(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871659
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】ESR用電極棒起立装置及びESR用消耗電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22D 23/10 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
B22D23/10 540
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-43541(P2012-43541)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-180299(P2013-180299A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2015年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】510312950
【氏名又は名称】日立金属MMCスーパーアロイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】松尾 圭悟
(72)【発明者】
【氏名】田丸 清志
(72)【発明者】
【氏名】和田 剛優
【審査官】
酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−069263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 23/10,
C22B 9/20,9/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ESR装置において消耗電極として使用される電極棒を起立させるESR用電極棒起立装置であって、
前記電極棒が保持される電極棒保持部と、この電極棒保持部を傾動軸回りに傾動させる傾動駆動部と、を備え、
前記電極棒保持部は、倒した状態で前記電極棒が載置される受けガイド部と、この受けガイド部に対向して配置されて前記電極棒を前記受けガイド部とともに挟持する押さえガイド部と、を有し、
前記受けガイド部には、前記傾動軸に対して直交する方向に延在するV字溝が形成されており、
前記傾動駆動部は、前記V字溝の延在方向に直交する断面を前記V字溝の幅方向に2等分すると共に前記V字溝の延在方向に沿って延びる前記V字溝の2等分面が前記傾動軸周りの前記電極棒保持部の傾動方向に沿って配向されるように、前記電極棒保持部を傾動させる構成とされていることを特徴とするESR用電極棒起立装置。
【請求項2】
前記傾動駆動部には、傾動角度を微調整する微調整機構が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のESR用電極棒起立装置。
【請求項3】
起立状態において前記電極棒保持部を上下動させる昇降機構を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のESR用電極棒起立装置。
【請求項4】
前記傾動駆動部は、前記電極棒の軸線に沿った断面において前記電極棒の軸線と側面とがなすテーパ角に応じて、前記電極棒保持部の傾動角度を設定する構成とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のESR用電極棒起立装置。
【請求項5】
ESR装置において用いられる消耗電極を製造するESR用消耗電極の製造方法であって、
電極棒を、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載されたESR用電極棒起立装置によって、前記電極棒の軸線が鉛直方向を向くように起立させ、起立させた前記電極棒の上端にスタブを溶接することを特徴とするESR用消耗電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ESR(Electro Slag Remelting)装置において消耗電極として使用される電極棒を垂直に起立させるESR用電極棒起立装置、及び、このESR用電極棒起立装置を用いたESR用消耗電極の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1〜3に示すように、超耐熱合金、Ni基合金等の鋳塊は、所定の組成に配合した原料を真空溶解炉等で溶解して鋳造することによって、円柱状をなす電極棒を製造し、この電極棒を消耗電極として、ESR装置で再溶解及び凝固させることによって製造される。
【0003】
