【文献】
J. Allergy Clin. Immunol.,1994年,vol.94, no.2,pp.173-181
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アラインメントにおいて野生型Phl p 5.0109のプロリン211に対応するプロリンが欠失されず、代わりに別のアミノ酸に置き換えられていることを特徴とする、請求項1に記載の低アレルギー性変異体。
アラインメントにおいて野生型Phl p 5.0109のアミノ酸配列における146および155位のプロリンに対応するプロリンが、突然変異していないことを特徴とする、請求項1または2に記載の低アレルギー性変異体。
さらに、アラインメントにおいて野生型Phl p 5.0109のアミノ酸配列における61位のリシンおよび205位のグルタミン酸に対応するアミノ酸が、単独または組み合わせで突然変異した、請求項1〜3のいずれか一項に記載の低アレルギー性変異体。
グループ5アレルゲンが、Phl p 5、Lol p 5、Poa p 5、Hol l 5、Dac g 5、Pha a 5、Ant o 5、Fes p 5、Hor v 5、Sec c 5およびTri a 5からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の低アレルギー性変異体。
請求項10に記載の非ヒト宿主生物の培養および培養物からの対応するアレルゲン変異体の単離による、請求項1〜7のいずれか一項に記載の低アレルギー性変異体を調製する方法。
少なくとも1種の、請求項1〜7のいずれか一項に記載の低アレルギー性変異体の、その誘発にイネ科のグループ5アレルゲンが原因的に関与する1型アレルギーの、予防および/または治療的処置のための薬剤の調製のための使用。
少なくとも1種の請求項1〜7のいずれか一項に記載の低アレルギー性変異体、少なくとも1種の請求項8に記載のDNA分子、および/または少なくとも1種の請求項9に記載の組み換え発現ベクター、および任意にさらなる活性化合物および/または助剤を含む、1型アレルギーの予防および/または治療的処置のための医薬製剤。
【背景技術】
【0003】
1型アレルギーは世界的に重要である。先進工業国の人口の最大20%が、アレルギー性鼻炎、結膜炎または気管支喘息などの病状を患っている。
これらのアレルギーは、種々の源、例えば樹木や草(花粉)、真菌(胞子)、ダニ(排泄物)、ネコまたはイヌなどにより引き起こされる。アレルゲン源は空気中に直接放出されるか(花粉、胞子)、またはディーゼルすす粒子(花粉)もしくはハウスダスト(ダニ排泄物、皮膚粒子、毛髪)に結合して空気中に到達する。アレルギー誘発物質は空中に存在するため、空気アレルゲンなる用語も用いられる。
【0004】
1型アレルギー誘発物質は、タンパク質、糖タンパク質またはポリペプチドである。粘膜を介して取り込まれると、これらのアレルゲンは、感作された人の肥満細胞の表面に結合しているIgE分子と反応する。これらのIgE分子がアレルゲンによって互いに架橋されると、エフェクター細胞によるメディエーター(例えばヒスタミン、プロスタグランジン)およびサイトカインの分泌が起こり、それに対応したアレルギー症状が生じる。
1型アレルギー患者の最大40%は、イネ科の花粉抽出物に特定のIgE反応性を示す(Burney et al., 1997, J. Allergy Clin. Immunol. 99:314-322;D’Amato et al., 1998, Allergy 53: 567-578;Freidhoff et al., 1986, J. Allergy Clin Immunology, 78, 1190-2002)。イネ科(Poaceae)は10000種以上を含んでおり、これまでにその20種を超える種がアレルギー症状を誘発することが知られている(Andersson & Lidholm, 2003, Int. Arch. Allergy Immunol. 130:87-107;Esch, 2008, Allergens and Allergen Immunotherapy, Clinical Allergy and Immunology Series, 107-126)。
【0005】
アレルギー誘発性のイネ科の多くは、イチゴツナギ(Pooideae)亜科に属する。野生型として存在する草種、例えばHolcus lanatus(シラゲカヤ(velvet grass))、Phalaris aquatica(カナリーグラス(canary grass))、Anthoxanthum odoratum(ハルガヤ(sweet vernal grass))、Dactylis glomerata(カモガヤ(orchard grass))、Festuca pratensis (メドウフェスク(meadow fescue))、Poa pratensis(ケンタッキーブルーグラス(Kentucky blue grass))またはLolium perenne(ライグラス(rye grass))などに加えて、栽培用穀類、例えばTriticum aestivum(コムギ)、Secale cereale(ライ麦)およびHordeum vulgare(オオムギ)なども、この亜科に属することが知られている。
イチゴツナギ種でアレルゲンに関して最も調査されてきたのはオオアワガエリ(Phelum pratense)であり、これは野草として世界中に広がっており、牧草および耐寒性の飼料として商業的な役割も果たしている。
【0006】
アレルギー患者のIgE抗体と反応する個々のアレルゲン分子の、人口における相対的な頻度に依存して、主要アレルゲンと副次的アレルゲンが分類される。
オオアワガエリの6種のアレルゲンは、主要アレルゲンとみなされる:Phl p 1(Petersen et al., 1993, J. Allergy Clin. Immunol. 92: 789-796)、Phl p 5(Matthiesen and Loewenstein, 1991, Clin. Exp. Allergy 21: 297-307;Petersen et al., 1992, Int. Arch. Allergy Immunol. 98: 105-109)、Phl p 6(Petersen et al., 1995, Int. Arch. Allergy Immunol. 108, 49-54)、Phl p 2/3(Dolecek et al., 1993, FEBS 335 (3): 299-304)、Phl p 4(Haavik et al., 1985, Int. Arch. Allergy Appl. Immunol. 78: 260-268;Valenta et al., 1992, Int. Arch. Allergy Immunol. 97: 287-294;Nandy et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 2005, 337(2): 563-70)およびPhl p 13(Suck et al., 2000, Clin. Exp. Allergy 30: 1395-1402)。
【0007】
オオアワガエリの優勢な主要アレルゲンはPhl p 1とPhl p 5であり(Andersson & Lidholm, 2003, Int. Arch. Allergy Immunol. 130:87-107)、Phl p 5には2つの形態、5aおよび5bがあり、これらは独立した遺伝子によりコードされ、分子量が異なる。アレルゲンの公式な命名法によれば、Phl p 5aはPhl p 5.01、およびPhl p 5b はPhl p 5.02と呼ばれる(WHO/IUIS Allergen Nomenclature Subcommittee,
www.allergen.org)。Phl p 5aおよびPhl p 5bの両方のアミノ酸配列は、クローニングされたcDNA配列に由来する。両者のアイソフォームの天然変異体が同定されており、これらは互いに点突然変異を介して異なっており、異なる対立形質に対応する(Vrtala et al., 1993, J. Immunol., 151: 4773-4781;Gelhar et al., 1997, Eur. J. Biochem., 247: 217-23)。これらの変異体は、WHO/IUISデータベースにPhl p 5.01xxおよびPhl p 5.02xxとして記録されている。
【0008】
天然のPhl p 5a(nPhl p 5a)は約32kDaのタンパク質であり、85〜90%の草花粉アレルギー患者のIgE抗体と反応する(Rossi et al., 2000, Allergy Int., 49: 93-97)。
Poaceae科、特にイチゴツナギ(Pooideae)亜科、例えばLolium perenneまたはPoa pratensisからの関連するイネ科植物種の花粉は、Phl p 5と相同なアレルゲンを含有し、共にグループ5アレルゲンとして知られている。これらのグループ5アレルゲンの高い構造的相同性は、分子の、IgE抗体との相応する高い交差反応性を引き起こす(Lorenz et al., 2009, Int. Arch. Immunol. 148:1-17)。最終的にこの交差反応性は、イネ科の1つの種による感作が、別の関連するイネ科によるアレルギー反応を誘発するのに十分となり得ることを意味する。
【0009】
グループ5アレルゲンの高い交差反応性は究極的には、相同なアレルゲンの類似する一次配列に基づく。これは、選択されたイチゴツナギ種のグループ5アレルゲンの、アミノ酸配列の比較により示される(
図1)。
グループ5アレルゲン相互の交差反応性に加えて、Phl p 5とオオアワガエリの他の主要アレルゲンとの交差反応性も示されている(Loewenstein, 1978, Allergy 33: 30-41;Petersen et al., 1995, Int. Arch. Allergy Immunol. 108: 55-59;Blume et al., 2004, Proteomics 4: 1366-71)。アレルゲンPhl p 6のポリペプチド鎖は、種々のPhl p 5配列のN末端半分と顕著な類似性を示す(
図1)。アレルゲンは、共通のオリジナル遺伝子に遡ることができると考えられる。2つの群のアレルゲンの間の類似性は、いくつかのPhl p 5反応性IgE抗体がPhl p 6にも結合するという効果を有する(Petersen et al., 1995, Int. Arch. Allergy Immunol. 108: 49-54;Andersson & Lidholm, 2003, Int. Arch. Allergy Immunol. 130:87-107)。
【0010】
多くのアレルゲンの3D構造は、NMR分光法またはX線構造解析により過去に説明されており、とりわけ、タンパク質表面のIgE結合エピトープの局在化のベースとして機能している。イネ科花粉のグループ5アレルゲンの場合、ポリペプチド鎖全体を包含するモデルを作製することは、これまで不可能であった(Rajashankar et al., 2002, Acta Cryst. D58:1175-1181;Maglio et al., 2002, Protein Engineering 15: 635-642)。
アレルゲンPhl p 6(RCSBタンパク質データバンクエントリー:1NLX)およびPhl p 5b半分子(RCSBタンパク質データバンクエントリー:1L3P)の3D構造に基づき、Phl p 5aのホモロジーモデルを作成することができた(Wald et al., 2007, Clin. Exp. Allergy 37:441-450)。このモデルによれば、Phl p 5aは2つのヘリックス束から構成されているが、しかし2つの束のお互いの正確な位置は、ホモロジーモデルによっては説明できない(
図2)。
【0011】
特定の免疫療法(SIT)または減感作は、アレルギーの治療的処置への有効なアプローチとされている((Fiebig 1995 Allergo J. 4 (6):336-339;Bousquet et al., 1998, J. Allergy Clin. Immunol. 102 (4): 558-562);Cox et al., 2007, J. Allergy Clin. Immunol. 120:S25-85;James & Durham, 2008, Clin. Exp. Allergy 38: 1074-1088)。
【0012】
天然のアレルゲン抽出物を漸増用量で患者に皮下注射するという古典的な治療形態である注射療法(SCIT)は、およそ100年間成功して用いられてきた。この療法において、アレルギー患者の免疫系は繰り返しアレルゲンと直面し、免疫系の再プログラミングと同時に、アレルゲンへの耐性がもたらされる。抗原提示細胞がアレルゲン調製物から抗原を取り込んだ後、ペプチドが細胞表面上で抗原に提示される。いわゆるT細胞エピトープを含有するいくつかの特定ペプチドが、抗原特異的T細胞により認識される。この結合は、特に、調節機能を有する種々のタイプのT細胞の発達をもたらす。SITの間、調節T細胞応答は以下をもたらす:アレルゲンの耐性、T
H2サイトカインの下方制御、T
H1/T
H2平衡の回復、アレルゲン特異的IgEの抑制、IgG4、IgG1およびIgA抗体の誘導、エフェクター細胞(肥満細胞、好塩基球および好酸球)の抑制、および炎症組織の再生(Akdis et al., 2007, J. Allergy Clin. Immunol. 119 (4):780-789;Larche et al., 2008, Nature Reviews 6:761-771)。T細胞エピトープはこのように、減感作の場合にアレルゲン調製物の治療作用に対して決定的に重要である。
【0013】
IgEレベルおよびT細胞レベルでも存在するイネ科の主要アレルゲンの交差反応性のため、1つの代表的なイネ科の種のアレルゲン抽出物による治療の成功で、通常は十分である(Malling et al., 1993, EAACI Position Paper: Immunotherapy, Allergy 48: 9-35;Cox et al., 2007, J Allergy Clin Immunol 120: 25-85)。
皮下的免疫療法のほかに、アレルゲンまたはアレルゲン誘導体を、経口粘膜を介して取り込む舌下治療形態が、注射療法の代替として臨床試験にかけられ使用されている(James & Durham, 2008, Clin. Exp. Allergy 38: 1074-1088)。
【0014】
さらなる可能性は、関連するアレルゲンをコードする、発現可能なDNAによる処置である(免疫療法的ワクチン接種)。免疫反応のアレルゲン特異的影響の実験的証拠が、げっ歯類において、アレルゲンをコードするDNAの注射により提供された(Hsu et al. 1996, Nature Medicine 2 (5):540-544;Weiss et al., 2006, Int. Arch. Allergy Immunol. 139: 332-345)。
これら治療形態の全てにおいて、アレルギー反応またはアナフィラキシーショックまでもの根本的リスクが存在する(Kleine-Tebbe, 2006, Allergologie, 4:135-156)。これらのリスクを最小化するために、アレルゴイドの形態の画期的な調製物が用いられている。これは、未処置の抽出物と比べてIgE反応性は顕著に低減されているが、同じT細胞反応性を有する、化学的に修飾されたアレルゲン抽出物である(Fiebig 1995 Allergo J. 4 (6):336-339;Kahlert et al., 1999, Int. Arch. Allergy Immunol, 120: 146-157)。
【0015】
治療の最適化は、組み換え法により調製したアレルゲンにより可能である。患者の個別の感作パターンに任意に適合された、組み換え法により調製された高度に純粋なアレルゲンの規定されたカクテルは、天然のアレルゲン源からの抽出物の代わりに用いることができ、これは後者が、種々のアレルゲン以外に、比較的多数の免疫原性の、しかし非アレルゲン性の付随タンパク質を含有するためである。組み換えアレルゲンを用いた初期の臨床研究が既に実施され、成功している(Jutel et al., 2005, J. Allergy Clin. Immunol., 116: 608-613;Valenta & Niederberger, 2007, J. Allergy Clin. Immunol. 119: 826-830)。
