例を説明する図である。
図3は,
図2に示す載置台300の上部分の断面を簡略化して示したものである。
図3では,説明を簡単にするために
図2に示す静電保持部320を省略している。
図4A,
図4Bは,載置台300の表面を上方から見た図である。
図4Aは,基板Gが載置されていない状態を示したものであり,
図4Bは基板Gが位置ずれ無しで載置された状態を示したものである。
【0034】
図2に示すように,載置台300は,絶縁性のベース部材302と,このベース部材302上に設けられる導電体(例えばアルミニウム)からなる矩形ブロック状のサセプタ310とを備える。なお,サセプタ310の側面は,
図2に示すように絶縁被膜311で覆われている。
【0035】
サセプタ310上には,基板Gを基板保持面で保持する基板保持部の1例としての静電保持部320が設けられる。静電保持部320は,例えば下部誘電体層と上部誘電体層との間に電極板322を挟んで構成される。載置台300の外枠を構成し,上記ベース部材302,サセプタ310,静電保持部320の周りを囲むように,例えばセラミックや石英の絶縁部材からなる矩形枠状の外枠部330が配設される。
【0036】
静電保持部320の電極板322には,直流(DC)電源315がスイッチ316を介して電気的に接続されている。スイッチ316は,例えば電極板322に対してDC電源315と接地電位とを切り換えられるようになっている。なお,電極板322と直流(DC)電源315との間に,サセプタ310側からの高周波を遮断して,サセプタ310側の高周波がDC電源315側に漏洩するのを阻止する高周波遮断部(図示しない)を設けてもよい。高周波遮断部は,1MΩ以上の高い抵抗値を有する抵抗器または直流を通すローパスフィルタで構成するのが好ましい。
【0037】
スイッチ316がDC電源315側に切り換えられると,DC電源315からのDC電圧が電極板322に印加される。このDC電圧が正極性の電圧である場合,基板Gの上面には負の電荷(電子,負イオン)が引き付けられるようにして蓄積する。これにより,基板G上面の負の面電荷と電極板322との間に基板Gおよび上部誘電体層を挟んで互いに引き合う静電吸着力つまりクーロン力が働き,この静電吸着力で基板Gは載置台300上に吸着保持される。スイッチ316がグランド側に切り換えられると,電極板322が除電され,これに伴って基板Gも除電され,上記クーロン力つまり静電吸着力が解除される。
【0038】
サセプタ310には,整合器312を介して高周波電源314の出力端子が電気的に接続されている。高周波電源314の出力周波数は,比較的高い周波数たとえば13.56MHzに選ばれる。サセプタ310に印加される高周波電源314からの高周波電力によって,基板Gの上には処理ガスのプラズマPZが生成され,基板G上に所定のプラズマエッチング処理が施される。
【0039】
サセプタ310の内部には冷媒流路340が設けられており,チラー装置(図示せず)から所定の温度に調整された冷媒が冷媒流路340を流れるようになっている。この冷媒によって,サセプタ310の温度を所定の温度に調整することができる。
【0040】
載置台300は,静電保持部320の基板保持面と基板Gの裏面との間に伝熱ガス(例えばHeガス)を所定の圧力で供給する伝熱ガス供給機構を備える。伝熱ガス供給機構は,伝熱ガスをサセプタ310内部のガス流路352を介して基板Gの裏面に所定の圧力で供給するようになっている。
【0041】
伝熱ガス供給機構は,具体的には例えば
図3に示すように構成される。すなわち,サセプタ310の上面及びその上の静電保持部320(
図3では省略)にはガス孔354が多数設けられており,これらのガス孔354は上記ガス流路352に連通している。ガス孔354は,例えば基板保持面Lsの外周から内側に離間したガス孔形成領域Rに所定間隔で多数配列されている。
【0042】
ガス流路352には,例えば伝熱ガスとしてHeガスを供給するHeガス供給源366が圧力調整バルブ(PCV:Pressure Control Valve)362を介して接続されている。圧力調整バルブ(PCV)362は,ガス孔354側へ供給されるHeガスの圧力が所定の圧力になるように流量を調整するものである。
【0043】
