特許第5872773号(P5872773)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872773
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】多層配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
   H05K1/02 J
   H05K1/02 N
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-27359(P2011-27359)
(22)【出願日】2011年2月10日
(65)【公開番号】特開2012-169345(P2012-169345A)
(43)【公開日】2012年9月6日
【審査請求日】2013年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】平川 英一
【審査官】 中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−236939(JP,A)
【文献】 特開2006−147676(JP,A)
【文献】 特開2001−274279(JP,A)
【文献】 特開2005−191172(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0065433(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00 − 1/02
H05K 3/46
H01L 23/12 − 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板の表面に設けられた複数の第1パッドと、
前記配線基板の裏面に設けられた複数の第2パッドと、
前記配線基板の内部の配線層に配設され、一端を前記複数の第1パッドにそれぞれ接続され、他端を前記複数の第2パッドにそれぞれ接続された複数の信号配線と、
前記複数の信号配線の上層及び下層に配設された電源配線と、
を有し、
前記配線基板の表裏両面に多数のパッドがマトリックス状に配設され、
前記複数の第1パッドは、前記配線基板の表面にマトリックス状に配設されたパッドのうち第1の円周状に位置するパッドであり
前記複数の第2パッドは、前記配線基板の裏面にマトリックス状に配設されたパッドのうち前記第1の円周と同心円状の第2の円周状に位置するパッドであり
前記複数の信号配線放射状に延設されたこと、
を特徴とする多層配線基板。
【請求項2】
前記電源配線を、前記配線基板の全域に亘って層状に形成したことを特徴とする請求項1記載の多層配線基板。
【請求項3】
前記信号配線の上層及び下層の一方に高電位側電源配線を配設し、他方に低電位側電源配線を配設したことを特徴とする請求項1又は2記載の多層配線基板。
【請求項4】
前記配線基板の表面にマトリックス状に配設されたパッドのうち前記複数の第1パッドの内周側に近接して円周状に位置するパッドと、前記配線基板の裏面にマトリックス状に配設されたパッドのうち前記複数の第2パッドの内周側に近接して円周状に位置するパッドとに接続された高電位側電源配線と、
前記配線基板の表面にマトリックス状に配設されたパッドのうち前記複数の第1パッドの外周側に近接して円周状に位置するパッドと、前記配線基板の裏面にマトリックス状に配設されたパッドのうち前記複数の第2パッドの外周側に近接して円周状に位置するパッドとに接続された低電位側電源配線と、
を有することを特徴とする請求項1又は2記載の多層配線基板。
【請求項5】
前記配線基板の表面にマトリックス状に配設されたパッドのうち前記複数の第1パッドの外周側に近接して円周状に位置するパッドと、前記配線基板の裏面にマトリックス状に配設されたパッドのうち前記複数の第2パッドの外周側に近接して円周状に位置するパッドとに接続された高電位側電源配線と、
前記配線基板の表面にマトリックス状に配設されたパッドのうち前記複数の第1パッドの内周側に近接して円周状に位置するパッドと、前記配線基板の裏面にマトリックス状に配設されたパッドのうち前記複数の第2パッドの内周側に近接して円周状に位置するパッドとに接続された低電位側電源配線と、
を有することを特徴とする請求項1又は2記載の多層配線基板。
【請求項6】
前記信号配線間に電源配線を配設したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の多層配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高速で動作する半導体チップを搭載する多層配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速動作する半導体チップを搭載する配線基板では、高周波信号の伝搬のため、半導体チップに接続される各信号配線のインピーダンスを揃える必要がある。
また、半導体チップに接続される各信号配線の信号の伝搬速度を揃える必要がある。
【0003】
このような信号配線において、インピーダンスを揃えるための構造として、例えばストリップラインが知られている。
ストリップラインでは、2層の平行した接地層や電源層間に信号配線を設けた構造により、信号配線のインピーダンスを調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001‐274279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、ストリップライン構造の信号配線を設け、各信号配線のインピーダンスを揃えた多層配線基板が開示されている。