組み換え発現産物による安全な減感作をもたらし得る、現実的な可能性は、治療に必須のT細胞エピトープを損なうことなくIgEエピトープを修飾した、突然変異した組み換えアレルゲンによって、具体的に提供されている(Schramm et al. 1999, J. Immunol. 162:2406-2414)。これらの低アレルギー性タンパク質は、SITの間にIgEに促進された望ましくない副作用の確率を増加させることなく、比較的高用量で用いることができる。
【0016】
過去に、このような低減したIgE結合を有する「低アレルギー性」変異体が、多くの空気アレルゲン(特に花粉およびハウスダストダニアレルゲン)および食物アレルゲンについて公開されている。非修飾アレルゲンのDNAに基づく組み換えDNAの調製および発現を、特に、断片化、オリゴマー化、欠失、点突然変異、またはアレルゲンの個別の部分(section)の組み換え(DNAシャフリング)によって行うことが可能である(Ferreira et al., 2006, Inflamm. & Allergy - Drug Targets 5: 5-14;Bhalla & Singh, 2008, Trends in Biotechnology 26:153-161)。
イネ科花粉アレルゲンについては、グループ1、2、5a、5b、6、7および12の低アレルギー性変異体が記載されている(Ferreira et al., 2006, Inflamm. & Allergy - Drug Targets 5: 5-14;Westritschnig et al., 2007, J. Immunol. 179: 7624-7634)。
【0017】
今日まで多くの刊行物において、低アレルギー性グループ5アレルゲンの開発へのアプローチについて記載されている。Phl p 5aおよびPhl p 5bに対して、2つの配列部分を合わせて欠失することにより、IgE結合の相当な低減と、好塩基性エフェクター細胞を刺激する能力の低減をもたらすことが示されている。しかし、欠失突然変異体のT細胞反応性は、非修飾アレルゲンと比べてわずかに改変されたのみであった(Schramm et al., 1999, J. Immunol. 162: 2406-2414;Wald et al., 2007, Clin. Exp. Allergy 37:441-450)。
【0018】
別の論文において、Lolium perenneからのグループ5アレルゲン(Lol p 5)をアミノ酸置換および/またはC末端における短い欠失によって修飾した(Swoboda et al., 2002, Eur. J. Immunol. 32: 270-280)。変異は特定のアミノ酸種類に限定されなかった。置換されたアミノ酸は、リシン、フェニルアラニン、スレオニン、バリン、またはアラニンであった。個々のアミノ酸の複数残基の特定の突然変異によって低アレルギー性突然変異体を産生する概念的アプローチも、同様に記載されている。Gelhar et al.は、組み換えPhl p 5b断片の産生を、タンパク質表面に局在する10のリシン残基をアラニンに置換して行うことを記載した(Gelhar et al., 2006, Int. Arch. Allergy Immunol. 140:285-294)。しかし、プロリン残基の点突然変異による突然変異戦略は、グループ5イネ科花粉アレルゲンについて、これまで公開されていない。
【発明の概要】
【0019】
本発明が基づく目的は、タンパク質およびDNAレベルでの、Poaceaeのグループ5アレルゲンの新規な組み換え変異体であって、低減したIgE反応性と同時にT細胞反応性の実質的な保持を特徴とし、したがって治療的および予防的な特定の免疫療法および免疫療法的DNAワクチン接種に好適な、前記変異体を提供することである。
【0020】
発明の詳細な説明
驚くべきことには、アラインメントにおいて(in an alignment)野生型Phl p 5.0109のアミノ酸配列における57、58、117、146、155、211、229位のプロリンに対応するプロリンが単独または組み合わせで突然変異した、イネ科(Poaceae)のグループ5アレルゲンの変異体は、野生型アレルゲンと比べて低減したIgE反応性と同時に、実質的に保持されたTリンパ球との反応性を有しており、したがって低アレルギー性であることが見出された。
したがって本発明は、アラインメントにおいて野生型Phl p 5.0109のアミノ酸配列における57、58、117、146、155、211、229位のプロリンに対応するプロリンが単独または組み合わせで突然変異した、イネ科(Poaceae)のグループ5アレルゲンの低アレルギー性変異体に関する。
特に好適なのは、プロリンが欠失または置換されていることを特徴とする、本発明のアレルゲン変異体である。
【0021】
好ましいのは、イチゴツナギ亜科からのグループ5アレルゲンの本発明の低アレルギー性変異体、好ましくはPoodaeおよびTriticodaeの群から、好ましくはPhleum pratense、Holcus lanatus、Phalaris aquatica、Anthoxanthum odoratum、Dactylis glomerata、Lolium perenne、Poa pratensis、Festuca pratensis、Hordeum vulgare、Secale cerealeおよびTriticum aestivumにより表されるものからの、前記変異体である。これらは好ましくは、Triticum aestivum、Secale cerealeおよびHordeum vulgareからのTri a 5、Sec c 5およびHor v 5の本発明の低アレルギー性変異体である。特に好ましいのは、Poodaeのグループ5アレルゲンの本発明の低アレルギー性変異体である。これらグループ5アレルゲンは好ましくは、Poa pratensis、Dactylis glomerata、Holcus lanatus、Lolium perenneおよびPhalaris aquaticaからのPoa p 5、Dac g 5、Hol p 5、Lol p 5およびPha a 5であり、極めて特に好ましくは、Phleum pratenseからのPhl p 5である。上記アレルゲンの全ての天然のアイソマー、多形体、および変異体ならびにこれらの前駆体タンパク質もまた、本発明による。
【0022】
本発明の低アレルギー性変異体において、突然変異したプロリンは、好ましくはアラインメント(
図1a)において成熟Phl p 5.0109(Phl p 5 a、UniProtKBエントリー: Q84UI2、
図3および4、配列番号1、配列番号2)もしくはその変異体(
図1b)の、または成熟Phl p 5.0201(Phl p5 b; Swiss-Prot: Q40963.2;
図24、配列番号5)もしくはその変異体(
図1b)の、特に好ましくは成熟Phl p 5.0109のアミノ酸配列における、57、58、117、146、155、211または229位のプロリンに対応するものである。
【0023】
プロリンがタンパク質構造に影響を及ぼし得ることは知られていたが、アレルゲンの低アレルギー性突然変異体産生のための開始点としてのプロリン残基の特定の点突然変異は、ハウスダストダニDermatophaogides farinaeのグループ2主要アレルゲン(Der f 2、プロリン残基のアラニンによる置き換え)について調査されたのみであった(Takai et al., 2000, Eur. J. Biochem. 267: 6650-6656)。しかし、IgE結合能および好塩基性細胞を刺激する能力は、3種の点突然変異体の場合はわずかにのみ低減され、一方、別の3種は非修飾アレルゲンと同様の挙動であった。Der f 2の場合のプロリン突然変異はしたがって、アレルゲン性の非常に弱い低減、または低減なしを示した。プロリン交換突然変異による低アレルギー性突然変異体調製のためのさらなる戦略は、公開されていない。したがって当業者は、プロリン突然変異体がアレルゲンの低アレルギー性突然変異体産生のための開始点として成功することを期待していなかった。
【0024】
さらに、これまで任意のアレルゲンで、プロリン残基の特定の欠失が発現産物の全IgE結合能にどのように影響するか、およびアレルギー関連エフェクター細胞の活性化にどのような効果が生じるかについては、検討されていなかった。
Phl p 5.0109(UniProtKB:Q84UI2)のアミノ酸配列は、16個のプロリン残基を含む(
図1)。6個のプロリン残基P7、P10、P13、P19、P22およびP27はN末端領域に局在し、これはグループ5アレルゲン内で低い程度で保存されている。アミノ酸位置57、58、85、117、146、155、211、229および256のプロリンは、αヘリックスまたはαヘリックスを結合するループの始点または終点に位置し、アミノ酸P85は別にして、高度に保存されている(
図1、2)。
【0025】
Phl p 5aアイソフォームPhl p 5.0109のアミノ酸配列から開始して、組み合え非修飾野生型アレルゲン(rPhl p 5a wt;
図4、配列番号2)および遺伝子工学により修飾された変異体を調製する。下記の調製方法と同様にして、本発明のイネ科の他のグループ5アレルゲン、例えばLol p 5;Poa p 5、 Pha a 5、Dac g 5;Hol l 5、Tri a 5およびHor v 5の、野生型タンパク質および本発明の低アレルギー性変異体も調製することができる。そのために、アラインメントにおいて野生型Phl p 5のアミノ酸配列における57、58、117、146、155、211、229位のプロリンに対応するプロリンを、好ましくは置換または欠失により、単独または組み合わせで突然変異させた。
【0026】
グループ5アレルゲンについて記載した変異に加えて、例えば低アレルゲン性を増強するために、他の位置でのさらなる修飾も当然可能である。これらの修飾は、例えば、アミノ酸挿入、欠失、置き換え、およびタンパク質を断片に切断すること、およびタンパク質またはそれらの断片の、他のタンパク質またはペプチドとの融合、および同一タンパク質または断片の融合を介した多量体などであることができる。
【0027】
本発明の断片は、好ましくは20〜109個のアミノ酸を、好ましくは30〜100個のアミノ酸を、特に好ましくは40〜90個のアミノ酸を含有する。本発明の変異体はさらに、前駆体タンパク質、例えばProPhl p5を、前の天然または人工シグナル配列と共に含む。本発明に含まれるのはさらに、N末端またはC末端融合タグ(例えば、
図5および6に示すHisタグ、MBPタグ、発現制御配列等)を有する融合タンパク質、ハイブリッド分子、例えば他のアレルゲンもしくはその低アレルギー性変異体との融合、または任意の所望の順序での断片の融合である。さらに、本発明による変異体はまた、関連のグループ5野生型アレルゲンと少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する、好ましくは関連のグループ5野生型アレルゲンと少なくとも90%の、特に好ましくは関連のグループ5野生型アレルゲンと少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する、相同配列も含む(多形体(SNP)、アイソフォーム)。これらの変異体において、1または数個のアミノ酸は好ましくは保存的に置き換えられ、例えば極性アミノ酸が別の極性アミノ酸に置換され、または中性アミノ酸が別の中性アミノ酸に置換されており、しかし、非保存的置き換えによる変異体もまた本発明による。多量体は好ましくは、リンカー配列によって結合されたかまたは直接融合による、本発明の低アレルギー性変異体の二量体または三量体を含む。
【0028】
アイソフォームの例としては、アレルゲンPhl p 5aおよびPhl p 5bであって、ここで本発明による作用に関連しない個々のアミノ酸が置き換えられているか、またはアミノ配列の領域が失われているか、または付加されているものである(
図1a参照)。これらの野生型アレルゲンアイソフォームは、例えば、63〜71%のアミノ酸配列同一性を有する。本発明による変異体のさらなる例としては、野生型アレルゲンアイソフォームPhl p 5aおよびPhl p 5bの変異体、例えば、Phl p 5.0109、Phl p 5.0201、Phl p 5.0204、Phl p 5.0206、Phl p 5.0207などであり、さらに、1または2以上のアミノ酸が置き換えられた変異体、Nおよび/またはC末端での1または2以上のアミノ酸の除外、またはアミノ酸配列内の対応する欠失ギャップを有する変異体である。同様に本発明に含まれるのは、単一または複数アミノ酸の、種々の位置における個別の挿入、あるいはアミノ酸配列内の1つの位置におけるか、またはNおよび/またはC末端における、1つの群としての挿入を有する変異体である。
【0029】
本発明はしたがって、イネ科(Poaceae)のグループ5アレルゲンの低アレルギー性変異体であって、これが本発明の低アレルギー性変異体の断片もしくは変異体、または本発明の1または2以上の低アレルギー性変異体の多量体であることを特徴とするもの、または本発明の1または2以上の低アレルギー性変異体またはそれらの断片、変異体もしくは多量体が、組み換え融合タンパク質の構成要素であることを特徴とするものにも関する。
さらに、本発明は、本発明の低アレルギー性変異体をコードするDNA分子に関する。
【0030】
本発明はさらに、発現制御配列に機能的に結合しているタイプの本発明のDNA分子を含有する、組み換え発現ベクターに関する。発現制御配列とは、例えば、プロモーターまたは配列部分であって、これの支援により標的タンパク質の発現が影響され、標的遺伝子に機能的に結合しているが、必ずしも標的遺伝子の直近傍に局在している必要はない、前記プロモーターまたは配列部分を意味するものとする。
本発明はまた、本発明のDNA分子または本発明の発現ベクターによって形質転換された、非ヒト宿主生物に関する。
【0031】
本発明は、本発明の低アレルギー性変異体を、本発明の非ヒト宿主生物の培養および該培養物からの対応するアレルゲン変異体の単離によって、調製するための方法に関する。
好適な非ヒト宿主生物は、原核または真核の単細胞または多細胞生物、例えば細菌または酵母であることができる。本発明による好ましい宿主生物は、大腸菌である。
【0032】
1つまたは隣接する2つのプロリンの欠失の、Phl p 5aのIgE結合能への影響は、プロリン57+58、プロリン85、プロリン117、プロリン146+155、プロリン180、プロリン221、プロリン229、およびプロリン256を欠失することによって調査することができる。Phl p 5a野生型タンパク質において、これらのプロリンはαヘリックスの初めまたは終わりのループ領域に局在する(
図3)。本発明の他のイネ科のグループ5アレルゲン、例えばPoa p 5およびLol p 5の、対応する相同的位置でのプロリン突然変異のIgE結合能への影響を、同様にして調査することができる。
より迅速な高収率精製のために、これらの調査用のコーディングDNAを、N末端ヘキサヒスチジン融合成分をコードする配列によって提供する(+6His)(
図5、配列番号3;
図6、配列番号4)。本発明のタグなし変異体および、医薬目的のために用いることができる野生型タンパク質も、標準方法により同様に精製して、Hisタグタンパク質による結果を確認する。
【0033】
