【文献】
AFOAKWA, E.O. et al.,Factors influencing rheological and textural qualities in chocolate - a review.,Trend. Food Sci. Technol. ,2007年,Vol.18 No.6,pages 290-298
【文献】
ZIEGLER, G.R. et al.,The role of particle size distribution of suspended solids in defining the sensory properties of milk chocolate.,Int. J. Food Prop.,2001年,Vol.4 No.2,pages 353-370
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下に本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明において、固形分粒子メディアン径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2200 (株式会社 島津製作所)で測定された粒子径分布における積算値が50%となる粒子径のことをさす。
また、本発明において、粘度は、B型粘度計を用い、40℃で、ローターNo.6、測定回転数4rpmにて測定した値である。
【0007】
本発明のチョコレートにはチョコレート類の表示に関する
公正競争規約に定めるチョコレートや準チョコレートの他、本発明の効果を奏する限りにおいてテンパータイプ、ノンテンパータイプのファットクリーム等も使用できるが、従来ホワイトチョコレートを使用した含水チョコレートは乳化状態が壊れやすく、ホワイトチョコレートを使用した含水チョコレートに本発明を適用するのが効果的である。
ホワイトチョコレートとは、チョコレートのうち、カカオマスを含まないものをさすが、本発明の効果を奏する限りにおいて、少量のカカオマスを添加しても構わない。
本発明において、チョコレート生地の調製は、常法により行うが、例えば以下の方法により行うことができる。
【0008】
チョコレート生地の原料としては、例えば、カカオマス、ココアパウダー、乳製品、糖類、ココアバター、乳化剤などを混合する。
ここで、乳製品とは、例えば、全粉乳、脱脂粉乳、チーズパウダーなどが挙げられる。ここで、糖類としては、ショ糖(砂糖、粉糖)ぶどう糖、果糖、麦芽糖、転化糖、乳糖などの単糖類及び二糖類などが挙げられる。
スクラロース、サッカリンなどの高甘味度甘味料が添加されていてもよい。
また、ココアバター以外にココアバター代用油脂またはココアバターとココアバター代用油脂の混合物を用いることもある。ここにおいて、ココアバター代用油脂としては、動物又は植物由来のテンパリング脂あるいはノンテンパリング脂が挙げられる。
乳化剤としては、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。乳化剤以外に香料や着色料が添加されてもよい。
【0009】
上記原料を混合し、レファイナーやアトライタ型ボールミル(ボール径:5〜10mm)で微細に粉砕する。必要に応じてココアバターや乳化剤等を添加したりコンチングを行ってもよい。
本発明ではこの粉砕処理を1次粉砕処理といい、その結果得られたチョコレート生地を1次処理チョコレート生地という。
1次処理チョコレート生地の粒子のメディアン径は、例えば8〜15μmである。
その後、1次処理チョコレート生地を湿式粉砕装置で2次粉砕処理することにより、粒子のメディアン径が6μm以下の生地を得る。
本発明では2次粉砕処理で得られたチョコレート生地を2次処理チョコレート生地という。
【0010】
湿式粉砕装置とは、連続層が液体である固液混合物中の固形分を粉砕する装置をいう。
湿式粉砕装置としては、例えば、ストーンミル、レファイナー、ビーズミル等が挙げられるが、チョコレート生地を粉砕し、固形分粒子のメディアン径が6μm以下にできるものであれば良く、特にビーズミルが好ましい。
ビーズミルにおいては、液状の1次処理チョコレート生地は、粉砕室と呼ばれる容器の中に、ポンプで送り込まれる。
粉砕室にはビーズが例えば85%程度充填してある。また、ビーズの粒径は、粉砕されるものにより決定される。
本発明に用いるビーズの粒径は、例えば0.1mm〜3.0mmが挙げられるが、好ましくは、0.3mm〜2.0mmがよい。
粉砕室中央の回転軸を回転させることにより、充填されているビーズが運動する。
粉砕室に送り込まれた1次処理チョコレート生地は、ビーズと衝突することによって微細粒子化され、かつ分散される。
