特許第5874378号(P5874378)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5874378スルホン化アリールアミンポリマー及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5874378
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】スルホン化アリールアミンポリマー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/00 20060101AFI20160218BHJP
【FI】
   C08G73/00
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-277693(P2011-277693)
(22)【出願日】2011年12月19日
(65)【公開番号】特開2013-127046(P2013-127046A)
(43)【公開日】2013年6月27日
【審査請求日】2014年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】原 靖
(72)【発明者】
【氏名】箭野 裕一
【審査官】 井津 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−143979(JP,A)
【文献】 特開2010−225950(JP,A)
【文献】 特開2000−277118(JP,A)
【文献】 特開2000−204158(JP,A)
【文献】 特開2001−354765(JP,A)
【文献】 特開平10−060108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00−73/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式()で表されることを特徴とするスルホン化アリールアミンポリマー。
【化1】
(式中、Arは無置換又は置換基を有する炭素数6〜20の芳香族基であって、q個の−SOX基で置換されたものを表す。Rは水素原子、無置換又は置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。mは1以上の整数である。Xは水素原子、Li,K,Naのアルカリ金属、N(R)(R)(R)(R)で表されるアミノ基を表す。その際、R〜Rは各々独立して、水素原子、無置換又は置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基を表す。p及びqは0〜2の整数であり、p+qは1以上である。)
【請求項2】
一般式()において、Arは下記一般式(2)又は(3)であることを特徴とする請求項1に記載のスルホン化アリールアミンポリマー。
【化2】
【化3】
(式中、Rは水素原子、無置換又は置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、リール基、ヘテロアリール基を表す。X、qは一般式(1)と同意義を示す。)
【請求項3】
一般式()において、Rが水素原子であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスルホン化アリールアミンポリマー。
【請求項4】
一般式()で表されるスルホン化アリールアミンポリマーは、下記一般式(5)で表されるアリールアミンポリマーをスルホン化剤でスルホン化して製造することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のスルホン化アリールアミンポリマーの製造方法。
【化5】
(式中、Ar、R、mは一般式(1)と同意義を示す。)
【請求項5】
スルホン化剤が、アミド硫酸、三酸化硫黄、発煙硫酸、クロロ硫酸からなる群より選択される1種以上の化合物であることを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水に可溶な新規スルホン化アリールアミンポリマー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アリールアミノ基が連続的に結合した構造を有するアリールアミンポリマーは耐熱性、耐溶剤性に優れた構造材料として知られている(例えば、特許文献1参照)。また、耐熱安定性を向上させた有機EL材料としても有用である(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
