特許第5871771号(P5871771)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5871771ポジ型感光性樹脂組成物、ポリイミド樹脂パターンの形成方法、及びパターン化されたポリイミド樹脂膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871771
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】ポジ型感光性樹脂組成物、ポリイミド樹脂パターンの形成方法、及びパターン化されたポリイミド樹脂膜
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/039 20060101AFI20160216BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   G03F7/039
   G03F7/004 503Z
【請求項の数】4
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-237012(P2012-237012)
(22)【出願日】2012年10月26日
(65)【公開番号】特開2014-85635(P2014-85635A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年8月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】野田 国宏
(72)【発明者】
【氏名】千坂 博樹
(72)【発明者】
【氏名】塩田 大
【審査官】 石附 直弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−072918(JP,A)
【文献】 特開2007−086763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/004− 7/18
C08L1/00 −101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリイミド樹脂と、(B)光の作用により下記式:
【化1】
(式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、ホスフィノ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基を示す。)
で表されるイミダゾール化合物を発生する化合物と、を含むポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(B)成分が、下記式:
【化2】
(式(2)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、ホスフィノ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基を示す。R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基を示す。R、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基を示す。R、R、R、R、及びR10は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。)
で表される化合物である、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポジ型感光性樹脂組成物の塗布膜を形成する、塗布膜形成工程、
前記塗布膜を、所定のパターンに露光する、露光工程、及び
露光された前記塗布膜の露光部を除去して現像する、現像工程、
を含む、ポリイミド樹脂パターンの形成方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のポジ型感光性樹脂組成物からなる、パターン化されたポリイミド樹脂膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド樹脂を含有するポジ型感光性樹脂組成物、前述のポジ型感光性樹脂組成物を用いるポリイミド樹脂パターンの形成方法、及び前述のポリイミド樹脂パターンの形成方法により形成されるポリイミド樹脂膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、優れた耐熱性、機械的強度、及び絶縁性や、低誘電率等の特性を有するため、種々の素子や、多層配線基板等の電子基板のような電気・電子部品において、絶縁材や保護材として広く使用されている。また、精密な電気・電子部品において、微小な個所を選択的に絶縁又は保護するためには、絶縁膜や保護膜は、加工の容易性の点で、感光性樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィー法により形成されるのが好ましい。
【0003】
従来、フォトリソグラフィー法に適用可能な感光性樹脂組成物では、側鎖に塩基と反応可能な官能基(例えばカルボキシル基やフェノール性水酸基)を有する樹脂や、酸や塩基と反応することによりカルボキシル基やフェノール性水酸基を発生させる反応性基(酸や塩基により脱保護される保護基により保護されたカルボキシル基やフェノール性水酸基)を有する樹脂が使用されている(特許文献1)。
【0004】
ところが、ポリイミド樹脂は、通常、酸や塩基と反応することによりカルボキシル基やフェノール性水酸基を発生させる反応性基を持たない。また、モノマーの組成によっては、ポリイミド樹脂が側鎖にカルボキシル基を有する場合もあるが、そのようなポリイミド樹脂のカルボキシル基の含有量は、感光性樹脂組成物用の樹脂として用いるには不十分である。
【0005】
また、酸や塩基と反応することによりカルボキシル基やフェノール性水酸基を発生させる反応性基を、ポリイミド樹脂に導入することも可能である。しかし、この場合、ポリイミド樹脂の合成に要するコストが著しく高くなる問題がある。このように、一般的なポリイミド樹脂をフォトリソグラフィー法用の感光性樹脂組成物に配合することは困難であり、ポリイミド樹脂を含む樹脂組成物に、フォトリソグラフィー法によりパターン形成可能な感光性を付与することが望まれている。
【0006】
このような課題を解決するために、ポリイミド樹脂(ポリエーテルイミド)と、光酸発生剤とを含む感光性樹脂組成物が提案されている(特許文献2)。特許文献2に記載の感光性樹脂組成物は、露光により、ヒドロキシルアミン、N−メチル−2−ピロリドン、及びイオン交換水からなる現像液に可溶化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−066781号公報
【特許文献2】特開2003−076013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、本発明者らが検討したところ、特許文献2に記載される、ポリイミド樹脂と光酸発生剤とを含む感光性樹脂組成物を用いて形成されたパターンは、耐熱性に劣ることが判明した。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、フォトリソグラフィー法により良好にパターンを形成可能であり、耐熱性に優れるパターンを与える、ポリイミド樹脂を含むポジ型感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は前述のポジ型感光性樹脂組成物を用いる、ポリイミド樹脂パターンの形成方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、前述のポリイミド樹脂パターンの形成方法により形成される、パターン化されたポリイミド樹脂膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、感光性樹脂組成物に、(A)ポリイミド樹脂と、(B)光の作用により特定の構造のイミダゾール化合物を発生する化合物とを加えることにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明の第一の態様は、(A)ポリイミド樹脂と、(B)光の作用により下記式:
【化1】
(式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、ホスフィノ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基を示す。)
で表されるイミダゾール化合物を発生する化合物と、を含むポジ型感光性樹脂組成物である。
【0012】
本発明の第二の態様は、
第一の態様に係るポジ型感光性樹脂組成物の塗布膜を形成する、塗布膜形成工程、
前記塗布膜を、所定のパターンに露光する、露光工程、及び
露光された前記塗布膜の露光部を除去して現像する、現像工程、
を含む、ポリイミド樹脂パターンの形成方法である。
【0013】
