特許第5872484号(P5872484)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人九州大学の特許一覧 ▶ 日産化学工業株式会社の特許一覧

特許5872484含フッ素ハイパーブランチポリマー及びその製造方法
<>
  • 特許5872484-含フッ素ハイパーブランチポリマー及びその製造方法 図000039
  • 特許5872484-含フッ素ハイパーブランチポリマー及びその製造方法 図000040
  • 特許5872484-含フッ素ハイパーブランチポリマー及びその製造方法 図000041
  • 特許5872484-含フッ素ハイパーブランチポリマー及びその製造方法 図000042
  • 特許5872484-含フッ素ハイパーブランチポリマー及びその製造方法 図000043
  • 特許5872484-含フッ素ハイパーブランチポリマー及びその製造方法 図000044
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872484
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】含フッ素ハイパーブランチポリマー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/20 20060101AFI20160216BHJP
   C08F 12/14 20060101ALI20160216BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20160216BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20160216BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20160216BHJP
   C09D 165/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   C08F8/20
   C08F12/14
   C08F2/38
   C08J7/04 S
   C08J5/00CEU
   C09D165/00
【請求項の数】14
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2012-546933(P2012-546933)
(86)(22)【出願日】2011年12月1日
(86)【国際出願番号】JP2011077797
(87)【国際公開番号】WO2012074051
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年12月1日
(31)【優先権主張番号】特願2010-268876(P2010-268876)
(32)【優先日】2010年12月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100163360
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 知篤
(72)【発明者】
【氏名】永島 英夫
(72)【発明者】
【氏名】井川 和宣
(72)【発明者】
【氏名】西形 孝司
(72)【発明者】
【氏名】小島 圭介
(72)【発明者】
【氏名】田中 章博
(72)【発明者】
【氏名】上杉 理
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/029688(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/099055(WO,A1)
【文献】 特開2009−235372(JP,A)
【文献】 特開2009−242787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 8/00−8/50
2/00−2/60
12/00−12/36
C08J 5/00−5/24
7/00−7/18
C09D 165/00−165/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwが3,000乃至200,000である、式[1]で表される含フッ素ハイパーブランチポリマー。
【化1】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Aは式[2]又は式[3]で表される構造を表し、Lは−SC(=O)−又は−O−を表し、Rfはそれぞれ同一であっても異なっていても良い炭素原子数2乃至12のフルオロアルキル基を表し、nは繰り返し単位構造の数であって、2〜3,000の整数を表す。)
【化2】
(式中、Aは、エーテル結合若しくはエステル結合を含んでいても良い炭素原子数1乃至30の直鎖状アルキレン基、エーテル結合若しくはエステル結合を含んでいても良い炭素原子数3乃至30の分枝状アルキレン基、又はエーテル結合若しくはエステル結合を含んでいても良い炭素原子数3乃至30の環状アルキレン基を表し、Y、Y、Y及びYはそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。)
【請求項2】
前記Rfが、主鎖又は末端の炭素原子に水素原子及びフッ素原子が結合する炭素原子数2乃至12のフルオロアルキル基を表す、請求項1に記載の含フッ素ハイパーブランチポリマー。
【請求項3】
前記フルオロアルキル基が、その末端にジフルオロメチル構造を有するフルオロアルキル基である、請求項2に記載の含フッ素ハイパーブランチポリマー。
【請求項4】
前記Rfが、式[4]で表される炭素原子数2乃至12のフルオロアルキル基を表す、請求項1に記載の含フッ素ハイパーブランチポリマー。
【化3】
(式中、Xは水素原子又はフッ素原子を表し、kは1又は2を表し、mは0乃至5の整数を表す。)
【請求項5】
前記Xが水素原子を表す、請求項4に記載の含フッ素ハイパーブランチポリマー。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載の含フッ素ハイパーブランチポリマーを含有するワニス。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載の含フッ素ハイパーブランチポリマーからなる薄膜。
【請求項8】
(a)請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載の含フッ素ハイパーブランチポリマー、及び(b)熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂を含有する樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の樹脂組成物より作製される樹脂成形品。
【請求項10】
(a)請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載の含フッ素ハイパーブランチポリマー、(c)重合性化合物、及び(d)重合開始剤を含有する重合性組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の重合性組成物の重合物からなる、樹脂成形品。
【請求項12】
(A)式[5]で表されるハイパーブランチポリマーと、炭素原子数2乃至12のフルオロアルコキシドとを反応させる工程
を含む、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwが3,000乃至200,000である式[6]で表される含フッ素ハイパーブランチポリマーの製造方法。
【化4】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Aは式[2]又は式[3]で表される構造を表し、Halはハロゲン原子を表し、Rfはそれぞれ同一であっても異なっていても良い炭素原子数2乃至12のフルオロアルキル基を表し、nは繰り返し単位構造の数であって、2〜3,000の整数を表す。)
【化5】
(式中、Aは、エーテル結合若しくはエステル結合を含んでいても良い炭素原子数1乃至30の直鎖状アルキレン基、エーテル結合若しくはエステル結合を含んでいても良い炭素原子数3乃至30の分枝状アルキレン基、又はエーテル結合若しくはエステル結合を含んでいても良い炭素原子数3乃至30の環状アルキレン基を表し、Y、Y、Y及びYはそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。)
【請求項13】
(B)式[7]で表されるハイパーブランチポリマーの分子末端のジチオカルバメート基を、ハロゲン化剤でハロゲン原子に置換する工程
をさらに含む、請求項12に記載の含フッ素ハイパーブランチポリマーの製造方法。
【化6】
(式中、R、A及びnは前記式[5]に記載の定義と同義であり、R及びRはそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至5のアルキル基、炭素原子数1乃至5のヒドロキシアルキル基、若しくは炭素原子数7乃至12のアリールアルキル基を表すか、又はR及びRは、それらと結合する窒素原子と一緒になって環を形成していても良い。)
【請求項14】
(C)式[7]で表されるハイパーブランチポリマーの分子末端のジチオカルバメート基を、塩基で処理することによりチオールアニオン(−S-)に変換する工程、及び
(D)当該チオールアニオンと式[8]で表されるカルボン酸誘導体とを反応させる工程を含む、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwが3,000乃至200,000である式[9]で表される含フッ素ハイパーブランチポリマーの製造方法。
