特許第5873882号(P5873882)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5873882研磨用組成物、その製造方法、シリコン基板の製造方法、及びシリコン基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5873882
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】研磨用組成物、その製造方法、シリコン基板の製造方法、及びシリコン基板
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20160216BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20160216BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20160216BHJP
【FI】
   C09K3/14 550C
   H01L21/304 622D
   H01L21/304 621D
   B24B37/00 H
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-554304(P2013-554304)
(86)(22)【出願日】2013年1月16日
(86)【国際出願番号】JP2013050654
(87)【国際公開番号】WO2013108777
(87)【国際公開日】20130725
【審査請求日】2015年6月3日
(31)【優先権主張番号】特願2012-6371(P2012-6371)
(32)【優先日】2012年1月16日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 修平
(72)【発明者】
【氏名】土屋 公亮
(72)【発明者】
【氏名】高見 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】森 嘉男
【審査官】 ▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−073686(JP,A)
【文献】 特開2000−218107(JP,A)
【文献】 特開2006−136996(JP,A)
【文献】 特開2006−056774(JP,A)
【文献】 特開2003−136406(JP,A)
【文献】 特開2001−294417(JP,A)
【文献】 特開2007−073687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
B24B 37/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロイダルシリカ及び水溶性高分子を含んでなる研磨用組成物の原料を混合して原液を調製する工程と、
前記原液をろ過する工程と、
ろ過後の原液を希釈して希釈液を得る工程と、
前記希釈液をろ過する工程と
を通じて得られるろ過後の希釈液により構成され、pH9〜11であることを特徴とする研磨用組成物。
【請求項2】
コロイダルシリカ及び水溶性高分子を含んでなる研磨用組成物の原料の少なくとも一部をろ過する工程と、
少なくとも一部がろ過された前記原料を混合して原液を調製する工程と、
前記原液を希釈して希釈液を得る工程と、
前記希釈液をろ過する工程と
を通じて得られるろ過後の希釈液により構成され、pH9〜11であることを特徴とする研磨用組成物。
【請求項3】
前記原料が水を含む請求項1又は請求項2に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
前記原料が塩基性化合物をさらに含む請求項3に記載の研磨用組成物。
【請求項5】
前記研磨用組成物中の0.7μm以上の粗大粒子の数は、1mL当たり2000個以下である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
【請求項6】
シリコン基板原料を研磨する用途に用いられる請求項1から請求項のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
【請求項7】
コロイダルシリカ及び水溶性高分子を含んでなる研磨用組成物の原料を混合して原液を調製する工程と、
前記原液をろ過する工程と、
ろ過後の原液を希釈して希釈液を得る工程と、
前記希釈液をろ過する工程と
を含み、pH9〜11であることを特徴とする研磨用組成物の製造方法。
【請求項8】
コロイダルシリカ及び水溶性高分子を含んでなる研磨用組成物の原料の少なくとも一部をろ過する工程と、
少なくとも一部がろ過された前記原料を混合して原液を調製する工程と、
前記原液を希釈して希釈液を得る工程と、
前記希釈液をろ過する工程と
を含み、pH9〜11であることを特徴とする研磨用組成物の製造方法。
【請求項9】
前記希釈液をろ過する工程で使用されるフィルターの目開きは、0.05〜5μmである請求項7又は請求項8に記載の研磨用組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の研磨用組成物を用いてシリコン基板原料を研磨する工程を含むことを特徴とするシリコン基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨用組成物、その製造方法、研磨用組成物を用いたシリコン基板の製造方法、及び研磨用組成物を用いて製造されるシリコン基板に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばシリコン基板の研磨には、砥粒等を含有する研磨用組成物が用いられている(特許文献1参照)。研磨対象物を研磨して得られる研磨製品の品質を安定させるためには、研磨用組成物中の凝集物を低減することが重要である。この点、特許文献2には、砥粒の分散性を高める技術が開示されている。特許文献3には、特定の高分子化合物を含有させることで研磨用組成物の濃縮液の保存安定性を良好にする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−518668号公報
