(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記選択的冷却手段は、前記ワークが前記ダイアタッチフィルムを介して貼付された前記ダイシングテープに接触して冷却する冷却手段であることを特徴とする請求項1に記載のワーク分割装置。
前記ワーク分割手段は、前記冷却されたワークの外周部を、前記ダイシングテープの外周支持部から相対的に押し上げてエキスパンドする突上げ用リングであることを特徴とする請求項1または2に記載のワーク分割装置。
請求項1〜3のいずれかに記載のワーク分割装置であって、さらに、前記エキスパンドされたワークの領域を覆うように有底の円筒形状を有し昇降可能に配置され、下降したときに前記ワークを覆うウェハカバーを備え、前記加熱手段は該ウェハカバーの周囲に昇降可能に配置されたことを特徴とするワーク分割装置。
前記ワーク分割手段は、前記冷却されたワークの外周部を、前記ダイシングテープの外周支持部から相対的に押し上げてエキスパンドする突上げ用リングであり、前記ウェハカバーが下降して前記ワークを覆うときには、該ウェハカバーの側部の先端面が、前記エキスパンドしている突上げ用リングの先端面と突き合わせられ前記ワークを前記ウェハカバー内部に密閉することを特徴とする請求項4に記載のワーク分割装置。
前記ワーク分割工程は、前記冷却されたワークの外周部を、突上げ用リングで前記ダイシングテープの外周支持部から相対的に押し上げてエキスパンドすることを特徴とする請求項6に記載のワーク分割方法。
請求項7に記載のワーク分割方法であって、さらに、前記エキスパンドされたワークの領域を覆うように有底の円筒形状を有し昇降可能に配置されたウェハカバーを備え、該ウェハカバーが下降したときに前記円筒形状の先端面が前記エキスパンドしている突上げ用リングの先端面と突き合わせられ、前記ワークを該ウェハカバー内部に密閉するワーク被覆工程を有し、
前記加熱工程は、前記ワークを覆っている前記ウェハカバーの周囲を加熱することを特徴とするワーク分割方法。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るワーク分割装置及びワーク分割方法について詳細に説明する。
【0038】
図1は、本発明に係るワーク分割装置の第1の実施形態を示す要部断面図である。
【0039】
図1に示すように、ワーク分割装置1は、冷凍チャックテーブル10、突上げ用リング12を備えている。冷凍チャックテーブル10上に、
図28に示したような、半導体ウェハWがダイシングテープSを介してフレームFにマウントされたワーク2が設置される。なお、半導体ウェハWの裏面には、DAF(Die Attach Film ダイアタッチフィルム)D(以下、DAF(D)と表示する。)を介してダイシングテープSが貼付された状態となっている。ここで例えば、半導体ウェハWは厚さ50μm程度、DAF(D)及びダイシングテープSはそれぞれ厚さ数μmから100μm程度であるとする。
【0040】
なお、本実施形態においては、以下のようなテープを用いて加熱収縮実験を行った。すなわち使用したダイシングテープは、PO(ポリオレフィン)系テープとしては、古河電工製のUC−353EP−110やリンテック製のD−675、またPVC(ポリ塩化ビニール)系テープとしては、日東電工製のUE−110Bやリンテック製のD−175、またUV型DAFテープ(基材はPO系)として日立化成工業製のFHシリーズ(例えば、FH−9011)等が挙げられる。
【0041】
また、感圧型DAFテープ(基材はPO系)としては、日立化成工業製のHRシリーズ(例えばHR−9004)が挙げられる。これらいずれのテープでも熱収縮できることが確認されたが、実験結果についての詳細は後述する。
【0042】
また、これらのテープの熱伝導率は、代表例としてポリエチレンが挙げられるPO系のテープでは、0.3〜0.5W/m・Kであり、PVC系のテープでは0.1〜0.3W/m・Kである。また、Siはドープ量と結晶方位によって異なるが、その熱伝導率は、130〜170W/m・Kである。また、乾燥空気の熱伝導率は、0.02〜0.03W/m・Kである。
【0043】
なお、熱の伝わりやすさのイメージとしては、空気を1とすると、テープは10、シリコンは10000である。
【0044】
例えば、0.1mm厚のPO系テープ(熱伝導率を0.4W/m・Kと仮定する)上に、0.02mm厚のDAF(熱伝導率を1W/m・Kと仮定する)と、0.1mm厚のシリコン(熱伝導率を160W/m・Kと仮定する)を貼り付けた場合、PO系テープの熱抵抗値は0.0001m/0.4W/m・K=0.00025m
2・K/Wであり、DAFの熱抵抗値は0.00002m/1W/m・K=0.00002m
2・K/Wとなる。また、シリコンの熱抵抗値は0.0001m/160W/m・K=0.000000625m
2・K/Wである。
【0045】
今これらが直列に接続されているので、テープ裏面からシリコン上面までの熱抵抗値は、上記の和となり、0.000270625m
2・K/Wとなる。
【0046】
ところで、冷凍チャックテーブルから1mm外側の部分までのダイシングテープ+DAFの熱抵抗値Rは、次のように求められる。すなわち、PO系テープの熱抵抗値は0.001m/0.4W/m・K=0.0025m
2・K/Wであり、DAFの熱抵抗値は0.001m/1W/m・K=0.001m
2・K/Wであり、これらが並列に接続されているので、抵抗の並列接続に関する次の式から求められる。
【0047】
1/R = 1/0.0025 + 1/0.001 =400+1000=1400
これより、R=1/1400=0.00071m
2・K/Wとなる。
【0048】
従って、ダイシングテープ裏面からシリコン上面までの熱抵抗値に対して、冷凍チャックテーブルから1mm外側のダイシングテープの部分までの熱抵抗値は0.00071÷0.000270625=2.62355・・・より、約2.6倍となる。
【0049】
よって、シリコン上面に比べて冷凍チャックテーブルの外周部のダイシングテープは冷凍チャックテーブルによって冷却され難いことがわかる。さらに、外部の空気の影響は伝熱方向と垂直方向に空気層のあるダイシングテープの方が大きい。以上のことから、シリコン上面に比べて冷凍チャックテーブル外周部の温度の方が低下し難いことがわかる。
【0050】
冷凍チャックテーブル10は、ワーク2を真空吸着により保持して、ワーク2を冷凍チャックテーブル10に接触させて、接触した部分を介して熱伝達によりDAF(D)を0℃以下、例えば−5℃〜−10℃程度に冷却するものである。なお、同一物質内で熱が伝わることを熱伝導と言い、異なる物質同士が接触して熱が伝わることを熱伝達と呼ぶ。