圧力調整バルブ(PCV)362は,図示はしないが,例えばガス流路352を通流する伝熱ガスの圧力を測定する圧力センサ等を備えるとともに,図示しない流量調整バルブ(例えばピエゾバルブ),流量計(フローメータ),流量調整バルブであるピエゾバルブを制御するコントローラとが一体化されて構成されている。
【0044】
なお,
図3ではガス流路352に圧力センサと流量調整バルブとが一体化された圧力調整バルブ(PCV)362を用いた例を示したが,これに限られるものはなく,ガス流路352にこれら圧力センサと流量調整バルブとを別個に設けるようにしてもよい。
【0045】
また,このような圧力センサとしては,例えばマノメータ(例えばキャパシタンスマノメータ(CM))が挙げられる。この圧力センサとしては,その他のマノメータを用いることができ,流量調整バルブとしてもピエゾバルブに限らず,例えばソレノイドバルブであってもよい。
【0046】
これら圧力調整バルブ(PCV)362,Heガス供給源366はそれぞれ,処理装置100の各部を制御する制御部400に接続されている。制御部400は,Heガス供給源366を制御してHeガスを流出させて,圧力調整バルブ(PCV)362に設定圧力をセットし,圧力調整バルブ(PCV)362にHeガスを所定の流量に調整させてガス流路352に供給する。圧力調整バルブ(PCV)362のコントローラは例えばPID制御によりガス圧力が設定圧力になるようにピエゾバルブを制御してHeガス流量を制御する。これにより,Heガスは,ガス流路352及びガス孔354を通って基板Gの裏面に所定の圧力で供給される。
【0047】
ところで,このような伝熱ガス供給機構では,圧力調整バルブ(PCV)362に内蔵のマノメータでガス流路352の圧力を測定できるので,その測定したHeガスの圧力に基づいてHeガスの流量を制御できるとともに,内臓の流量計(フローメータ)を使用してHeガスの漏れ流量をモニタリングすることもできる。Heガスの漏れ流量は,基板Gの位置ずれによって変化するので,Heガスの漏れ流量をモニタリングすることで基板Gの位置ずれを検出できる。
【0048】
ところが,近年では基板Gのサイズがより一層大型化しており,これに伴って載置台300のサイズも従来以上に大型化している。これに対応させるためには,Heガスのガス孔354の数を増大させるとともに,これらガス孔354にHeガスを供給するガス流路352も長くせざるを得なくなっている。
【0049】
このようにガス流路352が長くなるほどコンダクタンスも悪くなるので,ガス流路352による圧力損失が大きくなり基板Gの裏面まで所望の圧力でHeガスが供給され難くなる。このため,基板Gが位置ずれしている場合と位置ずれしていない場合とにおけるHeガスの漏れ流量の差が僅かになるので,基板Gの位置ずれ検出が難しくなり,その検出精度も低下してしまうという問題がある。
【0050】
ここで,大型の基板処理装置を用いて行った実験結果を参照しながら,より詳細に説明する。
図5は,圧力調整バルブ(PCV)362の内蔵の圧力センサを用いて設定されたHeガス設定圧力と,基板Gの裏面に生じるHeガス圧力(基板裏面圧力)との関係をグラフに示したものである。
図5において黒丸のグラフは基板裏面圧力の目標値である。これに対して白丸のグラフは外枠部330に近いガス孔354近傍における基板裏面圧力であり,白四角のグラフはガス孔354よりさらに外枠部330近傍における基板裏面圧力である。
【0051】
図5の黒丸で示すグラフのように,基板裏面圧力は圧力調整バルブ(PCV)362の設定圧力と同じであることが好ましい。ところが,大型の基板処理装置のようにガス流路352及びガス孔354の圧力損失によりコンダクタンスが低下している場合,基板裏面圧力は
図5の白丸で示すグラフのように設定圧力よりも低下してしまう。ガス孔354より外枠部330近傍では基板裏面圧力はさらに低下する。これによれば基板Gの中央から外側に向かうほど,流路352も長くなりコンダクタンスも悪くなり,基板裏面圧力もより低下することが分かる。
【0052】
そこで,本実施形態では,