微細粒子化された粉砕処理物は、一度粉砕室を通過した後、連続して、粉砕室を複数回通過してもよい。回転軸の回転速度は、例えば1,000〜4,000rpmが挙げれるが、1,000〜2,800rpmが好ましい。
ビーズの材質としては、ガラス、石英、チタニア、窒化ケイ素、アルミナ、セラミックス(ジルコニア・ジルコニア強化型アルミナ)、スチール、ステレンスなどが挙げられる。
ビーズミルとしては、例えば、ターボ工業株式会社製のOBミル(商品名)や、株式会社井上製作所のマイティーミル(商品名)などが用いられる。ビーズミル処理して得られる粉砕処理物の特徴としては、粒度分布の幅が狭いことが挙げられる。
また、1次粉砕処理または2次粉砕処理されたものは、コンチェにより、コンチングされてもよい。
【0011】
含水チョコレートとは、チョコレート生地と、水性成分を混合したものをさす。
本発明で用いられる水性成分には、生クリーム、牛乳、発酵乳、ヨーグルト、乳酸菌飲料、果汁、酒等の高水分飲料や、糖、タンパク、アミノ酸等を含む高水分液が挙げられる。
本発明では、2次処理チョコレート生地に水性成分を攪拌混合、乳化することで油中水型含水チョコレート生地を得る。
乳化方法は特に限定しないが、チョコレート生地と水性成分を合わせた後速やかに全体が均一になるよう攪拌混合することが好ましい。
乳化状態が油中水型であることを確認するには、乳化物の電気抵抗をテスターを用いて測定し判別する方法が容易である。
乳化物の電気抵抗が無限大を示す、つまり通電しなければ油中水型、一定の電気抵抗値を示す、つまり通電すれば水中油型である。
【0012】
得られる含水チョコレートの水分は混合する水性成分の水分および混合比率によって異なるが、好ましくは5〜30%である。更に、使用するチョコレートがホワイトチョコレートの場合は10〜20%が好ましく、それ以外の場合は15〜25%がより好ましい。
2次処理チョコレート生地は、必要に応じ、予めテンパリングしておいても良い。
テンパリングは常法通りのテンパリングでも良いし、高融点油脂であるBOB(1,3−ジベヘノイル−2−オレオイル−sn−グリセロール)やSOS(1,3―ジステアリル−2−オレオイル−sn−グリセロール)のβ型安定結晶ようなシード剤を添加してもよい。
【0013】
シード剤の市販品としては例えばボブスター(商品名:不二製油社製、BOB粉末50重量%と粉糖50重量%の混合物)やチョコシードA(商品名:不二製油社製)が挙げられる。
本発明では、油中水型含水チョコレート生地を成形し、冷却固化させてもよい。
成形方法は通常のチョコレートの成形方法と同じで構わない。
例えばモールド型に注入して冷却固化後、剥離しても構わないし、平板上に直接所定の形状にデポして冷却固化しても構わない。
【実施例】
【0014】
以下、本発明について実施例を示し具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(製造例1)
【0015】
カカオマス73重量部、ココアパウダー12重量部、砂糖12重量部、ココアバター3重量部、レシチン1重量部、グリセリン脂肪酸エステル(商品名:SYグリスターCRS−75、坂本薬品工業製)1重量部よりなるチョコレート生地を常法により得た。
得られたチョコレート生地の粘度は5,000cps、固形分粒子のメディアン径は6.9μmであった。
得られたチョコレート生地をビーズミル(OBミル;商品名、ターボ工業株式会社製、ビーズの粒径;0.5mm)にポンプで送り、品温が62.2〜63.2℃で、回転速度が、1,000rpmの条件下で、粉砕室の中を通過させ、2次処理チョコレート生地を得た。得られた2次処理チョコレート生地の粘度は3,750cps、固形分粒子のメディアン径は5.6μmであった。
【実施例1】
【0016】
製造例1で得た2次処理チョコレート生地67重量部を30℃に調温しカッターミキサーに投入し、そこに30℃に調温した油分45%水分50%の生クリーム(商品名:明治フレッシュクリーム・45、(株)明治製)30重量部、BOBスター(商品名)3重量部を投入、30秒間攪拌、乳化し、水分15%の含水チョコレート生地を得た。
得られた含水チョコレート生地の電気抵抗をテスター(DIGITAL MULTIMETER PC10、SANWA製)で測定したところ、通電せず、乳化が油中水型であることが分かった。
【実施例2】
【0017】
製造例1で得た2次処理チョコレート生地57重量部を30度に調温しカッターミキサーに投入し、そこに30℃に調温した油分45%水分50%の生クリーム(商品名:明治フレッシュクリーム・45、(株)明治製)40重量部、BOBスター(商品名)3重量部を投入、30秒間攪拌、乳化し、水分20%の含水チョコレート生地を得た。