ESR装置は、例えば特許文献4,5に示すように、水冷鋳型内に溶融スラグが配置されており、前述の消耗電極が、水冷鋳型の上方開口部から起立状態で装入され、溶融スラグに浸漬される構造とされている。そして、溶融スラグに通電することにより、溶融スラグのジュール熱によって消耗電極を溶解する。すると、溶融金属の液滴が、溶融スラグを通過して水冷鋳型の底部へと移動し、凝固されることになる。ここで、溶融金属の液滴が溶融スラグを通過する際に、溶融金属と溶融スラグとが反応し、溶融金属が清浄化されるのである。
【0004】
このESR装置で用いられる消耗電極は、上述のように、真空溶解炉等によって溶解、鋳造された電極棒と、この電極棒の一端に接合されたスタブと、を備えている。消耗電極は、ESR装置の電極ホルダに前記スタブが保持され、電極棒の下端側から水冷鋳型内に装入されることになる。
前述のスタブは、例えばステンレス鋼等で構成され、電極棒とスタブとは溶接によって接合されており、電極棒の溶解が終了したら、他の電極棒に再度溶接して使用されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−136469号公報
【特許文献2】特開平09−241767号公報
【特許文献3】特開2000−109940号公報
【特許文献4】特開昭63−171838号公報
【特許文献5】特開平07−238327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えばNi基合金からなる電極棒とステンレス鋼からなるスタブとを溶接する場合、Ni基合金もステンレス鋼も溶接性に劣ることから、電極棒を倒した状態で溶接すると溶融金属が下方に流れてしまうため溶接を良好に実施することが非常に困難であった。
そこで、従来は、電極棒をクレーン等によって起立させて固定し、電極棒の上端にスタブを載せて溶接していた。
【0007】
しかしながら、電極棒は、例えば直径が320〜600mm、長さが1900〜3300mm、重量が1.4〜5tと、大型な重量物であり、クレーン等で起立させるのは、非常に困難であった。また、電極棒を、その軸線が鉛直方向を向くように調整することは容易ではなかった。さらに、電極棒は、真空溶解炉等によって溶解、鋳造されたものであることから、その形状が電極棒毎に異なっており、軸線が鉛直方向を向くように精度よく起立させることは困難であった。
このため、電極棒とスタブとを、互いの軸線が一致するように溶接することが困難であった。
【0008】
ここで、ESR装置においては、上述のように、水冷鋳型内に電極棒を装入する構成とされていることから、電極棒の軸線とスタブの軸線とが一致していない場合には、電極棒を水冷鋳型内に装入する際に、電極棒が水冷鋳型の側壁に衝突してしまうおそれがあった。なお、電極棒の長さを短くすれば、電極棒の軸線とスタブの軸線とが精度よく一致していない場合であっても、水冷鋳型との衝突を抑制することが可能であるが、電極棒の交換頻度が多くなり、ESR装置による再溶解・凝固の効率が低下してしまうことになる。
【0009】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、電極棒をその軸線が鉛直方向を向くように、容易にかつ精度よく、起立させることができるESR用電極棒起立装置、及び、電極棒とスタブとを互いの軸線が一致するように溶接することが可能なESR用消耗電極の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の知見に基づいてなされたものであって、本発明のESR用電極棒起立装置は、ESR装置において消耗電極として使用される電極棒を起立させるESR用電極棒起立装置であって、前記電極棒が保持される電極棒保持部と、この電極棒保持部を傾動軸回りに傾動させる傾動駆動部と、を備え、前記電極棒保持部は、倒した状態で前記電極棒が載置される受けガイド部と、この受けガイド部に対向して配置されて前記電極棒を前記受けガイド部とともに挟持する押さえガイド部と、を有し、前記受けガイド部には、前記傾動軸に対して直交する方向に延在するV字溝が形成されており、前記傾動駆動部は、前記V字溝の延在方向に直交する断面
を前記V字溝の幅方向に2等分するすると共に前記V字溝の延在方向に沿って延びる前記V字溝の2等分
面が
前記傾動軸周りの前記電極棒保持部の傾動方向に
沿って配向されるように、前記電極棒保持部を傾動させる構成とされていることを特徴としている。
【0011】
この構成のESR用電極棒起立装置によれば、電極棒が保持される電極棒保持部と、この電極棒保持部を傾動軸回りに傾動させる傾動駆動部と、を備えており、電極棒保持部の受けガイド部に、傾動軸に対して直交する方向に延在するV字溝が形成されているので、倒した状態で電極棒を受けガイド部に載置することによって、鉛直方向から見て、電極棒の軸線とV字溝の延在方向とが一致することになる。すなわち、電極棒の軸線が傾動軸に対して直交する方向に延在するように、電極棒が配置されるのである。