【化7】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Aは式[2]又は式[3]で表される構造を表し、R及びRはそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至5のアルキル基、炭素原子数1乃至5のヒドロキシアルキル基、若しくは炭素原子数7乃至12のアリールアルキル基を表すか、又はR及びRは、それらと結合する窒素原子と一緒になって環を形成していても良く、nは繰り返し単位構造の数であって、2〜3,000の整数を表し、Rfはそれぞれ同一であっても異なっていても良い炭素原子数2乃至12のフルオロアルキ
ル基を表し、Zはヒドロキシ基、炭素原子数1乃至5のアルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。)
【化8】
(式中、Aは、エーテル結合若しくはエステル結合を含んでいても良い炭素原子数1乃至30の直鎖状アルキレン基、エーテル結合若しくはエステル結合を含んでいても良い炭素原子数3乃至30の分枝状アルキレン基、又はエーテル結合若しくはエステル結合を含んでいても良い炭素原子数3乃至30の環状アルキレン基を表し、Y、Y、Y及びYはそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は含フッ素ハイパーブランチポリマーに関し、詳細には樹脂の表面改質剤として用いることができるフッ化アルキル基を有するハイパーブランチポリマー及びそれを含む樹脂組成物、並びに該ハイパーブランチポリマーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー(高分子)材料は、近年、多分野でますます利用されている。それに伴い、それぞれの分野に応じて、マトリクスとしてのポリマーの性状とともに、その表面や界面の特性が重要となっている。例えば表面エネルギーの低いフッ素系化合物を表面改質剤として用いることにより、撥水撥油性、防汚性、非粘着性、剥離性、離型性、滑り性、耐磨耗性、反射防止特性、耐薬品性などの界面制御に関する特性の向上が期待され、種々提案されている。
【0003】
フッ素系ポリマーを用いた熱可塑性樹脂の表面改質に関する開示としては、例えば、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)の配合によって離型性を向上させたポリ(4−メチル−1−ペンテン)(PMP)樹脂フィルム(特許文献1)や、撥水撥油性に優れる含フッ素ポリオレフィン(特許文献2)が提案されている。
また、フッ素系ポリマーを用いた光及び熱硬化性透明樹脂の表面改質に関する開示としては、例えば、フルオロポリエーテルを有するフッ素系ポリマーを用いた熱硬化性エポキシ樹脂の表面処理剤(特許文献3)が挙げられ、また、含フッ素界面活性剤及び/又は環状構造を有するフッ素系ポリマーを含む光硬化性アクリル樹脂が離型性に優れ、表面改質が為されたことが開示されている(特許文献4)。
【0004】
また、多分枝状構造を有するフッ素化合物として、ポリアルコール骨格にエーテル又はエステル結合を介して特定のフッ素含有基を多分枝状に配置されたポリアルコールのエーテル及び/又はエステル誘導体が開示されている(特許文献5)。
但し、上記多分枝状構造を有するフッ素化合物は、例えばグリセリン10量体とヘキサフルオロプロピレンオキサイド3量体とから形成されるエステル誘導体であって、いわば低分子量の化合物であり、高分岐のポリマーを用いた光及び熱硬化性透明樹脂の表面改質を行う方法は提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−307059号公報
【特許文献2】特開平1−289817号公報
【特許文献3】特開2009−7488号公報
【特許文献4】国際公開第2006/114958号パンフレット
【特許文献5】特開2006−137689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の線状フッ素系ポリマーは一部の熱可塑性樹脂に対しては一定の表面改質効果を付与できるが、一般に樹脂との混合・分散性が悪く、特にポリメチルメタクリレート(PMMA)に代表される熱可塑性透明樹脂に分散させた場合、相分離を起こし、透明樹脂の透明性を損なう虞があった。
その上、これらのフッ素系ポリマーは有機溶媒に対する溶解性が低く、これらのポリマーを用いて光及び熱硬化性樹脂の表面改質を行おうとしても、有機溶媒を用いて成膜するプロセスへの適用は困難であった。
また、上述の多分枝状構造を有するフッ素化合物は、水又はプロピレングリコールモノメチロールに対する溶解性が1質量%までしか確認されておらず、こちらも有機溶媒を用いて成膜するプロセスへの適用は困難であった。
すなわち、十分な透明性を保持し、有機溶媒に対する高い溶解性を有し、表面改質効果をも有する新たな化合物が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、従来検討されていなかったハイパーブランチポリマーにフルオロアルキル基を導入し、得られる含フッ素ハイパーブランチポリマーを樹脂の表面改質剤として採用することにより、有機溶媒に対する溶解性に優れるだけでなく、マトリクス樹脂に対する混合・分散性に優れ、マトリクス樹脂中で凝集を起こさず、表面改質性に優れた高い透明性を有する薄膜及び成形体が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は第1観点として、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwが1,000乃至500,000である、式[1]で表される含フッ素ハイパーブランチポリマーに関する。
【化1】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、A1は式[2]又は式[3]で表される構造を表し、Lは−SC(=O)−又は−O−を表し、Rfはそれぞれ同一であっても異なっていても良い炭素原子数2乃至12のフルオロアルキル基を表し、nは繰り返し単位構造の数であって、2〜3,000の整数を表す。)
【化2】
(式中、A2は、エーテル結合若しくはエステル結合を含んでいても良い炭素原子数1乃至30の直鎖状アルキレン基、エーテル結合若しくはエステル結合を含んでいても良い炭素原子数3乃至30の分枝状アルキレン基、又はエーテル結合若しくはエステル結合を含んでいても良い炭素原子数3乃至30の環状アルキレン基を表し、Y1、Y2、Y3及びY4はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。)
第2観点として、前記Rfが、主鎖又は末端の炭素原子に水素原子及びフッ素原子が結合する炭素原子数2乃至12のフルオロアルキル基を表す、第1観点に記載の含フッ素ハイパーブランチポリマーに関する。
第3観点として、前記フルオロアルキル基が、その末端にジフルオロメチル構造を有するフルオロアルキル基である、第2観点に記載の含フッ素ハイパーブランチポリマーに関する。
第4観点として、前記Rfが、式[4]で表される炭素原子数2乃至12のフルオロアルキル基を表す、第1観点に記載の含フッ素ハイパーブランチポリマーに関する。
【化3】
(式中、Xは水素原子又はフッ素原子を表し、kは1又は2を表し、mは0乃至5の整数を表す。)
第5観点として、前記Xが水素原子を表す、第4観点に記載の含フッ素ハイパーブランチポリマーに関する。
第6観点として、第1観点乃至第5観点のうち何れか一項に記載の含フッ素ハイパーブランチポリマーを含有するワニスに関する。
第7観点として、第1観点乃至第5観点のうち何れか一項に記載の含フッ素ハイパーブランチポリマーからなる薄膜に関する。
第8観点として、(a)第1観点乃至第5観点のうち何れか一項に記載の含フッ素ハイパーブランチポリマー、及び(b)熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂を含有する樹脂組成物に関する。
第9観点として、第8観点に記載の樹脂組成物より作製される樹脂成形品に関する。
第10観点として、(a)第1観点乃至第5観点のうち何れか一項に記載の含フッ素ハイパーブランチポリマー、(c)重合性化合物、及び(d)重合開始剤を含有する重合性組成物に関する。
第11観点として、第10観点に記載の重合性組成物を重合させて作製される樹脂成形品に関する。
第12観点として、(A)式[5]で表されるハイパーブランチポリマーと、炭素原子数2乃至12のフルオロアルコキシドとを反応させる工程
を含む、式[6]で表される含フッ素ハイパーブランチポリマーの製造方法に関する。
【化4】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、A1は式[2]又は式[3]で表される構造を表し、Halはハロゲン原子を表し、Rfはそれぞれ同一であっても異なっていても良い炭素原子数2乃至12のフルオロアルキル基を表し、nは繰り返し単位構造の数であって、2〜3,000の整数を表す。)
【化5】
(式中、A2は、エーテル結合若しくはエステル結合を含んでいても良い炭素原子数1乃至30の直鎖状アルキレン基、エーテル結合若しくはエステル結合を含んでいても良い炭素原子数3乃至30の分枝状アルキレン基、又はエーテル結合若しくはエステル結合を含んでいても良い炭素原子数3乃至30の環状アルキレン基を表し、Y1、Y2、Y3及びY4はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。)
第13観点として、(B)式[7]で表されるハイパーブランチポリマーの分子末端のジチオカルバメート基を、ハロゲン化剤でハロゲン原子に置換する工程
をさらに含む、第12観点に記載の含フッ素ハイパーブランチポリマーの製造方法に関する。
【化6】
(式中、R1、A1及びnは前記式[5]に記載の定義と同義であり、R2及びR3はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至5のアルキル基、炭素原子数1乃至5のヒドロキシアルキル基、若しくは炭素原子数7乃至12のアリールアルキル基を表すか、又はR2及びR3は、それらと結合する窒素原子と一緒になって環を形成していても良い。)