タンパク質rPhl p 5a d[P57, P58] + 6His、rPhl p 5a d[P85] + 6His、rPhl p 5a d[P117] + 6His、rPhl p 5a d[P146、P155] + 6His、rPhl p 5a d[P180] + 6His、rPhl p 5a d[P211] + 6His、rPhl p 5a d[P229] + 6HisおよびrPhl p 5a d[P256] + 6Hisをコードする配列を、対応して調製する。配列は、全ての既知の真核および原核発現系において、好ましくは大腸菌において、発現することができる。タンパク質は続いて、溶解性のモノマーとして標準法により精製される。最後に、純度を変性ポリアクリルアミドゲル中での分析によりチェックすることができる(SDS−PAGE)。
屈折計(RI検出器)および多角度光散乱検出器(MALS検出器)が連結された分析ゲルろ過(SEC)により、溶出されたタンパク質の分子量のオンライン決定が可能である(SEC/MALS/RI法)。
【0034】
本発明の組み換え変異体はさらに、IgE阻害試験(EAST)によりヒトIgE抗体へのそれらの結合能について調査することができる。この方法において、アレルゲン/IgE相互作用は溶液中で調べることができ、これにより、例えば膜上で固定化することによる試験物質のエピトープのマスキングの妨害を、除外することが可能である。
変異体rPhl p 5a d[P57、P58] + 6His、rPhl p 5a d[P117] + 6His、rPhl p 5a d[P146、P155] + 6His、rPhl p 5a d[P180] + 6His、rPhl p 5a d[P211] + 6HisおよびrPhl p 5a d[P229] + 6Hisの、IgE結合の低減は、非修飾のrPhl p 5a wtと比較して観察することができる(
図7)。
【0035】
このことは基本的に、グループ5アレルゲンからのプロリン残基の欠失が、これらのアレルゲンのIgE結合能を低減することを証明する。一方、一定のプロリンの欠失のみでは、IgE結合の低減が生じる。
本発明はしたがって、イネ科(Poaceae)のグループ5アレルゲンの低アレルギー性変異体であって、アラインメントにおいて野生型Phl p 5.0109のアミノ酸配列における57、58、117、146、155、211または229位のプロリンに対応するプロリンが単独で突然変異した、前記変異体にさらに関する。
【0036】
本発明は好ましくは、アラインメントにおいて野生型Phl p 5.0109のアミノ酸配列における57、58、117、146、155、211または229位のプロリンに対応するプロリンが単独で変異した、Phl p 5、Poa p 5、Lol p 5、Dac g 5、Hol l 5、Pha a 5の低アレルギー性変異体に関する。
本発明は特に好ましくは、アラインメントにおいて野生型Phl p 5.0109のアミノ酸配列における57、58、117、146、155、211または229位のプロリンに対応するプロリンが単独で突然変異した、Phl p 5の低アレルギー性変異体に関する。
【0037】
本発明はさらに好ましくは、アラインメントにおいて野生型Phl p 5.0109のアミノ酸配列における57、58、117、146、155、211または229位のプロリンに対応するプロリンが単独で除去された、イネ科(Poaceae)のグループ5アレルゲンの本発明の低アレルギー性変異体に関する。
また、本発明はさらに、アラインメントにおいて野生型Phl p 5.0109のアミノ酸配列における57、58、117、146、155、211または229位のプロリンに対応するプロリンが単独で置換された、イネ科(Poaceae)のグループ5アレルゲンの本発明の低アレルギー性変異体に関する。ここで、プロリンは例としては、ロイシン(L)によって置き換えられる。しかし、本発明により、本発明のプロリンは、任意のアミノ酸で置き換えることができる。
【0038】
特に、rPhl p 5a d[P57]、rPhl p 5a d[P58]、rPhl p 5a d[P57, P58]、rPhl p 5a d[P117]、rPhl p 5a d[P146]、rPhl p 5a d[P155]、rPhl p 5a d[P146, P155]、rPhl p 5a d[P180]、rPhl p 5a d[P211]、rPhl p 5a d[P229]、rPhl p 5a P57L、rPhl p 5a P58L、rPhl p 5a P57、P58L、rPhl p 5a P117L、rPhl p 5a P146L、rPhl p 5a P155L、rPhl p 5a P146L、P155L、rPhl p 5a P180L、rPhl p 5a P211LおよびrPhl p 5a P229Lなどの低アレルギー性変異体および、以下に記載する本発明の全ての低アレルギー性変異体は、本発明に記載されており、ここで、番号付けはPhl p 5.0109の配列に従う。
さらに、これらの例はPhl p 5aの変異体に限定されず、特に、Phl p 5b、Poa p 5、Hol l 5、Pha a 5、Ant o 5、Dac g 5、 Lol p 5、 Fes p 5、Hor v 5、Sec c 5、Tri a 5および全ての他のイネ科のグループ5アレルゲンにも関する。Poa p 5、Lol p 5、Dac g 5、Hol l 5、Pha a 5およびPhl p 5bの対応する変異体は、特に重視される。
【0039】
驚くべきことには、突然変異d[P57, P58]、d[P117]、d[P146, P155]、d[P180]、d[P211]およびd[P229]の群からの欠失の組み合わせを有する変異体は、EAST法により顕著に低減したIgE結合能を示し、これは、例えば変異体rPhl p 5a d[P117, 180] + 6Hisの例について示されている(
図8)。
したがって本発明はさらに、アラインメントにおいて野生型Phl p 5.0109のアミノ酸配列における57、58、117、146、155、180、211、229位のプロリンに対応するプロリンが組み合わせで突然変異している、イネ科(Poaceae)のグループ5アレルゲンの低アレルギー性変異体に関する。好ましいのは、欠失を介した、および他のアミノ酸による置換を介した、突然変異体である。任意のアミノ酸を、ここでプロリンによる置き換えに選択することができる。
【0040】
本発明は好ましくは、アラインメントにおいて野生型Phl p 5.0109のアミノ酸配列における57、58、117、146、155、180、211、229位のプロリンに対応するプロリンが組み合わせで突然変異した、Phl p 5、Poa p 5、Lol p 5、Dac g 5、Hol l 5、Pha a 5の低アレルギー性変異体に関する。
本発明は特に好ましくは、アラインメントにおいて野生型Phl p 5.0109のアミノ酸配列における57、58、117、146、155、180、211、229位のプロリンに対応するプロリンが組み合わせで突然変異した、Phl p 5の低アレルギー性変異体に関する。
【0041】
さらに、これらの例はPhl p 5の変異体に限定されず、特に、Poa p 5、Hol l 5、Pha a 5、Ant o 5、Dac g 5、 Lol p 5、Fes p 5、Hor v 5、Sec c 5、Tri a 5および全ての他のイネ科のグループ5アレルゲンにも関する。Phl p 5a、Phl p 5b、Poa p 5、Lol p 5、Dac g 5、Hol l 5、Pha a 5の対応する変異体は、特に重視される。
特に好ましいのは、プロリン57、58、117、146、155、180、211、229が組み合わせで除去された、本発明の低アレルギー性変異体である。また特に好ましいのは、プロリン57、58、117、146、155、180、211、229が組み合わせで置換された、本発明の低アレルギー性変異体である。
【0042】
また、特に好ましいのは、プロリン57、58、117、146、155、180、211、229が組み合わせで除去および/または置換された、本発明の低アレルギー性変異体である。低アレルギー性変異体rPhl p 5a d[57, 58, 117]、rPhl p 5a d[57, 58, 146]、rPhl p 5a d[57, 58, 150]、rPhl p 5a d[57, 58, 180]、rPhl p 5a d[57, 58, 211]、rPhl p 5a d[57, 58, 229]、rPhl p 5a d[117, 146, 155]、rPhl p 5a d[117, 146, 155, 180]、rPhl p 5a d[117, 146, 155, 229]、rPhl pa 5 P117L、P146L、P155L、P211L、rPhl p 5a d[117, 180, 229] P211L、rPhl p 5a d[117, 180, 229] P211L、rPhl p 5a d[57, 58, 117, 180, 229] P211L等および、例えば以下に記載する本発明の全ての低アレルギー性変異体は、したがって本発明によるものであり、ここで番号付けはPhl p 5.0109の配列に従う。
【0043】
ここで、プロリンは例としては、ロイシン(L)によって置き換えられる。しかし、本発明により、本発明のプロリンは、任意のアミノ酸で置き換えることができる。したがって、本発明の1または2以上のプロリンが、本発明に従って任意のアミノ酸により置換されていると言及されたか、そう考えられる、全ての低アレルギー性変異体は、本発明によるものである。さらに、これらの例はPhl p 5の変異体に限定されず、特にPhl p 5b、Poa p 5、Hol l 5、Pha a 5、Ant o 5、Dac g 5、Lol p 5、Fes p 5、Hor v 5、Sec c 5、Tri a 5および全ての他のイネ科のグループ5アレルゲンにも関する。しかし特に好ましいのは、Phleum pratenseのPhl p 5aおよびPhl p 5b、特にPhl p 5.0109に基づく、本発明の全ての上記の低アレルギー性変異体である。
この知識に基づき、最大可能な数の組み合わせの欠失を含有する変異体rPhl p 5a d[P57, P58, P85, P117, P146, P155, P180, P211, P229, P256] + 6His(略号:MPV.1 + 6His)および rPhl p 5a d[P57, P58, P117, P146, P155, P180, P211, P229] + 6His(略号:MPV.2 + 6His)を調製することができる。
【0044】
発現されると、これらのタンパク質は大腸菌細胞に不溶性の凝集物(封入体)として沈殿する。封入体は通常、6〜8モルのグアニジン塩酸塩または尿素溶液などの変性剤に溶解し、その後非変性水溶液に変換される。この非変性溶媒環境への変換は、タンパク質精製において重要なステップを意味する。一般に、このプロセスの後に溶解性の様式で振舞うタンパク質のみを、治療剤の最終製剤中に含むことができる。変性溶解性タンパク質の水性溶媒への変換に工業的に用いられる定法は、「迅速希釈」の方法である。この方法において、変性剤に溶解したタンパク質を多量の非変性溶媒に加え、変性剤を高度に希釈する。
本明細書に記載の突然変異体の溶解性挙動は、系統的に調査することができる。この調査において、大腸菌内に調製されグアニジン塩酸塩に溶解した封入体を、10種類の異なる緩衝水溶液中に希釈し、続いて溶解性の程度をUV−Vis分光法により決定する。
【0045】
UV−Vis分光法においては、タンパク質溶液の吸収スペクトルを240〜800nmの波長範囲で記録する。タンパク質溶液中の不溶性凝集物は、>300nmの波長範囲で吸収し、一方、高度に溶解性のタンパク質はこの範囲では吸収しない。
試験溶液は広いpH範囲(4.5〜9.0)をカバーし、いくつかのケースでは安定化添加剤を含む。添加剤のグリセロール、Tween 80およびLアルギニン一塩酸塩は、調製の難しい組み換えタンパク質の溶解における支援として、非常に頻繁に用いられる。これらは、このような共溶媒の3種類の最も重要な群:ポリアルコールとしてのグリセロール、非イオン性表面活性剤としてのTween、およびアミノ酸誘導体としてのLアルギニン一塩酸塩を表す。
【0046】
変異体MPV.1 + 6HisおよびMPV.2 + 6Hisは、変性剤グアニジン塩酸塩の使用を介して溶解できるが、しかし、溶解性の系統的調査により、続くタンパク質のグアニジン塩酸塩非含有製剤への変換には常に不溶性タンパク質凝集物の形成が伴うため、これが不可能であることが示される(表1、2)。
DNA合成のために行われたPCR実験の間に、タンパク質rPhl p 5a d[P57, P58, P229] K61E, E205K, P211L + 6His (略号: MPV.3 + 6His)をコードするDNAが、複数のポリメラーゼのエラーを介して本実施例中で形成される。このDNAも、大腸菌で発現される。変異体MPV.1およびMPV.2と同様に、タンパク質が大腸菌細胞内に封入体として沈殿する。
【0047】
しかし、タンパク質MPV.3 + 6Hisは、驚くべきことには、非変性緩衝液に容易に変換できる(表3)。
EAST−IgE阻害試験により、1つのループのみにプロリンの欠失を有する変異体rPhl p 5a d[P57, P58] + 6HisおよびrPhl p 5a d[P229] + 6Hisと比べて、タンパク質のIgE抗体への結合能の顕著な低減が示される(
図9)。
変異体MPV.3 + 6Hisの突然変異K61E、 E205KおよびP211Lのさらなる特徴付けのために、3つの変異体rPhl p 5a K61E + 6His、rPhl p 5a E205K + 6HisおよびrPhl p 5a P211L + 6HisのDNAを調製し、EASTで調査した。全3つの突然変異体はわずかに低減したIgE結合能を示し、これは、全ての突然変異の、MPV.3 + 6Hisの低減したアレルゲン性への系統的影響を示す(
図10)。プロリン211の欠失および置き換えの両方は、突然変異K61EまたはE205Kよりも顕著に大きい個別の効果を示す(
図10)。
【0048】
草花粉アレルギー患者の全血から単離された好塩基性顆粒球を用いた試験により、MPV.3 + 6Hisの低減したIgE結合能の、ヒトエフェクター細胞の活性化に及ぼす効果をin vitroで調査した。同じ濃度のrPhl p 5a wtおよびMPV.3 + 6Hisで、後者は好塩基性顆粒球の低減した活性化を示す。これは、MPV.3 + 6Hisの機能的に低減したアレルゲン性を示唆する(
図11)。
ランダムに生成されたMPV.3 + 6His変異体のDNAは、さらなる変異体の標的化された構築のための開始点として機能する。MPV.3 + 6Hisの高い溶解性は保持されるはずであり、IgE結合能は追加のプロリン突然変異の挿入によってさらに低減されるはずである。
【0049】
まず、変異体rPhl p 5a d[P57, P58, P117, P146, P155, P180, P229] K61E, E205K, P211L(略号:MPV.4)および rPhl p 5a d[P57, P58, P117, P180, P229] K61E, E205K, P211L(略号:MPV.5)のDNAを調製する。このDNAは、ヒスチジン融合成分有りまたは無しの両方で構成され、大腸菌に発現される。タンパク質は大腸菌細胞の封入体からの溶解性タンパク質として、簡単な精製手順により精製することができる。
融合成分有りまたは無しの両方のタンパク質は溶解性の様式で精製できるため、溶解性はヒスチジン融合成分の存在に依存しない。ヒスチジン融合成分は同様に、IgE結合能にも影響せず、これは、融合成分有りまたは無しのタンパク質を用いたIgE阻害試験により示される(
図12)。
【0050】
変異体rPhl p 5a d[P57, P58, P117, P146, P155, P180, P229] P211L(略号:MPV.6)およびrPhl p 5a d[P57, P58, P117, P180, P229] P211L(略号:MPV.7)のDNAを、融合成分無しでのみ生成し、大腸菌に発現させる。これらは同様に、封入体からの高度に溶解性のタンパク質として、簡単な精製手順により精製することができる。
