特許第5874377号(P5874377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5874377ジルコニア混合粉末及び灰色ジルコニア焼結体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5874377
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】ジルコニア混合粉末及び灰色ジルコニア焼結体
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/48 20060101AFI20160218BHJP
   C01G 25/02 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   C04B35/48 Z
   C01G25/02
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-277593(P2011-277593)
(22)【出願日】2011年12月19日
(65)【公開番号】特開2013-126933(P2013-126933A)
(43)【公開日】2013年6月27日
【審査請求日】2014年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本村 通
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 武志
【審査官】 佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−081562(JP,A)
【文献】 特開2011−020879(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/108416(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/48
C01G 25/02
CAplus(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.01重量%以上0.5重量%以下のコバルトアルミネート、20重量%以上30重量%以下のアルミナ、及び、安定化剤を含んだジルコニアからなることを特徴とするジルコニア混合粉末。
【請求項2】
請求項1に記載のジルコニア混合粉末を使用することを特徴とするルコニア焼結体の製造方法。
【請求項3】
0.01重量%以上0.5重量%以下のコバルトアルミネート、20重量%以上30重量%以下のアルミナ、及び、安定化剤を含んだジルコニアからなり、ハンター表色系において、W値が65以上85以下、L値が60以上85以下、a値が−5以上5以下、b値が−5以上5以下であることを特徴とするルコニア焼結体。
【請求項4】
三点曲げ強度が1000MPa以上であることを特徴とする請求項3に記載のルコニア焼結体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑味や赤味を帯びていない純粋な灰色、すなわち、色味を帯びない灰色を呈する灰色ジルコニア焼結体、これを得るためのジルコニア混合粉末及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
着色ジルコニア焼結体は、その高い強度と鏡面研磨後の表面光沢の美しさから、時計バンドやアクセサリー等の装飾性の高い部材に用いられている。最近はこれらの用途に加え、高級建材、各種構造部材等の機械部材、電子部品基板等のセラミックス電子部材、携帯電話、モバイル家電製品等の外装部材等への適用と、着色ジルコニア焼結体の用途は広がっている。
【0003】
黒色や黒色に近い色調を呈する着色ジルコニア焼結体、いわゆる黒色系の呈色を有する着色ジルコニア焼結体は高級感を呈す。そのため、従来から、着色ジルコニア焼結体の中でも、黒色系の着色ジルコニア焼結体が特に好まれている。さらに、用途の広がりにおいて、黒色系以外の新規な色調を有する着色ジルコニア焼結体として、特に灰色を呈する着色ジルコニア焼結体が強く望まれている。
【0004】
