【実施例】
【0013】
図1は、本発明に係る差動増幅器100の第1の実施例としての回路を示す回路図である。
【0014】
図1に示す差動増幅器100は、nチャネルMOS(Metal Oxide Semiconductor)型のトランジスタ11〜14と、pチャネルMOS型のトランジスタ15〜18と、電流源19と、からなる。尚、上記トランジスタ11及び12は差動増幅器100としての差動入力部を担い、上記トランジスタ11と同一導電型のトランジスタ13及びトランジスタ12と同一導電型のトランジスタ14は出力負荷を担う。また、トランジスタ15及び16は第1カレントミラー部CM1、トランジスタ17及び18は第2カレントミラー部CM2を夫々担う。
【0015】
差動入力部を担うトランジスタ11のゲート端子には、非反転入力信号V
IPが供給されており、そのソース端子は、電流源19の一端及びトランジスタ12のソース端子に接続されている。トランジスタ11のドレイン端子はラインL1を介して、トランジスタ15のドレイン端子と、トランジスタ15及び16各々のゲート端子とに接続されている。トランジスタ15及び16各々のソース端子には、高電位側の第1電源電圧として、電源電圧VDDが印加されている。トランジスタ16のドレイン端子は、第1の出力ラインL
OPを介してトランジスタ13のドレイン端子及びゲート端子に接続されている。すなわち、出力負荷としてのトランジスタ13はダイオード接続された状態となっている。トランジスタ13のソース端子は、電流源19の他端、及びトランジスタ14のソース端子に接続されている。また、これら電流源19の他端、トランジスタ13及び14各々のソース端子には、上記した第1電源電圧よりも低い低電位側の第2電源電圧として、電源電圧VSSが印加されている。かかる構成により、出力ラインL
OP上の電圧が、差動増幅器100の非反転出力信号V
OPとして出力される。
【0016】
差動入力部を担うトランジスタ12のゲート端子には、反転入力信号V
INが供給されており、そのソース端子は、電流源19の一端及びトランジスタ11のソース端子に接続されている。すなわち、差動入力部を担うトランジスタ11及び12のソース端子同士が共通に接続されている。トランジスタ12のドレイン端子はラインL2を介して、トランジスタ17のドレイン端子と、トランジスタ17及び18各々のゲート端子とに接続されている。トランジスタ17及び18各々のソース端子には、上記した電源電圧VDDが印加されている。トランジスタ18のドレイン端子は、第2の出力ラインL
ONを介してトランジスタ14のドレイン端子及びゲート端子に接続されている。すなわち、出力負荷としてのトランジスタ14はダイオード接続された状態となっている。かかる構成により、出力ラインL
ON上の電圧が、差動増幅器100の反転出力信号V
ONとして出力される。
【0017】
以下に、
図1に示す差動増幅器100の動作について説明する。
【0018】
差動入力部としてのトランジスタ11及び12は、夫々に入力された非反転入力信号V
IP及び反転入力信号V
INの電圧に対応した電流I
1及びI
2をラインL1及びL2に夫々流す。尚、電流I
1と電流I
2との合計電流は、電流源19で生成される電流I
0となる。カレントミラー部CM1は、ラインL1に流れ込む電流I
1に対応した第1出力電流を、出力ラインL
OPを介して出力負荷としてのトランジスタ13に送出する。これにより、出力ラインL
OP上には、電流I
1に対応した電圧を有する非反転出力信号V
OPが生成される。一方、カレントミラー部CM2は、ラインL2に流れ込む電流I
2に対応した第2出力電流を、出力ラインL
ONを介して出力負荷としてのトランジスタ14に送出する。これにより、出力ラインL
ON上には、電流I
2に対応した電圧を有する反転出力信号V
ONが生成される。
【0019】
上記した動作により、差動増幅器100は、差動信号形態の第1及び第2の入力信号(V
IP、V
IN)の電圧を、以下の利得A
Vで増幅した差動信号形態の第1及び第2の出力信号(V
OP、V
ON)を出力する。
A
V=g
m/g
mls
g
m:差動入力部(トランジスタ11、12)の相互コンダクタンス
g
mls:出力負荷(トランジスタ13、14)の相互コンダクタンス
【0020】