変異体MPV.6は、変異体MPV.2とは、211位での修飾のみが異なる。P211の欠失の代わりに、MPV.6はロイシンへのアミノ酸交換を含む。したがって極端に異なる溶解性挙動は、211位に直接依存する。突然変異P211Lを有する全ての突然変異体(MPV.3〜MPV.7)は、種々の水性製剤中での高い溶解性により区別され、一方、211位での欠失を有する突然変異体は、不溶性のままである(表1〜表5)。
【0051】
本発明はしたがって、イネ科のグループ5アレルゲンの本発明の低アレルギー性変異体であって、成熟Phl p 5.0109に対応するアミノ酸位置211のプロリン残基が欠失しておらず、代わりに別のアミノ酸で置き換えられている前記変異体に関する。
本発明はしたがって、イネ科のグループ5アレルゲンの本発明の低アレルギー性変異体であって、アラインメントにおいて野生型Phl p 5または成熟Phl p 5.0109のアミノ酸配列におけるプロリン211に対応するプロリン残基が欠失しておらず、代わりにロイシンで置き換えられている、前記変異体に関する。
【0052】
分析ゲルろ過(SEC)においては、タンパク種はその分子量(モル質量)によってのみ分離されるのではない;コンフォメーション、固有流体力学半径(specific hydrodynamic radius)、およびマトリックスとの可能な相互作用もまた、ここで重要な役割を果たす。分子量の真のオンライン決定は、屈折計(RI検出器)と多角度光散乱検出器(MALS検出器)とをSECクロマトグラフィーシステムに連結することにより実現可能である(SEC/MALS/RI法)。測定時に与えられる粒子濃度は、ここでRI検出器により決定され、粒子による光散乱は、MALS検出器により記録される(Wen et al., 1996, Anal. Biochem. 240:155-166)。モノマー、二量体、多量体および凝集物は、SEC/MALS/RIによって一義的に決定可能である。
【0053】
MPV.5およびMPV.7のSEC/MALS/RIの結果は、これらの変異体が純粋形態および溶解性モノマーの形態であることを示す(
図13;
図14;表6)。2つの変異体MPV.4およびMPV.6は、いずれの場合も溶解性モノマーと二量体の混合物として検出される(
図15;
図16;表6)。変異体MPV.5およびMPV.7は、変異体MPV.4およびMPV.6と、いずれの場合も146および155位でのみ異なる。プロリンP146およびP155は、MPV.5およびMPV.7に存在する。これは、欠失d[P146, P155]が、対応する変異体の二量体化への強い傾向をもたらすことを示す。
最適化された変異体MPV.4〜MPV.7のIgE結合能は、タンパク質をニトロセルロース膜上に固定化し、IgE抗体を含有する個々の草花粉アレルギー患者の血清を用いてインキュベートするという方法によって最初に調査する。アレルゲン変異体/抗体の複合体を次に、酵素反応により染色する。この方法において、全4種のタンパク質の、極めて低減したIgE結合能が明らかである(
図17)。
【0054】
この結果は、代表的なヒトアレルギー患者血清プールを用いたEAST−IgE阻害試験により確認され、ここで変異体MPV.4およびMPV.6は、突然変異d[P146, P155]なしの対応する突然変異体MPV.5およびMPV.7よりも、いずれの場合もいくらか低いIgE結合を有する(
図18;
図19)。突然変異d[P146, P155]があった場合の低いIgE結合は、おそらく、これら変異体の二量体化傾向に起因すると考えられ、この二量体化傾向はおそらく、二量体化パートナーの接触領域におけるIgEエピトープのマスキングをもたらす。
好塩基性顆粒球の活性化に対する試験結果は、全4種の変異体について、機能的に顕著に低減したアレルゲン性を示す(
図20;
図21;
図22;
図23)。
【0055】
本発明はしたがって、イネ科のグループ5アレルゲンの本発明による低アレルギー性変異体であって、アラインメントにおいて野生型Phl p 5.0109のプロリン211に対応するプロリンが欠失されておらず、代わりに別のアミノ酸により置き換えられていることを特徴とする、前記変異体に関する。
したがって本発明は好ましくは、イネ科のグループ5アレルゲンの本発明による低アレルギー性変異体であって、アラインメントにおいて野生型Phl p 5.0109のアミノ酸配列における57、58、117、180および229位のプロリンに対応するプロリンが、単独または組み合わせで突然変異し、好ましくは欠失され、およびプロリン211がロイシンで置き換えられた、前記変異体にも関する。
【0056】
本発明はしたがって、好ましくは、イネ科のグループ5アレルゲンの本発明による低アレルギー性変異体であって、アラインメントにおいて野生型Phl p 5.0109のアミノ酸配列における57、58、および229位のプロリンに対応するプロリンが欠失され、およびプロリン211がロイシンで置き換えられた、前記変異体に関する。
したがって本発明はまた、本発明による低アレルギー性変異体であって、アラインメントにおいて野生型Phl p 5.0109のアミノ酸配列における146および155位のプロリンに対応するプロリンが突然変異していない、前記変異体に関する。これらは好ましくは、モノマーの形態である。
【0057】
本発明によるのはまた、本発明の全ての上記の低アレルギー性変異体であって、さらに、アラインメントにおいて野生型Phl p 5のアミノ酸配列における61位のリシンおよび205位のグルタミン酸に対応するアミノ酸が、単独または組み合わせで突然変異した、前記変異体に関する。これらのアミノ酸は好ましくは置換されている。
特定の免疫療法の有効性の基礎となるT細胞反応性を、草花粉アレルギー患者のPhl p 5特異的Tリンパ球を用いた増殖テストにより、in vitroで検査した。アレルゲン変異体MPV.4およびMPV.7の結果を、ここに例を用いて記載する。二量体化変異体MPV.4は、ここで調査した全ての突然変異(d[P57、P58、P117、P146、P155、P180、P229] K61E、E205K、P211L)を有し、したがって、最大まで修飾されたアミノ酸配列を有する分子を表す。突然変異体MPV.7を、純粋なプロリン突然変異を有するモノマー形態の例として選択する。両方の突然変異体は、非修飾アレルゲンと比べて比較的良好なT細胞反応性を示す(表7;表8)。重要なT細胞エピトープの保持は、記載の変異体の免疫療法的使用を可能とする。
【0058】
Tヘルパーリンパ球は、抗原提示細胞(APC)の分解プロセスを通して形成されてAPCの表面でMHCクラスII分子に結合して提示されるアレルゲンのペプチド断片と反応する。ペプチドは一般に13〜18アミノ酸の長さを有するが、しかしまた、側方が開いているMHCクラス2結合部位のためこれより長くてもよい。ペプチドとMHCクラス分子との主要な接触点は、約7〜10個のアミノ酸のコア配列中に見出される。Tヘルパーリンパ球のアレルゲン特異的活性化は、その増殖および機能的分化の必要条件である(例えばTreg、T
H1およびT
H2)。アレルゲンまたはアレルゲン変異体の、アレルゲン特異的Tリンパ球を刺激する能力は、その治療的有効性の鍵とみなされている。
Phl p 5またはPhl p 5.0109に基づき産生され、本明細書に記載される全てのアレルゲン変異体は、実験において、重要なT細胞エピトープの実質的な保持を示す。
【0059】
したがって、プロリン残基の修飾を通して新規なタンパク質特性を有する、イネ科のグループ5アレルゲンの変異体が、初めて記載される。関与するプロリン残基はループ領域に局在する。一定のプロリン残基の修飾のみが新規な変異体をもたらし、これは、低減されたIgE反応性およびT細胞反応性の実質的な保持により識別され、したがって、治療的および予防的な特定の免疫療法に好適である。対応するDNA分子は、免疫療法的ワクチン接種に好適である。
本発明はしたがって、薬剤(medicament)としての、本発明の記載のアレルゲン変異体、DNA分子および組み換え発現ベクターに関する。
【0060】
本発明の低アレルギー性変異体、DNA分子および組み換え発現ベクター、または本発明の薬剤は、特に、疾患および病気の予防および/または処置のために用いることができる。本発明の薬剤は、1型アレルギーの処置および/または予防に、すなわち、Poaceae種のグループ5アレルゲンがその誘発に関与する草花粉アレルギーを有する患者の特定の免疫療法(低感作)に、または草花粉アレルギーの予防的免疫療法に、特に好適である。本発明のDNA分子および組み換え発現ベクターは、対応する免疫療法的および免疫予防的DNAワクチン接種に用いることができる。
本発明はまた、少なくとも1種の本発明の低アレルギー性変異体の、その誘発にイネ科のグループ5アレルゲンが原因的に関与する1型アレルギーの予防および/または治療的処置のための、薬剤の調製のための使用に関する。
【0061】
また本発明によるのは、少なくとも1種の本発明のDNA分子、および/または本発明の組み換え発現ベクター、ならびに全ての比率でのその混合物の、免疫療法的DNAワクチン接種のための薬剤の調製のための使用である。
本発明はさらに、少なくとも1種の本発明の低アレルギー性変異体、少なくとも1種の本発明のDNA分子、および/または少なくとも1種の本発明の組み換え発現ベクター、ならびに全ての比率でのその混合物、および任意にさらに賦形剤および/または助剤を含む、1型アレルギーの予防および/または治療的処置のための医薬製剤に関する。
【0062】
特に、本発明の医薬製剤は、イネ科のグループ5アレルゲンがその誘発に原因的に関与する、1型アレルギーの予防および/または治療的処置に好適である。
本発明の意義における医薬製剤は、ヒトの医学または獣医学における治療剤として用いることができ、したがってヒトおよび動物、とくに哺乳類に、例えばサル、イヌ、ネコ、ラットまたはマウスなどに投与することができ、ヒトまたは動物の身体の治療的処置において、上述の疾患と闘うことにおいて、用いることができる。これらはさらに、診断剤または試薬としても用いることができる。
【0063】
本発明による製剤または薬剤を使用する場合、本発明の低アレルギー性変異体、DNA分子または組み換え発現ベクターは、一般に、既知の市販の製剤と同様に用い、好ましくは、0.001〜500mgの用量で、低アレルギー性変異体の場合は維持相において用量あたり約1〜500μg、好ましくは5〜200μgで用いる。製剤は、1日当たり1回または複数回投与可能であり、例えば1日2回、3回、または4回である。用量は典型的には、用量増加相においては維持用量まで増加させる。種々の用量増加および維持スキームがこの目的のために可能である。皮下の免疫療法(SCIT)の場合、例えば、これらには以下を含むことができる:短期間療法(季節的病訴の開始前に限定数の注射、典型的には4〜7回の注射)、シーズン前療法(花粉の季節の前に治療を開始、典型的には、増加相の間は毎週注射、および花粉の季節の始まりまで維持用量にて毎月の注射)、または通年療法(典型的には、16週間までの毎週注射による用量増加相に続いて、維持用量での毎月の注射、必要に応じて花粉の季節の間は低減した用量)。水性または固体の製剤(錠剤、ウェファー等)による舌下の免疫療法の場合、療法は、用量増加相有りまたは無しで導入することができる。治療は、年間を通して毎日用量で実施するのが好ましいが、しかし、シーズン前に実施したり、または他の適用スキームで実施することもできる(例えば、2日目毎、毎週、毎月)。
【0064】
表現「有効量」とは、薬剤または医薬活性化合物の量であって、生物学的または医学的応答を、例えば研究者または医者により求められるかまたは目的とされる組織、系、動物またはヒトにおいて引き起こす、前記薬剤または医薬活性化合物の量を意味する。
さらに、表現「治療的有効量」とは、この量を受領しない対応する対象と比較して、次の結果を有する量である:疾患、症候群、病気、病訴、疾病の改善された処置、治癒、予防または除去、または副作用の予防、または疾患、病訴もしくは疾病の進行の低減。用語「治療有効量」はまた、正常な生理機能を増加させるのに有効な量も包含する。
【0065】
薬剤は、任意の所望の好適な経路を介した投与に適応可能であり、例えば、経口(舌下錠または舌下を含む)、直腸内、肺、鼻腔、局所的(舌下錠、舌下または経皮を含む)、膣内、非経口(皮下、筋肉内、経静脈または皮内を含む)経路である。かかる薬剤は、薬学分野で知られた全てのプロセスを用いて、例えば活性化合物を賦形剤(単数または複数)または助剤(単数または複数)と組み合わせることにより、調製可能である。
非経口使用に好適なのは、特に、液剤、好ましくは油性液剤または水溶液、さらに懸濁剤、乳濁剤またはインプラントである。本発明のアレルゲン変異体はまた、凍結乾燥することができ、得られた凍結乾燥物は、例えば注射製剤の調製に用いられる。
示した製剤は滅菌することができ、および/またはアジュバントを、例えば潤滑剤、保存剤、安定剤および/または湿潤剤、乳化剤、浸透圧を調節するための塩、緩衝物質および/または複数のさらなる活性化合物などを含んでよい。さらに、デポー製剤も、本発明のアレルゲン変異体の対応する処方により、例えば水酸化アルミニウム、リン酸カルシウムまたはチロシンなどへの吸着により、得ることができる。
【0066】
好適な賦形剤は、非経口投与に好適であり、本発明のグループ5アレルゲン変異体と反応しない、有機または無機物質である。その例としては、次のような賦形剤である:水、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、グリセロールトリアセテート、ゼラチン、炭水化物、例えばラクトースまたはデンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラノリン、またはワセリン。
非経口投与は、本発明の薬剤の投与に好適であるのが好ましい。非経口投与の場合、静脈内、皮下、皮内、リンパ管内投与が特に好ましい。静脈内投与の場合、注射は、直接または輸液への添加により行うことができる。
【0067】
非経口投与に適合された薬剤としては水性および非水性無菌注射溶液を含み、これは抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および溶解剤を含有し、それにより製剤は処置されるレシピエントの血液に対して等張性となり、また、水性もしくは非水性の無菌懸濁液を含み、これは懸濁剤および増粘剤を含有してよい。製剤は、例えば密封アンプルおよびバイアルなどの単一用量または複数用量の容器で投与することができ、フリーズドライ(freeze-dried)(凍結乾燥(lipophilised))状態で保存され、これは、例えば注射目的の場合、水などの無菌の担体溶液を使用の直前に添加することのみが必要であることを意味する。処方に従って調製される注射溶液および懸濁液は、無菌の粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。
必要に応じて、本発明の製剤または薬剤は、1または2以上のさらなる活性化合物および/または1または2以上の作用エンハンサー(アジュバント)を含んでよい。
【0068】
したがって本発明はさらに、さらなる活性化合物および/または助剤を含む、医薬製剤に関する。本発明は好ましくは、さらなる活性化合物がアレルゲンまたはそれらの変異体であることを特徴とする、本発明の医薬製剤に関する。好適なさらなる活性化合物の例は他のアレルゲンであり、特に、イネ科のアレルゲン、特に好ましくは、イチゴツナギ亜科からのアレルゲン、好ましくはPoodaeおよびTriticodaeの群からの、好ましくはPhleum pratense、Holcus lanatus、Phalaris aquatica、Dactylis glomerata、Lolium perenne、Poa pratensis、Hordeum vulgare, Secale cerealeおよびTriticum aestivumによって表され、例えば、グループ1、2、3、4、5、6、7、10、12または13のアレルゲンおよびそれらの変異体であり、例えば、低アレルギー性変異体、断片、多量体、ハイブリッド分子または組み換え融合タンパク質である。本発明はさらに、少なくとも1種のさらなる助剤を、特に好ましくはいわゆるアジュバントを含む、医薬製剤に関する。アジュバントの例としては、水酸化アルミニウム、モノホスホリル脂質A、Toll様受容体のアクチベーター、例えばリポ多糖体およびCpGオリゴヌクレオチド、ビタミンD3、マイコバクテリア抗原および寄生虫(例えば住血吸虫またはフィラリア)からの分子、例えばシスタチンまたはES−62である。
