【課題を解決するための手段】
【0024】
したがって、発泡剤含有ポリマー溶融物をダイプレートを通して押出し、1.5〜15barの範囲の圧力下である液体を含有するチャンバー中でペレット化して気孔を含む発泡性熱可塑性ポリマービーズの製造方法であって、
該溶融物が:
発泡剤含有ポリマー溶融物に対して0.1〜5質量%の、好ましくは0.3〜1.0質量%の核剤D)と、
1〜10質量%の、好ましくは2〜6質量%の、実質的にポリマービーズ中に残留することとなる発泡剤E)と、
気孔を形成する0.01〜5質量%の、好ましくは0.05〜1質量%の共発泡剤F)とを含む方法が提供が見出された。
【0025】
驚くべきことに、気孔形成用の揮発性で液体/ガス状の共発泡剤F)の使用により、発泡性ペレット中にセル構造を形成でき、その結果、続く発泡作業が改善され、セルサイズがコントロールされることが明らかとなった。
【0026】
適当な核剤D)は、無機または有機の核剤である。適当な無機核剤の例は、タルク、二酸化ケイ素、マイカ、粘土、ゼオライト、または炭酸カルシウムである。適当な有機核剤の例は、ルワックス(R)のようなポリエチレンワックスなどのワックスである。タルクを使用することが好ましい。
【0027】
用いる発泡剤(成分E)は、発泡剤含有ポリマー溶融物の成分A)〜F)の総量に対して、1〜10質量%、好ましくは3〜8質量%の量の物理発泡剤である。これらの発泡剤は、室温(20〜30℃)大気圧下でガス状であっても液体であってもよい。これらの沸点は、ポリマー混合物の軟化点より低い必要があり、通常−40〜80℃の範囲、好ましくは−10〜40℃の範囲である。適当な発泡剤の例は、ハロゲン含有またはハロゲン非含有発泡剤であり、例えば脂肪族のC
3〜C
8−炭化水素、アルコール、ケトン、またはエーテルである。適当な脂肪族発泡剤の例は、n−プロパンやn−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、ネオペンタンなどの脂肪族のC
3〜C
8−炭化水素、シクロブタンやシクロペンタンなどの脂環式炭化水素、塩化メチルや塩化エチル、塩化メチレン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンなどのハロゲン化炭化水素、これらの混合物である。以下のハロゲン非含有発泡剤(イソブタンとn−ブタン、イソペンタン、n−ペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン)、あるいはこれらの混合物が好ましい。
【0028】
この発泡剤が、好ましくはこの発泡剤に対して25〜100質量%の、特に好ましくは35〜95質量%のイソペンタンまたはシクロペンタンを含む場合に、保存後の発泡剤保持能力が改善され、最小の嵩密度が得られる。30〜98質量%の、特に35〜95質量%のイソペンタンと70〜2質量%の、特に65〜5質量%のn−ペンタンからなる混合物の使用が特に好ましい。
【0029】
使用する発泡剤E)は、脂肪族のC
3−C
7−炭化水素類またはこれらの混合物を含むことが好ましく、イソブタン、イソペンタン、n−ペンタンまたはこれらの混合物を含むことが特に好ましい。この発泡剤含有ポリマー溶融物が、水を0.5質量%未満の量で含むことが好ましい。
【0030】
上記の気孔構造を調整する方法は、前核生成と呼ぶこともでき、これらの気孔は、実質的に共発泡剤F)により形成される。
【0031】
この気孔を形成する共発泡剤F)は、実際の発泡剤E)とはポリマー中への溶解度で異なる。製造工程中では、発泡剤E)と共発泡剤F)は、最初、十分な高圧下でポリマー中に完全に溶解される。次いでこの圧力を低下させると、好ましくは短期間で低下させると、共発泡剤F)の溶解度が低下する。この結果、ポリマーマトリックス中で相分離が起こり、多核構造が形成される。実際の発泡剤E)は比較的高い溶解度及び/又は低い拡散速度をもつため、ほとんどがポリマー中に溶解して残留する。系の過度の核生成を防止するため、また実際の発泡剤E)の材料からの拡散を抑えるため、温度を低下させ、また同時に圧力を低下させること好ましい。これは、理想的なペレット化条件と併せて、共発泡剤F)を用いて行われる。
【0032】
25℃で大気圧、50%相対湿度で保管した場合、少なくとも80質量%の共発泡剤F)が、24時間以内に発泡性熱可塑性ビーズから遊離することが好ましい。発泡性熱可塑性ビーズ中の共発泡剤F)の溶解度は、0.1質量%であることが好ましい。
【0033】