灰色を呈する着色ジルコニア焼結体として、ジルコン(ZrSi(Ni・Co)O)を着色剤として含有する灰色ジルコニア焼結体が報告されている(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、ジルコンは多元素系の着色剤であり、所望の色を得るための着色剤の組成の調整が難しかった。さらには、着色剤の調整の際は各成分を均一に混合することが必要であった。さらに、この灰色ジルコニア焼結体は他色の色調を有する灰色を呈しており、色味のない真の灰色に近い色調とは異なる色調を呈していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−020879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これまで純粋な灰色を呈する着色ジルコニア焼結体、即ち、色味を帯びていない灰色を呈する着色ジルコニア焼結体及びこれを得るための原料粉末については報告されていなかった。従来の灰色ジルコニア焼結体としては灰色系統の色を呈する焼結体は知られていた。しかしながら、これらの灰色ジルコニア焼結体は緑味、赤味などの色味を帯びた灰色を呈するものであった。さらに、従来の着色ジルコニア焼結体用の原料粉末としては、漠然と着色元素及びその複合酸化物が羅列されているにすぎず、色味の帯びていない灰色を呈する灰色ジルコニア焼結体が得られる原料粉末は開示されていなかった。
【0008】
本発明は、緑味、赤味などの色味を帯びていない灰色、いわゆる、純粋な灰色を呈する灰色ジルコニア焼結体を提供することを目的の一つとする。さらには、このような灰色ジルコニア焼結体を得ることができるジルコニア混合粉末を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題に鑑み、本発明者らは鋭意検討した。その結果、コバルトアルミネート及びアルミナの両者を一定量含有するジルコニア混合粉末が緑味、赤味などの色味を帯びていない、純粋な灰色を呈する灰色ジルコニア焼結体を与えることを見出した。
【0010】
従来、コバルトアルミネートは青色の着色剤、すなわち、色味を帯びさせることを目的とした着色ジルコニア焼結体の着色剤として用いられている。これに対し、本発明では、コバルトアルミネートを使用することで色味を帯びさせない灰色を得たものである。
【0011】
すなわち、本発明は0.01重量%以上0.5重量%以下のコバルトアルミネート、20重量%以上30重量%以下のアルミナを含有するジルコニア混合粉末である。
【0012】
以下、本発明のジルコニア混合粉末について説明する。
【0013】
本発明のジルコニア混合粉末に含まれるジルコニアは、安定化剤を含んだジルコニア、いわゆる部分安定化ジルコニアである。安定化剤はイットリア(Y)であることが好ましい。安定化剤の含有量は2〜4mol%であることが好ましい。これにより、結晶構造が立方晶のジルコニアが得られる。なお、安定化剤の含有量(mol%)は、ジルコニア混合粉末中のジルコニア及び安定化剤の合計に対する安定化剤の割合であり、以下の(1)式により求めることができる。
【0014】
安定化剤(mol)/{安定化剤(mol)+ジルコニア(mol)}×100
・・・・(1)
【0015】
本発明のジルコニア混合粉末は、コバルトアルミネートを含有する。コバルトアルミネートは、コバルト(Co)及びアルミニウム(Al)を含む複合酸化物であり、CoAlで表される酸化物であることが好ましい。
【0016】
本発明のジルコニア混合粉末は、コバルトアルミネートを0.01重量%以上0.5重量%以下含有する。コバルトアルミネートの含有量が0.01重量%未満であると、これを焼成して得られる焼結体が色味を帯びていない純粋な灰色を呈する。コバルトアルミネートの含有量は0.03重量%以上であることが好ましく、0.1重量%以上であることがより好ましい。一方、コバルトアルミネートの含有量が0.5重量%を超えると、得られるジルコニア焼結体の色調が特にb値が低くなり、色味を帯びた灰色となる。そのため、コバルトアルミネートの含有量の上限は0.5重量%以下であり、0.4重量%以下であることが好ましい。
【0017】
本発明のジルコニア混合粉末は、アルミナ(Al)を含有する。これにより、白色度を調整することができる。アルミナの含有量は、20重量%以上30重量%以下であり、24重量%以上30重量%以下であることが好ましい。上記のコバルトアルミネートの含有量に、この範囲のアルミナの含有量とすることで、これを焼成していられる灰色ジルコニア焼結体の色調が、色味を帯びていない灰色を呈する。
【0018】
なお、コバルトアルミネートの含有量、及び、アルミナの含有量は、それぞれ本発明のジルコニア混合粉末に対する重量の割合であり、以下の(2)式、及び、(3)式で求めることができる。
【0019】
コバルトアルミネート/(安定化剤+ジルコニア+コバルトアルミネート+アルミナ)