【0051】
冷凍する方式としては、チャック内に冷媒を供給することにより冷凍する方式などもあるが、ペルチェ効果を利用してチャック表面を氷結させる方式でも良い。冷凍チャックテーブルは、ダイシングテープとDAFを介して、ウェハ裏面を真空吸着する。その特徴として、上で述べたことからもわかるように、その吸着領域は熱伝達によりすぐに冷却される一方、吸着領域以外は、あまり冷却されずに済むことである。これは、単に対流等によって雰囲気を冷やすこととは異なり、熱伝達による冷却は、局所的に冷却したい部分のみ冷却させることができるからである。
【0052】
このように冷凍チャックテーブルによってウェハ分割領域のみを選択的に冷却することができることがわかるが、その理由を以下さらに詳しく説明する。
【0053】
先にも述べたように、DAF及び粘着テープの厚みは、せいぜい100μm程度である。よって、冷凍チャックテーブル表面からの距離は、DAF、及び粘着テープ、ウェハまでの距離はせいぜい大きくて0.2mm以内である。それに対して、冷凍チャックテーブルの外周からDAFの外周までの径の差は12mmであるため、片側6mm程度はある。
【0054】
ここで、熱の伝わる現象についてみると、熱量は温度勾配と断面積に比例して伝導、伝達される。
【0055】
厚さΔx、面積Sで囲われたある微小区間SΔx内の断面を通過する熱の総量ΔQは、熱伝導率λ、接触面積S、温度u、温度勾配Δu/Δx、微小時間Δtとして、次式で表すことができる。
【0056】
ΔQ=λS(Δu/Δx)Δt ・・・・・・(1)
なお、異種材料間を伝わる熱伝達においては、同種材料内を伝わる熱伝導と基本的には同じであり、熱伝導率の変わりに熱伝達係数が適用されるだけである。
【0057】
よって、冷凍チャックテーブルを、例えば、−5℃に冷却したとする。すると、ウェハ領域内は、DAF及び粘着テープの厚みΔxはせいぜい0.2mmであるのに対して、熱が伝わる断面積Sはウェハ領域全域に相当する。そのため、熱伝達によって移動する熱量は非常に大きく、DAFや粘着テープの熱伝達係数や熱伝導率が多少低くても、熱伝達によってすぐさまウェハ領域内のDAFは冷却される。
【0058】
一方、DAFの外径部分は、先の事例では、冷凍チャックの外径より6mmも離れている。すなわち、熱が伝導する距離に相当するΔxは6mmとなる。また、DAFを貼り付けているダイシングテープはポリエチレン等の樹脂で形成されているため熱伝導率λも低い。さらに、そのポリエチレンの厚みが100μmと非常に薄いため、すなわち熱が伝わる断面積Sも非常に小さくなる。その結果、ウェハへの熱伝達性と比較して、ダイシングテープやDAFを伝わる熱伝導性は極めて低くなる。
【0059】
そのため、冷凍チャックが接触しない部分、実質的にダイシングテープの厚み以上に距離が離れているDAF外周部分は、冷凍チャックからの熱伝導によって冷却される影響を受けることはない。また、冷凍チャックから離れたダイシングテープの部分は、ほとんどの面積が周りの雰囲気に晒されているため、冷凍チャックの温度ではなく、冷凍チャック以外の周囲の雰囲気の温度に支配されるようになる。そのため、例えば、周囲の雰囲気を室温に保持している場合は、冷凍チャックが接触している領域以外は、ほとんど周囲の雰囲気の温度になる。すなわち、冷凍チャックの冷凍域で、実質上の温度の境界領域を形成することが可能となる。
【0060】
以上のような境界領域を形成することは、DAFテープの厚みやダイシングテープの厚みを、ウェハ領域(厳密にはウェハとDAFの双方を分割する領域)よりも外周部にはみ出たDAFまでの距離よりも小さく(薄く)、しているためである。
【0061】
それにより、熱伝達による冷却エリアを限定し、効率よく所定領域(分割したい領域)だけを冷却することが可能となる。
【0062】
そうしたことから、従来、DAFテープは伸縮性の材料であるから、ウェハ裏面に確実に貼り付けるためには、貼り付け精度上のマージンからDAF外径はウェハ径よりも10mm程度、少なくともDAF外径2mm以上(片側1mm以上)は、ウェハ径よりも大きくなければならなかった。
【0063】
その状態でDAF全域を低温にすると、ウェハが存在しない外周部のDAFは、低温になることで脆化し、その結果、DAFの下に存在するダイシングテープとの伸縮性の差でDAFは粘着テープからめくれ上がってしまっていた。めくれ上がったDAFは、一部が分離してウェハ上に降りかかり、DAFが異物としてウェハ上に付着するという問題が起こっていた。
【0064】
しかし、DAFが貼り付けられた状態であっても、熱伝達を考慮して、十分薄いDAFとダイシングテープを使用し、冷凍チャックを使用し、ウェハ領域を真空でチャックするとともに、チャックされたウェハ領域のみを効率的に、熱伝達現象で局所冷却することによって、ウェハより外周にはみ出たDAFが冷却されることはない。そのため、外周のDAFが冷却により脆化し、めくれ上がってウェハ上に降りかかるという問題は起こらない。
【0065】
また一方、冷却された部分においてDAFの分断性は向上するため、ダイシングテープを引っ張ることで、ウェハが割断されると同時に、DAFもきれいに分断することができる。
【0066】
冷凍チャックテーブルの大きさは、ウェハ領域とほぼ同等の大きさである。例えば、ウェハが8インチサイズ(直径200mm)の大きさの場合、冷凍チャックテーブルもウェハ裏面のDAFの分断性を良好にすればよいため、ウェハとほぼ同じ面積の8インチサイズ(直径200mm)がよい。
【0067】
ウェハを保持するエキスパンド性のダイシングテープは、エキスパンドさせることが必要となるため、当然ウェハよりも大きい領域となる。例えば、ウェハが200mmサイズの場合、エキスパンドするダイシングテープは、300mm程度の大きさのフレームに貼られており、その内側にウェハがある。ウェハとフレームの間も25mm〜40mm以上はある。
【0068】
ウェハとダイシングテープの間にはDAFが貼られている。DAFはウェハとほぼ同径ではあるが、実質はウェハよりも少し大きくしている。なぜならば、DAFは伸縮性の材料であるので、全く同一サイズとした場合、ウェハが、DAFに対して、少しずれて貼り付けられてしまう場合があるからである。こうした微妙なずれがあっても、必ずDAF上にウェハを載せ置いて貼り付けるために、DAFはそのずれ量も考慮して多少ウェハよりも大きめ、すなわち、外形にして約1cm程度大きくすることが好ましい。しかし、必ずしもこれに限定されるものではなく、極端な場合、DAFはダイシングテープと同じようにフレームFいっぱいの大きさとしてもよい。
【0069】