そして、前記傾動駆動部は、前記V字溝の延在方向に直交する断面
を前記V字溝の幅方向に2等分するすると共に前記V字溝の延在方向に沿って延びる前記V字溝の2等分
面が
前記傾動軸周りの前記電極棒保持部の傾動方向に
沿って配向されるように、前記電極棒保持部を傾動させる構成とされているので、傾動駆動部によって、傾動軸回りに傾動させることによって、電極棒を、その軸線が鉛直方向を向くように起立させることが可能となる。
このように、容易な操作で、簡単に、かつ、確実に、電極棒を起立させることができ、電極棒とスタブとを互いの軸線が一致するように溶接することが可能となる。
【0012】
ここで、前記傾動駆動部には、傾動角度を微調整する微調整機構が設けられていることが好ましい。
この場合、電極棒保持部の傾動角度を微調整できるので、電極棒を、その軸線が鉛直方向を向くように精度よく起立させることができる。
【0013】
また、起立状態において前記電極棒保持部を上下動させる昇降機構を備えていることが好ましい。
この場合、電極棒とスタブとの溶接部の高さ位置を調整でき、溶接作業を容易に、かつ、精度よく行うことができる。よって、電極棒とスタブとの溶接作業を効率的に実施することが可能となる。
【0014】
さらに、前記傾動駆動部は、前記電極棒の軸線に沿った断面において前記電極棒の軸線と側面とがなすテーパ角に応じて、前記電極棒保持部の傾動角度を設定することが好ましい。
電極棒は、上述のように、真空溶解炉等によって溶解、鋳造されたものであることから、鋳型からの取り出しを容易にするために、一方の端側に向かうにしたがい漸次径が小さくなるテーパ形状をなしていることがある。ここで、前記傾動駆動部に、前記電極棒の軸線に沿った断面において前記電極棒の軸線と側面とがなすテーパ角に応じて、前記電極棒保持部の傾動角度を設定することによって、電極棒を、その軸線が鉛直方向を向くように簡単に起立させることが可能となる。
【0015】
本発明のESR用消耗電極の製造方法は、ESR装置において用いられる消耗電極を製造するESR用消耗電極の製造方法であって、電極棒を、上述のESR用電極棒起立装置によって、前記電極棒の軸線が鉛直方向を向くように起立させ、起立させた前記電極棒の上端にスタブを溶接することを特徴としている。
【0016】
このような構成とされた本発明のESR用消耗電極の製造方法においては、上述のESR用電極棒起立装置を用いて電極棒を起立させているので、電極棒を、その軸線が鉛直方向を向くように精度よく起立させることができ、電極棒とスタブとを、互いの軸線が精度よく一致するように溶接することが可能となる。また、溶接作業の時間を大幅に短縮することができる。さらに、電極棒とスタブとが、互いの軸線が精度よく一致するように溶接されることから、ESR装置を安定して操業することが可能なESR用消耗電極を製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電極棒をその軸線が鉛直方向を向くように、容易にかつ精度よく、起立させることができるESR用電極棒起立装置、及び、電極棒とスタブとを互いの軸線が一致するように溶接することが可能なESR用消耗電極の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】本実施形態であるESR用電極棒起立装置の側面説明図である。
【
図4】本実施形態であるESR用電極棒起立装置(起立状態)の側面説明図である。
【
図5】他の実施形態であるESR用電極棒起立装置の受けガイド部及び電極棒の説明図である。
【
図6】
図5に示すESR用電極棒起立装置の受けガイド部及び電極棒を起立させた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態であるESR用電極棒起立装置、ESR用消耗電極の製造方法について、添付した図面を参照して説明する。
本実施形態であるESR用電極棒起立装置20は、ESR(Electro Slag Remelting)装置1において用いられる消耗電極10を製造する際に使用されるものである。
【0020】
図1に、ESR装置1及び消耗電極10の概略を示す。このESR装置1は、上下方向に延在する筒状をなす水冷鋳型2と、この水冷鋳型2の下方開口部に配置される水冷定盤3と、消耗電極10を把持する電極ホルダ4と、電源装置5と、を備えている。
消耗電極10は、ESR装置1で再溶解される電極棒11と、この電極棒11の上端に接合されたスタブ12と、を備えている。
【0021】
上述のESR装置1においては、水冷鋳型2内に溶融スラグ7が配置されており、消耗電極10が、水冷鋳型2の上方開口部から起立状態で装入され、溶融スラグ7に浸漬されるように構成されている。そして、水冷定盤3及び電極ホルダ4に接続された電源装置5を用いて、溶融スラグ7に通電を行う。すると、溶融スラグ7のジュール熱によって消耗電極10の電極棒11が溶解されることになる。溶融した溶融金属8の液滴は、溶融スラグ7を通過して清浄化され、水冷鋳型2の底部側へと移動し、水冷鋳型2及び水冷定盤3によって冷却され、凝固して鋳塊9となる。
