【実施例】
【0055】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本実施例で用いた分析機器及び測定方法を以下に列記する。
【0056】
[NMR測定]
装置:VARIAN製、Gemini−200
[赤外分光分析]
装置:パーキンエルマー製、System2000 FT IR
測定方法:KBr法
[GC測定]
装置:Shimadzu製、GC―2014
[GPC測定]
装置:東ソー製、HLC−8200、
カラム:東ソー製、G4000HXL−G3000HXL−G2000HXL
[表面抵抗測定]
装置:三菱油化製、Loresta IP MCP−250
[膜厚測定]
装置:ミツトヨ製、マイクロメーター MDC−25L
実施例1(a)により一般式(5)の化合物を合成した後、一般式(1)の化合物を合成)
a)N−ベンジルアリールアミンポリマー(14)の合成(合成例1)
冷却管、温度計、攪拌羽根を装着した3000mLの四つ口セパラブルフラスコに、室温下で4、4’−ジヨードビフェニル121.8g(300mmol)、ベンジルアミン35.4g(330mmol)、97%ナトリウム−tert−ブトキシド69.2g(720mol;ヨウ素原子に対して1.2当量)及びo−キシレン2100gを仕込んだ。この混合液に予め窒素雰囲気下で調製したトリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム錯体1370mg(1.5mmol)及び25重量%トリtert−ブチルホスフィンのo−キシレン溶液を9.71g(パラジウム原子に対して原子4当量)のo−キシレン(50ml)溶液を添加した。その後、窒素雰囲気下、温度を120℃まで昇温し、同温度で加熱撹拌しながら15時間熟成した。熟成後、ベンジルアミン6.4g(60mmol)を添加し、更に3時間反応を行った。反応終了後この反応混合物を約80℃まで冷却した後、水200gを添加し、更に92%アセトン水溶液の撹拌溶液へゆっくり加えた。ろ過により固体をろ別回収し、アセトン、水、アセトンの順で洗浄した後、減圧乾燥し淡黄色粉体57.5gを得た(収率72%)。得られた粉体をTHF系GPCで分析した結果、ポリスチレン換算で重量平均分子量Mw=4094、数平均分子量Mn=2597(分散度1.58)だった。又、得られたポリマーを
1H−NMR、
13C−NMR及び赤外分光分析により測定したところ、下記一般式(14)で表されるN−ベンジルアリールアミンポリマーであることが確認された。
図1〜3に
1H−NMR、
13C−NMR及び赤外分光分析の測定結果を示す。
【0057】
1H−NMR(200MHz/CDCl
3/TMS)δ7.11〜7.50(m、13H)、5.04(brs、2H)
13C−NMR(50MHz/CDCl
3/TMS)δ146.6、139.0、133.7、128.5、127.2、126.8、126.4、120.8、56.3
【0058】
【化14】
【0059】
b)アリールアミンポリマー(15)の合成(合成例2)(一般式(5)の化合物の合成)
冷却管、温度計を装着した2000mlの四つ口丸底フラスコに、室温下、合成例1で得られたN−ベンジルアリールアミンポリマー10.0g(繰返しユニットの分子量267.27g/mol、37.4mmol)を入れ、脱気したN−メチルピロリドン1500mLを加えて溶解させた。引き続き、エタノール100.0g、35%塩酸を7.79g、20%水酸化パラジウム炭素粉末(50%wet)を4.0g入れた。その後、室温で攪拌下に減圧窒素置換、減圧水素置換を行った後、水素バルーンを装着して反応系中を水素雰囲気下とし、同温度で48時間反応させた。反応後、減圧ろ過によりパラジウム触媒をろ別し、得られたろ液を濃縮した後、アセトンを加えて洗浄した。引き続き、減圧ろ過、減圧乾燥により黄土色〜赤土色固体を6.6g得た。得られたポリマーはN−メチルピロリドンに溶解した。この固体を赤外分光分析により測定したところ、下記一般式(15)で表されるアリールアミンポリマーであることが確認された。赤外分光分析の測定結果を
図4に示す。特に赤外分光分析では、3400cm
−1付近のピークは脱ベンジル化により生成したフリーの二級アミノ基に由来する吸収と推定される。
【0060】
【化15】
【0061】
c)スルホン化アリールアミンポリマー(16)の合成
500mLのナス型フラスコに合成例2で得られたアリールアミンポリマー0.50gに、60%発煙硫酸を50mL加え、室温で24時間攪拌した。得られた青色反応液を滴下ロートに移し、窒素気流下、冷却したエタノールに滴下してクエンチした後、アセトンを添加して完全にポリマーを析出させた。次いで、減圧ろ過により黒色固体をろ別し、エタノール及びアセトンでpHが中性付近になるまで洗浄した。さらに減圧乾燥して黒色固体を0.47g得た。この固体を赤外分光分析により測定したところ、下記一般式(16)で表されるスルホン化アリールアミンポリマーであることが確認された。赤外分光分析の測定結果を