本発明の第三の態様は、第二の態様に係る方法により形成される、パターン化されたポリイミド樹脂膜である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フォトリソグラフィー法により良好にパターンを形成可能であり、耐熱性に優れるパターンを与える、ポリイミド樹脂を含むポジ型感光性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば前述のポジ型感光性樹脂組成物を用いる、ポリイミド樹脂パターンの形成方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、前述のポリイミド樹脂パターンの形成方法により形成される、パターン化されたポリイミド樹脂膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪ポジ型感光性樹脂組成物≫
第一の態様に係るポジ型感光性樹脂組成物は、(A)ポリイミド樹脂と、(B)光の作用により、前述の式(1)で表されるイミダゾール化合物を発生する化合物と、を含む。また、ポジ型感光性樹脂組成物は、(C)有機溶媒を含んでいてもよい。以下、第一の態様に係るポジ型感光性樹脂組成物の成分について説明する。
【0016】
<(A)ポリイミド樹脂>
第一の態様に係るポジ型感光性樹脂組成物は、(A)ポリイミド樹脂(以下、(A)成分とも記す。)を含む。ポリイミド樹脂の種類は特に限定されず、従来から、絶縁膜や、保護膜等の用途で使用されているポリイミド樹脂から適宜選択して使用することができる。
【0017】
好適なポリイミド樹脂としては、下式(A−1)で表される構成単位からなるポリイミド樹脂が挙げられる。
【0018】
【化2】
(式(A−1)中、R1Aは4価の有機基であり、R2Aは2価の有機基であり、nは式(A−1)で表される構成単位の繰り返し数である。)
【0019】
式(A−1)中、R1A及びR2Aは、それぞれ、4価の有機基であり、その炭素数は2〜50が好ましく、2〜30がより好ましい。R1A及びR2Aは、それぞれ、脂肪族基であっても、芳香族基であっても、これらの構造を組合せた基であってもよい。R1A及びR2Aは、炭素原子、及び水素原子の他に、ハロゲン原子、酸素原子、及び硫黄原子を含んでいてもよい。R1A及びR2Aが酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を含む場合、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子は、含窒素複素環基、−CONH−、−NH−、−N=N−、−CH=N−、−COO−、−O−、−CO−、−SO−、−SO−、−S−、及び−S−S−から選択される基として、R1A及びR2Aに含まれてもよく、−O−、−CO−、−SO−、−SO−、−S−、及び−S−S−から選択される基として、R1A及びR2Aに含まれるのがより好ましい。
【0020】
上記式(A−1)で表される構成単位からなるポリイミド樹脂の製造方法は特に限定されない。例えば、上記式(A−1)で表される構成単位からなるポリイミド樹脂は、下式(A−2)で表される構成単位からなるポリアミック酸を、加熱や塩基触媒によって閉環させて得られる。
【0021】
【化3】
(式(A−2)中、R1A及びR2Aは式(A−1)と同義であり、nは式(A−2)で表される構成単位の繰り返し数である。)
【0022】
上記式(A−2)で表される構成単位からなるポリアミック酸は、溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとを反応させることにより得られる。ポリアミック酸の合成原料となるテトラカルボン酸二無水物、及びジアミンは、酸無水物基とアミノ基との反応によりポリアミック酸を形成可能なものであれば特に限定されない。
【0023】
ポリアミック酸を合成する際の、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの使用量は特に限定されないが、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、ジアミンを0.50〜1.50モル用いるのが好ましく、0.60〜1.30モル用いるのがより好ましく、0.70〜1.20モル用いるのが特に好ましい。
【0024】
テトラカルボン酸二無水物は、従来からポリアミック酸の合成原料として使用されているテトラカルボン酸二無水物から適宜選択することができる。テトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物であっても、脂肪族テトラカルボン酸二無水物であってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。テトラカルボン酸二無水物は、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0025】
芳香族テトラカルボン酸二無水物の好適な具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、及び3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの中では、価格、入手容易性等から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、及びピロメリット酸二無水物が好ましく、ポジ型感光性樹脂組成物を用いて微細なパターンを形成しやすいことから、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物がより好ましい。
【0026】
〔ジアミン成分〕
ジアミンは、従来からポリアミック酸の合成原料として使用されているジアミンから適宜選択することができる。ジアミンは、芳香族ジアミンであっても、脂肪族ジアミンであってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族ジアミンが好ましい。ジアミンは、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0027】
芳香族ジアミンの好適な具体例としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、及び2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらの中では、価格、入手容易性等から、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。
【0028】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、通常、有機溶媒中で行われる。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に使用される有機溶媒は、テトラカルボン酸及びジアミンを溶解させることができ、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンと反応しないものであれば特に限定されない。
【0029】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いる有機溶媒の例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、及びN,N,N,N−テトラメチル尿素等の含窒素極性溶媒;β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、及びε−カプロラクトン等のラクトン系極性溶媒;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;乳酸エチル、及び乳酸ブチル等の脂肪酸エステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブアセテート、及びエチルセルソルブアセテート等のエーテル類が挙げられる。
【0030】
これらの有機溶媒の中では、生成するポリアミック酸やポリイミド樹脂の溶解性から、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、及びN,N,N,N−テトラメチル尿素等の含窒素極性溶媒が好ましい。これらの溶媒は単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
<(B)光の作用によりイミダゾール化合物を発生する化合物>
第一の態様に係るポジ型感光性樹脂組成物は、(B)光の作用により下記式:
【化4】
(式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、ホスフィノ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基を示す。)
で表されるイミダゾール化合物(以下、(B)成分とも記す。)を発生する化合物を含有する。
【0032】
第一の態様に係るポジ型感光性樹脂組成物は、(B)成分を含むことにより、選択的に露光された際に、露光部において光の作用によりイミダゾール化合物を発生させる。露光により発生するイミダゾール化合物は、(A)成分であるポリイミド樹脂が有するイミド基に含まれるカルボニル基を攻撃し、ポジ型感光性樹脂組成物中に含まれる微量の水分や、空気中の水分によって、イミド基の加水分解を生じさせる。イミド基が加水分解されるとカルボキシル基が生じ、これにより、第一の態様に係るポジ型感光性樹脂組成物は、露光部がアルカリに対して可溶化される。