得られた含水チョコレート生地の電気抵抗をテスター(DIGITAL MULTIMETER PC10、SANWA製)で測定したところ、通電せず、乳化が油中水型であることが分かった。
【実施例3】
【0018】
製造例1で得た2次処理チョコレート生地47重量部を30度に調温しカッターミキサーに投入し、そこに30℃に調温した油分45%水分50%の生クリーム(商品名:明治フレッシュクリーム・45、(株)明治製)50重量部、BOBスター(商品名)3重量部を投入、3分間攪拌、乳化し、水分25%の含水チョコレート生地を得た。
得られた含水チョコレート生地の電気抵抗をテスター(DIGITAL MULTIMETER PC10、SANWA製)で測定したところ、通電せず、乳化が油中水型であることが分かった。
(比較製造例1)
【0019】
カカオマス73重量部、ココアパウダー12重量部、砂糖12重量部、ココアバター3重量部、レシチン1重量部、グリセリン脂肪酸エステル(商品名:SYグリスターCRS−75、坂本薬品工業製)1重量部よりなるチョコレート生地を常法により得た。
得られたチョコレート生地の粘度は5,000cps、固形分粒子のメディアン径は6.9μmであった。
(比較例1)
【0020】
比較製造例1で得られたチョコレート生地67重量部を30℃に調温しカッターミキサーに投入し、そこに30℃に調温した油分45%水分50%の生クリーム(商品名:明治フレッシュクリーム・45、(株)明治製)30重量部、BOBスター(商品名)3重量部を投入、30秒間攪拌し水分15%の含水チョコレート生地を得た。
得られた生地の電気抵抗をテスター(DIGITAL MULTIMETER PC10、SANWA製)で測定したところ、250kΩを示し、油中水型の乳化が不十分であることが分かった。
更にカッターミキサーで攪拌し、攪拌再開後3分、5分、7分の時点での生地の電気抵抗を確認したが、いずれも抵抗値を示し、通電したため、水中油型の乳化状態であり、油中水型にはならなかった。
(製造例2)
【0021】
砂糖28重量部、全粉乳24重量部、脱脂粉乳3重量部、ココアバター6重量部、植物油脂8重量部、乳化剤0.7重量部をミキサーにて混合し、ペースト化したものを、常法通りレファイニングし、フレークを得た。
得られたフレークを常法通りコンチングし、液化したペースト状の生地に、ココアバター30重量部、乳化剤0.3重量部、香料0.3重量部を充分混合し、油分50%の1次処理ホワイトチョコレート生地を得た。
生地粒子のメディアン径及び粘度はそれぞれ8.5μm及び30,000cpsであった。
得られた1次処理ホワイトチョコレート生地をビーズミル(OBミル;商品名、ターボ工業株式会社製、ビーズの粒径;0.5mm)にポンプで送り、品温が62.2〜63.2℃で、回転速度が、1,000rpmの条件下で、粉砕室の中を通過させ、2次処理ホワイトチョコレート生地を得た。生地粒子のメディアン径及び粘度はそれぞれ3.2μm及び50,000cpsであった。
【実施例4】
【0022】
製造例2に記載の2次処理ホワイトチョコレート生地55重量部を30℃に調温しカッターミキサーに投入し、そこに30℃に調温した油分45%水分50%の生クリーム(商品名:明治フレッシュクリーム・45、(株)明治製)40重量部、BOBスター(商品名)5重量部を投入、3分間攪拌、乳化し、水分20%の含水ホワイトチョコレート生地を得た。
得られた含水ホワイトチョコレート生地の電気抵抗をテスター(DIGITAL MULTIMETER PC10、SANWA製)で測定したところ、通電せず、乳化が油中水型であることが分かった。
【実施例5】
【0023】
製造例2に記載の2次処理ホワイトチョコレート生地65重量部、油分45%水分50%の生クリーム30重量部、BOBスター5重量部を実施例1と同じ方法で混合、乳化し、水分15%の含水ホワイトチョコレート生地を得た。
得られた含水ホワイトチョコレート生地は通電しないことより乳化が油中水型であった。
生地表面は滑らかで艶があり、良好な乳化状態であった。
【実施例6】
【0024】
製造例2に記載の2次処理ホワイトチョコレート生地75重量部、油分45%水分50%の生クリーム20重量部、BOBスター5重量部を実施例1と同じ方法で混合、乳化し、水分10%の含水ホワイトチョコレート生地を得た。
得られた含水ホワイトチョコレート生地は通電しないことより乳化が油中水型であった。
生地表面は滑らかで艶があり、良好な乳化状態であった。
(比較製造例2)
【0025】
砂糖28重量部、全粉乳24重量部、脱脂粉乳3重量部、ココアバター6重量部、植物油脂8重量部、乳化剤0.7重量部をミキサーにて混合し、ペースト化したものを、常法通りレファイニングし、フレークを得た。