図5に示す。室温(25℃)で水への溶解度は5重量%であり、メタノールに対しては10重量%溶解した。
【0062】
【化16】
【0063】
得られたスルホン化アリールアミンポリマー約150mgをメノー乳鉢で微粉末化し、圧縮成型器を用いて直径13mmのペレットを作製した。このペレットの膜厚と表面抵抗(四探針法)を測定した結果から、導電率は8.1×10
−6S/cm(表面抵抗1.2×10
6Ω/□、膜厚1027μm)となり、導電性を示した。
【0064】
実施例2(b)により一般式(5)の化合物を合成した後、一般式(1)の化合物を合成)
a)アリールアミンポリマー(15)の合成(合成例3)
冷却管、温度計を装着した200mLの三つ口丸底フラスコに、ビス(1、5−シクロオクタジエン)ニッケル3.45g(12.5mmol)、乾燥したN、N−ジメチルホルムアミド98.0g、2、2’−ビピリジル1.72g(11.0mmol)を入れて室温で30分攪拌した。得られた黒色均一溶液に、室温下でビス(4−ブロモフェニル)アミン1.64g(5.0mmol)、4−ブロモアニリン8.6mg(0.05mmol)を仕込んだ。その後、窒素雰囲気下、温度を60℃まで昇温し、同温度で加熱撹拌しながら17時間熟成した。熟成後、得られた黒色スラリーを放冷し、29%アンモニア水と水の混合溶液に添加し、室温で1時間攪拌した。得られた灰色スラリーを減圧ろ過して黒色固体をろ別した。更に、29%アンモニア水、メタノール、0.1M塩酸、水、14%アンモニア水、メタノール、アセトン、THF、アセトンの順で洗浄し、減圧乾燥して0.65g(収率78%)の黄土色固体を得た。得られたポリマーはN−メチルピロリドンに溶解した。この固体を赤外分光分析により測定したところ、前記一般式(15)で表されるアリールアミンポリマーであることが確認された。赤外分光分析の測定結果を
図6に示す。特に赤外分光分析では、3400cm
−1付近のピークは二級アミノ基に由来する吸収と推定される。
【0065】
b)スルホン化アリールアミンポリマー(16)の合成
合成例3で得られたアリールアミンポリマー0.50gに変更した以外は、実施例1のc)に準拠してスルホン化アリールアミンポリマー(16)を合成した。室温(25℃)で水への溶解度は5重量%であり、メタノールに対しては10重量%溶解した。
【0066】
実施例1と同様に導電率を測定したところ、得られた黒色固体の導電率は3.4×10
−6S/cm(表面抵抗2.9×10
6Ω/□、膜厚1001μm)となり、導電性を示した。
【0067】
実施例3
a)中間体(17)の合成
冷却管、温度計、攪拌羽根、滴下ロートを装着した2Lのセパラブルフラスコに、1、4−ジブロモナフタレン23.15g(80.96mmol)を入れ、テトラヒドロフラン(THF)445gに室温で溶解させた後、窒素雰囲気下で−72℃まで冷却した。次に滴下ロートで1.6Mn−ブチルリチウムのヘキサン溶液52mL(82.98mmol)を1時間かけて系内に滴下し、1時間熟成させた。引き続き、トリイソプロポキシボレート31mL(161.91mmol)を1時間かけて系内に滴下し、1時間熟成させた後、ゆっくりと室温へ戻した。さらに室温で2時間攪拌した後、トルエンで希釈し、2〜10℃で1N塩酸水溶液を用いて加水分解を行った。分液して得られた有機層を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮して乳白色の固体を得た。さらに、ヘキサンでリパルプ洗浄した後、減圧乾燥して中間体(17)を白色固体として9.8g得た。
【0068】
【化17】
【0069】
b)中間体(18)の合成
冷却官、温度計、攪拌羽根を備えた500mLのセパラブルフラスコに、4−ブロモニトロベンゼン7.50g(37.13mmol)、a)で得た中間体(17)9.31g(37.13mmol)、トルエン223mL、炭酸ナトリウム11.81g(111.4mmol)、純水43.88g、Aliquat 336(メチルトリオクチルアンモニウムクロリド)を1.50g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を1.07g仕込み、100℃で18時間反応させた。放冷後、分液ロートへ移し、トルエンで希釈した後、5%塩酸で酸洗浄した。さらに有機層を水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、シリカゲルクロマトグラフィーで分離精製(溶離液:ヘキサン/トルエン=9/1〜4/1(v/v))して中間体(18)を淡黄色固体として10.6g得た(単離収率83%、純度99.3GC%)。
【0070】
1H−NMR(CDCl