ところで、近年、塗布性に優れる水分散性の向上した導電性高分子材料として、スルホン化ポリスチレンを含むポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)が、多く用いられている(例えば、特許文献3、4参照)。一方で、従来のスルホン化アリールアミンポリマーでは特殊な極性有機溶媒であるジメチルスルホキシドやN,N−ジメチルホルムアミドに、水又はメタノールを添加した溶媒系で使用可能となることが報告されている程度で(例えば、特許文献5及び非特許文献1参照)、汎用の極性溶媒である水又はアルコールへの溶解性は未だ不十分である。
【0004】
またこれまでのスルホン化アリールアミンポリマーの導電性に関する言及はなく、それゆえ導電性高分子としての利用に関する報告もなかった。
【0005】
以上のように、水又はアルコールに可溶で、良好な導電性を有するスルホン化アリールアミンポリマーは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−21349号公報
【特許文献2】特開2004−292782号公報
【特許文献3】特開平7−90060号公報
【特許文献4】特開2010−114066号公報
【特許文献5】中国特許第1,827,666号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Journal of Materials Chemistry(2006),16(24),2387−2394頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、安価で工業的に安定的に得られる原料を用いて、少ない工程数で製造でき、水及びアルコールに可溶となる新規なスルホン化アリールアミンポリマー及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下に示すとおり、二級アミンタイプのポリマーであり、繰り返し単位あたりにスルホン酸基を少なくとも一つ以上有し、水及びアルコールに可溶となる新規なスルホン化アリールアミンポリマー及びその製造方法に関するものである。
【0010】
[1]下記一般式(1)で表されることを特徴とするスルホン化アリールアミンポリマー。
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、Arは無置換又は置換基を有する炭素数6〜20の芳香族基であって、q個の−SOX基で置換されたものを表す。Rは水素原子、無置換又は置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。mは1以上の整数である。Xは水素原子、Li,K,Naのアルカリ金属、N(R)(R)(R)(R)で表されるアミノ基を表す。その際、R〜Rは各々独立して、水素原子、無置換又は置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基を表す。p及びqは0〜2の整数であり、p+qは1以上である。)
[2]一般式(1)において、Arは下記一般式(2)又は(3)であることを特徴とする上記[1]に記載のスルホン化アリールアミンポリマー。
【0013】
【化2】
【0014】
【化3】
【0015】
(式中、Rは水素原子、無置換又は置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。X、qは一般式(1)と同意義を示す。)
[3]一般式(1)で表されるスルホン化アリールアミンポリマーが、下記一般式(4)であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のスルホン化アリールアミンポリマー。
【0016】
【化4】
【0017】
(式中、Ar、R、X、p、mは一般式(1)と同意義を示す。)
[4]一般式(1)において、Rが水素原子であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載のスルホン化アリールアミンポリマー。
【0018】
[5]一般式(1)で表されるスルホン化アリールアミンポリマーは、下記一般式(5)で表されるアリールアミンポリマーをスルホン化剤でスルホン化して製造することを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載のスルホン化アリールアミンポリマーの製造方法。
【0019】
【化5】
【0020】
(式中、Ar、R、mは一般式(1)と同意義を示す。)
[6]スルホン化剤が、アミド硫酸、三酸化硫黄、発煙硫酸、クロロ硫酸からなる群より選択される1種以上の化合物であることを特徴とする上記[5]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明のスルホン化アリールアミンポリマーは従来にない新規なスルホン化アリールアミンポリマーであり、スルホン酸基を分子内に有することから、水及びメタノールに溶解可能であり、さらに自己ドープ型の導電性高分子となる。また本発明の製造方法によれば、安価で工業的に安定的に得られる原料を用いて、少ない工程数で水に可溶となる新規なスルホン化アリールアミンポリマーを効率的に合成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例1のa)で得られたN−ベンジルアリールアミンポリマー(14)のH−NMRチャートである。