・・・・(2)
【0020】
アルミナ/(安定化剤+ジルコニア+コバルトアルミネート+アルミナ)
・・・・(3)
【0021】
本発明のジルコニア混合粉末は、上記の組成を有していれば、その粉末物性は適宜選択することができる。好ましい粉末物性として、例えば、BET比表面積が5m/g以上20m/g以下、及び、平均粒子径が0.3μm以上0.8μm以下を挙げることができる。
【0022】
次に、本発明のジルコニア混合粉末の製造方法について説明する。
【0023】
本発明のジルコニア混合粉末は、上記の組成を有し、なおかつ、ジルコニア混合粉末全体として均一な組成となっていればよい。好ましい製造方法として、ジルコニア粉末、コバルトアルミネート粉末及びアルミナ粉末を混合し、顆粒化する製造方法を挙げることができる。
【0024】
本発明のジルコニア混合粉末に用いるジルコニア粉末は、安定化剤としてイットリアを2〜4mol%含有し、立方晶の結晶構造を有し、結晶子径が200Å以上400Å以下、BET比表面積が5m/g以上20m/g以下、平均粒子径が0.4μm以上0.7μm以下のジルコニア粉末であることが好ましい。
【0025】
このようなジルコニア粉末は、例えば、平均粒子径が0.05〜0.3μmのジルコニアゾルをか焼して得られたジルコニア粉末を挙げることができる。ジルコニアゾルをか焼する温度は700℃以上1200℃以下であることが好ましい。これにより、BET比表面積が5m/g以上20m/g以下のジルコニア粉末が得られやすくなる。
【0026】
本発明のジルコニア混合粉末に用いるコバルトアルミネート粉末は、その平均粒子径が1μm以下であることが好ましく、0.3μm以上0.8μm以下であることがより好ましい。コバルトアルミネート粉末の平均粒子径がこの範囲であることでジルコニア粉末と混合しやすくなる。
【0027】
混合するコバルトアルミネート粉末の混合量は0.01重量%以上0.5重量%以下であることが好ましく、0.03重量%以上であることがより好ましく、0.1重量%以上であることが更に好ましい。一方、コバルトアルミネート粉末の混合量の上限は0.5重量%以下であることが好ましく、0.4重量%以下であることがより好ましい。コバルトアルミネート粉末の混合量をこの範囲とすることで、これを焼結して得られる灰色ジルコニア焼結体の色調が色味を帯びていない灰色となりやすい。
【0028】
本発明のジルコニア混合粉末に用いるアルミナ粉末は、その平均粒子径0.1μm以上0.5μm以下であることが好ましく、0.3μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。アルミナ粉末の平均粒子径がこの範囲であることでジルコニア粉末との混合しやすくなる。
【0029】
アルミナ粉末の混合量は、20重量%以上30重量%以下であることが好ましく、24重量%以上30重量%以下であることがより好ましい。
【0030】
ジルコニア粉末、コバルトアルミネート粉末、及び、アルミナ粉末を混合することでジルコニア混合粉末を得ることができる。これらの粉末の混合方法は得られるジルコニア混合粉末の組成が均一になれば適宜選択することができ、湿式混合、粉砕混合のいずれも使用することができる。
【0031】
本発明のジルコニア混合粉末の製造方法では、混合後のジルコニア混合粉末を顆粒化することが好ましい。これにより、流れ性に優れ、得られる成形体の密度が高くなりやすい。好ましい顆粒としては、平均課粒径が40μm以上70μm以下、軽装嵩密度が1.0g/cm以上1.3g/cm以下のジルコニア混合粉末顆粒を例示することができる。
【0032】
顆粒化の方法として、混合後の粉末を水に懸濁させてジルコニア濃度が40〜60重量%のスラリーとし、これを噴霧乾燥して顆粒化する方法を挙げることができる。
【0033】
本発明のジルコニア混合粉末を成形、焼成することで灰色ジルコニア焼結体を得ることができる。
【0034】
成形条件は特に限定されず、本発明のジルコニア混合粉末又はジルコニア混合粉末顆粒を冷間静水圧プレス(CIP)または一軸プレス法を用いて所定の形状に成形することができる。また、目的に応じて射出成形法や鋳込み成形法等を適用することもできる。この際、得られる成形体としては、その軽装嵩密度が2.4g/cm以上となるようにすることが好ましい。また、本発明のジルコニア混合粉末又はジルコニア混合粉末顆粒の軽装嵩密度は2.9g/cm以下であれば、これを焼成することで得られる焼結体の密度が高くなりやすい。
【0035】
