(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
オレフィン重合用触媒の存在下でオレフィンを重合させて、ポリオレフィン粒子を形成するオレフィン事前重合反応装置と、前記オレフィン事前重合反応装置の後段に接続された請求項1〜16のいずれか一項に記載のオレフィン重合反応装置と、を備えるポリオレフィン製造システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らが検討したところ、運転時間が長時間に及ぶ場合、運転条件によっては、そらせ板の外面(上面)にポリオレフィン粒子が付着する可能性が見いだされた。そらせ板の表面にポリオレフィン粒子が付着し、成長し、成長したポリオレフィン粒子の塊がそらせ板の表面から脱離して落下すると、その下の噴流層の流動が不安定化することが考えられる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、そらせ板の外面(上面)への粒子の付着を抑制できるオレフィン重合反応装置などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るオレフィン重合反応装置は、
鉛直方向に伸びる筒部と、
前記筒部内に配置され、下方に行くほど内径が小さくなると共に下端に上下に貫通する孔を有する縮径部と、
前記縮径部の孔の上方に配置され、下方に行くほど外径が大きくなり、下端が前記筒部の内壁から離間され、鉛直方向に延びる中心軸に沿って上端から下端まで貫通する孔を有する、筒状の下部そらせ板と、
前記下部そらせ板の孔の上方に配置され、下方に行くほど外径が大きくなり、上端が閉じられ、下端が前記筒部の内壁から離間され、下端の外径が前記下部そらせ板の孔の内径以上である、上部そらせ板と、を備える。
【0007】
本発明のオレフィン重合反応装置においては、縮径部の内面上に、触媒を含むポリオレフィン粒子が供給され、縮径部下端の孔から上方に向かってオレフィン含有ガスを高速で流入させ、縮径部の内面と、当該縮径部よりも上方の前記筒部の内面とによって囲まれた反応領域内に噴流層を形成させることができる。ここで、噴流層とは、ガス導入用の孔からのオレフィン含有ガスの作用によって、ポリオレフィン粒子(以下、場合により単に「粒子」という。)からなる粒子層において、筒部の中心軸付近に、粒子濃度が希薄であり且つ当該ガスと共に上向きに粒子が流れる噴流(噴流部)が形成される一方、その周囲に、粒子が重力の影響で移動層状に下降する環状構造が形成され、粒子の循環運動が生じている粒子層の状態をいう。
【0008】
ガス導入用の孔30oから吹込まれたオレフィン含有ガスの一部は噴流を形成して粒子層を吹き抜け、残りは環状構造の粒子層の部分に拡散する。このようにオレフィン含有ガスとポリオレフィン粒子とが固気接触することによって、ポリオレフィン粒子は反応領域内でオレフィンの重合によって成長する。
【0009】
なお、一般に、噴流層は、流動層と比較すると、圧力損失の点において優れた性能を発揮し得ること、及び、粒子の循環運動によって若干プラグフローに近い混合が生じることが知られている。従って、本発明に係るオレフィン重合反応装置は、反応領域における粒子の滞留時間分布を小さくできるという利点がある。また、流動層では流動化に過大なガス流速が必要となる粒径数mm程度の比較的大きなポリオレフィン粒子を製造する際にも、噴流層では流動層に比して低ガス流速にて粒子の流動化が可能となる。
【0010】
また、本発明の反応装置においては、上部そらせ板及び下部そらせ板を設けることにより、噴流層から上方への粒子の飛散を抑制することができる。従って、筒部のフリーボードゾーンを短縮することができ、流動層型の装置と比較し、高い容積効率を達成できる。
【0011】
さらに、本発明によれば、下部そらせ板の外面(上面)への粒子の付着が抑制される。これは、下部そらせ板の孔から上方に抜けた粒子が、上部そらせ板によって進路が変えられ、上部そらせ板と下部そらせ板との間から外側に、下部そらせ板の外面(上面)に沿うように排出されることが要因と考えられる。
【0012】
ここで、前記上部そらせ板の下端は、前記下部そらせ板の上端よりも下に位置することができる。
一方、上部そらせ板の下端は、前記下部そらせ板の上端よりも上に位置することもできる。
【0013】
また、下部そらせ板の孔の内径は、縮径部の孔の内径の0.5〜2.0倍であることが好ましい。
【0014】
また、上部そらせ板の下端の外径は、下部そらせ板の孔の内径の3倍以下であることが好ましい。
【0015】
また、下部そらせ板の下端の外径は、前記筒部の内径の0.35〜0.65倍であることが好ましい。
【0016】
また、縮径部の孔の内径は、筒部の内径の0.35倍以下であることが好ましい。
また、反応装置は、下部そらせ板の上端に設けられた、鉛直上方に延びる直管をさらに有することができる。また、反応装置は、上部そらせ板の下端に設けられた、鉛直下方に延びる直管をさらに有することもできる。
【0017】
また、上部そらせ板の外面(上面)に液体オレフィンを接触させるオレフィン供給部をさらに備えることが好ましい。これにより、上部そらせ板の外面(上面)が洗浄されて、上部そらせ板の外面(上面)への粒子の付着も抑制される。また、上部そらせ板の外面(上面)の面積は、下部そらせ板の外面(上面)の面積よりも小さくすることが好ましい。
【0018】
また、筒部、縮径部、下部そらせ板、及び、上部そらせ板の組み合わせを複数備えることが好ましい。これにより、多段重合が可能となる。
【0019】
また、上述の複数の組み合わせは、鉛直方向に並んで配置されることが好ましい。
【0020】
ここで、一の組み合わせから他の組み合わせまでポリオレフィン粒子を移送する移送手段をさらに備えることが好ましい。
【0021】