つまり、差動増幅器100の利得A
Vは、互いに同一構造、つまり全て同一導電型(nチャネル型)のMOSトランジスタであるトランジスタ11〜14の相互コンダクタンスの比で決まる。
【0021】
この際、互いに同一構造のトランジスタに対しては、夫々の相互コンダクタンス同士のバラツキの方向性(増加又は減少傾向)及びそのバラツキ量を、半導体チップ内での配置によって均一化させることが可能である。
【0022】
従って、
図1に示す差動増幅器100によれば、例え製造上のバラツキ、或いは温度、電源電圧の変動に伴い、差動入力部(トランジスタ11、12)及び出力負荷(トランジスタ13、14)の相互コンダクタンスにバラツキが生じても、差動増幅器100の利得A
Vは両者の比で決定する為、利得A
Vのバラツキを抑制することが可能となる。
【0023】
更に、
図1に示す差動増幅器100によれば、電流源19を含む全ての素子をMOS型のトランジスタで構築することができるので、抵抗又はコンデンサ等の比較的、半導体チップの占有面積が大となる素子が含まれるものに比して、小規模化を図ることが可能となる。
【0024】
尚、上記実施例では、差動入力部及び出力負荷としてのトランジスタ11〜14を全てnチャネルMOS型としているが、これらを全てpチャネルMOS型のトランジスタで構築するようにしても良い。
【0025】
図2は、かかる点に鑑みて為された、
図1に示される差動増幅器100の変形例を示す回路図である。
【0026】
図2において、pチャネルMOS型のトランジスタ21及び22は差動増幅器100としての差動入力部を担い、かかるトランジスタ21と同一導電型(pチャネル型)のトランジスタ23及びトランジスタ22と同一導電型(pチャネル型)のトランジスタ24は出力負荷を担う。また、トランジスタ25及び26は第1カレントミラー部CM1、トランジスタ27及び28は第2カレントミラー部CM2を夫々担う。
【0027】
差動入力部を担うトランジスタ21のゲート端子には、非反転入力信号V
IPが供給されており、そのソース端子は、電流源29の一端及びトランジスタ22のソース端子に接続されている。トランジスタ21のドレイン端子はラインL1を介して、トランジスタ25のドレイン端子と、トランジスタ25及び26各々のゲート端子とに接続されている。トランジスタ25及び26各々のソース端子には、低電位側の第2電源電圧として、電源電圧VSSが印加されている。トランジスタ26のドレイン端子は、第1の出力ラインL
OPを介してトランジスタ23のドレイン端子及びゲート端子に接続されている。すなわち、出力負荷としてのトランジスタ23はダイオード接続された状態となっている。トランジスタ23のソース端子は、電流源29の他端、及びトランジスタ24のソース端子に接続されている。また、これら電流源29の他端、トランジスタ23及び24各々のソース端子には、上記した第2電源電圧よりも高い高電位側の第1電源電圧として、電源電圧VDDが印加されている。かかる構成により、出力ラインL
OP上の電圧が、差動増幅器100の非反転出力信号V
OPとして出力される。
【0028】
差動入力部を担うトランジスタ22のゲート端子には、反転入力信号V
INが供給されており、そのソース端子は、電流源29の一端及びトランジスタ21のソース端子に接続されている。すなわち、差動入力部を担うトランジスタ21及び22のソース端子同士が共通に接続されている。トランジスタ22のドレイン端子はラインL2を介して、トランジスタ27のドレイン端子と、トランジスタ27及び28各々のゲート端子とに接続されている。トランジスタ27及び28各々のソース端子には、上記した電源電圧VSSが印加されている。トランジスタ28のドレイン端子は、第2の出力ラインL
ONを介してトランジスタ24のドレイン端子及びゲート端子に接続されている。すなわち、出力負荷としてのトランジスタ24はダイオード接続された状態となっている。かかる構成により、出力ラインL
ON上の電圧が、差動増幅器100の反転出力信号V
ONとして出力される。
【0029】
要するに、本発明の第1の実施例による差動増幅器は、互いにソース端子が共通接続されており且つ夫々のゲート端子に差動信号形態の第1及び第2入力信号(V
IP、V
