(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1測定流量値又は前記流体測定機構で測定される第2測定流量値又は測定圧力値に基づいて、前記流路を流れる流体の状態が安定状態であるかどうかを判定する安定状態判定部を更に備え、
第1測定流量診断部が、前記安定状態判定部が流体の状態が安定状態であると判定している場合に、前記第1測定流量値の異常を診断するように構成された請求項1又は2記載の流量制御装置。
前記バルブ診断部が、前記流量制御バルブが正常の場合において、現在測定されている前記第1測定流量値及び前記供給圧力値と同等の条件で前記バルブ制御が前記流量制御バルブに入力していた開度制御パラメータである基準開度制御パラメータと、前記バルブ制御部が前記流量制御バルブに現在入力している開度制御パラメータと、を比較して前記流量制御バルブの異常を診断するように構成された請求項1記載の流量制御装置。
流路を流れる流体の流量を測定する第1流量測定機構と、前記流路上に設けられた流量制御バルブと、前記第1流量測定機構で測定される第1測定流量値と、目標流量値との偏差が小さくなるように、前記流量制御バルブに開度制御パラメータを入力して前記流量制御バルブの開度を制御するバルブ制御部と、を備えた流量制御装置に用いられる診断装置であって、
前記流路を流れる流体の流量又は圧力を測定する流体測定機構と、
前記流体測定機構で測定される第2測定流量値又は測定圧力値に基づいて前記第1測定流量値の異常を診断する第1測定流量診断部と、
前記第1測定流量診断部が、前記第1測定流量値に異常が無いと診断している場合に、前記第1測定流量値、前記第2測定流量値、前記測定圧力値の少なくとも1つと、前記バルブ制御部が前記流量制御バルブに入力している開度制御パラメータと、前記流量制御バルブよりも上流側で測定される圧力である供給圧力値と、基づいて前記流量制御バルブの異常を診断するバルブ診断部と、を備え、
前記バルブ診断部が、前記第1測定流量診断部が前記第1測定流量値に異常があると診断している場合には前記流量制御バルブの診断を行わないように構成されていることを特徴とする診断装置。
流路を流れる流体の流量を測定する第1流量測定機構と、前記流路上に設けられた流量制御バルブと、前記第1流量測定機構で測定される第1測定流量値と、目標流量値との偏差が小さくなるように、前記流量制御バルブに開度制御パラメータを入力して前記流量制御バルブの開度を制御するバルブ制御部と、前記流路を流れる流体の流量又は圧力を測定する流体測定機構と、を備えた流量制御装置に用いられる診断用プログラムであって、
前記流体測定機構で測定される第2測定流量値又は測定圧力値に基づいて前記第1測定流量値の異常を診断する第1測定流量診断部と、
前記第1測定流量診断部が、前記第1測定流量値に異常が無いと診断している場合に、前記第1測定流量値、前記第2測定流量値、前記測定圧力値の少なくとも1つと、前記バルブ制御部が前記流量制御バルブに入力している開度制御パラメータと、前記流量制御バルブよりも上流側で測定される圧力である供給圧力値と、基づいて前記流量制御バルブの異常を診断するバルブ診断部と、を備え、
前記バルブ診断部が、前記第1測定流量診断部が前記第1測定流量値に異常があると診断している場合には前記流量制御バルブの診断を行わないように構成されていることを特徴とする診断用プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0025】
第1実施形態の流量制御装置は、半導体製造等においてCVD装置等のチャンバ内に成膜に必要な原料を含むプロセスガスを所定の供給流量で供給するために用いられるマスフローコントローラ100である。このマスフローコントローラ100は、
図1の模式図に示すように、概略直方体形状したブロック体Bの内部に貫通路を形成することで、流路MLを形成してあるものであり、前記ブロック体Bの上面に流体制御のための機器及び前記診断装置200を構成するための各種機器を取り付けることで、パッケージ化してある。