図2】実施例1のa)で得られたN−ベンジルアリールアミンポリマー(14)の13C−NMRである。
図3】実施例1のa)で得られたN−ベンジルアリールアミンポリマー(14)のIRチャートである。
図4】実施例1のb)で得られたアリールアミンポリマー(15)のIRチャートである。
図5】実施例1のc)で得られたスルホン化アリールアミンポリマー(16)のIRチャートである。
図6】実施例2のa)で得られたアリールアミンポリマー(15)のIRチャートである。
図7】実施例3のd)で得られたアリールアミンポリマー(20)のIRチャートである。
図8】実施例3のf)で得られたスルホン化アリールアミンポリマー(21)のIRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明のスルホン化アリールアミンポリマーは、上記一般式(1)で示される化合物であり、一般式(1)において、Arは無置換又は置換基を有する炭素数6〜20の芳香族基であって、q個の−SOX基で置換されたものを表す。一般式(1)における置換基Arとしては、上記一般式(2)、(3)のいずれかであることが好ましい。
【0025】
は、水素原子、無置換又は置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基である。
【0026】
一般式(1)における置換基Rとしては、上記の定義に該当すれば特に限定されるものではなく、具体的には、例えば水素原子の他;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、2−エチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、n−へプチル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、トリフルオロメチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;エテニル基、2−プロペニル基、1−メチルエテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、4−ペンテニル基等の炭素数1〜6のアルケニル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−エチルブトキシ基、3,3−ジメチルブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、シクロヘキシルメチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、3−(トリフルオロメトキシ)フェニル基等の炭素数1〜6のアリール基;ジフェニルアミノ基、ジ−p−トリルアミノ基等のアリールアミノ基;及び2−チエニル基、2−ピリジル基等の炭素数1〜6のヘテロアリール基を挙げることができる。また、Rは他の置換基と縮合環を形成しても良い。
【0027】
これらの中でもRとしては、好ましくは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアリールアミノ基であり、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシ基がさらに好ましく、特に水素原子が好ましい。
【0028】
一般式(2)、(3)における置換基Rは、一般式(1)における置換基Rと同じものを例示することができる。
【0029】
一般式(1)におけるXは、水素原子、Li,K,Naのアルカリ金属、N(R)(R)(R)(R)で表されるアミノ基であり、R〜Rは各々独立して、水素原子、無置換又は置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基を表し、炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−シクロヘキシル基等を挙げることができる。そして、具体的なアミノ基としては、例えばアンモニウムカチオンの他、メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、n−プロピルアンモニウム、n−ブチルアンモニウム等の第一級アンモニウムカチオン;ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ジn−プロピルアンモニウム、ジn−ブチルアンモニウム等の第二級アンモニウムカチオン;トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリ(n−プロピル)アンモニウム、トリ(n−ブチル)アンモニウム等の第三級アンモニウムカチオン、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム等の第四級アンモニウムカチオンが挙げられる。