また、突上げ用リング12は、冷凍チャックテーブル10の周りを囲むように配置され、リング昇降機構16によって昇降可能に構成されたリングである。なお、このリングには摩擦力低減のためのコロ(ローラ)を設けてもよい。
図1では、突上げ用リング12は、下降位置(待機位置)に位置している。
【0070】
この突上げ用リングは、アルミニウムなどの熱伝導性の良い金属等で形成されているのがよい。また、突上げ用リングは、ダイシングテープの全周で接触している。
【0071】
このようにダイシングテープと接触する構成としていることにより、突上げ用リングは、以下のような機能を有している。
【0072】
すなわち、DAFが貼られた領域は、DAFをウェハとともに分断するために、冷却状態を保っておく必要がある。一方、エキスパンドした後に弛みが発生した際、その弛みを排除しなくてはならない。弛みが残されたまま搬送すると、分断されたチップ同士がぶつかってチップを破損することになるからである。この弛みを排除するためには、ダイシングテープとして、加熱すると収縮する機能を有する熱収縮性のテープが使用される。こうしたダイシングテープに使用される熱収縮性を有するテープとしては、特開平9−17756に開示される半導体保護用シート(テープ)を使用すればよい。
【0073】
このようにエキスパンドして分断する場合において、本件の場合では、ウェハ領域は冷凍することによって、DAFテープの分断性を向上させることを確保しなければならないとともに、ウェハ領域外の外側においては、弛みをなくす目的でダイシングテープを加熱して収縮させることが必要となる。
【0074】
すなわち、突上げ用リングは、この二つの領域においての熱環境を分離するという機能を有している。
【0075】
ウェハ領域は、冷凍チャックテーブルにより冷却される。その冷却した状態は、外部の加熱エリアからの熱の流入は突上げ用リングで遮断される。また、ダイシングテープは高分子でできており、金属などと比べて熱伝導性が悪いため、突上げ用リングの内周部に存在するウェハエリアにも熱が伝わりにくい。
【0076】
以上から、突上げ用リングによって、熱環境を領域的に完全に隔離することができる。すなわち突上げ用リングの内側、また、特にウェハエリアは局所的に冷却されてDAFの分断性が向上する状態を保つ。一方で突上げ用リングの外側は、加熱することによってダイシングテープを収縮させて、エキスパンドにより発生したダイシングテープ外周部の弛みを除去し、緊張した状況を作ることが可能となる。
【0077】
半導体ウェハWには、
図28に示すように、予めレーザ照射等によりその内部に分断予定ラインが格子状に形成されている。詳しくは後述するが、突上げ用リング12は、上昇することにより下からダイシングテープSを押し上げて、ダイシングテープSをエキスパンドする。このようにダイシングテープSを引き伸ばすことにより、分断予定ラインが分断されて半導体ウェハWがDAF(D)とともに個々のチップTに分割される。
【0078】
ところで、上述したように、冷凍チャックテーブル10でDAF(D)を冷却するのは、DAF(D)は室温では粘度が高く、突上げ用リング12でダイシングテープSを下側から押し上げても、DAF(D)はダイシングテープSとともに伸びてしまい、分断されないからである。すなわち、DAF(D)を冷却して脆性化することにより、分断しやすくしているのである。
【0079】
なお、
図1に示すように、ワーク2は、ダイシングテープSの裏面が、丁度冷凍チャックテーブル10の上面に接触するような位置に、フレーム固定機構18によりフレームFが固定されるようになっている。また、突上げ用リング12の外周側には、サブリング14が設置されている。詳しくは後述するが、このサブリング14は、エキスパンドされたダイシングテープSの拡張状態を保持して、分断されたチップT間の間隔を維持するためのものである。
【0080】
以下、
図2のフローチャートに沿って、ワーク分割装置1によるワーク2の半導体ウェハWを個々のチップTに分割して個片化する動作を説明する。
【0081】
まず、
図2のステップS100において、
図1に示すように、半導体ウェハWの裏面にDAF(D)を介してダイシングテープSが接着されたワーク2のフレームFをフレーム固定機構18により固定する。そして、半導体ウェハWが存在する領域が冷凍チャックテーブル10の上に位置するように配置する。
【0082】
次に
図2のステップS110において、冷凍チャックテーブル10は、ワーク2の裏面を、真空吸着により吸着して冷凍チャックテーブル10の表面に確実に接触させる。冷凍チャックテーブル10は低温状態にあるので、この接触により熱伝達でワーク2は冷却される。特に、DAF(D)が−5℃〜−10℃程度に冷却され、これによりDAF(D)は脆性化し、力を加えることにより容易に割れるようになる。冷凍チャックテーブル10は、所定時間真空吸着を行い特にDAF(D)が所定温度になるまでワーク2の冷却を行う。なお、これらの制御は、図示を省略した制御手段によって行われる。
【0083】
次に、
図2のステップS120において、
図3に示すように、エキスパンドを行い半導体ウェハWをDAF(D)とともに個片化する。
【0084】
すなわち、
図3に示すように、冷凍チャックテーブル10は、真空吸着を停止し、ワーク2の吸着を解除し、リング昇降機構16により突上げ用リング12及びサブリング14を上昇させる。突上げ用リング12の上昇は、例えば、400mm/secで、15mm上方に突き上げるようにしている。なお、このときサブリング14はフレームFよりも上には上昇しないような位置で止まっているようにする。
【0085】
図2に示すように、突上げ用リング12の上昇により、ダイシングテープSは下から押し上げられ、ダイシングテープSの面内において半導体ウェハWの中心から放射状にエキスパンド(拡張)される。ダイシングテープSが拡張されると、半導体ウェハWは分断予定ラインに沿って分割され、個々のチップT間に数μmから100μmの隙間が形成される。このときDAF(D)は、冷却されて脆性化しているので、DAF(D)も半導体ウェハWと一緒に分断予定ラインに沿って分割される。これにより半導体ウェハWは、裏面にDAF(D)が付いた各チップTに個片化される。
【0086】
ダイシングテープSは、突上げ用リング12によるエキスパンドを解除すると、その弾性によって元に戻ってしまい、各チップT間の隙間がなくなってしまうので、少なくとも各チップTが存在する領域においてダイシングテープSの拡張状態を維持しなければならない。
【0087】
そこで、次に
図2のステップS130において、
図4に示すように、サブリング14を、フレームF上の拡張されたダイシングテープSに挿入できる位置までリング昇降機構16によって上昇させ、サブリング14をダイシングテープSの拡張された部分に挿入する。このとき、上昇するサブリング14によってダイシングテープSが破断しないように、低速でサブリング14を上昇させる。