第14観点として、(C)式[7]で表されるハイパーブランチポリマーの分子末端のジチオカルバメート基を、塩基で処理することによりチオールアニオン(−S-)に変換する工程、及び
(D)当該チオールアニオンと式[8]で表されるカルボン酸誘導体とを反応させる工程
を含む、式[9]で表される含フッ素ハイパーブランチポリマーの製造方法に関する。
【化7】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、A1は式[2]又は式[3]で表される構造を表し、R2及びR3はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至5のアルキル基、炭素原子数1乃至5のヒドロキシアルキル基、若しくは炭素原子数7乃至12のアリールアルキル基を表すか、又はR2及びR3は、それらと結合する窒素原子と一緒になって環を形成していても良く、nは繰り返し単位構造の数であって、2〜3,000の整数を表し、Rfはそれぞれ同一であっても異なっていても良い炭素原子数2乃至12のフルオロアルキル基を表し、Zはヒドロキシ基、炭素原子数1乃至5のアルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。)
【化8】
(式中、A2は、エーテル結合若しくはエステル結合を含んでいても良い炭素原子数1乃至30の直鎖状アルキレン基、エーテル結合若しくはエステル結合を含んでいても良い炭素原子数3乃至30の分枝状アルキレン基、又はエーテル結合若しくはエステル結合を含んでいても良い炭素原子数3乃至30の環状アルキレン基を表し、Y1、Y2、Y3及びY4はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の含フッ素ハイパーブランチポリマーは、高分子化合物という特性を生かして、簡単な塗布・乾燥操作でそのまま薄膜状の構造体を形成させることが可能である。しかも、本発明の含フッ素ハイパーブランチポリマーは、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)やテトラヒドロフラン(THF)だけでなく、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)やシクロヘキサノン、アセトンなどにも可溶であることから、溶媒を限定することなくワニスの形態にすることができ、薄膜を形成することができる。さらに該含フッ素ハイパーブランチポリマーはこうした溶媒に高濃度で溶解できることから、コーティング材料としての使用が可能である。
【0010】
また本発明の含フッ素ハイパーブランチポリマーは、従来の線状ポリマーが一般的に紐状の形状であるのに対し、積極的に枝分かれ構造を導入しているため、線状ポリマーと比較して分子間の絡み合いが少なく微粒子的挙動を示す。すなわちマトリクスである樹脂中での移動が容易となる。
そのため、本発明の含フッ素ハイパーブランチポリマーを重合性組成物や、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物に配合し樹脂成形品を為した場合、界面(成形品表面)に容易に移動して界面制御に寄与することができ、樹脂の表面改質の向上につながる。
しかも本発明の含フッ素ハイパーブランチポリマーは、マトリクスである樹脂との混合・分散性が高く、樹脂中で凝集等を起こさずに混合・分散が可能であり、透明性に優れた樹脂成形品を製造できる。
【0011】
また本発明の樹脂成形品は、前述の通り透明性に優れた成形品となるだけでなく、表面改質された樹脂成形品となすことができ、例えば混合・成形機械等の各種機械や金型への離型性、或いはフィルム等の他の樹脂成形品に対する剥離性、さらには撥水撥油性、防汚性にも優れた成形品とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例1〜実施例4で製造したハイパーブランチポリマー:HPS−SC3F−1〜HPS−SC3F−4の1H NMRスペクトルを示す図である。
図2図2は、実施例9で製造したハイパーブランチポリマー:HPS−OC1Fの1H NMRスペクトルを示す図である。
図3図3は、実施例10で製造したハイパーブランチポリマー:HPS−OC4Hの1H NMRスペクトルを示す図である。
図4図4は、実施例11で製造したハイパーブランチポリマー:HPS−OC6Fの1H NMRスペクトルを示す図である。
図5図5は、実施例12で製造したハイパーブランチポリマー:HPS−OC6Hの1H NMRスペクトルを示す図である。
図6図6は、実施例13で製造したハイパーブランチポリマー:HPS−OC7Fの1H NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の含フッ素ハイパーブランチポリマーは、下記式[1]で表される構造を有する。
【化9】
【0014】
式[1]中、R1は水素原子又はメチル基を表す。A1は下記式[2]又は式[3]で表される構造を表す。Lは−SC(=O)−又は−O−を表す。Rfはそれぞれ同一であっても異なっていても良い炭素原子数2乃至12のフルオロアルキル基を表す。そしてnは繰り返し単位構造の数であって、2〜3,000の整数を表す。
【0015】
好ましくは、前記Rfは、Rfが、主鎖又は末端の炭素原子に水素原子及びフッ素原子が結合する炭素原子数2乃至12のフルオロアルキル基を表すことが好ましく、特に前記フルオロアルキル基が、その末端にジフルオロメチル構造を有するフルオロアルキル基であることが好ましい。
最も好ましくは、前記Rfが、下記式[4]で表される炭素原子数2乃至12のフルオロアルキル基を表すことが好ましい。
【化10】
上記式[4]中、Xは水素原子又はフッ素原子を表し、kは1又は2を表し、mは0乃至5の整数を表す。
特にXが水素原子を表すことが好ましい。
【0016】
上記Rfの具体例としては、−CH2CF3基、−CH2CF2CF3基、−CH2(CF22CF3基、−CH2(CF23CF3基、−CH2(CF24CF3基、−CH2(CF25CF3基、−CH2(CF26CF3基、−CH2CF2CHF2基、−CH2(CF23CHF2基、−CH2(CF25CHF2基、−CH2(CF27CHF2基、−CH(CF3)CF3基、−CH2CF2CHFCF3基、−CH2CF(CF3)CHF2基、−CH2CF2CClF2基、−(CH22(CF23CF3基、−(CH22(CF25CF3基、−(CH22(CF27CF3基、−(CH22(CF29CF3基、−(CH22(CF22CF(CF3)CF3基、−(CH22(CF24CF(CF3)CF3基、−(CH22(CF26CF(CF3)CF3基、−CH2CH(OH)CH2(CF23CF3基、−CH2CH(OH)CH2(CF25CF3基、−CH2CH(OH)CH2(CF27CF3基、−CH2CH(OH)CH2(CF22CF(CF3)CF3基、−CH2CH(OH)CH2(CF24CF(CF3)CF3基、−CH2CH(OH)CH2(CF26CF(CF3)CF3基、−CF2CF3基、−(CF22CF3基、−(CF25CF3基、−CF2CHF2基、−(CF22CHF2基、−(CF25CHF2基等が挙げられる。
【0017】
【化11】
上記式[2]及び式[3]中、A2はエーテル結合若しくはエステル結合を含んでいても良い炭素原子数1乃至30の直鎖状アルキレン基、エーテル結合若しくはエステル結合を含んでいても良い炭素原子数3乃至30の枝分かれ状アルキレン基、又はエーテル結合若しくはエステル結合を含んでいても良い炭素原子数3乃至20の環状アルキレン基を表す。
1、Y2、Y3及びY4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す
【0018】
上記直鎖状アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ヘキシレン基等が挙げられる。また分枝状アルキレン基の具体例としては、イソプロピレン基、イソブチレン基、2−メチルプロピレン基等が挙げられる。
また環状アルキレン基としては、炭素数3乃至30の単環式、多環式、架橋環式の環状構造の脂環式脂肪族基が挙げられる。具体的には、炭素数4以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する基を挙げることができる。以下に脂環式脂肪族基における、脂環式部分の構造例(a)乃至(s)を示す。
【化12】
【0019】
また上記Y1、Y2、Y3及びY4における炭素原子数1乃至20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
炭素原子数1乃至20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ペンチルオキシ基及びシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
上記Y1、Y2、Y3及びY4としては、水素原子又は炭素原子数1乃至20のアルキル基が好ましい。
【0020】
本発明の含フッ素ハイパーブランチポリマーのゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは1,000乃至500,000であり、好ましくは2,000乃至500,000であり、最も好ましくは3,000乃至200,000である。
また、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)としては1.0乃至7.0であり、又は1.1乃至6.0であり、又は1.2乃至5.0である。
【0021】
<式[1]で表される含フッ素ハイパーブランチポリマーの製造方法>
次に、式[1]で表される含フッ素ハイパーブランチポリマーの製造方法について、式中、Lが−O−を表す場合、すなわち、下記式[6]で表される含フッ素ハイパーブランチポリマー