実際の発泡剤E)と比較して高い拡散速度及び/又は高い浸透性及び/又は高い蒸気圧をもつ共発泡剤F)を使用することがより好ましい。共発泡剤F)が、これらの性質を複数もっていることが特に好ましい。この核生成プロセスをさらに円滑にするために、少量の従来の核剤を、例えばタルク等の無機粒子を添加することができる。
【0034】
いずれの場合も、前核生成プロセス中で用いる共発泡剤F)の添加量は、当該プロセス条件下での最大溶解度を越えている必要がある。したがって、ポリマー中で低いながら適当な溶解度をもつ共発泡剤F)を使用することが好ましい。これらの中には、特に窒素や二酸化炭素、空気、希ガスなどのガスが含まれ、多くのポリマー中での溶解度が低温また低圧力で低下する窒素が特に好ましい。しかしながら、他の液体添加物を使用することも可能である。
【0035】
窒素や二酸化炭素などの不活性ガスを使用することが特に好ましい。これら二つのガスは、適当な物性に加えて、低コストで入手が容易で取扱いが容易であり、非反応性または不活性な挙動を示す。例えば、これらの二つのガスの存在下では、ほとんどすべての場合で、ポリマーの劣化が起こらない。これらのガスは大気から得られるものであり、環境に悪影響を示さない。
【0036】
共発泡剤F)の使用量は、(i)ペレット化までの溶融含浸の間に与えられた溶融温度と与えられた溶融圧力で溶解させるのに十分に少量であり;(II)、ペレット化に用いられる水圧と温度でポリマーから脱離して核生成を可能とするのに十分に多量である必要がある。ある好ましい実施様態においては、用いる発泡剤の少なくとも一つが、室温大気圧下でガス状である。
【0037】
前核生成の後で短時間で発泡性ペレットから完全に離脱し、このため他の発泡プロセスに影響を与えない共発泡剤F)を使用することがさらに好ましい。窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、またはこれらの混合物を共発泡剤F)として使用することが特に好ましい。
【0038】
核剤D)としてのタルクを、共発泡剤F)としての窒素と共に使用することが特に好ましい。
【0039】
発泡性ペレットの輸送と保管に金属製のドラムや箱を使用できる。ドラムを使用する場合、ドラム内圧が増加する場合があることに注意が必要である。したがって好ましくは、使用する包装材は、ドラムからガスを透過させて圧力を放散させることのできる、箱やドラムなどの開放容器である。共発泡剤F)の拡散離散は可能であるが、実際の発泡剤E)の拡散離散を最小に抑えるあるいは防止するドラムが特に好ましい。例えば発泡剤また共発泡剤F)に適するようにシール材を選択ることで、これが可能となる。シール材中の共発泡剤F)への透過性が、シール材中の発泡剤E)への透過性より少なくとも20倍高いことが好ましい。
【0040】
前核生成により、例えば少量の窒素と二酸化炭素を添加しての前核生成により、発泡剤含有発泡性ペレット内にセル構造が形成される。ビーズ中心部での平均セルサイズは周辺部より大きく、密度はビーズの周辺部で大きくなることがある。このようにして、発泡剤の損失が可能な限り少なくされる。
【0041】
この前核生成により、セルサイズの分布が大幅に改善され、前発泡後のセルサイズが小さくなる。最小の嵩密度を得るのに必要な発泡剤の量も小さくなり、この材料の貯蔵安定性も改善する。溶融物に少量の窒素または二酸化炭素を加えると、一定の発泡剤含量では前発泡時間が大幅に短縮するか、一定の発泡時間と最小の発泡体密度では発泡剤量が大幅に低下する。この前核生成はまた、生成物の均一性とプロセスの安定性を向上させる。
【0042】
本発明のポリマーペレットの発泡剤での再含浸は、同組成で、よりコンパクトな、即ち非セル状構造を有するペレットを使用する場合より高速で実施できる。第一に拡散時間が短くなり、また第二に、直接含浸系と同様に、より少量の発泡剤が発泡に必要となる。
【0043】
最終的に、この前核生成により、一定の密度を達成するのに必要な発泡剤含量を低下させることができ、また成型物またはスラブの製造時の成型物取出時間を短縮することができる。この結果、加工コストがさらに低下し、製品品質が向上する。
【0044】
この前核生成プロセスは、一般的には全ての発泡性ビーズに用いることができる。機械的性質に厳しい要件を持つ材料に使用することが好ましく、また通常用いられる核剤の効果が小さい系に使用することが好ましい。例えば、軟質発泡体の場合では、窒素または二酸化炭素の添加で微細セル構造を大幅に改善することができる。