【0026】
より具体的には、前記マスフローコントローラ100は、前記ブロック体Bの内部に形成された流路MLに、上流から順番に熱式流量センサ1、流量制御バルブ2、圧力式流量センサ3を設けてあるものであり、さらに各機器の制御や診断のための各種演算を行う演算部Cを備えたものである。そして、このマスフローコントローラ100は、前記熱式流量センサ1で測定される第1測定流量値Q
Tと、目標流量値Q
rの偏差が小さくなるように前記流量制御バルブ2の開度を制御することで、所望の流量をチャンバ内に供給する。
【0027】
各部について
図1を参照しながら説明する。まず、主にハードウェアの構成について説明する。
【0028】
前記ブロック体Bは、
図1に示すように下面に開口し、流体を内部の流路MLへ導入するための流体導入口と、流量制御された流体を導出するための流体導出口を備えたものであり、上面には前記熱式流量センサ1、前記流量制御バルブ2、前記圧力式流量センサ3を取り付けるとともに、前記流路MLと連通させるための取り付け穴が形成してある。
【0029】
前記熱式流量センサ1は、請求項での第1流量測定機構に相当するものであり、前記ブロック体Bの内部の流路MLを流れる流体の流量を測定するものである。この熱式流量センサ1は、前記流路MLに設けてある層流素子13と、前記層流素子13の上流において前記流路MLから分岐し、当該層流素子13の下流において前記流路MLに合流する概略逆U字状に形成された金属細管であるセンサ流路SLと、前記センサ流路SLを形成する金属細管の外側において上流側と下流側にそれぞれ設けられた第1温度センサ11、第2温度センサ12と、前記第1温度センサ11、前記第2温度センサ12で測定される温度差に基づいて前記流路MLに流れる流量に変換する熱式流量算出部14と、を備えたものである。なお、前記熱式流量算出部14は後述する演算部Cの演算機能を利用して構成してあり、第1測定流量値Q
Tを以下の式1に基づいて算出するものである。
【0030】
Q
T=k
T(T
1−T
2)・・・式1
ここで、Q
T:第1測定流量値Q
T、k
T:温度差から流量への変換係数、T
1:第1温度センサ11で測定される上流側温度、T
2:第2温度センサ12で測定される下流側温度である。
【0031】
前記層流素子13は、前記流路MLから前記センサ流路SLに所定の比率で流体が分流されるようにするためのものであり、例えば、微小な貫通溝が形成された薄板を積層して形成してある。すなわち、この層流素子13を流体が通過する際に層流状態となるように前記貫通溝の長さや深さなどが設定してある。このように層流素子13は微小構造を有するものであるため、通過するプロセスガスからの生成物が前記貫通溝等の微小構造に付着して詰まりが生じることがある。また、前記センサ流路SLも金属細管により構成してあるため、詰まりが生じることがある。そして、前記層流素子13又は前記センサ流路SLのいずれかに詰まりが生じると、分流比が変化するため前記第1温度センサ11、前記第2温度センサ12により測定される温度差が実際の流量を反映しないものとなり、前記熱式流量センサ1で測定される第1測定流量値Q
Tに異常が生じることになる。
【0032】
前記流量制御バルブ2は、例えばピエゾバルブであって後述するバルブ制御部21により印加される印加電流値に応じた開度に変更されるものである。この流量制御バルブ2も、プロセスガスに含まれる成分の生成物が付着することにより、詰まりが生じる可能性がある。仮に流量制御バルブ2に詰まりが生じると、前記バルブ制御からの印加電圧が同じであったとしても、想定されているよりも小さい開度となり、実際に流量に流れる流量よりは正常時に比べて小さい値となる。従って、熱式流量センサ1で測定される第1測定流量値Q
Tと目標流量値Q
rの偏差が小さくならないため、さらに流量制御バルブ2の開度が大きくなるように印加される印加電圧値Vが変化することになる。
【0033】