IN)が夫々供給される第1及び第2トランジスタ(11、12、21、22)と、第1及び第2トランジスタ各々のソース端子に接続されている第1電流源(19、29)と共に、以下の第1及び第2カレントミラー部と、第1及び第2出力負荷部とを有するものである。つまり、第1カレントミラー部(CM1)は、第1トランジスタ(11、21)に流れる電流に対応した第1出力電流を第1出力ライン(L
OP)に流す。第2カレントミラー部(CM2)は、第2トランジスタ(12、22)に流れる電流に対応した第2出力電流を第2出力ライン(L
ON)に流す。第1出力負荷部は、第1出力ライン上の電圧を第1出力信号、第2出力負荷部は第2出力ライン上の電圧を第2出力信号として差動形態信号(V
OP、V
ON)として出力する。この際、第1出力負荷部は、ゲート端子及びドレイン端子が共に第1出力ラインに接続されている第3トランジスタ(13、23)を含み、第2負荷部は、ゲート端子及びドレイン端子が共に第2出力ラインに接続されている第4トランジスタ(14、24)を含むものである。
【0030】
かかる差動増幅器によれば、上記した第1〜第4トランジスタを全て同一導電型のチャネル(pチャネル又はnチャネル)のトランジスタで構築することが可能となる。更に、この差動増幅器の利得は、差動入力部を担う第1及び第2トランジスタの相互コンダクタンスと、出力負荷を担う第3及び第4トランジスタの相互コンダクタンスとの比で決定することになる。従って、製造上のバラツキ、或いは温度、電源電圧の変動に伴い、第1〜第4トランジスタの相互コンダクタンスにバラツキが生じていても、差動入力部を担う第1及び第2トランジスタの相互コンダクタンスと、出力負荷を担う第3及び第4トランジスタの相互コンダクタンスとの比は略一定となるので、利得のバラツキが抑制される。
【0031】
更に、本発明に係る差動増幅器によれば、電流源を含む全ての素子をMOS型のトランジスタで構築することができるので、抵抗又はコンデンサ等の比較的、半導体チップの占有面積が大となる素子が含まれるものに比して、小規模化を図ることが可能となる。
【0032】
また、
図1又は
図2に示す差動増幅器100において、出力負荷となるトランジスタ(13、14、23、24)の各々と並列に、新たな電流源を接続するようにしても良い。
【0033】
図3及び
図4は、かかる点に鑑みて為された、差動増幅器100としての第2の実施例を示す回路図である。
【0034】
尚、
図3に示す差動増幅器100では、
図1に示す構成に電流源31及び32を付加し、トランジスタ13のドレイン端子及びソース端子に電流源31の一端及び他端を夫々接続すると共に、トランジスタ14のドレイン端子及びソース端子に電流源32の一端及び他端を夫々接続する点を除く他の構成は、
図1に示されるものと同一である。すなわち、電源電圧VSSと出力ラインL
OPとの間に電流源31の一端及び他端が夫々接続されると共に、電源電圧VSSと出力ラインL
ONとの間に、電流源32の一端及び他端が夫々接続される。
【0035】
よって、
図3に示す差動増幅器100によれば、出力ラインL
OPに流れる電流を電圧に変換する出力負荷は互いに並列接続されたトランジスタ13及び電流源31となる。また、出力ラインL
ONに流れる電流を電圧に変換する出力負荷は互いに並列接続されたトランジスタ14及び電流源32となる。
【0036】
図4に示す差動増幅器100では、
図2に示す構成に電流源31a及び32aを付加し、出力負荷としてのトランジスタ23のドレイン端子及びソース端子に電流源31aの一端及び他端を夫々接続すると共に、トランジスタ24のドレイン端子及びソース端子に電流源32aの一端及び他端を夫々接続する点を除く他の構成は、
図2に示すものと同一である。すなわち、電源電圧VDDと出力ラインL
OPとの間に電流源31aの一端及び他端が夫々接続されると共に、電源電圧VDDと出力ラインL
ONとの間に、電流源32aの一端及び他端が夫々接続される。
【0037】
よって、
図4に示す差動増幅器100によれば、出力ラインL
OPに流れる電流を電圧に変換する出力負荷は、互いに並列接続されたトランジスタ23及び電流源31aとなる。また、出力ラインL
ONに流れる電流を電圧に変換する出力負荷は、互いに並列接続されたトランジスタ24及び電流源32aとなる。
【0038】