【特許文献2】特開2001−15461号公報
【特許文献3】特許第4772156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように研磨用組成物中における凝集物の発生は、例えば分散剤の配合により抑制が可能である。しかしながら、研磨製品の品質向上のためには未だ改善の余地がある。
【0005】
そこで本発明の目的は、高品質の研磨製品の製造に有用な研磨用組成物、及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、高品質のシリコン基板を容易に得ることが可能なシリコン基板の製造方法、及び高品質のシリコン基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の態様では、コロイダルシリカ及び水溶性高分子を含んでなる研磨用組成物の原料を混合して原液を調製する工程と、前記原液をろ過する工程と、ろ過後の原液を希釈して希釈液を得る工程と、前記希釈液をろ過する工程とを通じて得られるろ過後の希釈液により構成され、pH9〜11である研磨用組成物が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様では、コロイダルシリカ及び水溶性高分子を含んでなる研磨用組成物の原料の少なくとも一部をろ過する工程と、少なくとも一部がろ過された前記原料を混合して原液を調製する工程と、前記原液を希釈して希釈液を得る工程と、前記希釈液をろ過する工程とを通じて得られるろ過後の希釈液により構成され、pH9〜11である研磨用組成物が提供される。
【0008】
前記原料は、水を含むことが好ましく、さらに塩基性化合物を含むことがより好ましい。前記研磨用組成物中の0.7μm以上の粗大粒子の数は、1mL当たり2000個以下であることが好ましい。
【0009】
上記第1及び第2の態様の研磨用組成物は、シリコン基板原料を研磨する用途に用いられることが好ましい。
【0010】
本発明の第3の態様では、コロイダルシリカ及び水溶性高分子を含んでなる研磨用組成物の原料を混合して原液を調製する工程と、前記原液をろ過する工程と、ろ過後の原液を希釈して希釈液を得る工程と、前記希釈液をろ過する工程とを含み、pH9〜11である研磨用組成物の製造方法が提供される。
【0011】
本発明の第4の態様では、コロイダルシリカ及び水溶性高分子を含んでなる研磨用組成物の原料の少なくとも一部をろ過する工程と、少なくとも一部がろ過された前記原料を混合して原液を調製する工程と、前記原液を希釈して希釈液を得る工程と、前記希釈液をろ過する工程とを含み、pH9〜11である研磨用組成物の製造方法が提供される。
前記希釈液をろ過する工程で使用されるフィルターの目開きは、0.05〜5μmであることが好ましい。
【0012】
本発明の第5の態様では、上記第1又は第2の態様の研磨用組成物を用いてシリコン基板原料を研磨する工程を含むシリコン基板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高品質のシリコン基板などの研磨製品を容易に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を説明する。
【0016】
本実施形態の研磨用組成物は、原液調製工程、原液ろ過工程、希釈工程、及び希釈液ろ過工程を含む方法で製造される。
【0017】
原液調製工程では、研磨用組成物の原料を混合して原液の調製が行われる。原液ろ過工程では、原液のろ過が行われる。希釈工程では、ろ過後の原液を希釈して希釈液を得ることが行われる。希釈液ろ過工程では、希釈液をろ過することが行われる。研磨用組成物は、希釈液ろ過工程で得られるろ液、すなわちろ過後の希釈液からなる。研磨用組成物は、シリコン基板原料を研磨する用途に用いられる。
【0018】
研磨用組成物の原料は、例えば砥粒、水溶性高分子、塩基性化合物、水等を含む。
【0019】
砥粒は、研磨対象となる面を機械的に研磨する働きを有する。砥粒の具体例としては、シリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、チタニアなどの金属酸化物からなる粒子、炭化ケイ素、炭酸カルシウム、ダイヤモンドなどからなる粒子が挙げられる。砥粒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。砥粒はシリカ粒子であることが好ましい。シリカ粒子の例としてはコロイダルシリカ、フュームドシリカ等が挙げられ、中でもコロイダルシリカが好ましい。コロイダルシリカ又はフュームドシリカを使用した場合、特にコロイダルシリカを使用した場合には、研磨用組成物を用いた研磨によってシリコン基板の表面に発生するスクラッチが減少する。
【0020】
砥粒の平均一次粒子径は5nm以上であることが好ましく、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは20nm以上である。砥粒の平均一次粒子径の増大につれて、シリコン基板の研磨速度が向上する。
【0021】
また、砥粒の平均一次粒子径は100nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは40nm以下である。砥粒の平均一次粒子径の減少につれて、研磨用組成物の分散安定性が向上する。
【0022】
砥粒の平均一次粒子径の値は、例えば、BET法により測定される比表面積から算出される。砥粒の比表面積の測定は、例えば、マイクロメリテックス社製の“Flow SorbII 2300”を用いて行うことができる。
【0023】
研磨用組成物中における砥粒の含有量は、0.01質量%以上であることが好ましい。砥粒の含有量の増加につれて、研磨対象となる面に対する研磨速度等の表面加工性能が向上する。
【0024】