【化13】
と、Lが−SC(=O)−を表す場合、すなわち、下記式[9]で表される含フッ素ハイパーブランチポリマー
【化14】
の夫々について詳述する。
(上記式[6]及び[9]中、R1、A1、Rf及びnは式[1]において定義したものと同じものを表す。)
【0022】
(1)Lが−O−を表す含フッ素ハイパーブランチポリマー
式[1]中、Lが−O−を表す場合、すなわち、前記式[6]で表される含フッ素ハイパーブランチポリマーは、
(A)式[5]で表される分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーと、炭素原子数2乃至12のフルオロアルコキシドとを反応させる工程、
を含みて製造される。
【化15】
【0023】
上記式[5]中、R1、A1、Rf及びnは式[1]において定義したものと同じものを表し、Halはハロゲン原子を表す。
ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0024】
(A)工程:式[5]で表されるハイパーブランチポリマーとフルオロアルコキシドとの反応工程
[フルオロアルコキシド]
本工程で使用する炭素原子数2乃至12のフルオロアルコキシドとしては、具体的にはアルカリ金属フルオロアルコキシドを用いる。アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム等が上げられるが、中でもアルカリ金属としてナトリウムを用いたものが好ましい。
特に、本工程で使用する炭素原子数2乃至12のフルオロアルコキシドとして、好ましくはNaO−Rf(Rfは式[1]において定義したものと同じものを表す。)で表されるアルカリ金属フルオロアルコキシドが好ましい。
なお、フルオロアルコキシドは、対応するフルオロアルキルアルコールRf−OH(Rfは式[1]において定義したものと同じものを表す。)から、公知の方法により製造することができる。
【0025】
[溶媒]
本工程は、通常、溶媒中で実施される。
本工程において使用する溶媒は特に限定されず、一般的な有機合成に用いられる種々の溶媒のうち、上記の工程に影響を及ぼさないものを適宜選択して使用することができる。
具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等のアミド化合物;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等のニトリル化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、デカン、デカリン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル化合物;ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラメチルウレア、スルホラン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のその他の非プロトン性極性有機溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は一種を用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
上記溶媒の中でも、フルオロアルコキシド及びハロゲン原子含有化合物の溶解性が高いという観点から、エーテル化合物又は非プロトン性極性有機溶媒から選択される少なくとも一種の溶媒、特にTHF、DMSOを使用することが最も好ましい。
THFとDMSOの混合溶媒を用いる場合、THFを1としたときのDMSOの混合割合を0.5以下とすることが好ましい。
【0026】
[反応温度]
本工程は、溶媒の沸点以下の任意の温度で実施され得、短時間で収率よく目的物を得るという観点から30乃至150℃で実施することが好ましく、より望ましくは40乃至120℃で実施される。
【0027】
[反応時間]
分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーとフルオロアルコキシドの反応時間は、該ハイパーブランチポリマーの種類、該フルオロアルコキシドの種類、塩基の種類、使用する溶媒種、適用する反応温度等によって種々なものとなるが、通常1乃至24時間程度である。
【0028】
なお本工程は、空気下の実施でも可能であるが、好ましくは窒素雰囲気下で実施することが望ましい。
また、反応系内への水分の混入は望ましくないことから、脱水溶媒の使用が好ましい。
なお、本工程終了後に、溶媒を留去、ろ過、再沈殿等の公知の手法によって粗生成物を分離することができ、該粗生成物を、蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶等を用いて精製することができる。
【0029】
前述の上記式[5]で表される分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーは、(B)下記式[7]で表されるハイパーブランチポリマーの分子末端のジチオカルバメート基を、ハロゲン化剤でハロゲン原子に置換する工程、
を含みて製造される。
【化16】
【0030】
上記式中、R1、A1及びnは前記式[5]において定義したものと同じものを表す。
またR2及びR3はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至5のアルキル基、炭素原子数1乃至5のヒドロキシアルキル基、若しくは炭素原子数7乃至12のアリールアルキル基を表すか、又はR2及びR3は、それらと結合する窒素原子と一緒になって環を形成していても良い。
【0031】
上記R2及びR3における炭素原子数1乃至5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
炭素原子数1乃至5のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
炭素原子数7乃至12のアリールアルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
2及びR3がそれらと結合する窒素原子と共に形成する環としては四乃至八員環が挙げられる。そして、環としてメチレン基を四乃至六個含む環が挙げられる。また、環として酸素原子又は硫黄原子と四乃至六個のメチレン基とを含む環も挙げられる。R2及びR3がそれらと結合する窒素原子と共に形成する環の具体例としては、ピペリジン環、ピロリジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、ホモピペリジン環等が挙げられる。
【0032】
上記式[7]で表される分子末端にジチオカルバメート基を有するハイパーブランチポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwが500乃至5,000,000であり、好ましくは1,000乃至1,000,000であり、より好ましくは2,000乃至500,000であり、最も好ましくは3,000乃至200,000である。
また、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)としては1.0乃至7.0であり、又は1.1乃至6.0であり、又は1.2乃至5.0である。
【0033】
上記式[7]で表される分子末端にジチオカルバメート基を有するハイパーブランチポリマーは、例えばKoji Ishizu,Akihide Mori,Polymer International 50,906−910(2001)、Koji Ishizu,Takeshi Shibuya,Akihide Mori,Polymer International 51,424−428(2002)、Koji Ishizu,Yoshihiro Ohta,Journal of Materials Science Letters,22(9),647−650(2003)に記載の方法で製造することができる。
【0034】
(B)工程:下記式[7]で表されるハイパーブランチポリマーのジチオカルバメート基のハロゲン原子への置換工程
[ハロゲン化剤]
下記式[7]で表されるハイパーブランチポリマーの分子末端のジチオカルバメート基のハロゲン化の方法は、ジチオカルバメート基をハロゲン原子に変換することができる方法であれば、特に制限はない。
本反応で使用できるハロゲン化剤としては、塩素、N−クロロコハク酸イミド、塩素化イソシアヌール酸、塩化スルフリル、tert−ブチルハイポクロリド、三塩化リン、五塩化リン、トリフェニルホスフィンジクロリド、塩化第二銅、五塩化アンチモン等の塩素化剤、臭素、N−ブロモコハク酸イミド、N−ブロモグルタルイミド、N,N',N"−トリブロモイソシアヌル酸、N,N'−ジブロモイソシアヌル酸ナトリウム、N,N'−ブロモイソシアヌル酸カリウム、N,N'−ジブロモイソシアヌル酸、N−ブロモイソシアヌル酸ナトリウム、N,N'−ジブロモヒダントイン、N−ブロモヒダントインカリウム、N,N'−ブロモヒダントインナトリウム、N−ブロモ−N'−メチルヒダントイン、1,3−ジブロモ−5,5'−ジメチルヒダントイン、3−ブロモ−5,5'−ジメチルヒダントイン、1−ブロモ−5,5'−ジメチルヒダントインナトリウム、1−ブロモ−5,5'−ジメチルヒダントインカリウム、3−ブロモ−5,5'−ジメチルヒダントインナトリウム、3−ブロモ−5,5'−ジメチルヒダントインカリウム等の臭素化剤、ヨウ素、N−ヨードコハク酸イミド、ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸、ヨウ素酸等のヨウ素化剤を使用することができる。
ハロゲン化剤の使用量は、ハイパーブランチポリマー内のジチオカルバメート基の数に対して1乃至20倍モル当量、好ましくは1.5乃至15倍モル当量、より好ましくは2乃至10倍モル当量であればよい。
