【実施例1】
【0012】
図1は本実施例の電子部品実装システムの平面図であり、
図2はペースト塗布機構の正面図である。
【0013】
まず、
図1を用いて電子部品実装装置の構成を説明する。可動テーブル300は搬送コンベアを備えており、可動テーブル300上には基板400が搭載され、上流(
図1において左側)から矢印で示す方向(下流)に向かって搬送される。可動テーブル300の側方には上流側よりペースト塗布工程を行うペースト塗布機構100が配置されており、ペースト塗布機構100よりも下流には更に電子部品移載工程を行う電子部品移載機構200が配置されている。
【0014】
ペースト塗布機構100には基板400のチップ搭載位置において塗布ノズル41を移動させることにより可動テーブル300上に位置決めされた基板400上にペーストを描画塗布する。
【0015】
次に、可動テーブル300の下流側の電子部品移載機構200は、ウェハ保持テーブル500を備えており、ウェハ保持テーブル500にはチップ520が多数貼着されたウェハシート510が装着されている。移載ヘッド530はウェハシート510上のチップ520をピックアップして、可動テーブル300上の基板400に塗布されたペースト上にチップを移載し、搭載する。チップ搭載後の基板400は可動テーブル300の搬送コンベアにより下流側へと搬出される。
【0016】
次に
図2を参照してペースト塗布機構100の構成について詳細に説明する。本実施例のペースト塗布機構100は、ペーストを基板400へ塗布する塗布ノズル41を有する。この塗布ノズル41はペーストを充填したディスペンサ40に接続されている。ディスペンサ40は後述するリンク手段50に接続されている。本実施例では、塗布ノズル41をXYZの3方向に移動させる移動機構を備えている。塗布ノズル41は、X方向については第1駆動機構110によって、Y方向には第2駆動機構120によって、Z方向には第3駆動機構130によってそれぞれ駆動されることになる。より具体的には、第1駆動機構110は、リンク手段50を含むと表現することができる。また、第3駆動機構130は、第1駆動機構110と第2駆動機構120とを接続している。
【0017】
第1駆動機構110の構造については後述する。第2駆動機構120は、第2駆動用モータ121、第2駆動用モータ121によって駆動される送りねじ122によって構成される。第3駆動機構130は、送りねじ122に接続されたベース134と、ベース134に接続された送りねじ132と、送りねじ132を駆動するためのモータ131とを有する。つまり、第2駆動機構120、第3駆動機構130はそれぞれ回転直動機構を構成することになる。なお、第2駆動機構120は図示しない保持部に固定されている。
【0018】
次に
図3、
図4、及び
図5を使用して主に第1駆動機構110について詳細に説明する。
図3は第1駆動機構110の側面図、
図4、
図5は第1駆動機構110の正面図である。第3駆動機構130の回転直動機構の可動部133には、第1駆動機構110のベースプレート10が固定されており、第1駆動機構110はZ方向に移動可能である。また、第2駆動機構120により第1駆動機構はY方向にも駆動可能である。
【0019】
第1駆動機構110は主にベースプレート10に接続された第1駆動用モータ20、リンク手段50、摺動部材30、回転支持部材60によって構成される。そして、このような第1駆動機構110に、ペーストを塗布ノズル41へ供給するためのディスペンサ40は接続されている。
【0020】
リンク手段50について詳細に説明する。リンク手段50は、リンク50a〜50gの長さの異なる7本のリンク部材(このリンク部材は腕と表現することもできる)と、及びリンク部材間を回転可能に接続する回転支持部材60とを有する。ここで、例えば、リンク50f、及び50gは第1のリンク、リンク50eは第2のリンク、リンク50a、及びリンク50bは第3のリンク、リンク50cは第4のリンク、リンク50dは第5のリンクと表現することもできる。
【0021】
ベースプレート10に固定された第1駆動用モータ20の軸にはリンク50fが固定され、50fと同じ長さのリンク50gはベースプレート10に回転支持部材60を介して保持されている。また、ベースプレート10には摺動部材30の固定部31がZ方向に摺動可能に配置され、摺動部材30の可動部32はリンク50dに固定される。このため、リンク50dはZ方向に平行移動が可能である。更にリンク50cにはディスペンサ40と、ディスペンサ40先端にはペーストを塗布する塗布ノズル41が固定されている。
