(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アクチエータは、前記第1のリップの外側面に取り付けられ、一端が前記リップ先端部に接触または結合し、他端が前記リップ基部に接触または結合している伸縮制御可能な伸縮アクチエータを有し、
前記制御部は、前記第1のリップのリップ先端部を前記第1の位置に変位させるときは前記伸縮アクチエータを短縮する方向に動作させ、前記第1のリップのリップ先端部を前記第2の位置に変位させるときは前記伸縮アクチエータを伸長する方向に動作させる、
請求項1に記載の塗布装置。
前記アクチエータは、前記第1のリップの内側面に形成される凹部に取り付けられ、一端が前記可撓性部材に接触または結合し、他端が凹部の壁に接触または結合している伸縮制御可能な伸縮アクチエータを有し、
前記制御部は、前記可撓性部材を前記第1の位置に変位させるときは前記伸縮アクチエータを短縮する方向に動作させ、前記可撓性部材を前記第2の位置に変位させるときは前記伸縮アクチエータを伸長する方向に動作させる、
請求項3に記載の塗布装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に、本発明の一実施形態における塗布装置の全体構成を示す。この塗布装置は、スキャン方式で基板上に薬液を塗布し、塗布膜のパターンを長方形および円形を含む多種多様な形状に制御できる塗布装置として構成されている。この塗布装置で使用される薬液は、特に限定されず、たとえば、レジスト、層間絶縁膜用の材料溶液、パッシベーション膜用の材料溶液、高粘度の樹脂系薬液、接着剤などである。この塗布装置で塗布処理を受けられる基板も、特に限定されず、たとえば半導体ウエハ、FPD用の各種基板、太陽電池パネル用の各種基板、フォトマスク、プリント基板などである。
【0015】
この塗布装置は、
図1に示すように、長尺型のスリットノズル10、このスリットノズル10に組み込まれているノズル吐出区間選択部12、薬液供給部14、走査機構16および制御部18を備えている。制御部18は、CPU、メモリおよび各種インタフェースを有しており、装置内の各部、特にノズル吐出区間選択部12、薬液供給部14および走査機構16の個々の動作および装置全体の動作(シーケンス)を制御する。
【0016】
スリットノズル10は、スリット状の吐出口10aを有し、この吐出口10aのノズル長手方向の全区間のうちノズル吐出区間選択部12により選択された区間で薬液を吐出するようになっている。薬液供給部14は、薬液供給管20を介してスリットノズル10に薬液を供給する。走査機構16は、スリットノズル10と半導体ウエハWとの間で塗布走査のための相対的な移動を行わせる。
【0017】
図2に、走査機構16の具体的な構成例を示す。この走査機構16は、半導体ウエハWを水平に載置して保持するステージ22と、塗布走査のためにスリットノズル10をステージ22の上方でノズル長手方向(Y方向)と直交する水平方向(X方向)に移動させるガントリー型の走査部24とを有している。ステージ22には、複数のリフトピンを昇降移動させて半導体ウエハWのローディング/アンローディングを行うリフトピン機構(図示せず)等も備わっている。
【0018】
走査部24は、スリットノズル10を水平に支持する門型の支持体26と、この支持体26をX方向で双方向に直進移動させる走査駆動部28とを有している。この走査駆動部28は、たとえばガイド付きのリニアモータ機構またはボールねじ機構で構成されてよい。支持体26とスリットノズル10とを接続するジョイント部30には、スリットノズル10の高さ位置を変更または調節するためのガイド付きの昇降機構(図示せず)が設けられている。スリットノズル10の高さ位置を調節することで、スリットノズル10の下端面または吐出口10aとステージ22上の半導体ウエハWの表面との間の距離間隔を任意に設定または調整することができる。
【0019】
図3Aおよび
図3Bに、薬液供給部14の具体的構成例を示す。
図3Aに示す構成の薬液供給部14は、薬液が入っている密閉容器32にN
2ガス供給源34よりN