前記圧力式流量センサ3は、請求項での流体測定機構に相当するものであり、前記第1流量測定機構に対して第2流量測定機構とも捉えることができるものである。そして、当該圧力式流量センサ3は、前記ブロック体Bの内部の流路MLを流れる前記流量制御バルブ2の下流側の流量を測定するものである。この圧力式流量センサ3は、前記流路MLに設けられたオリフィス等の流体抵抗33と、前記流体抵抗33の上流側に設けられた第1圧力センサ31と、前記流体抵抗33の下流側に設けられた第2圧力センサ32と、前記第1圧力センサ31、前記第2圧力センサ32でそれぞれ測定される圧力に基づいて前記流路MLに流れる流体の流量を第2測定流量値Q
Pとして算出する圧力式流量算出部34と、から構成してある。なお、前記圧力式流量算出部34は後述する演算部Cの演算機能を利用して構成してあり、第2測定流量値Q
Pを以下の式2に基づいて算出するものである。
【0034】
Q
P=k
P(P
12−P
22)・・・式2
ここで、Q
P:第2測定流量値Q
P、k
P:前記流体抵抗33により決まる圧力から流量への変換係数、P
1:前記第1圧力センサ31で測定される前記流体抵抗33の上流側の測定圧力値、P
2:前記第2圧力センサ32で測定される前記流体抵抗33の下流側の測定圧力値である。
【0035】
次に主にソフトウェアの構成について説明する。
【0036】
前記演算部Cは、CPU、メモリ、入出力インターフェース、A/D、D/Aコンバータ等を備えたいわゆるコンピュータやマイコン等によりその機能を実現されるものであって、前記メモリに格納されているプログラムを実行することにより、少なくとも、バルブ制御部21、安定状態判定部4、熱式流量診断部5、バルブ印加電圧記憶部6、バルブ診断部7としての機能を発揮するように構成してある。なお、第1実施形態における診断装置200は、前記圧力式流量センサ3、前記安定状態判定部4、前記熱式流量診断部5、前記バルブ印加電圧記憶部6、前記バルブ診断部7により構成されるものである。
【0038】
前記バルブ制御部21は、前記熱式流量センサ1で測定される第1測定流量値Q
Tと、目標流量値Q
rとの偏差が小さくなるように前記流量制御バルブに開度制御パラメータを入力して前記流量制御バルブ2の開度を制御するものである。本実施形態では、前記開度制御パラメータとして印加電圧値が選択してある。より具体的には、前記第1測定流量値Q
Tがフィードバックされると、前記目標流量値Q
rとの偏差が算出され、その偏差に応じて前記流量制御バルブ2に印加する電圧を変化させるものである。なお、目標流量値Q
rは予め指令値をプログラムとして入力するものであってもよいし、外部入力により逐次入力されるようにしても構わない。第1実施形態では、目標流量値Q
rとしては所定時間ある一定の値を保持し続けることを目的としてステップ入力状の値が前記バルブ制御部21に入力される。例えば、プロセスの状態が切り替わるごとにステップ入力の大きさが変更される。
【0039】
前記安定状態判定部4は、前記第1測定流量値Q
Tに基づいて、前記流路MLを流れる流体の状態が安定状態であるかどうかを判定するかどうかを判定するものである。より具体的には、前記安定状態判定部4は、
図2のグラフに示すように第1測定流量値Q
Tと前記目標流量値Q
rとの偏差の絶対値が所定値以下である状態が所定時間以上継続した場合に前記流体の状態が安定状態であると判定するように構成してある。ここで、流体の状態が安定状態であるという文言について言い換えておくと、前記流路MLを流れる流体の流量、圧力等と言った流量に関連するパラメータが時間経過に対して大きく変動せず、実質的に一定となっている状態とも言い換えることができる。更に言い換えると、流体が安定しているとは前記測定流量値Q
T、測定される圧力値の両方又は少なくとも一方が所定の値の範囲内で、所定時間継続して保たれている状態とも言える。なお、前述した所定の値や、所定時間は工場出荷時等に予め定めてあってもよいし、ユーザが適宜設定する値であってもよい。
【0040】
前記熱式流量診断部5は、請求項における第1測定流量診断部に相当するものであり、前記安定状態判定部4が流体の状態が安定状態であると判定している場合に、前記第2測定流量値Q