また、下部そらせ板の外面と水平面とがなす傾斜角が、円筒内のポリオレフィン粒子の安息角よりも大きいことが好ましい。また、上部そらせ板の外面と水平面とがなす傾斜角が、円筒内のポリオレフィン粒子の安息角よりも大きいことが好ましい。これらによれば、ポリオレフィン粒子が各そらせ板上に付着しにくくなる。
【0022】
また、上部そらせ板の外面は、円錐面であることが好ましい。
【0023】
また、下部そらせ板の外面は、円錐面の一部を形成することが好ましい。
【0024】
また、本発明のポリオレフィンの製造方法は、上述の反応装置を用い、縮径部上にポリオレフィン粒子の噴流層を形成させてオレフィンの重合を行う。
【0025】
また、本発明の他の発明は、上述のオレフィン重合反応装置にオレフィンを連続的に供給するとともに、このオレフィン重合反応装置から未反応のオレフィンを含むガスを連続的に抜き出し、抜き出したガスを前記オレフィン重合反応装置に返送する工程と、
【0026】
抜き出したガスの全部又は一部を冷却し、オレフィンを含む凝縮液を得る工程と、
【0027】
上部そらせ板の外面(上面)に前記凝縮液を供給する工程と、を備える。
【0028】
また、本発明のポリオレフィン製造システムは、オレフィン重合用触媒の存在下でオレフィンを重合させて、ポリオレフィン粒子を形成するオレフィン事前重合反応装置と、前記オレフィン事前重合反応装置の後段に接続された上述のオレフィン重合反応装置と、を備える。
【0029】
また、本発明の他のポリオレフィン製造方法は、上述のポリオレフィン製造システムを用いてオレフィンの重合を行うものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、そらせ板の外面(上面)への粒子の付着を抑制しやすい。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0034】
図1に本実施形態に係るポリオレフィン製造システム100Aを示す。この製造システム100Aは、オレフィン事前重合反応装置5と、このオレフィン事前重合反応装置5の後段に接続されたオレフィン重合反応装置10Aとを備える。
【0036】
オレフィン事前重合反応装置5は、オレフィン重合用触媒の存在下でオレフィンを重合させてポリオレフィン粒子を形成する。
【0037】
オレフィン事前重合反応装置5としては、特に限定されないが、例えば、スラリー重合反応装置、塊状重合反応装置、攪拌槽式気相重合反応装置、流動床式気相重合反応装置が挙げられる。なお、これらの装置は、1種を単独で用いてもよく、同一種類の複数の装置を組み合わせて用いてもよく、異なる種類の装置を2以上の組み合わせて用いてもよい。
【0038】
スラリー重合反応装置としては、公知の重合反応装置、例えば、特公昭41−12916号公報、特公昭46−11670号公報、特公昭47−42379号公報に記載の攪拌槽型反応装置やループ型反応装置などを用いることができる。なお、スラリー重合は、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素等の不活性溶媒に、プロピレン、ブテン等のオレフィン単量体を添加したものを重合溶媒とし、重合溶媒中にオレフィン重合用触媒をスラリー状に分散させて、生成する重合体が重合溶媒に溶解しない状態で重合を行う方法である。重合は、重合溶媒が液状に保たれ、生成する重合体が重合溶媒に溶解しない温度及び圧力で行う。重合温度は、通常、30〜100℃であり、好ましくは50〜80℃である。重合圧力は、通常、常圧〜10MPaG、好ましくは、0.3〜5MPaGである。
【0039】
塊状重合反応装置としては、公知の重合反応装置、例えば、特公昭41−12916号公報、特公昭46−11670号公報、特公昭47−42379号公報に記載の攪拌槽型反応装置やループ型反応装置などを用いることができる。なお、塊状重合は、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素等の不活性溶媒が実質的に存在せず、プロピレン、ブテン等のオレフィン単量体を重合溶媒とし、重合溶媒中にオレフィン重合用触媒を分散させて、生成する重合体が重合溶媒に溶解しない状態で重合を行う方法である。重合は、重合溶媒が液状に保たれ、生成する重合体が重合溶媒に溶解しない温度及び圧力で行う。重合温度は、通常、30〜100℃であり、好ましくは50〜80℃である。重合圧力は、通常、常圧〜10MPaG、好ましくは、0.5〜5MPaGである。
【0040】
攪拌槽式気相重合反応装置としては、公知の重合反応装置、例えば、特開昭46−31969号公報、特公昭59−21321号公報に記載の反応装置を用いることができる。なお、攪拌槽式気相重合は、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中でオレフィン重合用触媒及びオレフィン重合体を攪拌機によって流動状態に保ちながら、気体状態の単量体を重合する方法である。重合温度は、通常、50〜110℃であり、好ましくは60〜100℃である。重合圧力は、攪拌槽式気相重合反応装置内でオレフィンが気相として存在し得る範囲内であればよく、通常、常圧〜5MPaG、好ましくは、0.5〜3MPaGである。
【0041】
流動床式気相重合反応装置としては、公知の反応装置、例えば、特開昭58−201802号公報、特開昭59−126406号公報、特開平2−233708号公報に記載の反応装置を用いることができる。なお、流動床式気相重合は、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中でオレフィン重合用触媒及びオレフィン重合体を主として媒体の流れによって流動状態に保ちながら、気体状態の単量体を重合する方法である。流動化を促進するため、補助的に攪拌装置を設ける場合もある。重合温度は、通常、0〜120℃であり、より好ましくは20〜100℃であり、更に好ましくは40〜100℃である。重合圧力は、流動床式反応装置内でオレフィンが気相として存在し得る範囲内であればよく、通常、常圧〜10MPaG、より好ましくは0.2〜8MPaG、更に好ましくは0.5〜5MPaGである。