【0088】
次に、
図2のステップS140において、
図5に示すように、サブリング14だけをフレームFよりも上の位置に残して突上げ用リング12を下降させ、下降位置(待機位置)に移動させる。このとき、サブリング14はフレームF上の位置に残っているので、ダイシングテープSの拡張状態が保持される。
【0089】
これにより、ダイシングテープSの拡張状態が保持されるので、各チップT間の隙間も広く維持され、DAF(D)が再固着することもない。従って、ダイシングテープSが弛んだ状態でワーク2を搬送するようなことがなく、その後の処理が容易となる。
【0090】
以上のように、
図2のフローチャートに沿って説明したような方法でワーク2を分割することにより、ワーク分割(個片化)及び分割した各チップ間の隙間を維持するための拡張状態の保持までを一つのユニット内で行うことができ、製品を製造するタクトタイムを速くすることが可能となる。
【0091】
しかし、サブリング14を用いてダイシングテープSの拡張状態を保持する方法では、サブリング14によってダイシングテープSを破ってしまう虞がある等の問題がある。
【0092】
そこで、次にサブリングを用いない実施形態を説明する。
【0093】
図6は、本発明に係るワーク分割装置の第2の実施形態を示す要部断面図である。
【0094】
図6に示すように、本実施形態のワーク分割装置100は、冷凍チャックテーブル10、突上げ用リング12、ウェハカバー(ダイシングテープ抑え)20及び光加熱装置22を備えている。光加熱装置22は、例えば、スポットタイプのハロゲンランプヒータである。また、光加熱装置22は、光を照射して輻射により加熱するものであれば、その他に、レーザやフラッシュランプなどでもよい。
【0095】
こうした光加熱型装置の場合、光の照射状態を目視で確認することができる。また、光が照射された領域は、輻射現象により加熱されるのに対して、光が照射されない領域は加熱されない。すなわち、光を照射するとき、その照射領域を視認することができるので、その照射が視認できる領域を輻射により加熱する領域として局所的に限定することが可能となる。
【0096】
本実施形態においては、光加熱装置22としてスポットタイプのハロゲンランプヒータを用いている。具体的には、インフリッヂ工業(株)のハロゲンスポットヒータLCB−50(ランプ定格12V/100W)を用いた。焦点距離は35mm、集光径は2mmである。しかし、本実施形態では後述する
図11に示すように、丁度集光する部分を用いて加熱するのではなく、光源から対象物までの距離(照射距離)を46mmとして、焦点距離35mmに対して11mmオフセットし、照射径を17.5mmとしている。実際の照射径は、15mmであり、ダイシングテープSのワークWの外側の径15mmのエリアを加熱するようにしている。
【0097】
図7はワーク2のフレームF上、ウェハカバー20の外側のダイシングテープS上、及び半導体ウェハW側にそれぞれ貼られたサーモラベルTLの拡大図であり、
図8は、光加熱装置22によってウェハカバー20の外側のダイシングテープSを加熱したプロセス後のサーモラベル拡大図である。
【0098】
ここで、サーモラベルTLは50℃以上の温度で赤変するタイプである。
図8のプロセス後のサーモラベル拡大図でもわかるように、光が照射されていないウェハW側及びフレームF側は50℃に達していない。
【0099】
このようにスポットタイプのハロゲンランプヒータを用いることにより、加熱したい部分のみを選択的に(局所的に)加熱することができ、それ以外の部分への熱ストレスを最小限に抑制することができる。
【0100】
また、ハロゲンランプ用電源としては、(株)ミューテックのハロゲンランプ用電源KPS−100E−12を使用した。このハロゲンランプ用電源の出力は定格電圧12Vである。また、ソフトスタート(スロースタート)機能を有しており、ハロゲンランプに突入電流が流れるのを防止している。
【0101】
これらの組み合わせにより、ヒータ電源ON指令よりスロースタート0.75秒を経てヒータ最大照度に到達するまでにかかる時間は3秒以内である。これは温風ヒータや赤外線ヒータと比較すると非常に短時間である。同様に最大照度から電源OFFまでの時間も同様である。また、所定の照度から別の照度への変更応答性も3秒以内である。このようにハロゲンランプを用いることにより、短時間で目的の照度つまり温度を得ることができる。これは一般的な赤外線ヒータや温風ヒータでの実現は困難である。このように制御性が良いこともハロゲンランプヒータを用いることが好ましい一つの理由である。
【0102】
冷凍チャックテーブルにおける熱伝達現象を利用したウェハ裏面のDAF部分の局所的な冷却と、ハロゲンランプヒータによる輻射現象を利用したダイシングテープ外周部の弛み部分に対する局所的な加熱によって、同一エリア内で熱状態を完全に分離することができ、同じステージ、ないしは同じチャンバー内で、DAFの冷却と、ダイシングテープの熱収縮を行うことができる。それによって、DAFの冷却後、ダイシングテープの熱収縮のために、場所を移動させる必要がなくなる。
【0103】
本実施形態は、以下説明するように、ダイシングテープSの拡張状態を保持するために、サブリングを用いずに、ウェハカバー20と光加熱装置22を用いて、ダイシングテープSの弛んだ部分を選択的に加熱して緊張させることでダイシングテープSの拡張状態を保持するようにするものである。
【0104】
ウェハカバー20は、有底の高さの低い円筒形状をしており、底面20aと側面20bとからなり、底面20aは半導体ウェハWよりも一回り大きく形成されている。また、ウェハカバー20は、カバー昇降機構21によって昇降可能に設置されており、下降した位置において、半導体ウェハWを覆うようになっている。また一方、ウェハカバー20の側面20bの先端面は、上昇した突上げ用リング12の先端面と突き合わされるようになっており、これにより半導体ウェハWはウェハカバー20によって完全に密閉される。
【0105】
光加熱装置22は、ウェハカバー20の外側で対称的な位置に配置され、ウェハカバー20とヒータ昇降機構23によって昇降可能であり、詳しくは後述するように、下降した位置においてダイシングテープSの周辺部を選択的に加熱するように構成されている。図では、光加熱装置22は、ワーク2の直径方向の対称的な位置に二つ配置されているが、光加熱装置22の個数は2個に限定されるものではない。例えば、ウェハカバー20の周囲に、90度の間隔で4個配置するようにしてもよい。
【0106】
以下、
図9のフローチャートに沿って本実施形態の作用を説明する。