Pに基づいて前記第1測定流量値Q
Tの異常を診断するものである。より具体的には、前記第1測定流量値Q
Tと前記第2測定流量値Q
Pの差分の絶対値が所定値以上となっている場合には、前記第1測定流量値Q
Tに異常が発生していると診断し、所定値以内であれば正常であると診断するものである。つまり、前記第1測定流量値Q
Tと前記第2測定流量値Q
Pの差分が所定量以上の場合には、前記熱式流量センサ1のどこかに詰まりが生じ、前記第1測定流量値Q
Tが正しい値を示していないと、前記熱式流量診断部5は診断するように構成してある。
【0041】
前記バルブ印加電圧記憶部6は、
図3に示すようにマスフローコントローラ100が正常に動作している時において、前記流量制御バルブ2に印加されていた電圧を基準電圧値V
0(請求項での基準開度制御パラメータに相当)として記憶するものである。より具体的には、前記バルブ印加電圧記憶部6は、流量制御バルブ2よりも上流側における流体の供給圧力値P
0と、前記熱式流量センサ1において測定されていた第1測定流量値Q
Tの組み合わせごとに、基準電圧値V
0を記憶している。
【0042】
前記バルブ診断部7は、前記熱式流量診断部5において前記第1測定流量値Q
Tに異常がないと診断している場合に、前記第1測定流量値Q
Tと、前記バルブ制御部21が前記流量制御バルブ2に現時点で印加している印加電圧値Vと、前記流量制御バルブ2よりも上流側で測定される圧力である供給圧力値P
0と、に基づいて前記流量制御バルブ2の異常を診断するように構成してある。なお、第1実施形態では、前記供給圧力値P
0はこのマスフローコントローラ100の上流において流体供給口とガスパネルGを介して接続してある配管上に別途設けられた供給圧力測定センサPSより測定される圧力を供給圧力値P
0として取得するように構成してある。より具体的には、前記バルブ診断部7は、現在測定されている第1測定流量値Q
Tと現在測定されている供給圧力値P
0に対応し、マスフローコントローラ100に異常が生じていない場合には前記流量制御バルブ2に印加されるはずである基準電圧値V
0を前記バルブ印加電圧記憶部6から取得する。この際、記憶されていない基準電圧値V
0に関しては、補間演算等により算出される値を基準電圧値V
0とする。前記バルブ診断部7は、前記基準電圧値V
0と、現在流量制御バルブ2に印加している印加電圧値Vとの差分を取ることで比較し、これらの差分の絶対値が所定値以上の場合には、前記流量制御バルブ2に詰まりが発生し、異常が発生していると診断するように構成してある。なお、ここで説明している所定値に関しても、許容できる誤差や使用状態等に応じてユーザが適宜設定する値であっても構わない。
【0043】
このように構成されたマスフローコントローラ100における、流量制御バルブ2の診断時の動作について
図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0044】
マスフローコントローラ100により第1測定流量値Q
Tと、一定の流量を示す目標流量値Q
rとの偏差が小さくなるように流量制御が開始されると(ステップS1)、前記安定状態判定部4は、前記流量を流れる流体の状態が安定状態であるかどうかの判定を開始する(ステップS2)。前記安定状態判定部4は、前記熱式流量センサ1から出力される前記第1測定流量値Q
Tと、目標流量値Q
rの偏差が所定値以内である状態が所定時間以上継続している場合に(ステップS3)、流体が安定していると判定する(ステップS4)。
【0045】
前記安定状態判定部4において、流体が安定している判定されると、前記熱式流量診断部5は、前記第1測定流量値Q
Tと、前記第2測定流量値Q
Pの差分の絶対値が所定値以内であるかどうかの比較を行い(ステップS5)、その差分が所定値よりも大きい場合には熱式流量センサ1から出力される第1測定流量値Q