【0042】
各反応装置の組み合わせとしては、例えば、スラリー重合反応装置又は塊状重合反応装置の後段に、流動床式気相重合反応装置又は攪拌槽式気相重合反応装置を接続した態様があげられる。
【0043】
また、スラリー重合反応装置又は塊状重合反応装置と、その後段に接続される、例えば、流動床式気相重合反応装置、攪拌槽式気相重合反応装置、又は、後述するオレフィン重合反応装置10A等の気相重合反応装置との間には、必要に応じて、未反応のオレフィンや重合溶媒とオレフィン重合体粒子とを分離するフラッシング槽が設けられる。
【0045】
オレフィン重合反応装置10Aは、オレフィン事前重合反応装置5によって生成したポリオレフィン粒子に対して、気体状態のオレフィンを供給して重合反応を行わせる装置である。
【0046】
図1に示すように、オレフィン重合反応装置10Aは、主として、鉛直方向に伸びる円筒(筒部)12、円筒12内に設けられた、複数の下部そらせ板21、複数の上部そらせ板22、及び、複数の筒状バッフル(縮径部)30を備えている。円筒12内には、下部そらせ板21、上部そらせ板22、及び筒状バッフル30は、が上からこの順に繰り返し配置されている。なお、上部そらせ板22、下部そらせ板21、及び筒状バッフル30は、いずれも円筒12の軸と同軸に配置されることが好ましい。また、噴流層の安定化の観点からは、円筒12の内径D0は5m以下であることが好ましく、3.5m以下であることがより好ましい。
【0047】
筒状バッフル30は、下方に向かうほど内径が小さくなるようにされたテーパー円筒であり、上端30aが円筒12の内壁に接している。これにより、ガスは、下端30bの円形状のガス導入用の孔30oから上方に流通し、上端30aと円筒12との間からは流通しないようにされている。なお、下端30bに形成されたガス導入用の孔30oには、オレフィン重合反応装置10Aの起動時や一時停止時などに反応領域25内のポリオレフィン粒子がガス導入用の孔30oから下方に流出しないように逆止弁(図示せず)を配設してもよい。ここで、筒状バッフル30の孔30oの径をD1とする。
【0048】
図1のオレフィン重合反応装置10Aにおいては、円筒12内に5段の反応領域25が鉛直方向に並ぶように形成される。反応領域25は、筒状バッフル30の外面と、その直下の筒状バッフル30の内面と、これらの筒状バッフル30の間の円筒12の部分(円筒部)の内面とによって囲まれた領域である。但し、最上段の反応領域25は、円筒12の頭頂部の内面と、その直下の筒状バッフル30の内面と、これらの間の円筒12の部分(円筒部)の内面とによって囲まれた領域である。
【0049】
各反応領域25内においては、筒状バッフル30の下端30bに形成されたガス導入用の孔30oから上方に向かってオレフィン含有ガスが高速で流入することによって、ポリオレフィン粒子の噴流層が形成されるようになっている。
【0050】
図2に示すように、各反応領域25における筒状バッフル30の上方であり、そのガス導入用の孔30oと対向する位置には、下部そらせ板21及び上部そらせ板22がそれぞれ配設されている。下部そらせ板21及び上部そらせ板22は、噴流層からポリオレフィン粒子が上方に飛散するのを抑制する役割を果たしている。すなわち、噴流層から飛び出した粒子が、下部そらせ板21及び上部そらせ板22に当たることにより、これらの粒子が上方の反応領域に移動することを抑制する。これによって、フリーボードゾーンを短縮することができ、高い容積効率が達成される。
【0051】
下部そらせ板21は、テーパー筒の形状を有し、筒状バッフル30の孔30oの上方に配置されている。下部そらせ板21は、下方に向かうほど外径が大きくなる形状を有する。下端21bは、円筒12の内壁及び筒状バッフル30からは離間されている。下部そらせ板21は、上端21aに、その中心軸に沿って上下に貫通する孔21hを有する。本実施形態では、下部そらせ板21の外面は、円錐面の一部を形成する。ここで、孔21hの内径をD3とする。また、下部そらせ板21の下端21bの外径をD2とする。ここで、孔21hの内径とは、孔の最小の水平断面積の部分の内径である。下端の外径とは、輪郭が最大の水平断面積となる部分の径である。また、本明細書において、断面が円でない場合の径とは、当該断面の面積を円に換算した際の直径で規定される。
【0052】
上部そらせ板22は、下部そらせ板21の孔21hの上方に配置されている。上部そらせ板22は、上端22aが閉じられると共に下方に向かうほど外径が大きくなる形状を有する。下端22bは、円筒12の内壁及び下部そらせ板21からは離間されている。ここで、下端22bの外径をD4とする。下端22bの外径D4は、下部そらせ板21の孔21hの上端の内径D3よりも大きい。上部そらせ板22の内面は、下方に向かうほど径が大きくなることが好ましい。本実施形態では、上部そらせ板22は、下端が解放された中空円錐形状を有する。
【0053】
下部そらせ板21の孔21hの内径D3は、筒状バッフル30の孔30oの内径D1の0.5〜2.0倍であることが好ましい。
【0054】
また、上部そらせ板22の下端22bの外径D4は、下部そらせ板21の孔21hの内径D3の3倍以内であることが好ましい。
【0055】
また、下部そらせ板21の下端21bの外径D2は、筒状バッフル30の孔30oの内径D1よりも大きいことが好ましい。下部そらせ板21の外側から粒子が上方に飛散することを抑制するために、外径D2は、円筒12の内径D0の0.35〜0.65倍であることが好ましい。