ここで、カレントミラー部の差動入力部側では、差動入力部の電流源(19、29)から流れる電流によりその動作点電圧が決まる。この動作点電圧に基づき、カレントミラー部の出力側は出力ライン(L
OP、L
ON)を介して、ダイオード接続された出力負荷としてのトランジスタ(13、14、23、24)に電流を流す。よって、その電流から出力の動作点電圧が決まる。かかる動作点電圧に応じて、MOSトランジスタとしての動作領域が決まり、この動作領域からトランジスタの特性(相互コンダクタンス)が決定している。この際、差動増幅器100では、トランジスタの相互コンダクタンス比から利得が決まる為、動作点がトランジスタの動作領域を遷移すると利得にずれが生じてくる。トランジスタの動作領域を決める動作点電圧は、入力信号(V
IP、V
IN)の振幅が大きくなれば、それに応じて大きく変化する。そのため、入力信号の振幅が素子の動作領域を遷移させるほど大きくなると、利得が不安定になる虞が生じる。
図1又は
図2に示す差動増幅器100では、入力信号の振幅の大きさが、ダイオード接続されたトランジスタに流れる電流の変動幅に直結する。このダイオード接続されたトランジスタは流れる電流の変動幅が大きくなると、想定した飽和領域から線形領域に遷移してしまう場合があり、この際、相互コンダクタンスが変動してしまう。さらに変動幅が大きくなって、飽和領域から遮断領域まで遷移してしまうと、遮断領域では相互コンダクタンスが桁違いに変わる為、利得だけでなく増幅動作自体が不安定になる虞が生じる。
【0039】
しかしながら、
図3又は
図4に示す差動増幅器100では、カレントミラー部(CM1、CM2)の動作によって出力ライン(L
OP、L
ON)に流れこむ電流は、出力負荷としてダイオード接続されたトランジスタ(13、14、23、24)と、電流源(31、31a、32、32a)と、に分散して流れ込むことになる。つまり、出力ラインに流れる電流の変動分も、ダイオード接続されたトランジスタと、電流源と、に分散することになる。
【0040】
よって、
図3又は
図4に示す差動増幅器100によれば、ダイオード接続されたトランジスタに流れる電流の変動幅が軽減される為、
図1又は
図2に示す差動増幅器100に比して、大振幅の非反転入力信号V
IP及び反転入力信号V
INに対する利得及び増幅動作の不安定さが軽減される。換言すると、
図3又は
図4に示す差動増幅器100によれば、大振幅の非反転入力信号V
IP及び反転入力信号V
INを受け付けることが可能となるのである。
【0041】
尚、
図3又は
図4に示す差動増幅器100によると、出力負荷が1/(g
mls+1/r
o)となり、その利得A
Vは、
A
V=g
m/(g
mls+1/r
o)
g
m:差動入力部(トランジスタ11、12、21、22)の相互コンダクタンス
g
mls:トランジスタ13、14、23、24の相互コンダクタンス
r
o:電流源31、31a、32、32aの出力インピーダンス
となる。
【0042】
この際、利得A
Vは相互コンダクタンスの比からずれることになるがトランジスタ13、14、23、24の相互コンダクタンスg
mlsに比べて1/r
oを十分に小さくすることができるので、このずれは極力小さくすることが可能である。
【0043】
尚、
図3又は
図4に示す差動増幅器100では電流源(31、31a、32、32a)を、出力負荷となるトランジスタ(13、14、23、24)の各々と並列に接続するようにしているが、これをカレントミラー部CM1及びCM2の各々に並列に接続するようにしても良い。
【0044】
図5及び
図6は、かかる点に鑑みて為された、差動増幅器100としての第3の実施例を示す回路図である。
【0045】
図5に示す差動増幅器100では、電流源を並列接続する対象を、出力負荷としてのトランジスタ13及び14から、第1カレントミラー部CM1の出力側、及び第2カレントミラー部CM2の出力側に夫々変更した点を除く他の構成は、
図3に示すものと同一である。
図5に示す差動増幅器100では、電源電圧VDDと出力ラインL
OPとの間に電流源31bの一端及び他端が夫々接続されると共に、電源電圧VDDと出力ラインL
ONとの間に電流源32bの一端及び他端が夫々接続されたものとなる。
【0046】
また、