【0033】
また、(B)成分は、高温にさらされる場合に、上記式(1)で表されるイミダゾール化合物と、イミダゾール化合物に含まれる−NH−基と縮合可能な化合物とに分解される。そして、ポリイミド樹脂は、高温にさらされる場合に、加水分解等により、イミド結合が開裂することがある。しかし、第一の態様に係るポジ型感光性樹脂組成物を用いて形成されるパターンでは、ポリイミド樹脂中のイミド結合が開裂しても、開裂により生じるカルボキシル基と、アミノ基とに、(B)成分に由来する、上記式(1)で表されるイミダゾール化合物と、イミダゾール化合物に含まれる−NH−基と縮合可能な化合物とが速やかに結合するため、ポリイミド樹脂の熱分解が抑制される。
【0034】
、R、及びRにおける有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。この有機基は、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。この有機基は、通常は1価であるが、環状構造を形成する場合等には、2価以上の有機基となり得る。
【0035】
及びRは、それらが結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合をさらに含んでいてもよい。環状構造としては、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基等が挙げられ、縮合環であってもよい。
【0036】
、R、及びRの有機基に含まれる結合は、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、有機基は、酸素原子、窒素原子、珪素原子等のヘテロ原子を含む結合を含んでいてもよい。ヘテロ原子を含む結合の具体例としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−:Rは水素原子又は有機基を示す)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合、アゾ結合等が挙げられる。
【0037】
、R、及びRの有機基が有してもよいヘテロ原子を含む結合としては、イミダゾール化合物の耐熱性の観点から、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−:Rは水素原子又は1価の有機基を示す)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合が好ましい。
【0038】
、R、及びRの有機基が炭化水素基以外の置換基である場合、R、R、及びRは本発明の効果が損なわれない限り特に限定されない。R、R、及びRの具体例としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、アルキルエーテル基、アルケニルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アルケニルチオエーテル基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素原子は、炭化水素基によって置換されていてもよい。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
【0039】
式(1)で表されるイミダゾール化合物が、炭化水素基以外の置換基を有する場合、R、R、及びRの有機基中が炭化水素基以外の置換基場合、R、R、及びRとしては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、アルキルエーテル基、アルケニルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アルケニルチオエーテル基、アリールエーテル基、及びアリールチオエーテル基が好ましい。
【0040】
、R、及びRとしては、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、及びハロゲン原子が好ましく、水素原子がより好ましい。R、R、及びRがいずれも水素原子であるイミダゾール化合物は、立体的な障害の少ない単純な構造であるため、(A)ポリイミド樹脂が有するイミド基に含まれるカルボニル基の攻撃が容易である。
【0041】
(B)成分は、光の作用により上記式(1)で表されるイミダゾール化合物を発生させることができる化合物であれば特に限定されない。従来から感光性組成物に配合されている、光の作用によりアミンを発生する化合物について、露光時に発生するアミンに由来する骨格を、上記式(1)で表されるイミダゾール化合物に由来する骨格に置換することにより、(B)成分として使用される化合物が得られる。
【0042】
好適な(B)成分としては、下記式(2):
【化5】
(式(2)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、ホスフィノ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基を示す。R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基を示す。R、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基を示す。R、R、R、R、及びR10は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。)
で表される化合物が挙げられる。
【0043】
式(2)において、R、R、及びRは、式(1)について説明したものと同様である。
【0044】
式(2)において、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基を示す。
【0045】
及びRにおける有機基としては、R、R、及びRについて例示したものが挙げられる。この有機基は、R、R、及びRの場合と同様に、該有機基中にヘテロ原子を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0046】
以上の中でも、R及びRとしては、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルケニル基、炭素数7〜16のアリールオキシアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基、シアノ基を有する炭素数2〜11のアルキル基、水酸基を有する炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜11のアミド基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数2〜11のエステル基(−COOR、−OCOR:Rは炭化水素基を示す)、炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、メチルチオ基であることが好ましい。より好ましくは、R及びRの両方が水素原子であるか、又はRがメチル基であり、Rが水素原子である。
【0047】
式(2)において、R、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基を示す。
【0048】
、R、R、R、及びR10における有機基としては、R、R、及びRにおいて例示したものが挙げられる。この有機基は、R及びRの場合と同様に、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0049】
、R、R、R、及びR10は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。環状構造としては、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基等が挙げられ、縮合環であってもよい。例えば、R、R、R、R、及びR10は、それらの2つ以上が結合して、R、R、R、R、及びR10が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成してもよい。
【0050】
以上の中でも、R、R、R、R、及びR10としては、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルケニル基、炭素数7〜16のアリールオキシアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基、シアノ基を有する炭素数2〜11のアルキル基、水酸基を有する炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜11のアミド基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数2〜11のエステル基、炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、メチルチオ基、ニトロ基であることが好ましい。
【0051】
また、R、R、R、R、及びR10としては、それらの2つ以上が結合して、R、R、R、R、及びR10が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成している場合も、吸収波長が長波長化する点から好ましい。