【0022】
以上のリンク手段50と摺動部材30とを用いることで、第1駆動用モータ20の回転は、塗布ノズル41をZ方向(例えば、第1の方向)、X方向(例えば、第2の方向)への2つの運動へ変換される。リンク手段50はリンク50a〜50eで平行リンク機構を構成しており、リンク50c,50d,50eは水平に平行移動するため、リンク50cに固定された塗布ノズル41のノズルは塗布面に垂直な状態のまま移動する。なお、基板と塗布ノズル41先端までのZ方向の距離はL1であり、第1駆動用モータ20の回転により変化することが可能である。
【0023】
図5は第1駆動用モータを180度回転駆動した状態を示している。リンク手段50と摺動部材30によって塗布ノズル41がZ方向に下降することになるので、塗布ノズル41は基板400に対しての距離L2まで近づくことができる。このように第1駆動用モータ20の回転運動により塗布ノズル41の先端と基板400との間の距離は、L1からL2までの間で変更可能である。
【0024】
次に
図6を参照して第1駆動機構110の動作(特にリンク手段50と塗布ノズル41との関係)を説明する。
図6の状態は第1駆動用モータ20の軸がθ1回転した状態を示し、第1駆動用モータ20の回転運動によりリンク手段50は
図5に示す状態から
図6に示すように変形する。すなわち、リンク50a,50b,50c,50d,50eで構成される平行リンク機構により、リンク50dの回転支持部材60を中心にリンク50a,50bが傾斜し、リンク50cは平行に
図6のX方向に、リンク50eは平行に
図6の−X方向に移動する。更に、リンク50f,50gの傾斜によりリンク50eが
図6の+Z方向に持ち上げられることでリンク50dは摺動部材30の可動部32の摺動により+Z方向にsだけ平行移動する。よって、リンク50cに固定された塗布ノズル41はX方向に+X1平行移動し、Z方向はリンク手段50の変形によるリンク50cの下降と、リンク50dの上昇sの差分のみ移動することになり、塗布ノズル41の先端と基板400のZ方向の距離はL2から微小に変化したL3となる。ここで、リンク手段50は塗布ノズル41を挟んで対称に構成されているが、リンク手段50は必ずしも
図4乃至6の構成でなくてもよく、第1駆動用モータ20の運動を少なくとも2つの方向への運動に変換できれば良い。
【0025】
次に、第1駆動用モータ20の回転と塗布ノズル41の動きとの関係について
図7を用いて説明する。第1駆動用モータ20の回転角が
図6のθ1から更にθ2に回転した状態を
図7に示す。塗布ノズル41は、X方向については
図6で説明したX1よりも大きなX2まで平行移動する。併せて、塗布ノズル41は、Z方向については
図6のL2よりも大きなL4まで基板に対して上方に移動することになる。
【0026】
上述したことから分かることは、塗布ノズル41先端のX方向、及びZ方向への移動量は、第1駆動用モータ20の回転角θ、及びリンク手段50の寸法(例えば、リンク50f,50gの長さa、リンク50dを接続する回転支持部材601からリンク50eを接続する回転支持部材602までの長さb、及び回転支持部材602からリンク50aと50cとの接続する回転支持部材603間の長さc)により決定されるということである。そのため、塗布ノズル41のZ方向の移動範囲L1からL2は長さ2aである。
【0027】
また、このような関係は、塗布ノズル41先端の移動量(例えば、X方向、及びZ方向への移動量)は、第1駆動用モータ20の回転角θ、及びリンク手段50の寸法の少なくとも1つに関する関数として表現できることを示している。つまり、(1)リンク手段50の寸法が既定であれば、塗布ノズル41先端の移動量は、第1駆動用モータ20の回転角θの関数となる。また、(2)第1駆動用モータ20の回転角θが既定であれば、塗布ノズル41先端の移動量は、リンク手段50の寸法の関数となる。さらに、(3)リンク手段50の寸法も、第1駆動用モータ20の回転角θも既定ではない(変化する)のであれば、塗布ノズル41先端の移動量はそれら2つの関数となることを示している。