【0107】
まず、
図9のステップS200において、
図6に示すように、半導体ウェハWの裏面にDAF(D)を介してダイシングテープSが接着されたワーク2のフレームFをフレーム固定機構18により固定する。そして、半導体ウェハWが存在する領域が冷凍チャックテーブル10の上に位置するように配置する。なお、半導体ウェハWには、
図28に示すように、予めレーザ照射等によりその内部に分断予定ラインが格子状に形成されている。
【0108】
次に
図9のステップS210において、冷凍チャックテーブル10は、ワーク2の裏面を、真空吸着により吸着して冷凍チャックテーブル10の表面に確実に接触させ、熱伝達によってワーク2に接着されたDAF(D)を冷却する。冷凍チャックテーブル10は、所定時間ワーク2を真空吸着して、DAF(D)が脆性化するように冷却した後、真空吸着を解除する。
【0109】
次に、
図9のステップS220において、
図10に示すように、リング昇降機構16によって突上げ用リング12を上昇させて、ダイシングテープSをエキスパンドする。このときの突上げ用リング12の突上げは、前の実施形態と同様に、例えば400mm/secの速度で、15mmの高さまでダイシングテープSを突き上げる。
【0110】
これによりダイシングテープSがワーク2の中心から放射状に拡張されて半導体ウェハWが分断予定ラインに沿ってDAF(D)と一緒になって、各チップTに分割される。
【0111】
次に、
図9のステップS230において、
図11に示すように、ウェハカバー20及び光加熱装置22を、それぞれカバー昇降機構21及びヒータ昇降機構23によって下降させ、ウェハカバー20でワーク2の半導体ウェハWの部分を被覆する。このとき
図11に示すように、ウェハカバー20の側面20bの先端面と、突上げ用リング12の先端面とを突き合わせて、ウェハカバー20と突上げ用リング12との間でダイシングテープSを把持する。
【0112】
このウェハカバー20と突上げ用リング12との間でダイシングテープSを把持する力は、例えば40kgf程度である。
【0113】
次に、
図9のステップS240において、
図12に示すように、ウェハカバー20と突上げ用リング12との間でダイシングテープSを把持したまま、ウェハカバー20と突上げ用リング12を、半導体ウェハWの下側のダイシングテープSの裏面が冷凍チャックテーブル10の上面に接触する位置まで下降させる。これにより、ダイシングテープSの、ウェハカバー20と突上げ用リング12とで把持された部分の周辺部が弛緩し、弛み部が発生する。なお、このとき、ウェハカバー20と突上げ用リング12との間でダイシングテープSを把持する力は40kgfを維持している。
【0114】
次に、
図9のステップS250において、
図13に示すように、ウェハカバー20と突上げ用リング12の各先端面を突き合わせて把持した部分の外側の弛緩したダイシングテープSの部分に対してのみ、光加熱装置22でスポット光を当てて選択的に加熱する。このとき、もしワークが貼付されたDAF(D)の領域も同時に加熱されてしまうとDAF(D)が溶けてチップT間の隙間がなくなってしまう虞があるので、ダイシングテープSのワークが貼付された領域以外の弛んだ部分のみを選択的に加熱する必要がある。
【0115】
この加熱により弛んだダイシングテープSが緊張して、弛みが次第に解消して行く。なお、例えば光加熱装置22はそれぞれ100Wであり、直径20mmのエリアに光を照射する。ウェハカバー20と突上げ用リング12との間の把持力も40kgfが維持されている。
【0116】
またこのとき、光加熱装置22をオンしてからその加熱状態が安定した後(約2秒後)、固定した一定の位置からのみ加熱することによってダイシングテープSの緊張状態に偏りが生じないように、光加熱装置22をウェハカバー20の周囲に一定の周期で所定速度で回転することが好ましい。このように光加熱装置22をウェハカバー20の周囲に一定の周期で回転させることで様々な方向から加熱することにより、ダイシングテープSの緊張状態に偏りが生じるのを防ぐことができる。なお、光加熱装置22を回転する場合に、ヒータ昇降機構23が単に光加熱装置22を昇降させるだけでなく、光加熱装置22を一定の周期で回転させるヒータ回転機構の機能をも備えるようにしてもよい。
【0117】
ここで、光加熱装置22の制御方法について、詳しく説明しておく。
図14に、光加熱装置22とダイシングテープSとの位置関係の一例を平面図で示す。光加熱装置22は、スポットタイプのハロゲンランプヒータである。
【0118】
図14に示す例では、ダイシングテープSの周囲に等間隔で対称的に4つの光加熱装置22が配置されている。なお、
図14では、半導体ウェハWやフレームF等は省略して、中央にチップTを一つだけ表示している。
【0119】
図14の例では、チップTは略正方形であり、各光加熱装置22は、チップTの各辺に対向する位置にそれぞれ配置されている。この位置で各光加熱装置22の電源をオンにすると、熱収縮性の材料で形成されたダイシングテープSは、加熱されて図に矢印Jで示したように収縮する。その結果、チップTは、X方向及びY方向に引っ張られる。
【0120】
ここで例えばダイシングテープSは、図のX方向(横方向)は収縮し難く、Y方向(縦方向)は収縮し易いとする。このような収縮異方性を解消するために、収縮し難いX方向に配置された光加熱装置22に対しては、収縮し易いY方向に配置された光加熱装置22よりも(ハロゲンランプヒータに対する)印加電圧を高めに設定するようにする。これにより、ダイシングテープSは縦方向及び横方向に均等に収縮し、各チップTは外周方向に均等に引っ張られるので、チップT同士がくっついてしまったり、配列ずれを生じることはない。
【0121】
さらにこのとき、図に矢印Kで示すように、光加熱装置(スポットタイプのハロゲンランプヒータ)22を、ヒータ昇降機構23によって、ダイシングテープSの周囲に回転走査させる。
【0122】
図15に、光加熱装置22を回転走査する様子を示す。
【0123】
まず、
図15に符号1で示す位置で光加熱装置22(
図15においては図示省略)の電源をオンにして加熱を行う。このとき、前述したようにダイシングテープSはX方向(横方向)は収縮し難く、Y方向(縦方向)は収縮し易いとしているので、図の符号Hの位置にある光加熱装置22は、符号Lの位置にある光加熱装置22よりも印加電圧を高く設定する。
【0124】
次に光加熱装置22の電源をオフにするか、加熱に寄与しない電圧を印加して、丁度符号1の中間の位置である符号2の位置まで、光加熱装置22をヒータ昇降機構23によって45度回転する。
【0125】