しかし、各信号配線の信号の伝搬速度を揃えるための構造は開示されていない。
【0006】
本発明の目的は、配線基板に配設される信号配線のインピーダンス及び信号伝搬速度を揃え得る多層配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、配線基板の表面に設けられた複数の第1パッドと、前記配線基板の裏面に設けられた複数の第2パッドと、前記配線基板の内部の配線層に配設され、一端を前記複数の第1パッドにそれぞれ接続され、他端を前記複数の第2パッドにそれぞれ接続された複数の信号配線と、前記複数の信号配線の上層及び下層に配設された電源配線と、を有し、前記配線基板の表裏両面に多数のパッドがマトリックス状に配設され、前記複数の第1パッドは、前記配線基板の表面にマトリックス状に配設されたパッドのうち第1の円周状に位置するパッドであり、前記複数の第2パッドは、前記配線基板の裏面にマトリックス状に配設されたパッドのうち前記第1の円周と同心円状の第2の円周状に位置するパッドであり、前記複数の信号配線放射状に延設された
【0008】
この構成によれば、配線基板に配設される信号配線のインピーダンス及び信号伝搬速度が揃えられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一観点によれば、配線基板に配設される信号配線のインピーダンス及び信号伝搬速度を揃え得る多層配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態の多層配線基板を示す正面図である。
図2】ICパッド領域を示す正面図である。
図3】多層配線基板を示す背面図である。
図4】チップを搭載した多層配線基板の部分断面図である。
図5】信号配線を示す正面図である。
図6図1に示す多層配線基板の部分断面図である。
図7図6のA−A線による円周方向の断面図である。
図8図6のB−B線による円周方向の断面図である。
図9図6のC−C線による円周方向の断面図である。
図10図6のD−D線による円周方向の断面図である。
図11図6のE−E線による円周方向の断面図である。
図12図6のF−F線による円周方向の断面図である。
図13】第二の実施形態の信号配線層を示す正面図である。
図14】第二の実施形態の多層配線基板を示す断面図である。
図15図14のG−G線による円周方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第一の実施形態)
以下、この発明を具体化した第一の実施形態を図面に従って説明する。図1に示す多層配線基板1は、その表面の中央部に形成されたICパッド領域PAに多数のICパッド(半導体チップ搭載用のパッド)2がマトリックス状に配設されている。前記多層配線基板1の裏面には、図3に示すように、ほぼ前面に亘って多数のIOパッド(外部接続端子用のパッド)3が配設されている。
【0012】
前記多層配線基板1は、図4に示すように、比誘電率が比較的小さい例えばエポキシ樹脂で形成される絶縁層4内に、高電位側電源配線5と、信号配線6と、低電位側電源配線7がそれぞれ電気的に絶縁された状態で配設されている。
【0013】
この多層配線基板1は、一例として、エポキシ樹脂により絶縁層を形成する工程と、当該絶縁層上にセミアディティブ法により銅からなる配線層を形成する工程を繰り返して多層配線構造を得る、ビルドアップ法により形成される。
【0014】
前記高電位側電源配線5の一端はビア8を介してICパッド2aに接続され、前記信号配線6の一端はビア9を介してICパッド2bに接続され、前記低電位側電源配線7の一端はビア10を介してICパッド2cに接続されている。
【0015】
ICパッド2a〜2cは、前記ICパッド2の一部であり、前記多層配線基板1の表面に形成されるソルダーレジスト膜11の開口部12に露出される。ソルダーレジスト膜11は、多層配線基板1の表面に形成された後、開口部12がパターニングされる。
【0016】
前記高電位側電源配線5の他端はビア13を介してIOパッド3aに接続され、前記信号配線6の他端はビア14を介してIOパッド3bに接続され、前記低電位側電源配線7の他端はビア15を介してIOパッド3cに接続されている。
【0017】
IOパッド3a〜3cは、前記IOパッド3の一部であり、多層配線基板1の裏面に形成されるソルダーレジスト膜16の開口部17に露出される。
前記ICパッド2bは、図2に示すように、前記ICパッド領域PAの外周近傍においてマトリクス状に配置されたICパッド2の中からほぼ円周上に位置するICパッドがICパッド2bとして選択されている。
【0018】
そして、ICパッド2bの外周側に近接してほぼ円周上に位置するICパッドが前記ICパッド2cとして円形に配置され、ICパッド2bの内周側に近接してほぼ円周上に位置するICパッドが前記ICパッド2aとして円形に配置されている。
【0019】
前記IOパッド3bは、図3に示すように、前記多層配線基板1の裏面の外周近傍においてマトリクス状に配置されたIOパッド3の中からほぼ円周上に位置するIOパッドがIOパッド3bとして選択されている。また、前記ICパッド2bとIOパッド3bとは同心円状に位置している。
【0020】
そして、IOパッド3bの外周側に近接して位置する多数のIOパッドが前記IOパッド3cとして円周状に配置され、IOパッド3bの内周側に近接して位置する多数のIOパッドが前記IOパッド3aとして円周状に配置されている。
【0021】
図6図12に示すように、前記高電位側電源配線5は,前記信号配線6及び低電位側電源配線7に接続されされるビア14,15を回避しながら、前記多層配線基板1の全域に亘って広面積で形成される配線層(パワープレーン)である。