【0056】
また、筒状バッフル30の孔30oの内径D1は、円筒12の内径D0の0.35倍以下であることが好ましい。
【0057】
本実施形態では、上部そらせ板22の下端22bは、下部そらせ板21の上端21aよりも上に位置する。上部そらせ板22の下端22bと、下部そらせ板21の上端21aとの間の鉛直方向の距離は、下部そらせ板21の孔21hの内径D3以下であることが好ましい。この距離が大きすぎるときには、ガス速度にもよるが、粒子が上部そらせ板22に当たらないことが生じる場合がある。
【0058】
下部そらせ板21の設置位置は、下部そらせ板21の全部が噴流層の上面よりも上に露出するように設定されることが好ましく、下端が円筒12の内径D0の0.5〜1.5倍の距離で噴流層の上面から離れることがより好ましい。噴流層の上面の位置は、後述するダウンカマー管35aの位置や、エジェクタなどの粒子の供給及び排出手段の運転条件により制御される。
【0059】
本実施形態では、噴流層から吹き上げられた粒子の一部は、下部そらせ板21の内面(下面)に衝突し、その後下向きに移動して噴流層の環状構造へと再び取り込まれる。また、噴流層から吹き上げられた粒子の他の一部は、下部そらせ板21の孔21hを通過して上部そらせ板22の内面(下面)に衝突し、下部そらせ板21と上部そらせ板22との隙間から外側に向けて横方向に排出され、下部そらせ板21の外面(上面)に沿って移動したのちに、再び噴流層の環状構造に取り込まれる。これにより、下部そらせ板21の表面における粒子の付着や堆積が抑制される。
一方、大部分のガスは下部そらせ板21の下端21bと円筒12の内壁との間を通って上方に移動するが、一部のガスは、下部そらせ板21の孔21hを通った後、下部そらせ板21と上部そらせ板22との間から排出された後に上方に移動する。
【0060】
なお、上部そらせ板22及び下部そらせ板21の形状や配置は、上述の態様に限定されない。たとえば、
図3に示すように、上部そらせ板22の下端22bが、下部そらせ板21の上端21aよりも下に位置することもできる。この場合、上部そらせ板22及び下部そらせ板21の間の隙間の最短距離は、粒子径の10倍以上確保することが好ましい。
【0061】
また、たとえば、
図4に示すように、下部そらせ板21の上端に、鉛直上方に延びる直管21sを設けてもよい。また、上部そらせ板22の下端に鉛直下方に延びる直管22sを設けてもよい。直管21s及び/または直管22sを設けることにより、粒子の上方への飛散をより効率よく抑制できる場合がある。これらの直管21s及び22sの長さは、ガスの圧力損失を小さくするために、下部そらせ板21の下端の外径D4の2倍以下が好ましい。
【0062】
図2に示すように、円筒12には、上部そらせ板22の外面(上面)に液体オレフィンを接触させる液体オレフィン供給部85を有する。液体オレフィン供給部85は、上部そらせ板22の外面(上面)に向けて開口するノズル80を有する。ノズル80にはポンプ81を有するラインL8が接続され、このラインL80には液体オレフィン供給源82が接続されている。
【0063】
液体オレフィン供給部85から供給される液体オレフィンにより、上部そらせ板22の外面(上面)への粒子の付着を抑制することができる。上部そらせ板22の外面(上面)の面積は、下部そらせ板21の外面(上面)の面積よりも小さいので、液体オレフィンの供給量は、それほど大きくならない。
【0064】
上部そらせ板22の外面(上面)を鏡面処理したり、フッ素樹脂でコーティングするなどにより、液体オレフィン供給部を設けなくても、上部そらせ板22の外面(上面)での粒子の付着を抑制することは可能である。
【0065】
また、下部そらせ板21の外面(上面)を鏡面処理したりフッ素樹脂コーティングしてもよい。これらのフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレンや、ポリ(ジフルオロメチレン)が挙げられる。
【0066】
図1に示すように、円筒12内に設けられた4つの筒状バッフル30には、これを貫通するようにダウンカマー管35aが設けられ、最下段の筒状バッフル30にはダウンカマー管35bが設けられている。ダウンカマー管35aは、上方の反応領域25から下方の反応領域25へとポリオレフィン粒子を降下させる。ダウンカマー管35bは、最下段の反応領域からポリオレフィン粒子を抜き出して円筒12外へと排出するためのものである。このダウンカマー管35bには2つのバルブV71,V72が直列に配設されており、これらのバルブを逐次開閉することにより、ポリオレフィン粒子を次工程に排出することができる。
【0067】
各反応領域25において安定な噴流層を形成するためには、筒状バッフル30は以下の条件を満足することが好ましい。すなわち、筒状バッフル30は、筒状バッフル30の下端30bのガス導入用の孔30oの内径D1の円筒12の内径d0に対する比率(D1/d0)が0.35以下であることが好ましい。また、
図2における筒状バッフル30の傾斜角α30すなわち、筒状バッフル30の内面が水平面とのなす角は、円筒12内に存在するポリオレフィン粒子の安息角以上とされることが好ましく、傾斜角α30は、安息角以上であって、ポリオレフィン粒子が重力により全量自然に排出され得る角度以上とすることがより好ましい。これにより、ポリオレフィン粒子のスムーズな下方への移動が達成される。
【0068】
図2における下部そらせ板21及び上部そらせ板22の傾斜角α21、α22、すなわち、下部そらせ板21及び上部そらせ板22の外面が水平面となす角も円筒12内に存在するポリオレフィン粒子の安息角以上とされることが好ましい。これにより、各そらせ板21、22にポリオレフィン粒子が付着することを十分に防止できる。
【0069】