【0035】
分子末端のジチオカルバメート基をハロゲン原子に置換する反応は、水又は有機溶媒中で行なうことが好ましい。使用する溶媒は、前記のジチオカルバメート基を有するハイパーブランチポリマーとハロゲン化剤とを溶解可能なものが好ましい。また、該溶媒がジチオカルバメート基を有するハイパーブランチポリマーを製造する際に使用する溶媒と同じものであると、反応操作も簡便になり好ましい。
【0036】
ハロゲン化の方法としては、有機溶媒溶液中、臭素等のハロゲン化剤を使用して、加熱還流することによって行なう反応が好ましい。
有機溶媒としては、本反応の進行を著しく阻害しないものであれば良く、酢酸等の有機酸化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素化合物、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、n−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素化合物等が使用できる。これらの溶媒は一種を用いてもよいし、二種又はそれ以上を混合して用いてもよい。
また、ジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーの質量に対して0.2乃至1,000倍質量、好ましくは1乃至500倍質量、より好ましくは5乃至100倍質量、最も好ましくは10乃至50倍質量の有機溶媒を使用することが好ましい。
また、この反応では反応開始前には反応系内の酸素を十分に除去する必要があり、窒素、アルゴン等の不活性気体で系内を置換するとよい。反応条件としては、反応時間0.01乃至100時間、反応温度0乃至300℃から、適宜選択される。好ましくは反応時間0.1乃至10時間、反応温度20乃至150℃である。
【0037】
反応後は系内に残存するハロゲン化剤を分解処理することが望ましいが、その際、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等の還元剤の水溶液、又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ水溶液を用いることが出来る。また、エチレン、プロピレン、ブテン、シクロヘキセン等の不飽和結合を含む化合物と反応させてもよい。使用量は用いたハロゲン化剤に対して、0.1乃至50当量、好ましくは、0.5乃至10当量、より好ましくは1乃至3当量であれば良い。上述のような反応によって得られた本発明の分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーは、反応溶液中から溶媒留去又は固液分離により溶媒と分離することができる。また、反応溶液を貧溶媒中へ加えることにより本発明の分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーを沈殿させ、粉末として回収することもできる。
なお、本発明の分子末端にハロゲン原子を含有するハイパーブランチポリマーは、分子末端の一部がジチオカルバメート基として残存していてもよいが、好ましくはそのほとんどがハロゲン原子に置換されていることが好ましい。
【0038】
(2)Lが−SC(=O)−を表す含フッ素ハイパーブランチポリマー
式[1]中、Lが−SC(=O)−を表す場合、すなわち、前記式[9]で表される含フッ素ハイパーブランチポリマーは、
(C)前述の式[7]で表されるハイパーブランチポリマーの分子末端のジチオカルバメート基を、塩基で処理することによりチオールアニオン(−S-)に変換する工程、及び
(D)当該チオールアニオンと式[8]で表されるカルボン酸誘導体とを反応させる工程
を含みて製造される。
【化17】
【0039】
上記式[8]中、Rfは前記式[1]において定義したものと同じものを表す。
上記式[8]中、Zはヒドロキシ基、炭素原子数1乃至5のアルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。
上記炭素原子数1乃至5のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基、tert−ペントキシ基等が挙げられる。
又ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0040】
(C)工程:ジチオカルバメート基のチオールアニオン(−S-)への変換工程
[塩基]
(C)工程において、ジチオカルバメート基のチオールアニオンへの変換に使用する塩基としては、アルカリ金属無機酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属アルコキシド、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミンなどを挙げることができ、これらは一種単独で、或いは二種以上を組合せて使用することができる。
【0041】
上記アルカリ金属無機酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等が挙げられる。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
アルカリ金属水素化物としては、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等が挙げられる。
アルカリ金属アルコキシドとしては、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムブトキシド、リチウムtert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムブトキシド、カリウムtert−ブトキシド等が挙げられる。
【0042】
また上記脂肪族アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロピルアミン、トリイソブチルアミン等が挙げられる。
脂環式アミンとしては、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン等が挙げられる。
芳香族アミンとしては、ピリジン、5−エチル−2−メチルピリジン、2−フェニルピリジン等が挙げられる。
【0043】
上記塩基の中でも、ジチオカルバメート基のチオールアニオンへの変換率が高いという観点から、アルカリ金属無機酸塩、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属アルコキシドが好ましく、特にアルカリ金属アルコキシドから選択されることが好ましい。
アルカリ金属アルコキシドの中でも、アルカリ金属としてカリウムを用いたもの、特にカリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシドがより好ましい。
【0044】
上記塩基の使用量は特に限定されないが、通常、ジチオカルバメート基に対して1乃至10モル当量、好ましくは1乃至5モル当量であり、最も好ましくは1乃至3モル当量で使用することが望ましい。
上記数値範囲より少ない量で使用すると、ジチオカルバメート基含有化合物の一部がチオールに変換され、特にジチオカルバメート含有化合物が高分子化合物である場合には、分子内に複数乃至多数存在するジチオカルバメート基の一部を変換することとなる。
また上記数値範囲より多い量で使用すると、ジチオカルバメート基のチオールへの変換自体には影響を与えないが、未反応の塩基が後の工程((D)工程)で投入するカルボン酸誘導体(求電子剤)と反応してしまうなど、経済性が悪くなる。
【0045】
[溶媒]
ジチオカルバメート基のチオールへの変換工程、並びに後述するカルボン酸誘導体との反応工程のいずれも溶媒中で実施される。
本工程において使用する溶媒は特に限定されず、一般的な有機合成に用いられる種々の溶媒のうち、上記の工程に影響を及ぼさないものを適宜選択して使用することができる。
具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等のアミド化合物;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等のニトリル化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、デカン、デカリン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル化合物;ジメチルスルホキシド、テトラメチルウレア、スルホラン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のその他の非プロトン性極性有機溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は一種を用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
上記溶媒の中でも、ジチオカルバメート基含有化合物の溶解性が高いという観点から、ニトリル化合物、又はエーテル化合物から選択される少なくとも一種の溶媒、特にTHF、ジオキサン、アセトニトリル、特にTHFを使用することが最も好ましい。
THFとアセトニトリルの混合溶媒を用いる場合、THFを1としたときのアセトニトリルの混合割合を0.5以下とすることが好ましい。
【0047】
[反応温度]
本工程は、溶媒の沸点以下の任意の温度で実施され得、短時間で収率よく目的物を得るという観点から40乃至70℃で実施することが好ましく、より望ましくは50乃至60℃で実施される。
上記温度範囲を超えても沸点以下の温度であれば実施可能であるが、後述の求電子剤との反応工程が高温では不利となり、冷却操作が必要となるため経済的でない。
【0048】
[反応時間]
ジチオカルバメート基含有化合物と塩基の反応時間は、ジチオカルバメート基含有化合物の種類、塩基の種類、使用する溶媒種、適用する反応温度等によって種々なものとなるが、通常1乃至24時間程度である。