2ガスを送り込み、N
2ガスの圧力により容器32から薬液供給管20を介してスリットノズル10のマニホールド(バッファ室)10b内に薬液を供給するようにしている。このN
2ガス加圧方式では、N
2ガス供給源34から密閉容器32に至るガス供給管36にレギュレータ38を設け、このレギュレータ38によりN
2ガスの圧力を一定に制御することにより、スリットノズル10のマニホールド10b内に供給する薬液の圧力を一定に制御する。
【0020】
スリットノズル10においては、スリット状の吐出口10aより吐出される薬液の流量に比してマニホールド10bの容量が格段に大きい。したがって、マニホールド10b内の圧力を一定に制御することにより、塗布走査中にスリットノズル10の薬液吐出区間がノズル長手方向において動的に変化しても、スリットノズル10の吐出圧力を一定に保ち、ひいては塗布膜の膜厚を均一に制御することができる。
【0021】
なお、ガス供給管36および薬液供給管20にそれぞれ設けられる開閉弁40,42は、制御部18の制御の下で、スリットノズル10に薬液を吐出させる時にオン状態となり、それ以外はオフ状態に保持される。
【0022】
図3Bに示す構成の薬液供給部14は、薬液容器44よりポンプ46で薬液を汲み出してスリットノズル10のマニホールド10bに供給する。このポンプ方式では、薬液供給管20内(好ましくはその終端部)の圧力あるいはスリットノズル10内の圧力を圧力センサ48により計測し、圧力センサ48の出力(圧力計測値)が設定値に維持されるようにポンプ制御部50によりポンプ46の吐出動作を制御する。このポンプ方式も、塗布走査中にスリットノズル10の薬液吐出区間がノズル長手方向において動的に変化しても、スリットノズル10の吐出圧力を一定に保ち、ひいては塗布膜の膜厚を均一に制御することができる。
【0023】
図4および
図5につき、スリットノズル10およびノズル吐出区間選択部12の構成を説明する。
図4は、スリットノズル10を逆さにして斜め上方から見た斜視図である。
図5は、
図4のA−A線の断面図である。
【0024】
図示のように、スリットノズル10は、材質(たとえばステンレス鋼)ならびに高さ寸法および長さ寸法が同じである長尺状の第1および第2リップ52,54を両端のサイドプレート55を介して突き合わせ、多数の締結ボルト56により両リップ52,54を一体的に結合している。両リップ52,54の間には、スリット状の吐出口10aと、吐出前の薬液をいったん蓄えるマニホールド10bと、このマニホールド10bから吐出口10aまでの薬液通路を与えるランド部10cとが形成されている。図示の構成例では、マニホールド10bのキャビティまたは溝部が第2リップ54側に形成され、薬液導入口10dおよび薬液導入通路10eも第2リップ54側に形成されている。薬液導入口10dには、薬液供給部14からの薬液供給管20(
図1〜
図3)が接続される。
【0025】
サイドプレート55は、スリットノズル10の両端を塞ぐとともに、両リップ52,54間の基準ギャップを規定する。このサイドプレート55に代えて一定の厚みを有する板状のシムを用いる構成、つまりシムを挟むようにして両リップ52,54を一体に結合する構成も可能である。
【0026】
ノズル吐出区間選択部12は、第1リップ52側に組み込まれている。第1リップ52の外側面(ランド部10cと反対側の面)には、吐出口10a寄りの下端部に、ノズル長手方向に延びる横溝58が形成されている。第1リップ52は、変位または変形上の物性に関して、横溝58より下の部分つまりリップ先端部52aと、横溝58より上の部分つまりリップ基部52bとに分割されている。そして、リップ先端部52aには、ノズル長手方向に一定のピッチつまり単位区間Mの間隔ですり割り(スリット状の切り欠き)60が形成されている。リップ先端部52aは、これらのすり割り60により、単位区間M毎に、外側(ランド部10cと反対側)の方向に延びるリンクまたはレバーを形成し、リップ基部52bに対して弾性的に変位つまりベンディングできるようになっている。
【0027】