Tに異常があると診断する(ステップS6)。この場合、前記バルブ診断部7は流量制御バルブ2の診断を行わない。また、前記熱式流量診断部5は、差分が所定値よりも小さい場合には、前記第1測定流量値Q
Tには異常が無いと診断する(ステップS7)。
【0046】
前記バルブ診断部7は、前記第1測定流量値Q
Tに異常が無いと診断されると、現在測定されている前記第1測定流量値Q
Tと、前記供給圧力測定センサPSにより測定される供給圧力値P
0に基づいて、前記バルブ印加電圧記憶部6から正常時において前記流量制御バルブ2に印加されるはずである基準電圧値V
0を取得する(ステップS8)。そして、前記バルブ診断部7は、取得された基準電圧値V
0と、現在、前記流量制御バルブ2に印加されている印加電圧値Vとを比較し(ステップS9)、各電圧値の差分の絶対値が所定値以内であれば前記流量制御バルブ2に詰まりは存在しないと診断する(ステップS10)。逆に、各電圧値の差分の絶対値が所定値よりも大きい場合には、前記バルブ診断部7は前記流量制御バルブ2に詰まり等の異常が許容できる以上に発生していると診断する(ステップS11)。
【0047】
このように構成されたマスフローコントローラ100及び診断装置200によれば、まず、前記熱式流量センサ1で測定される第1測定流量値Q
Tが正しいかどうかを、前記圧力式流量センサ3で測定される第2測定流量値Q
Pと比較して診断し、第1測定流量値Q
Tが正しい場合にのみ前記流量制御バルブ2の診断を前記バルブ診断部7が行うように構成してあるので、前記流量制御バルブ2の診断結果について高い信頼性を持たせることができる。言い換えると、前記第1測定流量値Q
Tが正しい値でないにもかかわらず、前記流量制御バルブ2の診断を行うことがなくなり、確実に前記流量制御バルブ2に詰まり等が生じていることと、前記熱式流量センサ1に詰まり等が生じていることを切り分けて診断することができるようになる。
【0048】
第1実施形態のマスフローコントローラ100の変形実施形態について説明すると、前記安定状態判定部4に用いられる測定流量値は、第1測定流量値Q
Tではなく、第2測定流量値Q
Pであっても構わない。また、前記バルブ印加電圧記憶部6に予め正常時において流量制御バルブ2に印加されていた印加電圧を記憶させておき、前記バルブ診断部7が診断時にそれらの値を参照するように構成するのではなく、例えば、前記バルブ診断部7が、第1測定流量値Q
Tと、供給圧力値P
0から正常時に印加するべき印加電圧を所定の関係式に基づいて基準電圧値V
0として算出し、現在印加している印加電圧と比較することで診断を行うように構成しても構わない。さらに、前記バルブ診断部7は、前記流量制御バルブ2に現在印加されている電圧値と、供給圧力値及び第1測定流量値といった条件が同じ場合の正常時に印加されていた基準電圧値とを比較することで流量制御バルブ2の診断を行っていたが、例えば、現在測定されている第1測定流量値と、供給圧力値及び印加電圧値といった条件が同じで正常時に測定されていた第1測定流量値とを比較することにより診断を行うように構成しても構わない。また、現在の供給圧力値と、印加電圧値及び第1測定流量値と言った条件が同じで正常時において測定されていた供給圧力値と、を比較することで流量制御バルブの診断を行っても構わない。つまり、2つのパラメータごとにテーブルとして記憶しておくのは、印加電圧値、第1測定流量値、供給圧力値、のいずれであっても構わず、比較を行う物以外の2つのパラメータは条件を揃えっているための検索に用いるようにすればよい。
【0049】
次に本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と共通する部材には同じ符号を付すこととする。
【0050】
第2実施形態のマスフローコントローラ100は、
図5に示すように第1実施形態のマスフローコントローラ100に前記流量制御バルブ2の上流側の圧力である流体の供給圧力値P
0を測定するための供給圧力測定センサPSと、前記圧力式流量センサ3で測定される第2測定流量値Q