図3に示すように載置台300の基板載置面Lsにおけるガス孔形成領域Rよりも外側に,基板載置面Lsを貫通する複数の圧力検出孔370を配設し,これら圧力検出孔370から基板Gの裏面圧力(ここでは基板載置面Lsの表面と基板Gの裏面との間の圧力)を直接検出するようにしている。これによれば,基板裏面圧力の低下が大きい部位に圧力検出孔370を複数設けて,その部位の圧力を検出できる。
【0053】
さらに,このような圧力検出孔370から検出された基板裏面圧力を用いて圧力調整バルブ(PCV)362を制御すれば,圧力損失による基板裏面圧力の低下を補うようにHeガスの流量を制御できる。しかも,検出された基板裏面圧力は,基板Gの位置ずれ検出にも利用できる。これによれば,圧力損失の影響を受けずに測定された基板裏面圧力で位置ずれを検出できるので,位置ずれの検出精度を向上させることができる。また基板裏面圧力を直接検出しながらHeガスの流量を制御することで,基板裏面圧力が安定するまでの時間を短縮できる。
【0054】
以下,このような圧力検出孔370を備える本実施形態の載置台300の構成についてより詳細に説明する。
図3は,4つの圧力検出孔370a〜370dをガス孔354とは別系統により独立して設けた例である。
図3に示す圧力検出孔370a〜370dはそれぞれ,サセプタ310から基板載置面Lsの表面まで貫通して形成されている。
【0055】
ここでの圧力検出孔370a〜370dは
図4Aに示すように,基板載置面Lsの4つの角部に配設されている。これらの配設位置は,
図4Bに示すように基板Gが位置ずれなく載置されると,基板Gに隠れる位置である。各圧力検出孔370a〜370dにはそれぞれ,
図3に示す圧力センサ380a〜380dが接続されている。このような圧力センサ380a〜380dとしては,例えばキャパシタンスマノメータ(CM)が挙げられるが,その他のマノメータや圧力センサを用いてもよい。
【0056】
各圧力センサ380a〜380dからの検出圧力は,制御部400を介して圧力調整バルブ(PCV)362に入力され,圧力調整バルブ(PCV)362はこれらの検出圧力に基づいてHeガスの流量を制御するようになっている。このように各圧力センサ380a〜380dによって直接検出した基板裏面圧力に基づいてHeガスの流量を制御することで,基板裏面圧力が安定するまでの時間を短縮できるとともに,安定後は設定圧力に保持することができる。
【0057】
また,基板載置面Lsの4つ角部にそれぞれ圧力検出孔370a〜370dを別々に設けることにより,各圧力検出孔370a〜370dからの圧力を別々に検出できるので,これらの各検出圧力に基づいて基板ずれ判定など基板載置状態の確認も行う。基板Gの位置ずれのパターン(平行ずれ,斜行ずれなど)を判定することもできる。
【0058】
ここで,このような基板Gの位置ずれ判定を含む伝熱ガス制御の具体例を図面を参照しながら説明する。
図6は,本実施形態における伝熱ガス制御のメインルーチンを示すフローチャートであり,
図7は,
図6に示す基板ずれ判定処理のサブルーチンを示すフローチャートである。伝熱ガス制御は,載置台300上に基板Gが載置され静電吸着保持された後に制御部400により実行される。
【0059】
先ず,
図6に示すように制御部400はステップS110にてHeガス供給源366から伝熱ガスであるHeガスをガス流路352に導入を開始し,ステップS120にて各圧力センサ380a〜380dで基板裏面圧力を検出しながら,その各検出圧力が設定圧力になるように圧力調整バルブ(PCV)362による流量制御を開始する。
【0060】
具体的には,制御部400は設定圧力を圧力調整バルブ(PCV)362にセットし,圧力センサ380a〜380dからの各検出圧力をリアルタイムで出力してHeガスの流量を制御させる。すなわち,圧力調整バルブ(PCV)362は制御部400から各検出圧力を入力すると,各検出圧力が設定圧力になるように自動的にバルブの開度を制御してHeガスの流量を調整する。
【0061】
このようにHeガスの供給が開始されると,ガス流路352や静電保持部320の基板保持面と基板Gの裏面との間に充填され始める。この場合,ガス流路352が長いほど,Heガスが完全に充填されてその圧力が安定するまでに時間がかかるが,ここでは裏面圧力を直接検出しながらHeガスの流量を調整するので,最初に充填されるまでは流量が多くなるように調整され,ある程度時間が経つと流量を微調整するように制御できるため,圧力が安定するまでの時間を短縮できる。
