特許第5872799号(P5872799)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872799
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/02 20140101AFI20160216BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20160216BHJP
   B23K 26/08 20140101ALI20160216BHJP
【FI】
   B23K26/02 A
   B23K26/00 M
   B23K26/08 D
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-135131(P2011-135131)
(22)【出願日】2011年6月17日
(65)【公開番号】特開2013-777(P2013-777A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 健太呂
【審査官】 青木 正博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−206137(JP,A)
【文献】 特開2011−108723(JP,A)
【文献】 特開2010−034263(JP,A)
【文献】 特開2000−297841(JP,A)
【文献】 米国特許第05716037(US,A)
【文献】 特開2002−139096(JP,A)
【文献】 特開2002−209279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00−26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する被加工物保持手段と、該被加工物保持手段に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該被加工物保持手段と該レーザー光線照射手段とを加工送り方向(X軸方向)に相対的に加工送りする加工送り手段と、該被加工物保持手段と該レーザー光線照射手段とをX軸方向と直交する割り出し送り方向(Y軸方向)に相対的に割り出し送りする割り出し送り手段と、を具備しているレーザー加工装置において、
該被加工物保持手段と該レーザー光線照射手段と該加工送り手段と該割り出し送り手段は第1の基台に配設され
該第1の基台は、X軸方向の移動を許容するX軸方向移動許容ガイド手段を介して第2の基台に配設されており、
該第2の基台は、Y軸方向の移動を許容するY軸方向移動許容ガイド手段を介して第3の基台上に配設されている
ことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
該第2の基台に対する該第1の基台のX軸方向の移動量を検出するX軸方向移動量検出手段を備えている、請求項記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
該第3の基台に対する該第2の基台のY軸方向の移動量を検出するY軸方向移動量検出手段を備えている、請求項1又は2記載のレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の所定の領域にレーザー光線を照射して所定のレーザー加工を施すレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することにより回路が形成された領域を分割して個々のデバイスを製造している。また、サファイヤ基板の表面に窒化ガリウム系化合物半導体等が積層された光デバイスウエーハもストリートに沿って切断することにより個々の発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスに分割され、電気機器に広く利用されている。
【0003】
このような半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハをストリートに沿って切断する加工装置としてレーザー加工装置が用いられている。このレーザー加工装置は、被加工物を保持する被加工物保持手段と、該被加工物保持手段に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、被加工物保持手段を加工送り方向(X軸方向)に加工送りする加工送り手段と、被加工物保持手段とレーザー光線照射手段とをX軸方向と直交する割り出し送り方向(Y軸方向)に相対的に割り出し送りする割り出し送り手段と、を具備している。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−263763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、生産性を向上させるために特に加工送り手段による被加工物保持手段の加工送り速度を速めて往復移動を行うと、装置全体に振動が発生して高精度の加工ができないという問題がある。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、加工送り手段による加工送りによって発生する振動を吸収することができるレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持する被加工物保持手段と、該被加工物保持手段に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該被加工物保持手段と該レーザー光線照射手段とを加工送り方向(X軸方向)に相対的に加工送りする加工送り手段と、該被加工物保持手段と該レーザー光線照射手段とをX軸方向と直交する割り出し送り方向(Y軸方向)に相対的に割り出し送りする割り出し送り手段と、を具備しているレーザー加工装置において、
該被加工物保持手段と該レーザー光線照射手段と該加工送り手段と該割り出し送り手段は第1の基台に配設され該第1の基台は、X軸方向の移動を許容するX軸方向移動許容ガイド手段を介して第2の基台に配設されており、該第2の基台は、Y軸方向の移動を許容するY軸方向移動許容ガイド手段を介して第3の基台上に配設されている、ことを特徴とするレーザー加工装置が提供される。