【0045】
この前核生成の原理は、発泡性ビーズ製造のための懸濁技術だけでなく、溶融含浸技術にも利用できる。発泡剤を吸収した溶融物を吐出後に高圧水中ペレット化でペレット化される溶融押出プロセス中で、共発泡剤F)を添加し使用することが好ましい。上述のように、ペレットの微細構造は、ペレット化パラメーターと共発泡剤F)を選択することによりコントロールできる。
【0046】
発泡剤E)と共発泡剤F)のポリマー溶融物への混合は、エクストルーダーやスタチックミキサーなどのダイナミックミキサーで実施可能である。
【0047】
比較的に多量の共発泡剤F)を使用する場合、例えばこの発泡剤含有ポリマー溶融物に対して1〜10質量%の範囲の共発泡剤F)を使用する場合、溶融温度を低下させることが可能で、または溶融粘度を低下させることが可能であり、この結果、大幅に収率が増加する。したがって、熱的に分解しやすい添加物(例えば、難燃剤)を、過酷でない条件下でポリマー溶融物に投入することができる。共発泡剤は実質的に溶融押出プロセス中で消失するため、発泡性熱可塑性ビーズの組成に変化が起こることはない。上記効果を利用するためには、CO
2の使用が好ましい。N
2を用いると、粘度への影響が小さくなる。したがって、窒素は主に所望のセル構造に調整するのに用いられる。
【0048】
発泡性熱可塑性ポリマービーズのペレット化に用いる液体含有チャンバーは、20〜80℃の範囲の温度で運転することが好ましく、30〜60℃の範囲の温度で運転することが特に好ましい。
【0049】
使用可能な熱可塑性ポリマーの例には、スチレンポリマーやポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)などのポリオレフィン、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのポリアクリレート、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、またはポリエーテルスルフイド(PES)、またはこれらの混合物があげられる。
【0050】
スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、スチレン−α−メチルスチレンコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、スチレン−アクリロニトリル(SAN)、アクリロニトリル−スチレン−アクリレート(ASA)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(MABS)ポリマー、衝撃性の改善されたポリスチレン(HIPS)またはフリーラジカル重合による無色透明ポリスチレン(GPPS)、またはアニオン重合ポリスチレン(APS)またはアニオン重合耐衝撃性ポリスチレン(AIPS)などのスチレンコポリマーが好ましい。
【0051】
成形発泡体の望ましい性質に合わせて、このポリマーペレットの組成を選択することができる。スチレンコポリマー成分としてのスチレン−ブタジエンブロックコポリマーは、特に成型発泡体の伸縮性と弾力性の改善に適している。耐油性また耐溶剤性、特に芳香族溶媒に対する耐溶剤性と、耐熱性は、アクリロニトリル含有スチレンコポリマー、例えばSANやABSを使用することで改善できる。
【0052】
本発明の方法では、発泡剤含有ポリマー溶融物であって、さらに、発泡剤含有ポリマー溶融物に対して
A)45〜97.79質量%のスチレンポリマーと、
B1)1〜45質量%の、融点が105〜140℃の範囲にあるポリオレフィンと、
B2)0〜25質量%の、融点が105℃未満であるポリオレフィンと、
C1)0.1〜25質量%のスチレン−ブタジエンブロックコポリマーまたはスチレン−イソプレンブロックコポリマーと、
C2)0〜10質量%のスチレン−エチレン−ブチレンブロックコポリマーと、
D)0.1〜5質量%の核剤と、
E)1〜10質量%の発泡剤(実質的にポリマービーズ中に残留する)と、
F)0.01〜5質量%の気孔形成用の共発泡剤
を含むポリマー溶融物を使用することが好ましい。
【0053】
成分A
