(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871582
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】エッチング装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20160216BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
H01L21/306 R
H01L21/304 643A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-254813(P2011-254813)
(22)【出願日】2011年11月22日
(65)【公開番号】特開2013-110292(P2013-110292A)
(43)【公開日】2013年6月6日
【審査請求日】2014年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087099
【弁理士】
【氏名又は名称】川村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100063174
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 功
(74)【代理人】
【識別番号】100124338
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 健
(72)【発明者】
【氏名】木崎 清貴
【審査官】
杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−207811(JP,A)
【文献】
特開2011−119427(JP,A)
【文献】
特開平07−122529(JP,A)
【文献】
特開2009−016464(JP,A)
【文献】
特表2004−510348(JP,A)
【文献】
特開2005−340661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形板状基台に樹脂を塗布し円形板状ワークを貼り付けて形成され該円形板状基台と該樹脂と該円形板状ワークとからなるワークセットの円形板状ワークの上面をエッチングするエッチング装置であって、
該ワークセットを保持して回転可能な保持テーブルと、
該ワークセットの上方に配設されエッチング液を滴下するエッチングノズルと、
該保持テーブルに保持した該ワークセットの周囲に配設されワークセットの側面に向けて水を供給する水供給手段と、を備え、
該水供給手段は、水供給源と、水供給バルブと、水供給ノズルと、を少なくとも備え、
該水供給ノズルは、リング形状に形成され、ワークセットの周囲からワークセットの側面に向かう方向に形成された複数の水供給口を備えているエッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状ワークの上面にスピン式のウエットエッチングを施すエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の半導体基板の三次元実装技術として、垂直に積層された複数の半導体基板に貫通電極(TSV:Through Silicon Via)を形成し、半導体基板同士を電気的に接続する技術がある(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【0003】
このような貫通電極を半導体基板であるワークに形成する前には、積層される複数のワークを薄化し、さらにワークにエッチングを施して貫通電極を埋め込むための孔を形成する必要がある。具体的には、所定の配線パターンが形成されているワークの表面を円形板状基台に樹脂を介して接着してワークの上面を露出させて、この裏面側を研磨および研削する(例えば、下記の特許文献2を参照)。そして、ワークに対して貫通電極を埋め込む部分を取り除くエッチングを施す。エッチングとしては、例えば、スピン式のウエットエッチングがある。例えば、ワークの裏面にマスキングを施し、円形板状基台側をチャックテーブルに保持させてワークの裏面側を上に向ける。そして、チャックテーブルを回転させながら、ワークの裏面にエッチング液を滴下し、チャックテーブルの回転によって発生する遠心力を利用してワークの裏面全面にエッチング液を行き渡らせ、表裏を貫通する孔が形成されるまでエッチングする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−164566号公報