【0052】
上記式(2)で表される化合物の中では、下記式(3):
【化6】
(式(3)中、R、R、及びRは、式(1)及び(2)と同義である。R〜Rは式(2)と同義である。R11は、水素原子又は有機基を示す。R及びRが水酸基となることはない。R、R、R、及びRは、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。)
で表される化合物が好ましい。
【0053】
式(3)で表される化合物は、置換基−O−R11を有するため、有機溶媒に対する溶解性に優れる。
【0054】
式(3)において、R11は、水素原子又は有機基である。R11が有機基である場合、有機基としては、R、R、及びRにおいて例示したものが挙げられる。この有機基は、該有機基中にヘテロ原子を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。R11としては、水素原子、又は炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0055】
(B)成分として特に好適な化合物の具体例を以下に示す。
【0056】
【化7】
【0057】
ポジ型感光性樹脂組成物における(B)成分の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。ポジ型感光性樹脂組成物における(B)成分の含有量は、(A)成分100質量に対して1〜50質量部が好ましく、1〜25質量部がより好ましい。
【0058】
<(C)有機溶媒>
ポジ型感光性樹脂組成物は、塗布性の点で(C)有機溶媒(以下、(C)成分とも記す。)を含有するのが好ましい。ポジ型感光性樹脂組成物が(C)成分を含む場合、ポジ型感光性樹脂組成物は、固体を含むペーストであってもよく、溶液であってもよく、溶液であるのが好ましい。有機溶媒の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で、特に限定されない。好適な有機溶媒の例は、前述のテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとの反応に使用される有機溶媒の例と同様である。(C)有機溶媒は、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、及びジプロピレングリコール等のアルコール系溶媒を含んでいてもよい。(C)有機溶媒が、アルコール系溶媒を含む場合、耐熱性に優れるパターンを形成しやすい。
【0059】
ポジ型感光性樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。ポジ型感光性樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、ポジ型感光性樹脂組成物中の固形分含有量に応じて適宜調整される。ポジ型感光性樹脂組成物が(C)成分を含む場合のポジ型感光性樹脂組成物の固形分含有量は、5〜50質量%量が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。
【0060】
<(D)その他の成分>
ポジ型感光性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、上記の(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の以外の成分である、(D)その他の成分を含んでいてもよい。(D)その他の成分の例としては、界面活性剤、可塑剤、粘度調整剤、消泡剤、及び着色剤等が挙げられる。
【0061】
また、ポジ型感光性樹脂組成物は、露光された時点でのポジ型感光性樹脂組成物のpHを適度な範囲に調整する目的で、(B)成分以外の、光の作用により塩基性化合物を発生させることができる化合物(光塩基発生剤)や、光の作用により酸を発生させることができる化合物(光酸発生剤)を含んでいてもよい。(A)成分であるポリイミド樹脂の合成に使用されたテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとの量比によっては、ポジ型感光性樹脂組成物が、酸性であったり、必要以上の塩基性であったりする。また、露光時にポリイミド樹脂中のイミド結合の開裂を良好に進行させるには、露光時のポジ型感光性樹脂組成物がやや塩基性雰囲気であるのが好ましい。この点、ポジ型感光性樹脂組成物に、光塩基発生剤や、光酸発生剤を加えると、露光時のポジ型感光性樹脂組成物の雰囲気を、やや塩基性に調整することができる。
【0062】
(B)成分以外の、光の作用により塩基性化合物を発生させることができる化合物としては、従来から感光性樹脂組成物において光塩基発生剤として使用されている種々の化合物を使用することができる。(B)成分以外の、光の作用により塩基性化合物を発生させることができる化合物の中では、下記式(4)で表される化合物が好ましい。
【0063】
【化8】
【0064】
上記式(4)中、R1d及びR2dは、それぞれ独立に水素原子又は有機基を示すが、R1d及びR2dの少なくとも一方は有機基を示す。
【0065】
1d及びR2dにおける有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。この有機基は、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。この有機基は、通常は1価であるが、環状構造を形成する場合等には、2価以上の有機基となり得る。
【0066】
1d及びR2dは、それらが結合して非芳香族複素環を形成していてもよい。R1d及びR2dが結合して形成される非芳香族複素環の例としては、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、及びチオモルホリンが挙げられる。
【0067】
1d及びR2dが有機基である場合に有機基に含まれる結合は、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されない。有機基は、酸素原子、窒素原子、珪素原子等のヘテロ原子を含む結合を含んでいてもよい。ヘテロ原子を含む結合の具体例としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−:Rは水素原子又は有機基を示す)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合、アゾ結合等が挙げられる。
【0068】
耐熱性の観点から、R1d及びR2dの有機基中に含まれるヘテロ原子を含む結合としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−:Rは水素原子又は1価の有機基を示す)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合が好ましい。
【0069】
1d及びR2dが有機基である場合に、有機基が有していてもよい炭化水素基以外の置換基は、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されない。有機基が有していてもよい炭化水素基以外の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ヒドロキシイミノ基、アルキルエーテル基、アルケニルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アルケニルチオエーテル基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アミノ基(−NH、−NHR、−NRR’:R及びR’はそれぞれ独立に炭化水素基を示す)等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素原子は、炭化水素基によって置換されていてもよい。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
【0070】
1d及びR2dが有機基である場合に、有機基が有していてもよい炭化水素基以外の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ヒドロキシイミノ基、アルキルエーテル基、アルケニルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アルケニルチオエーテル基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基が好ましい。
【0071】
以上の中でも、R1d及びR2dとしては、少なくとも一方が炭素数1〜12のアルキル基若しくは炭素数1〜12のアリール基であるか、互いに結合して炭素数2〜20のヘテロシクロアルキル基を形成するものであることが好ましい。ヘテロシクロアルキル基としては、ピペリジノ基、モルホリノ基等が挙げられる。
【0072】
上記式(4)中、R3dは、単結合又は有機基を示す。
【0073】