また、研磨用組成物中における砥粒の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。砥粒の含有量の減少につれて、研磨用組成物の分散安定性が向上し、かつ、研磨された面の砥粒の残渣が低減する傾向となる。
【0025】
水溶性高分子は、研磨される面の濡れ性を高める働きを有する。水溶性高分子としては、分子中に、カチオン基、アニオン基及びノニオン基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有するものを使用することができる。水溶性高分子は、分子中に水酸基、カルボキシル基、アシルオキシ基、スルホ基、第四級窒素構造、複素環構造、ビニル構造、ポリオキシアルキレン構造等を含んでもよい。
【0026】
水溶性高分子の具体例としては、セルロース誘導体、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)等のイミン誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンを構造の一部に含む共重合体、ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルカプロラクタムを構造の一部に含む共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシアルキレン構造を有する重合体、これらのジブロック型やトリブロック型、ランダム型、交互型といった複数種の構造を有する重合体、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。
【0027】
水溶性高分子は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
水溶性高分子は、親水性を与える働きが良好であることから、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、又はポリオキシアルキレン構造を有する重合体が好適である。セルロース誘導体の具体例としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。セルロース誘導体の中でも、研磨された面に濡れ性を与える能力が高く、良好な洗浄性を有する点から、ヒドロキシエチルセルロースが好ましい。
【0029】
水溶性高分子の重量平均分子量は、ポリエチレンオキサイド換算で、300以上であることが好ましく、より好ましくは1000以上、さらに好ましくは10000以上、一層好ましくは100000以上、最も好ましくは200000以上である。水溶性高分子の重量平均分子量の増加につれて、研磨される面の親水性が高まる傾向となる。
【0030】
また、水溶性高分子の重量平均分子量は、2000000未満であることが好ましく、より好ましくは1500000未満、さらに好ましくは1000000未満、最も好ましくは500000未満である。水溶性高分子の重量平均分子量の減少につれて、研磨用組成物の安定性がより保たれる。
【0031】
研磨用組成物中における水溶性高分子の含有量は、0.002質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.004質量%以上、さらに好ましくは0.006質量%以上である。研磨用組成物中における水溶性高分子の含有量の増加につれて、研磨される面の濡れ性がより高まる傾向となる。
【0032】
また、研磨用組成物中における水溶性高分子の含有量は、0.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.2質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。研磨用組成物中における水溶性高分子の含有量の減少につれて、研磨用組成物の分散安定性が向上され易くなる傾向となる。
【0033】
塩基性化合物は、研磨対象となる面を化学的に研磨する働き、及び研磨用組成物の分散安定性を向上させる働きを有する。
【0034】
塩基性化合物の具体例としては、アルカリ金属の水酸化物又は塩、水酸化第四級アンモニウム又はその塩、アンモニア、アミン等が挙げられる。アルカリ金属の具体例としては、カリウム、ナトリウム等が挙げられる。塩の具体例としては、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。第四級アンモニウムの具体例としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物又は塩の具体例としては、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、塩化カリウム等が挙げられる。水酸化第四級アンモニウム又はその塩の具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチルピペラジン、グアニジン等が挙げられる。塩基性化合物は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
塩基性化合物は、アンモニア、アンモニウム塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属塩、及び第四級アンモニウム水酸化物から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。中でも、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一種がより好ましく、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、及び水酸化テトラエチルアンモニウムから選ばれる少なくとも一種がさらに好ましく、一層好ましくはアンモニア及び水酸化テトラメチルアンモニウムの少なくとも一方であり、最も好ましくはアンモニアである。
【0036】