より詳細には、第1リップ52は横溝58の内奥の突き当たりの部分が肉薄になっており、この肉薄部分52cを支点として単位区間M毎にリップ先端部52aがリップ基部52bに対して弾性的にベンディングできるようになっている。この実施形態では、単位区間M毎に、第1リップ52のリップ先端部52aが薬液の流路を塞ぐほどの変位量で第2リップ54のリップ先端部54a側にベンディングできるようになっている。
【0028】
ノズル吐出区間選択部12は、単位区間M毎に、第1リップ52のリップ先端部52aとリップ基部52bとの間に伸縮可能な突支棒として機能する伸縮アクチエータ62を設けている。より詳しくは、伸縮アクチエータ62は、その上端がリップ基部52bのざぐり穴53の中で固定され、その下端がリップ先端部52aに結合または固着している。伸縮アクチエータ62は、たとえば多数の圧電素子を重ねて棒状に形成した積層型のピエゾアクチエータからなり、制御部18より印加される駆動電圧の極性および/または電圧値に応じて軸方向に伸縮動作して、リップ先端部52aを押したり引いたりするようになっている。なお、伸縮アクチエータ62の下端がリップ先端部52aに当接または係止する構成も可能である。
【0029】
第1リップ52のリップ基部52bの外側面には、スリットノズル10に搭載されているすべての伸縮アクチエータ62に制御部18からの駆動信号を供給するための電気配線を収めているケーブルまたは配線基板64が取り付けられている。そして、この配線基板64より各々の伸縮アクチエータ62まで各対応する一対の被覆リード線66が延びている。
【0030】
図6Aおよび
図6Bの断面図につき、ノズル吐出区間選択部12の基本的な作用を説明する。制御部18は、ノズル吐出区間選択部12の各伸縮アクチエータ62を個別に駆動するピエゾ駆動回路を有しており、単位区間M毎に伸縮アクチエータ62の伸縮動作または突支長を独立に制御することができる。
【0031】
より詳細には、
図6Aに示すように、各単位区間Mにおいて、伸縮アクチエータ62の突支長を比較的短い第1の長さL
1に制御することにより、第1リップ52のリップ先端部52aを第2リップ54のリップ先端部54aから十分離して薬液の流路を塞がない吐出許容用の第1の位置に保持することができる。
【0032】
また、
図6Bに示すように、各単位区間Mにおいて、伸縮アクチエータ62の突支長を比較的長い第2の長さL
2に制御することにより、第1リップ52のリップ先端部52aを第2リップ54のリップ先端部54aに接触するか、または接触寸前まで近づけて薬液の流路を塞ぐ吐出禁止用の第2の位置に保持することができる。
【0033】
このように、スリットノズル10の単位区間M毎に、制御部18がノズル吐出区間選択部12の伸縮アクチエータ62の伸縮動作を制御することにより、リップ先端部52aを吐出許容用の第1の位置と吐出禁止用の第2の位置との間で独立に変位させることができる。スリットノズル10全体としてみれば、制御部18およびノズル吐出区間選択部12により、スリットノズル10のノズル長手方向の任意の1つまたは複数の区間で第1リップ52のリップ先端部52aを吐出許容用の第1の位置に保持して薬液を吐出させることが可能であり、任意の1つまたは複数の区間で第1リップ52のリップ先端部52aを吐出禁止用の第2の位置に保持して薬液を吐出させないようにすることも可能である。
【0034】
なお、第1リップ52のリップ先端部52aにおける吐出許容用の第1の位置は、吐出口10aのギャップサイズを規定し、ひいては塗布膜の膜厚を左右する。制御部18は、塗布処理時に基板W上で所望の膜厚が得られるように、伸縮アクチエータ62を第1の突支長L
1に調整することができる。
[実施形態における塗布装置の作用]
【0035】
次に、
図7Aおよび
図7Bの略平面図を参照して、この塗布装置の作用を説明する。
図7Aおよび
図7Bの(a)〜(f)は、塗布走査において半導体ウエハW上に薬液の塗布膜が形成される様子を段階的に示す。図中、スリットノズル10の吐出口10aにおいて"K"で示す区間は薬液を吐出している区間であり、それ以外の区間は薬液を吐出していない区間である。
【0036】