3,200MHz)δ(ppm):8.38−8.34(m,3H),7.87(d,J=7.6Hz,1H),7.78−7.52(m,5H),7.25(d,J=7.6Hz,1H)
13C−NMR(CDCl
3,50MHz)δ(ppm):147.17,146.57,137.65,131.99,130.82,130.71,129.26,127.70,127.49,127.32,127.08,125.62,123.68,123.51
【0071】
【化18】
【0072】
c)中間体(19)の合成
冷却官、温度計、攪拌羽根を備えた500mLのセパラブルフラスコに、b)で得た中間体(18)を10.8g(32.94mmol)、塩化スズ・二水和物を33.4g(148.24mmol)、テトラヒドロフラン264mL、1M塩酸を115.3g(115.3mmol)を仕込み、還流条件下で3時間反応させた。放冷後、テトラヒドロフランを留去し、トルエンを添加した後、炭酸ナトリウム水溶液でアルカリ性とした。得られた有機層を水洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機層を濃縮した。引き続き、得られたオレンジオイルをジクロロメタンに溶解させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに通液し、留出液を濃縮乾固して目的の中間体(19)を乳白色固体として8.7g得た(単離収率89%、純度98.5GC%)。
【0073】
1H−NMR(CDCl
3,200MHz)δ(ppm):8.29(d,J=8.6Hz,1H),7.95(d,J=8.4Hz,1H),7.78(d,J=7.6Hz,1H),7.57(t,J=8.0Hz,1H),7.44(t,J=7.4Hz,1H),7.25−7.21(m,3H),6.76(d,J=8.4Hz,2H)
13C−NMR(CDCl
3,50MHz)δ(ppm):145.71,140.34,133.00,131.92,130.76,129.79,129.34,127.19,126.86,126.66,126.31,121.35,114.70
【0074】
【化19】
【0075】
d)アリールアミンポリマー(20)の合成
冷却官、温度計、攪拌羽根を備えた500mLのセパラブルフラスコに、c)で得た中間体(19)を8.70g(29.18mmol)、2,2’―ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(=BINAP)を1.09g(1.75mmol)、ナトリウムtert−ブトキサイドを3.37g(35.02mmol)、テトラヒドロフラン146mL仕込み、還流条件下で16時間反応させた。次に水15mLを添加し、反応を停止させた後、この反応液を90%アセトン水溶液にゆっくりと添加した。アセトンと水で数回洗浄した後、減圧乾燥して目的のアリールアミンポリマー(20)を黄土色固体として6.20g(単離収率97.0%、Mw/Mn=13620/5720)得た。
【0076】
1H−NMR(d−THF,200MHz)δ(ppm):8.26(d,J=8.4Hz,1H),8.07(d,J=9.2Hz,1H),7.60−7.34(m,6H),7.16(d,J=8.4Hz,2H)
13C−NMR(d−THF,50MHz)δ(ppm):145.83,139.32,135.95,133.84,132.74,131.46,129.43,127.49,127.3,126.31,125.51,123.62,117.103,116.61
【0077】
【化20】
【0078】
e)スルホン化アリールアミンポリマー(21)の合成
冷却管、温度計を装着した200mlの三つ口丸底フラスコに、室温下、d)で得たアリールアミンポリマー(20)を1.00g(4.53mmol、ポリスチレン換算で数平均分子量5720から算出した繰返し単位あたりの分子量220.91g/mol)、アミド硫酸20.0g(203.7mmol)、およびN−メチルピロリドン45mLを仕込んだ。この混合液を窒素雰囲気下、温度120〜140℃で2時間反応させた。反応終了後、N−メチルピロリドンを減圧留去しながら濃縮し、99%アセトン水溶液の撹拌溶液へゆっくり加えた。ろ過により固体をろ別回収し、水に溶解した後、アセトンで再沈殿した。さらに、水に再溶解した後、アセトンとメタノールの混合液で再沈殿を繰り返した。メタノールに溶解し、濃縮後、アセトンの撹拌溶液へゆっくり加えて、再沈殿で固体をろ別回収し、アセトンで洗浄した。ろ過した固体を減圧乾燥して黒色粉体を380mg得た。赤外分光分析により測定したところ、下記一般式(21)で表されるスルホン化アリールアミンポリマーであることが確認された。室温(25℃)で水への溶解度は5重量%であり、メタノールに対しては10重量%溶解した。
【0079】
実施例1と同様に導電率を測定したところ、得られた黒色固体の導電率は5.6×10
−6S/cmとなり、導電性を示した。
【0080】
【化21】