得られた成形体を焼成することで灰色ジルコニア焼結体を得ることができる。焼成条件は適宜選択でき、1400℃以上1600℃以下で焼成することが好ましく、1400℃以上1550℃以下で焼成することがより好ましく、1400℃以上1500℃以下で焼成することがさらに好ましい。
【0036】
このように、本発明の灰色ジルコニア焼結体はコバルトアルミネート及びアルミナの両者を含有する。これにより初めて塩ビのような色味を帯びない灰色を呈し、なおかつジルコニア特有の重厚感を有した色調を呈する焼結体とすることができる。
【0037】
本発明の灰色ジルコニア焼結体は、その色調がハンター表色系において、a値が−5以上5以下、b値が−5以上5以下であることが好ましい。また、a値が−5以上5以下であることで、赤味及び緑味のいずれの色味を帯びない灰色を呈色することができる。同様に、b値が−5以上5以下であることで青味及び黄色味を帯びない灰色を呈色することができる。なお、a値及びb値の両者を満たすことで初めて色味を帯びていない灰色をとなる。
【0038】
本発明の灰色ジルコニア焼結体はW値が65以上85以下であることが好ましい。W値は白色及び黒色の濃淡を決めるパラメータである。W値が65以上85以下であることで黒色と白色の中間色、すなわち灰色を呈する灰色ジルコニア焼結体となる。同様な理由により、L値が65以上85以下であることが好ましい。
【0039】
本発明の灰色ジルコニア焼結体は機械的強度が高いことが好ましい。これにより、本発明の灰色ジルコニア焼結体が強度を求められる用途にも適用できるようになり、その用途範囲が広がる。そのため、本発明の灰色ジルコニア焼結体は、三点曲げ強度が1000MPa以上であることが好ましく、1100MPa以上であることがより好ましく、1130MPa以上であることが更に好ましい。また、三点曲げ強度は高いほど好ましいが、その上限として1300MPa以下を例示することができる。
【0040】
本発明の灰色ジルコニア焼結体は、その密度が5.0g/cm以上6.1g/cm以下であることが好ましく、5.3g/cm以上5.5g/cm以下であることがより好ましい。密度がこの範囲であることで、焼結体全体として色ムラがなく呈色をする灰色ジルコニア焼結体となる傾向にある。
【0041】
本発明の灰色ジルコニア焼結体は、その平均結晶粒子径が0.7μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。これにより、本発明のジルコニア焼結体の機械的強度が高くなりやすい。なお、平均結晶粒子径は0.2μm以上であれば、1000MPa以上の高い曲げ強度を有する焼結体を得ることができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明のジルコニア混合粉末により緑味、赤味などの色味を帯びていない灰色の色調、すなわち、塩ビの様な純粋な灰色の色調を呈し、なおかつ、ジルコニア特有の重厚感を有する灰色ジルコニア焼結体を得ることができる。さらに、本発明の灰色ジルコニア焼結体は、鏡面研磨後の表面光沢が美しいだけでなく、強度が高いため装飾性の高い用途や各種外装部材など幅広い用途に用いることができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を具体的に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(平均粒子径、平均顆粒径の測定)
例中、ジルコニア粉末の平均粒子径は、マイクロトラック粒度分布計(Honeywell社製,9320−HRA)を用いて測定した。試料の前処理条件としては、粉末を蒸留水に懸濁させ、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製,US−150T)を用いて3分間分散させた。
【0044】
また、ジルコニア混合粉末顆粒の平均顆粒径は、JIS R−1639−1に準じたふるい分け試験方法によって測定した。
(曲げ強度の測定)
JIS R 1601に準拠した試験法により焼結体の曲げ強度を測定した。測定用試料は、縦3mm×横4mm×長さ40mmの形状に加工して作製した。測定用試験片10本について3点曲げ強度を測定し、得られた10本の平均値を平均曲げ強度とした。
(軽装嵩密度の測定)
JIS R1628に準じて軽装嵩密度を測定した。
(焼結体密度の測定)
焼結体の実測密度はアルキメデス法により測定した。理論密度に対する実測密度の割合を相対密度とした。なお、理論密度は5.51g/cmとした。
(平均結晶粒子径の測定)
焼結体の表面を研磨し、焼結体の結晶粒子径を走査型電子顕微鏡により測定した。倍率10,000倍で観察した焼結体のSEM写真から、プラニメトリック法により平均結晶粒子径とした。