【0049】
なお本工程において、反応開始前には反応系内の酸素を十分に除去する必要があり、窒素、アルゴンなどの不活性気体で系内を置換するとよい。
本工程終了後、溶媒を留去、ろ過、再沈殿等の公知の手法によってチオール塩の形態で分離収集することができるが、得られた反応溶液をそのまま、(D)工程に使用することができる。
【0050】
(D)工程:チオールアニオンとカルボン酸誘導体との反応工程
[溶媒、反応温度、反応時間]
本工程において用いる溶媒は、前述の(C)工程で使用した溶媒と同じものを用いることができる。
また本工程は、反応温度を室温(およそ25℃)乃至60℃として実施することが好ましい。したがって、(C)工程及び(D)工程を連続して実施する場合には50乃至60℃の温度で実施することが望ましい。
また、チオールアニオン(含有化合物)とカルボン酸誘導体の反応時間は、チオールアニオン(含有化合物)の種類、求電子剤の種類、使用する溶媒種、適用する反応温度等によって種々なものとなるが、通常1乃至24時間程度である。
【0051】
なお、本工程終了後に、溶媒を留去、ろ過、再沈殿等の公知の手法によって粗生成物を分離することができ、該粗生成物を、蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶等を用いて精製することができる。
【0052】
<ワニス及び薄膜の製造方法>
本発明の含フッ素ハイパーブランチポリマーからなる薄膜を形成する具体的な方法としては、まず、含フッ素ハイパーブランチポリマーを溶媒に溶解又は分散してワニスの形態(膜形成材料)とし、該ワニスを基材上にキャストコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等)等によって塗布し、その後、ホットプレート又はオーブン等で乾燥して成膜する。
これらの塗布方法の中でもスピンコート法が好ましい。スピンコート法を用いる場合には、単時間で塗布することができるために、揮発性の高い溶液であっても利用でき、また、均一性の高い塗布を行うことができるという利点がある。
【0053】
上記ワニスの形態において使用する溶媒としては、含フッ素ハイパーブランチポリマーを溶解するものであればよく、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジイソプロピルエーテル(IPE)、シクロペンチルメチルエーテル(cPME)、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、アセトン、エチルメチルケトン(MEK)、イソブチルメチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン(CHN)、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン(EDC)、オルトジクロロベンゼン(ODB)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、トリクロロメタン、プロピレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ブチルセロソルブ、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これら溶媒は単独で使用してもよく、2種類以上の溶媒を混合してもよい。
また上記溶媒に溶解又は分散させる濃度は任意であるが、含フッ素ハイパーブランチポリマーと溶媒の総質量(合計質量)に対して、含フッ素ハイパーブランチポリマーの濃度は0.001乃至90質量%であり、好ましくは0.002乃至80質量%であり、より好ましくは0.005乃至70質量%である。
形成された含フッ素ハイパーブランチポリマーからなる薄膜の厚さは特に限定されないが、通常0.01μm乃至50μm、好ましくは0.05μm乃至20μmである。
【0054】
<樹脂組成物及びそれより作製される成形品>
本発明はまた、(a)前記含フッ素ハイパーブランチポリマー、(b)熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物に関する。
【0055】
前記熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、例えばPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、EEA(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)などのポリオレフィン系樹脂;PS(ポリスチレン)、HIPS(ハイインパクトポリスチレン)、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、MS(メタクリル酸メチル−スチレン共重合体)などのポリスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;PMMA(ポリメチルメタクリレート)などの(メタ)アクリル樹脂;PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、PLA(ポリ乳酸)、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート/アジペートなどのポリエステル樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;変性ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;ポリグルコール酸;変性でんぷん;酢酸セルロース、三酢酸セルロース;キチン、キトサン;リグニン等が挙げられる。
中でもポリメチルメタクリレート樹脂又はポリ乳酸樹脂であることが好ましい。
また前記熱硬化性樹脂としても特に限定されないが、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0056】
上記樹脂組成物において、(b)熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂に対する(a)含フッ素ハイパーブランチポリマーの配合量は、好ましくは0.01質量%乃至20質量%であり、特に0.1質量%乃至20質量%であることが好ましい。
【0057】
上記樹脂組成物には、熱可塑性樹脂或いは熱硬化性樹脂と共に一般に添加される添加剤、例えば、帯電防止剤、滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、蛍光剤、加工助剤、架橋剤、分散剤、発泡剤、難燃剤、消泡剤、補強剤、顔料などを併用してもよい。
【0058】
本発明の上記樹脂組成物は、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形等の任意の成形方法でフィルムやシート、或いは成形品等の樹脂成形品を得ることができる。
【0059】
<重合性組成物及びそれより作製される成形品>
本発明はまた、(a)前記含フッ素ハイパーブランチポリマー、(c)重合性化合物及び(d)重合開始剤を含有する重合性組成物に関する。
【0060】
上記(c)重合性化合物としては、重合開始剤の作用によって重合する重合性の部位を分子内に一個以上、好ましくは一個乃至六個有する化合物であれば特に制限はない。
なお、本発明における重合性化合物の意味するところは、所謂高分子物質でない化合物であり、狭義の単量体化合物(モノマー)だけでなく、二量体、三量体、オリゴマーや反応性高分子をも包含するものである。
【0061】
重合性の部位としては、ラジカル重合性の部位であるエチレン性不飽和結合、或いは、カチオン重合性の部位であるビニルエーテル構造、ビニルチオエーテル構造及びエポキシ環やオキセタン環等の環状エーテル構造等が挙げられる。従って、重合性化合物としては、ラジカル重合性の部位であるエチレン性不飽和結合を有する化合物、或いは、カチオン重合性の部位であるビニルエーテル構造、エポキシ環又はオキセタン環を有する化合物が挙げられる。
【0062】
上記重合性化合物の中でも、エチレン性不飽和結合の部位を有する(メタ)アクリル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
このような重合性化合物としては、例えば、下記(メタ)アクリル酸エステル、並びにポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系化合物を挙げることができる。なお、本発明では(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレート化合物とメタクリレート化合物の両方をいう。例えば、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸をいう。
・(メタ)アクリル酸エステル:
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルコキシチタントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−アクリロイルオキシ−3−メタクリロイルオキシプロパン、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ウンデシレノキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス[4−(メタ)アクリロイルチオフェニル]スルフィド、ビス[2−(メタ)アクリロイルチオエチル]スルフィド、1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールA(メタ)アクリレート等。
・ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系化合物:
ポリエチレングリコール(分子量300)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)ジ(メタ)アクリレート等。
【0063】
これらの中でも、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、エトキシ化ビスフェノールA(メタ)アクリレート等が好ましく、特にトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが望ましい。
【0064】
上記(d)重合開始剤としては公知のものが使用することが可能であり、例えば、ベンゾイン類;ベンゾフェノン類;ベンジルケタール類;α−ヒドロキシケトン類;α−アミノケトン類;アシルホスフィンオキサイド類;チオキサントン類;ヨードニウム塩;又はスルホニウム塩等が挙げられる。具体的には、例えばBASFジャパン(株)製(以下商品名)のイルガキュア(登録商標)184、同369、同500、同651、同784、同907、同819、同1000、同1300、同1700、同1800、同1850、同2959、同社製のダロキュア(登録商標)1173等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような重合開始剤は複数種を組み合わせて用いることもできる。
【0065】
上記重合性組成物において、(a)含フッ素ハイパーブランチポリマー、(c)重合性化合物及び(d)重合開始剤の配合量は以下の通りである。
すなわち、(c)重合性化合物に対して、(a)含フッ素ハイパーブランチポリマーは好ましくは0.01質量%乃至20質量%であり、特に0.1質量%乃至20質量%であることが好ましい。
また(c)重合性化合物に対して、(d)重合開始剤は好ましくは0.1質量%乃至20質量%であり、好ましくは0.5質量%乃至10質量%である。上記範囲内であれば、透過率を低下することなく、(c)重合性化合物を重合させることができる。
【0066】
上記重合性組成物には、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて一般的に添加される添加剤、例えば、増感剤、重合禁止剤、重合開始剤、レベリング剤、界面活性剤、密着性付与剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、貯蔵安定剤、帯電防止剤、無機充填剤、顔料、染料等を適宜配合してよい。
【0067】
本発明の上記重合性組成物は、基材上にコーティングして重合(硬化)させることにより、硬化膜や積層体などの成形品を成すことができる。
前記基材としては、例えば、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ、メラミン、トリアセチルセルロース、ABS、AS、ノルボルネン系樹脂等)、金属、木材、紙、ガラス、スレート等を挙げることができる。これら基材の形状は板状、フィルム状又は3次元成形体でもよい。
本発明の重合性組成物のコーティング方法は、先に<ワニス及び薄膜の製造方法>で述べた各種コート方法などを用いることができる。なお事前に孔径が0.2μm程度のフィルタなどを用いて重合性組成物を濾過した後、コーティングに供することが好ましい。
コーティング後、好ましくは続いてホットプレート又はオーブン等で予備乾燥した後、紫外線等の活性光線を照射するなどして光硬化させる。活性光線としては、紫外線、電子線、X線等が挙げられる。紫外線照射に用いる光源としては、太陽光線、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が使用できる。
その後、ポストベークを行うことにより、具体的にはホットプレート、オーブンなどを用いて加熱することにより重合を完結させることができる。
なお、コーティングによる膜の厚さは、乾燥、硬化後において、通常0.01μm乃至50μm、好ましくは0.05μm乃至20μmである。
【実施例】
【0068】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
【0069】
(1)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
装置:東ソー(株)製 HLC−8220 GPC
カラム:Shodex(登録商標)KF−804L + KF−803L
カラム温度:40℃
溶媒:THF
検出器:UV(254nm)、RI
(2)1H NMRスペクトル
装置:日本電子(株)製 JNM−LA(Lambda)600(600MHz)
溶媒:CDCl3
内部標準:CHCl3(δ7.26ppm)
(3)スピンコーター
装置:ミカサ(株)製 MS−A100
(4)ヘイズメーター(濁度測定)
装置:日本電色工業(株)製 NDH5000
(5)エリプソメトリー(屈折率及び膜厚測定)
装置:J.A.Woollam社製 EC−400
(6)接触角測定
装置:AST Products社製 VCA Optima
測定温度:20℃
(7)ガラス転移温度(Tg)測定
装置:(株)リガク製 DSC8230
測定条件:窒素雰囲気下
昇温速度:5℃/分(25〜160℃)
(8)5%重量減少温度(Td5%)測定
装置:(株)リガク製 TG8120
測定条件:空気雰囲気下
昇温速度:10℃/分(25〜500℃)
【0070】
また、略記号は以下の意味を表す。
HPS:ハイパーブランチポリスチレン[日産化学工業(株)製 ハイパーテック(登録商標)HPS−200]
THF:テトラヒドロフラン
IPA:イソプロパノール
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
DMSO:ジメチルスルホキシド
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
IPE:ジイソプロピルエーテル
cPME:シクロペンチルメチルエーテル
CHN:シクロヘキサノン
DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
EDC:1,2−ジクロロエタン
【0071】
[実施例1]HPS−SC3F−1の合成
【化18】
100mLの二口反応フラスコに、HPS1.3g(5mmol)及びカリウムメトキシド[アルドリッチ社製]74mg(1mmol、HPSに対し20mol%)を仕込み、フラスコ内を窒素置換した。そこへTHF/アセトニトリル(体積比4:1)混合溶液35mLを加え、60℃で16時間撹拌した。さらに、この反応液へ、パーフルオロブチリルクロリド[東京化成工業(株)製]0.35g(1.5mmol、HPSに対し30mol%)をTHF/アセトニトリル(体積比4:1)混合溶液15mLに溶解させた溶液をシリンジで滴下し、さらに60℃で6時間撹拌した。
次に、この反応液をIPA/水(体積比4:1)300mLに添加して、ポリマーを沈殿させた。析出したポリマーを減圧濾過し、減圧乾燥して、白色固体の目的物(HPS−SC3F−1)1.3gを得た(得率92%)。
得られた目的物の1H NMRスペクトルを図1に示す。NMRスペクトルから算出したフルオロアルキル基の導入率は8%であった。また、目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは35,000、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は4.2であった。
【0072】
[実施例2]HPS−SC3F−2の合成
カリウムメトキシドの使用量を0.15g(2mmol)に、パーフルオロブチリルクロリドの使用量を0.70g(3mmol)にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様に操作し、白色固体の目的物(HPS−SC3F−2)1.3gを得た(得率90%)。
得られた目的物の1H NMRスペクトルを図1に併せて示す。NMRスペクトルから算出したフルオロアルキル基の導入率は28%であった。また、目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは46,000、分散度:Mw/Mnは5.2であった。
【0073】
[実施例3]HPS−SC3F−3の合成
カリウムメトキシドの使用量を0.22g(3mmol)に、パーフルオロブチリルクロリドの使用量を1.1g(4.5mmol)にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様に操作し、白色固体の目的物(HPS−SC3F−3)1.4gを得た(得率90%)。
得られた目的物の1H NMRスペクトルを図1に併せて示す。NMRスペクトルから算出したフルオロアルキル基の導入率は41%であった。また、目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは63,000、分散度:Mw/Mnは5.5であった。
【0074】
[実施例4]HPS−SC3F−4の合成
カリウムメトキシドの使用量を0.29g(4mmol)に、パーフルオロブチリルクロリドの使用量を1.4g(6mmol)にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様に操作し、白色固体の目的物(HPS−SC3F−4)1.3gを得た(得率85%)。
得られた目的物の1H NMRスペクトルを図1に併せて示す。NMRスペクトルから算出したフルオロアルキル基の導入率は50%であった。また、目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは74,000、分散度:Mw/Mnは5.3であった。
【0075】
[HPS−SC3Fの溶媒溶解性]
実施例1乃至実施例4で得られた各ハイパーブランチポリマーについて、表1に示す各溶媒に対する溶解性を評価した。試験は、濃度が5質量%となるように各ハイパーブランチポリマーをそれぞれの溶媒と混合し、25℃で1時間撹拌後に、以下の基準に従って目視で評価した。結果を表1に併せて示す。