Pの異常を診断する圧力式流量診断部8と、を更に備えたものである。また、前記熱式流量診断部5は、前記圧力式流量診断部8において第2測定流量値Q
Pに異常が無いと診断された場合にのみ、第1測定流量値Q
Tと第2測定流量値Q
Pを比較して診断を開始するように構成してある。さらに、前記熱式流量診断部5において、第1測定流量値Q
Tに異常がないと診断された場合に、前記バルブ診断部7は、前記流量制御バルブ2の診断を行うようにしてある。
【0052】
前記供給圧力測定センサPSは、前記バルブ診断部7においてバルブの診断を行う際に使用される供給圧力値P
0を外部から取得することなく、マスフローコントローラ100内で測定することを可能にするために設けてある。
【0053】
前記圧力式流量診断部8は、請求項での第2測定流量診断部に相当するものであり、圧力式流量センサ3の上流側が完全に閉止し、新たな流体の流入を無くした状態で所定時間内に前記圧力式流量センサ3を通過する流体の流量に基づいて第2測定流量値Q
Pに異常が無いか診断するものである。この圧力式流量診断部8は、前記熱式流量診断部5とは異なり、他のセンサや測定機構で測定される測定値を必要とせずに、自身を構成する前記圧力式流量センサ3から出力される測定値のみで自己診断できるように構成してある。より具体的には、前記圧力式流量診断部8は
図6に示すように第1圧力センサ31で測定される圧力が第1所定圧力となってから、第1所定圧力よりも低い圧力である第2所定圧力となるまでの所定時間中に流路MLの流量制御バルブ2から流体抵抗33までの基準体積を診断パラメータとして異常を診断するものである。前記圧力式流量診断部8は、例えば、正常時において測定された診断パラメータを基準パラメータとして、新たに診断を行った際の診断パラメータと基準パラメータが異なる場合に異常があると診断するように構成してある。また、前記診断パラメータと基準パラメータの差が所定値以内であれば異常は無いと診断するように構成してある。
【0054】
なお、上述した基準体積は以下のようにして算出することができる。
【0055】
すなわち、第1圧力センサ31で測定される圧力が第1所定圧力P
11となった時刻t
1及び、第2所定圧力P
12となった時刻t
2において、前記基準体積Vについて気体の状態方程式を立てると以下のようになる。
【0056】
P
11V=n
1RT・・・式3
P
12V=n
2RT・・・式4
ここで、n
1:時刻t
1において基準体積V内にあった流体のmol数、n
2:時刻t
2において基準体積V内にあった流体のmol数、R:気体定数、T:流体の温度である。
【0057】
式3、式4を各辺同士で引き算すると、
(P
11−P
12)V=(n
1−n
2)RT・・・式5
となる。
ここで、n
1−n
2は流出した流量分のmol数であるから、圧力式流量センサで測定されている第2測定流量値Q
Pを使って以下のように表せる。
【0058】
(n
1−n
2)=(∫Q
pdt)/M (t
1からt
2まで積分)・・・式6
ここで、M:流体の分子量である。
【0059】
従って、基準体積Vは圧力式流量センサで測定される第2測定流量値Q
Pで表すことができ、正常時に算出された基準体積V
0と、診断を行った時の第2測定流量値Q
Pにより算出された基準体積Vを比較し、これらの値が異なっていれば第2測定流量値Q
Pに異常があることを診断できる。
【0060】
なお、第2流量測定機構の自己診断方法としては、上述した方法に限られるものではなく、圧力センサで測定される圧力値が、ある圧力から別の圧力になるまでの時間を診断パラメータとして診断する方法や、マスフローコントローラ100の下流側は閉止して、流入してくる流体に基づいて診断する方法等様々な方法を用いても構わない。
【0061】
このように第2実施形態のマスフローコントローラ100によれば、まず、前記圧力式流量診断部8が、圧力式流量センサ3で測定されている第2測定流量値Q
Pに異常が生じていないかどうかを診断してから、第1測定流量値Q
Tの診断を行うようにしてあるので、前記第1測定流量値Q
Tの診断基準としての第2測定流量値Q