研磨用組成物中における塩基性化合物の含有量は、0.001質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.002質量%以上、さらに好ましくは0.003質量%以上である。研磨用組成物中における塩基性化合物の含有量の増加につれて、研磨対象となる面を化学的に研磨する働き、及び研磨用組成物の分散安定性を向上させる働きが高まる傾向となる。
【0037】
また、研磨用組成物中における塩基性化合物の含有量は、1.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下である。研磨用組成物中における塩基性化合物の含有量の減少につれて、研磨された面の平滑性が向上する傾向となる。
【0038】
水は、研磨用組成物中の他の成分の分散媒又は溶媒となる。他の成分の働きが阻害されることを極力回避するため、例えば遷移金属イオンの合計含有量が100ppb以下である水を使用することが好ましい。例えば、イオン交換樹脂を用いる不純物イオンの除去、フィルターによる異物の除去、蒸留等の操作によって水の純度を高めることができる。具体的には、例えば、イオン交換水、純水、超純水、蒸留水等を用いることが好ましい。
【0039】
研磨用組成物のpHは8〜12の範囲が好ましく、より好ましくは9〜11の範囲である。研磨用組成物のpHが8〜12の範囲の場合、実用上、好ましい研磨速度が得られ易い。
【0040】
研磨用組成物の原料は、例えば界面活性剤、有機酸、有機酸塩、無機酸、無機酸塩、キレート剤等をさらに含んでもよい。
【0041】
界面活性剤は、研磨された面の荒れを抑制する働きを有する。これにより、研磨された面のヘイズレベルを低減することが容易となる。特に、研磨用組成物が塩基性化合物を含有する場合、塩基性化合物によるケミカルエッチングにより、研磨された面に荒れが生じ易くなる傾向があるため、界面活性剤を塩基性化合物と併用することはそれを抑えるのに有効である。
【0042】
界面活性剤の重量平均分子量は300未満でもよい。界面活性剤はイオン性又はノニオン性のいずれでもよく、中でもノニオン性界面活性剤が好適に用いられる。ノニオン性界面活性剤は起泡性が低いため、調製時や使用時の研磨用組成物の取り扱いが容易となる。また、イオン性の界面活性剤を用いた場合よりもノニオン性界面活性剤を用いた場合の方が、研磨用組成物のpH調整が容易である。
【0043】
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシアルキレン重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレン付加物等が挙げられ、さらに具体的には、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンペンチルエーテル、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミド、ポリオキシエチレンオレイルアミド、ポリオキシエチレンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンモノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジオレイン酸エステル、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルチミン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0044】
界面活性剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
有機酸及びその塩、並びに無機酸及びその塩は、研磨された面の親水性を向上させる働きを有する。
【0046】
有機酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸、安息香酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、有機スルホン酸、有機ホスホン酸等が挙げられる。有機酸塩の具体例としては、上記した有機酸のナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、又はアンモニウム塩が挙げられる。
【0047】
無機酸の具体例としては、硫酸、硝酸、塩酸、炭酸等が挙げられる。無機酸塩の具体例としては、上記した無機酸のナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、又はアンモニウム塩が挙げられる。
【0048】
有機酸塩及び無機酸塩の中でも、研磨製品の金属汚染を抑制するためにはアンモニウム塩が好ましい。
【0049】
有機酸及びその塩、並びに無機酸及びその塩はそれぞれ、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
キレート剤は、研磨製品の金属汚染を抑制する働きを有する。キレート剤の具体例としては、アミノカルボン酸系キレート剤、及び有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤の具体例としては、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウムが挙げられる。有機ホスホン酸系キレート剤の具体例としては、2−アミノエチルホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン−1,1,−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸等が挙げられる。
【0051】
原液調製工程における原料の混合には、例えば翼式攪拌機、超音波分散機、ホモミキサー等の周知の混合装置を用いることができる。原料はすべて同時に混合してもよいし、あるいは任意の順序で混合してもよい。
【0052】
次に、原液ろ過工程、希釈工程、及び希釈液ろ過工程について説明する。
【0053】