3dにおける有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基等から1個の水素原子を除いた基が挙げられる。この有機基は、該有機基中に置換基を含んでいてもよい。置換基としては、R1d及びR2dにおいて例示したものが挙げられる。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよい。
【0074】
以上の中でも、R3dとしては、単結合、又は炭素数1〜12のアルキル基若しくは炭素数1〜12のアリール基から1個の水素原子を除いた基であることが好ましい。
【0075】
上記式(4)中、R4d及びR5dは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基を示す。
【0076】
4d及びR5dにおける有機基としては、R1d及びR2dにおいて例示したものが挙げられる。この有機基は、R1d及びR2dの場合と同様に、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0077】
以上の中でも、R4d及びR5dとしては、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルケニル基、炭素数7〜16のアリールオキシアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基、シアノ基を有する炭素数2〜11のアルキル基、水酸基を有する炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜11のアミド基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数2〜11のエステル基(−COOR、−OCOR:Rは炭化水素基を示す)、炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、メチルチオ基であることが好ましい。より好ましくは、R4d及びR5dの両方が水素原子であるか、又はR4dがメチル基であり、R5dが水素原子である。
【0078】
上記式(4)中、R6d、R7d、R8d、及びR9dは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基を示す。
6d、R7d、R8d、及びR9dにおける有機基としては、R1d及びR2dにおいて例示したものが挙げられる。この有機基は、R1d及びR2dの場合と同様に、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0079】
なお、上記式(4)中、R6d及びR7dが水酸基となることはない。
【0080】
6d、R7d、R8d、及びR9dは、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。環状構造としては、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基等が挙げられ、縮合環であってもよい。例えば、R6d、R7d、R8d、及びR9dは、それらの2つ以上が結合して、R6d、R7d、R8d、及びR9dが結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成してもよい。
【0081】
以上の中でも、R6d、R7d、R8d、及びR9dとしては、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルケニル基、炭素数7〜16のアリールオキシアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基、シアノ基を有する炭素数2〜11のアルキル基、水酸基を有する炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜11のアミド基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数2〜11のエステル基、炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、メチルチオ基、ニトロ基であることが好ましい。
【0082】
また、R6d、R7d、R8d、及びR9dとしては、それらの2つ以上が結合して、R6d、R7d、R8d、及びR9dが結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成していてもよい。
【0083】
より好ましくは、R6d、R7d、R8d、及びR9dの全てが水素原子であるか、又はR、R、R、及びRのいずれか1つがニトロ基であり、残り3つが水素原子である。
【0084】
上記式(4)中、R10dは、水素原子又は有機基を示す。
【0085】
10dにおける有機基としては、R1d及びR2dにおいて例示したものが挙げられる。この有機基は、R1d及びR2dの場合と同様に、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0086】
上記式(4)で表される化合物は、ベンゼン環のパラ位に−OR10d基を有するため、溶媒への溶解性が良好である。
【0087】
以上の中でも、R10dとしては、水素原子、又は炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0088】
上記式(4)で表される化合物のうち、特に好ましい具体例としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0089】
【化9】
【0090】
【化10】
【0091】
【化11】
【0092】
また、下記式(5)で表される化合物も、(B)成分以外の、光の作用により塩基性化合物を発生させることができる化合物として好ましい。
【0093】
【化12】
【0094】
上記式(5)中、R11dは、炭素数1〜10のアルキル基、又は置換基を有してもよいフェニル基を示す。pは、0又は1である。R12dは、置換基を有してもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいカルバゾリル基を示す。R13dは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。
【0095】
11dが、炭素数1〜10のアルキル基である場合、アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。この場合、アルキル基の炭素数は、1〜8が好ましく、1〜5がより好ましい。
【0096】
11dが、置換基を有してもよいフェニル基である場合、置換基の種類は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。フェニル基が有していてもよい置換基の好適な例としては、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、アミノ基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン−1−イル基、及びピペラジン−1−イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。R11dが、置換基を有してもよいフェニル基であり、フェニル基が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0097】
フェニル基が有する置換基がアルキル基である場合、その炭素数は、1〜20が好ましく、1〜6がより好ましい。また、アルキル基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。フェニル基が有する置換基がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(−O−)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0098】
フェニル基が有する置換基がアルコキシ基である場合、その炭素数は、1〜20が好ましく、1〜6がより好ましい。また、アルコキシ基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。フェニル基が有する置換基がアルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec−オクチオキシル基、tert−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、及びイソデシルオキシ基等が挙げられる。また、アルコキシ基は炭素鎖中にエーテル結合(−O−)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルコキシ基の例としては、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、2−メトキシ−1−メチルエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、プロピルオキシエトキシエトキシ基、及びメトキシプロピルオキシ基等が挙げられる。
【0099】