図6に示す差動増幅器100では、電流源を並列接続する対象を、出力負荷としてのトランジスタ23及び24から、第1カレントミラー部CM1の出力側、及び第2カレントミラー部CM2の出力側に夫々変更した点を除く他の構成は、
図4に示すものと同一である。
図6に示す差動増幅器100では、電源電圧VSSと出力ラインL
OPとの間に電流源31cの一端及び他端が夫々接続されると共に、電源電圧VSSと出力ラインL
ONとの間に、電流源32cの一端及び他端が夫々接続されたものとなる。
【0047】
図5及び
図6に示す差動増幅器100によれば、出力ラインL
OP及びL
ONには、入力信号(V
IP、V
IN)の振幅に対応した信号成分の他に、電流源(31b、31c)及び電流源(32b、32c)によって生成されたバイアス成分としての一定電流が流れる。これにより、かかる信号成分の変動に対して、ダイオード接続されたトランジスタ(13、14、23、24)に流れる電流変動分を抑制させることが可能となる。よって、
図1〜
図4に示す如き入力信号(V
IP、V
IN)の振幅に対応した信号成分だけが出力ラインL
OP及びL
ONに流れ込むような構成に比して、出力負荷となるトランジスタ(13、14、23、24)の動作領域の遷移が抑制され、動作領域から決まる相互コンダクタンスの変動が抑えられる。従って、
図3及び
図4に示す差動増幅器100と同様に、大振幅の入力信号(V
IP、V
IN)に対する利得の安定化が図られると共に、
図1及び
図2に示す差動増幅器100と同一な利得A
V、つまり、
A
V=g
m/g
mls
g
m:差動入力部(トランジスタ11、12、21、22)の相互コンダクタンス
g
mls:出力負荷(トランジスタ13、14、23、24)の相互コンダクタンス
が得られる。
【0048】
尚、上記した
図1〜
図6に示す差動増幅器100では、ダイオード接続された出力負荷用のトランジスタ(13、14、23、24)を各出力ライン(L
OP、L
ON)に1段分だけ設けるようにしているが、これをn段(nは2以上の整数)に亘って直列に接続したものを各出力ラインに設けるようにしても良い。
【0049】
図7及び
図8は、かかる点に鑑みて為された、差動増幅器100としての第4の実施例を示す回路図であり、
図9及び
図10は第5の実施例を示す回路図であり、
図11及び
図12は第6の実施例を示す回路図である。
【0050】
尚、
図7に示す差動増幅器100は、
図1に示すトランジスタ13に代えて、夫々がダイオード接続されている直列n段のトランジスタ13
1〜13
nを設けると共に、トランジスタ14に代えて、夫々がダイオード接続されている直列n段のトランジスタ14
1〜14
nを設けるようにした点を除く他の構成は、
図1に示すものと同一である。
【0051】
又、
図8に示す差動増幅器100は、
図2に示すトランジスタ23に代えて、夫々がダイオード接続されている直列n段のトランジスタ23
1〜23
nを設けると共に、トランジスタ24に代えて、夫々がダイオード接続されている直列n段のトランジスタ24
1〜24
nを設けるようにした点を除く他の構成は、
図2に示すものと同一である。
【0052】
又、
図9に示す差動増幅器100は、
図3に示すトランジスタ13に代えて、夫々がダイオード接続されている直列n段のトランジスタ13
1〜13
nを設けると共に、トランジスタ14に代えて、夫々がダイオード接続されている直列n段のトランジスタ14
1〜14
nを設けるようにした点を除く他の構成は、
図3に示すものと同一である。この際、
図9に示す構成では、電流源31の一端及び他端に、上記した直列n段のトランジスタ13
1〜13
nからなる第1トランジスタ群を並列に接続すると共に、電流源32の一端及び他端に上記した直列n段のトランジスタ14
1〜14
nからなる第2トランジスタ群を並列に接続する。すなわち、電源電圧VSSと出力ラインL
OPとの間に電流源31の一端及び他端が夫々接続されると共に、電源電圧VSSと出力ラインL
ONとの間に、電流源32の一端及び他端が夫々接続されるのである。
【0053】
又、
図10に示す差動増幅器100は、
図4に示すトランジスタ23に代えて、夫々がダイオード接続されている直列n段のトランジスタ23
1〜23