被処理基板である半導体ウエハWは、外部搬送装置たとえば搬送ロボット(図示せず)によってステージ22の真上に搬入される。ステージ22側のリフトピン機構は、搬入された半導体ウエハWをリフトピンで受け取った後、リフトピンを降ろして半導体ウエハWをステージ22の上面に載置(ローディング)する。 こうして半導体ウエハWのローディングが完了した後に、制御部18の制御の下で、ノズル吐出区間選択部12、薬液供給部14および操作機構16がそれぞれ所定のタイミングで所要の動作を開始する。
【0037】
より詳しくは、走査機構16は、スリットノズル10の吐出口10aとステージ22上の半導体ウエハWとの距離間隔(塗布ギャップ)が設定値になるように、昇降機構によりスリットノズル10の高さ位置を調節する。そして、走査部24の走査駆動部28を起動させて、走査方向(X方向)においてスリットノズル10をステージ22上で半導体ウエハWの傍らに設定されたスタート位置から半導体ウエハWの上方を横断するように一定速度で移動させる。なお、この実施形態のように半導体ウエハW(基板)を固定して、スリットノズル10を移動させる場合、通常は、スリットノズル10において第2リップ54が進行方向(X方向)の前になり第1リップ52が後になる。
【0038】
薬液供給部14は、開閉弁40,42(
図3A)あるいは開閉弁42およびポンプ46(
図3B)をオンにして、スリットノズル10のマニホールド10bへの薬液の供給を開始する。上述したように、マニホールド10b内の圧力が設定値に維持されるように薬液供給動作が行われる。
【0039】
ノズル吐出区間選択部12は、制御部18の制御の下で、走査機構16によるスリットノズル10の移動動作と連携または同期して、スリットノズル10の薬液吐出区間(吐出許容の単位区間Mが連続する範囲)Kを動的に変える。
【0040】
より詳しくは、制御部18は、塗布走査の開始直前は、スリットノズル10のすべての単位区間Mにおいて伸縮アクチエータ62の突支長を吐出禁止用の第2の長さL
2に制御して、スリットノズル10の薬液吐出区間Kを零にしておく。
【0041】
そして、スリットノズル10の吐出口10aが走査方向(X方向)において半導体ウエハWの一端の真上に差し掛かった時に、スリットノズル10の中心部の1個または数個の連続する単位区間Mにおいてのみ、伸縮アクチエータ62の突支長をそれまでの吐出禁止用の第2の長さL
2から吐出許容用の第1の長さL
1に切り換えて最初つまり最小の薬液吐出区間K
minとする。この時、スリットノズル10の中心部より糸状ないし細い帯状の薬液が吐出され、半導体ウエハW上ではスリットノズル10の直下の一端部に局所的に薬液の塗布膜RMが形成される(
図7Aの(a))。
【0042】
そして、走査方向(X方向)においてスリットノズル10が半導体ウエハWの一端から中心に向かって移動する塗布走査の前半では、スリットノズル10の中心から両端に向かって一定の周期で次々と各単位区間Mにおける伸縮アクチエータ62の突支長を吐出禁止用の第2の長さL
2から吐出許容用の第1の長さL
1に切り換えていく。これよって、スリットノズル10の薬液吐出区間Kがノズルの中心から両端に向かって次第に拡張し、半導体ウエハW上に形成される薬液の塗布膜RMは半導体ウエハWの一端からその輪郭に倣って円弧形状および面積を拡大させていく(
図7Aの(b))。そして、スリットノズル10が半導体ウエハWの中心の真上に来ると、そこでスリットノズル10の薬液吐出区間Kは最大値K
maxに達し、半導体ウエハW上に形成される薬液の塗布膜RMは半円形状になる(
図7Aの(c))。
【0043】
そして、走査方向(X方向)においてスリットノズル10が半導体ウエハWの中心を過ぎて塗布走査の後半に移行すると、制御部18はノズル吐出区間選択部12を塗布走査の前半と逆方向に動作させる。すなわち、塗布走査の後半では、スリットノズル10の両端から中心に向かって一定の周期で次々と各単位区間Mにおける伸縮アクチエータ62の突支長をそれまでの吐出許容用の第1の長さL
1から吐出禁止用の第2の長さL