【0030】
一般式(1)におけるmは1以上の整数である。また、p及びqは0〜2の整数であり、p+qは1以上である。
【0031】
本発明の一般式(1)のスルホン化アリールアミンポリマーは、上記の定義に該当すれば特に限定はなく、下記一般式(6)、(7)で表されるものが好ましく、
【0032】
【化6】
【0033】
【化7】
【0034】
(式中、R、X、m、pは一般式(1)と同意義を示し、Rは一般式(2)、(3)と同意義を示す。)
特に下記一般式(8)〜(11)の化合物が好ましい。
【0035】
【化8】
【0036】
【化9】
【0037】
【化10】
【0038】
【化11】
【0039】
(式中、mは一般式(1)と同意義を示す。)
さらに上記一般式(8)〜(11)において、ポリマー末端が二級アミンであっても良い。
【0040】
本発明のスルホン化アリールアミンポリマーの重量平均分子量は、ポリスチレン換算で500〜500,000が好ましく、特に好ましくは1,000〜50,000である。
【0041】
次に本発明のスルホン化アリールアミンポリマーの製造法について説明する。
【0042】
本発明の上記一般式(1)で表されるスルホン化アリールアミンポリマーは、上記一般式(5)で表されるアリールアミンポリマーをスルホン化剤でスルホン化して製造する
原料の一般式(5)で表されるアリールアミンポリマーとしては下記一般式(12)、(13)で表されるものが好ましい。
【0043】
【化12】
【0044】
【化13】
【0045】
(式中、R、mは一般式(1)と同意義を示し、Rは一般式(2)、(3)と同意義を示す。
【0046】
一般式(5)で表されるアリールアミンポリマーの製造方法としては、以下のa)〜c)の方法で製造することができる。
【0047】
a)溶媒中、塩基存在下、ホスフィン系配位子とパラジウム錯体化合物からなる触媒で芳香族ジハライド類とベンジルアミンを反応させるBuckwald−Hartwig反応で重合させ、得られたポリマーを水素化分解により脱ベンジル化する。
【0048】
b)ジ(ハロゲン化アリール)アミンなどの芳香族ジハライド化合物をニッケル触媒で重合させる山本重合で製造する。
【0049】
c)ハロゲン原子とアミノ基を有する芳香族化合物をパラジウム化合物とBINAP配位子からなる触媒系で重合させる。
【0050】
本反応に用いるスルホン化剤としては、例えばアミド硫酸、三酸化硫黄、発煙硫酸、クロロ硫酸からなる群より選択される化合物が挙げられ、単一又は混合で使用してもよい。
【0051】
又、スルホン化剤の使用量としては、特に限定されるものではなく、好ましくは原料のアリールアミンポリマーに含有される繰り返し単位中のベンゼン環(ポリスチレン換算での数平均分子量Mnから推定)1モルに対し、5〜100倍モルが好ましく、特に好ましくは10〜50倍モルである。
【0052】
本反応に用いる溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、トリエチルアミン、ハロゲン系溶媒が挙げられ、臭気等の操作性からN,N−ジメチルホルムアミド及びN−メチル−2−ピロリドンが好ましく、単一又は混合で使用してもよい。発煙硫酸を使用する場合には、硫酸又は発煙硫酸を溶媒に使用する。
【0053】
本反応のスルホン化アリールアミンポリマーの製造は、好ましくは常圧下、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施し、たとえ加圧条件であっても実施することが可能である。
【0054】
本反応の方法において反応温度は、スルホン化アリールアミンポリマーを製造することが可能な反応温度であれば特に限定するものではなく、−30〜200℃が好ましい。
【実施例】
【0055】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本実施例で用いた分析機器及び測定方法を以下に列記する。
【0056】
[NMR測定]
装置:VARIAN製、Gemini−200
[赤外分光分析]
装置:パーキンエルマー製、System2000 FT IR
測定方法:KBr法
[GC測定]
装置:Shimadzu製、GC―2014
[GPC測定]
装置:東ソー製、HLC−8200、
カラム:東ソー製、G4000HXL−G3000HXL−G2000HXL
[表面抵抗測定]
装置:三菱油化製、Loresta IP MCP−250
[膜厚測定]
装置:ミツトヨ製、マイクロメーター MDC−25L