Pの信頼性を高めることができ、ひいては、第1測定流量値Q
Tの信頼性をより高めることができる。従って、前記バルブ診断部7において第1測定流量値Q
Tを用いて診断された流量制御バルブ2の診断結果についてもより確度の高いものにすることができる。
【0062】
第2実施形態の変形実施形態について説明する。例えば、前記圧力式流量診断部8の診断時において、前記圧力式流量センサ3の上流にある任意のバルブを閉止することで、診断を行うようにしても構わない。また、圧力式流量センサ3の下流側にある任意のバルブ等を閉止することで生じる圧力変化をトリガとして、診断を行うようにしても構わない。より具体的には、前記圧力式流量診断部8は、第1圧力となってから、第1圧力よりも高い圧力である第2圧力となるまでの時間に、圧力式流量センサ3を通過する流量の積分値に基づいて診断を行うようにしても構わない。
【0064】
本発明を適用した流量制御装置はマスフローコントローラ等のパッケージ化されたものだけでなく、各流体制御機器を別々に取り付けることにより構成したものであっても構わない。また、既存のマスフローコントローラに診断機能を付加できるように、安定状態判定部、第1測定流量診断部、バルブ診断部、バルブ印加電圧記憶部、第2測定流量診断部等からなるプログラムを記録媒体等から演算部等にインストールしても構わない。前記マスフローコントローラに設けられる熱式流量センサ、流量制御バルブ、圧力式流量センサが上流から並んでいる順番はどのような順番であっても構わない。例えば、熱式流量センサ、圧力式流量センサ、流量制御バルブの順番で並んでいる場合には、前記バルブ診断部において診断を行う際に用いる供給圧力値を第2圧力センサで測定した値を用いることができる。さらに、前記バルブ診断部が流量制御バルブの診断のために用いる開度制御パラメータは、前記実施形態で示した印加電圧値に限られるものではなく、印加電流値、PWM信号のパルス幅等、前記流量制御バルブの開度を変更するために、目標流量値と測定流量値の偏差に応じて決まって入力されるパラメータであれば何であってもよい。加えて、前記安定状態判定部を省略して、前記圧力算出部が前記流体の状態に関わりなく、算出圧力値を算出するとともに、前記異常診断部が異常診断を行うように流量制御装置及び診断装置を構成してもよい。さらに、前記バルブ診断部は、流量制御バルブの下流側の圧力であるバルブ下流圧力値を更に用いて診断を行うものであってもよい。より具体的には、前記バルブ診断部が、前記流量制御バルブの上流側の圧力である供給圧力値と、前記バルブ下流圧力値の差分、すなわち、流量制御バルブの前後における差圧と、前記開度制御パラメータと、前記測定流量値等に基づいて、診断を行うようにすれば、流量制御バルブの前後における流体の流れやすさの状態をより正確に加味して診断を行うことができるので、バルブ診断も精度よく行うことができるようになる。なお、前記バルブ下流側圧力値は、マスフローコントローラ内に設けられた圧力センサで測定してもよいし、マスフローコントローラの下流において接続された配管上に設けられている圧力センサで測定される値を利用してもよい。
【0065】
第1流量測定機構、流体測定機構(第2流量測定機構)としては、実施形態において例示した熱式流量センサ、圧力式流量センサに限れるものではなく、例えば、第1流量測定機構が、圧力式流量センサであり、流体測定機構が熱式流量センサであってもよい。また、第1流量測定機構及び第2流量測定機構が同じ測定原理で測定するものであっても構わない。
【0066】
また、前記各実施形態では、流体測定機構は流量を測定するものであったが、圧力を測定するものであっても構わず、前記第1測定流量診断部は、前記流体測定機構で測定される測定圧力値に基づいて前記第1測定流量値の異常を診断するように構成されていても構わない。
【0067】
より具体的には、前記流体測定機構が、圧力式流量センサを構成する流体抵抗の下流側に設けられる第2圧力センサを省略した形のものであってもよい。言い換えると、前記流体測定機構が、流路に設けられた流体抵抗と、前記流体抵抗の上流側又は下流側のいずれか一方に設けられた圧力センサと、からなるものであってもよい。