【0022】
また、前記低電位側電源配線7は,前記信号配線6及び高電位側電源配線5に接続されされるビア8,9を回避しながら、前記多層配線基板1の全域に亘って広面積で形成される配線層(グランドプレーン)である。
【0023】
前記信号配線6は、図5に示すように、前記ICパッド2bとIOパッド3bとを接続するように、前記各ICパッド2bからIOパッド3bに向かって放射状にパターニングされる多数本の配線である。そして、前記各信号配線6はほぼ同一の長さの配線であり、絶縁層4を介して高電位側電源配線5と低電位側電源配線7に対し等間隔を隔てて挟まれるストリップライン構造となっている。
【0024】
次に、上記のように構成された多層配線基板1の作用を説明する。図4に示すように、多層配線基板1のICパッド領域PA上の各ICパッド2に、バンプ18を介してチップ19を接合する。
【0025】
そして、IOパッド3aに供給される電源電圧が高電位側電源配線5及びICパッド2aを介してチップ19に供給される。また、IOパッド3cに供給されるグランド電位が低電位側電源配線7及びICパッド2cを介してチップ19に供給される。
【0026】
また、IOパッド3bに入力される信号が信号配線6及びICパッド2bを介してチップ19に供給され、あるいはチップ19から出力される信号がICパッド2b及び信号配線6を介してIOパッド3bから出力される。
【0027】
このとき、各ICパッド2bとIOパッド3bとを接続する各信号配線6の長さがほぼ均等であり、かつすべての信号配線6が高電位側電源配線5と低電位側電源配線7との間に均等間隔で挟まれた状態であるので、各信号配線6のインピーダンス及び信号の伝搬速度がほぼ均等となる。
【0028】
そして、各信号配線6とチップ19の入出力回路との間でインピーダンスの不整合が発生しないように、各信号配線6のインピーダンスとチップ19の入出力インピーダンスが設定されている。
【0029】
上記のような多層配線基板1では、次に示す効果を得ることができる。
(1)ICパッド2bとIOパッド3bとを同心円状に配置して、ICパッド2bとIOパッド3bとを接続する多数本の信号配線6をほぼ等長とすることができる。また、各信号配線6が高電位側電源配線5と低電位側電源配線7との間に挟まれるストリップライン構造としたので、各信号配線6に寄生する容量及びインダクタンスを揃えて、各信号配線6のインピーダンス及び信号の伝搬速度を揃えることができる。
(2)多数本の信号配線6をほぼ等長としたので、各信号配線6での信号伝搬遅延のばらつきを抑制し、信号の伝搬速度をほぼ均等とすることができる。
(3)ICパッド2bとIOパッド3bとの間の各信号配線6を、ビア9,14を含めてほぼ等長としたので、ICパッド2bとIOパッド3bとの間での信号伝搬遅延のばらつきを抑制し、信号の伝搬速度をほぼ均等とすることができる。
(4)各信号配線6のインピーダンスと、チップ19の入出力インピーダンスを整合させることができる。
(5)多層配線基板1の表面にマトリックス状に配設されるICパッド2の中から円周状に位置するICパッド2bと、多層配線基板1の裏面にマトリックス状に配設されるIOパッド3の中から円周状に位置するIOパッド3bとを信号配線6で接続した。多層配線基板1の表裏面にマトリックス状に配設されるICパッド及びIOパッドを使用して、多数本の等長の信号配線6を形成することができる。
(第二の実施形態)
図13図15は、第二の実施形態を示す。この実施形態は、前記第一の実施形態の各信号配線6の間に低電位側電源配線7を配設して各信号配線6間に発生するクロストークノイズの低減を図るようにしたものである。
【0030】
図14に示すように、低電位側電源配線7は信号配線6と同一層で前記ビア15から延設され、図13及び図15に示すように、放射状に延びる各信号配線6間を埋めるように、かつ信号配線6と低電位側電源配線7との間隔が一定となるようにレイアウトされている。
【0031】
上記のような多層配線基板では、第一の実施形態で得られた効果に加えて、次に示す作用効果を得ることができる。
(1)隣り合う信号配線6間でクロストークノイズの発生を抑制することができる。
【0032】
上記実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・第一及び第二の実施形態において、高電位側電源配線5と低電位側電源配線7を上下方向に入れ替えてもよい。
・第一及び第二の実施形態において、信号配線6の上層及び下層に設ける電源配線をともに低電位側電源配線、あるいはともに高電位側電源配線としてもよい。
・ICパッド2bを、ICパッド領域PAの外周近傍以外の位置に設けてもよい。同様に、IOパッド3bを、多層配線基板の裏面の外周近傍以外の位置に設けてもよい。例えば、ICパッド領域PAの中央部近傍に位置するICパッドから、円周上に位置するパッドをICパッド2bとしてもよい。また、多層配線基板1の裏面中央部近傍に位置するIOパッドから円周上に位置するパッドをIOパッド3bとしてもよい。
・第二の実施形態において、各信号配線6間に高電位側電源配線を配設してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…多層配線基板、2,2a,2b,2c…ICパッド、3,3a,3b,3c…IOパッド、5…電源配線(高電位側電源配線)、6…信号配線、7…電源配線(低電位側電源配線)。
図4
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図14
図15
図1
図2
図3
図5
図13