実施例1(a)により一般式(5)の化合物を合成した後、一般式(1)の化合物を合成)
a)N−ベンジルアリールアミンポリマー(14)の合成(合成例1)
冷却管、温度計、攪拌羽根を装着した3000mLの四つ口セパラブルフラスコに、室温下で4、4’−ジヨードビフェニル121.8g(300mmol)、ベンジルアミン35.4g(330mmol)、97%ナトリウム−tert−ブトキシド69.2g(720mol;ヨウ素原子に対して1.2当量)及びo−キシレン2100gを仕込んだ。この混合液に予め窒素雰囲気下で調製したトリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム錯体1370mg(1.5mmol)及び25重量%トリtert−ブチルホスフィンのo−キシレン溶液を9.71g(パラジウム原子に対して原子4当量)のo−キシレン(50ml)溶液を添加した。その後、窒素雰囲気下、温度を120℃まで昇温し、同温度で加熱撹拌しながら15時間熟成した。熟成後、ベンジルアミン6.4g(60mmol)を添加し、更に3時間反応を行った。反応終了後この反応混合物を約80℃まで冷却した後、水200gを添加し、更に92%アセトン水溶液の撹拌溶液へゆっくり加えた。ろ過により固体をろ別回収し、アセトン、水、アセトンの順で洗浄した後、減圧乾燥し淡黄色粉体57.5gを得た(収率72%)。得られた粉体をTHF系GPCで分析した結果、ポリスチレン換算で重量平均分子量Mw=4094、数平均分子量Mn=2597(分散度1.58)だった。又、得られたポリマーをH−NMR、13C−NMR及び赤外分光分析により測定したところ、下記一般式(14)で表されるN−ベンジルアリールアミンポリマーであることが確認された。図1〜3にH−NMR、13C−NMR及び赤外分光分析の測定結果を示す。
【0057】
H−NMR(200MHz/CDCl/TMS)δ7.11〜7.50(m、13H)、5.04(brs、2H)
13C−NMR(50MHz/CDCl/TMS)δ146.6、139.0、133.7、128.5、127.2、126.8、126.4、120.8、56.3
【0058】
【化14】
【0059】
b)アリールアミンポリマー(15)の合成(合成例2)(一般式(5)の化合物の合成)
冷却管、温度計を装着した2000mlの四つ口丸底フラスコに、室温下、合成例1で得られたN−ベンジルアリールアミンポリマー10.0g(繰返しユニットの分子量267.27g/mol、37.4mmol)を入れ、脱気したN−メチルピロリドン1500mLを加えて溶解させた。引き続き、エタノール100.0g、35%塩酸を7.79g、20%水酸化パラジウム炭素粉末(50%wet)を4.0g入れた。その後、室温で攪拌下に減圧窒素置換、減圧水素置換を行った後、水素バルーンを装着して反応系中を水素雰囲気下とし、同温度で48時間反応させた。反応後、減圧ろ過によりパラジウム触媒をろ別し、得られたろ液を濃縮した後、アセトンを加えて洗浄した。引き続き、減圧ろ過、減圧乾燥により黄土色〜赤土色固体を6.6g得た。得られたポリマーはN−メチルピロリドンに溶解した。この固体を赤外分光分析により測定したところ、下記一般式(15)で表されるアリールアミンポリマーであることが確認された。赤外分光分析の測定結果を図4に示す。特に赤外分光分析では、3400cm−1付近のピークは脱ベンジル化により生成したフリーの二級アミノ基に由来する吸収と推定される。
【0060】
【化15】
【0061】
c)スルホン化アリールアミンポリマー(16)の合成
500mLのナス型フラスコに合成例2で得られたアリールアミンポリマー0.50gに、60%発煙硫酸を50mL加え、室温で24時間攪拌した。得られた青色反応液を滴下ロートに移し、窒素気流下、冷却したエタノールに滴下してクエンチした後、アセトンを添加して完全にポリマーを析出させた。次いで、減圧ろ過により黒色固体をろ別し、エタノール及びアセトンでpHが中性付近になるまで洗浄した。さらに減圧乾燥して黒色固体を0.47g得た。この固体を赤外分光分析により測定したところ、下記一般式(16)で表されるスルホン化アリールアミンポリマーであることが確認された。赤外分光分析の測定結果を図5に示す。室温(25℃)で水への溶解度は5重量%であり、メタノールに対しては10重量%溶解した。
【0062】
【化16】
【0063】
得られたスルホン化アリールアミンポリマー約150mgをメノー乳鉢で微粉末化し、圧縮成型器を用いて直径13mmのペレットを作製した。このペレットの膜厚と表面抵抗(四探針法)を測定した結果から、導電率は8.1×10−6S/cm(表面抵抗1.2×10Ω/□、膜厚1027μm)となり、導電性を示した。
【0064】
実施例2(b)により一般式(5)の化合物を合成した後、一般式(1)の化合物を合成)
a)アリールアミンポリマー(15)の合成(合成例3)