次に、符号2の位置でまた光加熱装置22の電源をオンにしてダイシングテープSを加熱する。この符号2の位置においては、X方向とY方向の中間の方向であるので、全ての光加熱装置22の印加電圧は等しくする。
【0126】
このようにして、ダイシングテープSを、ダイシングテープSを、横方向、縦方向及び斜め方向の全ての方向に対して均等に収縮させることができる。
【0127】
なお、光加熱装置22の個数はこの例のように4個に限定されるものではなく、
図14に示す4個の光加熱装置22の間にそれぞれ1個ずつ光加熱装置を追加して8個の光加熱装置22を備えるようにしてもよい。
【0128】
図16に、8個の光加熱装置を備えた例を示す。
図16に示す例においては、
図14の4つの光加熱装置22に対して、各光加熱装置22の間にそれぞれ一つずつ光加熱装置22が配置され、全体で8個の光加熱装置22がダイシングテープSの周囲に等間隔で配置されている。この場合も、8個の光加熱装置22は、ヒータ昇降機構23によってダイシングテープSに対して昇降可能かつその周囲に回転走査させることができる。
【0129】
図17に、8個の光加熱装置22を回転走査する様子を示す。
【0130】
例えば、8個の光加熱装置22は、始め
図17の符号1の位置においてダイシングテープSの周辺部を加熱する。次に、
図17に矢印Kで示すように、光加熱装置22をヒータ昇降機構23によって符号2の位置まで22.5度(360度÷8÷2)だけ回転する。この回転中においては、光加熱装置22は電源オフするか、加熱に寄与しない程度の電圧を印加する。そして、次に
図17の符号2の位置においてダイシングテープSの周辺部を加熱する。
【0131】
なお、このとき前の例と同様に、チップTに対して示したX方向(横方向)はY方向(縦方向)よりもダイシングテープSが収縮し難い場合には、図に破線で示した範囲Hにある光加熱装置22は、図に破線で示した範囲Lにある光加熱装置22よりも印加電圧を高くするようにする。
【0132】
なお、光加熱装置22の個数は、これらの例のように4個や8個に限定されるものではなく、少なくとも4個以上で、ダイシングテープSの外周に沿って等間隔に対称的に配置することができればよい。例えば、6個の光加熱装置は、ダイシングテープSの外周に沿って等間隔に対称的に配置することができるので、6個でもよい。
【0133】
また、
図14の4個の光加熱装置22の間にそれぞれ2個の光加熱装置を追加して12個としてもよいし、
図14の4個の光加熱装置22の間にそれぞれ3個の光加熱装置を追加して16個としてもよい。このように、光加熱装置22の個数は、4の倍数とすることが好ましい。
【0134】
このように、少なくとも4個以上の光加熱装置をダイシングテープSの周囲に均等に配置して、ダイシングテープSの収縮し難い方向については、光加熱装置に対する印加電圧をより高くして加熱するようにして、光加熱装置による加熱と所定角度の回転を繰り返すことで、ダイシングテープSを横方向、縦方向及び斜め方向の全ての方向に対して均等に収縮させることができる。
【0135】
なお、ここでは、
図16に示すようにダイシングテープSの周囲に沿って等間隔に8個の光加熱装置22が配置されているとする。また、
図16の例と同様に、チップTに対して示したX方向(横方向)はY方向(縦方向)よりもダイシングテープSが収縮し難いものとする。
【0136】
次に、
図17の符号1で示す位置において、8個の光加熱装置22の電源をオンにしてダイシングテープSの弛んだ外周部を加熱する。このとき、
図17に破線Hで囲んだ領域においては、光加熱装置22の印加電圧を、破線Lで囲んだ領域においてよりも高く設定する。これにより、ダイシングテープSの収縮し難い横方向(X方向)についても、収縮し易い方向(Y方向)と同じように収縮させることができ、収縮の異方性を抑性することができる。
【0137】
次に、光加熱装置22の電源をオフにするか加熱に寄与しない電圧を印加して
図17に矢印Kで示したように、ヒータ昇降機構23によって光加熱装置22を符号2で示す位置まで回転する。
【0138】
次に、
図17の符号2の位置で、光加熱装置22の電源をオンにしてダイシングテープSの外周部を加熱する。このとき、
図17に破線Hで囲んだ領域においては、光加熱装置22の印加電圧を、破線Lで囲んだ領域よりも高く設定する。
【0139】
そして、光加熱装置22の電源をオフにして、ヒータ昇降機構23により光加熱装置22を待機位置まで上昇させる。
【0140】
そして、最後に、ウェハカバー20を光加熱装置22と同様に待機位置に上昇させるとともに、突上げ用リング12も待機位置まで降下させ、ダイシングテープSの拡張を解除する。そしてフレームFをはずしてワークを次の工程に搬送する。あるいは、サンプルチップの検査が終了するまで所定の場所に保管する。
【0141】
このように光加熱装置によりダイシングテープSの弛んだ部分のみを選択的にまた均等加熱することにより、ダイシングテープSが全ての方向について均等に収縮され、分割された各チップTの間隔及び配列を維持することができる。従って、サンプルチップをピックアップしたワークをダイボンダからはずして、サンプルチップの検査が終了するまで保管するとしても、ダイシングテープSの拡張状態が維持されるため、拡張されたダイシングテープSが再び元に戻ってチップTの間隔が狭まってチップ同士が接触するようなことはない。
【0142】
また、光加熱装置がダイシングテープSの周囲に沿って等間隔に8個配置された場合のその他の加熱制御方法について説明する。
【0143】
すなわち、例えば
図16に示すように、ダイシングテープSの周囲に沿って等間隔に8個の光加熱装置22としてスポットタイプのハロゲンランプヒータが配置されている。ただし、このときチップTは、
図16に示すような略正方形ではなく、図のX方向(横方向)とY方向(縦方向)とにおける長さの比(アスペクト比)は、1:2.4の縦長の長方形状であるとする(
図19参照)。
【0144】
各光加熱装置22は、ダイシングテープSの周囲に45度の間隔で並んでいる。この45度の間隔を8等分して、5.6度ずつ各光加熱装置22をダイシングテープSの周囲に沿って回転し、5.6度回転する毎にその位置で加熱するようにする。このとき、最初は
図18において、光加熱装置22としてのハロゲンランプヒータに対する印加電圧は、LeftとRightの位置では12Vとし、TopとBottomの位置では5Vとする。
【0145】
このようして、5.6度ずつ回転しながら、8回加熱したら、次は、最初の位置より5.6度の半分の2.8度ずらした位置から初めるようにする。今度は、ハロゲンランプヒータに対する印加電圧は、LeftとRightの位置では12Vとし、TopとBottomの位置では11Vとする。そして、また5.6度ずつ回転しながら、8回加熱する。