【0069】
本発明はまた、次の個別パックからなる(キット)にも関する:
a)本発明の低アレルギー性変異体、DNA分子または組み換え発現ベクターの有効量を含有する、本発明の医薬製剤、
b)さらなる医薬活性化合物および/またはアジュバントの有効量を含有する、医薬製剤。
セットは、好適な容器、例えば箱または紙箱、個別のボトル、バッグ、またはアンプルなどを含む。セットは例えば、各々が、有効量の本発明の低アレルギー性変異体、DNA分子または組み換え発現ベクター、および溶解形態または凍結乾燥形態のさらなる医薬活性化合物を含有する本発明の製剤を含む、個別のアンプルを含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1a】Poaceaeのグループ5アレルゲンの推定アミノ酸配列のアラインメント:様々な種の成熟したグループ5配列のアラインメント。ボックスは、Phl p 6(PDBエントリー:1NLX)のαヘリックスの位置およびPhl p 5.02断片(PDBエントリー:1L3P)のC末端半分の位置を示す。プロリン残基のアミノ酸位置を、成熟Phl p 5.0109におけるそれらの位置に従ってラベルする。配列参照:Phl p 5.0101(Phleum pratense IUIS配列、UniProtKB Q40960)、Phl p 5.0104(Phleum pratense IUIS配列、UniProtKB P93467)、Phl p 5.0109(Phleum pratense IUIS配列、UniProtKB Q84UI2)、Phl p 5.0201(Phleum pratense IUIS配列、UniProtKB Q40963)、Phl p 6.0101(Phleum pratense IUIS配列、UniProtKB P43215)、Lol p 5.0101(Lolium perenne IUIS配列、UniProtKB Q40237)、Pha a 5.0101(Phalaris aquatica IUIS配列、UniProtKB P56164)、Dac g 5(Dactylis glomerata、UniProtKB Q93XD9)、Hol l 5.0101(Holcus lanatus IUIS配列、UniProtKB O23972)、Hol l 5.0201(Holcus lanatus IUIS配列、UniProtKB 23971)、Poa p 5.0101(Poa pratensis IUIS配列、UniProtKB Q9FPR0)、Tri a 5(Triticum aestivum、UniProtKB Q70JP9)、Hor v 5(Hordeum vulgare、EST TC190653)。
【0071】
【
図2】Phl p 5aの3D構造におけるプロリン残基の位置のワーキングモデルN末端の3D相同性モデル(Phl p 5.0109のアミノ酸31〜139;モデル分子:Phl p 6、PDBエントリー1NLX;左側に描く)およびC末端4−ヘリックス束(アミノ酸155〜255;モデル分子:Phl p 5断片、PDBエントリー1L3P;右)。a.2つの4−ヘリックス束の高度に簡略化されたモデル。H1〜H8:ヘリックス1〜8。プロリンは、その位置表示と原子構造と共に示す。プロリン残基P146およびP256は、モデル分子の3Dモデルにおける構造データの欠如のために示すことができなかった領域内にある(点線)。ヘリックス2と3の間に示すループは推定であり、これは、モデル分子Phl p 6がこのPhl p 5a領域に相同な領域を有さないためである。b.表面モデル。描くことができる全てのプロリン残基は表面に暴露されている(黒色)。
【0072】
【
図3】rPhl p 5a wt(IUISエントリーPhl p 5.0109);cDNA配列(GenBankエントリー:AJ555152;855bp)、配列番号1。
【
図4】rPhl p 5a wt(IUISエントリーPhl p 5.0109);推定アミノ酸配列(UniProtKBエントリー;Q84U12;284aa)、配列番号2。
【
図5】N末端ヒスチジン融合成分;DNA配列(57bp)、配列番号3。
【
図6】N末端ヒスチジン融合成分;アミノ酸配列(19aa)、配列番号4。
【0073】
【
図7】個々のループにプロリン欠失のあるPhl p 5a変異体のIgE阻害試験の結果(血清プール使用の場合)(a)+(b):いずれも二重決定による1つの個別実験からのデータ。印は、いずれの場合も8種の阻害剤濃度の二重測定の平均を示す。エラーバーの横線は、二重決定の個々の値を示す。(c):複数の個別実験結果の概要。左側のバー(濃灰色):阻害剤濃度5μg/mlでの、rPhl p 5a wtと比べたIgE阻害。右側のバー(薄灰色):阻害剤濃度1.25μg/mlでの、rPhl p 5a wtと比べたIgE阻害。バーの高さは、(n)回の個別実験から得た平均値を示す。エラーバーは、(n)回の評価された個別実験から得た、最大値(上のエラーバー横線)および最小値(下のエラーバー横線)を示す。固相:rPhl p 5a wt。血清プール:Bor 18/100、Allergopharma。
【0074】
【
図8】rPhl p 5a d[P117, 180] + 6Hisと、単一位置プロリン変異体であるrPhl p 5a d[P117] + 6Hisおよびd[P180] + 6Hisの、IgE阻害の比較複数の個別実験結果の概要:左側のバー(濃灰色):阻害剤濃度5μg/mlでの、rPhl p 5a wtと比べたIgE阻害。右側のバー(薄灰色):阻害剤濃度1.25μg/mlでの、rPhl p 5a wtと比べたIgE阻害。バーの高さは、(n)回の個別実験から得た平均値を示す。エラーバーは、(n)回の評価された個別実験から得た、最大値(上のエラーバー横線)および最小値(下のエラーバー横線)を示す。固相:rPhl p 5a wt。血清プール:Bor 18/100、Allergopharma。
【0075】
【
図9】MPV.3 + 6Hisと、単一位置プロリン変異体であるrPhl p 5a d[P57, 58] + 6Hisおよびd[P229] + 6Hisの、IgE阻害の比較複数の個別実験結果の概要:左側のバー(濃灰色):阻害剤濃度5μg/mlでの、rPhl p 5a wtと比べたIgE阻害。右側のバー(薄灰色):阻害剤濃度1.25μg/mlでの、rPhl p 5a wtと比べたIgE阻害。バーの高さは、(n)回の個別実験から得た平均値を示す。エラーバーは、(n)回の評価された個別実験から得た、最大値(上のエラーバー横線)および最小値(下のエラーバー横線)を示す。固相:rPhl p 5a wt。血清プール:Bor 18/100、Allergopharma。
【0076】
【
図10】MPV.3 + 6Hisと、単一位置プロリン変異体であるrPhl p 5a d[P211] + 6His、P211L + 6His、K61E + 6HisおよびE205K + 6Hisの、IgE阻害の比較複数の個別実験結果の概要:左側のバー(濃灰色):阻害剤濃度5μg/mlでの、rPhl p 5a wtと比べたIgE阻害。右側のバー(薄灰色):阻害剤濃度1.25μg/mlでの、rPhl p 5a wtと比べたIgE阻害。バーの高さは、(n)回の個別実験から得た平均値を示す。エラーバーは、(n)回の評価された個別実験から得た、最大値(上のエラーバー横線)および最小値(下のエラーバー横線)を示す。固相:rPhl p 5a wt。血清プール:Bor 18/100、Allergopharma。
【0077】
【
図11】MPV.3 + 6Hisの機能的アレルゲン性の試験4人の臨床的に定義された草花粉アレルギー患者(P)の好塩基球を用いた好塩基球活性化試験による、MPV.3 + 6Hisの低減した機能的アレルゲン性の証拠。横線:陰性対照による刺激のレベル。
【0078】
【
図12】MPV. 4 + 6HisおよびMPV. 4のIgE阻害試験左側のバー(濃灰色):阻害剤濃度5μg/mlでの、rPhl p 5a wtと比べたIgE阻害。右側のバー(薄灰色):阻害剤濃度1.25μg/mlでの、rPhl p 5a wtと比べたIgE阻害。バーの高さは、(n)回の個別実験から得た平均値を示す。エラーバーは、(n)回の評価された個別実験から得た、最大値(上のエラーバー横線)および最小値(下のエラーバー横線)を示す。固相:rPhl p 5a wt。血清プール:Bor 18/100、Allergopharma。
【0079】
【
図13】MPV. 5の分子量決定分析SECのクロマトグラムとオンライン分子量決定図は、溶出時間(X軸)に対してプロットされた、280nmでの相対的UVシグナル(右側Y軸)および分子量(左側Y軸;測定点はピーク領域内に並ぶ)を示す。タンパク質濃度のオンライン決定には、OptilabrEX屈折率検出器(Wyatt, Santa Barbara, USA)を用いた。粒子による光散乱は、MiniDAWN Treos多角度検出器(Wyatt)を用いて決定した。粒子重量は、屈折率増分を0.180ml/gとして、デバイ形式(Debeye formalism)によるASTRA 5.3.2.17ソフトウェア(Wyatt)を用いて計算した。カラム:Superdex 200 GL 10/ 300(GE Healthcare, Uppsala, Sweden)。サイズエクスクルージョン(size exclusion)(t
0)は、20.45分(〜670kDに対応)とする。溶出液:20mMのトリス8.0、150mMのNaCl。
【0080】
【
図14】MPV. 7の分子量決定分析SECのクロマトグラムとオンライン分子量決定図は、溶出時間(X軸)に対してプロットされた、280nmでの相対的UVシグナル(右側Y軸)および分子量(左側Y軸;測定点はピーク領域内に並ぶ)を示す。タンパク質濃度のオンライン決定には、OptilabrEX屈折率検出器(Wyatt, Santa Barbara, USA)を用いた。粒子による光散乱は、MiniDAWN多角度検出器Treos(Wyatt)を用いて決定した。粒子重量は、屈折率増分を0.180ml/gとして、デバイ形式によるASTRA 5.3.2.17ソフトウェア(Wyatt)を用いて計算した。カラム:Superdex 200 GL 10/ 300(GE Healthcare, Uppsala, Sweden)。サイズエクスクルージョン(t
0)は、20.45分(〜670kDに対応)とする。溶出液:20mMのトリス8.0、150mMのNaCl。
【0081】
【
図15】MPV. 4の分子量決定分析SECのクロマトグラムとオンライン分子量決定図は、溶出時間(X軸)に対してプロットされた、280nmでの相対的UVシグナル(右側Y軸)および分子量(左側Y軸;測定点はピーク領域内に並ぶ)を示す。タンパク質濃度のオンライン決定には、OptilabrEX屈折率検出器(Wyatt, Santa Barbara, USA)を用いた。粒子による光散乱は、MiniDAWN Treos多角度検出器(Wyatt)を用いて決定した。粒子重量は、屈折率増分を0.180ml/gとして、デバイ形式によるASTRA 5.3.2.17ソフトウェア(Wyatt)を用いて計算した。カラム:Superdex 200 GL 10/ 300(GE Healthcare, Uppsala, Sweden)。サイズエクスクルージョン(t
0)は、20.45分(〜670kDに対応)とする。溶出液:20mMのトリス8.0、150mMのNaCl。
【0082】
【
図16】MPV. 6の分子量決定分析SECのクロマトグラムとオンライン分子量決定図は、溶出時間(X軸)に対してプロットされた、280nmでの相対的UVシグナル(右側Y軸)および分子量(左側Y軸;測定点はピーク領域内に並ぶ)を示す。タンパク質濃度のオンライン決定には、OptilabrEX屈折率検出器(Wyatt, Santa Barbara, USA)を用いた。粒子による光散乱は、MiniDAWN Treos多角度検出器(Wyatt)を用いて決定した。粒子重量は、屈折率増分を0.180ml/gとして、デバイ形式によるASTRA 5.3.2.17ソフトウェア(Wyatt)を用いて計算した。カラム:Superdex 200 GL 10/ 300(GE Healthcare, Uppsala, Sweden)。サイズエクスクルージョン(t
0)は、20.45分(〜670kDに対応)とする。溶出液:20mMのトリス8.0、150mMのNaCl。
【0083】
【
図17】固定化されたMPV. 4、MPV. 5、MPV. 6およびMPV. 7へのIgE結合IgEの、ニトロセルロース膜片に固定化されたPhl p 5タンパク質への結合の試験。rPhl p 5b wt:組み換えPhl p 5bアイソフォームrPhl p 5a wt:組み換えPhl p 5aアイソフォームnPhl p 5a/b:天然源のPhl p 5アレルゲン、aおよびbアイソフォームからなる(Allergopharma)MPV.4: d[P57, P58, P117, P146, P155, P180, P229] K61E E205K P211L MPV.5: d[P57, P58, P117, P180, P229] K61E E205K P211LMPV.6:d[P57, P58, P117, P146, P155, P180, P229] P211LMPV.7: d[P57, P58, P117, P180, P229] P211L HSA:ヒト血清からのアルブミン(陰性対照)。全体:片の均一なチャージに対する対照。試薬DB71(Sigma, USA)により染色。SP:血清プールBor18/100(Allergopharma)。
【0084】
【
図18】MPV. 5およびMPV. 4のIgE阻害試験左側のバー(濃灰色):阻害剤濃度5μg/mlでの、rPhl p 5a wtと比べたIgE阻害。右側のバー(薄灰色):阻害剤濃度1.25μg/mlでの、rPhl p 5a wtと比べたIgE阻害。バーの高さは、(n)回の個別実験から得た平均値を示す。エラーバーは、(n)回の評価された個別実験から得た、最大値(上のエラーバー横線)および最小値(下のエラーバー横線)を示す。固相:rPhl p 5a wt。血清プール:Bor 18/100、Allergopharma。
【0085】
【
図19】MPV. 6およびMPV. 7のIgE阻害試験左側のバー(濃灰色):阻害剤濃度5μg/mlでの、rPhl p 5a wtと比べたIgE阻害。右側のバー(薄灰色):阻害剤濃度1.25μg/mlでの、rPhl p 5a wtと比べたIgE阻害。バーの高さは、(n)回の個別実験から得た平均値を示す。エラーバーは、(n)回の評価された個別実験から得た、最大値(上のエラーバー横線)および最小値(下のエラーバー横線)を示す。固相:rPhl p 5a wt。血清プール:Bor 18/100、Allergopharma。
【0086】
【
図20】MPV. 4の機能的アレルゲン性の試験4人の臨床的に定義された草花粉アレルギー患者(P)の好塩基球を用いた好塩基球活性化試験による、MPV. 4の低減した機能的アレルゲン性の証拠。横線:陰性対照による刺激レベル。
【
図21】MPV. 5の機能的アレルゲン性の試験4人の臨床的に定義された草花粉アレルギー患者(P)の好塩基球を用いた好塩基球活性化試験による、MPV. 5の低減した機能的アレルゲン性の証拠。横線:陰性対照による刺激レベル。
【0087】
【
図22】MPV. 6の機能的アレルゲン性の試験4人の臨床的に定義された草花粉アレルギー患者(P)の好塩基球を用いた好塩基球活性化試験による、MPV. 6の低減した機能的アレルゲン性の証拠。横線:陰性対照による刺激レベル。
【
図23】MPV. 7の機能的アレルゲン性の試験4人の臨床的に定義された草花粉アレルギー患者(P)の好塩基球を用いた好塩基球活性化試験による、MPV. 7の低減した機能的アレルゲン性の証拠。横線:陰性対照による刺激レベル。
【0088】
【