【特許文献2】特開2011−119427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ワークの裏面に滴下されたエッチング液は、チャックテーブルの回転による遠心力の影響を受けるため、ワークの外周方向に移動してワークの側面及びワークの表面に貼り付けられた樹脂の側面に流れ落ちることがある。そのため、樹脂をエッチングするだけでなく、ワークの表面までもエッチングしてしまい、ワークの加工精度に悪影響を与えるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、樹脂及びワークの表面にエッチング液が付着することを低減し、樹脂のエッチング及びワークの表面のエッチングを防止することに課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、円形板状基台に樹脂を塗布し円形板状ワークを貼付けて形成され該円形板状基台と該樹脂と該円形板状ワークとからなるワークセットの円形板状ワークの上面をエッチングするエッチング装置であって、該ワークセットを保持して回転可能な保持テーブルと、該ワークセットの上方に配設されエッチング液を滴下するエッチングノズルと、該保持テーブルに保持した該ワークセットの周囲に配設されワークセットの側面に向けて水を供給する水供給手段と、を備え、該水供給手段は、水供給源と、水供給バルブと、水供給ノズルと、を少なくとも備え、該水供給ノズルは、リング形状に形成され、ワークセットの周囲からワークセットの側面に向かう方向に形成された複数の水供給口を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、保持テーブルに保持したワークセットの周囲には、水を供給する水供給手段を備えており、該水供給手段は、水供給源と、水供給バルブと、水供給ノズルと、を少なくとも備え、該水供給ノズルは、リング形状に形成され、ワークセットの周囲からワークセットの側面に向かう方向に複数の水供給口を備えているため、ワークセットの側面にエッチング液が流れてきても、該水供給ノズルから供給される水でエッチング液を薄めて洗い流すことができ、樹脂のエッチング及びワークの表面のエッチングを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第一の実施形態を示す断面図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態を示す平面図である。
【
図3】本発明の第二の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1 第一の実施形態
図1及び
図2に示すエッチング装置1は、被加工物であるワークWの上面Wbに対してスピンエッチングを施すエッチング装置の第1の実施形態である。
【0011】
図1に示すように、エッチング装置1は、ワークセット2を保持する回転可能な保持テーブル3と、エッチング液40を滴下するエッチングノズル4と、保持テーブル3に保持されたワークセット2の周囲に配設され水を供給する水供給手段5とを備えている。
【0012】
ワークセット2は、円形板状のワークWと、円形板状基台20と、ワークWと円形板状基台20とを貼り付けるための樹脂21と、から構成されている。
【0013】
実際に、ワークWの上面Wbにエッチングを施す際には、円形板状基台20に樹脂21を塗布して、ワークWの下面Waを樹脂21に接触させ、ワークWの上面Wbを上向きに露出させる。そして、樹脂21を硬化させ、ワークW及び円板状基台20に樹脂21を固着すると、ワークWが樹脂21を介して円形板状基台20と一体となった状態となり、ワークセット2が構成される。
【0014】
円形板状基台20は、
図2に示す円形板状のワークWと略同径の円形に形成されており、ワークWを下方から安定的に支持することができる。円形板状基台20は、シリコン、ガラス、石英ガラス等のいずれかの硬質材料から形成されている。
【0015】
樹脂21は、ワークWと円形板状基台20とを貼り付けるための接着材料であればよく、特に限定されるものではない。樹脂21としては、例えば、熱硬化性樹脂もしくはUV硬化性樹脂を用いる。
【0016】
図1に示す保持テーブル3は、円形の保持面30を有しており、多孔質部材より形成される保持部31を備えている。保持部31の下端には、不図示の吸引源から発生する吸引力を伝達するための吸引孔32が形成されている。保持テーブル3は、ワークセット2を保持面30に吸引させて下方から支持することができる。また、保持テーブル3は、鉛直方向に軸心を有する回転軸33を備えており、矢印A方向に回転可能な構成としている。
【0017】
図1に示すように、ワークセット2の上方には、エッチング液40を滴下するエッチングノズル4が配設されている。エッチングに使用するエッチング液40としては、フッ硝酸などの酸性溶液もしくはKOHなどのアルカリ性溶液が望ましい。
【0018】
図1に示すように、保持テーブル3に保持したワークセット2の周囲には、ワークセット2の側面に向けて水を供給する水供給手段5が配設されている。水供給手段5には、水供給ノズル50と、水供給原51と、水供給バルブ52とを備え、水供給ノズル50は、水供給バルブ52を介して水供給源51に接続されている。
【0019】
図2に示すように、水供給ノズル50は、ワークWの外周Wsを覆うようにリング形状となっている。そして、
図1及び
図2に示す水供給ノズル50には、ワークセット2の側面に向かう方向に形成された複数の水供給口50aを備えている。
【0020】
図1に示す水供給ノズル50は、ワークセット2におけるワークWの上面Wbより下側でかつ、樹脂21より上側に配置されている。このような配置構成とすることにより、該水供給ノズル50から水をワークセット2の側面に対して的確に放出することができる。