【0008】
上記第2の基台に対する第1の基台のX軸方向の移動量を検出するX軸方向移動量検出手段を備えている。
また、上記第3の基台に対する第2の基台のY軸方向の移動量を検出するY軸方向移動量検出手段を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるレーザー加工装置においては、被加工物保持手段とレーザー光線照射手段と加工送り手段と割り出し送り手段は第1の基台に配設されており、第1の基台がX軸方向の移動を許容するX軸方向移動許容ガイド手段を介して第2の基台に配設されているので、レーザー加工工程において被加工物保持手段を速い速度で加工送りすると、装置全体に加工送り方向の振動が発生するが、第1の基台が第2の基台に対して加工送り方向に移動することにより加工送り方向の振動が吸収される。従って、被加工物保持手段とレーザー光線照射手段との関係が維持され、高精度の加工が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図。
図2図1に示すレーザー加工装置の要部斜視図。
図3図1に示すレーザー加工装置によって実施するレーザー加工工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1に示されたレーザー加工装置は、略直方体状の装置ハウジング1を具備している。この装置ハウジング1内には、図2に示す第1の基台2と、該第1の基台2上に配設された被加工物保持機構3およびレーザー光線照射としてのレーザー光線照射ユニット4と、上記第1の基台2を矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に支持する第2の基台5と、該第2の基台5をX軸方向と直交する矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に支持する第3の基台6が配設されている。
【0013】
上記被加工物保持機構3は、第1の基台2上にX軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上にX軸方向に移動可能に配設された第一の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上にY軸方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持されたカバーテーブル35と、被加工物を保持する被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、被加工物保持面としての吸着チャック361上に被加工物である例えば円板状のウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0014】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面にY軸方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態における被加工物保持機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動させるためのボール螺子機構からなる加工送り手段37を具備している。加工送り手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第一の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動せしめられる。
【0015】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、Y軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動させるためのボール螺子機構からなる割り出し送り手段38を具備している。割り出し送り手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0016】
上記レーザー光線照射ユニット4は、上記第1の基台2上に配設された支持部材41と、該支持部材41によって支持され実質上水平に延出するケーシング42と、該ケーシング42内に配設されたYAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器等のレーザー光線発振手段(図示せず)と、ケーシング42の前端部に配設されレーザー光線発振手段から発振されたパルスレーザー光線を集光して下方に向けて照射する集光器43を具備している。
【0017】
上記レーザー光線照射ユニット4を構成するケーシング42の前端部には、レーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段45が配設されている。撮像手段45は、顕微鏡やCCDカメラ等の光学手段からなっており、撮像した画像信号を図示しない制御手段に送る。
【0018】
上述したように被加工物保持機構3およびレーザー光線照射ユニット4が配設された第1の基台2は、第2の基台5に加工送り方向(X軸方向)の移動を許容するX軸方向移動許容ガイド手段50を介して配設される。X軸方向移動許容ガイド手段50は、図示の実施形態においては第2の基台5の上面にX軸方向に沿って平行に配設された2本のガイドレール51、51とからなっている。一方、第1の基台2の下面には上記2本のガイドレール51、51と嵌合する2条の被ガイド溝21、21が設けられており、該2条の被ガイド溝21、21を2本のガイドレール51、51に嵌合することにより、第1の基台2は2本のガイドレール51、51に沿って移動可能に支持される。
【0019】
上記第2の基台5には、第1の基台2のX軸方向への所定量以上の移動を規制する第1の規制手段55が配設されている。該第1の規制手段55は、第2の基台5におけるX軸方向の両端にそれぞれ設けられた規制部材551、551と、該規制部材551、551にそれぞれ装着されたゴム等からなる緩衝部材552、552とからなっている。
【0020】