○:透明な溶液となり良好に溶解
△:溶解はしているが溶け残りがある
×:沈殿物があり不溶
【0076】
【表1】
【0077】
[実施例5乃至実施例8]HPS−SC3F薄膜の作製と評価
実施例1乃至実施例4で得られた各ハイパーブランチポリマー0.1gを、それぞれNMP10gに溶解させワニスを調製した。得られたワニスを、それぞれガラス基板上にスピンコート(1,000rpm×30秒)し、130℃のホットプレートで30分間加熱することにより乾燥させて成膜した。
得られたそれぞれの薄膜について、HAZE値、波長633nmにおける屈折率及び膜厚を測定した。結果を表2に併せて示す。
【0078】
【表2】
【0079】
[合成例1]HPS−Brの合成
【化19】
公知の方法(例えば、国際公開第2008/29688号パンフレット:実施例1など)に従い、HPSを臭素により臭素化し、目的とするHPS−Brを得た。
得られたHPS−BrのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは6,600、分散度:Mw/Mnは2.2であった。
【0080】
[実施例9]HPS−OC1Fの合成
【化20】
300mLの二口反応フラスコに、60%水素化ナトリウム[関東化学(株)製]0.43g(10.8mmol)を仕込み、フラスコ内を窒素置換した。そこへヘキサンを加え撹拌した後静置し、デカンテーションにより上澄み液を除去することで水素化ナトリウムを洗浄した。この中へ無水THF15mL及び無水DMSO0.5mLを加え、次いで2,2,2−トリフルオロエタノール[東京化成工業(株)製]0.78g(7.8mmol)を加えて、室温(およそ25℃)で15時間撹拌した。続けて、この反応液へ、合成例1に従って合成したHPS−Br1.4g(7.1mmol)をTHF10mLに溶解させた溶液を滴下した。この反応液を室温(およそ25℃)で30分間撹拌した後、さらに50℃で4時間撹拌した。
次に、この反応液をIPA/水(体積比4:1)60mLに添加して、ポリマーを沈殿させた。析出したポリマーをメンブランフィルタで濾過し、減圧乾燥して、目的物(HPS−OC1F)1.1gを得た(得率71%)。
得られた目的物の1H NMRスペクトルを図2に示す。また、目的物のTg(ガラス転移温度)は91.0℃、Td5%(5%重量減少温度)は194.0℃であった。なお、得られた目的物のGPC溶媒への溶解度が低く、GPCによる分子量測定はできなかった。
【0081】
[実施例10]HPS−OC4Hの合成
【化21】
300mLの二口反応フラスコに、60%水素化ナトリウム[関東化学(株)製]0.48g(12mmol)を仕込み、フラスコ内を窒素置換した。そこへTHF100mLを加え、次いで2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノール[東京化成工業(株)製]3.5g(15mmol)を加えて、室温(およそ25℃)で30分間撹拌した。続けて、この反応液へ、合成例1に従って合成したHPS−Br2.0g(10mmol)をTHF50mLに溶解させた溶液を滴下した。この反応液を室温(およそ25℃)で30分間撹拌した後、さらに50℃で6時間撹拌した。
次に、この反応液をセライト濾過し、濾液をヘキサン400mLに添加して、ポリマーを粘性物として析出させた。上澄み液をデカンテーションで除去し、残った粘性物をさらにヘキサン20mLで2回洗浄した。得られた固体を減圧乾燥して、目的物(HPS−OC4H)1.9gを得た(得率55%)。
得られた目的物の1H NMRスペクトルを図3に示す。また、得られた目的物のTgは92.0℃、Td5%は279.5℃、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは29,000、分散度:Mw/Mnは2.5であった。
【0082】
[HPS−OC4Hの溶媒溶解性]
実施例10で得られたHPS−OC4Hについて、表3に示す各溶媒に対する溶解性を評価した。試験は、濃度が10質量%となるようにHPS−OC4Hをそれぞれの溶媒と混合し、25℃で1時間撹拌後に、以下の基準に従って目視で評価した。結果を表3に併せて示す。
○:透明な溶液となり良好に溶解
△:溶解はしているが溶け残りがある
×:沈殿物があり不溶
【0083】
【表3】
【0084】
[実施例11]HPS−OC6Fの合成
【化22】
300mLの二口反応フラスコに、60%水素化ナトリウム[関東化学(株)製]0.30g(7.5mmol)を仕込み、フラスコ内を窒素置換した。そこへヘキサンを加え撹拌した後静置し、デカンテーションにより上澄み液を除去することで水素化ナトリウムを洗浄した。この中へ無水THF10mL及び無水DMSO0.5mLを加え、次いで1H,1H−トリデカフルオロ−1−ヘプタノール[東京化成工業(株)製]1.3g(3.6mmol)を加えて、室温(およそ25℃)で30分間撹拌した。続けて、この反応液へ、合成例1に従って合成したHPS−Br0.59g(3.6mmol)をTHF5mLに溶解させた溶液を滴下した。この反応液を室温(およそ25℃)で30分間撹拌した後、さらに50℃で15時間撹拌した。
次に、この反応液をIPA/水(体積比4:1)60mLに添加して、ポリマーを沈殿させた。析出したポリマーをメンブランフィルタで濾過し、減圧乾燥して、目的物(HPS−OC6F)1.2gを得た(得率83%)。
得られた目的物の1H NMRスペクトルを図4に示す。また、得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは27,000、分散度:Mw/Mnは2.2であった。なお、得られた目的物のTg、Td5%は、明確なピークとして観測されなかった。
【0085】
[実施例12]HPS−OC6Hの合成
【化23】
300mLの二口反応フラスコに、60%水素化ナトリウム[関東化学(株)製]0.30g(7.5mmol)を仕込み、フラスコ内を窒素置換した。そこへヘキサンを加え撹拌した後静置し、デカンテーションにより上澄み液を除去することで水素化ナトリウムを洗浄した。この中へ無水THF10mL及び無水DMSO0.5mLを加え、次いで1H,1H,7H−ドデカフルオロ−1−ヘプタノール[東京化成工業(株)製]1.2g(3.6mmol)を加えて、室温(およそ25℃)で30分間撹拌した。続けて、この反応液へ、合成例1に従って合成したHPS−Br0.59g(3.6mmol)をTHF5mLに溶解させた溶液を滴下した。この反応液を室温(およそ25℃)で30分間撹拌した後、さらに50℃で15時間撹拌した。
次に、この反応液をIPA/水(体積比4:1)60mLに添加して、ポリマーを沈殿させた。析出したポリマーをメンブランフィルタで濾過し、減圧乾燥して、目的物(HPS−OC6F)1.2gを得た(得率85%)。
得られた目的物の1H NMRスペクトルを図5に示す。また、目的物のTgは96.7℃、Td5%は257.8℃であった。なお、得られた目的物のGPC溶媒への溶解度が低く、GPCによる分子量測定はできなかった。
【0086】
[HPS−OC6F及びHPS−OC6Hの溶媒溶解性]
実施例11〜12で得られたHPS−OC6F及びHPS−OC6Hについて、表4に示す各溶媒に対する溶解性を評価した。試験は、濃度が10質量%となるようにHPS−OC6F又はHPS−OC6Hをそれぞれの溶媒と混合し、25℃で1時間撹拌後に、以下の基準に従って目視で評価した。結果を表4に併せて示す。
○:透明な溶液となり良好に溶解
△:溶解はしているが溶け残りがある
×:沈殿物があり不溶
【0087】
【表4】
【0088】
[実施例13]HPS−OC7Fの合成
【化24】
300mLの二口反応フラスコに、60%水素化ナトリウム[関東化学(株)製]0.28g(7.0mmol)を仕込み、フラスコ内を窒素置換した。そこへヘキサンを加え撹拌した後静置し、デカンテーションにより上澄み液を除去することで水素化ナトリウムを洗浄した。この中へ無水THF10mL及び無水DMSO0.5mLを加え、室温(およそ25℃)で30分間撹拌した。次いで1H,1H−ペンタデカフルオロ−1−オクタノール[東京化成工業(株)製]1.4g(3.5mmol)をベンゾトリフルオリド[東京化成工業(株)製]4mLに溶解させた溶液を加えて、室温(およそ25℃)で1.5時間撹拌した。続けて、この反応液へ、合成例1に従って合成したHPS−Br0.70g(3.6mmol)をTHF5mLに溶解させた溶液を滴下した。この反応液を室温(およそ25℃)で30分間撹拌した後、さらに50℃で4時間撹拌した。
次に、この反応液をIPA/水(体積比4:1)60mLに添加して、ポリマーを沈殿させた。析出したポリマーをメンブランフィルターで濾過し、減圧乾燥して、目的物(HPS−OC7F)1.8gを得た(得率66%)。
得られた目的物の1H NMRスペクトルを図6に示す。また、目的物のTgは97.0℃、Td5%は258.0℃であった。なお、得られた目的物のGPC溶媒への溶解度が低く、GPCによる分子量測定はできなかった。
【0089】
[実施例14乃至実施例18]ハイパーブランチポリマー薄膜の作製と評価
実施例9乃至実施例13で得られた各ハイパーブランチポリマーを、それぞれパーフルオロベンゼン[東京化成工業(株)製]に溶解させ、10質量%濃度のワニスを調製した。得られたワニスを、それぞれガラス基板上にスピンコート(500rpm×20秒)し、100℃のホットプレートで30分間加熱することにより乾燥させて成膜した。
得られたそれぞれの薄膜について、波長589nmにおける屈折率、膜厚、並びに水及びジヨードメタンの接触角を測定した。また、得られた水及びジヨードメタンの接触角から、各薄膜の表面自由エネルギーを算出した。結果を表5に併せて示す。なお、接触角は、測定液を各薄膜表面に滴下し10秒後の接触角を測定した。
【0090】
【表5】
図1
図2
図3
図4
図5
図6