【0146】
このようにして加熱し、ダイシングテープS上の各チップTの間隔を、
図18に示す、Center、Left、Right、Top、Bottomの5か所について、
図19に示すような5つのポイントで、それぞれHorizontal及びVerticalの2方向について測定した。
【0147】
図20に、それぞれの箇所について各ポイント毎の測定結果を示す。この結果を見ると、上記のような加熱制御により、チップ間の間隔はどの場所においても平均20〜30程度であり、それほど大きな違いは発生しないことがわかる。
【0148】
これに対して、比較のために、このような加熱制御をすることなく、単にダイシングテープSの全周囲から同じように加熱した場合の測定結果を
図21に示す。
【0149】
図21を見ると、チップTのアスペクト比が1:2.4で異方性を有する場合に、全方向から同じように加熱した場合には、ダイシングテープS上の場所及び方向によって、チップ間隔が、平均で10台から50台までと、大きく変化していることがわかる。
【0150】
このように、上述したような加熱制御を行うことにより、チップが正方形から大きくはずれたような形状をしており、異方性がある場合でも、全方向について同じようにダイシングテープSを収縮することができる。また、逆にチップが等方的で異方性がなく、ダイシングテープSの側に異方性がある場合でも、上記加熱制御方法で対応することができる。
【0151】
なお、いままで説明してきた例においては、光加熱装置は、スポットタイプのハロゲンランプヒータとしていたが、ウェハカバー20が存在することにより、温風ヒータを用いることも可能である。すなわち、ノズル等から局所的な領域のみに温風を吹き出すようにしすれば、ウェハカバー20により、温風がダイレクトに半導体ウェハWの領域には行かないようにすることができるので、ダイシングテープSの弛み部のみを選択的に加熱することが可能となる。
【0152】
また、本実施形態においては、光加熱装置22による熱輻射によって加熱しているので、ダイシングテープSの弛んだ部分にのみ局所的に(選択的に)加熱することができる。また特に本実施形態では、半導体ウェハWをウェハカバー20で覆っているため熱を遮蔽して、光加熱装置22によってワークが貼付されたDAF(D)が加熱されてしまうのを防ぐことができ、より一層光加熱装置22による局所的な加熱を可能としている。
【0153】
また、ウェハカバー20と突上げ用リング12とによってダイシングテープSの弛んだ部分の近くを把持しているので、弛んだ部分を加熱することによってウェハカバー20や突上げ用リング12も加熱されるが、この熱は熱伝導によってウェハカバー20や突上げ用リング12を通じて逃げて行く。従って、ウェハカバー20及び突上げ用リング12の内部に囲われたワークが貼付されたDAF(D)は、熱的に遮蔽されており、加熱されることはない。
【0154】
この点従来は、温風による加熱であったので、熱対流により全体が加熱されてしまうので、ダイシングテープSの弛んだ部分だけを選択的に加熱することはできなかった。また、DAF(D)の冷却も、冷蔵庫内のようにユニット全体を冷却する雰囲気冷却方式でエキスパンドを行っていたので、選択的な冷却をすることができず、冷却と加熱を一つのユニットで行うことができなかった。
【0155】
これに対して本実施形態では、DAF(D)の冷却についても、冷凍チャックテーブル10で吸着してワーク2を接触させることによる熱伝達を用いているので、ワークが貼付されたDAF(D)の部分のみを選択的に冷却することができる。
【0156】
従って、本実施形態においては、ワークが貼付されたDAF(D)の冷却と、ワークが貼付された領域以外の弛んだダイシングテープSの加熱とを一つのユニット内で行うことが可能である。
【0157】
このようにして、ウェハカバー20の外周部のダイシングテープSの弛んだ部分を加熱した結果を
図22及び
図23に示す。
【0158】
図22及び
図23は、光加熱装置22によって選択的に加熱されたダイシングテープSが熱収縮している様子を測定したサーモトレーサ画面である。
【0159】
図22及び
図23において、スポットタイプのハロゲンランプヒータでウェハカバー20の外側の弛んだダイシングテープSを局所的に加熱している。これにより、図に符号Aで示すダイシングテープSの加熱中心の温度は140度近くに達している。これに対して、ウェハカバー20は50度程度であり、またフレーム固定機構(フレーム抑え)18も40度程度とほとんど温度は上がっていない。なお、図の符号Bの部分も90度程度になっているが、これはハロゲンランプからの正反射光が入ったもので、正確に測定されたものではない。
【0160】
このように、スポットタイプのハロゲンヒータで加熱することにより、ダイシングテープSの弛んだ部分のみを加熱し、その他の部分の温度を上昇させないように選択的に加熱することが可能となる。
【0161】
次に、前に述べた各テープに対して輻射による光加熱装置による加熱収縮実験を行った結果について説明する。
【0162】
プロセス時間は、PO系テープに関して標準的な時間とした。ウェハ冷却は、室温から−10℃まで20秒で冷却を行った。エキスパンドは3秒で15mm突上げ用リングを上昇させた。ダイシングテープへの弛み形成時間は7秒とした。熱収縮は、スロースタート分と光加熱装置の移動時間が、6秒×4ステップで、24秒+6秒とする。あるいは、熱収縮を、スロースタート分と光加熱装置の移動時間が、6秒×8ステップで、48秒+10秒とする。
【0163】
また、ダイシングテープの硬化待ちを30秒とし、さらにロード、アンロード、センタリング等に10秒とする。以上の合計で、100秒又は128秒とする。なお、8ステップは小チップの場合である。
【0164】
このとき光加熱装置はスポットタイプのため、光照射位置での単位面積あたりの投入熱量が多い。これにより、熱収縮性のあるPO系のダイシングテープはもちろん、PVC系のダイシングテープでも収縮させることができた。
【0165】
例えば、上述したリンテック製のPO系のテープであるD175では、テープのロール方向(MD)に5mm、幅方向(TD)に3mm拡張させることができた。
【0166】
このようにして、ダイシングテープSを所定時間加熱してダイシングテープSが緊張して弛みが解消したら、光加熱装置22による加熱(光加熱装置22の回転)を停止する。このときダイシングテープSが硬化するまで約30秒程度、ウェハカバー20と突上げ用リング12とによるダイシングテープSの把持を続ける。
【0167】
最後に、
図9のステップS260において、