冷却管、温度計を装着した200mLの三つ口丸底フラスコに、ビス(1、5−シクロオクタジエン)ニッケル3.45g(12.5mmol)、乾燥したN、N−ジメチルホルムアミド98.0g、2、2’−ビピリジル1.72g(11.0mmol)を入れて室温で30分攪拌した。得られた黒色均一溶液に、室温下でビス(4−ブロモフェニル)アミン1.64g(5.0mmol)、4−ブロモアニリン8.6mg(0.05mmol)を仕込んだ。その後、窒素雰囲気下、温度を60℃まで昇温し、同温度で加熱撹拌しながら17時間熟成した。熟成後、得られた黒色スラリーを放冷し、29%アンモニア水と水の混合溶液に添加し、室温で1時間攪拌した。得られた灰色スラリーを減圧ろ過して黒色固体をろ別した。更に、29%アンモニア水、メタノール、0.1M塩酸、水、14%アンモニア水、メタノール、アセトン、THF、アセトンの順で洗浄し、減圧乾燥して0.65g(収率78%)の黄土色固体を得た。得られたポリマーはN−メチルピロリドンに溶解した。この固体を赤外分光分析により測定したところ、前記一般式(15)で表されるアリールアミンポリマーであることが確認された。赤外分光分析の測定結果を図6に示す。特に赤外分光分析では、3400cm−1付近のピークは二級アミノ基に由来する吸収と推定される。
【0065】
b)スルホン化アリールアミンポリマー(16)の合成
合成例3で得られたアリールアミンポリマー0.50gに変更した以外は、実施例1のc)に準拠してスルホン化アリールアミンポリマー(16)を合成した。室温(25℃)で水への溶解度は5重量%であり、メタノールに対しては10重量%溶解した。
【0066】
実施例1と同様に導電率を測定したところ、得られた黒色固体の導電率は3.4×10−6S/cm(表面抵抗2.9×10Ω/□、膜厚1001μm)となり、導電性を示した。
【0067】
実施例3
a)中間体(17)の合成
冷却管、温度計、攪拌羽根、滴下ロートを装着した2Lのセパラブルフラスコに、1、4−ジブロモナフタレン23.15g(80.96mmol)を入れ、テトラヒドロフラン(THF)445gに室温で溶解させた後、窒素雰囲気下で−72℃まで冷却した。次に滴下ロートで1.6Mn−ブチルリチウムのヘキサン溶液52mL(82.98mmol)を1時間かけて系内に滴下し、1時間熟成させた。引き続き、トリイソプロポキシボレート31mL(161.91mmol)を1時間かけて系内に滴下し、1時間熟成させた後、ゆっくりと室温へ戻した。さらに室温で2時間攪拌した後、トルエンで希釈し、2〜10℃で1N塩酸水溶液を用いて加水分解を行った。分液して得られた有機層を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮して乳白色の固体を得た。さらに、ヘキサンでリパルプ洗浄した後、減圧乾燥して中間体(17)を白色固体として9.8g得た。
【0068】
【化17】
【0069】
b)中間体(18)の合成
冷却官、温度計、攪拌羽根を備えた500mLのセパラブルフラスコに、4−ブロモニトロベンゼン7.50g(37.13mmol)、a)で得た中間体(17)9.31g(37.13mmol)、トルエン223mL、炭酸ナトリウム11.81g(111.4mmol)、純水43.88g、Aliquat 336(メチルトリオクチルアンモニウムクロリド)を1.50g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を1.07g仕込み、100℃で18時間反応させた。放冷後、分液ロートへ移し、トルエンで希釈した後、5%塩酸で酸洗浄した。さらに有機層を水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、シリカゲルクロマトグラフィーで分離精製(溶離液:ヘキサン/トルエン=9/1〜4/1(v/v))して中間体(18)を淡黄色固体として10.6g得た(単離収率83%、純度99.3GC%)。
【0070】
H−NMR(CDCl,200MHz)δ(ppm):8.38−8.34(m,3H),7.87(d,J=7.6Hz,1H),7.78−7.52(m,5H),7.25(d,J=7.6Hz,1H)
13C−NMR(CDCl,50MHz)δ(ppm):147.17,146.57,137.65,131.99,130.82,130.71,129.26,127.70,127.49,127.32,127.08,125.62,123.68,123.51
【0071】
【化18】
【0072】
c)中間体(19)の合成