本ポリマービーズは、45〜97.8質量%の、特に好ましくは55〜78.1質量%のスチレンポリマーA)を含み、具体的には標準ポリスチレン(GPPS)、または耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、またはスチレン−アクリロニトリルコポリマー(SAN)、またはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)、またはこれらの混合物を含む。発泡体ビーズP1の製造に用いられる発泡性熱可塑性ポリマービーズは、スチレンポリマーA)として、標準ポリスチレン(GPPS)を含むことが好ましい。特に好ましくは、ゲル浸透クロマトグラフィーで求めた重量平均モル質量が120000〜300000g/molの範囲、特に190000〜280000g/molの範囲であり、ISO113によるメルトボリュームレートMVR(200℃/5kg)が1〜10cm
3/10分の範囲にある標準ポリスチレングレードであり、例えば、BASF社のPS158Kや168N、または148Gである。成型物を得るための処理中の発泡体ビーズの融解を改善するために、エンペラ(R)156L(イノビーン社)などの自由流動グレードを加えることもできる。
【0054】
成分B
本熱可塑性ポリマービーズは、成分B)として、融点が105〜140℃の範囲であるポリオレフィンB1)と融点が105℃未満であるポリオレフィンB2)を含む。この融点は、DSC(動的走査熱分析)により加熱速度が10℃/分で測定した融解ピークである。
【0055】
この熱可塑性ポリマービーズは、1〜45質量%の、好ましくは4〜35質量%、特に好ましくは7〜15質量%のポリオレフィンB1)を含む。用いるポリオレフィンB1)は、好ましくは密度(ASTM−D792による)が0.91〜0.98g/lの範囲であるエチレン及び/又はプロピレンの、ホモポリマーまたはコポリマーを含み、特にポリエチレンを含む。使用可能なポリプロピレンは特に射出成型グレードのものである。使用可能なポリエチレンは、市販のエチレンホモポリマー(例えば、LDPE(射出成型グレード)、LLDPE、HDPE)、またはエチレンとプロピレンのコポリマー(例えば、バセル社のモプレン(R)RP220とモプレン(R)RP320、またはダウ社のバーシファイ(R)グレード)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、エチレンアクリレート(EA)またはエチレン−ブチレンアクリレート(EBA)である。このポリエチレンのメルトボリュームインデックスMVI(190℃/2.16kg)は、通常0.5〜40g/10分の範囲であり、密度は0.91〜0.95g/cm
3の範囲である。ポリイソフテン(PIB)(例えば、BASF社のオパノール(R)B150)とのブレンドを使用することもできる。融点が110〜125℃の範囲で、密度が0.92〜0.94g/lの範囲であるLLDPEを使用することが特に好ましい。
【0056】
他の適当な成分B1)は、例えばWO2006/099631に記載の、ポリオレフィンブロックPB1(硬いブロック)とポリオレフィンブロックPB2(軟らかいブロック)からなるオレフィンブロックコポリマーである。ポリオレフィンブロックPB1は、95〜100質量%のエチレンからなることが好ましい。PB2ブロックは、エチレンとα−オレフィンからなることが好ましい。なお、α−オレフィンとしては、スチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、ノルボルネン、1−デセン、1,5−ヘキサジエン、またはこれらの混合物が使用できる。PB2ブロックとして、5〜60質量%のα−オレフィンを含むエチレン−α−オレフィンコポリマーブロック、特にエチレン−オクテンコポリマーブロックを使用することが好ましい。式(PB1−PB2)n(式中、nは1〜100の整数である)で示される多ブロックコポリマーが好ましい。ブロックPB1とPB2は、実質的には線状の分子鎖を形成し、好ましくは交互のあるいはランダムな分布をもつ。PB2ブロックの比率は、このオレフィンブロックコポリマーに対して40〜60質量%であることが好ましい。硬いPB1ブロックと軟らかい弾性のあるPB2ブロックが交互につながったオレフィンブロックコポリマーが特に好ましいなお、これらは、インヒューズ(R)という商標で購入可能である。
【0057】
ポリオレフィンB1)の比率が比較的小さくなると発泡剤保持能力が大幅に増加する。これにより、この発泡性熱可塑性ポリマービーズの貯蔵安定性と加工性が大幅に増加する。ポリオレフィンが4〜20質量%の範囲にある場合に、それから製造される成型発泡体の弾性をなんら低下させること無く優れた貯蔵性をもつ発泡性熱可塑性ポリマービーズを得ることができる。これは、例えば比較的低い、25〜35%の範囲の圧縮永久ひずみ(ε)から明らかである。