図24に示すように、ウェハカバー20(と光加熱装置22)を上昇させるとともに、突上げ用リング12を降下させて、ダイシングテープSの把持を解放する。なおこの間、冷凍チャックテーブル10による真空吸着によって熱収縮部を冷却することにより硬化を促進するようにしてもよい。このように冷凍チャックテーブル10によってダイシングテープSを真空吸着して冷却することにより、ダイシングテープSの外周部の加熱された部分の熱をとってやることで、通常室温に放置するよも短時間でダイシングテープSを硬化させることができる。その後、冷凍チャックテーブル10による真空吸着を行っていた場合、真空吸着も停止する。
【0168】
このようにして、各チップTの間隔が十分維持されるとともに、周囲のダイシングテープSに弛みのないワーク2を製造することができる。
図25にこのようにして製造した熱収縮処理後のワークの写真を示す。
図25はテープ裏側から撮像したものであるが、ウェハ内に縦横に白い隙間が入っていることがはっきりと確認することができ、各チップが離間した状態が維持されていることがわかる。
【0169】
これに対して、従来のように冷却・拡張ユニットと熱収縮ユニットが別ユニットで、各ユニット間でワーク搬送が必要な場合には、弛んだダイシングテープが大きく垂れ下がって不定の状態となる。すると
図26に断面図で示すように、ダイシングテープS上でDAF(D)とともに個片化されたチップTの上面同士が互いに接触してしまう。このように、隣り合ったチップ間の隙間がなくなってしまうと、その後の工程でチップの破損が生じたりして品質低下を招いてしまう。
【0170】
しかし、本実施形態によれば、
図25に示すように、熱収縮処理後において個片化された各チップが離間した状態が維持され、チップの品質低下や歩留りの低下を生じることもない。
【0171】
以上説明した第2実施形態においては、ウェハカバーによりワーク2の半導体ウェハWの部分を被覆して加熱手段である光加熱装置22から熱的に遮蔽していたが、光加熱装置22はスポット的に熱を当てて選択的に加熱することができるので、ウェハカバーで熱的に遮蔽する方が好ましいが、必ずしもウェハカバーによる遮蔽は必要ではない。
【0172】
従って、第2の実施形態の変形例として、第2の実施形態からウェハカバー20の使用をやめたものも考えられる。
【0173】
以下、このような変形例の動作を
図27のフローチャートに沿って説明する。
【0174】
ワーク分割装置としては、
図6に示す第2の実施形態の装置構成からウェハカバー20を除いたもの、あるいは装置構成は同じで単にウェハカバー20を使用しないようにしたものとする。
【0175】
まず
図27のステップS300において、半導体ウェハWの裏面にDAF(D)を介してダイシングテープSが接着されたワーク2のフレームFをフレーム固定機構18により固定する。そして、半導体ウェハWが存在する領域が冷凍チャックテーブル10の上に位置するように配置する。
【0176】
次に
図27のステップS310において、冷凍チャックテーブル10によりワーク2の裏面を真空吸着により吸着して冷凍チャックテーブル10の表面に確実に接触させ、熱伝達によってワーク2を冷却する。
【0177】
次に
図27のステップS320において、リング昇降機構16によって突上げ用リング12を上昇させて、ダイシングテープSをエキスパンドする。
【0178】
次に
図27のステップS330において、突上げ用リング12を、半導体ウェハWの下側のダイシングテープSの裏面が冷凍チャックテーブル10の上面に接触する位置まで下降させる。これにより、ダイシングテープSの周辺部が弛緩し、弛み部が発生する。
【0179】
次に
図27のステップS340において、突上げ用リング12の外側の弛緩したダイシングテープSの部分に対してのみ、光加熱装置22でスポット光を当てて選択的に加熱する。これにより、ダイシングテープSの弛んだ部分が熱によって緊張し弛みが解消する。またこのとき、ダイシングテープSの弛緩した部分に加えられた熱は、ダイシングテープSの他の部分にも伝わろうとするが、ダイシングテープSに接触している突上げ用リング12を介して熱伝達によって熱が逃げて行くため、DAF(D)の領域の方へは熱が伝わり難くなっている。
【0180】
また、このとき、ダイシングテープは高分子で熱伝導率が低いのに対して、突上げ用リングは金属等で形成していることから熱がそのまま突上げ用リングに伝達されやすく、また、突上げ用リングは、ダイシングテープよりも熱伝導率を高く設定しておけば、特にDAFには熱が伝わらないようになる。
【0181】
なお、このとき、冷凍チャックテーブル10でDAF(D)の領域を同時に冷却するようにしてもよい。
【0182】
最後に、
図27のステップS350において、突上げ用リング12を下降させて下降位置(待機位置)へ移動させる。なおこの間、冷凍チャックテーブル10による真空吸着によって熱収縮部を冷却することにより弛んだダイシングテープSの硬化を促進するようにしてもよい。このように冷凍チャックテーブル10によって真空吸着して冷却することにより、ダイシングテープSの外周部の加熱された部分の熱をとってやることで、通常室温に放置するよも短時間でダイシングテープSを硬化させることができる。
【0183】
これにより、チップ間隔が十分に確保されたワークが形成され、次の工程での処理が容易となる。
【0184】
以上、本発明のワーク分割装置及びワーク分割方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【0185】
例えば、ダイシングテープの光が照射された領域は、光が照射されていることを視認できるに越したことはないが、赤外線等で照射エリアが視認されずとも、DAFが存在するウェハ領域が十分局所冷却された状態にあることを前提に、外周のダイシングテープの所定のエリアを相対的に局所加熱することができればよい。例えば、ウェハ領域において冷凍チャックテーブルによる熱伝達を使用しているのであれば、外周部は赤外線による輻射現象や対流現象による熱供給であってもかまわない。
【0186】
なお、冷凍チャックテーブルも、ペルチェ素子を利用した冷凍機能を有せず、例えば事前にウェハ内面を冷却し、その冷却された状態が、単純な熱容量の大きい金属製のチャックやポーラスセラミックスのチャックに吸着するだけで、その事前の冷却状態を維持でき、ダイシングテープの外周領域と比較して、十分な温度差を確保できるのであれば、それは実質的には、相対的な意味において冷凍チャックとみなしうる。
【0187】
また、突上げ用リングで、ウェハエリア領域とダイシングテープの外周領域とに熱領域を区分でき、ウェハエリアでは冷却状態を形成し、ダイシングテープ外周部において加熱状態を、同一箇所において形成しているのであればよい。