ポリオレフィン粒子の安息角は、例えば、35〜50°程度であり、傾斜角α30及びα20は、55°以上とすることが好ましい。
【0070】
なお、各そらせ板21、22及び筒状バッフル30は、それぞれ、図示しないサポートにより、円筒12に固定されており、このサポートによるガス流れやポリオレフィン流れへの影響はほとんどない。円筒12、各そらせ板21、22、及び筒状バッフル30の材質としては、例えば、カーボンスチール、SUS304及びSUS316Lなどを用いることができる。なお、SUSは、JIS(日本工業規格)で規定されるステンレス規格である。腐食成分(例えば、塩素などのハロゲン成分)を多く含む触媒を使用する場合にあっては、SUS316Lを用いることが好ましい。
【0071】
図1に示すように、円筒12の下部には、ガス供給ノズル40が設けられており、ラインL30及びコンプレッサ54を介して、ガス状のオレフィンモノマーが円筒12の下部に供給される。一方、円筒12の上部には、ガス排出ノズル61が設けられている。円筒12内を上昇したガスは、ラインL40を介して外部に排出され、必要に応じて設置されるサイクロン62によりガス同伴粒子が排出される。ガスは、熱交換器63、コンプレッサ64、熱交換器65及び気液分離器66における処理を経た後、ラインL35を介してラインL30内に導入されてリサイクルされる。なお、円筒12の装置下部には、ガス供給ノズル40以外に運転終了時にポリオレフィン粒子を排出できる排出ノズル(図示せず)を設けてもよい。また、運転終了時のオレフィン重合反応装置10A内の粉体残存量を軽減することを目的に、円筒12の下部のガス流れを阻害しない位置に、逆円錐形状の内装物(図示せず)を設置してもよい。
【0072】
また、円筒12には、気液分離器66で分離された液体オレフィンを円筒12の外から所定の反応領域25内に供給する液体供給ノズル50が設けられている。より具体的には、
図1に示すように、液体供給ノズル50は上から2段目の筒状バッフル30のガス導入用の孔30o近傍に配設され、噴流に向けて液体オレフィンが噴射されるようになっている。この液体供給ノズル50には、液化されたオレフィンモノマーを必要に応じて供給するポンプ52及びラインL20が接続されている。また、
図1においては、液体供給ノズル50は筒状バッフル30のガス導入用の孔30oの近傍に配設されているが、当該液体供給ノズル50の位置はこれに限定されるものではなく、例えば、下部そらせ板21の下端近傍に配設してもよい。なお、液体供給ノズル50は、噴流が形成される噴流部のような、高ガス流速となる領域に設置されることが好ましい。
【0073】
更に、円筒12における筒状バッフル30の外面に面する部分には、ガス排出ノズル60が複数設けられている。より具体的には、
図1に示すように、ガス排出ノズル60は上から2段目の筒状バッフル30の外面に面する部分に設けられている。このガス排出ノズル60は、ラインL41を介してラインL40に接続されている。ガス排出ノズル60から排出されるガス量は、液体供給ノズル50から供給されて気化したガス量とほぼ同じとなるようにそれぞれバルブ等により制御される。したがって、液体供給ノズル50から液化されたオレフィンモノマーが円筒12内に供給された場合でも、円筒12内のガス空筒速度は上下でほぼ一定に維持される。
【0074】
また、円筒12における最上段の筒状バッフル30よりも高い位置には、ラインL5が接続され、オレフィン重合触媒固体粒子を含有するポリオレフィン粒子が最上段の反応領域25に供給される。
【0075】
このようにして本実施形態では、オレフィン事前重合反応装置5、及び、オレフィン重合反応装置10Aにより2段の重合工程が実現されている。このようにオレフィン事前重合反応装置5によりポリオレフィン粒子を重合して成長させて、好ましくは粒径500μm以上、より好ましくは700μm以上、特に好ましくは粒径850μm以上の比較的大きなポリオレフィン粒子とすることにより、より安定な噴流層が形成できる。しかし、オレフィン事前重合反応装置5を有さない1段の重合工程とすることも可能である。この場合には、オレフィン重合用触媒又は予備重合触媒が直接オレフィン重合反応装置10Aに供給され、オレフィンの重合がなされることとなる。また、オレフィン事前重合反応装置5やオレフィン重合反応装置10Aのような追加のオレフィン重合反応装置を、オレフィン重合反応装置10Aの後段に更に、1又は複数設け、3段以上の重合工程を実現してもよい。
【0076】
(オレフィン、ポリオレフィン、触媒等)
【0077】
続いて、このようなシステムにおける、オレフィン、ポリオレフィン、触媒等について詳しく説明する。
【0078】
本発明のオレフィン重合反応装置、ポリオレフィン製造方法、ポリオレフィン製造システムでは、オレフィンを重合(単独重合、共重合)して、ポリオレフィンすなわちオレフィン重合体(オレフィン単独重合体、オレフィン共重合体)の製造を行う。本発明で用いられるオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンなどがあげられる。
【0079】
これらオレフィンは1種以上用いられ、また、用いるオレフィンを各重合工程において変更してもよく、多段重合法でおこなわれる場合は、用いるオレフィンを各段において互いに異ならせてもよい。オレフィンを2種以上用いる場合のオレフィンの組み合わせとしては、プロピレン/エチレン、プロピレン/1−ブテン、プロピレン/エチレン/1−ブテン、エチレン/1−ブテン、エチレン/1−ヘキセン、エチレン/1−オクテンなどがあげられる。また、オレフィンに加え、ジエンなどの他の共重合体成分を併用してもよい。
【0080】