フェニル基が有する置換基がシクロアルキル基、又はシクロアルコキシ基である場合、その炭素数は、3〜10が好ましく、3〜6がより好ましい。フェニル基が有する置換基がシクロアルキル基である場合の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。フェニル基が有する置換基がシクロアルコキシ基である場合の具体例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、及びシクロオクチルオキシ基等が挙げられる。
【0100】
フェニル基が有する置換基が飽和脂肪族アシル基、又は飽和脂肪族アシルオキシ基である場合、その炭素数は、2〜20が好ましく、2〜7がより好ましい。フェニル基が有する置換基が飽和脂肪族アシル基である場合の具体例としては、アセチル基、プロパノイル基、n−ブタノイル基、2−メチルプロパノイル基、n−ペンタノイル基、2,2−ジメチルプロパノイル基、n−ヘキサノイル基、n−ヘプタノイル基、n−オクタノイル基、n−ノナノイル基、n−デカノイル基、n−ウンデカノイル基、n−ドデカノイル基、n−トリデカノイル基、n−テトラデカノイル基、n−ペンタデカノイル基、及びn−ヘキサデカノイル基等が挙げられる。フェニル基が有する置換基が飽和脂肪族アシルオキシ基である場合の具体例としては、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、n−ブタノイルオキシ基、2−メチルプロパノイルオキシ基、n−ペンタノイルオキシ基、2,2−ジメチルプロパノイルオキシ基、n−ヘキサノイルオキシ基、n−ヘプタノイルオキシ基、n−オクタノイルオキシ基、n−ノナノイルオキシ基、n−デカノイルオキシ基、n−ウンデカノイルオキシ基、n−ドデカノイルオキシ基、n−トリデカノイルオキシ基、n−テトラデカノイルオキシ基、n−ペンタデカノイルオキシ基、及びn−ヘキサデカノイルオキシ基等が挙げられる。
【0101】
フェニル基が有する置換基がアルコキシカルボニル基である場合、その炭素数は、2〜20が好ましく、2〜7がより好ましい。フェニル基が有する置換基がアルコキシカルボニル基である場合の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec−ブチルオキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、sec−ペンチルオキシカルボニル基、tert−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、イソオクチルオキシカルボニル基、sec−オクチオキシルカルボニル基、tert−オクチルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基、イソノニルオキシカルボニル基、n−デシルオキシカルボニル基、及びイソデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0102】
フェニル基が有する置換基がフェニルアルキル基である場合、その炭素数は、7〜20が好ましく、7〜10がより好ましい。またフェニル基が有する置換基がナフチルアルキル基である場合、その炭素数は、11〜20が好ましく、11〜14がより好ましい。フェニル基が有する置換基がフェニルアルキル基である場合の具体例としては、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、及び4−フェニルブチル基が挙げられる。フェニル基が有する置換基がナフチルアルキル基である場合の具体例としては、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、2−(α−ナフチル)エチル基、及び2−(β−ナフチル)エチル基が挙げられる。フェニル基が有する置換基がフェニルアルキル基、又はナフチルアルキル基である場合、置換基は、フェニル基、又はナフチル基上にさらに置換基を有していてもよい。
【0103】
フェニル基が有する置換基がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、1以上のN、S、Oを含む5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、環数3までのものとする。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、及びキノキサリン等が挙げられる。フェニル基が有する置換基がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基はさらに置換基を有していてもよい。
【0104】
フェニル基が有する置換基が1、又は2の有機基で置換されたアミノ基である場合、有機基の好適な例は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜20の飽和脂肪族アシル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよい炭素数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよい炭素数11〜20のナフチルアルキル基、及びヘテロシクリル基等が挙げられる。これらの好適な有機基の具体例としては、フェニル基が有する置換基について上記したものと同様のものが挙げられる。1、又は2の有機基で置換されたアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、n−ヘプチルアミノ基、n−オクチルアミノ基、n−ノニルアミノ基、n−デシルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、n−ブタノイルアミノ基、n−ペンタノイルアミノ基、n−ヘキサノイルアミノ基、n−ヘプタノイルアミノ基、n−オクタノイルアミノ基、n−デカノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、α−ナフトイルアミノ基、及びβ−ナフトイルアミノ基等が挙げられる。
【0105】
フェニル基が有する置換基に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合の置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜7の飽和脂肪族アシル基、炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。フェニル基が有する置換基に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。フェニル基が有する置換基に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0106】
これらの置換基の中では、アルキル基、又はアルコキシアルキル基が好ましい。フェニル基が有する置換基がアルキル基である場合、その炭素数は、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましく、1が最も好ましい。フェニル基が有する置換基がアルコキシアルキル基である場合、−R14d−O−R15dで表される基が好ましい。R14dは、炭素数1〜10の直鎖でも分岐鎖であってもよいアルキレン基である。R15dは、炭素数1〜10の直鎖でも分岐鎖であってもよいアルキル基である。R14dの炭素数は、1〜8が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が特に好ましい。R15dの炭素数は、1〜8が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が特に好ましく、1が最も好ましい。
【0107】
11dが、置換基を有してもよいフェニル基である場合、置換基の数と、置換基の結合位置とは、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。R11dが、置換基を有してもよいフェニル基である場合、塩基の発生効率に優れる点で、置換基を有してもよいフェニル基は、置換基を有していてもよいo−トリル基であるのが好ましい。
【0108】
12dは、置換基を有してもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいカルバゾリル基である。また、R12dが置換基を有してもよいカルバゾリル基である場合、カルバゾリル基上の窒素原子は、炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよい。
【0109】
12dにおいて、フェニル基、又はカルバゾリル基が有する置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。フェニル基、又はカルバゾリル基が、炭素原子上に有してもよい好適な置換基の例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルコキシ基、炭素数2〜20の飽和脂肪族アシル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20の飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいフェニルチオ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数11〜20のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、アミノ基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン−1−イル基、及びピペラジン−1−イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。