【0058】
この発泡性熱可塑性ポリマービーズは、ポリオレフィンB2)として、0〜25質量%の、好ましくは1〜15質量%、特に好ましくは5〜10質量%の融点が105℃未満のポリオレフィンB2)を含む。このポリオレフィンB2)の密度は、0.86〜0.90g/l(ASTM−D792により測定)の範囲であることが好ましい。オレフィン(TPO)系熱可塑性エラストマーが、この目的に特に好適である。エチレン−オクテンコポリマーが、例えば、ダウ社からエンゲージ(R)8411という商標で購入可能なものが特に好ましい。発泡体成型物への加工後、成分B2)を含む発泡性熱可塑性ポリマービーズは、大きく改善された曲げエネルギーと極限引張強さを示す。
【0059】
成分C
多相ポリマー系の分野では、ほとんどのポリマーに相互混和性が無いか、あっても非常に少なく(Flory)、このためそれぞれの層への分離が温度や圧力、化学組成の関数として起こることが知られている。不相溶性のポリマーを相互に共有結合すると、この相分離が巨視的には起こらず、微視的にのみ起こり、例えば単一ポリマー鎖の長さのスケールで起こる。したがってこの場合には、微細相分離という言葉が使用される。極めていろいろな構造が、例えば板状や六方晶型、立方晶型、二連続的な形態が存在し、これらの構造は、親液性相と強い関係を持っている。
【0060】
所望の形態へ制御された調整を行うために相溶化剤(成分C)が用いられる。本発明では、成分C1)としてスチレン−ブタジエンブロックコポリマーまたはスチレン−イソプレンブロックコポリマーの混合物を使用し、成分C2)としてのスチレン−エチレン−ブチレンブロックコポリマー(SEBS)を使用して相溶性を改善させている。
【0061】
これらの相溶化剤により、ポリオレフィンの多い相とスチレンポリマーの多い相の間の接着が改善され、小量であっても、従来のEPS発泡体と較べると発泡体の伸縮性を向上させる。ポリオレフィンの多い相のドメインの大きさの測定から、この相溶化剤が表面張力を低下させて小さな液滴を安定化させていることが分った。
【0062】
本発泡性熱可塑性ポリマービーズは、特に好ましくは、発泡剤を含み、少なくとも一種の連続相とこの連続相中に分散した少なくとも二種の分散相P1とP2を有し、
a)該連続相が実質的に成分Aからなり、
b)第一の分散相P1が実質的に成分B1とB2とからなり、
c)第二の分散相P2が実質的に成分C1からなる多相ポリマー混合物である。
【0063】
成分C2)は、好ましくは分散相P1と連続相の間の相境界を形成する。
【0064】
上記の追加の分散相により、柔軟相含量が比較的高くても、分散相のドメインの大きさを<2μmとすることができる。この結果、同じ発泡性では、成型発泡体に比較的高い曲げエネルギーをもたらすことができる。
【0065】
発泡性熱可塑性ポリマービーズ中の成分C1)とC2)の総量は、好ましくは3.5〜30質量%の範囲であり、特に好ましくは6.8〜18質量%の範囲である。
【0066】
発泡性熱可塑性ポリマービーズ中の成分B1)とB2)の総量と成分C2)の質量比は、好ましくは5〜70の範囲である。
発泡性熱可塑性ポリマービーズ中の成分C1)と成分C2)の質量比は、好ましくは2〜5の範囲である。
【0067】
この発泡性熱可塑性ポリマービーズは、成分C1)として、0.1〜25質量%の、好ましくは1〜15質量%で、特に6〜9.9質量%のスチレン−ブタジエンブロックコポリマーまたはスチレン−イソプレンブロックコポリマーを含む。
【0068】
この目的のために適当な材料は、例えば、スチレン−ブタジエンブロックコポリマーまたはスチレン−イソプレンブロックコポリマーである。総ジエン含量は、好ましくは20〜60質量%の範囲、特に好ましくは30〜50質量%の範囲であり、したがって総スチレン含量は、好ましくは40〜80質量%の範囲であり、特に好ましくは50〜70質量%の範囲である。
【0069】
ブタジエン含量が20〜60質量%、好ましくは30〜50質量%であるスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)三ブロックコポリマーであって、ある程度水素化されたものあるいは水素化されていないものを、相溶化剤として使用することが好ましい。これらは、例えばスチロフレックス(R)2G66、スチロラックス(R)3G55、スチロクリア(R)GH62、クラトン(R)D1101、クラトン(R)D1155、タフテック(R)H1043、またはユーロプレン(R)ゾルT6414などの商標で購入可能である。これらには、SBSブロックコポリマーで、BブロックとSブロックの間の急激な変化があるものが含まれる。