【0022】
ここで、電極棒11は、例えば超耐熱合金やNi基合金等の鋳塊の溶解原料となるものであり、予め真空溶解炉等で溶解して鋳造することによって得られるものである。本実施形態では、軸線Oに沿って延在する概略円柱状をなすものとされている。スタブ12は、上述の電極ホルダ4に把持される円柱状部材であり、本実施形態では、ステンレス鋼で構成されている。そして、スタブ12は電極棒11の一端に溶接によって接合されている。なお、消耗電極10においては、スタブ12の軸線Nと電極棒11の軸線Oが一致していることが好ましい。
【0023】
ここで、例えばNi基合金からなる電極棒11とステンレス鋼からなるスタブ12とを溶接する場合、Ni基合金もステンレス鋼も溶接性に劣ることから、電極棒11を倒した状態では溶接を行うことができない。このため、電極棒11を起立させて、電極棒11の上端にスタブ12を載せて溶接を実施する必要がある。
本実施形態であるESR用電極棒起立装置20は、上述のように、電極棒11とスタブ12とを溶接して消耗電極10を製造する際に、電極棒11を起立させるために用いられるものである。
【0024】
本実施形態であるESR用電極棒起立装置20について、
図2から
図4を参照にして説明する。
この本実施形態であるESR用電極棒起立装置20は、ベース21と、ベース21上に固定された傾動軸部22と、電極棒11が保持される電極棒保持部30と、この電極棒保持部30を傾動軸部22の傾動軸M回りに傾動させる傾動駆動部60と、を備えている。
【0025】
電極棒保持部30は、台座フレーム31と、台座フレーム31の一方側(
図2及び
図3において上側)に配設された受けガイド部40と、この受けガイド部40に対向するように配置可能な押さえガイド部50と、を備えている。
台座フレーム31は、接続部材32によって傾動軸部22に接続されており、傾動軸部22が回動することで、電極棒保持部30が傾動軸M回りに傾動するように構成されている。なお、ベース21には、台座フレーム31と接触する部分に、衝撃吸収器23が配設されている。
【0026】
受けガイド部40は、
図2及び
図3に示すように、倒れた状態で、前述の電極棒11が載置されるものである。この受けガイド部40は、ベースプレート41と、このベースプレート41の一方側(
図2及び
図3において上側)に設けられた受け台42と、を備えている。受け台42は、電極棒11が載置されるものであり、電極棒11が載置される載置面に、V字溝44が形成されている。このV字溝44は、傾動軸Mに対して直交する方向に延在するように配置されている。
また、本実施形態においては、受け台42の一方の端部(
図2において左端)に、電極棒11の端面が当接される端面受け部45が設けられている。
【0027】
押さえガイド部50は、受けガイド部40とともに電極棒11を挟持するものであり、ベースプレート41に接続された支持フレーム51と、この支持フレーム51に固定された揺動軸52と、揺動軸52回りに揺動可能に連結されたアーム部53と、アーム部53の先端に設けられた押さえ部材54と、を備えている。なお、押さえ部材54のうち電極棒11に当接する当接面は、V字状に形成されている。
【0028】
また、台座フレーム31には、パワーシリンダー34が固定され、このパワーシリンダー34のシリンダー軸35が、受けガイド部40のベースプレート41に接続されており、受けガイド部40は、台座フレーム31に対して相対的に移動可能な構成とされている。本実施形態では、
図2に示すように、受けガイド部40は、V字溝44の延在方向に進退可能に配置されている。
【0029】
傾動駆動部60は、傾動軸部22を回動させて、電極棒保持部30を傾動軸M回りに傾動させるものである。本実施形態では、電動モータ61と、減速機62と、伝達ベルト63と、を備えている。傾動駆動部60は、減速機62によって、傾動軸部22の回動量(電極棒保持部30の傾動角度)を微調整可能な構成とされている。
この傾動駆動部60は、受け台42に設けられたV字溝44の延在方向に直交する断面
を当該V字溝44の幅方向に2等分するすると共にV字溝44の延在方向に沿って延びるV字溝44の2等分
面が
傾動軸M回りの電極棒保持部30の傾動方向に
沿って配向されるように電極棒保持部30を傾動させるように構成されている。
【0030】
この構成のESR用電極棒起立装置20においては、
図2に示すように、まず、電極棒保持部30を倒した状態で、受け台42の上に電極棒11を載置し、電極棒11の一方の端面(
図2において左端)を端面受け部45に当接させる。
そして、押さえガイド部50を揺動させて押さえ部材54を電極棒11に当接させ、受けガイド部40と押さえガイド部50とによって電極棒11を挟持する。
【0031】