【0110】
12dがカルバゾリル基である場合、カルバゾリル基が窒素原子上に有してもよい好適な置換基の例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜20の飽和脂肪族アシル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数11〜20のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基等が挙げられる。これらの置換基の中では、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0111】
フェニル基、又はカルバゾリル基が有してもよい置換基の具体例について、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び1、又は2の有機基で置換されたアミノ基に関しては、R11dが、置換基を有してもよいフェニル基である場合の、フェニル基が有する置換基の例と同様である。
【0112】
12dにおいて、フェニル基、又はカルバゾリル基が有する置換基に含まれるフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合の置換基の例としては、炭素数1〜6のアルキル基;炭素数1〜6のアルコキシ基;炭素数2〜7の飽和脂肪族アシル基;炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;炭素数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基;フェニル基;ナフチル基;ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素数1〜6のアルキル基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;炭素数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基;炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;モルホリン−1−イル基;ピペラジン−1−イル基;ハロゲン;ニトロ基;シアノ基が挙げられる。フェニル基、又はカルバゾリル基が有する置換基に含まれるフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0113】
式(5)で表される化合物の塩基発生効率の点から、R12dとしては、下式(6):
【化13】
で表される基、又は下式(7):
【化14】
で表される基が好ましい。
【0114】
式(6)中、R14dは、1価の有機基、アミノ基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基からなる群より選択される基であり、AはS又はOであり、nは0〜4の整数である。式(7)中、R15d及びR16dは、それぞれ1価の有機基であり、qは0又は1である。
【0115】
一般式(6)におけるR14dが有機基である場合、R14dは、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。一般式(6)においてR14dが有機基である場合の好適な例としては、炭素数1〜6のアルキル基;炭素数1〜6のアルコキシ基;炭素数2〜7の飽和脂肪族アシル基;炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;炭素数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基;フェニル基;ナフチル基;ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素数1〜6のアルキル基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;炭素数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基;炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;モルホリン−1−イル基;ピペラジン−1−イル基;ハロゲン;ニトロ基;シアノ基が挙げられる。
【0116】
14dの中では、ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素数1〜6のアルキル基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;ニトロ基が好ましく、ベンゾイル基;ナフトイル基;2−メチルフェニルカルボニル基;4−(ピペラジン−1−イル)フェニルカルボニル基;4−(フェニル)フェニルカルボニル基がより好ましい。
【0117】
また、式(6)において、nは、0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0、又は1であるのが特に好ましい。nが1である場合、R14dの結合する位置は、R14dが結合するフェニル基が硫黄原子と結合する結合手に対して、パラ位であるのが好ましい。
【0118】
一般式(7)におけるR15dは、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。R15dの好適な例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜20の飽和脂肪族アシル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数11〜20のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基等が挙げられる。
【0119】
15dの中では、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0120】
一般式(7)におけるR16dは、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から選択できる。R16dとして好適な基の具体例としては、炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリル基が挙げられる。R16dとして、これらの基の中では置換基を有してもよいフェニル基がより好ましく、2−メチルフェニル基が特に好ましい。
【0121】
14d、R15d、又はR16dに含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合の置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜7の飽和脂肪族アシル基、炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。R、R、又はRに含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基がさらに置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。R14d、R15d、又はR16dに含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0122】
13dは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基である。置換基を有していてもよいフェニル基である場合、フェニル基が有していてもよい置換基は、R11dが置換基を有していてもよいフェニル基である場合と同様である。R13dとしては、メチル基、エチル基、又はフェニル基が好ましく、メチル基、又はフェニル基がより好ましい。
【0123】
上記式(5)で表されるオキシムエステル化合物は、pが0である場合、例えば、以下に説明する方法により合成できる。まず、R12d−CO−R11dで表されるケトン化合物を、ヒドロキシルアミンによりオキシム化して、R12d−(C=N−OH)−R11dで表されるオキシム化合物を得る。次いで、得られたオキシム化合物を、R13d−CO−Hal(Halはハロゲンを示す)で表される酸ハロゲン化物や、(R13dCO)Oで表される酸無水物によりアシルして、pが0である上記式(5)で表されるオキシムエステル化合物が得られる。
【0124】
また、上記式(5)で表されるオキシムエステル化合物は、pが1である場合、例えば、以下に説明する方法により合成できる。まず、R12d−CO−CH−R11dで表されるケトン化合物を、塩酸の存在下に亜硝酸エステルと反応させ、R12d−CO−(C=N−OH)−R11dで表されるオキシム化合物を得る。次いで、得られたオキシム化合物を、R13d−CO−Hal(Halはハロゲンを示す)で表される酸ハロゲン化物や、(R13dCO)Oで表される酸無水物によりアシルして、pが1である上記式(5)で表されるオキシムエステル化合物が得られる。