また、上述したように第1の基台2がX軸方向の移動を許容する移動許容ガイド手段50を介して配設され第2の基台5は、第3の基台6に割り出し送り方向(Y軸方向)の移動を許容するY軸方向移動許容ガイド手段60を介して配設される。Y軸方向移動許容ガイド手段60は、図示の実施形態においては第3の基台6の上面にY軸方向に沿って平行に配設された2本のガイドレール61、61と嵌合する2条の被ガイド溝52、52が設けられており、該2条の被ガイド溝52、52を2本のガイドレール61、61に嵌合することにより、第2の基台5は2本のガイドレール61、61に沿って移動可能に支持される。
【0021】
上記第3の基台6には、第2の基台5のY軸方向への所定量以上の移動を規制する第2の規制手段65が配設されている。該第2の規制手段65は、第3の基台6におけるY軸方向の両端にそれぞれ設けられた規制部材651、651と、該規制部材651、651にそれぞれ装着されたゴム等からなる緩衝部材652、652とからなっている。
【0022】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記第2の基台5に対する第1の基台2のX軸方向の移動量を検出するX軸方向移動量検出手段71を備えている。このX軸方向移動量検出手段71は、第2の基台5の上面にX軸方向に沿って配設されたリニアスケール711と、第1の基台2に配設されリニアスケール711に沿って移動する読み取りヘッド712とからなっている。このように構成されたX軸方向移動量検出手段71の読み取りヘッド712は、検出信号を図示しない制御手段に送る。
【0023】
また、図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記第3の基台6に対する第2の基台5のY軸方向の移動量を検出するY軸方向移動量検出手段72を備えている。このY軸方向移動量検出手段72は、第3の基台6の上面にX軸方向に沿って配設されたリニアスケール721と、第2の基台5に配設されリニアスケール521に沿って移動する読み取りヘッド722とからなっている。このように構成されたY軸方向移動量検出手段72の読み取りヘッド722は、検出信号を図示しない制御手段に送る。
【0024】
図1に戻って説明を続けると、図示のレーザー加工装置は、被加工物であるウエーハを収容するカセットが載置されるカセット載置部11aを備えている。カセット載置部11aには図示しない昇降手段によって上下に移動可能にカセットテーブル11が配設されており、このカセットテーブル11上には、被加工物としてのウエーハ10を収容するカセット12が載置される。カセット12に収容されるウエーハ10は、表面に格子状のストリートが形成されており、この格子状のストリートによって区画された複数の矩形領域にIC、LSI等のデバイスが形成されている。このように形成されたウエーハ10は、環状の支持フレームFに装着されたダイシングテープTの表面に裏面が貼着された状態でカセット12に収容される。
【0025】
また、図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、カセットテーブル11上に載置されたカセット12に収容されているウエーハ10(環状のフレームFにダイシングテープTを介して支持されている状態)を仮置きテーブル13に搬出する搬出・搬入手段14と、仮置きテーブル13に搬出されたウエーハ10を上記チャックテーブル36上に搬送する第1の搬送手段15と、チャックテーブル36上でレーザー加工されたウエーハ10を洗浄する洗浄手段16と、チャックテーブル36上でレーザー加工されたウエーハ10を洗浄手段16へ搬送する第2の搬送手段17を具備している。なお、上記カセットテーブル11、仮置きテーブル13、搬出・搬入手段14、第1の搬送手段15、洗浄手段16、第2の搬送手段17は、上記第3の基台6に配設されている。
【0026】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
カセットテーブル11上に載置されたカセット12の所定位置に収容されているウエーハ10(環状のフレームFにダイシングテープTを介して支持されている状態)は、図示しない昇降手段によってカセットテーブル11が上下動することにより搬出位置に位置付けられる。次に、搬出・搬入手段14が進退作動して搬出位置に位置付けられたウエーハ10を仮置きテーブル13上に搬出する。仮置きテーブル13に搬出されたウエーハ10は、第1の搬送手段15の旋回動作によって上記チャックテーブル36上に搬送される。
【0027】
チャックテーブル36上にウエーハ10が載置されたならば、図示しない吸引手段が作動してウエーハ10をチャックテーブル36上に吸引保持する。また、ウエーハ10をダイシングテープTを介して支持する環状のフレームFは、上記クランプ362によって固定される。このようにしてウエーハ10を保持したチャックテーブル36は、撮像手段45の直下まで移動せしめられる。チャックテーブル36が撮像手段45の直下に位置付けられると、図示しない制御手段および撮像手段45はウエーハ10を撮像し、ウエーハ10のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、図示しない制御手段および撮像手段45は、ウエーハ10の所定方向に形成されているストリートと、ストリートに沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射ユニット4の集光器43との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する。また、ウエーハ10に形成されている上記所定方向に対して直交する方向に延びるストリートに対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントを実行する。
【0028】