【0068】
以下では、前記流体測定機構が流体抵抗の上流側又は下流側のいずれか一方のみに圧力センサが設けられている場合における、前記第1測定流量診断部が流体測定機構で測定される測定圧力値に基づいて第1測定流量値の異常を診断するための構成について詳述する。
【0069】
まず、前記流体測定機構で測定される測定圧力値に基づいて、第1測定流量値とは別途、流体の流量を算出し、算出された算出流量値と、第1測定流量値を比較することで、第1測定流量値の異常診断を行うように構成された第1測定流量診断部について説明する。
【0070】
前記第1測定流量診断部は、例えば第1測定流量値が正常の間において、前記圧力センサが設けられていない側(他方側)の圧力値を算出しておき、前記圧力センサで測定される測定圧力値と、算出された算出圧力値に基づいて、圧力に基づいた算出流量値を算出するように構成してある。
【0071】
より具体的には、第1測定流量値が正常であれば、前述した式1に基づいて第1流量測定機構で測定される第1測定流量値と、前述した圧力に基づく式2で算出される流量は等しくなるので、上流側の圧力値P
1又は下流側の圧力値P
2のうち未知のものを算出することができる。以下では圧力値P
1が測定されている値であり、圧力値P
2が測定されていない値であるとして話を進める。
【0072】
前記第1測定流量診断部は、下流側の圧力値P2が算出圧力値として算出された後はこの値を保持し続けておき、圧力センサで測定される測定圧力値P
1と算出圧力値P
2を前述した式2に代入すれば、圧力に基づいた流量値である算出流量値を逐次算出することができる。従って、この実施形態では、第1測定流量診断部は、第1測定流量値と、第2測定流量値を比較する代わりに、第1測定流量値と算出流量値を比較し、これらの差分の絶対値が所定値以上となった場合に第1測定流量値に異常が生じていると診断することができる。
【0073】
次に、第1測定流量診断部が、圧力センサで測定される測定圧力値そのものを用いて第1測定圧力値の異常を診断するように構成されている場合について説明する。
【0074】
前記第1測定流量診断部は、例えば、前記バルブ制御部及び流量制御バルブにより流量が一定となるように制御されており、流体が安定状態となった時点での前記流体測定機構を構成する圧力センサで測定される圧力値を基準圧力値として記憶しておくとともに、逐次測定される測定圧力値と、前記基準圧力値との差分が所定値以上となった場合に第1測定流量値に異常が生じたと診断するように構成してある。
【0075】
以上に示したような流体測定機構、及び、第1測定流量診断部であっても流量を直接測定することなく、測定圧力値のみで第1測定流量値の異常を診断することができる。そして、その正しさを保障された第1測定流量値に基づいて、流量制御バルブの診断を精度良く行うことができる。
【0076】
また、前記バルブ診断部の診断では、第1測定流量値に基づいて流量制御バルブの異常を診断していたが、前記第1測定流量値と略同じ値を示すものであれば、どのようなものを用いても構わない。より具体的には、第1測定流量値が正常であると診断されている場合、前記流体測定機構である圧力式流量センサ等で測定される第2測定流量値も略同じ値を示すので、この第2測定流量値を代わりに用いてもよい。さらに、前述したように流体測定機構において圧力を測定する構成の場合でも、測定圧力値から算出される算出流量値も第1測定流量値と略同じ値を示すので、この算出流量値を用いて流量制御バルブの診断を行ってもよい。言い換えると、算出流量値の元となる前記流体測定機構で測定される測定圧力値と、開度制御パラメータと、供給圧力値と、に基づいて前記バルブ診断部が流量制御バルブの診断を行うものであってもよい。
【0077】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の組み合わせや変形を行っても構わない。