原液ろ過工程では第1フィルターが使用され、希釈液ろ過工程では第2フィルターが使用される。以下では、各フィルターの目開き、材質、第1フィルターと第2フィルターの目開きの比率等の条件について説明するが、これらの条件は、ろ過速度と研磨後のシリコン基板の品質との関係から適した条件に適宜変更すればよく、本発明は下記の条件に限定されるものではない。
【0054】
原液ろ過工程は、研磨用組成物の原料中に含まれる異物や研磨用組成物の原液を調製する段階で混入した異物の除去を主な目的として行われる。原液ろ過工程におけるろ過は、常圧状態で行う自然ろ過であってもよいし、吸引ろ過、加圧ろ過、又は遠心ろ過でもよい。
【0055】
原液ろ過工程で用いる第1フィルターは、目開きを基準に選択されることが好ましい。第1フィルターの目開きA1は0.05μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上である。目開きA1の拡大につれて、実用的なろ過速度が得られ易くなる。
【0056】
また、第1フィルターの目開きA1は50μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは0.3μm以下である。目開きA1の縮小につれて、高品質のシリコン基板の製造に有用な研磨用組成物を得ることがさらに容易となる。
【0057】
なお、フィルターの目開きは、フィルターメーカーにより公称目開きとして提示されている。
【0058】
原液ろ過工程のろ過速度R1は、吸引圧50kPaにおいて、0.005mL/(分・mm)以上であることが好ましく、より好ましくは0.010mL/(分・mm)以上、さらに好ましくは0.015mL/(分・mm)以上である。ろ過速度R1が大きくなるにつれて、原液ろ過工程は効率化する。
【0059】
また、原液ろ過工程のろ過速度R1は、吸引圧50kPaにおいて、10mL/(分・mm)以下であることが好ましく、より好ましくは8mL/(分・mm)以下、さらに好ましくは5mL/(分・mm)以下である。ろ過速度R1が小さくなるにつれて、異物の除去効率が高まり、結果として高品質のシリコン基板の製造に有用な研磨用組成物を得ることがさらに容易となる。
【0060】
第1フィルターに原液の供給を開始してから第1フィルターが目詰まりするまでに第1フィルターを通過する原液の量である第1フィルターのろ過容量V1は、0.1mL/mm以上であることが好ましく、より好ましくは0.2mL/mm以上、さらに好ましくは0.5mL/mm以上である。第1フィルターのろ過容量V1が大きくなるにつれて、原液ろ過工程のランニングコストを削減できる。
【0061】
また、第1フィルターのろ過容量V1は、100mL/mm以下であることが好ましく、より好ましくは50mL/mm以下、さらに好ましくは20mL/mm以下である。第1フィルターのろ過容量V1が小さくなるにつれて、異物の除去効率が高まり、結果として原液ろ過工程は効率化する。
【0062】
なお、本明細書中において、第1フィルターの目詰まりとは、異物等がフィルター上に多量に捕獲されることにより実質的に原液のろ過ができなくなった状態、より具体的には、吸引圧50kPaでのろ過速度R1が0.005mL/(分・mm)以下となった状態をいう。
【0063】
原液ろ過工程を通じて得られたろ液、すなわちろ過後の原液は、希釈工程に供される。
【0064】
希釈工程においてろ過後の原液を希釈するために使用される水は、研磨用組成物の原料として使用することができる水として先に説明したもののいずれであってもよい。ろ過後の原液の希釈は、上述したような混合装置でろ過後の原液を撹拌しながら水を徐々に添加する方法で行うことが好ましい。あるいは、ろ過後の原液に水を添加した後に、上述したような混合装置を使って撹拌してもよい。
【0065】
希釈工程における希釈率Dは、体積換算で2倍以上であることが好ましく、より好ましくは5倍以上、さらに好ましくは10倍以上である。希釈率Dが高くなるにつれて、原液の輸送コストを削減することができ、また、原液の保管に必要なスペースを小さくできる。
【0066】
また、希釈工程における希釈率Dは、体積換算で100倍以下であることが好ましく、より好ましくは50倍以下、さらに好ましくは30倍以下である。希釈率Dが低くなるにつれて、希釈後に得られる希釈液や、その希釈液をろ過して得られる研磨用組成物の安定性を確保することが容易となる。
【0067】
ろ過後の原液を希釈して得られる希釈液は、希釈液ろ過工程に供される。希釈液ろ過工程は、希釈液中に含まれる異物又は凝集物の除去を目的として行われる。希釈液ろ過工程におけるろ過は、常圧状態で行う自然ろ過であってもよいし、吸引ろ過、加圧ろ過、又は遠心ろ過でもよい。
【0068】
希釈液ろ過工程で用いる第2フィルターは、目開きを基準に選択されることが好ましい。第2フィルターの目開きA2は0.05μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上である。目開きA2の拡大につれて、実用的なろ過速度が得られ易くなる。
【0069】
また、第2フィルターの目開きA2は50μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは0.3μm以下である。目開きA2の縮小につれて、高品質のシリコン基板の製造に有用な研磨用組成物を得ることがさらに容易となる。
【0070】
希釈液ろ過工程のろ過速度R2は、吸引圧50kPaにおいて、0.005mL/(分・mm)以上であることが好ましく、より好ましくは0.010mL/(分・mm)以上、さらに好ましくは0.015mL/(分・mm)以上である。ろ過速度R2が大きくなるにつれて、希釈液ろ過工程は効率化する。
【0071】
また、希釈液ろ過工程のろ過速度R2は、吸引圧50kPaにおいて、10mL/(分・mm)以下であることが好ましく、より好ましくは8mL/(分・mm)以下、さらに好ましくは5mL/(分・mm)以下である。ろ過速度R2が小さくなるにつれて、異物の除去効率が高まり、結果として高品質のシリコン基板の製造に有用な研磨用組成物を得ることがさらに容易となる。