【0062】
次に,制御部400は圧力センサ380a〜380dの各検出圧力に基づいて基板載置状態の確認を行う(ステップS130,S200,S300)。すなわち,先ずステップS130にて制御部400は各検出圧力のすべてが均衡しているか否かを判断する。なお,上述したようにHeガス導入開始直後の流量は多くなるので,ステップS130での判断は,流量がある程度安定するまで(所定時間経過まで)待ってから行うようにしてもよい。
【0063】
ステップS130にて各検出圧力が不均衡であると判断した場合は,ステップS200にて基板ずれ判定処理を行い,ステップS300にて基板ずれエラー処理を行う。ステップS300の基板ずれエラー処理では,Heガスの供給を停止する共に,ステップS200の判定結果をディスプレイに表示したり,アラームで報知したりする。なお,ステップS200の基板ずれ判定処理についての具体例は後述する。
【0064】
これに対して,ステップS130にて各検出圧力のすべてが均衡していると判断した場合は,圧力センサ380a〜380dの各検出圧力に基づいてHeガス供給状態の確認を行う(ステップS140,S150,S170,S172)。すなわち,先ずステップS140にて各検出圧力のすべてが設定圧力に到達しているか否かを判断する。
【0065】
ステップ140にて各検出圧力のすべてが設定圧力に到達していると判断した場合は,ステップS150にて圧力調整バルブ(PCV)362のHeガス流量が所定値以下か否かを判断する。このとき,Heガス流量が所定値以下であると判断した場合は,ステップS160にて基板載置状態OK,Heガスの供給状態OKと判断し,基板Gの処理を開始する。
【0066】
また,ステップS140にていずれかの検出圧力が設定圧力に到達していないと判断した場合,あるいはステップS150にてHeガス流量が所定値を超えていると判断した場合にはステップS170の処理に移る。
【0067】
ステップS170では,Heガス導入開始からの経過時間と予め設定されたタイムアウト時間を比較し,タイムアウト時間を超えたか否かを判断する。ステップS170にてタイムアウト時間を超えていないと判断した場合は,ステップS120に戻ってHeガスの流量制御を続行する。ステップS170にてタイムアウト時間を超えたと判断した場合は何らかの異常が発生しているため,ステップS172にて安定待ちエラー処理を行う。
【0068】
例えば各検出圧力のすべてが均衡しているのに(S130),Heガス流量が所定値を超えたまま(S150),タイムアウト時間を超えている場合(S170)には,載置台300上に基板Gが載置されていなかったり,基板Gの吸着不良が発生している可能性がある。そこで,このような場合は,ステップS172にて安定待ちエラー処理を行うものとする。安定待ちエラー処理では,例えばHeガスの供給を停止すると共に,ディスプレイにエラー表示したり,アラームで報知したりする。
【0069】
ステップS160に基づいて基板Gの処理を開始した後は,圧力センサ380a〜380dからの基板裏面の各検出圧力に基づくHeガスの流量制御が継続して行われる。これにより,ガス流路352などのコンダクタンスの影響を受けることなく,Heガスの基板裏面圧力を常に設定圧力に保持される。その後,ステップS162にて基板Gの処理の終了待ちを行い,処理終了と判断した場合にはステップS164にてHeガスの供給を停止し,圧力調整バルブ(PCV)362による流量制御も停止して一連の電熱ガス制御を終了する。
【0070】
なお,基板Gの処理を行っている間もステップS130,S200,S300の監視を行うようにしてもよい。これによれば,基板Gの処理中に基板載置状態の異常が発生したときでも異常放電のリスクを軽減できる。
【0071】
次に,
図6に示す基板ずれ判定処理の具体例を
図7を参照しながら説明する。ここでは,圧力センサ380a〜380dによって検出される圧力検出孔370a〜370dでの各検出圧力の不均衡パターンに応じて基板Gの位置ずれパターンを判定する。なお,載置台300上の基板Gの有無や基板Gの静電吸着不良の有無については,ここでは判定されず,上述したようにステップS172にて安定待ちエラー処理となる。