【0028】
次に、塗布ノズル41の先端が描く軌跡について、
図8を用いて説明する。
図8は塗布ノズル41が描く軌跡を示している。
図8に示すように第1駆動用モータ20の回転角θにおいて、Z方向の移動量が微小でX方向に近似の水平移動する範囲X5があることがわかる。ここで、基板400へのペースト塗布について考えると、塗布ノズル41から基板400までのZ方向の距離は一定が望ましいが、Z方向に変動があっても、その変動量が実装性能上実質的に問題ない微小な変動量であれば、変動があっても十分ペースト塗布が可能であると考えることもできる。これを
図8に当てはめると高さの変動ΔL5がペースト塗布に実質的に問題無い範囲であれば、X5がペーストを基板400する範囲ということになる。つまり、第1駆動用モータ20を正逆駆動し、塗布ノズル41を近似水平移動することで、ペーストの塗布は十分可能であることを示している。さらに、Y方向へ塗布ノズル41を移動するための第2駆動機構120と連動することで、自在に描画塗布が可能である。なお、塗布ノズル41をZ方向へ移動するための第3駆動機構130を用いて塗布ノズル41先端のZ方向の移動量の補正を行えば、より具体的には、ノズル先端がΔL5移動した場合は、−ΔL5だけZ方向の移動量の補正を行えば、塗布ノズル41をより正確に水平移動することも可能である。
【0029】
更に、この軌跡の他の側面について説明する。
図8に示すように、塗布ノズル41先端は、第1駆動用モータ20の回転によりZ方向への移動量が急上昇する軌跡を描く。そのため、通常、基板400へのペースト塗布後に次の塗布箇所に移動する際の、塗布ノズル41を基板400から退避させる動作が不要となる。本実施例の塗布ノズル41は、X,Z方向に移動する軌跡を描くため、第1駆動用モータ20を一方向へ連続回転することで基板400にペーストを継続して塗布することが可能となる。ここで、近似水平移動する塗布可能幅X5はリンク手段50の寸法(例えば、前述したリンク長さa,b,c)により決定される。このため、用いる基板400へのペースト塗布幅に合わせたリンク長さを設計することで、塗布ノズル41を近似水平移動して基板400上にペーストを塗布し、且つ、ペーストを終了する終端においてZ方向への上昇角αを大きく、余分なペーストを基板400に塗布することを防止できる理想的な動作が可能でとなる。
【0030】
上記したように塗布ノズル41をX方向への近似水平移動を含む2次元的な軌跡(例えば、XZ方向への実質的な円運動)を描く構成により、従来よりも高速なペーストの塗布が可能となる。なお、
図8に示す塗布ノズル41の軌跡は前述したリンク長さa,b,cによる一例である。リンク長さの設定により、近似水平運動する距離や、Z方向移動量、及びZ方向上昇角αは変更可能であり、図示した軌跡に限定されるものではない。
【0031】
次に、第1駆動用モータ20の回転角θと塗布ノズル41先端との関係について説明する。
図9は、第1駆動用モータ20の回転角θと塗布ノズル41先端との関係を説明する図である。仮にリンク長さb=cとした場合、塗布ノズル41のX方向の移動量Xは、X=a・sinθの関係にある。このため、第1駆動用モータ20の回転角θが微小角においては任意の定数kとするとX=k・θで表される一次関数と近似できる。このことから、第1駆動用モータ20の回転角θと塗布ノズル41のX方向の移動量Xは近似の一次関数の関係である。このため、基板400へのペースト塗布動作においては、X方向の第1駆動機構110とY方向の第2駆動機構120により複雑な描画塗布における制御が容易である。一般的に描画塗布のペースト軌跡は直線から構成され、目標の塗布形状とペースト塗布後の塗布状態の誤差が小さい方が、チップを基板上に搭載時の位置ズレが発生し難いため、制御が容易であるほどチップ搭載精度を向上できる。なお、リンク長さbとcとの比は塗布ノズル41移動量の増幅比を示し、c/b倍にX方向にのみ移動量が増幅される。
【0032】
次に、上述したペースト塗布機構100の動作によって基板400上にどのようにペーストパターンが描画されるか説明する。
図10は、基板上に描画されるペーストパターンを説明する図である。
図10に示すように、本実施例のペースト塗布機構100は基板上に複数の種類のペーストパターンを形成することが可能である。
【0033】