nを設けると共に、トランジスタ24に代えて、夫々がダイオード接続されている直列n段のトランジスタ24
1〜24
nを設けるようにした点を除く他の構成は、
図4に示すものと同一である。この際、
図10に示す構成では、電流源31aの一端及び他端に、上記した直列n段のトランジスタ23
1〜23
nからなる第1トランジスタ群を並列に接続すると共に、電流源32aの一端及び他端に上記した直列n段のトランジスタ24
1〜24
nからなる第2トランジスタ群を並列に接続する。すなわち、電源電圧VDDと出力ラインL
OPとの間に電流源31aの一端及び他端が夫々接続されると共に、電源電圧VDDと出力ラインL
ONとの間に、電流源32aの一端及び他端が夫々接続されるのである。
【0054】
又、
図11に示す差動増幅器100は、
図5に示すトランジスタ13に代えて、夫々がダイオード接続されている直列n段のトランジスタ13
1〜13
nを設けると共に、トランジスタ14に代えて、夫々がダイオード接続されている直列n段のトランジスタ14
1〜14
nを設けるようにした点を除く他の構成は、
図5に示すものと同一である。
【0055】
又、
図12に示す差動増幅器100は、
図6に示すトランジスタ23に代えて、夫々がダイオード接続されている直列n段のトランジスタ23
1〜23
nを設けると共に、トランジスタ24に代えて、夫々がダイオード接続されている直列n段のトランジスタ24
1〜24
nを設けるようにした点を除く他の構成は、
図6に示すものと同一である。
【0056】
ここで、
図7〜
図12に示す如き構成では、出力負荷トランジスタを直列に接続する段数によって、コモンモードの電圧を調整することができる。すなわち、差動入力部として用いるトランジスタが
図7、
図9又は
図11に示す如くnチャネル型である場合には、出力負荷トランジスタを直列に接続する段数を増やすほど、つまり上記したnが大きくなるほど、コモンモードの電圧が高くなる。一方、差動入力部として用いるトランジスタが
図8、
図10又は
図12に示す如くpチャネル型である場合には、出力負荷トランジスタを直列に接続する段数を増やすほど、コモンモードの電圧が低くなる。この際、上記した出力負荷トランジスタのチャネル長とチャネル幅を変更する、或いは出力負荷トランジスタに定常的に流す電流を変更することで、コモンモード電圧を微調整することができる。
【0057】
要するに、
図7〜
図12に示す如き構成によれば、出力負荷トランジスタの直列段数により、差動増幅器100のコモンモード電圧を所望の電圧に設定することが可能となる。
【0058】
図13は、
図1〜
図12に示す構成を有する差動増幅器100が含まれている無線通信装置の概略構成を示すブロック図である。尚、かかる無線通信装置は、半導体装置としての半導体チップに形成されている以下の如き、アンプ1、ミキサ3、局部発振回路4、バンドパスフィルタ5、リミッタ6、復調器7、及び受信信号強度検出回路としてのRSSI(Received Signal Strength Indication)回路8を含む。
【0059】
図13において、アンプ1は、アンテナ2で受信された受信信号を増幅して増幅受信信号ARを生成しこれをミキサ3に供給する。局部発振器4は、受信信号中のキャリア信号周波数とほぼ等しい所定周波数の局部発振信号Fを生成しこれをミキサ3に供給する。ミキサ3は、上記した増幅受信信号ARと局部発振信号Fとを乗算し、これを周波数変換受信信号IFとしてバンドパスフィルタ5に供給する。バンドパスフィルタ5は、周波数変換受信信号IF中の不要な周波数成分を除去ことにより、予め設定された周波数帯域の信号を抽出し、これを示す差動信号として、帯域制限受信信号LF
OP及びLF
ONをリミッタ6に供給する。リミッタ6は、この差動信号形態の帯域制限受信信号LF
OP及びLF
ONを増幅しつつ、その振幅上限側及び下限側にリミッタを掛けることにより波形整形を施した、差動信号形態の受信信号SS
OP及びSS
ONを生成する。
【0060】
図14は、かかるリミッタ6の内部構成を示す図である。
【0061】
図14に示すように、リミッタ6は、夫々同一の利得A
V(A
V>1)を有するM個(Mは2以上の整数)の差動増幅器100
1〜100
Mが直列に接続されてなるものである。尚、差動増幅器100
1〜100