【0072】
第2フィルターに希釈液の供給を開始してから第2フィルターが目詰まりするまでに第2フィルターを通過する希釈液の量である第2フィルターのろ過容量V2は、0.1mL/mm以上であることが好ましく、より好ましくは0.2mL/mm以上、さらに好ましくは0.3mL/mm以上である。第2フィルターのろ過容量V2が大きくなるにつれて、希釈液ろ過工程のランニングコストを削減できる。
【0073】
また、第2フィルターのろ過容量V2は、10mL/mm以下であることが好ましく、より好ましくは8mL/mm以下、さらに好ましくは5mL/mm以下である。第2フィルターのろ過容量V2が小さくなるにつれて、異物の除去効率が高まり、結果として希釈液ろ過工程は効率化する。
【0074】
なお、本明細書中において、第2フィルターの目詰まりとは、異物や凝集物等がフィルター上に多量に捕獲されることにより実質的に希釈液のろ過ができなくなった状態、より具体的には、吸引圧50kPaでのろ過速度R2が0.005mL/(分・mm)以下となった状態をいう。
【0075】
第1フィルターの目開きA1に対する第2フィルターの目開きA2の比率A2/A1は、0.001〜1000の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.005〜100の範囲、さらに好ましくは0.1〜10の範囲である。この比率A2/A1が0.001以上の場合、希釈液ろ過工程における異物や凝集物の除去効率が高まり、結果として希釈液ろ過工程の効率が高まる。比率A2/A1が1000以下の場合、希釈液ろ過工程におけるろ過が精密になる。
【0076】
原液ろ過工程のろ過速度R1に対する希釈液ろ過工程のろ過速度R2の比率R2/R1は、0.001〜1000の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.005〜10の範囲、さらに好ましくは0.01〜5の範囲である。比率R2/R1が0.001以上の場合、希釈液ろ過工程における異物や凝集物の除去効率が高まり、結果として希釈液ろ過工程の効率が高まる。比率R2/R1が1000以下の場合、希釈液ろ過工程におけるろ過が精密になる。
【0077】
第1フィルター及び第2フィルターの材質は、水系溶媒中の粒子除去に適した材質であれば特に限定されない。第1フィルター及び第2フィルターの材質の具体例としては、セルロース、ナイロン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリカーボネート等が挙げられる。ろ過精度の観点からはナイロン、ポリプロピレン、ポリエーテルスルホンが好適であり、さらにフィルターライフの観点も考慮するとポリプロピレンがより好適である。
【0078】
第1フィルター及び第2フィルターは、例えばメンブレンフィルター又はデプスフィルターであってもよい。第1フィルター及び第2フィルターの形状は特に限定されず、例えば平膜状、プリーツ状、中空糸状であってもよい。
【0079】
なお、第1フィルターと第2フィルターは、材質、種類及び形状がすべて同じであってもよいし、材質、種類及び形状のうち少なくともいずれかが互いに異なってもよい。
【0080】
次に、研磨用組成物を用いたシリコン基板の製造方法について、研磨用組成物の作用とともに説明する。
【0081】
研磨用組成物は、シリコンインゴットから切り出されたシリコン基板原料を研磨対象としたラッピング加工、ポリッシング加工等の研磨工程に用いることができる。具体的には、研磨対象となる面に研磨用組成物を供給しながら研磨パッドを押し付けて、シリコン基板原料及び研磨パッドを回転させる。
【0082】
研磨用組成物は、上述したように原液調製工程、原液ろ過工程、希釈工程、及び希釈液ろ過工程を通じて得られるろ過後の希釈液からなる。原液中に含まれる異物が原液ろ過工程で削減されているため、原液の保管時、輸送時又は希釈時に、原液中の異物を核とした凝集物の形成が起こり難い。また、研磨用組成物中に含まれる異物や凝集物が希釈液ろ過工程で削減されているため、シリコン基板原料やシリコン基板は、研磨用組成物中の異物又は凝集物による悪影響を受け難い。
【0083】
研磨工程後のシリコン基板をリンスしてさらに乾燥することで、研磨製品のシリコン基板が得られる。
【0084】
本実施形態の研磨用組成物は、それが上述した砥粒、水溶性高分子、及び水を含有する場合でかつシリコン基板原料の最終研磨に使用される場合に特に利用価値が高い。こうした研磨用組成物の場合、水溶性高分子によって研磨用組成物中の砥粒や異物等の粒子状物質の間で橋かけ凝集が起こるおそれがある。この橋かけ凝集はろ過後の原液を水で希釈する希釈工程で発生し易い傾向にあり、希釈工程で生じた橋かけ凝集物は研磨用組成物中で再分散しないまま残ることが多い。最終研磨後のシリコン基板上に橋かけ凝集物が残留した場合、LPD(Light Point Defect)と呼ばれる表面欠陥を招くおそれがある。この点、本実施形態の研磨用組成物は、希釈工程で得られる希釈液をろ過する希釈液ろ過工程を経て製造されているため、最終研磨後のシリコン基板上に橋かけ凝集物が残留するのを抑制することができる。また、原液ろ過工程によってろ過後の原液中には凝集物も少ないため、希釈液ろ過工程の前後における凝集物の削減効果が相乗的に発揮されることが期待される。
【0085】
研磨用組成物をシリコン基板原料の最終研磨に使用する場合には、研磨用組成物中に含まれる0.7μm以上の大きさの粗大粒子の数はできるだけ少ないことが望ましい。具体的には、研磨用組成物中に含まれる0.7μm以上の粗大粒子の数は、1mL当たり2000個以下であることが好ましく、より好ましくは1mL当たり1500個以下、さらに好ましくは1mL当たり1300個以下である。研磨用組成物中の粗大粒子の数は希釈液ろ過工程で低減することができる。
【0086】
以上詳述した本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
【0087】