本発明では、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体などのオレフィン重合体(単独重合体、共重合体)を好適に製造できる。特に、重合体成分を構成する単量体単位の含有割合が異なる多段重合によって得られるオレフィン系重合体の製造に好適であり、例えば、オレフィン事前重合反応装置5、及び、オレフィン重合反応装置10Aにて1種のオレフィンの供給により単独重合体粒子を、あるいは少量の別種のオレフィンとを共重合したランダム共重合体粒子を形成し、更に後段にオレフィン事前重合反応装置5やオレフィン重合反応装置10Aのような追加のオレフィン重合反応装置にてこれら重合体粒子に対して2種以上のオレフィンを供給して多段重合オレフィン系共重合体を生成することができる。こうすると、オレフィン重合反応装置10Aにおける滞留時間分布が狭いので、重合体粒子内の組成比率を一定にしやすく、成形時の不良低減に特に効果的である。
【0081】
該重合体としては、例えば、プロピレン−プロピレン・エチレン重合体、プロピレン−プロピレン・エチレン−プロピレン・エチレン重合体、プロピレン・エチレン−プロピレン・エチレン重合体、プロピレン−プロピレン・エチレン・1−ブテン重合体などをあげることができる。なお、ここでは、「−」は重合体間の境界を、「・」は重合体内で二種以上のオレフィンが共重合していることを示す。これらの中でも、プロピレンに基づく単量体単位を有する重合体であり、ハイインパクトポリプロピレンと称す(日本国内では慣用的にポリプロピレンブロックコポリマーとも称す)、結晶性プロピレン系重合部と非晶性プロピレン系重合部とを有する多段重合プロピレン系共重合体の製造に好適である。多段重合プロピレン系共重合体は、結晶性のホモポリプロピレン部あるいは少量のプロピレン以外のオレフィンを共重合したランダム共重合体部と、非晶性のエチレンとプロピレン、任意成分としてエチレン、プロピレン以外のオレフィンを共重合したゴム部とを、それぞれの重合体の存在下で、任意の順番で連続して多段に重合して得られるものであり、135℃の1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン中で測定される極限粘度が、好ましくは0.1〜100dl/gの範囲内であるものである。この多段重合プロピレン系共重合体は、耐熱性、剛性及び耐衝撃性に優れるため、バンパーやドアトリムなどの自動車部品、レトルト食品包装容器などの各種包装容器などに用いることができる。
【0082】
また、本発明のオレフィン重合反応装置及び製造方法では、オレフィン重合体の分子量分布を広げるために、各重合工程で製造されるオレフィン重合体成分の分子量を異なるものとしてもよい。本発明は、広分子量分布のオレフィン重合体の製造にも好適であり、例えば、最も分子量が高い重合体成分を製造する重合工程で製造される重合体成分の上記測定で得られる極限粘度が、好ましくは0.5〜100dl/g、より好ましくは1〜50dl/gの範囲内であり、特に好ましくは2〜20dl/gであり、該極限粘度は、最も分子量が低い重合体成分を製造する重合工程で製造される重合体成分の極限粘度の5倍以上であり、最も分子量が高い重合体成分を製造する重合工程で製造される重合体成分の量が、オレフィン重合体中に0.1〜80重量%含有するオレフィン重合体を好適に製造できる。
【0083】
本発明に用いるオレフィン重合用触媒としては、オレフィン重合に用いられる公知の付加重合用触媒を使用することができる。具体例としては、チタンとマグネシウムとハロゲン及び電子供与体を含有する固体触媒成分と有機アルミニウム化合物成分と電子供与体成分とを接触してなるチーグラー系固体触媒、メタロセン化合物と助触媒成分とを粒子状担体に担持してなるメタロセン系固体触媒などをあげることができる。また、これらの触媒を組み合わせて用いることもできる。このような触媒としては、特開2009−161735号公報に記載の触媒及びその製造方法を利用できる。
【0084】
オレフィン重合用触媒の質量平均粒径は、通常、5〜150μmである。特に気相重合反応装置では、装置外への粒子飛散を抑制する観点から、10μm以上であるものが好ましく用いられ、15μm以上であるものがより好ましく用いられる。なお、本実施形態の重合触媒は、流動化助剤、静電気除去添加剤のような添加剤を含んでいてもよい。また、本実施形態の重合触媒は、重合体の分子量を調整するために水素などの連鎖移動剤を併用することも可能である。
【0085】
以上のオレフィン重合用触媒は、予め少量のオレフィン類で重合させたいわゆる予備重合触媒であってもよい。予備重合において用いられるオレフィン類としては、上述した重合で用いられるオレフィンがあげられる。この場合1種類のオレフィンを単独で用いてもよく、2種類以上のオレフィンを併用してもよい。
【0086】
予備重合触媒の製造方法としては、スラリー重合、気相重合等があげられる。この中でも好ましくはスラリー重合である。この場合、製造において経済的に有利となることがある。また、回分式、半回分式、連続式のいずれを用いて製造してもよい。
【0087】
予備重合触媒の質量平均粒径は、通常、5〜1000μmである。特に気相重合反応装置では、装置外への飛散を抑制する観点から、10μm以上であるものが好ましく用いられ、15μm以上であるものがより好ましく用いられる。また、粒径が20μm以下、特に10μm以下の予備重合触媒は少ない方が好ましい。
【0088】
なお、重合触媒の反応装置への導入は炭化水素溶媒等に懸濁させて導入してもよく、更にいはモノマーガス、窒素等の不活性ガスに同伴させて導入してもよい。
【0090】
続いて、このようなシステムを用いてポリオレフィンを製造する方法について説明する。まず、オレフィン事前重合反応装置5において、公知の方法によりオレフィン重合用触媒を用いて、重合活性のある触媒成分を含むポリオレフィン粒子を生成する。
【0091】