Mの各々は、
図1〜
図12に示す構成の内のいずれか1つの構成からなる。
図14に示す構成によれば、差動増幅器100
1〜100
M各々の出力信号の振幅レベルは、後段の差動増幅器100ほど大となる。従って、帯域制限受信信号LF
OP及びLF
ONの振幅レベルが大になるにつれ、後段の差動増幅器100から順に出力信号の振幅レベルが飽和する。つまり、最終段の差動増幅器100
Mが飽和した場合には、その後、帯域制限受信信号LF
OP及びLF
ONの振幅レベルが更に増大しても夫々一定レベルの受信信号SS
OP及びSS
ONが生成される。
【0062】
ここで、リミッタ6は、上記した受信信号SS
OP及びSS
ONを復調器7に供給すると共に、差動増幅器100
1〜100
M各々から出力された差動増幅信号VP
1〜VP
M-1、VN
1〜VN
M-1を受信信号強度検出回路としてのRSSI(Received Signal Strength Indication)回路8に供給する。復調器7は、受信信号SS
OP及びSS
ONに対して所定の復調処理を施すことにより元のベースバンド信号を得てこれを出力する。
【0063】
RSSI回路8は、
図14に示すように、上記した差動増幅器100
1〜100
M-1各々に対応づけして設けられたピーク検出回路80
1〜80
M-1と、加算器81とを含む。ピーク検出回路80
1は、差動信号としての差動増幅信号VP
1及びVN
1による振幅のピークレベルを検出し、これを振幅値VF
1として加算器81に供給する。ピーク検出回路80
2は、差動信号としての差動増幅信号VP
2及びVN
2による振幅のピークレベルを検出し、これを振幅値VF
2として加算器81に供給する。以下、同様にして、ピーク検出回路80
Q[Q:3〜(M−1)の整数]は、差動増幅信号VP
Q及びVN
Qによる振幅のピークレベルを検出し、これを振幅値VF
Qとして加算器81に供給する。加算器81は、ピーク検出回路80
1〜80
M-1各々から供給された振幅値VF
1〜VF
M-1を全て加算したものを受信信号の強度を表す受信信号強度検出信号SSIとして出力する。つまり、受信信号強度検出信号SSIは、受信信号の振幅(信号強度)に応じて増減する信号となる。また、RSSI回路8内では、受信信号強度の増大に伴って後段の差動増幅器100から順に出力信号が飽和することから、受信信号強度検出信号SSIは、受信信号の信号強度を区分的な線形近似による擬似的な対数値で表した信号となる。
【0064】
このように、RSSI回路8によれば、受信信号の信号強度を対数値で表す受信信号強度検出信号SSIが得られるため、限られた電圧範囲内において信号強度の広範囲な変化を検出することが可能となる。
【0065】
ここで、RSSI回路8では、上述した如く、受信信号の信号強度を線形近似による擬似的な対数値で表すようにしている為、差動増幅器100
1〜100
M-1各々の利得A
Vにバラツキが生じていると、線形近似に歪みが生じて受信信号強度検出信号SSIの精度が低下する。特に、
図14に示す如き、複数の差動増幅器が直列に接続された構成では、各差動増幅器の利得A
Vのバラツキに伴う差動増幅信号(VP、VN)の誤差分が差動増幅器の直列段数分だけ累積されることになるので、差動増幅器100の利得バラツキに伴う受信信号強度検出信号SSIの精度低下が顕著に表れてしまう。尚、差動増幅器100の差動入力部を担うトランジスタ(11、12、21、22)、及び出力負荷を担うトランジスタ(13、14、23、24)の相互コンダクタンスには、製造上のバラツキ、或いは温度、電源電圧の変動の影響によりバラツキが生じている。
【0066】
しかしながら、
図1〜
図12に示す内部構成によれば、差動増幅器100の利得A
Vは、差動入力部を担うトランジスタの相互コンダクタンスと、出力負荷トランジスタの相互コンダクタンスとの比で決定する為、例え差動増幅器100
1〜100
M-1各々の相互コンダクタンスにバラツキが生じていても各差動増幅器100の利得A
Vは均一化される。
【0067】
従って、複数の増幅器を直列に接続してなるリミッタの増幅器として、本発明に係る差動増幅器100を採用すれば、製造上のバラツキ、或いは温度又は電源電圧の変動に拘わらずに、精度の高い受信信号強度検出を行うことが可能となる。