この状態で、傾動駆動部60によって、電極棒保持部30を傾動軸M回りに傾動させる。すると、
図4に示すように、電極棒11が起立させられることになる。
この状態で、パワーシリンダー34を作動させることにより、電極棒保持部30のベースプレート41が台座フレーム31に対して上下方向に移動し、ベースプレート41に固定された受けガイド部40及び押さえガイド部50、並びに、これら受けガイド部40及び押さえガイド部50に挟持された電極棒11の上下方向位置が調整されることになる。
【0032】
このように電極棒11を起立させ、上下方向位置を調整した状態で、電極棒11の上端面にスタブ12を載置し、電極棒11とスタブ12とが溶接される。これにより、ESR装置1において用いられる消耗電極10が製造されることになる。
【0033】
上述の構成とされた本実施形態であるESR用電極棒起立装置20によれば、受けガイド部40の受け台42に、傾動軸Mに対して直交する方向に延在するV字溝44が形成されているので、電極棒保持部30を倒した状態で受けガイド部40の上に電極棒11を載置すると、V字溝44に案内されることによって、電極棒11の軸線OとV字溝44の延在方向とが一致することになる。すなわち、電極棒11の軸線Oが傾動軸Mに対して直交する方向に延在するように、電極棒11が配置されることになる。
【0034】
そして、傾動駆動部60は、上述のV字溝44の延在方向に直交する断面
を当該V字溝44の幅方向に2等分するすると共に前記V字溝の延在方向に沿って延びるV字溝44の2等分
面が
傾動軸M回りの電極棒保持部30の傾動方向に
沿って配向されるように、電極棒保持部30を傾動させる構成とされているので、電極棒保持部30を傾動軸M回りに傾動させることによって、電極棒11を、その軸線Oが鉛直方向を向くように起立させることが可能となる。
このように、容易な操作で、簡単に、かつ、確実に、電極棒11を鉛直方向に起立させることができる。
【0035】
また、本実施形態においては、傾動駆動部60が減速機62を備えており、電極棒保持部30の傾動角度を微調整することが可能な構成とされているので、電極棒11を、その軸線Oが鉛直方向を向くように精度よく起立させることができる。
このように、電極棒11を、その軸線Oが鉛直方向を向くように精度よく起立させることが可能であることから、電極棒11とスタブ12とを、互いの軸線O、Nが精度よく一致するように溶接することができる。
【0036】
さらに、本実施形態においては、電極棒保持部30を起立させた状態において、電極棒保持部30のベースプレート41が台座フレーム31に対して上下方向に移動し、ベースプレート41に固定された受けガイド部40及び押さえガイド部50に挟持された電極棒11の上下方向位置が調整される構成とされているので、電極棒11の上端面の高さを調整することが可能となり、電極棒11の上端面にスタブ12を置いて溶接する際の作業高さを調整でき、溶接作業を効率的に実施することが可能となる。
【0037】
また、本実施形態であるESR用電極棒起立装置20を用いて、電極棒11とスタブ12を溶接して消耗電極10を製造することにより、電極棒11とスタブ12とを、互いの軸線O、Nが精度よく一致するように溶接することが可能となる。よって、電極棒11がESR装置1の水冷鋳型2と衝突することを抑制でき、ESR装置1を安定して操業することができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、傾動駆動部として電動モータを用いたものとして説明したが、これに限定されることはなく、他の駆動源を用いてもよい。
また、起立状態において、パワーシリンダーによって受けガイド部及び押さえガイド部を上下動させる構成として説明したが、これに限定されることはなく、他の駆動機構によって上下動させるものであってもよいし、上下動機構を有していなくてもよい。
【0039】
さらに、電極棒は、上述のように、真空溶解炉等によって溶解、鋳造されたものであることから、鋳型からの取り出しを容易にするために、一方の端側に向かうにしたがい漸次径が小さくなるテーパ形状をなしている場合がある。
そこで、
図5及び
図6に示すように、傾動駆動部に、電極棒11の軸線Oに沿った断面において電極棒11の軸線Oと側面とがなすテーパ角θに応じて、前記電極棒保持部(受けガイド部40)の傾動角度を設定する構成としてもよい。この場合、テーパ形状をなす電極棒11であっても、電極棒11を、その軸線Oが鉛直方向を向くように簡単に起立させることが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
1 ESR装置
10 消耗電極(ESR用消耗電極)
11 電極棒
12 スタブ
20 ESR用電極棒起立装置
30 電極棒保持部
34 パワーシリンダー(昇降装置)
40 受けガイド部
44 V字溝
50 押さえガイド部
60 傾動駆動部
62 減速機(微調整機構)