【0125】
以上説明した、上記式(5)で表されるオキシムエステル化合物の中でも好適なものとしては、以下の化合物が挙げられる。
【化15】
【0126】
光酸発生剤としては、特に限定されず種々のものを使用できる。好適な光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩、ジアゾメタン誘導体、グリオキシム誘導体、ビススルホン誘導体、β−ケトスルホン誘導体、ジスルホン誘導体、ニトロベンジルスルホネート誘導体、スルホン酸エステル誘導体、及びN−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体等の、公知の酸発生剤が挙げられる。
【0127】
光塩基発生剤及び光酸発生剤の使用量は、所望するパターンを形成可能なポジ型感光性樹脂組成物が得られる限り特に限定されない。光塩基発生剤及び光酸発生剤の好適な使用量は、ポジ型感光性樹脂組成物に含まれるポリイミド樹脂が有する酸性基又は塩基性基の量に応じて適宜調整される。
【0128】
以上説明した各成分を所定の比率で混合することにより、第一の態様に係るポジ型感光性樹脂組成物が得られる。
【0129】
≪ポリイミド樹脂パターンの形成方法≫
第二の態様に係るポリイミド樹脂パターンの形成方法は、
第一の態様に係るポジ型感光性樹脂組成物の塗布膜を形成する、塗布膜形成工程、
前記塗布膜を、所定のパターンに露光する、露光工程、及び
露光された前記塗布膜の露光部を除去して現像する、現像工程、
を含む。以下、各工程について説明する。
【0130】
<塗布膜形成工程>
塗布膜形成工程では、被塗布体の表面に第一の態様に係るポジ型感光性樹脂組成物を塗布して塗布膜を形成する。塗布方法としては、例えば、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、カーテンコート法等が挙げられる。塗布膜の厚さは、特に限定されない。典型的には、塗布膜の厚さは、2〜100μmが好ましく、3〜50μmがより好ましい。塗布膜の厚さは、塗布方法やポジ型感光性樹脂組成物の固形分濃度や粘度を調節することにより、適宜制御することができる。
【0131】
ポジ型感光性樹脂組成物を被塗布体に塗布した後、塗布膜中の溶媒を除去する目的で、塗布膜を加熱してもよい。塗布膜の加熱温度や加熱時間は、ポジ型感光性樹脂組成物に含まれる成分に熱劣化や熱分解が生じない限り特に限定されない。塗布膜中の溶媒の沸点が高い場合、減圧下に塗布膜を加熱してもよい。
【0132】
<露光工程>
露光工程では、塗布膜形成工程で得られる塗布膜を、所定のパターンに選択的に露光する。選択的露光は、通常、所定のパターンのマスクを用いて行われる。露光に用いられる放射線としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、g線ステッパー、i線ステッパー等から放射される紫外線、電子線、レーザー光線等が挙げられる。露光量は、使用する光源や塗布膜の膜厚等によっても異なるが、通常、1〜1000mJ/cm、好ましくは10〜500mJ/cmである。
【0133】
<現像工程>
現像工程では、露光工程において所定のパターンに選択的に露光された塗布膜から露光部を除去して、ポリイミド樹脂パターンを現像する。露光部は、通常、アルカリ現像液に溶解させて除去される。現像方法としては、例えば、シャワー現像法、スプレー現像法、浸漬現像法、パドル現像法等が挙げられる。アルカリ現像液としては、無機アルカリ化合物、及び有機アルカリ化合物から選択される1種以上のアルカリ化合物を含有する水溶液を用いることができる。現像液中のアルカリ化合物の濃度は、露光後の塗布膜を良好に現像できる限り特に限定されない。典型的には、現像液中のアルカリ化合物の濃度は、1〜10質量%が好ましい。
【0134】
無機アルカリ化合物の例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、及びアンモニア等が挙げられる。有機アルカリ化合物の例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、エタノールアミン、及びトリエタノールアミン等が挙げられる。
【0135】
さらに、現像液には、必要に応じて、メタノール、エタノール、プロパノール、又はエチレングリコール等の水溶性有機溶媒、界面活性剤、保存安定剤、及び樹脂の溶解抑止剤等を適量添加することができる。
【0136】
現像工程後、必要に応じて、現像されたポリイミド樹脂膜を、水等によりリンスし、次いで、圧縮空気や圧縮窒素で乾燥することにより、ポリイミド樹脂パターンが得られる。
【実施例】
【0137】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0138】
〔調製例1〕
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物14.71g(0.05mol)と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル10.01g(0.05mol)と、N−メチル−2−ピロリドン181.30gとを、還流冷却器を備えるガラス製の反応容器に仕込んだ。反応容器の内容物を、1時間かけて室温から160℃まで昇温し、重合とイミド化とを進行させて前重合液を得た。前重合液に含まれるポリイミドは、イミド化率90%以上であり、対数粘度1.02であった。また、前重合液の140℃での回転粘度は1.1Pa・sであった。
得られた前重合液を11g(約8ml)を、容器内面がガラスでコートされたオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内の気相を窒素に置換した。次いで、オートクレーブを密閉した後、前重合液を180℃に昇温して後重合を行い、ポリイミド樹脂溶液1(PI−1)を得た。
【0139】
〔調製例2〕
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物14.71g(0.05mol)をピロメリット酸二無水物10.91g(0.05mol)に変えることと、N−メチル−2−ピロリドンの使用量を181.30gから、153.43gに変えることの他は、調製例1と同様にして、ポリイミド樹脂溶液2(PI−2)を得た。
【0140】
〔実施例1〜4、及び比較例1〜5〕
実施例及び比較例では、光の作用により塩基性化合物を発生する化合物(光塩基発生剤、PBG)又は光の作用により酸を発生する化合物(光酸発生剤、PAG)として、以下のPBG1〜PBG4と、PAG1とを用いた。
【0141】
【化16】
【0142】
〔実施例1〜4、及び比較例1〜5〕
表1に記載の種類のポリイミド樹脂溶液100gに、表1に記載の種類の光塩基発生剤又は光酸発生剤3gを溶解させた。得られた溶液を、開口径5μmのフィルターを用いてろ過して、感光性樹脂組成物を得た。なお、実施例3では、光塩基発生剤として、3gのPBG1と、0.5gのPBG5とを用いた。また、実施例4では、ポリイミド樹脂溶液にさらにポリエチレングリコール0.5gを加えた。得られた感光性樹脂組成物を用いて、パターン形成に関する評価と、パターンの耐熱性に関する評価を行った。
【0143】
<パターン形成評価>
感光性樹脂組成物をシリコンウェハー上にスピンコートし、100℃で300秒間プリベークし、膜厚5μmの塗布膜を形成した。ラインアンドスペースパターンのマスクを用いて、超高圧水銀灯(200mW/cm)により、100秒間露光した。露光された塗布膜を、現像液(TMAH水溶液、濃度2.38質量%)に浸漬して現像を行った。次いで、現像された塗布膜を、水でリンスした後に乾燥した。現像後の塗布膜を観察し、以下の基準に従い、感光性樹脂組成物のパターン形成性能を評価した。
◎:幅20μm以下のラインを形成可能であった。
○:幅20μm超300μm以下のラインを形成可能であった。
×:幅300μm以下のラインを形成できないか、露光後の塗布膜が現像液に溶解しない。
【0144】
<パターン耐熱性評価>
パターン形成評価において、現像処理を施されたポリイミド樹脂膜を削り取ったものを試料として用いた。ポリイミド樹脂の試料5μgを、示差熱/熱重量測定装置(TG/DTA−6200、セイコーインスツル株式会社製)により測定し、重量減少曲線を得た。得られた重量減少曲線から、5%重量減少温度を求めた。5%重量減少温度が300℃未満である場合を×と評価し、300℃以上350℃未満である場合を○と評価し、350℃以上である場合を◎と評価した。
【0145】
【表1】
【0146】
実施例1〜4によれば、ポリイミド樹脂と、光の作用によりイミダゾール化合物を発生する化合物とを含む樹脂組成物は、露光後に、露光部がアルカリに対して可溶化するため、良好にパターンを形成できることが分かる。
【0147】
他方、比較例1〜5によれば、ポリイミド樹脂とともに、イミダゾール化合物以外の塩基性化合物を光の作用により発生する化合物や、光酸発生剤を含む感光性樹脂組成物では、良好にパターンを形成できないか、パターンを形成できても、耐熱性に劣るパターンしか形成できないことが分かる。