【0070】
本発泡性熱可塑性ポリマービーズは、成分C2)として、0.1〜10質量%の、好ましくは1〜9.9質量%、特に0.8〜5質量%のスチレン−エチレン−ブチレンブロックコポリマー(SEBS)を含む。適当なスチレン−エチレン−ブチレンブロックコポリマー(SEBS)は、例えばブロックコポリマーC1)のオレフィン系二重結合を水素化して得られるものである。適当なスチレン−エチレン−ブチレンブロックコポリマーは、例えば市販のクラトン(R)Gグレード、特にクラトン(R)G1650である。
【0071】
本発明の方法は、平均径が0.1〜50μmの範囲、好ましくは1〜30μmの範囲にある気孔をもつ発泡性熱可塑性ポリマービーズ材料を与えることができる。
【0072】
この発泡性熱可塑性ポリマービーズ材料が、0.2〜2.5mmの範囲の平均径をもち、1mm
2の断面積当り50〜300個の気孔をもつ、好ましくは70〜150気孔s/mm
2の気孔をもつことが好ましい。気孔数は、例えば光学顕微鏡下で薄層のポリマービーズ材料中の気孔を数えることで決定できる。
【0073】
この材料の嵩密度は、好ましくは500〜590kg/m
3の範囲であり、好ましくは520〜580kg/m
3の範囲である。
【0074】
この発泡性ペレットの多核構造のため、発泡性が向上し、セルサイズの制御された調整が可能となり、このため発泡体の加工特性と性質が大きく改善される。
【0075】
加工性を改善するために、最後の発泡性熱可塑性ポリマービーズを、グリセロールエステル、静電防止剤または固化防止剤で覆うことができる。
【0076】
得られる球状または卵状のビーズは、好ましくは0.2〜10mmの範囲の径にまで発泡させられる。これらの嵩密度は10〜100g/lの範囲であることが好ましい。
【0077】
この発泡性熱可塑性ポリマービーズにグリセロールステアレートを塗布すると、この前発泡された発泡体ビーズの融解成型性と得られる成型物の機械的性質が特に改善される。
【0078】
50〜100質量%のグリセロールトリステアレート(GTS)と0〜50質量%のグリセロールモノステアレート(GMS)と0〜20質量%のシリカからなる塗膜を使用することが特に好ましい。
【0079】
この発泡性熱可塑性ポリマービーズは、熱風または水蒸気により前発泡して密度が範囲8〜200kg/m
3の範囲にある、好ましくは10〜80kg/m
3の範囲、特に10〜50kg/m
3の範囲にある発泡体ビーズとし、次いで閉鎖金型中で溶融して発泡体成型物とすることができる。通常0.5〜1.5barの範囲のゲージ圧が、特に0.7〜1.0barの範囲のゲージ圧が用いられる。
【0080】
この概念を用いることで、標準EPSと較べて同等な密度を達成するのに必要な発泡剤の量を大幅に低下させることができ、このため温室効果を引き起こす発泡剤の使用量を減らすことができる。これにより、同じ発泡剤含量で最小の嵩密度が達成できる。また、例えば貯蔵または輸送中に発泡剤が損失したとしても、多核ペレットを発泡剤で再含浸させることはかなり容易である。この前核生成プロセスでは、大気から得られる窒素または他の不活性ガスを使用できるため、熱可塑性成型用発泡体の膨張性能の改善とセル構造の調整の改善のためのこの概念は、環境を保護すると共に省資源である。
【0081】
用いる気孔形成用の共発泡剤F)は、その量が比較的多い場合、一般的には大きな可塑化作用をもつ。したがって、共発泡剤F)の粘度低下効果により、ある調合物に対して他の条件が同じとして、同じ温度プロフィルなら収量の増加が起こり、あるいは同じ収量なら低い溶融温度が可能となる。この材料は同じ溶融粘度を持つため加圧装置(例えば、ペレット化ダイやミキサー)中の圧力損失は同じままである。したがって、例えば、材料に加わる熱的ストレスが減少するため、感熱材料を、例えば難燃剤を投入できるようになる。他の例では、同じ工場設備/装置圧力で得られる収率が増加するため、より経済的な発泡性ビーズの生産が可能となる。
【0082】
もう一つの側面は、溶融粘度を変えることなく、また工場の収量またはプロセスの運転を変更する必要なく、実際の発泡剤の量を低下させることができることである。可塑化共発泡剤F)としては二酸化炭素が好ましい。これはポリマー中で比較的に高い溶解度をもつためである。
【0083】