一方、オレフィン重合反応装置10AにおいてラインL30を介してノズル40からオレフィンモノマーガスを供給し、重合圧力にまで昇圧すると共に、円筒12内を加温する。重合圧力は、反応装置内でオレフィンが気相として存在し得る範囲内であればよく、生産性の観点から、常圧〜10MPaG、より好ましくは0.2〜8MPaG、更に好ましくは0.5〜5MPaGである。重合温度は、モノマーの種類、製品の分子量等によっても異なるが、オレフィン重合体の融点以下、好ましくは融点よりも10℃以上低い温度である。具体的には、0〜120℃が好ましく、20〜100℃がより好ましく、40〜100℃が更に好ましい。また、重合触媒の重合活性を向上させるために、実質的に水分が存在しない環境下で重合を行うことが好ましい。また、重合反応系内に酸素、一酸化酸素、二酸化炭素が過剰に存在すると重合活性が低下することがある。
【0092】
その後、公知の方法により別途得られた粒径0.5〜5.0mm程度のポリオレフィン粒子を、ラインL5に接続された供給ライン(図示せず)を介して円筒12内へと供給する。通常、円筒12内へと供給されるポリオレフィン粒子は重合活性のある触媒成分を含んでいないものを用いる場合が多いが、重合活性のある触媒成分を含んでいても差支えない。
【0093】
ノズル40からオレフィンモノマーガスを供給しながら、円筒12内にポリオレフィン粒子を供給すると、
図2に示すように、反応領域25内にはポリオレフィン粒子の噴流層が形成される。すなわち、ガス導入用の孔30oからのガスの作用によって、反応領域25における円筒12の中心軸付近に粒子濃度が希薄であり且つこのガスと共に上向きに粒子が流れる噴流が形成される一方、その周囲を粒子が重力の影響で移動層状に下降する環状構造が形成され、反応領域25内で粒子の循環運動が生じる。
【0094】
各反応領域25内に噴流層が形成された段階で、事前重合反応装置5において生成された重合活性のある触媒成分を含むポリオレフィン粒子を、単位時間あたり一定量でラインL5から円筒12内に供給し、オレフィン重合反応装置10Aの定常運転を開始する。重合活性のある触媒成分を含むポリオレフィン粒子は、各反応領域25内で成長しながら、ダウンカマー管35aを通じて下方の反応領域25内へと順次降下し、最終的にダウンカマー管35bから排出される。
【0095】
他方、オレフィンモノマーを含むガスは、その一部が噴流を形成して粒子層を吹き抜け、残りは環状構造の粒子層の部分に拡散する。このようにオレフィン含有ガスとポリオレフィン粒子とが固気接触することとなり、ポリオレフィン粒子内の触媒の作用によりオレフィン重合反応が進行し、ポリオレフィン粒子が成長することとなる。
【0096】
各反応領域25において安定な噴流層を形成するためには、以下の運転条件を満足することが好ましい。すなわち、ガス空塔速度U
0が噴流層を形成し得る最小ガス空塔流速Ums以上であることである。最小ガス空塔速度Umsは取扱い粉体やガスの物性に加え、重合反応装置の形状に影響される。最小ガス空塔速度Umsの推算式は各種提案されているが、一例として下記式(1)をあげることができる。
【数1】
【0097】
式中、d
Pは粒径を、ρ
Sは粒子の密度を、ρ
Gは反応領域の圧力・温度条件下におけるガスの密度を、ρ
AIRは室温条件下における空気の密度を、L
Sは噴流層高さを、それぞれ示す。
【0098】
また、反応領域25内における噴流層高さL
Sは、噴流層を形成し得る最大噴流層高さLs
MAXm以下であり、最大噴流層高さLs
MAX以下であれば特に制限はない。最大噴流層高さLs
MAXの推算式は各種提案されているが、一例として下記式(2)をあげることができる。
【数2】
【0099】
式中、u
tは粒子の終末速度を、u
mfは最小流動化速度を、それぞれ示す。
【0100】
なお、噴流層高さL
Sは、容積効率やより安定な噴流層を形成させる観点から、筒状バッフル30よりも高い方が好ましい。
【0101】
また、
図1に示すように、オレフィン重合反応装置より抜き出したオレフィンを含むガスの全部又は一部を凝縮させて凝縮液を得た後、その凝縮液を円筒12の中段のノズル50から円筒12に供給してもよい。この場合、重合反応により消費されるオレフィンモノマーの補給ができる。これに加え、円筒12内で液状のオレフィンモノマーが蒸発する際に、蒸発潜熱によりポリオレフィン粒子の除熱も可能である。円筒12内の複数の反応領域25にあっては、上方の反応領域25ほど反応熱によって高温となりやすく、下方の反応領域25と温度差が生じる。そこで、円筒12の中段に設けられたノズル50から液状のオレフィンモノマーを供給することによってその温度差を最小限に抑制でき、温度の均一化が図られる。
【0102】
本実施形態に係るオレフィン重合反応装置10Aによれば、円筒12内に多段の噴流層が形成され、粒子の滞留時間分布を狭化させることができる。従って、連続的にオレフィン重合体を製造する際に、重合体構造上の均一性に優れたものを製造できる。また、製造条件を変更するに際し、条件変更前に重合されたポリオレフィン粒子を容器内から容易に排出できるため、規格外品の発生量を十分に削減できる。
【0103】
そして、特に本実施形態によれば、上部そらせ板22及び下部そらせ板21を備えることにより、噴流層から飛び出す粒子を効率よくその噴流層に戻すことができ、粒子の滞留時間分布の均一性を向上しやすく、さらに、下部そらせ板21と上部そらせ板22との間から吹き出す粒子により、下部そらせ板21の外面(上面)への粒子の付着や堆積を抑制することができる。
【0104】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、上流側の反応領域から下流側の反応領域にポリオレフィン粒子を移送する移送手段として、ダウンカマー管35aを採用する場合を例示したが、これの代わりに、エジェクタ方式でポリオレフィン粒子を移送してもよい。また、開閉弁を流通路に離間して2つ設けて粉体の移送を行う、ダブルダンパー又はダブルバブルシステムと呼ばれる移送手段を用いてもよい。