得られたフレークを常法通りコンチングし、液化したペースト状の生地に、ココアバター30重量部、乳化剤0.3重量部、香料0.3重量部を充分混合し、油分50%のホワイトチョコレート生地を得た。
生地粒子のメディアン径及び粘度はそれぞれ8.5μm及び30,000cpsであった。
(比較例2)
【0026】
比較製造例2で得られたホワイトチョコレート生地55重量部、油分45%水分50%の生クリーム40重量部、BOBスター5重量部を実施例1と同じ方法で3分間攪拌混合し水分20%の含水ホワイトチョコレート生地を得た。
得られた含水ホワイトチョコレート生地の通電性をテスターで確認したところ、通電したので、水中油型の乳化状態であり、油中水型にはならなかった。さらに3分間攪拌混合したが、油中水型にはならなかった。
(比較例3)
【0027】
比較製造例2で得られたホワイトチョコレート生地65重量部、油分45%水分50%の生クリーム30重量部、BOBスター5重量部を実施例1と同じ方法で3分間攪拌混合し、水分15%の含水ホワイトチョコレート生地を得た。
テスターで確認したところ得られた含水ホワイトチョコレートは通電しなかったことから油中水型に乳化していた。
しかし生地表面には艶がなくやや劣った乳化状態であった。
(比較例4)
【0028】
比較製造例2で得られたホワイトチョコレート生地75重量部、油分45%水分50%の生クリーム20重量部、BOBスター5重量部を実施例1と同じ方法で3分間攪拌混合し、水分10%の含水ホワイトチョコレート生地を得た。
テスターで確認したところ得られた含水ホワイトチョコレートは通電しなかったことから油中水型に乳化していた。
しかし生地表面には艶がなくやや劣った乳化状態であった。
(試験例1)
【0029】
実施例4,5,6及び比較例3,4で得た油中水型含水ホワイトチョコレート生地を30℃、2時間静置し、乳化状態を観察した。
実施例4,5,6の油中水型含水ホワイトチョコレート生地は外観に変化はなく、良好な乳化状態を保っていた。
一方、比較例3、4では乳化が壊れて表面に分離した油脂が観察され、品質上好ましくない状態となっていた。
(試験例2)
【0030】
実施例4,5,6及び比較例2,3、4で得た各含水チョコレート生地について、10重量部を略球形に成形、10℃30分冷却し、含水ホワイトチョコレートを得た。
実施例4,5,6の含水ホワイトチョコレートは表面のベタつきもなく固化していた。
該含水ホワイトチョコレートを食したところ、舌触りが滑らかで良好な食感であった。
比較例3、4の含水ホワイトチョコレートは表面のベタつきもなく固化していた。
該含水ホワイトチョコレートを食したところ、ザラザラした舌触りであり、劣った食感であった。
比較例2の含水ホワイトチョコレートは完全に固化しておらず、表面はべとついていた。
さらに10℃30分冷却したが、固化状態、表面のべとつきは変わらなかった。
【実施例7】
【0031】
製造例1で得た2次処理チョコレート生地60重量部を30度に調温しカッターミキサーに投入し、そこに30℃に調温した油分45%水分50%の生クリーム(商品名:明治フレッシュクリーム・45、(株)明治製)40重量部、チョコシードA(商品名)0.2重量部を投入、30秒間攪拌、乳化し、水分20%の含水チョコレート生地を得た。
得られた含水チョコレート生地の電気抵抗をテスター(DIGITAL MULTIMETER PC10、SANWA製)で測定したところ、通電せず、乳化が油中水型であることが分かった。
得られた含水チョコレート生地を縦30mm、横20mm深さ7mmのモールド型に注入、13℃で30分冷却固化し、剥離した。
得られた含水チョコレートの表面には通常のチョコレートの様な光沢があり良好な外観であった。
(比較例5)
【0032】
比較製造例1で得たチョコレート生地60重量部を30度に調温しカッターミキサーに投入し、そこに30℃に調温した油分45%水分50%の生クリーム(商品名:明治フレッシュクリーム・45、(株)明治製)40重量部、チョコシードA(商品名)0.2重量部を投入、30秒間攪拌、乳化し、水分20%の含水チョコレート生地を得た。
得られた含水チョコレート生地の電気抵抗をテスター(DIGITAL MULTIMETER PC10、SANWA製)で測定したところ、通電したため、乳化が水中油型であることが分かった。
得られた含水チョコレート生地を縦30mm、横20mm深さ7mmのモールド型に注入、13℃で30分冷却固化した。
実施例7の含水チョコレートに比べモールドからの剥離が困難であった。
得られた含水チョコレートの表面には光沢がなくざらついており、劣った外観であった。