(色調の測定)
ジルコニア焼結体の色調を色差計(日本電色製 Z−300A)を用いて測定した。光源にはD65光源を用い、10度視野角の条件において、焼結体表面の反射光からハンターLab系の明度L、色相a、b、及び、白色度Wを測定した。
【0045】
実施例1
オキシ塩化ジルコニウム濃度が0.3mol/Lのオキシ塩化ジルコニウム水溶液を還流しながら200時間煮沸して平均粒子径が0.11μmの水和ジルコニアゾルを含む水和ジルコニアゾル水溶液を得、これと酸化イットリウム(Y)とから、Yを3mol%含有するジルコニア粉末を得た。得られたジルコニア粉末に蒸留水を添加し、ジルコニア濃度45重量%のジルコニアスラリーとした。得られたジルコニアスラリーを振動ミルで8時間粉砕した後に、110℃で乾燥した。乾燥後のジルコニア粉末の評価結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
このジルコニア粉末に、アルミナ含有量が24.8重量%及びコバルトアルミネート含有量が0.2重量%となるようにアルミナ粉末及びコバルトアルミネート粉末をボールミルで湿式粉砕して組成が均一になるまで混合し、実施例1のジルコニア混合粉末を得た。
【0048】
なお、アルミナ粉末として平均粒子径0.3μmのアルミナ粉末、及び、コバルトアルミネート粉末として平均粒子径0.8μmコバルトアルミネート粉末を用いた。
【0049】
得られたジルコニア混合粉末に純水を添加して、50重量%のスラリーとした後、これを噴霧乾燥してジルコニア混合粉末顆粒を得た。得られたジルコニア混合粉末顆粒は、軽装嵩密度が1.26g/cm、平均顆粒径が60μmであった。
【0050】
得られたジルコニア混合粉末顆粒を成形圧700kg/cmで一軸プレス成形し、57mm×34mmの板状の成形体を得た。得られた成形体の密度は2.60g/cmであった。
【0051】
得られた成形体を大気中、1500℃で2時間焼結して灰色ジルコニア焼結体を得た。
得られた灰色ジルコニア焼結体の組成を表2に、評価結果を表3に示す。
【0052】
実施例2
ジルコニア粉末にコバルトアルミネート含有量が0.1重量%となるようにコバルトアルミネート粉末を混合したこと以外は実施例1と同様な方法により灰色ジルコニア焼結体を得た。得られた灰色ジルコニア焼結体の組成を表2に、評価結果を表3に示す。
【0053】
実施例3
ジルコニア粉末にコバルトアルミネート含有量が0.3重量%となるようにコバルトアルミネート粉末を混合したこと以外は実施例1と同様な方法により灰色ジルコニア焼結体を得た。得られた灰色ジルコニア焼結体の組成を表2に、評価結果を表3に示す。
【0054】
実施例4
ジルコニア粉末にコバルトアルミネート含有量が0.03重量%となるようにコバルトアルミネート粉末を混合したこと以外は実施例1と同様な方法により灰色ジルコニア焼結体を得た。得られた灰色ジルコニア焼結体の組成を表2に、評価結果を表3に示す。
【0055】
比較例1
ジルコニア粉末に、アルミナ含有量が19.75重量%となるようにアルミナ粉末を混合したこと、及び、コバルトアルミネートを添加しなかったこと、すなわち、ジルコニア混合粉末中のコバルトアルミネート含有量を0重量%としたこと以外は実施例1と同様な方法によりジルコニア焼結体を得た。得られた灰色ジルコニア焼結体の組成を表2に、評価結果を表3に示す。
【0056】
比較例2
ジルコニア粉末にコバルトアルミネート含有量が0.5重量%となるようにコバルトアルミネート粉末を混合したこと以外は実施例1と同様な方法によりジルコニア焼結体を得た。得られた灰色ジルコニア焼結体の組成を表2に、評価結果を表3に示す。
【0057】
比較例3
ジルコニア粉末にコバルトアルミネート含有量が0.7重量%となるようにコバルトアルミネート粉末を混合したこと以外は実施例1と同様な方法によりジルコニア焼結体を得た。得られた灰色ジルコニア焼結体の組成を表2に、評価結果を表3に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のジルコニア混合粉末は、色味を帯びていない純粋な灰色ジルコニア焼結体を与える。そのため、これを焼結して得られる本発明の灰色ジルコニア焼結体は、純粋な灰色を呈する灰色ジルコニア焼結体となり、時計バンドやアクセサリー等の装飾性の高い部材や、高級建材、各種構造部材等の機械部材、電子部品基板等のセラミックス電子部材、携帯電話、モバイル家電製品等の外装部材等への適用と、広範囲に利用される可能性を有している。