上述したようにチャックテーブル36上に保持されているウエーハ10に形成されているストリートを検出し、レーザー光線照射位置のアライメントを実施したならば、加工送り手段37および割り出し送り手段38を作動してチャックテーブル36を図3の(a)で示すようにレーザー光線を照射するレーザー光線照射ユニット4の集光器43が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定のストリートを集光器43の直下に位置付ける。このとき、図3の(a)で示すようにウエーハ10は、ストリートの一端(図3の(a)において左端)が集光器43の直下に位置するように位置付けられる。次に、レーザー光線照射ユニット4の集光器43からウエーハ10に対して吸収性を有する波長レーザー光線を照射しつつ加工送り手段37を作動してチャックテーブル36を図3の(a)において矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる(レーザー加工工程)。そして、図3の(b)で示すようにストリートの他端(図3において右端)が集光器43の直下位置に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル36の移動を停止する。このレーザー加工工程においては、パルスレーザー光線の集光点Pを図3の(a)に示すようにウエーハ10の上面付近に合わせる。
【0029】
次に、割り出し送り手段38を作動してチャックテーブル36を紙面に垂直な割り出し送り方向(Y軸方向)にストリートの間隔だけ移動する(割り出し送り工程)。そして、レーザー光線照射ユニット4の集光器43からパルスレーザー光線を照射しつつ加工送り手段37を作動してチャックテーブル36を図3の(b)において矢印X2で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめ、図3の(b)に示す位置に達したらパルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル36の移動を停止する(レーザー加工工程)。
【0030】
上述したレーザー加工工程においてチャックテーブル36を速い速度(例えば600mm/秒)で加工送りすると、装置全体に加工送り方向(X軸方向)の振動が発生する。このとき、被加工物保持機構3およびレーザー光線照射ユニット4が配設された第1の基台2は、第2の基台5に加工送り方向(X軸方向)の移動を許容するX軸方向移動許容ガイド手段50を介して配設されるので、第2の基台5の上面に配設された2本のガイドレール51、51に沿って移動することにより、加工送り方向(X軸方向)の振動が吸収される。従って、チャックテーブル36とレーザー光線照射ユニット4との関係が維持され、高精度の加工が可能となる。
【0031】
また、上記割り出し送り工程においてもチャックテーブル36を速い速度(例えば100mm/秒)で割り出し送りすると、装置全体に割り出し送り方向(Y軸方向)の振動が発生する。このとき、被加工物保持機構3およびレーザー光線照射ユニット4が配設された第1の基台2を支持している第2の基台5は、第3の基台6に割り出し送り方向(Y軸方向)の移動を許容するY軸方向移動許容ガイド手段60を介して配設されるので、第3の基台6の上面に配設された2本のガイドレール61、61に沿って移動することにより、割り出し送り方向(Y軸方向)の振動が吸収される。
【0032】
以上のようにレーザー加工工程および割り出し送り工程を順次実施することにより、ウエーハ10の所定方向に形成された全てのストリートに沿ってレーザー加工を施したならば、チャックテーブル36を90度回動し、ウエーハ10に形成されている上記所定方向に対して直交する方向に延びるストリートに沿って上記レーザー加工工程および割り出し送り工程を順次実施する。そして、ウエーハ10に形成された全てのストリートに沿ってレーザー加工を施したならば、加工送り手段37を作動してウエーハ10を保持しているチャックテーブル36を最初にウエーハ10を吸引保持した位置に戻し、図示しない吸引手段によるウエーハ10の吸引保持を解除する。そして、第2の搬送手段17を作動して、チャックテーブル36上のレーザー加工されたウエーハ10を洗浄手段16に搬送する。次に、洗浄手段16を作動してレーザー加工されたウエーハ10を洗浄し乾燥する。
【0033】
上述したようにレーザー加工されたウエーハ10の洗浄および乾燥作業を実施したならば、第1の搬送手段15を作動して洗浄されたウエーハ10を位置合わせ手段13に搬送する。次に、搬出手段14を作動して位置合わせ手段13に搬送されたウエーハ10をカセット12の所定位置に収納せしめる。
【0034】
上述したように被加工物保持機構3およびレーザー光線照射ユニット4が配設された第1の基台2が第2の基台5の上面に配設された2本のガイドレール51、51に沿って移動したり、第2の基台5が第3の基台6の上面に配設された2本のガイドレール61、61に沿って移動すると、被加工物保持機構3のチャックテーブル36と第3の基台6に配設される上記第1の搬送手段15および第2の搬送手段17との位置関係が狂ってくる。この位置関係を補正するために、図示の実施形態においては仮置きテーブル13に搬出された加工前のウエーハ10をチャックテーブル36に搬送する際および加工後のウエーハ10をチャックテーブル36から洗浄手段16に搬送する際には、それぞれX軸方向移動量検出手段71によって第2の基台5に対する第1の基台2のX軸方向の移動量を検出するとともに、Y軸方向移動量検出手段72によって第3の基台6に対する第2の基台5のY軸方向の移動量を検出し、それぞれ検出信号を図示しない制御手段に送る。そして、図示しない制御手段は加工送り手段37および割り出し送り手段38を制御して上記位置関係を補正する。
【0035】
なお、上述したように被加工物保持機構3のチャックテーブル36と上記第1の搬送手段15および第2の搬送手段17との位置関係を補正し、第1の搬送手段15および第2の搬送手段17によってウエーハ10をそれぞれ搬送した後には、制御手段は加工送り手段37および割り出し送り手段38を制御してレーザー光線照射ユニット4の集光器43と被加工物を保持する被加工物保持手段としてのチャックテーブル36との位置関係を最初にセットした状態に戻す。
【符号の説明】
【0036】
2:第1の基台
3:被加工物保持機構
32:第1の滑動ブロック
33:第2の滑動ブロック
36:チャックテーブル
37:加工送り手段
38:割り出し送り手段
4:レーザー光線照射ユニット
43:集光器
5:第2の基台
50:X軸方向移動許容ガイド手段
55:第1の規制手段
6:第3の基台
60:Y軸方向移動許容ガイド手段
65:第2の規制手段
71:X軸方向移動量検出手段
72:Y軸方向移動量検出手段
10:ウエーハ
11:カセットテーブル
12:カセット
13:仮置きテーブル
14:搬出・搬入手段
15:第1の搬送手段
16:洗浄手段
17:第2の搬送手段
図1
図2
図3