(1)本実施形態の研磨用組成物は、研磨用組成物の原液をろ過した後、ろ過後の原液を希釈してさらにろ過する過程を経て製造される。これにより、研磨用組成物中に含まれる異物や凝集物が削減されているため、研磨用組成物を用いて製造される研磨製品は、研磨用組成物中の異物又は凝集物による悪影響を受け難い。従って、高品質の研磨製品を得ることが容易である。
【0088】
(2)シリコン基板原料を研磨する用途で本実施形態の研磨用組成物を使用した場合には、高品質のシリコン基板を得ることが容易である。
【0089】
(3)本実施形態の研磨用組成物の製造方法によれば、原液をろ過した後、ろ過後の原液を希釈してさらにろ過する過程を経ることにより、高品質の研磨製品の製造に有用な研磨用組成物を容易に得ることができる。
【0090】
(4)本実施形態の研磨用組成物を用いてシリコン基板原料を研磨する工程を含むシリコン基板の製造方法によれば、高品質のシリコン基板を容易に得ることができる。
【0091】
(5)本実施形態の研磨用組成物を用いてシリコン基板原料を研磨して得られるシリコン基板は、研磨用組成物中の異物や凝集物といった粗大粒子が原因で生じるLPDが少なく高品質である。
【0092】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について第1実施形態と異なる点を中心に説明する。この実施形態では、原液を希釈する以前の工程が第1実施形態と異なっている。
【0093】
第2実施形態の研磨用組成物は、原料ろ過工程、原液調製工程、希釈工程、及び希釈液ろ過工程を含む方法で製造される。
【0094】
原料ろ過工程では、研磨用組成物の原料の少なくとも一部のろ過が行われる。原液調製工程では、少なくとも一部がろ過された研磨用組成物の原料を混合して原液の調製が行われる。希釈工程では、原液を希釈して希釈液を得ることが行われる。希釈液ろ過工程では、希釈液をろ過することが行われる。第2実施形態の研磨用組成物は、希釈液ろ過工程で得られるろ液、すなわちろ過後の希釈液からなる。
【0095】
原料ろ過工程においてろ過される少なくとも一部の原料は、異物が混入している可能性の高いものや、異物の混入量が多いものであることが好ましい。そのような少なくとも一部の原料は、例えば、水と水溶性高分子との混合液、砥粒の水分散液等の液体の形でろ過に供される。それ以外については、原料ろ過工程は、第1実施形態の説明の中で述べた原液ろ過工程と同様に実施することができる。
【0096】
少なくとも一部がろ過された研磨用組成物の原料を混合して原液を調製する原液調製工程は、第1実施形態の説明の中で述べた原液調製工程と同様に実施することができる。
【0097】
原液中に含まれる異物が原料ろ過工程で削減されているため、原液の保管時、輸送時又は希釈時に、原液中の異物を核とした凝集物の形成が起こり難い。
【0098】
第2実施形態によれば、第1実施形態の効果として上記(1)〜(5)で述べたのと同様の効果が得られる。また、第1実施形態の場合は原液全体に含まれる異物を削減できる有利があるが、第2実施形態の場合は、例えば、異物が混入している可能性の高い一部の原料のみをろ過することができるため、ろ過の効率を高めることが容易となる。
【0099】
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態について第1及び第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0100】
第3実施形態の研磨用組成物は、原料ろ過工程、原液調製工程、原液ろ過工程、希釈工程、及び希釈液ろ過工程を含む方法で製造される。
【0101】
原料ろ過工程では、研磨用組成物の原料の少なくとも一部のろ過が行われる。原液調製工程では、少なくとも一部がろ過された研磨用組成物の原料を混合して原液の調製が行われる。原液ろ過工程では、原液のろ過が行われる。希釈工程では、ろ過後の原液を希釈して希釈液を得ることが行われる。希釈液ろ過工程では、希釈液をろ過することが行われる。第3実施形態の研磨用組成物は、希釈液ろ過工程で得られるろ液、すなわちろ過後の希釈液からなる。
【0102】
第3実施形態によれば、第1実施形態の効果として上記(1)〜(5)で述べたのと同様の効果が得られる。また、原料ろ過工程及び原液ろ過工程が行われることで、希釈液ろ過工程の前後における凝集物の削減効果が相乗的に発揮されることが期待される。
【0103】
なお、前記実施形態は次のように変更されてもよい。
【0104】
・研磨用組成物は、防腐剤、防カビ剤等の公知の添加剤を原料としてさらに含んでもよい。防腐剤及び防カビ剤の具体例としては、イソチアゾリン系化合物、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0105】
・研磨用組成物の製造方法は、異物を含んでいる可能性の低い原料や凝集を起こす可能性の低い原料を、ろ過後の原液やろ過後の希釈液、すなわち原液ろ過工程で得られるろ液や希釈液ろ過工程で得られるろ液に添加する工程をさらに含んでもよい。
【0106】
・原料ろ過工程、原液ろ過工程及び希釈液ろ過工程はそれぞれ、一段階で行ってもよいし、複数の段階に分けて行ってもよい。各ろ過工程を複数の段階に分けて行う場合は、各段階で使用されるフィルターは同じ種類であってもよいし、例えば目開きや材質の異なるフィルターを各段階で用いてもよい。各段階で目開きの異なるフィルターを使用する場合は、前段階から後段階に向かうにつれて、使用されるフィルターの目開きが細かくなることが好ましい。
【0107】
・原料ろ過工程、原液ろ過工程及び希釈液ろ過工程は、バッチ式ろ過で行ってもよいし、循環式ろ過で行ってもよい。
【0108】
・砥粒の形状は、球形であってもよいし、中央部にくびれを有する繭型形状、複数の突起を表面に有する金平糖形状、ラグビーボール形状等の非球形であってもよい。
【0109】
・研磨用組成物を用いた研磨で使用される研磨パッドは、特に限定されないが、不織布タイプ、スウェードタイプ、砥粒を含むもの、砥粒を含まないもののいずれでもよい。
【0110】