図24】rPhl p 5b wt前駆体(IUISエントリーPhl p 5.020);推定アミノ酸配列284 aa(Swiss prot: Q40963.2)、配列番号5 さらなる態様なしでも、当業者は上述の記載を最も広い範囲で用いることができると考えられる。したがって好ましい態様は、説明的開示としてのみ見なされるべきであって、決して限定的ではない。 以下の例はしたがって、本発明を限定することなく説明することを意図する。別の指示がない限り、パーセントのデータは重量パーセントを意味する。全ての温度は摂氏で表される。「慣用の操作」:最終産物の構成に応じ、必要に応じて水を加え、pHは必要に応じて2〜10の間に調製する。
【0089】
以下の本発明の低アレルギー性変異体が、生物工学的方法により調製され特徴付けられた。しかし、物質の調製および特徴付けはまた、当業者が別の方法によって実施することもできる。例えば、本発明の低アレルギー性変異体はまた、化学的に合成可能である。さらに本発明は、以下に記載の本発明の低アレルギー性変異体にも関する。
【0090】
例1:1つまたは2つの隣接したプロリン欠失を有するPhl p 5aの変異体
変異体rPhl p 5a d[P57, P58] + 6His、rPhl p 5a d[P85] + 6His、rPhl p 5a d[P117] + 6His、rPhl p 5a d[P146、P155] + 6His、rPhl p 5a d[P180] + 6His、rPhl p 5a d[P211] + 6His、rPhl p 5a d[P229] + 6His およびrPhl p 5a d[P256] + 6Hisの調製およびその免疫学的特徴付けを、以下に記載する。組み換え非修飾アレルゲン(rPhl p 5 wt + 6His)を同様に調製して調査し、および本発明のイネ科の他のグループ5アレルゲンの低アレルギー性変異体およびそれらの野生型タンパク質、特にLol p 5およびPoa p 5もまた、同様に調製して調査することができる。
【0091】
遺伝子工学による作成:
変異体のDNAを、長いオーバーラップDNAオリゴヌクレオチドの結合およびPCR標準法によるDNA増幅により、合成する。コドンを、推定アミノ酸配列がPhl p 5.0109のそれに基づくように選択する(
図3、4)。プロリン欠失についての変異を、PCR反応でプロリンについて対応するコドンが欠如している特定のオリゴヌクレオチドを用いて導入する。オリゴヌクレオチドは、推定タンパク質が、5’末端においてヘキサヒスチジン融合成分を有するように選択する(
図5、6)。cDNAを、発現ベクターpTrcHis2 Topo(Invitrogen, Carlsbad, USA)にライゲートする。DNAの正確さを、配列決定により確認する。
【0092】
発現、精製および生化学的分析:
発現を、大腸菌(Top 10株;Invitrogen)において行う。rPhl p 5a wtおよび変異体を、N末端ヒスチジン残基のNi2+キレートマトリックス(固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー、IMAC;材料:HiTrap, GE Healthcare, Uppsala, Sweden)への特異的結合により精製する。不溶性タンパク質凝集物の不在は、UV−Vis分光法により確認する。
低減したIgE結合の証拠:
試験物質のIgE結合能の調査を、EAST−IgE阻害試験(酵素アレルゲン吸着試験)により行う。この方法において、アレルゲン/IgE相互作用は溶液中で調査でき、例えば膜上で固定化することによる試験物質のエピトープのマスキングの妨害を、除外することが可能となる。
【0093】
EAST阻害試験を以下のように実施する。マイクロタイタープレートをアレルゲンで、ここでは組み換え野生型Phl p 5.0109(rPhl 5a wt)で被覆する。非結合のアレルゲン分子を洗浄により除去した後、プレートをウシ血清アルブミンでブロックして、後の非特異的結合を防ぐ。個々のアレルギー患者血清の代表的プール(血清プール)の形態におけるアレルギー患者のIgE抗体を好適に希釈し、これをアレルゲン被覆したマイクロタイタープレートを用いてインキュベートする。アレルゲンに結合したIgE抗体の量を、抗ヒトIgE/アルカリホスファターゼ複合体を用いた基質の反応によって着色された最終産物を得ることにより、光度分析的に定量する。
【0094】
IgE抗体の結合を、溶解性アレルゲンまたは試験すべき物質(組み換え修飾アレルゲン)により、濃度の関数として物質特異的に阻害する。
図7に示す、組み換えアレルゲン変異体Phl p 5aを用いたIgE阻害試験の結果は、Phl p 5aのIgE結合能の低減は、プロリン残基P57およびP58;P117;P146およびP155;P180;P211またはP229の欠失によりもたらされるが、しかし、P85またはP256の欠失によってではないことを示す。低減した阻害作用は、IgEエピトープの減少を示唆する。
【0095】
例2: Phl p 5aの変異体とプロリン欠失の組み合わせ
変異体rPhl p 5a d[P117, P180] + 6Hisの調製およびその免疫学的特徴付けを、Phl p 5.0109に基づくアミノ酸位置57および58、117、146、および155、180、211および229に対応する複数のプロリン欠失の組み合わせを持つ、Poaceaeのグループ5アレルゲンの本発明の低アレルギー性変異体についての例を用いて、以下に記載する。組み換え非修飾アレルゲン(rPhl p 5 wt + 6His)を同様に調製して調査し、および本発明のイネ科の他のグループ5アレルゲンの低アレルギー性変異体およびそれらの野生型タンパク質、特にLol p 5およびPoa p 5もまた、同様に調製して調査することができる。
【0096】
遺伝子工学による作成:
変異体を、長いオーバーラップDNAオリゴヌクレオチドの結合およびPCRによる増幅により、合成する。コドンを、推定アミノ酸配列がPhl p 5.0109のそれに基づくように選択する。プロリン欠失についての変異を、PCR反応でプロリンについて対応するコドンが欠如している特定のオリゴヌクレオチドを用いて導入する。オリゴヌクレオチドは、推定タンパク質が、5’末端においてヘキサヒスチジン融合成分を有するように選択する。cDNAを、発現ベクターpTrcHis2 Topo(Invitrogen, Carlsbad, USA)および大腸菌に形質転換する。DNAの正確さを、配列決定により確認する。
発現、精製および生化学的分析:
発現を、大腸菌(Top 10株;Invitrogen)において行う。変異体をIMACにより精製する。溶出タンパク質の純度をSDS−PAGEでチェックし、不溶性タンパク質凝集物の不在は、UV−Vis分光法により確認する。
【0097】
低減したIgE結合の証拠:
試験物質のIgE結合能の調査を、代表的な血清プールの形態で用いられるアレルギー患者のIgE抗体を用いるEAST阻害試験により行う。
図8に示す結果は、変異体rPhl p 5a d[P117, P180] + 6HisのIgE阻害は、1つのプロリン欠失のみを有する変異体rPhl p 5a d[P117] + 6HisおよびrPhl p 5a d[P180] + 6Hisのそれよりも顕著に低いことを示す。この結果は、個々のプロリン欠失の組み合わせが、Phl p 5aのIgE結合能の低減を増加させ得ることを示す。
【0098】
例3:低アレルギー性変異体rPhl p 5a d[P57, P58, P85, P117, P146, P155, P180, P211, P229, P256](MPV.1 + 6His)
アレルゲン変異体MPV.1 + 6Hisは、調査した全てのPhl 5aプロリン残基の欠失の組み合わせを有する。この調製物の目的は、許容し得るタンパク質溶解性を有しつつ、最大限まで低減されたIgE結合能である。
遺伝子工学による作成:
変異体を、長いオーバーラップDNAオリゴヌクレオチドの結合およびPCRによるDNA増幅により、合成する。コドンを、推定アミノ酸配列がPhl p 5.0109のそれに基づくように選択する。プロリン欠失についての変異を、PCR反応でプロリンについて対応するコドンが欠如している特定のオリゴヌクレオチドを用いて導入する。
【0099】
オリゴヌクレオチドは、推定タンパク質が、5’末端においてヘキサヒスチジン融合成分を有するように選択する。cDNAを、発現ベクターpTrcHis2 Topo(Invitrogen)および大腸菌に形質転換する。DNAの正確さを配列決定により確認する。
発現:
発現を、大腸菌(Top 10株;Invitrogen)において行う。タンパク質は、不溶性封入体として宿主細胞により沈殿される。
溶解性の試験:
タンパク質凝集物は、標準法による細胞消化の後に約80%の純度で単離され、6モルのグアニジン塩酸塩溶液での処置による変性様式で溶解される。
【0100】
変性タンパク質を、この試験用に4℃にて25mlの容量中1:50希釈し、4℃で一晩維持する。次の日、目に見える全ての沈殿を官能的にチェックする。部分的に濃縮した後、試料を遠心分離し、透明な上清をUV−Vis分光法により不溶性微小凝集物の存在について調査する。
変異体MPV.1 + 6Hisの溶解性挙動の系統的調査により、続くタンパク質のグアニジン塩酸塩非含有製剤への変換には、常にタンパク質凝集物の形成が付随し、したがってこれが不可能であることが示される(表1)。
【0101】
例4:低アレルギー性変異体rPhl p 5a d[P57, P58, P117, P146, P155, P180, P211, P229](MPV.2 + 6His)
変異体MPV.2+ 6Hisの調製およびその免疫学的特徴付けを、Phl p 5.0109に基づくアミノ酸位置57、58、117、146、155、180、211および229位に対応するタンパク質欠失の組み合わせを持つ、Poaceaeのグループ5アレルゲンの低アレルギー性変異体についての例を用いて、以下に記載する。組み換え非修飾アレルゲン(rPhl p 5 wt + 6His)を同様に調製して調査し、および本発明のイネ科の他のグループ5アレルゲンの低アレルギー性変異体およびそれらの野生型タンパク質、特にLol p 5およびPoa p 5もまた、同様に調製して調査することができる。
【0102】
遺伝子工学による作成:
変異体を、長いオーバーラップDNAオリゴヌクレオチドの結合およびPCRによるDNA増幅により、合成する。コドンを、推定アミノ酸配列がPhl p 5.0109のそれに基づくように選択する。
プロリン欠失についての突然変異を、PCR反応でプロリンについて対応するコドンが欠如している特定のオリゴヌクレオチドを用いて導入する。
オリゴヌクレオチドは、推定タンパク質が、5’末端においてヘキサヒスチジン融合成分を有するように選択する。cDNAを、発現ベクターpTrcHis2 Topo(Invitrogen)にライゲートし、大腸菌に形質転換する。DNAの正確さを配列決定により確認する。
【0103】
発現:
発現を、大腸菌(Top 10株;Invitrogen)において行う。タンパク質は、不溶性封入体として宿主細胞により沈殿される。
溶解性の試験:
MPV.2+ 6Hisは、調査したpH範囲4.5〜9.0にわたり低い溶解性を示す。目に見える沈殿の形成は、Tween 80およびLアルギニン一塩酸塩を含む溶液によってのみ防ぐことができるが、微小凝集物は下のようにこのバッチにも検出される(表2)。
【0104】
例5:低アレルギー性変異体rPhl p 5a d[P57, P58, P229] K61E, E205K, P211L(MPV.3 + 6His)
変異体MPV.3+ 6Hisの調製およびその免疫学的特徴付けを、Phl p 5.0109のアミノ酸位置に対応するプロリン残基57、58、117、146、155、180、または229の欠失の組み合わせを持つ、Poaceaeのグループ5アレルゲンの低アレルギー性変異体についての例を用いて以下に記載し、ここでプロリン残基211は任意の所望の別のアミノ酸に突然変異しているか、またはリシン61が追加してグルタミン酸に変換されているか、またはグルタミン酸205がリシンに変換されている。組み換え非修飾アレルゲン(rPhl p 5 wt + 6His)を同様に調製して調査し、および本発明のイネ科の他のグループ5アレルゲンの低アレルギー性変異体およびそれらの野生型タンパク質、特にLol p 5およびPoa p 5もまた、同様に調製して調査することができる。
【0105】
MPV.3+ 6Hisのアミノ酸配列中に存在する突然変異K61E、E205KおよびP211Lの、IgE結合能への効果を、変異体rPhl p 5a K61E + 6His、rPhl p 5a E205K + 6His sおよびrPhl p 5a P211L + 6Hisを調製し、これらを免疫学的に特徴付けることにより調査する。
遺伝子工学による作成:
MPV.3+ 6Hisをコードするヌクレオチド配列は、驚くべきことに、この例においてcDNA合成における複数のポリメラーゼのエラーによって生成される。DNAを発現ベクターpTrcHis2 Topo(Invitrogen)にライゲートする。変異体rPhl p 5a K61E + 6His、rPhl p 5a E205K + 6HisおよびrPhl p 5a P211L + 6HisをコードするDNAを特異的に調製し、発現ベクターpTrcHis2 Topoにライゲートする。生成されたcDNA配列の正確さをDNA配列決定によりチェックする。
【0106】
発現:
発現を、大腸菌(Top 10株;Invitrogen)において行う。タンパク質は、不溶性封入体として宿主細胞により沈殿される。
MPV.3+ 6Hisの溶解性の試験:
タンパク質凝集物は、細胞消化の後に約80%の純度で単離され、6モルのグアニジン塩酸塩溶液での処置による変性様式で溶解される。非変性環境でのMPV.3+ 6Hisの溶解特性をチェックするために、種々の溶液の一連の試験を、変異体MPV.1 + 6HisおよびMPV.2 + 6Hisの実験と同様にして行う。
【0107】
驚くべきことには、変異体MPV.3+ 6Hisは、希釈プロセス中わずかに塩基性のpHにおいて、高い溶解性を有する(表3)。この挙動は、上記で調査した変異体MPV.1 + 6HisおよびMPV.2 + 6Hisとは対照的であり、非変性環境でのタンパク質の調製の大きな利点を示す。
MPV.3 + 6Hisおよび変異体rPhl p 5a K61E + 6His、 rPhl p 5a E205K + 6HisおよびrPhl p 5a P211L + 6Hisの精製:
変性タンパク質を20mMのトリス、150mMのNaCl、pH9.0中に1:50希釈し、8℃で一晩維持する。クロマトグラフィー精製をIMAC(HiTrap material, GE Healthcare)およびSEC(Superdex 75 material, GE Healthcare)により行う。タンパク質は、150mMのNaClを有する25mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.5中で最終的に安定かつ溶解形態である。
【0108】
生化学的分析:
純度をSDS−PAGEでチェックする。不溶性のタンパク質凝集物の不在は、UV−Vis分光法により確認する。
MPV.3 + 6Hisの低減したIgE結合の証拠:
MPV.3 + 6HisのIgE結合能の調査を、代表的な血清プールの形態で用いられるアレルギー患者のIgE抗体を用いるEAST阻害試験により行う。
図9に示す結果は、MPV.3 + 6HisのIgE阻害は、変異体rPhl p 5a d[P57, P58] + 6HisおよびrPhl p 5a d[P229] + 6Hisのそれよりも顕著に低いことを示す。
【0109】
変異体MPV.3+ 6Hisの突然変異K61E、E205KおよびP211Lのさらなる特徴付けのため、3種の変異体rPhl p 5a K61E + 6His、rPhl p 5a E205K + 6HisおよびrPhl p 5a P211L + 6HisをEASTにより調査する。