【0021】
以下、上記のように構成されるエッチング装置1の動作例について、
図1を参照しながら説明する。
エッチング装置1は、ワークWの上面Wbに研削等が施された後、ワークWに貫通電極(TSV)を埋め込むための接続孔を形成するために、上面Wbにマスキングを施した後、ワークWの上面Wb側からスピンエッチングを行う。まず、ワークセット2を保持テーブル3の保持面30に保持させて保持テーブル3が矢印A方向に回転を開始する。保持テーブル3は、エッチング液40がワークWの上面Wb上をゆっくり広がる程度の回転速度である回転速度50rpm〜150rpmで回転することが望ましい。
【0022】
エッチング装置1は、保持テーブル3を矢印A方向に回転させながら、エッチングノズル4からエッチング液40をワークWの上面Wbに滴下する。そうすると、回転中のワークWに発生する遠心力によりワークWの上面Wbに滴下されたエッチング液40がワークWの外周Wsに向けて流れる。そして、ワークWの外周方向に流れてきたエッチング液40は、
図1の部分拡大図に示すように、ワークWの外周Wsに沿って流れ落ち、樹脂21の側面210やワークWの下面Waに付着する。
【0023】
エッチング装置1は、スピンエッチング中において、樹脂21の側面210やワークWの下面Waにエッチング液40が付着することを低減するために、水供給手段5を作動させる。
【0024】
水供給バルブ52を開放し、水供給源51が供給ノズル50に水の供給を開始し、供給ノズル50の水供給口50aからワークセット2の側面に向けて水500を放出する。この結果、ワークWの外周Ws及び樹脂21の側面210にエッチング液40が流れてきても、当該エッチング液40を水500で薄めて洗い流すことにより、樹脂21及びワークWの下面Waにエッチング液40が付着することを防止するとともに、樹脂21及びワークWの表面に対するエッチングを防止することができる。
【0025】
ワークWの上面Wb側からエッチングを施した後、ワークWを円形板状基台20から引き剥がし、ワークWの上面Wbにダイシングテープを貼付けて、個々のチップに分割する。
【0026】
2 第二の実施形態
図3に示すエッチング装置1aは、ワークWの上面Wbにスピンエッチングを施すエッチング装置の第二の実施形態である。なお、第二の実施形態にかかるエッチング装置1aに備えるワークセット2、保持テーブル3及びエッチングノズル4の構成は、
図1に示した第一の実施形態と同様である。
【0027】
図3に示すように、保持テーブル3に保持したワークセット2の周囲には、エッチング液40を吸引するエッチング液吸引手段6が配設されている。エッチング液吸引手段6には、吸引ノズル60と、吸引源61と、吸引バルブ62とを備え、吸引ノズル60は、吸引バルブ62を介して吸引源61に接続されている。
【0028】
図2に示した第一の実施形態にかかる水供給ノズル50と同様に、吸引ノズル60は、ワークWの外周Wsを側方から覆うようにリング形状となっている。そして、吸引ノズル60には、ワークセット2の側面に向かう方向に形成された複数の吸引口60aを備えている。
【0029】
図3に示す吸引ノズル60は、ワークセット3におけるワークWの上面Wbより下側でかつ、樹脂21より上側に配置されている。このような配置構成とすることにより、吸引源61から発生する吸引力が吸引ノズル60に伝達されて、吸引口60aを通じてエッチング液40を吸引できるようになっている。
【0030】
以下、エッチング装置1aの動作例について、
図3を参照しながら説明する。
スピンエッチング中にワークWの上面Wbに滴下されたエッチング液40は、回転中のワークWに発生する遠心力によりワークWの外周Wsに向けて流れる。そして、
図3の部分拡大図に示すように、エッチング液40は、ワークWの外周Wsに沿って流れ落ち、樹脂21の側面210やワークWの下面Waに付着する。
【0031】
エッチング装置1aは、スピンエッチング中において、樹脂21の側面210やワークWの下面Waにエッチング液40が付着することを低減するために、エッチング液吸引手段6を作動させる。
【0032】
吸引源61から発生する吸引力が開放された吸引バルブ62を通じて、吸引ノズル60に伝達され、ワークWの外周Wsに流れてくるエッチング液40を吸引する。そして、吸引されたエッチング液40は、吸引ノズル60の吸引口60aに回収される。この結果、ワークWの外周Ws及び樹脂21の側面210にエッチング液40が流れてきても、当該エッチング液40を吸引して、樹脂21及びワークWの下面Waにエッチング液40が付着することを防止するとともに、樹脂21及びワークWの下面Waに対するエッチングを防止することができる。
【符号の説明】
【0033】
1,1a:エッチング装置
2:ワークセット 20:円形板状基台 21:樹脂 210:側面
3:保持テーブル 30:保持面 31:保持部 32:吸引孔 33:回転軸
4:エッチングノズル 40:エッチング液
5:水供給手段 50:水供給ノズル 50a:水供給口
51:水供給源 52:水供給バルブ
6:エッチング液吸引手段 60:吸引ノズル 60a:吸引口
61:吸引源 62:吸引バルブ
W:ワーク Ws:外周 Wa:下面 Wb:上面