・研磨用組成物は、一剤型であってもよいし、二剤以上から構成する多剤型であってもよい。
【0111】
・研磨用組成物は、シリコン基板以外の研磨製品、例えば、酸化シリコン基板、プラスチック基板、ガラス基板、石英基板等の製造のために使用されてもよい。その場合も、研磨用組成物中に含まれる異物や凝集物が少ないため、高品質の研磨製品を得ることが容易である。研磨用組成物の原料は、研磨用組成物を用いて製造しようとする研磨製品に応じて適宜変更されてもよく、例えば樹脂粒子を含んでもよい。
【0112】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0113】
シリコン基板の最終研磨に使用される研磨用組成物を製造する方法であって、
砥粒、水溶性高分子、及び水を含んだ原液をろ過する工程と、
ろ過後の原液を希釈して希釈液を得る工程と、
前記希釈液をろ過する工程とを含み、
前記希釈液をろ過する工程は、研磨用組成物中に含まれる0.7μm以上の大きさの粗大粒子の数を低減するために行われることを特徴とする方法。
【0114】
研磨用組成物の原料の少なくとも一部をろ過する工程と、
少なくとも一部がろ過された前記原料を混合して原液を調製する工程と、
前記原液をろ過する工程と、
ろ過後の原液を希釈して希釈液を得る工程と、
前記希釈液をろ過する工程と
を通じて得られるろ過後の希釈液により構成されることを特徴とする研磨用組成物。
【実施例】
【0115】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0116】
BET法で測定される比表面積から求められる平均一次粒子径が35nmのコロイダルシリカ9質量%、アンモニア0.2質量%、重量平均分子量250,000のヒドロキシエチルセルロース0.3質量%、重量平均分子量45,000のポリビニルピロリドン0.17質量%、重量平均分子量9,000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体0.01質量%、及びクエン酸三アンモニウム0.2質量%をイオン交換水に混合して研磨用組成物の原液を調製した(原液調製工程)。そして、その原液をろ過し、ろ過後の原液を希釈して希釈液を得た後、その希釈液をろ過することにより、実施例1〜6及び比較例1〜3の研磨用組成物を調製した。より具体的には、原液のろ過については、表1の“A1”欄に記載したサイズの目開きを有するフィルターを用いて表2に記載した条件で行い、その結果、表1の“R1”欄に記載した値のろ過速度が得られた。ろ過後の原液の希釈については、ろ過後の原液を、ホモジナイザーを使って撹拌しながら純水で20倍の体積に希釈した。希釈液のろ過については、表1の“A2”欄に記載したサイズの目開きを有するフィルターを用いて表2に記載した条件で行い、その結果、表1の“R2”欄に記載した値のろ過速度が得られた。なお、比較例1の研磨用組成物の調製は、希釈液のろ過を省略して行い、比較例2の研磨用組成物の調製は、原液のろ過を省略して行い、比較例3の研磨用組成物の調製は、原液のろ過と希釈液のろ過の両方を省略して行った。
【0117】
各研磨用組成物中に含まれる0.7μm以上の大きさの粗大粒子の数を計測した。この計測は、Particle Sizing Systems社製AccuSizerFXを用いて行った。その結果を表1の“LPC(Large Particle Count)”欄に示す。
【0118】
各研磨用組成物を用いて、シリコン基板原料の表面を表3に記載の条件で研磨した。使用したシリコン基板原料は、直径が300mm、伝導型がP型、結晶方位が<100>、抵抗率が0.1Ω・cm以上100Ω・cm未満であり、株式会社フジミインコーポレーテッド製の研磨スラリー(商品名GLANZOX 1103)を用いて予備研磨したものである。ケーエルエー・テンコール社製のウェーハ検査装置Surfscan SP2を用いて、研磨後のシリコン基板の表面に存在する37nm以上の大きさのパーティクルの個数を計測した。その結果を表1の“パーティクル”欄に示す。
【0119】
実施例1〜6及び比較例1〜3の研磨用組成物の調製に使用した上記の原液を、目開きが0.2μmのフィルターを用いて表2に記載した条件でろ過した。ろ過後の原液を、ホモジナイザーを使って撹拌しながら純水で20倍の体積に希釈した。得られた希釈液を、表4の“フィルター材質”欄及び“フィルター構造”欄に記載の材質及び構造を有する直径が47mmで目開きが0.45μmの各ディスクフィルターを用いて、ろ過差圧5kPaで吸引ろ過した。吸引ろ過を開始してからフィルターが目詰まりするまでにフィルターを通過した研磨用組成物の量が2Lを超える場合にはA、2L以下の場合にはBと評価した結果を表4の“フィルターライフ”欄に示す。また、各フィルターを用いた吸引ろ過の結果得られたろ液中に含まれる0.7μm以上の大きさの粗大粒子の数を、Particle Sizing Systems社製AccuSizerFXを用いて測定した。この粗大粒子の数が200個/mL未満である場合にはA、200個/mL以上である場合にはBと評価した結果を表4の“ろ過精度”欄に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】
【0122】
【表3】
【0123】
【表4】
表1に示すように、実施例1〜6の研磨用組成物は、比較例1〜3の研磨用組成物に比べて、LPCの計測値が低かった。さらに、実施例1〜6の研磨用組成物を用いた場合には、比較例1〜3の研磨用組成物を用いた場合に比べて、パーティクルの計測値が低かった。この結果から、原液のろ過と希釈液のろ過の両方を経て製造される研磨用組成物は、研磨用組成物中の粗大粒子が研磨製品上に残留することの少ない高品質の研磨製品の製造に有用であることが分かる。
【0124】
また、表4に示す結果からは、ナイロン66、ポリプロピレン、又はポリエーテルスルホンからなるフィルターを用いることにより、より良好なろ過精度が得られること、また、ポリプロピレンからなるフィルターを用いた場合には、さらにフィルターライフも向上することが分かる。