【0105】
なお、上記実施形態においては、5段の噴流層が鉛直方向に形成されるオレフィン重合反応装置を例示したが、噴流層の段数はこれに限定されず、単段であってもよい。十分なプラグフロー化を実現する観点から、噴流層の段数は、3段以上であることが好ましく、6段以上であることがより好ましい。なお、上記実施形態において、円筒(筒部)12の一部、筒状バッフル30、下部そらせ板21、及び上部そらせ板22の組み合わせそれぞれが、一段の噴流層に対応する。
更に、多段の噴流層は、必ずしも鉛直方向に形成されていなくてもよく、例えば、単段の噴流層が内部に形成される反応装置を水平方向に複数設置し、これらの反応装置を直列に連結してもよい。なお、装置設計や運転制御法については、ポリオレフィン粒子の滞留時間分布が狭くなるように、各段(オレフィン事前重合反応装置5を含む)でのポリオレフィン生成量がより均一となるように、装置各段の容量を設計し、ポリオレフィン粒子のホールドアップや滞留時間を制御することが好ましい。
【0106】
また、上記実施形態においては、液体供給ノズル50を上から2段目の筒状バッフル30のガス導入用の孔30o近傍に配設する場合を例示したが、液体供給ノズル50の配設箇所及び個数は、製造するポリオレフィン粒子の種類等に応じて適宜設定すればよい。例えば、他の手段によって各反応領域25の温度の均一化が図れれば、必ずしも液体供給ノズル50を配設しなくてもよく、あるいは、全ての筒状バッフル30のガス導入用の孔30o近傍に液体供給ノズル50をそれぞれ配設してもよい。
【0107】
また、上記実施形態においては、筒部として円筒12を用いているが、角筒などでも実施は可能である。
【実施例】
【0108】
(実施例1)
【0109】
本発明に係るオレフィン重合反応装置の上部そらせ板22及び下部そらせ板21への粒子の付着状況を観察するために、円筒12内に一段の噴流層を形成できる透明塩化ビニル樹脂製の円筒コールドモデル装置を準備した。この装置は、ガス導入用の孔(オリフィス)30oを有する逆円錐形状の筒状バッフル30と、その上方に設けられた下部そらせ板21と、上部そらせ板22とを有し、これらが円筒12内に同軸に設置されたものである。
【0110】
円筒コールド装置の内径D0は500mmであり、筒状バッフル下端のガス導入用の孔の径D1は75mmであった。従って、本実施例においては、ガス導入用の孔の径D1の円筒の内径D0に対する比率(D1/D0)は、0.15であった。
【0111】
筒状バッフルの内面と水平面とがなす傾斜角、及び、上部及び下部そらせ板の外面と水平面とがなす傾斜角は、いずれも65°とした。また、下部そらせ板21は、上方が細くなるテーパー管形状を有し、軸中心に孔を有した。孔の外径D3が264mmであり、下部そらせ板の下端の外径D2は264mmであった。上部そらせ板22は、下端が解放された中空の円錐形状を有し、上部は閉じられていた。下端の外径D4は、142mmであった。さらに、下部そらせ板21の下端は筒状バッフル30の上端から、鉛直方向に400mm上方に位置し、
図3に示すように、上部そらせ板22の下端22bは、下部そらせ板21の上端21aよりも下に位置し、下部そらせ板21と上部そらせ板22との最短距離は15mmとした。
【0112】
5〜15℃かつ相対湿度が50%未満の空気を、上述の筒状バッフルのガス導入用の孔から毎分6.1m
3供給した。また、粒子としては、平均粒径965μm(Sympatec社製レーザー回折式粒度分布測定装置HELOS&RODOSで測定した体積基準50%径を平均粒径とした)のポリプロピレン粒子を用いた。反応領域25にポリプロピレン粒子を30kg充填し、筒状バッフル30のガス導入用の孔30oから上記流量のガスを供給することで、反応領域25内に噴流層を形成させた。
【0113】
噴流層の流動状態を外部から観察した。噴流層から飛び出した粒子の一部は、下部そらせ板21の下面で跳ね返されて噴流層に戻り、粒子の他の一部は、下部そらせ板21の孔を通過して上部そらせ板22の下面で跳ね返され、下部そらせ板21の外面(上面)に沿って流れ落ちた。噴流層の形成開始から10分経過後でも、下部そらせ板21への粒子の付着は認められなかった。これは、上部そらせ板22の内面(下面)で跳ね返された粒子が下部そらせ板21の外面(上面)に沿って流れることにより、洗浄効果が発揮されることによるものと考えられた。上部そらせ板22の外面(上面)には静電気による軽微な付着のみが認められた。
(実施例2)
【0114】
図2に示すように、上部そらせ板22の下端22bが、下部そらせ板21の上端21aよりも上に位置し、上部そらせ板22の下端22bと下部そらせ板21の上端21aとの間の鉛直方向の距離を60mmとした以外は実施例1と同様とした。噴流層の形成開始から10分後に、上部そらせ板の外面(上面)および下部そらせ板の外面(上面)には粒子の付着は認められなかった。
(実施例3)
【0115】
実施例2との違いは、下部そらせ板21の上端に、
図4に示すように鉛直上方に伸びる直管21sを設けた点と、上部そらせ板22の下端と直管21sの上端との間の鉛直方向の距離を65mmとした点である。直管21sの長さは75mmであった。噴流層の形成開始から10分後に、上部そらせ板の外面(上面)および外面(下部)そらせ板の上面には粒子の付着は認められなかった。
(比較例1)
【0116】
上部そらせ板22を用いず、下部そらせ板21が、テーパー管形状ではなく、下端のみが解放された中空の円錐形状とした以外は実施例1と同様にした。噴流層の形成開始から10分後に、下部そらせ板の外面(上面)には全面に大量の静電気による粒子の付着が認められた。