【0072】
図7に示すように基板ずれ判定処理では,ステップS210,S230,S250にて圧力検出孔370a〜370dでの各検出圧力にどのような不均衡があるかを判断する。具体的にはステップS210では平行2角同士の検出圧力の不均衡か否かを判断し,ステップS230では3角と他の1角の検出圧力の不均衡か否かを判断し,ステップS250では対角2角同士の検出圧力の不均衡か否かを判断する。
【0073】
ステップS210にて平行2角同士の検出圧力の不均衡であると判断した場合は,ステップS220にて一方向の基板平行ずれと判定する。例えば
図8Aに示すように基板Gが圧力検出孔370c,370d側の一方向に平行にずれている場合は,平行する2角にある圧力検出孔370a,370bの検出圧力が,他の平行2角にある圧力検出孔370c,370dの検出圧力よりも低くなるからである。
【0074】
また,
図8Bに示すように基板Gが圧力検出孔370a,370c側の一方向に平行にずれている場合は,平行する2角にある圧力検出孔370b,370dの検出圧力が,他の平行2角にある圧力検出孔370a,370cの検出圧力よりも低くなる。ステップS220にて一方向の基板平行ずれと判定した場合は,
図6に示すメインルーチンに戻り,ステップS300にてその判定結果をディスプレイ表示しアラームで報知する。
【0075】
また,ステップS230にて3角と他の1角の検出圧力の不均衡であると判断した場合は,ステップS240にて二方向の基板平行ずれと判定する。これは例えば
図9Aに示すように,基板Gが圧力検出孔370c,370d側と圧力検出孔370a,370c側の二方向に平行にずれている場合は,3角にある圧力検出孔370a,370b,370dの検出圧力が,他の1角にある圧力検出孔370cの検出圧力よりも低くなるからである。
【0076】
また,
図9Bに示すように基板Gが圧力検出孔370a,370b側と圧力検出孔370b,370d側の二方向に平行にずれている場合は,3角にある圧力検出孔370a,370c,370dの検出圧力が,他の1角にある圧力検出孔370bの検出圧力よりも低くなる。ステップS240にて二方向の基板平行ずれと判定すると,
図6に示すメインルーチンに戻り,ステップS300にてその判定結果をディスプレイ表示しアラームで報知する。
【0077】
ステップS250にて対角2角同士の検出圧力の不均衡であると判断した場合は,ステップS260にて基板斜行ずれと判定する。これは例えば
図10Aに示すように,基板Gが左回りに斜行ずれしている場合は,対角2角にある圧力検出孔370a,370dの検出圧力が,他の対角2角にある圧力検出孔370b,370cの検出圧力よりも低くなるからである。
【0078】
また,
図10Bに示すように基板Gが右回りに斜行ずれしている場合は,対角2角にある圧力検出孔370b,370cの検出圧力が,他の対角2角にある圧力検出孔370a,370dの検出圧力よりも低くなる。このように,各圧力検出孔370a〜370dからの検出圧力の不均衡パターンに基づいて,基板Gの位置ずれパターンまで判定することができる。ステップS260にて基板斜行ずれと判定すると,
図6に示すメインルーチンに戻り,ステップS300にてその判定結果をディスプレイ表示しアラームで報知する。
【0079】
なお,ステップS210,S230,S250以外の検出圧力の不均衡がある場合は,ステップS270にて判定エラーとする。この場合は,例えば基板割れや圧力センサの故障など別の原因が発生している可能性があるからである。
【0080】
このように本実施形態によれば,各圧力検出孔370a〜370dを基板載置面Lsの4つ角部にガス孔354とは独立して配設することで,基板裏面圧力を直接検出でき,その検出圧力に基づいて伝熱ガスの流量調整と基板Gの位置ずれ検出の両方を行うことができる。これにより,載置台300の更なる大型化にも十分に対応できる。すなわち,ガス流路352が長くなったとしても,そのガス流路352の圧力損失を補うように伝熱ガスの流量調整ができ,基板Gの位置ずれ検出精度を向上させることができる。また,伝熱ガスの圧力が安定するまでの時間を短縮できるので,基板Gの位置ずれ検出にかかる時間も短縮できる。
【0081】
なお,各圧力検出孔370a〜370dの構成は