変異体rPhl p 5a P211L + 6Hisは、前に試験した点突然変異体rPhl p 5a d[P211] + 6Hisに対して比較的低い阻害挙動を示す。変異体rPhl p 5a K61E + 6HisおよびrPhl p 5a E205K+ 6Hisは、わずかに低減したIgE結合を示す(
図10)。
3つの点突然変異K61E、E205KおよびP211Lは、MPV.3+ 6Hisの顕著に低減したIgE結合に寄与すると結論付けることができる。
【0110】
MPV.3+ 6Hisの機能的アレルゲン性の低減の証拠:
エフェクター細胞の膜結合性IgEの架橋におけるMPV.3+ 6Hisの機能的作用と、その活性化を、in vitroで調査する。
好塩基球の活性化試験のために、草花粉アレルギー患者のヘパリン添加全血を、種々の濃度の試験物質と共にインキュベートする。アレルゲン性物質は、好塩基性顆粒球の高親和性IgE受容体と関連のある特定のIgE抗体に結合することができる。アレルゲン分子により引き起こされるIgE/受容体複合体の架橋はシグナル変換をもたらし、これはエフェクター細胞の脱顆粒化をもたらし、したがってin vivoでアレルギー反応を引き起こす。
【0111】
好塩基性免疫細胞のアレルゲン誘発性の活性化は、IgE−受容体の架橋のシグナル変換に共役した表面タンパク質(CD203c)の発現を定量化することにより、in vitroで決定することができる(Kahlert et al., Clinical Immunology and Allergy in Medicine Proceedings of the EAACI 2002 (2003) Naples, Italy 739-744)。細胞上で発現される表面タンパク質の数および細胞プールの活性化細胞のパーセンテージの値は、蛍光標識モノクローナル抗体の表面タンパク質への結合および続く蛍光活性化フローサイトメトリによる分析により、高感度で測定される。
MPV.3+ 6Hisは、rPhl p 5a wtに比べて、草花粉アレルギー患者の好塩基性顆粒の活性化の低減を示し、したがって低減した機能的アレルゲン性を示す(
図11)。
【0112】
例6:低アレルギー性変異体rPhl p 5a d[P57, P58, 117, 146, 155, 180, P229] K61E, E205K, P211L(MPV.4)
変異体MPV.4の調製およびその免疫学的特徴付けを、Phl p 5.0109のアミノ酸位置に対応するプロリン残基57、58、117、146、155、180、または229の欠失の組み合わせを持つ、Poaceaeのグループ5アレルゲンの低アレルギー性変異体についての例を用いて以下に記載し、ここでプロリン残基211は任意の所望の別のアミノ酸に突然変異しているか、またはリシン61が追加してグルタミン酸に変換されているか、またはグルタミン酸205がリシンに変換されている。組み換え非修飾アレルゲン(rPhl p 5 wt + 6His)を同様に調製して調査し、および本発明のイネ科の他のグループ5アレルゲンの低アレルギー性変異体およびそれらの野生型タンパク質、特にLol p 5およびPoa p 5もまた、同様に調製して調査することができる。
【0113】
MPV.4(+ 6His)の遺伝子工学による作成:
MPV.4(MPV.4+ 6His)のヒスチジン融合タンパク質のcDNAを調製するために、既にクローニングされているMPV.1+ 6HisのcDNAの断片を、既に存在するプラスミドMPV.3 + 6His/ pTrcHis2 Topoに再度クローニングする。融合成分非含有タンパク質(MPV.4)の調製のために、DNAを、ヒスチジン融合成分をコードする部分の無いベクターpTMP(Allergopharma, Reinbek)にライゲートする。配列の正確さは、DNA配列決定によりチェックする。
MPV.4(+ 6His)の発現:
発現を、大腸菌(Top 10株;Invitrogen)においてヒスチジン融合タンパク質(発現ベクターpTrcHis2 Topo:Invitrogen)として、または大腸菌(BL21株;Merck,Darmstadt)において融合成分無しで(発現ベクターpTMP)行う。両方の場合、組み換えタンパク質は封入体として沈殿する。タンパク質は、グアニジン塩酸塩の6モル溶液を用いて可溶化する。
【0114】
MPV.4+ 6Hisの溶解性の試験:
MPV.4+ 6Hisの溶解特性を非変性環境においてチェックするための、種々の溶液の一連の試験を、変異体MPV.1 + 6Hisの実験と同様にして実施する。変異体MPV.4 + 6Hisは、わずかに塩基性のpHで溶解性を有することが観察される(表4)。
MPV.4+ 6Hisの精製:
融合タンパク質は、IMAC(HiTrap material, GE Healthcare)およびSEC(Superdex 75 material, GE Healthcare)により調製スケール上で精製され、最終的に150mMのNaClを有する25mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.5中に存在する。
【0115】
非融合タンパク質MPV.4の精製:
変性非融合タンパク質の溶液を、融合タンパク質の精製スキームと同様にして、初めに20mMのトリス、150mMのNaCl、pH9.0で1:50に希釈し、4℃で一晩維持する。最初の精製ステップにおいて、標的タンパク質を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって富化(enriched)する。
高いイオン強度において、タンパク質はその表面の疎水性に応じて特定強度のHICカラムに結合するため、これらは、塩濃度の段階的低減によって選択的に溶出可能である。
希釈されたタンパク質溶液を、最初にさらに20mMのトリス、2Mの硫酸アンモニウム、150mMのNaCl、pH9.0で1:2に希釈して、最終硫酸アンモニウム濃度1Mを実現する。このタンパク質溶液を次に、HiTrap butyl-S FF HICカラム(GE Healthcare, Uppsala, Sweden)に通し、標的タンパク質の結合の後、20mMのトリス、150mMのNaCl、pH9.0で徐々に溶出する。
【0116】
第2精製ステップの準備として、HIC溶出液を、20mMのトリス、50mMのNaCl、pH8.0中にSephadex-G25カラム(GE Healthcare)を通して再度緩衝する。
第2精製ステップとして、溶出液を陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(HiTrap Q HP, GE Healthcare)に適用し、カラムを通過した物質を収集する。標的タンパク質はカラムを通過した物質中に存在し、一方異種タンパク質はカラムに結合して、効果的に除去される。
AIEXプロセスにおいて、負の表面電荷を有するタンパク質は低いイオン強度でカラム材料に結合し、一方非荷電または正に荷電されたタンパク質は、結合しない。
【0117】
最終ステップにおいて、AIEXの出力を続いてSECカラム(Superdex 75, GE Healthcare)を通して精製し、標的タンパク質を最終的に20mMのトリス、150mMのNaCl、pH8.0中に得る。
MPV.4(+ 6His)の生化学的分析:
タンパク質の純度をSDS−PAGEでチェックする。融合成分非含有MPV.4の同定を、質量分析(MALDI−TOF)による分子量の決定およびN末端アミノ酸の配列決定(配列:A−D−L−G−Y−G−P−A−T)により確認する(表6)。不溶性タンパク質凝集物の不在を、UV−Vis分光法により確認する。
【0118】
SEC/MALS/RIによるMPV.4の分子量解析により、驚くべきことに、溶出タンパク質の質量は28.2〜49.3kDの間(平均質量36.9kD)であることが示される。モノマーの理論的質量が27.6kDであるため、モノマーと二量体の混合物の存在を仮定することができる(
図15、表6)。定量的には、同じ結果が融合タンパク質でも得られる。
MPV.4(+ 6His)の低減したIgE結合の証拠:
IgE結合能の調査を、代表的な血清プールの形態で用いられるアレルギー患者のIgE抗体を用いるEAST阻害試験により行う。
図12に示す結果は、MPV.4が、融合成分有りおよび無しの両方で同程度に低減したIgE結合を有することを示す。したがって、低減したIgE反応性は、ヒスチジンタグの存在に依存しないことを示す。
【0119】
膜結合性試験タンパク質上での、アレルギー患者血清からの特定のIgEのIgE反応性を決定する簡単な試験方法は、ストリップ試験である。この目的のために、同じ濃度で同じ量の試験物質を、一緒に非変性条件下で1片のニトロセルロース膜に結合させる。一連のかかる膜片を、異なるアレルギー患者の血清を用いて同時にインキュベートすることができる。洗浄ステップの後、特異的に結合したIgE抗体を、抗ヒトIgE/アルカリホスファターゼ複合体によって促進される呈色反応により、膜上で可視化させる。
個別の草花粉アレルギー患者の血清を用いた変異体MPV.4の結果を、
図17に示す。天然のPhl p 5(nPhl p 5a/b、Phl p 5aおよびbアイソフォームの混合物)に対する抗体を有するアレルギー患者の血清を用いる。IgE抗体も組み換えrPhl p 5a wtと同様に反応させ、組み換え野生型bアイソフォームも同様に調査する(rPhl p 5b wt)。
【0120】
全てのアレルギー患者の血清のPhl p 5特異的IgE抗体は、変異体MPV.4に大幅に低減した程度で結合し、一方、組み換え野生型タンパク質rPhl p 5a wtおよびrPhl p 5b wtは、nPhl p 5a/bと同程度に強く結合することが明らかである。
MPV.4の機能的アレルゲン性の低減の証拠:
エフェクター細胞の膜結合性IgEの架橋におけるMPV.4の機能的作用と、その活性化を、in vitroで融合タンパク質および非融合タンパク質と共に調査する。融合タンパク質および融合成分非含有のMPV.4の両方は、rPhl p 5a wtと比べて、草花粉アレルギー患者の好塩基性顆粒球の顕著に低減した活性化を示し、したがって、高度に機能的に低減したアレルゲン性を示す(
図20)。
【0121】
例7:低アレルギー性変異体rPhl p 5a d[P57, P58, P117, P180, P229] K61E, E205K, P211L(MPV.5)
変異体MPV.5の調製およびその免疫学的特徴付けを、Phl p 5.0109のアミノ酸位置に対応するプロリン残基57、58、117、180、または229の欠失の組み合わせを持つ、Poaceaeのグループ5アレルゲンの低アレルギー性変異体についての例を用いて以下に記載し、ここでプロリン残基211は任意の所望の別のアミノ酸に突然変異しているか、またはリシン61が追加してグルタミン酸に変換されているか、またはグルタミン酸205がリシンに変換されている。組み換え非修飾アレルゲン(rPhl p 5 wt + 6His)を同様に調製して調査し、および本発明のイネ科の他のグループ5アレルゲンの低アレルギー性変異体およびそれらの野生型タンパク質、特にLol p 5およびPoa p 5もまた、同様に調製して調査することができる。
【0122】
MPV.5(+ 6His)の遺伝子工学による作成:
ヒスチジン融合タンパク質(MPV.5+ 6His)のcDNAを調製するために、既にクローニングされているrPhl p 5a d[P117, P180] + 6HisのcDNAの断片を、既に存在するプラスミドMPV.3 + 6His/ pTrcHis2 Topoに再度クローニングする。
融合成分非含有タンパク質(MPV.5)の調製のために、DNAを、ヒスチジン融合成分をコードする部分の無いベクターpTMP(Allergopharma, Reinbek)にライゲートする。配列の正確さは、DNA配列決定によりチェックする。
MPV.5(+ 6His)の発現:
発現を、大腸菌(Top 10株;Invitrogen)においてヒスチジン融合タンパク質(発現ベクターpTrcHis2 Topo:Invitrogen)として、または大腸菌(BL21株;Merck, Darmstadt)において融合成分無しで(発現ベクターpTMP;Allergopharma)行う。
【0123】
両方の場合において、組み換えタンパク質は封入体として沈殿する。タンパク質は、グアニジン塩酸塩の6モル溶液を用いて可溶化する。
MPV.5+ 6Hisの精製:
融合タンパク質は、IMAC(HiTrap material, GE Healthcare)およびSEC(Superdex 75 material, GE Healthcare)により調製スケール上で精製され、最終的に150mMのNaClを有する25mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.5中に存在する。
【0124】
非融合タンパク質の精製:
変性非融合タンパク質のIB溶液を、融合タンパク質の精製スキームと同様にして、初めに20mMのトリス、150mMのNaCl、pH9.0で1:50に希釈し、4℃で一晩維持する。
最初の精製ステップにおいて、標的タンパク質を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって富化する。希釈されたタンパク質溶液を、最初にさらに20mMのトリス、2Mの硫酸アンモニウム、150mMのNaCl、pH9.0で1:2に希釈して、最終硫酸アンモニウム濃度1Mを実現する。このタンパク質溶液を次に、HiTrap butyl-S FF HICカラム(GE Healthcare, Uppsala, Sweden)に通し、標的タンパク質の結合の後、20mMのトリス、150mMのNaCl、pH9.0で徐々に溶出する。
【0125】
第2精製ステップの準備として、HIC溶出液を、20mMのトリス、50mMのNaCl、pH8.0中にSephadex-G25カラム(GE Healthcare)を通して再度緩衝する。第2精製ステップとして、溶出液を陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(HiTrap Q HP, GE Healthcare)に適用し、標的タンパク質を含有する、カラムを通過した物質を収集する。
最終ステップにおいて、AIEXの出力を続いてSECカラム(Superdex 75, GE Healthcare)を通して精製し、標的タンパク質を最終的に20mMのトリス、150mMのNaCl、pH8.0中に得る。
【0126】
MPV.5(+ 6His)の生化学的分析:
タンパク質の純度をSDS−PAGEでチェックする。不溶性タンパク質凝集物の不在を、UV−Vis分光法により確認する。融合成分非含有MPV.5の同定を、質量分析(MALDI−TOF)による分子量の決定およびN末端アミノ酸配列の配列決定(配列:A−D−L−G−Y−G−P−A−T)により確認する(表6)。
SEC/MALS/RIによるMPV.5の解析は、タンパク質がモノマー形態のみであることを示す(
図13、表6)。類似の結果が、融合タンパク質でも得られる。変異体MPV.4の場合に観察された二量体化への強い傾向は、したがって、変異d[P146, P155]の存在に依存する。
【0127】
MPV.5(+ 6His)の低減したIgE結合の証拠:
IgE結合能の調査を、代表的な血清プールの形態で用いられるアレルギー患者のIgE抗体を用いるEAST阻害試験により行う。MPV.5は、融合成分有りおよび無しの両方の場合に、同程度のIgE結合能の低減を示す。IgE結合能は、変異体MPV.4のそれよりもいくらか高く、これは、モノマー形態のみであるMPV.5の場合に、IgEエピトープのアクセシビリティがより良好であるためであろう(
図18)。
個々の草花粉アレルギー患者の血清を用いたストリップ試験における変異体MPV.5の結果を、
図17に示す。全アレルギー患者血清のPhl p 5特異的IgE抗体は、変異体MPV.5に大幅に低減した程度で結合することが明らかである。
【0128】
MPV.5(+ 6His)の機能的アレルゲン性の低減の証拠:
エフェクター細胞の膜結合性IgEの架橋におけるMPV.5の機能的作用と、その活性化を、in vitroで融合タンパク質および非融合タンパク質と共に調査する。MPV.5は、rPhl p 5a wtと比べて、草花粉アレルギー患者の好塩基性顆粒球の顕著に低減した活性化を示し、したがって、高度に機能的に低減したアレルゲン性を示す(