本発明の方法で得られる発泡性熱可塑性ポリマービーズを加工して、比較的にセル数の高い発泡体、即ち微細なセル構造をもつ発泡体を得ることができる。その均一な発泡体構造は、発泡体の機械的性質と断熱性能を向上させる。
【0084】
もう一つの効果は、発泡体加工のためのエネルギーコストの削減である。この高速前発泡プロセスにより高収率が可能となる。この前核生成プロセスでは発泡剤含量が低いため、成型物の取出時間が大幅に短縮され、完全発泡プロセスのサイクル時間を短縮することができる。
【0085】
実施例
出発原料:
成分A:
溶融粘度指数MVI(200℃/5kg)が2.9cm
3/10分のポリスチレン
(BASF社製PS158K、Mw=280000g/mol、固有粘度IV=98ml/g)
【0086】
成分B:
B1:LLDPEポリエチレン(LL1201XV、エクソンモービル、密度=0.925g/l、MVI=0.7g/10分、融点=123℃)
B2:エチレン−オクテンコポリマーポリエチレン(ダウ社製エンゲージ(R)8402、密度=0.880g/l、MVI=18g/10分、融点=72℃)
【0087】
成分C:
C1.1:スチロラックス(R)3G55、BASF社製スチレン−ブタジエンブロックコポリマー
C1.2:スチロフレックス(R)2G66、BASF社製熱可塑性弾性スチレン−ブタジエンブロックコポリマー(STPE)
C2:クラトンG1651、クラトンポリマーズ社製スチレン−エチレン−ブチレンブロックコポリマー
【0088】
成分D:
D 核剤:タルク
【0089】
成分E:
E 95質量%のイソペンタンと5質量%のn−ペンタンからなる発泡剤混合物
【0090】
成分F:
F 窒素共発泡剤(実施例E1〜E17)、二酸化炭素共発泡剤(実施例E19〜E36)
【0091】
発泡性ペレットE1〜E11の製造
静的混合装置を用いる溶融含浸プロセスにより発泡性ペレットを製造した。このために、ポリマーを先ずエクストルーダー中で可塑化させ、溶融物ポンプで一連のスタチックミキサーと熱交換器に輸送した。第一のスタチックミキサーの入口で、工業グレードのイソペンタン(95%のイソペンタン/5%のn−ペンタン)と共発泡剤F)とを添加して、この溶融物に含浸させた。相当する調合物を、表1に示す。次いで、熱交換器により溶融物温度を下げ、もう一台のスタチックミキサーにより溶融物温度を均一にさせた。もう一台の溶融物ポンプにより圧力をかけ、加圧水中ペレット化(水圧=12bar、水温=50℃)によりペレット化ダイ(49個の0.60mmの穴)を通して材料をペレット化させた。平均ビーズ径は約1.25mmであった。総生産速度は、70kg/hであった。
ダイ出口の溶融物温度は約203℃であった。
【0092】
【表1】
【0093】
発泡性ペレットの分析
透過型電子顕微鏡写真(TEM)は、発泡剤含有ペレットの、球状セルの形の(暗い領域、
図1)セル構造を示す。これらの構造は、次いで発泡体中で高い膨張性能と微細なセル構造に寄与する。吸収された発泡剤を含有するペレットのセルサイズの程度は50μm未満であり、1μmまでのセルサイズが、記録された画像中に認められる。
【0094】
発泡性ペレットの加工と特性評価
用いた塗布成分は、70質量%のグリセロールトリステアレート(GTS)と30質量%のグリセロールモノステアレート(GMS)である。
【0095】
この発泡剤を含むペレットを、EPS前発泡装置中で前発泡させて低密度(15〜25g/l)の発泡体ビーズとし、ゲージ圧が0.7〜1.1barの自動EPS成型機で成型して成型物とする。
【0096】
これらの成型物を、いろいろな機械的試験にかけた。本発明の実施例では、純粋なEPSと比較して、顕著な可塑化が観測され、また非常に高い弾性が観測される。圧縮強度は、DIN−EN826により10%圧縮で測定し、曲げ強さはDIN−EN12089により測定した。曲げエネルギーは、曲げ強さで測定された数値から求めた。
【0097】
表2に、前発泡時間や成型物の取出時間などの加工パラメーターを示す。これから、窒素の添加により前発泡時間と成型物取出時間が減少することが明らかである。また、セルサイズを大幅に減少させることができた。また、参考例と比較して発泡剤量を大幅に低下させることができた。
【0098】
【表2】
【0099】
発泡性ペレットE12〜E17の製造