冷却官、温度計、攪拌羽根を備えた500mLのセパラブルフラスコに、b)で得た中間体(18)を10.8g(32.94mmol)、塩化スズ・二水和物を33.4g(148.24mmol)、テトラヒドロフラン264mL、1M塩酸を115.3g(115.3mmol)を仕込み、還流条件下で3時間反応させた。放冷後、テトラヒドロフランを留去し、トルエンを添加した後、炭酸ナトリウム水溶液でアルカリ性とした。得られた有機層を水洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、有機層を濃縮した。引き続き、得られたオレンジオイルをジクロロメタンに溶解させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに通液し、留出液を濃縮乾固して目的の中間体(19)を乳白色固体として8.7g得た(単離収率89%、純度98.5GC%)。
【0073】
H−NMR(CDCl,200MHz)δ(ppm):8.29(d,J=8.6Hz,1H),7.95(d,J=8.4Hz,1H),7.78(d,J=7.6Hz,1H),7.57(t,J=8.0Hz,1H),7.44(t,J=7.4Hz,1H),7.25−7.21(m,3H),6.76(d,J=8.4Hz,2H)
13C−NMR(CDCl,50MHz)δ(ppm):145.71,140.34,133.00,131.92,130.76,129.79,129.34,127.19,126.86,126.66,126.31,121.35,114.70
【0074】
【化19】
【0075】
d)アリールアミンポリマー(20)の合成
冷却官、温度計、攪拌羽根を備えた500mLのセパラブルフラスコに、c)で得た中間体(19)を8.70g(29.18mmol)、2,2’―ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(=BINAP)を1.09g(1.75mmol)、ナトリウムtert−ブトキサイドを3.37g(35.02mmol)、テトラヒドロフラン146mL仕込み、還流条件下で16時間反応させた。次に水15mLを添加し、反応を停止させた後、この反応液を90%アセトン水溶液にゆっくりと添加した。アセトンと水で数回洗浄した後、減圧乾燥して目的のアリールアミンポリマー(20)を黄土色固体として6.20g(単離収率97.0%、Mw/Mn=13620/5720)得た。
【0076】
H−NMR(d−THF,200MHz)δ(ppm):8.26(d,J=8.4Hz,1H),8.07(d,J=9.2Hz,1H),7.60−7.34(m,6H),7.16(d,J=8.4Hz,2H)
13C−NMR(d−THF,50MHz)δ(ppm):145.83,139.32,135.95,133.84,132.74,131.46,129.43,127.49,127.3,126.31,125.51,123.62,117.103,116.61
【0077】
【化20】
【0078】
e)スルホン化アリールアミンポリマー(21)の合成
冷却管、温度計を装着した200mlの三つ口丸底フラスコに、室温下、d)で得たアリールアミンポリマー(20)を1.00g(4.53mmol、ポリスチレン換算で数平均分子量5720から算出した繰返し単位あたりの分子量220.91g/mol)、アミド硫酸20.0g(203.7mmol)、およびN−メチルピロリドン45mLを仕込んだ。この混合液を窒素雰囲気下、温度120〜140℃で2時間反応させた。反応終了後、N−メチルピロリドンを減圧留去しながら濃縮し、99%アセトン水溶液の撹拌溶液へゆっくり加えた。ろ過により固体をろ別回収し、水に溶解した後、アセトンで再沈殿した。さらに、水に再溶解した後、アセトンとメタノールの混合液で再沈殿を繰り返した。メタノールに溶解し、濃縮後、アセトンの撹拌溶液へゆっくり加えて、再沈殿で固体をろ別回収し、アセトンで洗浄した。ろ過した固体を減圧乾燥して黒色粉体を380mg得た。赤外分光分析により測定したところ、下記一般式(21)で表されるスルホン化アリールアミンポリマーであることが確認された。室温(25℃)で水への溶解度は5重量%であり、メタノールに対しては10重量%溶解した。
【0079】
実施例1と同様に導電率を測定したところ、得られた黒色固体の導電率は5.6×10−6S/cmとなり、導電性を示した。
【0080】
【化21】
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のスルホン化アリールアミンポリマーは、従来にない新規なスルホン化アリールアミンポリマーであり、汎用の極性溶媒である水又はアルコールへの溶解可能である特徴を有し、本発明の製造方法によれば、安価で工業的に安定的に得られる原料を用いて、少ない工程数で水に可溶となる新規なスルホン化アリールアミンポリマーを効率的に合成することができる。
【0082】
この新規なスルホン化アリールアミンポリマーは、構造材料、有機EL材料、導電性高分子、帯電防止剤等への利用が期待される。
図1
図2
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図8