まずパターンaについて説明する。本実施例ではX方向へ移動するための第1駆動機構110、Y方向へ移動するための第2駆動機構120によって、塗布ノズル41はa→b→c→a→d→e→aの順に移動し、“X”状のペーストパターンを基板上に形成する。パターンaの形成においては、X,Y方向の移動量は一定である。つまり、X,Y方向の第1駆動機構110、第2駆動機構120の移動量を一定となるように駆動する。第1駆動機構110は、第2駆動機構120に比べて軽いため高速に動作することが可能である。よって、概略同じ速度で塗布ノズル41を駆動する場合よりも短時間での描画が可能となる。
【0034】
次に、パターンbについて説明する。パターンbは“W”を90°左回転させたようなパターンである。パターンbの場合、塗布の軌跡はa→b→c→d→eとなり、Y方向に対してX方向塗布移動量が長く、高速塗布が可能な第1駆動機構110を積極的に使用している。よって、更なる高速塗布が期待できる。
【0035】
第1駆動機構110を積極的に使用する例はほかにも挙げられる。例えば、パターンcである。パターンcは2つの菱形を隣接したようなパターンとなっている。パターンcの場合は、塗布の軌跡はa→b→c→d→e→f→g→aとなる。
【0036】
なお、パターンa,bではチップをパターン上に搭載した場合に空気の逃げ場ができるのでなお、チップの実装に当たってはより好適である。
【0037】
上記のペーストパターンは一例であり、その他のペーストパターンも考えられる。上記以外でも、Y方向の移動量よりもX方向の移動量が長いペーストパターンにおいては同様に高速塗布が可能である。また、描画距離が短い塗布形状の方が塗布時間を短縮できるが、ペーストの材質、粘度、及び搭載する電子部品の形状等によりチップの搭載精度は異なる。よって、これらの条件を考慮し、最適な塗布形状、及び塗布動作を選定することも可能である。このような構成により従来よりも短時間でのペーストの塗布が可能となる。
【実施例2】
【0038】
次に、実施例2について説明する。実施例2では、実施例1と異なる点について主に説明する。
図11は実施例2を説明する図である。本実施例では、
図5に示す第1駆動機構110をディスペンサ40、及び塗布ノズル41の配置はそのままに、180度回転し、リンク50cにディスペンサ40と塗布ノズル41とを接続した構成としている。本実施例で、塗布ノズル41の塗布軌跡は、
図8に示した塗布軌跡を180゜回転させた軌跡となる。よって、本実施例の構成でも、X方向への第1駆動機構110として用いることが可能である。この構成においては、描画塗布時のZ方向の微小移動は基板400と近づく方に移動するため、塗布動作において、塗布精度が高く要求される終端において、基板400と塗布ノズル41の距離が近づくため精度が悪化しにくいというメリットがある。
【0039】
なお、リンク手段50の材料には軽量で且つ高剛性な材料を用いることで、ペースト塗布時の塗布精度を向上できる。また、リンク部材間の回転支持部材60にはベアリングを用いても良いし、板ばねでリンク部材間を固定し、板ばねの変形を利用しリンク手段50が変形する構造にしても良い。
【0040】
また、第1駆動機構110は、リンク構成のため駆動用モータ以外は薄く構成可能である。そのため、
図12に示すように第1駆動機構110a、第1駆動機構110bのようなリンク構成によって駆動する機構を2個以上並列に配置してもよい。この場合、1つの第1駆動用モータ20で第1駆動機構110aと第1駆動機構110bとを連結する。この場合、リンク構成によって駆動する機構の数だけ連続で描画塗布が可能となり、更なる高速化も可能となる。また、リンク50cに複数の塗布ノズル41を配列した構成でも同様の効果が得られる。
【0041】
以上、実施例について説明したが、本発明は実施例に限定されない。例えば摺動部材30は2個以上用いても良いし、平行リンクの数を増やすことで平行リンクの高剛性化を図っても良い。また、実施例1、及び2では、Y方向に第2駆動機構120、XZ方向に第1駆動機構110を用いた実施例を示したが、第1駆動機構110をYZ方向に用いても同様の効果を奏する。また、本発明は、半導体製造工程以外の技術分野に適用しても良い。つまり、何らかのペーストを基板等の対象物に塗布する装置は本発明の思想の範囲内であると表現することもできる。