2に切り換えていく。これよって、スリットノズル10の薬液吐出区間Kがノズルの両端から中心に向かって次第に縮小し、半導体ウエハW上に形成される薬液の塗布膜RMはウエハの中心からその輪郭に倣って円弧形状および面積を拡大させていく(
図7Bの(d))。そして、スリットノズル10が半導体ウエハWの他端の真上を通過する時にスリットノズル10の薬液吐出区間Kが最後または最小の値K
minになり(
図7Bの(e))、直後に薬液吐出区間Kは零になる(
図7Bの(f))。
【0044】
こうして、半導体ウエハW上にはそれより幾らか小さい口径(ウエハWの周縁部を余す口径)の円形パターンで一面に薬液の塗布膜RMが形成される。
図7Aおよび
図7Bに示すように、塗布走査の各位置でスリットノズル10は半導体ウエハWの輪郭に対応してウエハエッジの内側に薬液を吐出するので、塗布走査中に薬液を半導体ウエハWの周囲(ステージ22)にこぼさずにスキャン方式の塗布処理を遂行することもできる。
【0045】
上記のように、この実施形態においては、スリットノズル10の吐出口10a付近におけるスリットのギャップをノズル長手方向において単位区間M毎にオン・オフ(開閉)制御することにより、塗布走査中にスリットノズル10の薬液を吐出する区間を動的に制御して、半導体ウエハW上に円形のパターンで薬液の塗布膜RMを形成することができる。
[他の実施形態または変形例]
【0046】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種種の変形または変更あるいは別の実施形態が可能である。
【0047】
たとえば、上記実施形態の塗布装置は、上記のような円形の基板上に円形パターンの塗布膜を形成する用途に限らず、任意の基板上に矩形パターンの塗布膜を形成する用途にも使用可能である。たとえば、
図8に示すように、ノズル長手方向においてスリットノズル10に非吐出区間Jを挟んで複数の吐出区間Kを一定間隔で設定し、塗布走査ではスリットノズル10を一定の速度で水平に移動させながらそれら複数の吐出区間Kより薬液を連続的に吐出させることにより、たとえば矩形の基板G上に塗布走査方向と平行に延びるストライプ(縞模様)パターンの塗布膜RMを形成することができる。
【0048】
あるいは、
図9Aおよび
図9Bに示すように、スリットノズル10に基板Gの幅寸法に対応する長さの連続的な特定区間Fを設定し、塗布走査ではスリットノズル10を一定の走査速度で移動させながらその特定区間Fが吐出区間Kになる期間と非吐出区間Jになる期間とを一定の周期で交互に繰り返すことにより、矩形の基板G上に塗布走査方向と直交するストライプ(縞模様)パターンの塗布膜RMを形成することができる。
【0049】
また、ノズル吐出区間選択部12における伸縮アクチエータとして、上記実施形態のピエゾアクチエータ62の代わりに、
図10Aおよび
図10Bに示すように、熱膨張によって伸長する金属部材70とこれを加熱する発熱部たとえば電熱線72とを有する熱膨張方式のアクチエータを使用してもよい。図示の構成例では、熱膨張率の大きい金属たとえばアルミニウムからなる棒状の金属部材70にたとえばニクロム線からなる電熱線72を巻き付け、配線基板64およびリード線66を介して電熱線72に抵抗発熱用の電流を供給するようにしている。
【0050】
制御部18(
図1)は、電熱線72に電流を供給するためのヒータ駆動回路を有し、単位区間M毎に伸縮アクチエータ[70,72]の伸縮動作または突支長を独立に制御することができる。すなわち、電熱線72に電流を流さず、あるいは所定の小さな電流を流すことで、
図10Aに示すように、各単位区間Mにおいて、伸縮アクチエータ[70,72]の突支長を比較的短い第1の長さL
1に制御することにより、第1リップ52のリップ先端部52aを第2リップ54のリップ先端部54aから十分離して薬液の流路を塞がない吐出許容用の第1の位置に保持することができる。また、電熱線72に所定の大きな電流を流すことで、
図10Bに示すように、各単位区間Mにおいて、伸縮アクチエータ[70,72]の突支長を比較的長い第2の長さL