図3に示すものに限定されるものではない。各圧力検出孔370a〜370dにもHeガスを供給するように構成してもよい。具体的には例えば
図11に示すように各圧力検出孔370a〜370dと連通路372を接続するようにしてもよい。これによれば,各圧力検出孔370a〜370dからも連通路372を介して基板載置面Lsの4つの角部へHeガスが供給されるので,伝熱ガスの圧力が安定するまでの時間を短縮でき,しかも基板Gの位置ずれが発生したときは漏れ流量が増加するため,位置ずれをより検出し易くなる。
【0082】
また,
図12に示すように各圧力検出孔370a〜370dに,Heガス供給源366を圧力調整バルブ(PCV)362を介して直接接続するようにしてもよい。これによれば,ガス流路352の圧力損失の影響を受けることなく,各圧力検出孔370a〜370dにHeガスを供給できるので,伝熱ガスの圧力が安定するまでの時間を短縮でき,しかも基板Gの位置ずれが発生したときは漏れ流量が増加するため,位置ずれをより検出し易くなる。
【0083】
さらに
図13に示すように各圧力検出孔370a〜370dに圧力センサを設けず,圧力センサ363及び流量計(フローメータ)364を内蔵する圧力調整バルブ(PCV)362を用いて,各圧力検出孔370a〜370dからの圧力または総漏れ流量をモニタリングして,基板Gの位置ずれ有無だけを検出するようにしてもよい。
【0084】
さらに各圧力検出孔370a〜370dとは別に基板裏面圧力を検出する他の圧力検出孔を配設してもよい。具体的には例えば
図14に示すように,基板載置面Lsのガス孔形成領域Rの外側に,各圧力検出孔370a〜370dとは別の位置に他の圧力検出孔374を設けてもよい。他の圧力検出孔374には圧力センサ382を接続し,その検出圧力により圧力調整バルブ(PCV)362を制御する。
【0085】
これによれば,各圧力検出孔370a〜370dでは基板Gの位置ずれだけを検出して,他の圧力検出孔374により圧力調整バルブ(PCV)362を制御するための裏面圧力を検出するように役割分担することができる。
【0086】
さらに,各圧力検出孔370a〜370dにHeガス供給源366を圧力調整バルブ(PCV)362を介して直接接続する代わりに,
図15に示すように各圧力検出孔370a〜370dと連通路372を接続するようにしてもよい。この場合においても,他の圧力検出孔374の検出圧力により圧力調整バルブ(PCV)362を調整するため,伝熱ガスの圧力が安定するまでの時間は短縮できる。
【0087】
なお,このような他の圧力検出孔374の配置位置としては,基板載置面Lsのガス孔形成領域Rの外側部位(例えば
図16のA1部位)に配置する。この場合,他の圧力検出孔は1つだけ設けても,複数設けてもよい。複数設ける場合は,ガス孔形成領域Rの内側部位(例えば
図16のA2部位)や,ガス孔形成領域Rの中央部位(例えば
図16のA3部位)にさらに配置してもよい。
【0088】
また,上述した圧力検出孔370a〜370d及び他の圧力検出孔374は,ガス孔354よりも大きい孔径にすることが好ましいが,露出したときに異常放電が発生することを防止するため,例えば
図17に示すような多数の孔378が形成された流路コマ376を嵌め込むようにしてもよい。これによれば,圧力検出孔370a〜370d及び他の圧力検出孔374の径を大きくしても露出時の異常放電を防止することができる。しかも,流路コマ376に多数の孔378を設けることでコンダクタンスの低下も防止できる。
【0089】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0090】
例えば上記実施形態では,本発明を適用可能なプラズマ処理装置として,容量結合型プラズマ(CCP)処理装置を例に挙げて説明したが,必ずしもこれに限定されるものではなく,低圧で高密度のプラズマ生成を可能な誘導結合プラズマ(ICP)処理装置に本発明を適用してもよい。
【0091】
また,その他,プラズマ生成としてヘリコン波プラズマ生成,ECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマ生成を用いたプラズマ処理装置等にも本発明を適用可能である。