溶融含浸法で発泡性ペレットを製造した。このために、ポリスチレン158K(成分A)を先ずエクストルーダー中で可塑化させた。このエクストルーダー中で、溶融物に工業グレードのイソペンタン(95%のイソペンタン/5%のn−ペンタン)と共発泡剤F)とを投入し、均一化させた。相当する調合物を、表3に示す。エクストルーダーの頭頂部にある溶融物ポンプにより圧力をかけて、加圧の水中ペレット化(水圧=12bar、水温=47℃)によりペレット化ダイ(2個の0.65mmの穴)を通して材料をペレット化させた。平均のビーズ径は約1.25mmであった。総製造速度は、4.5kg/hであった。ダイ出口の溶融物温度は約210℃であった。
【0100】
【表3】
【0101】
図1と
図2に、ペレットビーズ内に均一に分布した気孔を有する実施例13からの発泡性ペレットの断面をいろいろな倍率で示す透過電子顕微鏡写真を示す。
【0102】
発泡性ペレットの製造
静的混合装置を用いる溶融含浸法で発泡性ペレットを製造した。このために、これらのポリマーを先ずエクストルーダー中で可塑化させ、溶融物ポンプで一連のスタチックミキサーと熱交換器に輸送した。第一のスタチックミキサーの入口で、工業グレードのイソペンタン(95%のイソペンタン/5%のn−ペンタン)と共発泡剤F)とを添加し、この溶融物に含浸させた。相当する調合物を、表に示す。次いで、熱交換器により溶融物温度を下げ、もう一台のスタチックミキサーにより溶融物温度を均一化させた。もう一台の溶融物ポンプにより圧力をかけて、加圧の水中ペレット化(水圧=12bar、水温=47℃)によりペレット化ダイ(2個の0.65mmの穴)を通して材料をペレット化させた。平均ビーズ径は約1.25mmであった。総生産nん速度は4.5kg/hであった。
ダイ出口の溶融体温度は約207℃であった。
【0103】
発泡性ペレットの製造、実施例19〜36
スタチック混合装置を用いる溶融含浸法で発泡性ペレットを製造した。表4に、これらの材料の組成の概略を示す。ポリマーとタルク(成分A〜D)の量比は実施例12と1と同じであるが、発泡剤E)と共発泡剤F)の量を変化させた。このために、これらのポリマーを先ずエクストルーダー中で可塑化させ、溶融物ポンプで一連のスタチックミキサーと熱交換器に輸送した。第一のスタチックミキサーの入口で、工業グレードのイソペンタン(95%のイソペンタン/5%のn−ペンタン)と共発泡剤F)とを添加して、この溶融物に含浸させた。この方法は実施例12と実施例9に同じであるが、熱的ストレスを低下するために、成分F)として窒素に代えてCO
2を使用した。相当する調合物を表に示す。次いで、熱交換器により溶融物温度を下げ、もう一台のスタチックミキサーにより溶融物温度を均一化させた。もう一台の溶融物ポンプにより圧力をかけて、加圧の水中ペレット化(水圧:表を参照、水温=47℃)によりペレット化ダイ(2個の0.65mmの穴)を通して材料をペレット化させた。平均ビーズ径は約1.25mmであった。総生産速度は4.5kg/hであった。
【0104】
達成可能な可塑化作用、スループットの増加、またそれぞれ溶融温度の低下を示すため、いずれの場合もスタチックミキサー中での圧力損失を溶融粘度の尺度として用いた。用いたスタチックミキサーの直径は25mmであり、そのL/D比は15であった。ここでの圧力損失と層流領域での粘度の関係は次の通りである。
【0105】
【化1】
【0106】
式中、ReとNe、η(bar)、w(bar)、L、Dは、それぞれレイノルズ数、Ne数、平均剪断粘度、平均流量、スタチックミキサーの長さ、スタチックミキサーの直径である。CSE−X/8スタチックミキサーでは、NeとReの積が一定であり、1200である。平均流量は次式で表される。
【0107】
【化2】
【0108】
式中、V(dot)とm(dot)、ρ、Aはそれぞれ、体積生産速度、質量生産速度、溶融物密度、ミキサーの断面積である。平均剪断速度γでのポリマー溶融物の平均剪断粘度η(bar)は、次のように計算される:
【0109】
【化3】
【0110】
これらの原理を基に、溶融物の剪断粘度をいろいろな温度とスループットで測定した(表4)。実施例19〜36は、いずれの場合も、粘度と圧力損失(スタチックミキサー/添加物ミキサーでの)に与えるCO
2の効果を示す。ミキサーに最大許容圧力損失があり、また全システムに許容圧力があるため、ここでの圧力損失は技術的制約を含む変数である。CO
2を使用することで、ペンタンのみを含む系と比較すると、熱的ストレスを低下させることができ(24/25、33/34)、あるいは同じ圧力損失で生産速度を増加させる(26/27、35/36)ことができる。ここではCO
2の使用で発泡性能に悪影響は無い。
【0111】
【表4】