2に制御することにより、第1リップ52のリップ先端部52aを第2リップ54のリップ先端部54aに接触するか、または接触寸前に近づけて薬液の流路を塞ぐ吐出禁止用の第2の位置に保持することができる。
【0051】
このような熱膨張方式の伸縮アクチエータ[70,72]は応答速度が低いので、塗布走査中にスリットノズル10の薬液吐出区間Kを高速で動的に変えることは難しい。しかし、たとえば
図8のように塗布走査中にスリットノズル10の薬液吐出区間Kを固定するアプリケーションには適応できる。
【0052】
上記実施形態(
図6A,
図6B)および上記変形例(
図10A,
図10B)は、第1リップ52の外側面にノズル吐出区間選択部12を取り付けて、単位区間M毎に第1リップ52のリップ先端部52aを吐出許容用の第1の位置と吐出禁止用の第2の位置と間で変位可能に構成し、スリットノズル10の吐出口10a付近のスリットギャップをノズル長手方向の単位区間M毎に開閉制御するようにした。
【0053】
別の実施形態として、
図11Aおよび
図11Bに示すように、ノズル吐出区間選択部12をスリットノズル10の内部つまりランド部10c回りに取り付けて、ランド部10c内のスリットギャップをノズル長手方向の単位区間M毎に開閉制御するように構成することも可能である。
【0054】
この実施形態は、ランド部10cと対向する第1リップ52の内側面にノズル長手方向に延びる帯状の可撓性部材たとえば可撓性フッ素樹脂シート74を面一に取り付け、単位区間M毎に可撓性フッ素樹脂シート74の背後に伸縮アクチエータ62を設ける。ここで、伸縮アクチエータ62は、第1リップ52の内側面に形成されている空洞または凹部76の中に配置され、一端が凹部76の奥の突き当たりの壁に係止または結合し、他端が可撓性フッ素樹脂シート74の背面に係止または結合している。この実施形態においても、制御部18は、ノズル吐出区間選択部12の各伸縮アクチエータ62を個別に駆動するピエゾ駆動回路を有しており、単位区間M毎に伸縮アクチエータ62の伸縮動作を独立に制御する。
【0055】
すなわち、
図11Aに示すように、各単位区間Mにおいて、伸縮アクチエータ62を比較的短い第1の長さに制御することにより、可撓性フッ素樹脂シート74を第1リップ52の内側面と面一に保持して、第1リップ52の内側面を第2リップ54の内側面から十分離して薬液の流路を塞がない吐出許容用の第1の位置に保持することができる。また、
図11Bに示すように、各単位区間Mにおいて、伸縮アクチエータ62を比較的長い第2の長さに制御することにより、可撓性フッ素樹脂シート74を第1リップ52の内側面よりも前に(ランド部10c内に)突出させて、第1リップ52の内側面を第2リップ54の内側面に接触するか、または接触寸前まで近づけて薬液の流路を塞ぐ吐出禁止用の第2の位置に保持することができる。
【0056】
このように、この実施形態においては、スリットノズル10の単位区間M毎に、制御部18がノズル吐出区間選択部12の伸縮アクチエータ62の伸縮動作を制御することにより、第1リップ52の内側面に貼られた可撓性フッ素樹脂シート74を吐出許容用の第1の位置と吐出禁止用の第2の位置との間で独立に変位させることができる。スリットノズル10全体としてみれば、上記第1の実施形態と同様に、制御部18およびノズル吐出区間選択部12により、スリットノズル10の薬液吐出区間Kを任意かつ動的に制御することができる。
【0057】
なお、可撓性フッ素樹脂シート74を単位区間M毎に分割して第1リップ52の内側面に取り付ける構成も可能である。また、この実施形態においても、ピエゾ方式の伸縮アクチエータ62に代えて熱膨張方式の伸縮アクチエータ[70,72]を用いることができる。
【0058】
また、本発明の塗布装置および塗布方法は、上記のような円形や矩形の基板あるいは塗布領域に限らず、たとえば三角形や平行四辺形のような多角形または楕円形等の基板あるいは塗布領域にも適用可能である。その場合も、上記実施形態と同様に、基板上に形成される塗布膜が基板あるいは塗布領域の輪郭に倣って面積を拡大させていくように、走査移動の最中にスリットノズルの薬液吐出区間が動的に制御され、基板上に該輪郭のパターンで薬液の塗布膜が形成される。