図21)。
【0129】
例8:低アレルギー性変異体rPhl p 5a d[P57, P58, P117, P146, P155, P180, P229] P211L(MPV.6)
変異体MPV.6の調製およびその免疫学的特徴付けを、Phl p 5.0109のアミノ酸位置に対応するプロリン残基57、58、117、146、155、180、または229の欠失の組み合わせを持つ、Poaceaeのグループ5アレルゲンの低アレルギー性変異体についての例を用いて以下に記載し、ここでプロリン残基211は任意の所望の別のアミノ酸に突然変異している。組み換え非修飾アレルゲン(rPhl p 5 wt + 6His)を同様に調製して調査し、および本発明のイネ科の他のグループ5アレルゲンの低アレルギー性変異体およびそれらの野生型タンパク質、特にLol p 5およびPoa p 5もまた、同様に調製して調査することができる。
【0130】
遺伝子工学による作成:
DNAを調製するために、MPV.2 + 6HisのDNA断片を、この時存在しているベクターrPhl p 5a d[57, 58, 117, 180, 229] P211L/ pTMP(Allergopharma)中にライゲートする。配列の正確さは、DNA配列決定によりチェックする。
発現:
発現を、融合成分なしのタンパク質として、大腸菌(BL21株;Merck, Darmstadt)において発現ベクターpTMP(Allergopharma)でのみ行う。組み換えタンパク質は、封入体(IB)として沈殿する。
【0131】
精製:
変性非融合タンパク質のIB溶液を、初めに20mMのトリス、150mMのNaCl、pH9.0で1:50に希釈し、4℃で一晩維持する。
最初の精製ステップにおいて、標的タンパク質を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって富化する。
希釈されたタンパク質溶液を、最初にさらに20mMのトリス、2Mの硫酸アンモニウム、150mMのNaCl、pH9.0で1:2に希釈して、最終硫酸アンモニウム濃度1Mを実現する。このタンパク質溶液を次に、HiTrap butyl-S FF HICカラム(GE Healthcare, Uppsala, Sweden)に通し、標的タンパク質の結合の後、20mMのトリス、150mMのNaCl、pH9.0で徐々に溶出する。
【0132】
第2精製ステップの準備として、HIC溶出液を、20mMのトリス、50mMのNaCl、pH8.0中にSephadex-G25カラム(GE Healthcare)を通して再度緩衝する。第2精製ステップとして、溶出液を陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(HiTrap Q HP, GE Healthcare)に適用し、標的タンパク質を含有する、カラムを通過した物質を収集する。最終ステップにおいて、AIEXの出力を続いてSECカラム(Superdex 75, GE Healthcare)を通して精製し、標的タンパク質を最終的に20mMのトリス、150mMのNaCl、pH8.0中に得る。
生化学的分析:
タンパク質の純度をSDS−PAGEでチェックする。融合成分非含有MPV.6の同定を、質量分析(MALDI−TOF)による分子量の決定およびN末端アミノ酸配列の配列決定(配列:A−D−L−G−Y−G−P−A−T)により確認する(表6)。
【0133】
不溶性タンパク質凝集物の不在を、UV−Vis分光法により確認する。SEC/MALS/RIによるMPV.6の解析において、精製されたタンパク質は2つのピークで溶出する。ピーク1はモノマー形態を、ピーク2は二量体形態を表す((
図16、表6)。
二量体化能力は、変異体MPV.4およびMPV.5を基準として示されるように、変異d[P146, 155]の存在に起因する。
【0134】
低減したIgE結合の証拠:
IgE結合の調査を、代表的な血清プールの形態で用いられるアレルギー患者のIgE抗体を用いるEAST阻害試験により行う。
図19に示す結果は、MPV.6が大幅に低減したIgE結合を有することを示す。個々の草花粉アレルギー患者の血清を用いたストリップ試験における結果を、
図17に示す。全てのアレルギー患者血清のPhl p 5特異的IgE抗体は、変異体MPV.6に大幅に低減した程度で結合することが明らかである。
機能的アレルゲン性の低減の証拠:
膜結合性IgEの架橋におけるMPV.6の機能的作用と、好塩基性顆粒球の活性化は、草花粉アレルギー患者の全血での結果により示されるように、rPhl p 5a wtと比べて大幅に低減している(
図22)。
【0135】
例9:低アレルギー性変異体rPhl p 5a d[P57, P58, P117, P180, P229] P211L(MPV.7)
変異体MPV.7の調製およびその免疫学的特徴付けを、Phl p 5a野生型またはPhl p 5.0109のアミノ酸位置に対応するプロリン残基57、58、117、180、または229の欠失の組み合わせを持つ、Poaceaeのグループ5アレルゲンの低アレルギー性変異体についての例を用いて以下に記載し、ここでプロリン残基211は任意の所望の別のアミノ酸に突然変異している。組み換え非修飾アレルゲン(rPhl p 5 wt + 6His)を同様に調製して調査し、および本発明のイネ科の他のグループ5アレルゲンの低アレルギー性変異体およびそれらの野生型タンパク質、特にLol p 5およびPoa p 5もまた、同様に調製して調査することができる。
【0136】
遺伝子工学による作成:
DNAを、PCRプロセスによる特定のオリゴヌクレオチドによるDNA断片の調製により調製し、次にこの時存在しているベクターrPhl p 5a d[P57, P58, P117, P180, P211, P229]/ pTMP(Allergopharma)中に再度クローニングする。配列の正確さは、DNA配列決定によりチェックする。
発現:
発現を、融合成分なしのタンパク質として、大腸菌(BL21株;Merck, Darmstadt)において発現ベクターpTMP(Allergopharma)で行う。組み換えタンパク質は、封入体(IB)として沈殿する。
【0137】
溶解性の試験:
非変性環境中での組み換えタンパク質の溶解特性をチェックするための一連の試験により、わずかに塩基性のpH範囲において、タンパク質の高い溶解性が示される(表5)。
精製:
変性非融合タンパク質のIB溶液を、初めに20mMのトリス、150mMのNaCl、pH9.0で1:50に希釈し、4℃で一晩維持する。最初の精製ステップにおいて、標的タンパク質を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって富化する。希釈されたタンパク質溶液を、最初にさらに20mMのトリス、2Mの硫酸アンモニウム、150mMのNaCl、pH9.0で1:2に希釈して、最終硫酸アンモニウム濃度1Mを実現する。このタンパク質溶液を次に、HiTrap butyl-S FF HICカラム(GE Healthcare, Uppsala, Sweden)に通し、標的タンパク質の結合の後、20mMのトリス、150mMのNaCl、pH9.0で徐々に溶出する。
【0138】
第2精製ステップの準備として、HIC溶出液を、20mMのトリス、50mMのNaCl、pH8.0中にSephadex-G25カラム(GE Healthcare)を通して再度緩衝する。第2精製ステップとして、溶出液を陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(HiTrap Q HP, GE Healthcare)に適用し、標的タンパク質を含有する、カラムを通過した物質を収集する。最終ステップにおいて、AIEXの出力を続いてSECカラム(Superdex 75, GE Healthcare)を通して精製し、標的タンパク質を最終的に20mMのトリス、150mMのNaCl、pH8.0中に得る。
生化学的分析:
タンパク質の純度をSDS−PAGEでチェックする。融合成分非含有MPV.7の同定を、質量分析(MALDI−TOF)による分子量の決定およびN末端アミノ酸配列の配列決定(配列:A−D−L−G−Y−G−P−A−T)により確認する(表6)。不溶性タンパク質凝集物の不在を、UV−Vis分光法により確認する。SEC/MALS/RIによる解析は、溶出されたタンパク質がモノマーの形態のみであることを示す(
図14、表6)。これは、変異d[P146, P155]の不在に起因する。
【0139】
低減したIgE結合の証拠:
IgE結合の調査を、代表的な血清プールの形態で用いられるアレルギー患者のIgE抗体を用いるEAST阻害試験により行う。
図19に示す結果は、MPV.7が、大幅に低減したIgE結合を有することを示す。個々の草花粉アレルギー患者の血清を用いたストリップ試験における結果を、
図17に示す。全てのアレルギー患者血清のPhl p 5特異的IgE抗体は、変異体MPV.7に大幅に低減した程度で結合することが明らかである。
機能的アレルゲン性の低減の証拠:
膜結合性IgEの架橋におけるMPV.7の機能的作用と、草花粉アレルギー患者の好塩基性顆粒球の活性化は、rPhl p 5a wtと比べて大幅に低減している(
図23)。
【0140】
低アレルギー性Phl p 5a変異体のT細胞反応性:
T細胞反応性を調査するために、草花粉アレルギー患者のオリゴクローナルT細胞系を、天然のnPhl p 5aまたはrPhl p 5a wt分子による刺激を用いて従来法により確立する。増殖試験において、異なるT細胞系を基準のアレルゲンrPhl p 5a wtおよび修飾組み換えアレルゲン変異体で刺激した。増殖率を、[3H]チミジンの組み込みにより従来法により決定した。
12人の草花粉アレルギー患者のT細胞系によるMPV.4およびMPV.7の増殖試験の結果を、記載された修飾アレルゲン変異体に対する例を用いて示す。
【0141】
調査した全分子の大部分の突然変異を有する変異体MPV.4のT細胞反応性は、非修飾のrPhl p 5a wtと比べて、アミノ酸配列の修飾があるにも関わらず低減せず、これは、重要なT細胞エピトープの保持を実証する(表7)。
変異体MPV.7は、調査した全ての複数プロリン変異体の、最小数の修飾アミノ酸位置を有する。予想通り、分子は、非修飾アレルゲンrPhl p 5aと比べて、ヒトTリンパ球を良好に刺激する(表8)。
【0142】
【表1】
1封入体から単離されたタンパク質は、初めに6Mグアニジン塩酸塩を用いて変性し、続いて非変性溶液(溶液1〜10)で1:50に希釈し、4℃で一晩維持した。次の日、目に見える粗大凝集物または沈殿による濁度についての官能検査(OC)を実施した。(−)濁りあり;(+)透明溶液。
2透明溶液中の不溶性粗大凝集物検出のための、280および330nmでの吸収比率の決定による、UV/Visスペクトル分析。遠心分離後のバッチの試験。A
280/A
330≦20:沈殿(−);A
280/A
330≦30:沈殿傾向(o);A
280/A
330>30:沈殿なし(+)。(n.p.)実施せず。
3官能分析および分光光度分析に基づく溶解性挙動の評価。(−)不溶性の傾向;(+)溶解性。
【0143】
【表2】
1封入体から単離されたタンパク質は、初めに6Mグアニジン塩酸塩を用いて変性し、続いて非変性溶液(溶液1〜10)で1:50に希釈し、4℃で一晩維持した。次の日、目に見える粗大凝集物または沈殿による濁度についての官能検査(OC)を実施した。(−)濁りあり;(+)透明溶液。
2透明溶液中の不溶性粗大凝集物検出のための、280および330nmでの吸収比率の決定による、UV/Visスペクトル分析。遠心分離後のバッチの試験。A
280/A
330≦20:沈殿(−);A
280/A
330≦30:沈殿傾向(o);A
280/A
330>30:沈殿なし(+)。(n.p.)実施せず。
3官能分析および分光光度分析に基づく溶解性挙動の評価。(−)不溶性の傾向;(+)溶解性。
【0144】
【表3】
1封入体から単離されたタンパク質は、初めに6Mグアニジン塩酸塩を用いて変性し、続いて非変性溶液(溶液1〜10)で1:50に希釈し、4℃で一晩維持した。次の日、目に見える粗大凝集物または沈殿による濁度についての官能検査(OC)を実施した。(−)濁りあり;(+)透明溶液。
2透明溶液中の不溶性粗大凝集物検出のための、280および330nmでの吸収比率の決定による、UV/Visスペクトル分析。遠心分離後のバッチの試験。A
280/A
330≦20:沈殿(−);A
280/A
330≦30:沈殿傾向(o);A
280/A
330>30:沈殿なし(+)。(n.p.)実施せず。
3官能分析および分光光度分析に基づく溶解性挙動の評価。(−)不溶性の傾向;(+)溶解性。
【0145】
【表4】
1封入体から単離されたタンパク質は、初めに6Mグアニジン塩酸塩を用いて変性し、続いて非変性溶液(溶液1〜10)で1:50に希釈し、4℃で一晩維持した。次の日、目に見える粗大凝集物または沈殿による濁度についての官能検査(OC)を実施した。(−)濁りあり;(+)透明溶液。
2透明溶液中の不溶性粗大凝集物検出のための、280および330nmでの吸収比率の決定による、UV/Visスペクトル分析。遠心分離後のバッチの試験。A
280/A
330≦20:沈殿(−);A
280/A
330≦30:沈殿傾向(o);A
280/A
330>30:沈殿なし(+)。(n.p.)実施せず。
3官能分析および分光光度分析に基づく溶解性挙動の評価。(−)不溶性の傾向;(+)溶解性。
【0146】
【表5】
1封入体から単離されたタンパク質は、初めに6Mグアニジン塩酸塩を用いて変性し、続いて非変性溶液(溶液1〜10)で1:50に希釈し、4℃で一晩維持した。次の日、目に見える粗大凝集物または沈殿による濁度についての官能検査(OC)を実施した。(−)濁りあり;(+)透明溶液。
2透明溶液中の不溶性粗大凝集物検出のための、280および330nmでの吸収比率の決定による、UV/Visスペクトル分析。遠心分離後のバッチの試験。A
280/A
330≦20:沈殿(−);A
280/A
330≦30:沈殿傾向(o);A
280/A
330>30:沈殿なし(+)。(n.p.)実施せず。
3官能分析および分光光度分析に基づく溶解性挙動の評価。(−)不溶性の傾向;(+)溶解性。
【0147】
【表6】
1アミノ酸配列に基づき開始メチオニンなしの計算分子量(MW
calc.)(ソフトウェア:DNA-Star, Lasergene, USA)。
2SEC−MALSによる粒子質量の決定。引用した数値は、MPV.4(
*)の測定を除き、ピークウィンドウセットにおける溶出タンパク質粒子の平均質量であり、ここでピークにおける質量全体の分散範囲が示されている。
タンパク質濃度のオンライン決定には、OptilabrEX屈折率検出器(RI)(Wyatt, Santa Barbara, USA)を用いた。粒子による光散乱は、MiniDAWN Treos多角度検出器(Wyatt)を用いて決定した。粒子質量は、屈折率増分を0.180ml/gとして、デバイ形式によるASTRA 5.3.2.17ソフトウェア(Wyatt)を用いて計算した。
カラム:Superdex 200 GL 10/ 300(GE Healthcare, Uppsala, Sweden)。サイズエクスクルージョン(t
0)は、20.45分(〜670kDに対応)。
溶出液:20mMのトリス8.0、150mMのNaCl。
【0148】
【表7】
1刺激指数(SI)、増殖試験の[
3H]測定値から計算。アレルゲン刺激細胞培養物のcpm測定値/非刺激細胞培養物のcpm測定値。
2ドナー:臨床的に定義された草花粉アレルギー患者。
3SI(MPV.4)/SI(rPhl p 5a w)を用いて計算。SD:標準偏差。
【0149】
【表8】
1刺激指数(SI)、増殖試験の[
3H]測定値から計算。アレルゲン刺激細胞培養物のcpm測定値/非刺激細胞培養物のcpm測定値。
2ドナー:臨床的に定義された草花粉アレルギー患者。
3SI(MPV.7)/SI(rPhl p 5a w)を用いて計算。SD:標準偏差。